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月夜の猫-BL小説です 上弦の月3 BL小説 「はじめまして。こんな美人にお目にかかれるとはラッキーだな。ひょっとして、工藤とは?」 荒木と紹介された検事は低い深みのある声で言葉を促した。 「ええ、昔ね。ワンクールで振ってやったけど。今はフリー」 「おや、奇遇ですね。実は私もつい最近フリーに。バツイチですが
月夜の猫-BL小説です 上弦の月2 BL小説 ひとみは笑いながら、下柳の背中をバシと叩く。 「バッカ言え! 俺はただ名前が名前だし………おい、……までってことは、つまり……」 確かに千雪の美貌にあてられた感もないではない下柳はがらにもなくうろたえた。 世間で知られている推理作家小林千雪のぬーぼーとしたダサ
月夜の猫-BL小説です 上弦の月1 BL小説 西麻布にある『庭』は表側から見ると無愛想なコンクリートの壁だが、数段の階段を降り、黒塗りのドアを開けると、一階は緑鮮やかなパティオを囲む吹き抜けのレストラン、地下にシックな大人の隠れ家的バーがある。 「いたいた、ヤギちゃん」 聞き覚えのある通りのいい声に、カ
月夜の猫-BL小説です 上弦の月(工藤×良太19) BL小説 そろそろ桜も終わりに近づいた頃、アスカがお花見をやろうと言い出した。それも会社の裏庭でだ。というのも、会社のビルが建った頃から平造が丹精した桜の木が育って、なかなかの花を咲かせているのだ。良太もこれなら人混みの中に出かけなくても充分花を堪能できると思いつつ
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき20(ラスト) BL小説 「起きろ! 良太!」 耳元で怒鳴られて、良太はようやくからだを起こした。 「れ、ライオンのお手……」 「何を寝ぼけてるんだ」 見回すと自分のベッドの上で、傍らに立つ工藤は、とっくにスーツで決めて仕事モードに入っている。 「ちぇ、何だ、夢か……」 「とっとと
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき19 BL小説 寒っ! 肩にひんやりとした風を感じて、良太は目を覚ました。 「あれ…」 ベッドの中だ。 そういえば確か工藤が酔っ払って帰ってきて、じゅうたんの上に倒れ込んで…… 俺も寝ちゃったのか。 「……ああ、そうしてくれ。相田、カミさん一人で大丈夫か? 小田が今朝
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき18 BL小説 部屋のドアを開けた途端、二匹の猫たちがわらわらと良太目掛けて飛んでくる。 「遅くなったねー、ごめんよー」 足にまとわりつく猫たちに触れると、こわばっていた身体の力が抜ける。 二匹とも待ってましたとばかりにご飯を平らげてしまう。 その食べっぷりはいつみて
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき17 BL小説 オフィスのドアを開けると、よう、と下柳が手を上げた。 「えらい目にあったって? 有吉のヤツに聞いたよ」 「ヤギさん。お疲れ様です」 思いがけない下柳の顔に、良太はちょっと息を抜いた。 「どうしたんだ? まだ何かあったか?」 下柳に無愛想に言うと、工藤はコ
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき16 BL小説 「ちょっとそこで待ってろ」 返ってきたのは有無を言わせぬという感じの工藤の命令だった。 「でも、俺、早いとこ帰っていろいろやることが……」 「待ってろと言ってる!」 良太を振り返りもせず、工藤は強い口調で言い放つ。 これは相当怒ってるぞ、と良太は思う。
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき15 BL小説 一旦地下に降り、長い通路を抜けると先に事務所のドアがあり、その向こうに地上へ出る階段があった。 「お疲れ様です。こちらです」 階段の中ほどで中井が呼んだ。 地上に出ると、日が落ち始めた小さな庭の木陰から白のレクサスの後ろが見えた。 「良太、もう帰っていい
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき14 BL小説 そんな芽久と工藤を見て、良太としては面白くないのは山々だが、芽久の怯えようはただならぬものがあり、岸の脅しにかなり参っているのだろうと見てみぬ振りをすることにした。 芽久が落ち着くまでと、工藤、良太とマネージャーの中井の四人は控え室にいた。 誰もほとんど
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください40(ラスト) BL小説 高橋に触られた時は怖気が走るほど嫌だったのに、七海の指が少し触れるだけで志央の肌は反応し、発熱した。 「ごめん、ほんともう、とまんねーっ…」 結局のところでかい男に合体されて尚、若い情の迸りは留まることを知らず、大きな波にさらわれるように志央
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき13 BL小説 下柳と葛西の熱弁に、たまに口を挟む工藤とほんのたまーにボソッと的を得た言葉を口にするのが有吉だ。 もともと彫りの深い顔立ちは日焼けて無精ひげも手伝い、日本人と言われなければわからない。 精悍な鋭い目つきはそれだけで何者かと周りのものを振り返らせる。 そ
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください39 BL小説 ボロボロボロ、と志央の目から熱いものが溢れ出て落ちた。 「俺なんか、見るのも嫌なんだろ?」 もう一度、あの笑顔を取り戻せたらよかったのに。 「行けよ! 行っちまえ! バカやろ…」 顔を涙でぐしゃぐしゃにして、志央は精一杯の虚勢を張る。 すっと、そ
