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~ 追憶 武仲 ~ そしてその女の子は……、 懇願するような目で、あいつのことを見た。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 俺がここに住むようになって初めての、 由子さんがバイトに出かける夜のことだった。 「もしも今夜誰か女の子が来たら、すきにしていいから。 あ、でもサリが来たときだけは、掃除しろって言ってやって。 あいつは掃除が上手い」 初めて聞く名前だったけれど、誰がサリなのかはすぐに解ったので、 「了解」 と、 そう言って俺はバイトに行く由子さんを見送った。 その日の夜にサリは来ず、 他の、初めて見る女の子が来た。 「誰?由子さんは?」 と、 そう問われたので、 「今夜はバイトに行ってるんだ…
読書メーター2月のまとめ(2025)~ホラーばっかりやん…~
本日も3000を超える文字数でごめんなさい。読メの部分は覚書なので読み飛ばしていただいてOKです。 2月の読書メーター読んだ本の数:15読んだページ数:434…
~ 追憶 武仲 ~ 俺の身体をするりと避けて、黙って部屋に入って行った女の子は、 ベッドに腰掛けて本を読んで居たあいつの前へ行って、 当たり前の様に、短いスカートの裾を持ち上げた。 下着は身につけて居ない。 前来た時と、同じだ......。 小さな動きのひとつひとつや、 細かな台詞まで、 全て覚えてしまって居る、 何度も何度も見返した、大好きな映画のワンシーンみたいに感じた。 あいつはまだ、女の子が傍に来て居ることに気付いては居ない。 いや……、 気付いて居ないふりをして居るだけか?……。 女の子が、そのままの姿であいつにもう一歩近付く……。 女の子が持ち上げているスカートが、 あいつの視線の…
~ 追憶 武仲 ~ インターホンが鳴ったので見に行くと、 女の子が立って居た。 知って居る顔だった。 前にもここへ来たことが在る女の子だ。 「由子さんは?」 「今夜はバイトだよ」 と、 俺がそう答えたらその女の子は、 俺の身体をするりと避けて、 黙って部屋に入って行った。 由子さんとつきあうようになってから、 というか、 初めてこの、由子さんのタトゥースタジオ兼自宅に 連れてこられたときから、 ここが俺の住む場所になった。 由子さんが、 そうしろと言ってくれたのだ。 俺はもう、パンを盗むこともしなくて良くなった。 これも、由子さんがそうしろと言ってくれたのだ。 「対価は貰うけどな」 そう言って…
本日はこちら。試写会に行ったら呪われた。 『死写会』読みました。 死写会Amazon(アマゾン) Amazon.co.jp: 死写会 電子書籍: 五十嵐 …
~ 追憶 由子 ~ 私が喋り終える前に、 ターゲットの男は両耳を押さえて蹲り、 すぐSP達に隠されて見えなくなった。 路面に残る鮮やかな赤色だけが、 ターゲットの存在を、 忘れさせないポイントだった。 契約して居る企業から、 ある企業のトップを脅かして欲しいという依頼が入った。 方法は問わないが、 いつでもお前を消せるのだということを、 しっかりとその男の記憶に刻みつけてやって欲しいとのこと。 ターゲットの現れる場所と日時は事前に聞いて居た。 その日は大きな会合が開かれるのだという。 ターゲットが会場から出て、 車まで歩く短い時間に、 依頼内容を遂行しなければならない。 実弾を装填し、 安全装…
『或るバイトを募集しています』【読書感想】~すぐ読めるモキュホラ~
本日はこちらのモキュホラ。中高生の皆さんや、本なんか読めないよって方々におススメでーす 『或るバイトを募集しています』読みました。 或るバイトを募集していま…
~ 追憶 バーテンダー ~ 最中女がくちを開く。 「由子のヤツ……、随分…と……愉しそう…だ…ね……。 武仲君も…元気そうで……よかっ……た……...」 「前にも言ったろ? 死体が急に喋りだしたらびっくりするからやめろって……」 死体は声を出さずに笑った。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 翌日の朝学校で、 教室に入ると武仲と目が合ったのだが、 何故か武仲は、 スっと視線を逸らした……。 私は、 そのまま机に突っ伏して狸寝入りを決め込もうとした武仲の頭を掴み、 強制的に目を合わさせた。 「何故目を逸らす?」 「……な…なんていうか……、もしかしたら……、 お前が、怒ってるんじゃないかと……、思っ…
