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月夜の猫-BL小説です 花さそう37 BL小説 「工藤さん、もしご希望なら鑑定に出しますが?」 藤堂がやんわりと問いかけた。 「沢村じゃないが、俺は本物だろうがかまやしない。騒がれるのもごめんだしな」 工藤はフンと鼻で笑う。 「そうおっしゃるだろうと思いました」 藤堂は笑みを浮かべた。 「蒐集家のターゲットにさ
月夜の猫-BL小説です 氷花23 BL小説 「公一さん、メシは?」 「あいつが近くでメシ食ってくるまで、待っててやった。お陰で俺は腹が減って」 「お前も何か食うたらよかったやん」 千雪が言うと、京助はカレーを盛り付けた皿をテーブルに置いて、一瞬、間があった。 「藤原に聞いたんだよ、お前が何か作ってるって」
月夜の猫-BL小説です 花さそう36 BL小説 みんなのあとから屋敷に入った工藤は杉田に「来てくれたのか、すまないな」と声をかけた。 「このお屋敷が賑やかになるの、あまりないことですもの」 笑顔でお茶を振舞う杉田が続けて「ぼっちゃ……」と言いかけたのを工藤は遮って「平造、好きなように見てもらうからあとはい
月夜の猫-BL小説です 氷花22 BL小説 「あんた、ここで何やってんだ!?」 そこへ飛び込んできた怒鳴り声。 「おいおい、久々会った兄貴に対してその言い草はないだろ? 仕事で疲れきって、数ヵ月ぶりにもらったバカンスだってのに」 紫紀は振り返りもせずに言った。 「そんな貴重なバカンスに、何だってわざわざこんな辺鄙
月夜の猫-BL小説です 氷花21 BL小説 紫紀はまたにっこり笑い、続けた。 「実は、君の母上、夏緒さんは、祖母の従兄の息子の許婚者だったことがあるんだ」 「ほんまに? そらまた奇遇ですね」 「そう、義母の佐保子の弟、だから義叔父ということになるんだが、九条祐紀といってね、この人が大和屋の一人娘だった夏緒さんの
月夜の猫-BL小説です 花さそう34 BL小説 帰りは良太が運転したが、スキー用具を積み込む際、牧のスキーがかなり年季が入っているのを見て取った良太は、少しでも牧が売れるようになればいいがと思う。 日比野が推すくらいだから、牧の舞台での演技力はそれ相応のものがあるのだろう。 ふと、人気俳優となった本谷和正のこ
月夜の猫-BL小説です 花さそう(工藤×良太)33までアップしました BL小説 花さそう(工藤×良太)33までアップしました。氷花(京助×千雪)20までアップしました。ちなみに「花さそう」と「氷花」はちょうど冬のエピソードですが時間的には約10年程開きがあり、「氷花」では京助も千雪もまだ工藤と知り会う前になります
月夜の猫-BL小説です 氷花20 BL小説 「あっそう」 紫紀は小首を傾げた。 「いや、マジで、どこかでお会いした気がしたんだが。まあ、こんな美人さん、会ってたら忘れるわけないか」 美人というキーワードに、千雪は心の中で再度ムッとしたが、初対面の相手だからとそれを何とか抑えきった。 「京助の後輩というと、君もお
月夜の猫-BL小説です 花さそう33 BL小説 映画のエキストラに牧を連れてきたのは監督の日比野だった。 「割と肝の据わったマジメな役者なんです。若くてタッパもあるし見てくれもいいのに地味に小劇団で舞台をやってて、なんてのかな、いい役者になるって言う片鱗を見た気がして」 日比野の言葉に感化されたわけではないが、た
月夜の猫-BL小説です 氷花19 BL小説 「え……?」 男は一瞬固まった。 「ひょっとして、京助のお兄さん、ですよね? 俺、京助ら戻るまで待ってますよって、先に召し上がって下さい」 今度はまた、ハトマメな眼差しで男に凝視されながら、千雪は続けた。 「……これは、失礼……、いや、てっきり………」 千雪が女に間違
月夜の猫-BL小説です 花さそう32 BL小説 工藤と良太が上のコースに行ってみたりしているうちに、森村はもう牧について行ける程になっていた。 十二時半頃、森村がスキーセットをレンタルしたロッジに集合し、ランチを取った。 工藤に一生懸命ついて回った良太には、何だ、もうそんな時間か、と少しばかり残念な気がした。
