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ss220527 絶体絶命!!7 :「い、いやぁあぁああああああああ」この悲鳴は女魔法使い。「うぎゃぁあああああ、なんでなんだよぉなんでこんな大型モンスターがいるんだよぉ」これはうるさい若いシーフの絶叫。俺達パーティーは絶体絶命のピンチにある。今からさかのぼること数時間前。とある町の冒険者ギルドの壁に貼ってあった依頼を受けて現地へ行った。依頼の内容は、『滞在している軍船の弾薬箱を聖教会へ運び込むこと』だ...
窓のない観覧車に、髭のない少年が乗っていた。窓のない観覧車は不粋だが、髭のない少年は不粋とは言えないだろう。少年にこの先、髭が生えてくるかどうかはわからない。 もちろん高所からの絶景など、望むべくもない。だがどれだけ待っても観覧車に窓がつかないのは、まず間違いのないところだった。足し算から掛け算の時代を経て、いまや何ごとにつけ引き算の求められている世の中だ。そんなご時世、なにかしらオプションが増えるというのはあり得ない選択肢というほかない。 それは観覧車というよりは、荷物を載せて運ぶコンテナというほうがふさわしかった。それに乗って観覧できるものといえば、ただ錆の浮いたコンテナの無愛想な内壁だけ…
いつも当ブログをご覧いただきありがとうございます。この度、アマチュア短編小説賞を創設することとなりました。全国の短編小説、ショートショート作家様にご参加いただければ幸いです。詳細については下記のとおりです。【参加資格】 アマチュア小説家の方(出版社等から
前話はこちらーーー 私は村山さんと二人で夜道を歩いていた。今日は会社の忘年会があり、その帰り道だった。お互いいつもと違う雰囲気を感じているのか、口数は少ない。 信号待ちで止まったとき、私と彼の手が触れた。彼も気づいているはず、だが、お互い手を離そうとはし
「失礼しま~す!」 今日も失礼くんが、元気よく知らない店に入りこんでゆく。本日の訪問先はパン屋だ。しかし失礼くんは特にパンを食べたいわけでも、誰かにおつかいを頼まれているわけでもない。ただ純粋に、失礼したい一心でそう言っているのだ。「ほら僕って、朝はごはん派じゃないですかぁ」 入口付近にあるトレイとトングを手にした失礼くんは、トングを無理やり箸のように握ってそう言った。店内には他に客も店員もいるが、特に誰に向けて言っているわけでもない。みな知らんぷりを決め込んでいる。もちろん彼にわざわざ朝食の好みを訊いた者など、誰もいなかった。「だけど最初にこのトレイとトングを手に持ってしまったからには、もう…
突然私の前に現れた梅は、幽霊だった。代わり映えのしなかった日常が、彼女との出会いで大きく変わっていく。ーーー「ねー、部屋もっと掃除しなよ」 私は桃。なんの取り柄もない、アラサーのOL。いつもと変わらない、職場と自宅を往復するつまらない日常、それを変えてくれ
ss220520 絶体絶命!!6 :「い、いやぁあぁああああああああ」この悲鳴は女魔法使い。「うぎゃぁあああああ、なんでなんだよぉなんでこんな大型モンスターがいるんだよぉ」これはうるさい若いシーフの絶叫。俺達パーティーは絶体絶命のピンチにある。今からさかのぼること数時間前。とある町の冒険者ギルドの壁に貼ってあった依頼を受けて現地へ行った。依頼の内容は、この町の水源に凶悪なモンスター”ウズミラー”が現れそれを...