~ 追憶 バーテンダー ~ 私は、女との会話を終え、 電話を置いたところで台所へと向かった。 正直かなりお腹が空いて居たので、 冷蔵庫に何か無いか見に行こうと思ったのだ......。 果たして、冷蔵庫の扉を開けた私は 愕然として居た。 由子の冷蔵庫にはビールがパンパンに詰まって居り、 食べ物といえば 使いかけのバターしか確認出来なかったからだ……。 私がそっと冷蔵庫の扉を閉めると、 私の腹が、また グウ…、と、鳴ったがその音は、 ドアノブをガチャガチャする音にマスキングされた。 一応のぞき穴で確認してから鍵を開けると、 女はすぐ私に抱きつき、口付けて来た。 隣の部屋からは、由子のうるさい声が聞…
~ 追憶 バーテンダー ~ 途中で止まった台詞を由子が引き受ける……。 「わたしさ、今あんまりお腹空いてないからこれも食べなよ」 私も由子と同じように武仲に、 バタートーストを差し出して、軽く二回ほど頷いた。 結局食パン二斤分のバタートーストを一人でたいらげた武仲は、 とても幸せそうな顔をして居た。 この、とても幸せそうな顔をして居る少年は……、 ひとごろし なので在る......。 由子が大きなあくびをして、 おもむろに服を脱ぎだした。 今度は武仲も目を逸らさない。 由子は武仲が腰掛けて居るベッドにするりと横たわり、 「わたしちょっと仮眠とるからさぁ、あの女呼んどいてよ」 そう言って私に電話…
【2025年最新】背筋が凍るホラー小説傑作3選!今年読むべき恐怖の物語
「2025年に読むべきホラー小説を厳選!都市伝説、心霊現象、SNS怪談をテーマにした短編ホラーを紹介。背筋が凍る恐怖の物語があなたを待っている。『語りの灯火』の最新ホラー傑作をチェック!」
~ 追憶 バーテンダー ~ 図太かったり 普通だったり ピュアだったり……、 わけわかんないな、こいつ……、 と、 そう思った。 天井近くに在る、光を取り入れるための窓を見上げた先には、 雲間に見え隠れする幾つかの星が、 まるでゆっくりと 自らの力で……………… 点滅して居るかのように見えた………………。 「腹減ってんだろ?パンしか無いけど食べるか?」 「え?あ、良いんですか? はい、食べたいです。パン………、 好きです………………」 由子は全身刺青の長身で、 目付きは鋭め。 一見かなり恐い感じだが、 実はとても優しい。 それにしても武仲……。 不思議な奴だ……。 由子のヴィジュアルを見ても全…
~ 追憶 バーテンダー ~ 由子が大急ぎで表へ出て、 扉が閉まると同時に武仲がむくりと起き上がった。 長めの眠りから覚めた武仲の第一声は、 「お前、婦警さんともつきあってんの?」 だった。 「疲れたろ?シャワーでも浴びてくれば?」 ここが、まるで自分の家で在るかのように私が言うと、 武仲は、 「え?いいの?サンキュー」 そう言ってシャワールームに入っていった。 武仲は、間違いなくここが私の家だと思って居るだろう。 明らかに……、湯船に湯を張る音が聞こえてきた。 私は確か……、 「シャワーでも浴びてくれば?」 と、 そう言っただけのはずなのだか……。 しかし、 特に嫌な気はしなかった。 無駄に気…
~ 追憶 バーテンダー ~ 由子の声が あまりにも大きくなってきたので、 武仲が目を覚ますのではないかと思い、 武仲を横たえたベッドに視線を遣ると……、 片目だけ細く開いて居る武仲の視線と 私の視線がぴたりと合った……。 その瞬間 武仲の上瞼と、下瞼の距離は狭まったが、 完全に閉じることはなかった……。 武仲の疲れは、 どうやらやっと、 とれたらしかった.........。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 「あ…、いけね……」 「どうしたの?」 「一旦ブレイク。車、捨ててくるよ」 「ああ……、そうだよね」 荷物を運ぶ為に、 由子が続狩りから狩ってきたワンボックスを、 由子のタトゥースタジオ兼自…
