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SS250425休載のお知らせ:ショートショート『たこ焼き』
『たこ焼き』ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。学者がたこ焼き屋でたこ焼きを注文した。店主が言うには「最近タコの仕入れ値が上がってね。商売あがったりだよ」すると学者が「ああ、だったらタコの足を増やせばいいじゃないですか。私は遺伝子学者ですから簡単です」と答えた。おしまい...
ドキュメンタリー番組の最後は、「とは」に対する答えで締めくくるのがお約束というものだ。だが超一流の投打二刀流日本人メジャーリーガーが登場したこの日の『激熱大陸』は、惜しげもなくその質問から幕を開けたのだった。「あなたにとって、〈野球〉とはなんですか?」 「えっ、いきなりですか……まあ、なんというか、う~ん……〈人生〉、ですかね」 「では、〈人生〉とはなんですか?」 「まあ、そうなるとやっぱり、〈野球〉ってことになりますね」 「では、あなたにとって〈野球〉とは?」 「ああ、まあそうなっちゃいますよね。じゃあもっと具体的に答えたほうがいいんですかね。えーっと、じゃあ〈仕事〉ってことで」 「では、あ…
SS250418休載のお知らせ:ショートショート『ドケチな小説家』
『ドケチな小説家』ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。ドケチな小説家がいた。彼は売れる前には都内の出版社のある近くの安アパートに住んでいた。その時に書いた『安住まいケチケチ日記』がヒットしたのでこんな物価の高い都心には住んでいられないと首都近郊のとある県の県営団地に引っ越した。その時に書いた『程よいケチのあり方』がまたまたヒットし...
その朝、私は学校へは行かなかった。だがそれは、私が学生ではないからではなかった。だからといって会社へ行ったわけでもない。 もちろんそれは、その日出かけなかったという意味でもなかった。とはいえ私は海にも行かなかったし、スキー場にも行かなかった。それは季節がそれぞれふさわしくなかったから、というわけではないし、私は水泳部でもスキー部でもなかった。 だからといって私は、恋人と二人で野球場へ行ったりもしなかった。朝からやっているとしたらプロ野球ということはなく、高校野球や草野球、少年野球ということになるが、私は野球部員ではないし、もちろん監督でもない。そもそも野球をする趣味はないし、子供が少年野球チー…
最近、いろんな方の所に飛び、投稿サイト攻略に向け勉強をしているのですが、 短いストーリーほど難しいと悟りました。 長編は形が決まっているので、ある程度は風呂敷を広げて書きはじめていいけれど、ショートの場合、いきなり結末に向けて走らなければならず、これが私には困難。というか、どう編集していいのかわからない(;^_^A でも、ここをクリアできれば、たとえ長編を書いて投稿しても、次々とページを捲ってもらえるのだろうと考え、なんとかスキルを身につけようとしています(^^) 近所で金ちゃんラーメン見つけた。 あいかわらずコショウの味しかしない(笑) www.alphapolis.co.jp mad.hp…
「ようこそ、ポリクルベリーの町へ!」 初めて足を踏み入れた町で最初にそう話しかけてきたのは、トレンチコートの襟を立てたいかにも怪しげな男であった。その言葉とは裏腹に、笑顔など微塵もない。それどころか男は眉間に深い皺を寄せ、警察手帳らしきものをつきつけながらそう言ってきたのであった。 そうなると旅人でありひとりの冒険者であるわたしも、いったんは立ち止まらざるを得ない。まずは軽く会釈を返し、男からの質問を待った。もちろん悪事を働いた憶えはないが、だからこそ訊かれたことには正直に答える必要がある。近ごろこの町で、なにか事件でもあったのだろうか。 しかし待てど暮らせど、男から続く質問が来ることはなかっ…
SS250411休載のお知らせ:ショートショート『戦う方法』
『戦う方法』ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。暗黒の宇宙帝国軍が地球に攻めて来た。今まで国ごと、地域ごとに争っていた世界中の人々が一致団結してこの軍隊をいかに追い出すか話し合ったがどうも名案が浮かばない。地球一の名将も軍事力の差を訴え無理だと言った。地球一の名外交官も圧倒的な力の前には交渉の余地は無いと匙を投げた。地球一の名政治...