深夜、突然声が聞こえた。声の主はなんと、熊のぬいぐるみ。その一言から始まる、優しく心暖まる物語。ーーー「負けないで~」 その声が聞こえたのは午前二時。仕事から帰ってやっとの思いで化粧を落とし、床に座り込んだときだった。 どこから聞こえただろう。かなり若い
前話はこちらーーー それからというもの、クマさんは度々私に話しかけてきた。月に一回ほど、話すのは決まって私が落ち込んだときや、困ったときだ。 転職活動が上手くいかず、沈んだ気持ちでご飯を食べていると、「美味しいね」と言ってくれた。一人じゃないんだと言って
人類滅亡の危機を救うために、橘が考えた方法は「恐竜の復活」だった。立ち上がった二人の男たちが迎える結末とは…ーーー 人類は進化し、繁栄を続けてきた。その進化の最終到達点は滅亡なのだろうか。 世界中で少子高齢化が騒がれ始めてからずいぶん経ち、世界の人口はそ
どうやらわたしは公園のベンチで、サングラスを掛けたまま眠り込んでいたらしい。おかげで昼か夜か、起きてすぐにはわからなかった。サングラスを外すと、これまでに見たことのないような、色とりどりの世界が目の前に広がった。色とりどりにもほどがあった。それはつまり自動的に、夜ではないということになる。 正面にフーリッシュグリーンの芝生が広がり、それを囲い込むように配置されたオールドスクールレッドのベンチの脇には、ミートボールブラウンの土に満たされた花壇が並んでいる。 花壇のそこここには、アコースティックブルーやオルタナティヴイエローやジューシーオレンジに彩られた花が咲き乱れ、その傘の下をデスパレートブラッ…
ss220513 絶体絶命!!5 :「い、いやぁあぁああああああああ」この悲鳴は女魔法使い。「うぎゃぁあああああ、なんでなんだよぉなんでこんな大型モンスターがいるんだよぉ」これはうるさい若いシーフの絶叫。俺達パーティーは絶体絶命のピンチにある。今からさかのぼること数時間前。俺達パーティーは、辺鄙な田舎の村で村おこしのため温泉堀をするので念のため警護をすることを依頼された。「まぁ、ここら辺はモンスターはでな...
七転び八起き最後には起き上がりたい 日々「何か」と格闘してる営業ウーマン 華 のブログです♡フォローをして下さっている皆さま♡ よく、誤字脱字などを修正し…
ss220506 絶体絶命!!4 :「い、いやぁあぁああああああああ」この悲鳴は女魔法使い。「うぎゃぁあああああ、なんでなんだよぉどうしてこうなるんだよぉ」これはうるさい若いシーフの絶叫。俺達パーティーは絶体絶命のピンチにある。さかのぼること数時間前。俺達はいつものように冒険者ギルドへ寄って本日の獲物を換金しにきた。「よぉ、お前ら。今から時間があったら銀行に行って現金を運ぶガードマンやらねぇか」と受付のマス...
ss220429 絶体絶命!!3 :「い、いやぁあぁああああああああ」この悲鳴は女魔法使い。「うぎゃぁあああああ、なんでこんなところにフラワーポイズンの蕾があるんだよぉっ」これはうるさい若いシーフの絶叫。俺達パーティーは絶体絶命のピンチにある。この森の近くの町で薬草採集の依頼を受けただけなのに、森に入ってすぐに、蕾の時は栄養にするために動物を食して動き回るフラワーポイズンに出くわしたからだ。ああ、ちなみに...
ss220422 この告白は・・・(エピソード4) :「・・・さん、夢子さん起きてください」満開の桜の花が風に吹かれてひらひらと舞い落ちるころ。私はいつの間にか桜の木の下で眠っていたみたい。目を開けるとそこには一人の学生服を着た青年が立っていた。見慣れない制服。私は慌てて起き上がり、洋服に散らばっていた桜の花びらを手ではらった。「あの、私に何の御用でしょうか」私は恐る恐る青年に尋ねる。そう、私はこの青年に見...