~ 追憶 バーテンダー ~ 由子のタトゥースタジオ兼自宅に到着し、 二人で武仲を運んだ。 武仲は、まだ目を覚まさない。 武仲をベッドに寝かせたところで、 由子がいきなり私のくちを塞いできた……。 一旦くちを離させてから、 「どうしたの?」 と、 一応尋ねると、 「あんなに沢山運んでやったんだから、 今日は私の好きなようにしても良いんだろ?」 と、 由子。 私は「いいよ」と答えるしか無かった。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 由子の声が あまりにも大きくなってきたので、 武仲が目を覚ますのではないかと思い、 武仲を横たえたベッドに視線を遣ると……、 片目だけ細く開いて居る武仲の視線と 私の視線が…
~ 追憶 由子 ~ 嗚呼……、 たまらなく眠い………。 折角お昼寝をしようと思い、 ベッドに倒れ込み、 ウトウトとしかけたところで電話が鳴った……。 昨日、 偶々通りかかった交番の中に居た警察官の顔に見覚えが在った。 記憶を辿ろうと思ったが、 その前に思い出した。 バイト先の御常連さんだった。 私は、ちょっとからかってやろうと思い、 そっと交番に入って その警察官を後ろから縛り上げ、 目隠しと猿轡もした。 私の顔は見られて居ない。 警察官は、 かなり大きな恐怖を感じて居る様子で、 抵抗するそぶりも見せたが……、 私が奥の部屋へと引きずって行き、 上着をめくってから、そのミミズ腫れだらけの背中を…
『穢れた聖地巡礼について』【読書感想】~ヒトコワオカルトモキュホラ全部乗っけ盛り~
本日はこちら。『近畿地方のある場所について』で一躍メジャーになった背筋さんの新作。 『穢れた聖地巡礼について』読みました。 穢れた聖地巡礼についてAmazo…
~ 追憶 理科教師 ~ 今日は珍しく、武仲君の心が読める……。 いつも私の授業中、 武仲君の心の中は、 私とあの子が一緒に居るところを詳細に思い出すことに、 その面積の全てが使われて居た。 だからこれまで武仲君の、 それ以外の、通常の心を読むということが出来なかったのだ……。 私は他人の心を読むことが出来る。 読む、というのは文字通りのそれで、 聞こえたり感じたりするのでは無く、 本当に文字として確認出来るという意味だ。 その文字は、その人の傍に浮いた状態で、 パッと現れ、そしてまたすぐにパッと……、 消えてしまう。 それは、本当にすぐ消えてしまうものなので、 本当にその人の心が読みたい場合は…
~ 追憶 バーテンダー ~ ワンボックスの運転席で眠って居た由子を揺すり起し、 二人で院長と犬に、 「バイバイ」 と言った。 この日も院長は、 「バイバイ」 と、返してくれた。 犬は吠えずに お辞儀した。 院長の言う通り、賢い犬だと思った。 「ねえ由子、 こないだ言ってた、 院長とあの女が映ってる動画観たいよ」 「ああ、そうだった……、 すっかり忘れて居たよ、ゴメンゴメン」 まだ眠気がおさまらないらしく、あくびをしながら由子が続ける。 「そうだ……、 今夜あの女呼び出してさ、 縛り上げて身動きとれなくしてやってから、 皆で一緒に観るってのはどう?」 由子はやっと覚醒して来たらしく、 大きく目を…
~ 追憶 バーテンダー ~ ブルーシートに包まれた大きな荷物を、 二つワンボックスの後ろに積み込み終えた由子は、 「そんじゃぁ行こっか」 と言って口角を上げた……………………………………… 病院に着き、 前回同様由子が電話をかけると、 出迎えてくれたのは院長では無く……、 あのときの犬だった……。 由子は気付いて居ないらしかったが、 あのとき歯科医師のところに居た犬だ。 ワンボックスの後ろに積んできたものは、 今回も担架を使って、院長と二人で運んだ。 運びながら犬のことを尋ねると、 「急に飼い主が居なくなったあの子が不憫に思えてね」 「本当は?」 「以前から狙ってたんだよ」 院長は声を出して笑…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「由子ありがとう」 「べつにたいしたことじゃ無い」 由子に電話して、事情を説明しようとしたら、 「行けば良いんだろ?」 と言って、すぐに来てくれた。 まるで私からの電話を、 すぐ近くで待ってくれて居たかのような迅速さだった。 今回由子が乗ってきた車は、前回とは違う車種だったが、 同じくワンボックスで、 もちろん族狩りから狩ってきたものに違いなかった。 先に高校生らしき男達七体を積み込み、 眠って居る武仲をその上に置いた。 あの後武仲はぐっすりと眠ってしまい、 その後どれだけ揺すっても起きないのだ。 由子が電話をかけだした。 相手はもちろん、あの病院の院長だ。 私は電…