新米刑事の未村が、コンビニであんパンと牛乳を買ってパトカーへと駆け戻ってきた。しかしそのタイミングは、実に間が抜けていた。それらは彼が影響を受けたテレビドラマによれば、あくまでも張り込み中における定番の食事ということになっている。しかしこのときすでに張り込みは終わっており、容疑者はすでに逮捕されたあとであった。 それでも初めての張り込みの記念にと、その最中には叶えられなかった念願を、遅ればせながら叶えておこうということらしかった。しかしいざ相棒の待つ車に戻ってみると、パトカーの後部座席のドアが全開になっていた。その奥ではベテラン刑事の津森が、座ったまま器用に折りたたんだ新聞を読んでいる。「津森…
SS250404休載のお知らせ:ショートショート『トップシークレット』
『トップシークレット』ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。米国大統領が神様に頼みごとをした。米国大統領:「神様、どうか日本人がアメリカ車を買うようにして下さい」神様:「まず右ハンドル車を造もごもご」日本国首相:(神様の口を手で覆って)「それはトップシークレットです」おしまい...
ショートショート集 第5話「縁側のおばあちゃん」を公開しました
ショートショート集を更新しました。 前回の更新から約1週間ぶりの更新になってしまいました(汗) 第5話「縁側のおばあちゃん」 引っ越ししてきたばかりの土地で、出会ったおばあさんとの不思議なお話。 今までにはない感じの、ちょっと不思議なストーリーになりました。 隙間時間にでも読んでいただけたらと思います。 カクヨム↓ kakuyomu.jp pixiv↓ www.pixiv.net ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち ランキング参加中小説家
SS250328休載のお知らせ:ショートショート『大変!!』
『大変!!』ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。アナウンサー:「今、米や野菜に加えガソリン代に電気代諸々の物価が上がっているのに給料が追いついていません」視聴者:「大変!!テレビのプラグをコンセントからを抜かなくちゃ!!」おしまい...
短篇小説「風が吹けば桶屋が儲かるチャレンジ route 2」
(※これはどうすれば風が吹くだけで桶屋が儲かるかという、その道筋を考えるためだけに書かれた実験小説の第二弾である) 一陣の風が、吹いた。 山から降りてきたその風はアスファルトの上を滑り、大量のスギ花粉を運んだ。その花粉をめいっぱい吸い込んだ通学中の小学生男子が、ひとつくしゃみをした。くしゃみをした勢いですでにぐらぐらになっていた少年の乳歯が抜けて、口の外へと飛び出していった。気づいた母親が、すぐにそれを拾って塀の向こうの屋根の上に投げた。なんかそうしたほうが良いという話を聞いたことがあったからだが、何がなぜどう良いのかは知らないままに。 だが母親の投げた乳歯は、もちろん屋根の高さにまでは届かな…
ショートショート集 第4話「いつもと違う散歩道」を公開しました
ショートショート集を更新しました。 不定期更新気味ですが、あまり間を開けずに更新できたらなぁと思います。 のんびりと隙間時間にでもご覧ください♪ カクヨム↓ kakuyomu.jp pixiv↓ www.pixiv.net ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち ランキング参加中小説家
いつのまにやら本数が増えすぎて自分でも把握できなくなってきたので、とりあえずリストを作ってみました。上のほうが新しく、下にいくほど古いものになります。電子書籍にしか掲載していないものもありますが、そちらも一番下のリンクから無料でダウンロードできるので、この機会にぜひ。短篇小説「み覚」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「モチベーター」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「オーバーツーリスト」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「シゴデキな男」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「あの店は子沢山」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「浮きっ歯」 - 泣きながら一気に…
SS250321休載のお知らせ:ショートショート『それを笑うと・・・』
『それを笑うと・・・』ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。タイのとある日本料理店で。日本人がたくさんのパクチーを一口で食べてむせた。それを笑ったアメリカ人は山盛りのワサビをヒョイと口に入れた。おしまい...