【読み逃し厳禁】星新一の傑作は長編にあり!隠れた名作たちのすすめ
星新一と言えばショートショート。 ・・・・・・という印象を持っている方が多いと思います。 ショートショートの神様とも言われる星新一ですから、それも当然です。 しかし、星新一の長編作品を読み忘れていませんか? なにもショートショートだけを執筆していたわけではありません。 作品数は多くないですが、長編もしています。 そしてショートショート作家としてあまりに有名となってしまったが為、長編作品の存在が忘れがちと...
ss220415この告白は・・・(エピソード3) :柳良(なぎら)さん、好きですっ僕と付き合ってください」学校の桜の木の下で一年下の男子に呼び戻されたらいきなりのこの告白。私はひらひらと舞い落ちる花びらを一枚つかまえてためつすがめつ眺めた後、「今日はエイプリールフールだわ」と断言した。すると年下君は慌てて「確かにそうですけれど僕の気持ちは本当です。桜の花のように儚くなくて若葉のように芽生えていますっ」「そう...
今朝はあやうく寝坊するところだったが、スマホのアラームがちゃんと鳴ってくれたお蔭で予定どおり起きることができた。スマホには感謝しかない。 それ以前にベッドがあるお蔭で、僕は寝坊するほどに眠ることができている。ベッドにも感謝しかない。 もちろん寝るために必要なのはベッドだけじゃなかった。枕にも布団にも感謝しかない。シーツはもうところどころ破れかけてはいるけれど、破れないように頑張ってくれているのがわかるから、結局のところ感謝しかない。 羽毛布団からは頻繁に羽が飛び出してくるが感謝しかない。おかげで当初のふわふわ感はどこへやら、すっかりせんべい布団になってはいるが、それが布団である以上は感謝しかな…
ss220408 この告白は・・・(エピソード2) :四月も入学式が終わり、桜の木も若葉がほとんどになるころ。窓を開け放した私の机の上にひとひらの桜の花びらが舞い降りてきた。「好きです」頭の中でその一言が思い返される。そう言われたのはやはり桜の木の下で。満開の桜の下でそう言われた。「ごめんなさい」私はそう断った。だってその日は四月一日。エイプリールフールだ。彼はアッという言葉を発してしどろもどろに言い訳をして...
ヒロシが玄関ドアに手をかけたとき、夕飯の献立がわかった。「ただいま。外までカレーのいい香りがしてたよ。」「おかえりなさい。もうすぐできるからちょっと待ってて。」ヒロシは帰ってきてから、まず真っ先に靴下を脱いだ。それから部屋着に着替え、テレビ
土曜日の朝。目覚まし時計を1音目で止め、坂本は布団から出た。時計の針は5時00分を指している。顔を洗い、インスタントコーヒーを淹れ、読みかけの本「起業入門」を開く。6時ちょうどに本を閉じ、スポーツウェアに着替え、家を出る。そして、ビジネス系
ss220401 この告白は・・・(エピソード1) :「ごめんなさい」僕は今日4月1日に桜の木の下で宮路さんに告白をし、見事に玉砕した。「あのう、今後の参考までにどうして駄目なのか教えてくれないかな」(↓分岐します)---------------------------------------⇒すると宮路さんはちょっと眉根を寄せて・・・⇒すると宮路さんは腕を組んで胸をそらして・・・----------------------------------------・すると宮路さんはちょっと眉根...
先週まで寒くて震えていたかと思えば急に暖かくなり、それが3日、4日と続くともう冬物の出番は無さそうかな、と安心し、コートをクリーニングに出したりセーターを押し入れの奥にしまい込んだりとひと頑張りし、新しい季節の到来を心待ちにしていたら、今日はなんだか妙に寒い。とても耐えられなくなり、慌ててしまい込んだセーターを引っ張り出す。季節のはざまは、いつも用意と片付けの見極めが難しい。先週、紙袋いっぱいに冬物...
SS220325絶体絶命!!2 :「い、いやぁあぁああああああああ」この悲鳴は女魔法使い。「うぎゃぁあああああ、なんでラスボスの魔王がこんなところにいるんだよぉっ」これはうるさい若いシーフの絶叫。そして俺は剣士。「知るか、私の根城に勝手に入ってきてバッタバッタと部下を倒しおって。おかげで今日から吾は快適な暮らしを破壊される羽目になった」魔王は静かに言ったが、背後にゴゴゴゴゴゴと怒りの音がする。「そこな冒険...