~ 追憶 武仲 ~ 小さくなっていく父親の後ろ姿を見ながら俺は、 もう帰って来るな。 車に轢かれて死んでくれ。 お願いだから……。 と、そう思った。 冷蔵庫の扉を開けられないように、 父親が貼ったらしいガムテープを剥がした。 絶対にそうだと思っては居たけれど、 俺は確かめずに居られなかったのだ……。 ゆっくりと扉を開けた。 目に飛び込んできたのは、 手首から腕の付け根まで、 隙間無く無数に刻まれた刃物の痕だった……。 殆どが古傷で、 その傷跡は少し盛り上がって居る。 新しい傷跡も在る。 新しい傷痕は赤い色で、 そしてそれはまだ盛り上がって居ない……。 見慣れた傷跡だったけれど、 一応裏返してみ…
1月の読書メーター読んだ本の数:16読んだページ数:4071ナイス数:1722(ありがとうございます)姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫)の感想遺品整理に1…
~ 追憶 武仲 ~ 父親も母親も、薬の量が日に日に増えて居るのは、二人の様子で解った。 連日寝ないで騒がしくして居たり、 暑くも無いのに汗だくだったり、 突然大きな声を出したり。 物を壊したりすることもあった……。 兎に角明らかに……、 二人は異常だった……。 この頃の俺は、 言われなくても自主的に外へ出るようになって居り、 他の学校の奴に喧嘩を売ったり、 盗んだお菓子を食べたりして過ごして居た。 暗くなると家に帰って、 冷蔵庫を開ければ、まだ何かしら食べるものは入って居た。 無いときも在ったけど、 大抵パンくらいは在った。 だけどだんだんと、 何も入って居ない日が多くなり、 遂には冷蔵庫を開…
~ 追憶 武仲 ~ 俺の父親は、 まるでサッカーボールでも蹴るみたいに、 その金色の頭を、何度も何度も蹴った……。 金色が赤色に変って、 俺の父親の足にすがりついて泣き叫ぶ六年生を見たとき、 俺は父親のことを、 心底カッコイイと思った。 その後も俺は、 父親が暴力を振るう姿を何度も見た。 何か問題が起きたとき、 暴力で簡単に解決してしまう父親を見て、 自分もこうなりたい。 父親のようにカッコよくなりたい。 と、そう思うようになった。 この頃の父親は、本当に、本当に、 俺の憧れだった……。 それから二年間ぐらいまで、俺の家族は幸せだった。 俺が小三になって暫くした頃、突然母親が、 父親と別れたの…
本日はこちら。正真正銘ホラー、そしてミステリ。 『さかさ星』読みました。 さかさ星 (角川書店単行本)Amazon(アマゾン) 出典:https://…
~ 追憶 バーテンダー ~ 私は一か八か正面から真っ直ぐ歩いて行くことにした…………………… その代わり……… 心を無にして……… 完全に気配を消して行く……………………………… 完全に気配を消し去れば たとえ正面から行ったとしても………… おそらく奴らには気付かれずに近付くことが出来………… 独りずつ順番に片付けることも可能なはずだ…………………………… 私はアイスピックの柄を左手の平に当て ニードル部を人差し指と中指の間から出すように持ち替えた…………………… これはあのとき、芳田達を片付けた後に思いついた持ち方で ニードルこそ一本だけしか出て居ないが イメージ的にはベアクローのつもりだっ…
『楽園の真下』【読書感想】~カマキリパニック小説、虫嫌いは忌避せよ~
本日はこちら。南の離島で何かが起きる!ドキドキハラハラムシムシ! 『楽園の真下』読みました。 楽園の真下 (文春文庫)Amazon(アマゾン) Amazo…
