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「あぁぁ、あ!もっとぉ…!ひびきさ、もっと、」 もっともっとと強請る陽詩の声はとろけるような艶を帯び、後孔の内壁は激しくうねって収縮し響生を貪ろうとする。こたえるように蠢くなかを穿たれ、シンクについた陽詩の手がぶるぶる震え、水滴をなすった。いいところをさんざんこすられて、性器はみなぎって先端から粘液をあふれさせている。 響生の手が腰から腹にまわり、胸へとのばされる。触れられもしないでぎゅっと凝って...
響生と恋人同士になってから、2週間がまたたくまにすぎた。恋人というものができるのがはじめての陽詩には世間一般そういうものなのか、それとも自分たちが特殊なのかはわからなかったけれど、ひまさえあれば会って、会えばセックスした。試験期間あけだったので、大学生の陽詩は実技の授業がない日はそれほど忙しくもなかったし、響生の仕事も閑散期らしい。唇や触れてくる指、なかを穿つ性器まで、余すところなく記憶してしま...
もったりと生ぬるい湯に浸かっているような意識のなかで玄関のドアがひらいて、閉まる音を聞く。あ、響生さん帰っちゃうんだ。起きなきゃ、声をかけなきゃ、と思う頭はまくらに糊付けされたかのように動かない。あれ、おかしいな、でも響生さんが帰るんだったら声をかけたい。ぽこりぽこりと浮かんでは流れる思考は端からふわっとはじける。はじけた先にはやわらかいいとおしさがあって、陽詩は口もとだけで微笑んだ。 ……響生さ...
はぁはぁと息をついていた響生が、陽詩を見下ろす。そっと目が細められ、優しい手が髪を撫ぜる。ちがうの試してみよっか、と邪気なく言われたとき、陽詩はだから、よもやまだ性交がつづくのだとは思わなかったのだが。髪に触れていた手が背中にまわり、ぐるっと体勢を変えられた。陽詩が響生のうえになる。挿入の角度が変わり、あたらしい性感の息吹に陽詩はうんと背をしならせた。「や、や……きもちいぃの、もう、こわい…」「怖...
響生がいる浴室から、水の粒が床を叩く音がする。先にシャワーをすませた陽詩はパックごはんを温めてレトルトカレーの封を切った。こんなことなら、ちゃんと自炊をしておけばよかった。後悔は先に立たずで、響生が髪をぬぐいながら脱衣所から出てきたときに陽詩に準備できたのは、オールレトルトの夕飯だった。それでも響生は「いーにおい」とうれしそうにわらう。「おなか減ったね」 陽詩が食卓について響生にも向かいに座るよ...
血相を変えて駆け込んできた2人の部下にぞんざいに押しのけられたハインリヒは、「自分は彼らの上司のはずなのだが」と肩を竦めた。だが、咎める気にならないのは、彼らとは単純な主従関係で結ばれているわけではないからで。何よりも、普段は己の影に徹している彼らのなりふり構わない様子はそれだけ心を動かされたということで。かつての彼らを知っているからこそ、その変化が微笑ましくも見える。口先だけの心配でも気遣いでも...
空に近い場所。そんな言葉がふと思い浮かんだ。市内の数ある高層ビルの中でも群を抜いて存在感を放つマンションの最上階。そこはワンフロアすべてが居住空間として設計されている。ゆとりをたっぷりと持たせた贅沢な居室はしかし、徹底的に無駄を排したシンプルなもので。機能美を追求した直線的なラインが品格を際立たせ、計算され尽くした美意識が随所に光っている。もはやこの場所はただの住まいではなく、選ばれた者だけが手に...
仕事に使用しているメールアドレスは名刺にも記載されており、知ろうと思えば誰でも手に入れられる情報で。プライベートのものと使い分けていたとしても個人情報であることに変わりはなく、それが悪用される懸念点がある以上、公開しないことが最善だろう。しかし、アトリエや事務所を構えていない以上、それはどうしても必要になる。SNSのプラットフォームを活用すればダイレクトメッセージで交流することもでき、Webサイトに問い...
バーデン=ヴュルテンベルク州に位置する歴史的な町、ジンデルフィング。その名前が登場する最も古い文書は神聖ローマ皇帝が記したもので、ミュンヘンが歴史的に記録された年の83年前の1075年のこと。ミュンヘンからは車でおよそ2時間弱の場所にあり、アルプスから吹き降ろす清かな風が丘陵地帯を越えたその先にあるこの町を包む。交易路の一部としても栄えたこの町は、巡礼者や商人たちが行き交う場所でもあった。その名残りは今...
最初のメールは、ごくごく普通のファンレターだった。作品に対する称賛とデザイナーとしての在り方に対する好意の言葉が並んでいた。その中に違和感はなく、活動を認められることは嬉しいなと純粋な気持ちで読んでいた。次に届いたメールも、その次に届いたメールも似たような文面で。どこそこで展示されたあの作品のあの部分が、使われたあの生地が、選んだあの材質が、とメール毎に違う作品を褒めちぎるもので。熱心に見てくれて...