月夜の猫-BL小説です 氷花18 BL小説 「ハッシュドビーフと、言っておりましたが」 藤原は答えた。 「ハッシュドビーフか…」 ちょっとそれは無理だな、と思いながら、千雪は棚を開けてみる。 すると、買い置きのインスタントカレーの箱が目に留まった。 「あ、これ、使こてもええです?」 「それは賄い用かと、お客様に
月夜の猫-BL小説です 花さそう31 BL小説 リフトを降りた時に、森村が前にいる良太にぶつかりそうになったところを、牧が後ろから止めてくれた。 「お二人は先にどうぞ。俺、モリーと一緒に少しずつ降りていきますから」 そういう牧は、ドラマで出番を待ちながら大きな身体を縮こまらせている時とは打って変わって頼もし気だ
月夜の猫-BL小説です 氷花17 BL小説 ゆっくり風呂に入って部屋に戻った千雪は、ふっと眠気が襲ってきてしばらくうつらうつらしていた。 目を覚ましたのは、何やら大きな声が聞こえたせいだ。 どうやら公一と京助が怒鳴りあっている。 はたと身体を起こして部屋を出ると、階下が騒がしい。 「救急車呼んだけど、さっき事故
月夜の猫-BL小説です 氷花16 BL小説 「咲子さん、予定日いつだっけ? メシ作ってくれるのはありがたいが、無理するなよ。このくらい俺、自分でやるから」 千雪も咲子のエプロンの辺りのふくらみに気づいていた。 「もうちょっと先なんだ。あとは出てくるの待つだけだし、昨日から、亭主、札幌出張で退屈だったから、いい
月夜の猫-BL小説です 花さそう30 BL小説 「食事会については以上です、よろしくお願いします」 良太が話し終えるのを待って、後ろにいた佐々木が「すみません、工藤さんの別荘見学のことで、いいですか?」と声を掛けた。 「あ、そうでした。何時頃になりますか?」 良太が聞き返すと、「お昼住んでからやと、二時くらい
月夜の猫-BL小説です 氷花15 BL小説 美しい山々の連なり。 雪をかぶった街並み。 寒ささえ透明なたたずまい。 そんな自然の中に浸るだけで十二分に千雪は感動的だったのだが。 「後ろに体重かけ過ぎだ!」 青空の下のパウダースノーはいいとしても。 「もっと力抜け!」 リフトに乗って眺めるのは絶景で。 「脚伸ば
月夜の猫-BL小説です 花さそう(工藤×良太)29までアップしました BL小説 花さそう(工藤×良太)29までアップしました。氷花(京助×千雪)14までアップしました。
月夜の猫-BL小説です 花さそう29 BL小説 「総菜、まだ仰山あるなあ」 佐々木は沢村がテーブルにつくのを確認しつつ、キッチンで片づけを手伝っていた。 サラダやハム類、スープ、それともともとたくさん煮た大根の煮物。 「サラダは和え物にして、野菜はちょっと炒めて昼に誰でも食べられるようにまた出しておく」 佐々木
月夜の猫-BL小説です 氷花14 BL小説 どこかから聞こえてくる声が煩いので、千雪は身体を捩って眉を顰めた。 「起きろって、こら」 次にはゆさゆさ揺すられて、ようやく少しだけ目を開ける。 「メシ、食いっぱぐれるぞ! 千雪」 ベッドの横で仁王立ちになっている京助をみとめてからだを起こし、勢い昨夜の記憶を反芻
月夜の猫-BL小説です 花さそう28 BL小説 「研二さん作ったんですか?」 「うん、大根食べとうなって」 研二は控えめに頷いた。 「ほんまに美味い。今度レシピ教えて下さい」 佐々木も気に入ったらしく、しきりと感心している。 四人がテーブルに向かい合って食べていると、ぞろぞろと皆が階段を降りてきた。 「美味そう
月夜の猫-BL小説です 氷花13 BL小説 千雪の部屋は客間らしくバスルームもついていたが、一階に広い風呂を藤原が用意したと京助に言われ、せっかくなのでそちらに入ることにした。 「俺も一緒に入ってやろか?」 千雪が温泉でも風呂でも他人と入ることに抵抗があることを知っていて、京助はちょっと絡む。 「遠慮しと