~ 追憶 バーテンダー ~ 武仲がいくら喧嘩慣れして居たとしても…… 太刀打ち出来る相手じゃ無い……………… 今の武仲は…… 明らかに危機的状況にある………………………… と、そう思った…………………… しかし………… ここで私は例外も在るのだということを思い出した…………………… 武仲が………… アッチ系の趣味を持って居ると仮定した場合……………… 今この状況は武仲にとって 非常に好ましいもので在る可能性も在るのだ………………………… こんなときあの女が居てくれれば すぐに武仲の真意を知ることが出来るのだが…………………… 武仲の肝臓を蹴った男が 今度は武仲の上腕を掴み 無理矢理立ち上がらせ…
姉飼 (遠藤徹 著) 第10回日本ホラー小説大賞受賞作にして、限りなく異次元的にして異形の作品です。 紹介する身として、こんなこと言うのもなんですが 心にフィルターをかけて読むことをお勧めしますし
~ 追憶 バーテンダー ~ 私は女と目を合わせ……… 心の中で、『武仲の心を読んで』と、そう言った………………… 何故か…… 女は少し…… 表情を曇らせた………………………… 「武仲君…… 私達のこと…見てたみたい……………」 「あ…… うん……知ってる…………… そう言ってた………」 「さっきの授業中…… あの子の心を読もうとしたんだけど……… あのときの……私達のこと……………… 鮮明に思い出してる最中で…………………… ……………… だから………………… 無理だった……………………………」 「………………」 その日の放課後は理科室に行かず…… 私は武仲の後をつけてみることにした………………
~ 追憶 バーテンダー ~ 私は女と目を合わせ……… 心の中で、『武仲の心を読んで』と、そう言った………………… 何故か…… 女は少し…… 表情を曇らせた………………………… 「武仲君…… 私達のこと…見てたみたい……………」 「あ…… うん……知ってる…………… そう言ってた………」 「さっきの授業中…… あの子の心を読もうとしたんだけど……… あのときの……私達のこと……………… 鮮明に思い出してる最中で…………………… ……………… だから………………… 無理だった……………………………」 「………………」 その日の放課後は理科室に行かず…… 私は武仲の後をつけてみることにした………………
本日はこちら。むっちゃすぐ読めちゃう。またもやカクヨム出身だよ。日本のホラー界はカクヨムに席巻されちゃうの~?」 『おごさま』読みました。 おごさま (角…
~ 追憶 バーテンダー ~ あれから、武仲とは...... 目が合えば言葉を交わすようになった。 話しの内容はたわいもない、 特段話さなくてもいいようなものだったが、 元々武仲のことを悪くは思って居なかった私は、 気分を害することもなく、 極々普通に、極々自然に話して居た。 ただ……、 武仲はあの女子生徒のことを好いて居たので、 時々その女子生徒の話をする……。 今彼女は何処に居るのだろう? 何をして居るのだろう? 本当に美術教師とかけおちしたのだろうか?……。 もちろん私は、 武仲が抱いて居る疑問、 その全ての答えを知って居る。 知って居るが言えるわけは無い……。 武仲の目を見る。 さすがに…
~ 追憶 バーテンダー ~ 女の部屋で本を読んで居た。 由子が女を診察して居る間、 いつからか私は、本を読みながら待つのが常となって居た。 女が料理をして居るところなど見たことは無いが、 女の部屋には料理の本が沢山在った。 日本料理の本は一冊も無く、 ヨーロッパ系の料理本が多い。 本に載って居る写真は、どれも美しく、 シンプルな料理にも芸術性が感じられ、 私はいつも飽きずにページをめくることが出来た。 中でも、特に私が興味を惹かれたのがイタリア料理の本で、 写真の美しさだけで無く、 料理の製法やそのあらましまで、 本の内容全てに心惹かれた。 イタリア料理はシンプルなものが多く、 私にもつくるこ…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「けっこう痛いだろ」 由子がそう言うので、 「思ってたよりはね」 と、そう答えた。 あの日由子にインレーをはめ直してもらった後、 私もその蛇が欲しいのだと、 由子に伝えたのだ。 「いいけどプールとかどうすんの?海水浴とか銭湯にも行けなくなるよ?」 「泳ぐの下手だから大丈夫」 由子はわざとらしく眉間に皺を寄せてから、パッとその表情をやわらげ、 「泳ぐの下手なのに銭湯なんか行ったら恥ずかしいもんな」 と、言った。 お互いにツッコミは入れず、 笑い合うことでそれとした。 軀の何処へ入れるのか、どんなデザインにするのか、 これから一生付き合っていくことになるのだからと、 細…