カクヨムオンリーで掲載していた、掌編小説「1杯のコーヒー」の続編を書きました。 カクヨムオンリーを外してpixivの方でも公開しました。 続きを書くつもりがなかったので完結済にしておりましたが(カクヨムの方)話は同じところに追加しました。 以前よりも文字数も多く3000文字ちょっとのボリューム。1話は1000文字もないくらい短いものだったんですが。 2話目追加してひとまず完結済にしてあります。 pixivの方も2話で完結済にしてあります。 続きを書くつもりが今のところありませんが、書いたら続きの話として同じことろにお話を追加していこうかなとか思います。今のところはないかも? のんびりと隙間時間…
季節の変わり目。身を切る寒さが緩み始め、次第に暖かさが混じり始める時期。日中の暖かさと、夜の冷え込みが両極端な二面性を出している、そんな季節。僕はいつものようにコタツに寝転んで、何をやるでもなくスマホを眺めていた。無為に過ぎていく日々の内に、冬が去り、春が訪れ、夏が来る。季節は変わり、四季は移ろうというのに、僕の生活は変わらない。1日の大半をスマホを眺めて過ごし、時折、居眠りをして、夜が来て眠りに...
3/12、光文社文庫より、赤川次郎さんの『あざやかな結末』が発売されました。1作品約3分で読み終わるショートショート集。切れ味鋭い"あざやかな結末"が待ち受けています。
前回描いたエリザの背後でモブと化していた富士見さんとお姉さん。今回改めて、2人の方をメインに描いてみました。なおお姉さんの方は実に14年ぶりの登場です。富士見柚子さんのお姉さん、富士見橘子さんはアイドルをしている。富士見さんの前髪を上げてちょっと背伸びすればお姉さんっぽく見えなくないこともないくらいには外見は似ているのだが、中身は全く別物である。富士見さんは大人しくて目立つのが嫌いだが、お姉さんは180...
『サケ』ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。北海道の酒店に強盗が入った。強盗は金を要求した後喉が渇き「酒を出せ」と言った。店員は、酒のつまみの凍ったサケ=ルイベを一尾出してきてにやりと笑い、強盗を撃退した。おしまい...
卒業試験のため、篤人は音大の図書館にある楽譜倉庫の扉を開けた。 ひんやりとした冷気が身体中に襲いかかってくる。 まるで冷凍庫のような寒さからは、この部屋で何年も眠り続ける音符たちの「奏でてほしい」という、悲痛な叫びを感じる。 奥の棚の上段に、お目当ての楽譜はあった。 やや背伸びをして引っ張り出すと、埃の煙の中から、一枚の楽譜が舞い降りてきた。 題名はなく、数十小節ほどの音符が手書きで丁寧に書かれていた。 何の曲だろう… 篤人は鼻歌でそのメロディを口ずさむ。 …初めて聴く曲だ。 誰かのオリジナルかもしれないと思いながら裏面を見ると、右下にコメントが書かれていた。 -香奈、今までた
ふと外の様子を眺めると、空は夕焼けに染まり始めていた。 静かに流れるショパンのピアノを聴きながら、昌和はヴァイオリンのチューニングをする。 毎日この時間になると客は来なくなるので、閉店の準備もしながら、昌和は並んでいる楽器たちとの時間を過ごしている。 「もう今日はお客さん来ないんじゃない?コーヒーでも飲む?」 レジの裏にある事務室から、大学生の娘の彩花が顔を出す。今日はアルバイトが休みらしく、早めに帰ってきてくつろいでいたようだ。夕方にコーヒーなんて飲んだら、夜眠れなくなってしまうだろう。 「お父さんって、いつも音楽のことばかり考えているよね。すごいわ。」 小さな楽器屋の娘ではあるが、
「ホットコーヒーお願いします。」 はい、と一言つぶやき、マスターはコーヒーを淹れ始める。 土曜の午後は、このカフェのカウンターで過ごすというのが、圭吾にとっての個人的なルーティンだ。 平日は営業で取引先をまわったり、提案の資料を作成したりと、ほとんど仕事に費やされている圭吾にとって、土曜の朝に家の掃除を片付け、近所にあるこのカフェで午後をゆっくり過ごすのが、至福のひとときだ。 14時になると、カウンターの隣の席に、美咲という同い年くらいの女性が座り、彼女もホットコーヒーを注文する。 マスター曰く、月に2回ほど土曜のこの時間に訪れるらしい。つまり彼女にとってみれば、来れば必ず圭吾がい
