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これはこの世の事ならず 死出の山路の裾野なる 賽の河原の物語 聞くにつけても哀れなり 二つ三つや四つ五つ 十にも足らぬみどり子が 賽の河原に集まりて 父上恋し母恋し 恋し恋しと泣く声は この世の声とはこと変わり 悲しさ骨身を通すなり かのみどり子の所作として 河原の石を取り集め これにて廻向《えこう》の塔を組む 一重組んでは父のため 二重組んでは母のため 三重組んでは故郷の 兄弟我身と廻向して 昼は一人で遊べども 陽も入相《いりあい》のその頃は 地獄の鬼が現れて やれ汝等はなにをする 娑婆に残りし父母は 追善作善《ついぜんさぜん》の勤めなく ただ明け暮れの嘆きには むごや悲しや不憫やと 親の嘆…
『眠る盃』は向田邦子さんの各種雑誌に寄稿されたエッセイ集なのですが、すごいんですよこれが。 その掲載雑誌が多種多様。名エッセイ『父の詫び状』を発表した『銀座百点』から、文春などの文学雑誌。若い女性向けの雑誌『anan』『ジュノン』、さらには
『父の詫び状』を読み、すっかりハマってしまった向田邦子作品。続いて読んだのが『男どき女どき』でした。 小説とエッセイが収録されている短編集であり、向田さん最後の作品集です。「男どき」とは勢いのある幸運の時、「女どき」は不幸の時を指す言葉だそ
家にまつわる怪異と、それを修繕して整える『営繕かるかや怪異譚その参』。今回も家にまつわる様々な怪奇が登場します。念と呪い「念」とは、常に心から離れない、強い思い入れのことを言います。そんな人の念は家や家具に影響を与え、時に呪いとして人を襲い
僕の前に道はない僕の後ろに道は出來るああ、自然よ父よ僕を一人立ちにさせた廣大な父よ僕から目を離さないで守る事をせよ常に父の氣魄を僕に充たせよこの遠い道程のためこの遠い道程のため 日本人でこの詩を知らない人がいるんだろうか。 僕は、この詩を生み出した高村光太郎と同じ日本人であることを本当に誇りに思う。 この詩の一行一行に、人間のあるべき姿が刻まれている。 この詩の背後から薫り高い香気のようなものが立ち昇っている。 この詩を読むだけで、魂が震えるような感動を覚える。 この詩を見ただけで、新たな一歩を踏み出す勇気が湧いている。 この詩はあらゆる人にとって価値があると思うが、とりわけ、10代、20代の…
戦争に負けたから堕ちるのではないのだ。人間だから堕ちるのであり、生きているから堕ちるだけだ。だが人間は永遠に堕ちぬくことはできないだろう。なぜなら人間の心は苦難に対して鋼鉄の如くでは有り得ない。人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる。人間は結局処女を刺殺せずにはいられず、武士道をあみださずにはいられず、天皇を担ぎださずにはいられなくなるであろう。だが他人の処女でなしに自分自身の処女を刺殺し、自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。そして人の如くに日本も亦堕ちることが必要であろう。堕ちる道を堕ちきる…
僕は人間の前途に光明を見て進んで行く。祖先の霊があるかのように背後を顧みて、祖先崇拝をして、義務があるかのように、徳義の道を踏んで、前途に光明を見て進んで行く。そうして見れば、僕は事実上極蒙昧な、極従順な、山の中の百姓と、なんの択ぶ所もない。只頭がぼんやりしていないだけだ。極頑固な、極篤実な、敬神家や道学先生と、なんの択ぶところもない。只頭がごつごつしていないだけだ。ねえ、君、この位安全な、危険でない思想はないじゃないか。神が事実でない。義務が事実でない。これはどうしても今日になって認めずにはいられないが、それを認めたのを手柄にして、神を涜す。義務を蹂躙する。そこに危険は始て生じる。 引用:『…