シュウ「現在黄輪さんは追い込みにかかってます」エリザ「なんや? ゲームの話か?」シュウ「違くて……。いや、違くもないんですけど。今ですね、『緑綺星』第2部を書きながら『はじまるA列車で行こう』のシナリオ書きながらその制作動画作りながら『マザー2』の実況動画作ってる状況です」エリザ「ながら作業しすぎや。ホンマに一つに絞れへん人やね」シュウ「でも何とか今月中に『琥珀暁』は完成しそうって言ってました。コレは...
ss220318焼きそばパン型多目的ジェンガ:昼。ここはとある学校の校舎の屋上。俺は早々に昼飯を食べ本を読もうと独りを楽しむはずだった。「ねぇねぇ委員長」俺を呼びかける声を発したのは、同じクラスの同級生だった。普段であれば読書の邪魔と適当な相槌をうつだけの関係なのだが、こいつは気にもせず、大好きな焼きそばパンをもぐもぐと食べながら話しかけてくる。「ちょっと黙ってくれ」俺は床にチョークで陣形を書き、桜の花弁...
ショートショートマルシェ-田丸雅智著-感想-意外な組み合せが楽しい小説
精巧に出来た小さな小説群。テーマはマルシェとあり、さしずめショートストーリーの「市場」でしょうか。食べ物が出てくるお話が多いので、派手さはないけれども生活感があります。すぐに物語に溶け込むことが出来ました。ショートショートなので隙間時間に読めます。面白い物語を読んだ後に不思議な謎も残りました。最近の作品も読みたいです。
母は今日も静かに寝っている。何も無い、真っ白な部屋の中央に、母が立ったまま、浮いている。素肌に薄いベールの様なものを、纏った母は、今日も相変わらず綺麗だ。浮いている母に手を翳すと、タッチパネルが現れ、西暦2030年12月24日という文字が表示される。日付の下に表れた、十字矢印の左をタッチする。瞬間、海中に部屋中がダイブすると、目の前をシロナガスクジラが、ゆき過ぎる。母は今、海の夢を見ているらしい。母が冷凍保存されてから20年。僕はもう、母をお母さんと呼ぶには、年を取りすぎていた。そして。僕は先程、父を殺してきた。殺す?というよりは、壊してきた、という方が正解なのだが。父は医者だった。そんな父は、母を冷凍保存してからすぐに、母と共に生き返る為、脳だけを人工知能、いわゆるAIに移植して、体を廃棄していた。父を破壊す...『AI(愛)』
カランカランカラン。木製の扉を開けて、店内へ入る。コツコツコツとヒールの音をさせながら、一枚板のカウンター席に、まるで当然の如く、スッと座る。程なくマスターが正面に現れる。「いらっしゃいませ。」「いつものを。」と言葉少なめに注文する。週末のバーは、程よく人が入っている。午後六時、待ち人はまだ来ていない。コトッと小さな音がして、カウンターにボトルが置かれる。目の前に置かれたそれは、溶けだしたような赤いキャップがついた、独特な、少々ずんぐりむっくりとしたデザインの瓶だった。メーカーズマーク。ケンタッキー原産のバーボンウイスキー。それからマスターは、アイスピックを起用に使い、氷を丸く削っていく。暫くの間、カツカツカツという、小気味良い音だけが、耳を打つ。綺麗に丸くなった氷を、江戸硝子のロックグラスに入れる。そして瓶を...『ボビー・コールドウェルを聴きながら』
今週はイラストを描いてみました。今回はコピックマーカーを使い手書きでキャラクターを描き、スキャナーで取り込んだ後、背景などをデジタル加工で追加処理しました。今後も昔の手法やら、新しい技術などを試行錯誤しながらイラストを追加していきたいと思います。イラストを描いてみました。