「じゃあ行ってくるね。私はミーティングで夜遅くなると思うけど、ママは多分18時までには帰って来るから。パパはどうだろ?ま、ごゆるりと〜」 絵美は手を振りながら家を出た。ご丁寧に、俺がいるのに鍵まで締めて。 俺は暇でも、周りは仕事なんだよなあと、涼は寝転がったまま白い天井を見上げて考える。 システム開発会社に勤務している涼は、担当していたプロジェクトが一段落したものの、スムーズにすぐに次のプロジェクトというわけにはいかなかった。 もちろん、来月1日からは、製造業のお客様のシステム開発プロジェクトに関わることが決定している。 しかし、31日まで担当するはずだったプロジェクトを、一週間早く
ショートショート集を更新しました。 プロフィールにメインブログのリンクを貼りつけました。 メインブログのプロフィールにも、このブログのリンクを貼りつけました。 行き来できるようにリンク貼り付けてみましたよ。 今日は3話目。猫は出てこない。 普通の日常の一部を切り取って書いてみたお話です。 カクヨム↓ kakuyomu.jp pixiv↓ www.pixiv.net 昨日の記事↓ こちらもどうぞよろしくです!↓↓↓ tsukishiro-08.hateblo.jp 関連記事↓ tsukishiro-08.hateblo.jp tsukishiro-08.hateblo.jp ランキング参加中言葉…
SS250307休載のお知らせ:ショートショート『バナナの都市伝説』
ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。『バナナの都市伝説』オレ、Aは夜道をBと歩いていた。その時Bが、ふと、「なぁ、A。お前『バナナの都市伝説』って知っているか」「いや、初耳だ」「そうか。こういう夜道でな。バナナの皮が落ちているんだ」「バナナの皮?そう言えば、あまりバナナの皮って落ちてないよな」「そうなんだがな。都市伝説によると、夜道で...
SS250228休載のお知らせ:ショートショート『そうだった!!』
ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。『そうだった!!』未だ大地はどこまでも平らで天が動いているという天動説が信じられているある場所ある時代にて。「なぁ、知っているか。最近大地が丸くて動いているという地動説というのが流行っているらしい」「ああ、聞いたことがあるな。大地が丸かったら滑って落ちてしまうよな」「そうだよなぁ。あいつらおかし...
ショートショート集 第2話「ブロック塀とぶち猫」を公開しました
ショートショート集を更新しました。 ショートショート2作目です。 カクヨム↓ kakuyomu.jp pixiv↓ www.pixiv.net ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち ランキング参加中小説家
ショートショート集 第1話「丁字路と三毛猫」を公開しました。
ショートストーリーが読めるショートショート集を作りました。 気まぐれな人間たちのショートストーリー 更新は不定期です(多分) カクヨム↓ kakuyomu.jp pixiv↓ www.pixiv.net ランキング参加中言葉を紡ぐ人たち ランキング参加中小説家
SS250221休載のお知らせ:ショートショート『ココハドコ?』
ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。『ココハドコ?』ここはどこだ?俺は気づいたら果てしなく続く砂漠の中にいた。俺は砂丘の半ばにいるのだろうか。斜めになったその場所には俺一人。上を見上げればジリジリ照り付ける太陽が。取り敢えずここを出よう。俺は気を取り直して上に向って歩き続ける。しかし、砂に足を取られて上へ進めない。それでも俺は必死...