「これから将来、五年十年と経つて、稀に皆さんが小学校時代のことを考へて御覧なさる時に――あゝ、あの高等四年の教室で、瀬川といふ教員に習つたことが有つたツけ――あの穢多《えた》の教員が素性を告白けて、別離を述べて行く時に、正月になれば自分等と同じやうに屠蘇《とそ》を祝ひ、天長節《てんちょうせつ》が来れば同じやうに君が代を歌つて、蔭ながら自分等の幸福を、出世を祈ると言つたツけ――斯《こ》う思出して頂きたいのです。私が今斯ういふことを告白けましたら、定めし皆さんは穢しいといふ感想を起すでせう。あゝ、仮令《たとえ》私は卑賤しい生れでも、すくなくも皆さんが立派な思想を御持ちなさるやうに、毎日其を心掛けて…
「書物を読むのはごく悪うございます。有体に云うと、読書ほど修業の妨になるものは無いようです。私共でも、こうして碧巌《へきがん》などを読みますが、自分の程度以上のところになると、まるで見当がつきません。それを好加減に揣摩《しま》する癖がつくと、それが坐る時の妨になって、自分以上の境界を予期して見たり、悟を待ち受けて見たり、充分突込んで行くべきところに頓挫ができます。大変毒になりますから、御止しになった方がよいでしょう。もし強いて何か御読みになりたければ、禅関策進というような、人の勇気を鼓舞したり激励したりするものが宜しゅうございましょう。それだって、ただ刺戟の方便として読むだけで、道その物とは無…
心に残る言葉 『カラマーゾフの兄弟』(著:ドストエフスキー 訳:江川卓)より
「真理をあがなうために必要な苦しみの一定量が定まっているとして、その量を補うために子供たちの苦しみが必要だということになら、ぼくはあらかじめ断言しておくよ、一切の真理もそんな代償には値しないとね。要するにぼくは、例の母親に、自分の息子を犬に噛みちぎらせたあの加害者と抱き合ってもらいたくないんだよ。彼女が彼を赦すなんてもってのほかだ! もしそうしたいのなら、自分の分だけ赦すがいい、自分の母親としてのかぎりない苦悩の分だけ、加害者を赦してやればいい。しかし八つ裂きにされた子供の苦しみについては、たとえ子供自身が赦すと言っても、彼女には赦す権利がないんだ、加害者を赦すわけにはいかないんだ! だが、も…
心に残る言葉 『隠された十字架 -法隆寺論-』(著:梅原猛)より
私はこの原稿を書きながら、恐ろしい気がする。人間というものが恐ろしいのである。仏様の頭に釘を刺し、しかもそれを何らかの技術的必要のように見せかけて、けろりとしている人間の心が恐ろしいのである。このような恐ろしいことなしに。政治は可能ではなかったのか。このような恐ろしいことなしに、日本の国造りは可能ではなかったのか。 引用:『隠された十字架 -法隆寺論-』(著:梅原猛) この著者のことを知らない人は多いかもしれない。 この人は作家ではない。哲学者であり仏教学者だ。 だがこの人は歴史に対する多くの仮説を打ち立てて、日本の歴史学界に波紋を呼んだ。 そのうちの一つがこの著書で、おおまかにいえば、法隆寺…
いくら物価の安いときだって熊の毛皮二枚で二円はあんまり安いと誰でも思う。実に安いしあんまり安いことは小十郎でも知っている。けれどもどうして小十郎はそんな町の荒物屋なんかへでなしにほかの人へどしどし売れないか。それはなぜか大ていの人にはわからない。けれども日本では狐けんというものもあって狐は猟師に負け猟師は旦那に負けるときまっている。ここでは熊は小十郎にやられ小十郎が旦那にやられる。旦那は町のみんなの中にいるからなかなか熊に食われない。けれどもこんないやなずるいやつらは世界がだんだん進歩するとひとりで消えてなくなっていく。僕はしばらくの間でもあんな立派な小十郎が二度とつらも見たくないようないやな…
心に残る言葉 『1945年6月6日夜の大本営海軍次官宛ての電文-第062016番電-』(発:大田実中将)より