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき12 BL小説 『花の終わり』がクランクアップし、ホテル赤坂で制作発表が行われる当日も、どんよりと雲の多い空が東京の街を見下ろしていた。 良太が控え室を訪ねると、山之辺芽久がいつにも増して不機嫌だった。 というより、何かを気にして心ここにあらずという感じである。 彼女の
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき10 BL小説 想像をたくましくして、電話の相手が先日芽久が口走った賢次郎という人物であり、おそらくいつぞやの夜、工藤を訪ねてきた男ではないかと良太は考えた。 「十分渡したって、何、金……? 工藤、…脅されてるわけ?」 おそらく直接問いただしたところで口を割るような男では
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください37 BL小説 ニヤニヤ笑いながらその男は志央の目の前にナイフをちらつかせた。 「わざと俺を挑発したのはきみだろ? さんざん俺の邪魔してくれてさぁ」 志央がきっと睨みつけるとさらに男は口をゆがめて笑う。 「近藤が俺にたてついて、もうイヤだなんて言い始めてさ。屋上であい
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき9 BL小説 良太がついぼそりとそんなことを口にすると、すっかり出来上がった下柳が笑った。 「そりゃ、良太ちゃんがかわいいから、ついからかいたくなるんだろ」 「何ゆってんですか、こっちは真剣に…」 いずれにしても、スタッフの中で有吉とうまくやっていけるかどうか、ちょっと自
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください36 BL小説 階段を駆け下りる途中、また幸也のポケットで携帯がなる。 『本校舎探してますがいません。そっちは?』 勝浩だ。 「いない。あとは体育館か、ホールの屋根とか…」 その頃東棟を飛び出し、グラウンドから校舎を見回し、本校舎の時計塔に目をやった七海は動きを止
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください35 BL小説 やがて終業のチャイムが鳴り、六時間目の英語が終わると、志央はぐんとのびをした。 「志央、生徒会室、行くか?」 教室を覗いて幸也が呼んだ。 「あ、俺、今日日直。日誌出してくるから先行っててくれ」 「わかった」 日誌を書き終え、担任に提出して職員室を出た
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき7 BL小説 お願いしてやってもらうような代物ではないのだ。 未だに坂口なんかまでが良太に役者をやらないかなどと言っていたが、良太ならやらせればそこそこやっただろうことは、工藤にはよくわかっている。 さらにこのぽっとでの役者の下手糞さを見せられた日には、坂口でなくとも良
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください34 BL小説 松永はとっくに帰り、生徒会室には勝浩とぼんやりたたずむばかりの七海と二人だけだ。 「帰る? 七海」 「あ、ああ」 七海は力なく返事を返す。 勝浩は七海を促して生徒会室を出ると、鍵をかけ、顧問に鍵を返すために職員室に向かった。 「七海はまだあの人のこと
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき6 BL小説 ANAの最終便は札幌には何とか着いたものの、すぐに吹雪になった。 「まったく、三月だぞ! 気象庁は何してるんだ!」 ついこの間もイラつきながらこの空港を歩いた記憶までが蘇えり、この際、工藤もどうしようもないことだとわかってはいても、どこかに怒りをぶつけたくも
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください33 BL小説 様々な問題を抱えたまま、二日後、陵雲学園では次期生徒会役員選挙が行われた。 もともと今期生徒会に置いても、華やかな会長と副会長の傍らで際立って目立つというわけではないものの、二年生ではありながら例え相手が三年生であろうと言うべきことは言う、するべきことは
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき5 BL小説 「やたら、そのキーワードを繰り返すからさ。俺に言わせると、そいつは君のことを上っ面だけしか知らないんだ」 藤堂はしれっと言った。 「てことは、上っ面は能天気にみえると」 「賢そうに見えるバカより、バカっぽく見える賢者の方がいいに決まってる」 藤堂得意のわかる
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください32 BL小説 可愛い顔をして勝気な勝浩は、傍らで苦笑いする幸也にジロリと一瞥をくれると、プリンターから打ち出された資料を持ってきてそろえ始めた。 「おい、志央」 唐突に幸也の緊迫した声。 「どうした?」 幸也は持っていた携帯を黙って見せた。 何気なく覗き込んだ
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき4 BL小説 大体、『プラグイン』にしたって、ちょっとくらい仕事がなくたって、どうにかなるような会社じゃないのだ。 代表の河崎にせよ藤堂にせよ、別に働かなくても十分暮らしていける身分である。 なのに、みんな仕事人間だから、仕事に対する姿勢は半端じゃないけれど。 しかし
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください31 BL小説 「すごいじゃん、七海、カッコいい! ピアニストになれば?」 興奮した声で勝浩が賞賛する。 「バカ言え。あんなの譜面どおりに弾いただけだ。専門家が聴けばすぐ化けの皮がはがれるさ」 「でもすごい」 二人のやりとりを後ろに聞きながら、握り締めていた自分の拳が