月夜の猫-BL小説です 氷花12 BL小説 「ほんま使わせてもらおかな。けど、京助んち、にぎやかで楽しそうやんな」 千雪は少し羨ましい気がした。 「そうそう、涼さんと俺とは学校は違ったけど同い年だし、いっつも京助さんが先頭に立ってなんかやらかして。時々やってくる綾小路の親戚連中の方が逆に俺なんかのこと、使用人だ
月夜の猫-BL小説です 氷花11 BL小説 「確か、若い頃、ケンブリッジ留学していたって。イギリスには養成学校みたいなのがあるらしいけど、そんなの多分行ってないっすよ」 公一が小首を傾げながら言った。 「留学中、どっかの貴族のうちで修行してたらしいぞ。だからありゃ、筋金入りだ。俺が仰々しいのは嫌いだってうるさく
月夜の猫-BL小説です 花さそう26 BL小説 そこへ一人遅れてやってきたのは佐々木だ。 「あ、佐々木さん、こっちいらっしゃいよ」 理香ににっこり笑みを返す佐々木だが、沢村はソファを立って佐々木をカウンターに連れて行く。 「あらら、佐々木さんさらわれちゃったわ」 肩を竦めながら理香が速水を意味ありげに見た。
月夜の猫-BL小説です 氷花10 BL小説 つい調子にのってぽろっと口にしてしまいそうになった京助は、「あのヤロー、誘導尋問しやがって」とむっとしたまま部屋を出る。 「フン、ごまかしよって」 千雪はドアの向こうを睨み付けた。 「京助さん、ダイニングにお食事の用意できました。お風呂はわかしてありますが、お食事のあ
月夜の猫-BL小説です 花さそう25 BL小説 「いい加減部屋に戻ったらどうです? 風邪引きますよ」 秋山が何度目かのアスカへの苦言を口にした。 「だって、セシル寝てるからこそっとしないとダメみたいじゃない?」 「恵美さんも久々スキーやって、かなり堪えたらしくて、寝ちゃってるみたい」 直子もアスカに同調するよ
月夜の猫-BL小説です 氷花9 BL小説 現在K大二年で今時の若者らしい風貌の公一は、小さい頃から綾小路家で育ち、京助に少林寺を叩き込まれたというだけあって、いい体格をしている。 やがて門が開いて車が門をくぐるとまた後ろで門が閉じる音がした。 「京助、これを山小屋、言うんか? どういう神経しとんのや」 雪の夜を
月夜の猫-BL小説です 花さそう(工藤×良太)24までアップしました BL小説 花さそう(工藤×良太)24までアップしました。氷花(京助×千雪)8までアップしました
月夜の猫-BL小説です 氷花8 BL小説 空港でも千雪は一応小林だとは名乗ったはずだが、またか、という成り行きである。 編集者の反応のように敬遠される方がマシだと思うのはこういう時だ。 「ウッソー? マジっすか? びっくりしたなーーー、すみません。あれ、でも、待てよ、確か、京助さん、例の名探偵の相棒、いましたよね
月夜の猫-BL小説です 花さそう24 BL小説 「そうだ、工藤さん。佐々木さんが、工藤さんとこの別荘にある作品見せてもらいたいんだと」 沢村が工藤に言った。 「かまわないぞ、いつでも。俺がいなくても平造がいる時なら」 「何かしら? 工藤さんの別荘の作品って」 理香がそれを聞きつけて工藤に聞いた。 「いや、なんか
月夜の猫-BL小説です 氷花7 BL小説 編集担当が訪ねてきた時に京助と居合わせたこともあるが、絶対中には入ろうとしない担当者にはもちろん何の不審も抱かれることもなく、実はなし崩し的に半同棲生活となってしまったなどとは、誰も知る由もないだろう。 「五時か、六時半の便には間に合うな」 コーヒーを千雪に渡しながら
月夜の猫-BL小説です 氷花6 BL小説 従妹の小夜子に番号を教えたくらいで、佐久間は目ざとく千雪の携帯を見つけて勝手に登録してしまっただけだ。 もちろん編集担当には教えていない。 小説の担当者はほとんど家電かメールのやり取りくらいで、携帯は持っていないという千雪のウソを信じている上、今や変人で臭いオヤジ小林