SS250214休載のお知らせ:ショートショート『ハッピーバレンタイン』
ご来訪ありがとうございます。事情により当分の間休載させていただきます。またどうぞ宜しくお願いいたします。『ハッピーバレンタイン』僕は長い長い階段を上っている。階段はチョコレートでできていて鏡のようにツルツルしていた。だから僕は慎重に上っている。階段はどこまでも続いていて果てしなく、月へと届くよう。それでも僕は足を運ぶ。どれ位時間が経っただろう。やっと頂上にたどり着くとそこには彼女がいた。僕は彼女に...
作中(双月千年世界)でわりと戦闘描写がある天狐ちゃんですが、それらしいポーズを取らせたイラスト描いてないことに気付きました。なので今回は、戦う天狐ちゃん。先日、ミリ友の虎海さんから「CQC(近接戦闘技術)を学んでみたいのですけれどお詳しい方をご存知ないかしら」と相談されたパラ。とりあえず彼女の知り合いで最も戦闘能力が高い天狐ちゃんを、虎海さんのお屋敷に連れてきた。パラ「いかがでしょうか」連れてこられ...
冬のある日の夕方。夜に向かって時間と共に寒さが強くなっていく、その始まりの時間帯で、昼と夜を隔てる昼の残滓のような終わりの時間帯。気だるい疲れを全身に宿し、日が落ち切るまでのこの僅かな間を僕はこれと言ってすることもなく持て余していた。日没まで後1時間はあるだろう。その1時間をどう過ごすか、ソファに腰掛けてぼーっと何を観るでもなく眺めながら思案というほどでもないが、ぼんやりと思っていた。ソファの右手に...
1人、野原に立つ。結局、僕だけが生き残った。この広大な世界にただ僕1人だけが生き残った。文明の音が消えて10年は経つ。僕もだいぶ歳をとった。冬に入ってから雪が降り続いている。もうずっとだ。静かだ。誰も居ない世界が、より一層静まり返っている。静かな野原に1人立ち、僕は積もっていく雪をいつまでも眺めていた。...
2025年年賀イラスト、場所クイズの答え合わせ。撮影地から帰ってきたねこ車掌と、近所のスポーツ系女子高生たち。今年は京阪電鉄出町柳駅に出張したねこ車掌。早朝の仕事だったことに加え、出町柳駅は京都の結構北の方にある。すっかり体が冷え切ってしまい、何か談を取れるものはないかと街をさまよっていた。と、通りの向こうからいかにもあったかそうな娘が2人、走ってやって来る。「ふー……ちょっと休憩休憩」「オッケー」旅岡...
寒い。とても寒い。身体の芯から熱を奪っていく厚い冷気の膜に埋もれて、シオリは身体を小さく振るわせてちーんと身を縮ませた。コタツの電源をオンにして肩までコタツに入り込むと、身じろぎもせずに固まっている。じんわりと温かくなってきた。優しい温かさに徐々に気分が和んでくる。コタツに潜ったまま寝転んでスマホをやっていると、バッテリーが20%を切ったという通知がスマホの画面に表示された。しぶしぶコタツから這い出...
赤いのれんのかかった中華料理屋の前にランドローバーが止まった・・・・ 私は時々、無性に中華が食べたくなる。高級中国料理ではなく、いわゆる中華料理だ。 中国料理…
1週間後の夜に2回目のテストを実施した。三日月が綺麗な夜だった。プログラムの一部を修正して仮想環境で入念にシミュレーションを行った。そのなかで幾つかのバグを潰し、システムがより安定するようにパラメータの微調整を行った。また太陽フレアの影響を抑えるため、電磁干渉を抑制するシールドケーブルに変えて、またその長さも極力短いものに変更した。ドッグに腰掛け停止しているデボラC84は、地下室の白色灯に照らされて、...
清々しい晴天の冬の空には、小さく太陽が顔を出し雲が早く流れていた。2025年1月2日のこの日も僕はいつものように地下室に篭り作業をしていた。正月もお盆もなくいつものルーティンをこなす。決まったことを決まった時間いつものように行う。決して例外は作らない。ストイックなのではなく、ただ日常を壊したくないだけだ。いつもと同じように地下室でデボラC84を組み立てていた。デボラC84は人工知能を搭載する予定の自律型ロボッ...