先日、「アルファポリス」のサイトに登録しました。このサイトでは、オリジナルの小説・漫画・絵本などを自由に投稿できます。全話無料の公式漫画も多数!Webコンテンツ大賞も多数開かれています。現在、「ホラー・ミステリー小説大賞」開催中!※私も参加しますので応援よろしくお願いします。アルファポリスに登録しました。
いま、そこにいるあなた、誰かのために生きてください。誰かのために生きるという事は、あなたがちゃんと生きているという事。ちゃんと生きるという事は、あなたが自分の行動に責任を持つという事。そう。それは、ある日突然やって来て、私たちの日常を壊し始めました。それを、恐れる人と、そうでない人。そして、今まさにそれと戦っている人。もちろん。一人きりでは戦えないから、多くの人々の力をもらって、戦っているはずです。ただ、忘れてはいけない事が一つ。その多くの人々の後ろには、私たちと同じく、家族がいて、友人がいて。それらすべてをなげうって、私たちの未来のために尽くしてくれているという事。人種や性別、地位や名誉、裕福だったり、そうでなかったり。そんなものは、おかまいなしに、それは襲い来るのです。誰でも、他人事ではないと思います。今、...『誰かのために』
歌う事が大好きな少女と少年がいました。少女の名はヒロミ。少年の名はタツヤ。メロディーラインを歌うヒロミに、ハモったり、ユニゾンで歌ったりするタツヤ。そんな2人の歌声はとても美しく、聴く者は皆幸せな気持ちになりました。始めは友人達だけだった観客も、1人増え2人増えと、歌うたびに増えてゆきました。それを見ていた大人達は、「コンサートをしないか?」と、ヒロミとタツヤに持ち掛けます。そう、お金儲けが出来ると思ったのです。けれど純粋な2人は、その事に気付きません。歌を歌えるという嬉しさだけで、2人はその話を快諾します。小さなハコから始まり、次に屋根にタマネギがついたホールへ。そして野球が出来るくらいの巨大なホールへと、着実にステップアップしてゆきました。気が付くとヒロミもタツヤも大人になっていました。それでも、2人の人気...『歌うたい』
小鈴「アンタ撮影順調なの?」シュウ「最近ペース上がってきてますよー。『上手いこと行けば来月にも公開できるんじゃないか』ですって」ランニャ「ほんとかな~それ」小鈴「いつものコトよね」シュウ「そー言えばコスズさんも撮影、順調ですかー?」小鈴「ソレ、アンタが聞く?」シュウ「あの動画もあの動画もなかなか進みが遅いですからねー。……だからこそ今回、こーして1年ぶりに考察やるぞーってなったワケなんですけどね」ラ...
SS220304絶体絶命!!「い、いやぁあぁああああああああ」この悲鳴は女魔法使い。「うぎゃぁあああああ、あんな罠があるなんてぇえ」これはうるさい若いシーフの絶叫。そして俺は剣士。そう、今俺達は絶賛塔から落下中。塔の最上階でトラップが発動し、外へ放り出されたという訳だ。幸な事にかなり高さのある塔の上だったので落下中とはいえ、絶叫できるだけの余裕がある。「%$#`*+しかりてエアーバック発動!!」おんな魔法使いが...
物理学者であったネヌ博士はある日、神の光と同じものを人工で造る事が出来るのではないかと考えてみた。特殊な光の電磁波装置を開発して自分にその電磁波をあてれば光の存在になれるかも知れな...
SS 220225 白紙18春。既に大地は深き眠りを脱し馥郁(ふくいく)たる新たな命の息吹が小さな声をあげ始める時となる。しかるに吾輩の机には牝牛が静かに垂らす乳で覆われたような原稿用紙が鎮座している。「あなた、即身仏にでもなるのですか」そう言って、愚妻がお茶と饅頭を机の脇に置く。吾輩はその饅頭を一口食べて「何故、吾輩が即身仏にならねばならぬのか」と、問えば「だってさっきから微動だに一つしないんですもの。て...