「-左の電を、次官にご通報方、取り計らい得たし。沖縄県民の実情に関しては、県知事より報告せらるべきも、県にはすでに通信力なく、三十二軍司令部もまた通信の余力なしと認められるにつき、本職県知事よりの依頼を受けたるにあらざれど、現状を看過するに忍びず、これに代わって緊急ご通知申しあぐ。沖縄県に敵攻略を開始以来、陸海方面とも防衛戦闘に専念し、県民に関してはほとんど顧るに暇なかりき。しかれども、本職の知れる範囲においては、県民は青壮年の全部を防衛召集にささげ、残る老幼婦女子のみが、相次ぐ砲爆撃に家屋と財産の全部を焼却せられ、わずかに身をもって、軍の作戦に差し支えなき場所の小防空壕に避難、なお砲爆下をさ…
心に残る言葉 『鬼平犯科帳(七 寒月六間掘)』(著:池波正太郎)より
「つまりは、人間というもの、生きて行くにもっとも大事なことは……たとえば、今朝の飯のうまさはどうだったとか、今日はひとつ、なんとか暇を見つけて、半刻か一刻を、ぶらりとおのれの好きな場所へ出かけ、好きな食物でも食べ、ぼんやりと酒など酌みながら……さて、今日の夕餉には何を食おうかなどと、そのようなことを考え、夜は一合の寝酒をのんびりとのみ、疲れた躰を床に伸ばして、無心にねむりこける。このことにつきるな」 引用:『鬼平犯科帳(七 寒月六間掘)』(著:池波正太郎) ドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳。 大抵、小説を映像化すると矮小化する傾向が強いが、このドラマは原作の良さを余すことなく伝えて、さらに、新規…
【本】川上未映子『ウィステリアと3人の女たち』~変質する闇と訪れた光~
1、作品の概要 『ウィステリアと3人の女たち』は川上未映子の短編小説集。 『彼女と彼女の記憶について』『シャンデリア』『マリーの愛の証明』『ウィステリアと3人の女たち』4編からなる。 単行本で177ページ。 2018年3月30日に刊行された。 2、あらすじ ①彼女と彼女の記憶について 東京で女優をしている「わたし」は、引っ越して名前も覚えていないような街で開催された中学校の同窓会に参加する。 彼女が予想していた通り、名前も覚えていない元クラスメイトたちとの時間は退屈なものだった。 小学生の頃の友人・黒沢ごずえが30歳で餓死したことを聞くまでは・・・。 ②シャンデリア デパートで丸一日を過ごすわ…
「おひとりさま日和」は、短編小説集。 著者は・大崎梢・岸本葉子・坂井希久子・咲沢くれは・新津きよみ・松村比呂美の6名。おひとりさまと聞くと、大変そう、寂しそう・・・と思えます。この本の女性たちは、そうではありません。様々な状況で、ひとり暮らしをしている女性たちの物語は、肩の力が抜けて、今の私も大丈夫かな、思えます。
私の好みが幕の内弁当のように詰まっていて、読んでいる間、とても楽しくて、ひさびさに「読み終わりたくない」と思いました。 これまで日常を描いた小説はいくつも読んできましたが、『スナック墓場』の短編はどれも幸福と不幸が「いい塩梅」なんです。 普
現在、私が最も推している作家が嶋津輝さんです。まだデビュー間もない作家さんですが、その実力はすさまじく、長編第一作『襷がけの二人』で直木賞候補に。 彼女の作品は、どこにでもいる人々の、ちょっと「普通じゃない」部分が出てきます。 その日常の切
娘に買ってあげた本を自分も読んでみたら、目から鱗。セイバーメトリクスは、なんとなく知ってるつもりだったが、想像以上だった。野球の常識とされていた固定観念が、どんどん覆っていった…。10年後の野球は、おそらく今とはかなり違うものになっているだろう。 最もよい打者は4番ではなく...
中山氏の作品は初めて読んだ。 バラバラの肉片に解体された死体が見つかる。いったい、誰が何のためにこのような惨殺を実行したのか。一方、被害者とその雇用主であった製薬会社の正体は。二つの謎が解けたと思ったら、ときすでに遅し? 最後は大活劇で幕を閉じる。 徐々に謎が積み重なり...