月夜の猫-BL小説です 氷花5 BL小説 つい先日、三作目の小説を書き終えてほっとしたところで、なんとなくこれからのことについてゆっくり考えたいと思った千雪は、自分の居る場所をもう一度再確認するために、随分久しぶりになるが、正月には実家に帰ってみようかと考えていた。 ここのところ何かというと熱に浮かされたように
月夜の猫-BL小説です 花さそう22 BL小説 頭にタオルを巻いてバスローブ姿のアスカは、良太の注意にも馬耳東風で、カウンターに入って行くと、ソーダをグラスに注いでゴクゴクと飲んだ。 「はあーっ、生き返った」 「オヤジな発言!」 「うるさいわね、良太。ちょっと長湯し過ぎちゃって、喉乾いちゃって」 そこへ牧や森村
月夜の猫-BL小説です 氷花4 BL小説 「そら、頭よし、ルックスよし、家柄よし、加えてあの豪胆さがたまらんのんと違いますか? 女からすれば、あわよくばセレブ婚、でなくても彼女、でなくてもセフレ、ってな具合で、並みのスターごときじゃ太刀打ちできない男ですやん。まあ、今までに京助先輩がつきおうた女も、そんじょそこ
月夜の猫-BL小説です 氷花3 BL小説 すばやくちょうど空いたテーブルを見つけると千雪を座らせる。 「お待たせ~」 やがて佐久間は紙コップのコーヒーと千雪リクエストのカフェオレを両手に、千雪がぶすっと頬杖をついているテーブルに戻ってきた。 「いっつもほら、京助先輩と一緒やと、周り女の子の視線で取り囲まれてるし、
月夜の猫-BL小説です 氷花2 BL小説 千雪のその話題の風貌を信じ込み、その風貌ごと気に入っているという佐久間は、口を開かなければなかなかイケメンの部類なのだろうが、同時にまた十二分に変人の部類に違いない。 「でかい声出すなや」 千雪は思い切り睨みつけながら仕方なく佐久間の向かいに座る。 「そうかて、先輩わ
月夜の猫-BL小説です 氷花1 BL小説 「あ、先輩ぃ、メシ、行くでしょ? 俺、先行って席取っときますわ!」 研究室のドアを開けた小林千雪を廊下の向こうから大きな声で呼んだのは、法学部三年の佐久間徹という。 推理小説研究会、宮島ゼミときて、さらに修士課程にも進むつもりらしい佐久間は、千雪を追いかけるように進路を
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に244(ラスト) BL小説 辻、加藤、研二もやってくると、森村も手伝っててきぱきと荷物を車に運び込んだ。 これであとは工藤が帰ってくるのを待つだけだが。 良太は鈴木さんに一日だけ猫の世話を頼んだ。 セットしておけば自動でカリカリは出てくるし、水も同じくだ。 良太は手早くセーター
月夜の猫-BL小説です たまにはクリスマスを4 BL小説 野球部でピッチャー、しかも直球勝負がモットーだったという良太らしく、今はひたすら工藤の背中を追いかけながら、プロデューサーとして研鑽を積んでいるわけだが、何かあれば怒鳴りまくってキャスティングに見合わないとなればクビを切る、業界では鬼の工藤と称された
月夜の猫-BL小説です たまにはクリスマスを1 BL小説 ただただ慌ただしい師走の半ばのことだ。 キャンパスにもびゅうびゅうと冷たい北風が吹きすさんでいた。 「おい、来週末、空けとけよ」 急に上から降ってきた科白に、ここ数年来なかった寒さに震えながら、学食で熱いうどんをすすっていた小林千雪は、ああ? と胡乱気に
月夜の猫-BL小説です 雪の街17(ラスト) BL小説 そうやってじわじわと豪を脅しておたおたさせている松田と朔也は元気の高校の先輩になる。 さらに松田はサッカー部の主将で、元気は部のアイドル的存在でもあったと、豪は伽藍の常連で元気のクラスメイトだった東からも情報を得た。 その後同じテーブルに座った豪と東は
月夜の猫-BL小説です 雪の街16 BL小説 「るせーな、俺は今日はここのバイトなんだよ。たむろしてねーで、手伝え!」 眉間にしわを寄せて朔也が言い返す。 「バイトだぁ?」 「だから、明日、元気とスキーつき合ってもらうって言っただろーが」 「おい、お前、また、元気、朔也にちょっかいかけてんじゃねーだろな」