~ 追憶 バーテンダー ~ 友達にも色々な形が在るのだな。 と、そう思った夜だった。 翌日は、私も普段通りに登校した。 由子は登校前に帰してやった。 「帰してやるんだから、そのお礼に今夜も来てよ?」 由子を帰してやるとき、女はそう言って居た。 普通に考えれば来るわけが無いのだが、 由子はきっと今夜も来てくれるのだろうな……。 と、 私がそう思ったとき、由子は普通に、 「OK」 と、 答えて居た。 一日サボっただけなのに、何だか久し振りに登校して居る気がして居た。 教室に入ると、今までとは明らかに雰囲気が違った。 今までとは比べものにならない静かさだ。 しかしそれは当たり前のことだ。 四十人弱の…
~ 追憶 バーテンダー ~ 患部を消毒しながら由子が言う……… 「お前の男に殺されかけたんですけど」 「イテテテ……」 消毒液が滲みたのだろう…… そう言いながら笑う女…… 縫合後 丁度二十四時間が経過して居た……… そのとき私は くちを開けて洗面所の鏡で左下の奥歯を見て居た…… 綺麗にはまって居る…… 噛み合わせも完璧だ……… 「由子ありがと」 私はそう言って由子を見たのだが 由子は女の患部を写真に収めることに相当集中して居るらしく 私の声など全く聞こえて居ない様子だった……………………………… ガトーショコラを買ったのは 単に私の好みだったからなのだが……. 由子は…… 「ちゃんとあの女の…
本日はこちら。アンソロです。最恐と言いつつ、コワクナーイ! 堕ちる 最恐の書き下ろしアンソロジー (角川ホラー文庫)Amazon(アマゾン) Amazon…
~ 追憶 バーテンダー ~ 久し振りにぐっすりと眠った私は………… どれだけ動いても………… 全く疲れる気がしなかった…………………… ・・・・・・・・・・・・・・・ そろそろ飽きて来たな…………… そう思ったときだった……… 暫くの間 全く聞こえて居なかった由子の 声が………… 言葉が………… 私の耳に 微かに届いたような気がした……………… 「おね…がい……もう…やめ……ゆる……し…………」 結局 由子が何を言って居るのか…… 何を言おうとして居るのか……… 私には解らなかったが…………………… ふと自分の口内が気になり舌で左下奥歯の表面を撫でたとき 由子にインレーをはめ直してもらうのだっ…
12月の読書メーター読んだ本の数:12読んだページ数:3816ナイス数:1363(ありがとうございます)入居条件:隣に住んでる友人と必ず仲良くしてくださいの感…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「んーんー んーんー」 由子はずっと声にならない声を…… 「んーんー んーんー」 言葉にならない言葉を…………………… 「んーんー んーんー」 出し続けて居た…………………………… ・・・・・・・・・・・・・・・ 由子のベッドに寝転がり 天井を見て居た……… 今度は あの女子生徒のことを思い出して居た………… さっきから由子が苦しそうにして居る…… あの女子生徒は とてもおとなしかった…… 由子はおとなしくない女なのだ…………… 由子の後頭部できつく縛った結び目を 解いてやった……… 「おま…え……殺…す気……かよ……………」 久し振りに聞いた由子の声色…… 昨日の…
マダムの『この本を読め』2024版~超おススメなので読んで、お願い~
2024ももう終わり。 毎日毎日ホラーとミステリと金の事しか考えていない(時々希死念慮)このアタイが選んだ今年の本。 行くよ! ドラララララララララムロ…
『わたしと一緒にくらしましょう』【読書感想】~中高生でもOKなホラー~
お久しぶりの読書レビュー。本日はこちら、カクヨム出身尾八原シュージさんのホラー。 『わたしと一緒にくらしましょう』読みました。 わたしと一緒にくらしましょ…