底冷えする深夜、ベランダで僕はカンナと2人で星空を見上げていた。凍てつく寒さに頬が痛いし、手袋をした指がかじかむ。南の空にオリオン座が輝いていた。星空を見上げて、身を寄せ合い、白い息で会話し合う。まるで寒さを忘れてお菓子の家を頬張るヘンデルとグレーテルみたいに、僕らは星空を眺めながら夢中で会話をする。「みて。リゲルの東の小さな星がよく見えるね。」「カイバルンだね、そうだね。よく見えるね。オリオン座...
粘土にナイフを突き立てた。ケーキにロウソクを立てる様に、つるんとナイフは粘土に入っていく。僅かな抵抗もない感触が心地いい。その感触を楽しみながら小分けパックのお豆腐大に四角く粘土を切り取ると、切り取った粘土を、形を変えやすいように丸くしていく。四つほど丸くしたところで一列に並べると、端の方に串を入れて四つを串刺しにした。四つの丸い塊が一本の串で串刺しになっている、それの塊の端から出ている串を掴むと...
クリスマスイラスト。サンタ天狐ちゃんと旅岡さん。天狐ちゃんは「魔法使い」である。魔法使いなので道具なしで服を作れたり、服の色を変えたりは朝飯前にできる。と言うような話をシュウとしていたら、「じゃ赤と白のツートンのお洋服作れます?」と聞かれた。できるかどうかと聞かれて「できない」と答えるような天狐ちゃんではない。即座にその場でポンと出してみせたところ、シュウは調子に乗った。「んー……もうちょいモコモコ...
炬燵で寝そべってスマホをしていた。誰も観ていないテレビではディズニーのアラジンをやっている。物語は佳境なのか切迫した声が聞こえてくる。アラジンの危機迫った金切り声をBGMに、僕はというとマネーフォワードで今月の収支を見返しては、ため息混じりの繰り言を呟いている。「マジか、そう来ますか?」そう繰り返すたびにこの現実から目を逸らしたい気分に襲われる。目前の危機にじんわりと汗をかいている。きっとこの窮地を...
ショートショート「聖なる夜~サンタはお母さん?~」を公開しました
今日はショートショートを公開しました。 昔書いたものを加筆修正して公開しました。 たまたまですが、クリスマスをテーマにしていたため、pixivブックサンタ2024にも参加しておきました。ブックサンタ2024参加作品2本目です。 カクヨム↓ kakuyomu.jp なんでかTwitterだと上記のように↑表示されないんですよね。 いつもは大丈夫なのになぜなんだろう? pixiv↓ www.pixiv.net
ベッドに寝転びながらハイサイドライトから溢れる陽光をぼんやり眺めていた。溢れた陽光は反対側の壁に四角形の陽だまりを作っていて、まるで何も記録されていないテープを純白のスクリーンに映写機で再生しているように見えた。室内を満たす優しい光のなか、その光の塊を眺めながら、僕はこの先のことを考えていた。不安定な未来のこと。不確かな将来のこと。目標はなくただこうやって惰性で生きる日々。そんな日々の積み重ねの先...
「わかりみが深いわね」 辛子が頷きながらそう言うと、甘彦は小さく首をひねりながら、 「でもおかしみはないよね」と言った。 それはけっして楽しい話題ではなかったが、そんな中にも常におかしみを求めるのが甘彦だった。昼飯時のファミレスは混雑していて、なかなか注文の品は届かない。「でもおかしみが入ると、わかりみが減るじゃない」 辛子はおかしみとわかりみは、相反する要素だと思っている。 「いやおかしみが入ったほうが、わかりみもさらに増すはずだよ」 やはり二人は価値観が合わないのかもしれない。 「まあそう言われてみると、それはそれでわかりみが深いかも」 辛子には意外と謙虚なところがあった。あるいはそれが自…