SS220218焼きそばパンとバレンタインその後昼。ここはとある学校の校舎の屋上。俺は早々に昼飯を食べ本を読もうと独りを楽しむはずだった。「ねぇねぇ委員長」俺を呼びかける声を発したのは、同じクラスの同級生だった。普段であれば読書の邪魔と適当な相槌をうつだけの関係なのだが、こいつは気にもせず、大好きな焼きそばパンをもぐもぐと食べながら話しかけてくる。が、今回はちょっと違った。俺は、紙袋を差し出し、「お前、...
SS220211焼きそばパンとサイコロ昼。ここはとある学校の校舎の屋上。俺は早々に昼飯を食べ本を読もうと独りを楽しむはずだった。「ねぇねぇ委員長」俺を呼びかける声を発したのは、同じクラスの同級生だった。俺は読書に集中するべくスルーする。すると奴は俺の側に来て、「ねぇねぇ委員長!!」と耳元で大きな声で叫んだのだ。・・・耳がキーンとする。「耳元ででかい声を出すんじゃない」俺は同級生の両方をつねりながらそう応...
今回も「阪神電鉄 甲子園駅」でひと仕事終え、旅岡さんのいる学校に戻ってきたねこ車掌。いつもの寝床である高等部の中庭で丸くなっていたところ、突然ひょいと抱き上げられてしまった。「あら、簡単に捕まえられましたわね」お騒がせお嬢様、虎海さんである。しかし、……と言うかやはりと言うか、お嬢様はいささかガサツであられるため、ぬいぐるみを狙うUFOキャッチャーのごとく、ねこ車掌をかなりぞんざいにつかんでしまった。...
ss220114俺と隣の吸血鬼さんとショーテンジャー「なぁ、吸血鬼さんお願いがあるんだけど」オレはコタツの上の鍋をつつきながら向かい側でホットワインを味わっている吸血鬼さんにそう言った。そう、吸血鬼さん。ひょんな事から知り合った俺達は、俺が彼に食事提供(献血)をする代わりに家事一切を引き受けてもらっている。しかも、彼は食事(献血)をすると目からルビーがでて、その分け前の半分を俺にくれる太っ腹だ。しかも闇夜...
ss220121白紙17今日は大寒の日。二十四季節で寒さが最も厳しくなる日。吾輩の書斎はストーブの赤々と燃え寒くはない。だが、海氷の上を歩いていた白クマが北極星を見上げながらそのたくましい四つ足に白い景色を踏みしめているが如く我が机の上の原稿を見るとそれは一滴の染みもない白い世界が広がっている。そう、白紙の原稿の束が吾輩の筆を待っているのだ。コンコン。ドアをノックする音がして、吾輩の返答も待たずに愚妻が...
ss220128ビターなナイフを持つ彼女5:一月。学校が始まる。そして授業を終え生徒等は帰る。部活も終わり教室は本当に静かになった。人の息も去っていき教室は自然な静けさと冷たさに支配される。その教室にいるのは僕と彼女。僕と彼女の間には距離がある。僕にとってそれが心地いい訳ではない。それ以上踏み込めないのだ。僕は。彼女は窓際の席に座って待っている。太陽がその明るさで全てを隠してしまっていたのを月が捌きの光を...
220204 虹色の雨雨上がりのある日。私はふと空の上を見た。そこには、半円の虹の根本に白い白い綿菓子のような雲があった。そんな虹がたくさんたくさん空の上にあった。私は目をこすった。だけど明らかに青い青い空に虹がたくさんあった。「あ、チロがいる!」突然の声に驚いて、声のする方に振り向いた。それは小さな男の子の声でお母さんも空を見上げながら「そうね、チロがいるわね」と言った。私も大急ぎで空を見た。(ミーヤ...
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