~ 追憶 バーテンダー ~ 顔に感じる日差しで目が覚めた…… 隣を見ると… いつもと違う女が居た……… 私がベッドで目覚めるのは かなり久し振りのことだった……… いつも私の傍に居るあの女は眠らない……… だから私も眠らない……… 眠らないのだから目が覚めるということが起こらない……… 昨夜私は…… 久し振りに眠ったらしい………… いつもと違うこの女は…… 普通に眠ることの出来る女らしい………… 確か昨日…… そうだ…… 由子の声がうるさかったからだった………… 声を出せないように…… 手ぬぐいを噛ませて後頭部できつく縛ったのは…………… 由子が勝手に動くのがうっとうしかったからだ……… 手足…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「え?何のこと?」 と 由子は本当に 私が何のことを言って居るのかわかって居ないようだったので 少し笑った…………… 由子が私の上着を脱がせてシャツの裾を掴み…… 「手ぇ上げな」 と言った………………… 排水溝に流れていく赤いお湯が…… だんだんとピンク色に変わり…… 透明に近付いて行く…… 初めてあの女のアパートに入った夜のことを思い出したが あの女と比べて 由子の洗い方はかなり優しかった……… 170㎝以上在る長身と 全身に施された刺青からは……… 想像難しい程の優しさだった…………………… 先に湯船に入れられて 続いて由子が入ってきた……… 「狭いから かなり…
~ 追憶 バーテンダー ~ 軽自動車の助手席から 隣で運転中の由子に言う…… 「あのワンボックス 由子さんのじゃなかったんだね」 数分前 二台の車が火柱を上げて居た……… 「アイツらさぁ… 大人のくせして暴走族襲撃しまくっててさぁ…… 単車とか女とか狩りまくってたんだよ…… 族狩りってやつさ…… だから私は族狩り狩りのガリガリ君なんだ………」 あのときワンボックスに摘んであったものの数が 二体増えていたように思ったのは 私の数え間違いでは無かったということが解り 少しスッキリした……… 中学生七体 歯科医師一体 族狩り二体 計算が十往復にピタリと合った……… 「ガリガリ君……」 由子が進行方向…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「お前の女……… かなり無茶苦茶されてるから笑うよ?」 と 由子が言い終えたときだった…… 私達が乗って居るワンボックスの右車線に すっと現れた車のドアウインドウが下がり そこから手が伸びて来たのだが… 対向車のヘッドライトに照らされたその手には ピストルが握られて居るのがわかった… 由子はそのとき こちらを見て居たので そのことに全く気付いては居ない…… 私は咄嗟にサイドブレーキを引いた 質量保存の法則で 由子の首が前方へ傾く 運転席側のドアウインドウに小さな風穴を開けた銃弾は 由子の前髪をかすめて助手席側のドアウインドウを粉々にした… 由子が私の頭を自分の腿に押…
~ 追憶 バーテンダー ~ 大きな総合病院の駐車場から由子が電話をかけると すぐに男が一人来た…… 「今日は多いですね……」 と 男…… 続けて 「あ……志乃原先生………」 医者の世界は意外と狭いらしく 近隣の医師は大抵顔見知りなのだという……… 何故か男は笑って居た……… 私は男に 「マジックボックスって こんなに沢山入るの?」 と 訊いた…… 「ああ……大丈夫だよ…… 薬品を使って殆ど溶かしてしまうから……」 由子が車を移動させて そこから男と私で 担架を使って八往復…… の はずだったが………… 何故か十往復したように思った…… 私の数え間違いだろうか?…………… 運んで居る間に男は あ…
~ 追憶 バーテンダー ~ 目隠しと首輪をはずしてやると…… 犬はよたよたと扉に向かい 立ち止まってから振り返った…… どうやらついてこいと言って居るらしかった…………………… 「こんなに要らないよ?」 犬が『α QUIN』と表示されたチューブを 二十本くらい差し出して来たので 私がそう言うと…… 「もう必要ないので」 初めて聞いた犬の声は 意外なほどに艶やかで色気があり 私はそれを美しいと感じた……………… 先程までの間 私はこの犬を まともに見る気すらなかったので 気付かなかったのだが…… よく見ると顔立ちも整って居る……… 痣だらけだが肌も白い…… いかり肩ではないけれど…… 今度は気を…