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)224までアップしました BL小説 春立つ風に(工藤×良太)224までアップしました。雪の街(朔也&元気)10までアップしました。春立つ風に、終盤です。
月夜の猫-BL小説です 雪の街10 BL小説 勢いよくドアが開いて、冷たい風がひと吹き店内を巡った。 「うーーーっす! 元気、そろそろステージ作るかぁ」 頭にバンダナを巻いた、がっしりした体型の髭面が大きな声で元気に声をかけた。 「おう、もちょっとしたらな」 顔を元気から朔也に向けた途端、髭面の動作が止まる。
月夜の猫-BL小説です 雪の街8 BL小説 カウンターの中に入った元気は、いくつかのオーダーをまとめて、だが優雅にこなしていく。 「おい、今日も一人なのか? バイトは?」 「ああ、紀ちゃん、夕方からきてくれることになってんですけどね」 のんきそうに元気は言うが、店内は一杯で、さらにドアが開いて、客が顔をのぞかせ
野原滋(イラスト:白崎小夜)『気高き愚王と野卑なる賢王』ネタバレ感想
作品名 : 気高き愚王と野卑なる賢王 漫画家 : 野原滋 イラスト: 白崎小夜 出版 : ラルーナ文庫三交社 (2018/12/20) ジャンル: 中華風 敵対関係 トーン : シリアス せつない ほのぼの 試し読み: 気高き愚王と野卑なる賢王 [あらすじ]敵国・兎乃国に攻
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド361 BL小説 あの夜、もうこれ以上は涙はでないだろうというくらい大泣きした千雪を、京助は自分の部屋に連れ帰って寝かせた。 翌日はほぼ一日ゴロゴロしていたようだが、夜になると妙に元気な顔で、「カレー作った。食うやろ?」などと笑顔で京助を出迎えた。 以来ずっと京助
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド358 BL小説 「過ぎてもうた時間は戻らへん、千雪」 研二は自虐的な笑みを浮かべた。 「俺は、お前から逃げてもうた……それが事実や」 「それこそ昔の話やろが! アホ!」 「そうや、俺はドアホや。もし、生まれ変わることがあったら、次は絶対逃げたりはせえへん」 「生まれ変わ
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド357 BL小説 「ずっとこうして…………」 研二は千雪を離すと、愛おし気にその頬に手を置いた。 「お前を抱きしめていたかった」 千雪の目を覗き込むように、研二は笑みを浮かべた。 千雪は研二の言葉が引っ掛かった。 「……俺はずっと……お前と一緒にいたい」 「千雪……
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド354 BL小説 確かに原家は小夜子の母方の親戚とは、もともと後妻の娘である伯母が原に嫁いでからは、伯母の父の葬儀に顔を出して以来、従兄の結婚の際も何の知らせもなく、後で聞いて祝いを贈ったくらいで、疎遠になっていた。 ところが小夜子と紫紀の婚約の話題がマスコミに流れた頃
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド346 BL小説 紫紀と小夜子は看護師に付き添われて京助のベッドに案内された。 あちこち包帯を巻かれているようだが、普通に眠っているようでもあった。 二人はすぐに待合室に戻ってきたが、紫紀は初めて見慣れない二人の女の子に気づいた。 「失礼ですがあなた方ですね、救急車を
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド344 BL小説 藤原が京助の事故を知ったのは、午前八時半を回ったところだった。 昨日からの寒波で冷え切っていた上、早朝は都心でも雪混じりの小雨が降っていた。 「あのっ、京助さんの後輩の佐久間いうもんですけど、さっき京助さん事故で病院に運ばれて………」 連絡はT大法学部