「母影」と書いて”おもかげ”と読みます。 ロックバンド「クリープハイプ」のヴォーカル&ギターの尾崎世界観さんの4年半ぶり、初の純文学作品。第164回 芥川賞候補作です。 母影(おもかげ)感想 小学生の女の子の目線で物語は進んでいきます。 シングルマザーであるお母さんの仕事場にしか居場所がない女の子。でも、彼女はその孤独を受け入れています。 お母さん・私・その他登場人物の「人物像」にさほど迫ることなく、なんだかぼんやりしているのですが、それは表題”おもかげ”たる所以なのかな... と思ったりしました。 女の子は「まだ書けない漢字も読むことができる」この表現がとても秀逸...というか、物語を物語っ…
1、作品の概要 『とんこつQ&A』は今村夏子の短編小説集。 2022年7月に刊行された。 4編からなる。 単行本で220ページ。 『群像』2021年12月号~2022年7月号に掲載された。 2、あらすじ ①とんこつQ&A わたしが「とんこつ」という名前の中華料理屋でアルバイトとして働きだして7年。 大将と小学生の坊ちゃんは、「いらっしゃいませ」もろくに言えないわたしを温かく見守ってくれた。 そんな2人に応えるためにメモを読み上げながら接客していたわたしはやがて接客対応のマニュアル「とんこつQ&A」を作成し、立派に店を切り盛りするようになる。 しかし、そこに新しいアルバイトの丘崎たま美がやってき…
『菓子屋横丁月光荘』シリーズもこれで最後。とても名残惜しいですが、孤独だった守人が人や家の縁に恵まれて幸せになってゆく様子は、読者としても嬉しく思いました。『菓子屋横丁月光荘 光の糸』あらすじ月光荘のオーナー、島田さんと、恩師である木谷先生
幸田文の代表作『流れる』は、1955年(昭和30年)発表。芸者置屋の女中の視点から花街の人間模様が描かれます。 正直、昔の小説なので言い回しがわからない箇所も多いのです。けれど、作中の着物や仕草、人物の描写がすばらしく、夢中で読んでしまいま
「八月の御所グラウンド / 万城目学」を読んだ感想。【第170回 直木賞受賞作】
おはようございます。 日本人は駅伝や野球が好きな国民性なんですかね? キリュウです。 今回は文藝春秋さんから刊行されてい
随時更新します。 1月 阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし/阿佐ヶ谷姉妹 阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし (幻冬舎文庫) 価格:660円(税込、送料無料) (2024/1/30時点) 楽天で購入 言葉の流れが優しくて読みやすくて、最後ま
『おもちゃ絵芳藤』は、幕末から明治にかけて、激動の時代に生きた歌川国芳の弟子たちの物語です。芳藤はおもちゃ絵を得意とする絵師で、彼の視点から物語が語られます。 『おもちゃ絵芳藤』あらすじ 歌川国芳が死に、弟子の芳藤は師匠の葬式を出すため国芳
「十戒 / 夕木春央」を読んだ感想。【第6回 ほんタメ文学賞 たくみ部門候補作】
おはようございます。 年間、小説やマンガ内で〇される人数は何人ぐらいなんだろう? キリュウです。 今回は講談社さんから刊
1、作品の概要 『われもまた天に』は、2020年9月25日に刊行された古井由吉の短編小説集。 2020年2月18日に他界した古井由吉の遺作となった。 『雛の春』『われもまた天に』『雨上がりの出立』『遺稿』(未完)の4編の短編小説からなる。 単行本で139ページ。 『新潮』2019年7月号~2020年5月号に掲載された。 2、あらすじ ①雛の春 立春の2月4日。 入院先の病院で聞く夜の車の音、人の話し声。 記憶は巡り、2人の娘のために飾った雛人形を思い、雪の夜に女とすれ違ったことを思う。 ②われもまた天に 寒々しい春が凶年を予感させ、寒々しい5月。 漢文から、生れる前は天の内に在って五行の運行の…
【スキルが身に付く】『読書ブログ』をやってみて9つのメリットを感じた話【ネタ切れしない】
ブログを伸ばすためには読書が必須だと思い『読書ブログ』を書いているのですが、これは目先のお金にならなくてもやっててよかったなと思えることが沢山ありましたので、『読書ブログ』のメリットをお伝えいたします。
【簡単長続き】読書ノートを作ろう! 読書したけどすぐ忘れる…という人におすすめ。
読んだ本の感想を聞かれたときに、本当は頭の中にたくさん思いがあったはずなのに、 うまく言葉にできなくて、よかった、とか面白かったと、いう感想しか出てこず、絶望したのはこの僕だ。 読んだ本の感想をノートに書き留めた「読書ノート」を作れば、良い
