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病室の床頭台には小さいセーフティーボックスがついていた。前の記事でも書いてきたがB病院は解放病棟で、主治医の許可さえあれば自由に外出・外泊出来たので、お金も必要なので手元においておく必要がある。各自セーフティーボックスで自己管理する事になっていた。 ただ、殆ど病院から出ない患者はお金を使う機会もないので、そもそも財布自体を所持していない人もいた。 榎さんも外出をする姿を見た事がないので、お金の必要はないと思うのだが、貴重品一切をビニール袋に入れて紐をつけ、首から下げていた。財布、キャッシュカード、保険証、印鑑、クレジットカード。榎さんの全財産と思しきものが詰め込まれていた。そしてそれをいつも首…