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき3 BL小説 「業界では鬼が走り出したって、どこでも戦々恐々だって話だよ」 今日もまた、夕方、良太の好きなシュークリームを手土産にふらりと現れた藤堂が言った。 代理店プラグインのスタッフで、元は大手代理店英報堂のエリートだ。 「はあ??」 怪訝な顔で聞き返す良太に、
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください30 BL小説 「小学生の時な。発表会で、俺のポケットから飛び出したかえるが演奏してたやつのピアノに乗っかって大騒ぎになったんで、先生が俺にもう来なくていい、ってんでやめたよ」 志央は肩を竦める。 「ああ、それ! お前が発表会滅茶苦茶にしたってやつ? お前って昔っからい
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき2 BL小説 良太が振り返ると、立ったまま受話器を握り締めていた工藤は一瞬絶句していた。 下柳が知らせてきたのは、青山プロダクションの仕事には起業当初から携わってきた映像制作会社社長の訃報で、自殺だったという。 従業員十数名、外部要員も数十人くらいいただろう、良太が覚え
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください29 BL小説 目の色が違うだけで、雰囲気までがクールに見えてしまう。 女の子たちが手のひらを返したように、七海がカッコよくなった、と騒いでいた。 ふん、何を言ってるんだ、あいつのカッコよさはそんな、外見だけじゃないんだ。 俺は知ってるんだからな。 トカゲを踏
月夜の猫-BL小説です 月夜の猫-BL小説です BL小説 明け方から強風を伴って降り出した雨が通勤客を悩ませていた。 気まぐれな春の嵐は八時を過ぎても衰えを知らず、都心へと大挙して向かう人々の足を阻んでいる。 幸か不幸か通勤距離数十メートル、徒歩数分という環境にある広瀬良太には暴風雨もあまり関係がない。
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき(工藤×良太33) BL小説 夢のつづき(工藤と良太33) 「月の光が静かにそそぐ」のあとになります。(R18) ただでさえ仕事中毒のように国内国外飛び回っている工藤が、ここのところ一段と忙しない。その上、山野辺がまた妙に工藤に絡むのだが、どうも様子が普通ではないし、工藤もこそこそ誰かに会
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください28 BL小説 翌日から登下校を一緒にする七海と勝浩の姿が人目を引いていた。 勝浩の自宅に遠回りをして、七海は彼をバイクの後ろに乗せる。 帰りも、勝浩の生徒会の仕事が終わるまで、生徒会室の外で七海はじっと待っている。 「中に入ればいいじゃないか」 志央は声をかけた
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ15(ラスト) BL小説 一方、気持ちが悪くなって目を覚ました良太は、つい工藤と久しぶりなのに浮かれて飲みすぎたと後悔しつつ、何もかももどしてやっとラクになった。 「ったく、俺って、もったいないことばっかしてるよな」 自己嫌悪を引きずったまま、ちょっと汚してし
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください27 BL小説 二度と行きたくないと思っていた生徒会室だが、勝浩の仕事がまだ終わらないかと、七海は足を向けた。 だがドアの前に立ち、ノックをしても返事がない。 ドアを開けようとすると鍵がかかっている。 「あれ、帰っちゃったのか? 堺」 ポツリと口にした、その時だ。
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ14 BL小説 まあ、工藤がブランドもんなんか似合ってるなんてのは、今に始まったことじゃないし。 沢山のモデルやタレントがいたが、このダークグレイのスーツは工藤が一番似合って見えたとか。 年輪と渋みを重ねた分、きっとこの隣に座る男の魅力になっているんだろう、な
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください26 BL小説 勝浩が教室のドアを開けると、放課後の教室にぽつねんと一人、大きな体をかがめて七海が机に向かっていた。 「藤原、居残りだっけ? 政経?」 七海の手元のレポート用紙は真っ白なままだ。 「ああ…」 七海は間延びした返事を勝浩に返す。 「政経の岡田、食えないジ
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ13 BL小説 最近、飲酒運転の目に余る報道が多くなってから、工藤はこういったレセプションでも極力タクシーを使うか、グラスの酒には一切手をつけないようになった。 良太も、工藤が口をつけていたらと考えて、シャンパングラスも形だけ手に持っていただけだ。 「うわーで
月夜の猫-BL小説です 笑顔をください25 BL小説 夕方の生徒会室では、創立祭の準備のために各クラス委員を招集し、生徒会総動員で冊子やPOPを作ったり、SNSなどで広報する作業が行われていた。 志央はここ数日機械的に体を動かしていた。 もう何もかもがどうでもいい。 頭は空虚で、考えるのを拒否していた
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ11 BL小説 昨年末、大和屋のイベントプロジェクトの件で出演依頼をしたものの、所属事務所には断られたため、まだ古谷に直接合ったことはなかったのだが、MLBで活躍したレジェンド野茂同様、古谷は良太にとってはやはりヒーローなのだ。 「お前、何寝ぼけたこと言ってんだよ