【本】村上春樹『バースデイ・ガール』~20歳の誕生日に彼女がしたひとつの願いごと~
1、作品の概要 『バースデイ・ガール』は村上春樹の短編小説。 2017年11月に刊行された。 初出は、村上春樹翻訳の誕生日をテーマにした短編小説のアンソロジー『バースデイ・ストーリーズ』に掲載された。 イラストはカット・メンシックが担当。 1編の短編小説に挿画が多く掲載されている。 あとがきを含めて61ページ。 『めくらやなぎと眠る女 TWENTY STORIES』にも収録されている。 2、あらすじ 20歳の誕生日を迎えた女の子は、彼氏とも喧嘩した上に、体調を崩した他のスタッフの穴埋めでアルバイトをしていた。 女の子がアルバイトをしていたイタリア料理店では、フロアマネージャーがオーナーに毎日夕…
経済学と銘打っていますが、実は心理学に近い考え方だと思います。なぜ損をするほど無謀な賭けにでてしまうのか、なぜ無駄遣いをしてしまうのか。 そんな日常のお金の使い方にも役に立つのが『よくわかる行動経済学』です。 そもそも行動経済学とは? 行動
『おちくぼ物』は平安時代、継母にいじめられる姫君を貴公子が救い出して幸せになるという、まさに「平安時代版シンデレラ」のような物語。 現代のラノベ風に言えば「継母にいじめられていた私がイケメン貴族に溺愛される件」といった感じでしょうか。 古典
田辺聖子さんの古典解説は面白い。難解なをユーモアあふれる文章で紹介してくれるので、気軽に古典文学を楽しめます。 「蜻蛉日記をご一緒に」は、もともと田辺聖子さんの講演会の内容を書籍化したもの。口語体で書かれているのでわかりやすく、するするっと
おはようございます。 突然ですが人生とはままならないものですよね。(順風満帆な人生を歩まれている方が居たらスミマセン)
娘に勧められて読んだ、就活ミステリー。なるほど、平成のノリだ。 就活の集団面接で起きた「事件」の犯人は誰なのか。半分ほどのところで 「そう来るか。でも、それはちょっと無理があるんちゃうかなあ」 と上から目線で読んでいたら、そんなことはお見通しとばかりに話は一転。後半は一...
【本】西加奈子『サラバ!』~あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけない~
1、作品の概要 『サラバ!』は西加奈子の長編小説。 2014年11月に刊行された。 上下巻からなり、上巻375ページ、下巻358ページ。 文庫版は2017年10月に上中下巻で刊行された。 装画を作者の西加奈子が担当した。 小学館の小説誌「きらら」2013年12月号~2014年10月号に掲載された。 第152回直木賞受賞。 2015年本屋大賞2位。 イラン、エジプト、日本と転々とする家族の物語。 2、あらすじ 圷歩は父親の仕事の転勤で家族がイランに住んでいた時に生まれ、優れた容姿で周囲から愛されていた。 周囲に合わせながら卑屈に生きる歩に対して、4つ上の姉・貴子は変わり者で自分の思い通りにならな…
冲方丁さんの『はなとゆめ』は、清少納言の枕草子をベースに、平安時代の宮中の様子や陰謀を、史実を交えて描かれた小説。 主人公・清少納言の視点から描かれています。 2024年大河の主役紫式部ですが、こちらは紫式部のライバル陣営のお話です。 『は
今までに2冊「永田カビ」さんのコミックエッセイの感想文を書きました。 check ・さびしすぎてレズ風俗に行きました・現実逃避してたらボロボロになった話 そして今回、以下を追加で読みました。 (function(b,c,f,g,a,d,e){b.MoshimoAffiliateObject=a; b[a]=b[a] function(){arguments.currentScript=c.currentScript c.scripts[c.scripts.length-2];(b[a].q=b[a].q []).push(arguments)}; c.getElementById(a)…
【本】ポール・オースター『幻影の書』~人は追いつめられて初めて本当に生きはじめる~
1、作品の概要 『幻影の書』はアメリカの作家ポール・オースターの長編小説。 訳者は、柴田元幸。 2002年にアメリカで刊行され、2008年に日本語訳版が新潮社より単行本が刊行された。 単行本で329ページ。 2011年に新潮文庫より文庫化されている。 飛行機事故で妻子を亡くした男が、失踪した無声映画界のカルト・スターであるヘクター・マンの作品に魅了され本を書き上げることで、ヘクターの失踪の謎とその数奇な物語に巻き込まれていく。 2、あらすじ 飛行機事故で妻子を亡くした大学教授のディヴィッドは、深い悲しみの中でヘクター・マンの無声コメディ映画で久しぶりに笑顔になることができた。 彼は世界中に散ら…
冠婚葬祭をテーマにした4つのオムニバス小説『冠・婚・葬・祭』。中島京子さんが冠婚葬祭というテーマから垣間見れる、人生のワンシーンを独特の視点で描いています。 空に、ディアボロを高く 地方記者だった裕也は、成人式の記事に誤報を載せてしまったこ
【画面サイズが大きいので読みやすい】『KindlePaperwhiteシグニチャーエディション』のレビュー【お風呂でも使える】
【kindle】は、Amazonが販売する電子書籍リーダーおよびプラットフォームで、『KindlePaperwhiteシグニチャーエディション』は【kindle】専用電子書籍リーダーです。 そんな『KindlePaperwhiteシグニチャーエディション』を愛用して2年使ってみてのレビューになります。
『上海モダンの伝説』は戦前に「老上海」と呼ばれた「魔都」に魅せられた日本人たちを取り上げています。 幕末から昭和初期まで種々雑多な日本人が上海を訪れています。革命家、諜報機関、宗教家、作家や芸術家など、職業も身分も異なる人が上海へ集まるので
昔見た向田邦子新春ドラマシリーズは、たいてい戦争前の時代、女系家族の穏やかで静かな生活が描かれます。 しかしその一方で、その家の女性が道ならぬ恋に落ちるストーリーに、子ども心にスリルとエロさを感じました。 久しぶりにみた向田邦子新春シリーズ
「東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか」は、東洋経済オンラインで連載されていた取材レポートをまとめた本です。WOWOWでドラマ化されました。この本の感想・レビューを説明しています。身近ではない人にとっては、わかいづらい女性の貧困について、現実に直面している1人1人を取材して、エピソードを紹介しています。
☆年末恒例!!2023年読んだ本ベスト10冊☆ さてさて、年末といえばこの企画。 「2023年読んだ本ベスト10冊」です。 この時期になるとXの読書垢の皆さんがこのハッシュタグで投稿されていて、ニヤニヤしながら読んでいます。 「ふーん、こういうの好きなんだね」とかニヤニヤしながら読んでいるにやけがちな中年のヒロ氏ですが、みんなやってたら僕もやんなきゃとか思っちゃうよね!! まぁ、たいして熱心な読書家ではないのですが、それでも今年も40~50冊ぐらいは読んでいるはず。 たぶん。 そんな中から珠玉の10冊をセレクトとか思いましたが、選考は難航し10冊に収まりませんでした。 そんなわけで、2023年…
「Honya Club」でネット注文して本屋へ取り寄せできる!
「Honya Club」は。本のネット販売サイトです。 自宅へ配送してくれるのはもちろんのこと、店舗取り寄せもできます。しかも送料無料。本だけでなく、CD・DVDも洋書も対応しています。電子書籍は使わない、電子書籍化されていない本がほしい時に便利です。大型店でも、レジに行ってお金を払うだけです。探す必要はありません。
【本】年森瑛『N/A』~ただありのままの自分で生きることの難しさと、悲しいまでに圧倒的なディスコミュニケーション~
1、作品の概要 『N/A』は年森瑛の中編小説。 2022年6月22日に刊行された。 『文學会』2022年5月号に掲載された。 第127回文學界新人賞受賞作品。 第167回芥川賞候補、第37回三島由紀夫賞候補。 単行本で120ページ。 他者との関係性、周囲からの安易なカテゴライズに悩みながら自己を模索する女子高校生の物語。 2、あらすじ 高校2年生の松井まどかは、出血することを嫌って食事を制限して低体重になることで、月経を止めていた。 女子高ではボーイッシュで高身長なまどかは、「松井様」と呼ばれて、同性から憧れの目で見られていた。 以前同級生の男子と交際してうまくいかなかった経験をもつまどかは、…
「普通がいちばん」が口癖の妻、公務員の真面目な夫、ごくごく普通の娘の3人家族。 平凡に暮らしていたのに...突然1週間の夫の失踪そして、夫の秘密。 妻・夫・子の3人それぞれの視点で描かれたコミックです。 著者自身の実話ではなさそうですし、設定上少し無理がある部分もあります。 が、考えさせられる部分が結構あるな...と思いました。 『わたしは家族がわからない』 感想 結論から言いますが...結果的に、この夫は妻と子供を捨てます。 描かれている部分に、妻にも子供にも特に悪い部分はありません。 夫婦が本音でぶつかりあい、もっと「普通」の生活に感謝して生活していれば...と思う方もいるかもしれませんが…