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月夜の猫-BL小説です 上弦の月1 BL小説 西麻布にある『庭』は表側から見ると無愛想なコンクリートの壁だが、数段の階段を降り、黒塗りのドアを開けると、一階は緑鮮やかなパティオを囲む吹き抜けのレストラン、地下にシックな大人の隠れ家的バーがある。 「いたいた、ヤギちゃん」 聞き覚えのある通りのいい声に、カ
月夜の猫-BL小説です 上弦の月(工藤×良太19) BL小説 そろそろ桜も終わりに近づいた頃、アスカがお花見をやろうと言い出した。それも会社の裏庭でだ。というのも、会社のビルが建った頃から平造が丹精した桜の木が育って、なかなかの花を咲かせているのだ。良太もこれなら人混みの中に出かけなくても充分花を堪能できると思いつつ
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき20(ラスト) BL小説 「起きろ! 良太!」 耳元で怒鳴られて、良太はようやくからだを起こした。 「れ、ライオンのお手……」 「何を寝ぼけてるんだ」 見回すと自分のベッドの上で、傍らに立つ工藤は、とっくにスーツで決めて仕事モードに入っている。 「ちぇ、何だ、夢か……」 「とっとと
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき19 BL小説 寒っ! 肩にひんやりとした風を感じて、良太は目を覚ました。 「あれ…」 ベッドの中だ。 そういえば確か工藤が酔っ払って帰ってきて、じゅうたんの上に倒れ込んで…… 俺も寝ちゃったのか。 「……ああ、そうしてくれ。相田、カミさん一人で大丈夫か? 小田が今朝
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき18 BL小説 部屋のドアを開けた途端、二匹の猫たちがわらわらと良太目掛けて飛んでくる。 「遅くなったねー、ごめんよー」 足にまとわりつく猫たちに触れると、こわばっていた身体の力が抜ける。 二匹とも待ってましたとばかりにご飯を平らげてしまう。 その食べっぷりはいつみて
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき17 BL小説 オフィスのドアを開けると、よう、と下柳が手を上げた。 「えらい目にあったって? 有吉のヤツに聞いたよ」 「ヤギさん。お疲れ様です」 思いがけない下柳の顔に、良太はちょっと息を抜いた。 「どうしたんだ? まだ何かあったか?」 下柳に無愛想に言うと、工藤はコ
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき16 BL小説 「ちょっとそこで待ってろ」 返ってきたのは有無を言わせぬという感じの工藤の命令だった。 「でも、俺、早いとこ帰っていろいろやることが……」 「待ってろと言ってる!」 良太を振り返りもせず、工藤は強い口調で言い放つ。 これは相当怒ってるぞ、と良太は思う。
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき15 BL小説 一旦地下に降り、長い通路を抜けると先に事務所のドアがあり、その向こうに地上へ出る階段があった。 「お疲れ様です。こちらです」 階段の中ほどで中井が呼んだ。 地上に出ると、日が落ち始めた小さな庭の木陰から白のレクサスの後ろが見えた。 「良太、もう帰っていい
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき14 BL小説 そんな芽久と工藤を見て、良太としては面白くないのは山々だが、芽久の怯えようはただならぬものがあり、岸の脅しにかなり参っているのだろうと見てみぬ振りをすることにした。 芽久が落ち着くまでと、工藤、良太とマネージャーの中井の四人は控え室にいた。 誰もほとんど
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき13 BL小説 下柳と葛西の熱弁に、たまに口を挟む工藤とほんのたまーにボソッと的を得た言葉を口にするのが有吉だ。 もともと彫りの深い顔立ちは日焼けて無精ひげも手伝い、日本人と言われなければわからない。 精悍な鋭い目つきはそれだけで何者かと周りのものを振り返らせる。 そ
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき12 BL小説 『花の終わり』がクランクアップし、ホテル赤坂で制作発表が行われる当日も、どんよりと雲の多い空が東京の街を見下ろしていた。 良太が控え室を訪ねると、山之辺芽久がいつにも増して不機嫌だった。 というより、何かを気にして心ここにあらずという感じである。 彼女の
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき10 BL小説 想像をたくましくして、電話の相手が先日芽久が口走った賢次郎という人物であり、おそらくいつぞやの夜、工藤を訪ねてきた男ではないかと良太は考えた。 「十分渡したって、何、金……? 工藤、…脅されてるわけ?」 おそらく直接問いただしたところで口を割るような男では
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき9 BL小説 良太がついぼそりとそんなことを口にすると、すっかり出来上がった下柳が笑った。 「そりゃ、良太ちゃんがかわいいから、ついからかいたくなるんだろ」 「何ゆってんですか、こっちは真剣に…」 いずれにしても、スタッフの中で有吉とうまくやっていけるかどうか、ちょっと自
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき7 BL小説 お願いしてやってもらうような代物ではないのだ。 未だに坂口なんかまでが良太に役者をやらないかなどと言っていたが、良太ならやらせればそこそこやっただろうことは、工藤にはよくわかっている。 さらにこのぽっとでの役者の下手糞さを見せられた日には、坂口でなくとも良
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき6 BL小説 ANAの最終便は札幌には何とか着いたものの、すぐに吹雪になった。 「まったく、三月だぞ! 気象庁は何してるんだ!」 ついこの間もイラつきながらこの空港を歩いた記憶までが蘇えり、この際、工藤もどうしようもないことだとわかってはいても、どこかに怒りをぶつけたくも
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき5 BL小説 「やたら、そのキーワードを繰り返すからさ。俺に言わせると、そいつは君のことを上っ面だけしか知らないんだ」 藤堂はしれっと言った。 「てことは、上っ面は能天気にみえると」 「賢そうに見えるバカより、バカっぽく見える賢者の方がいいに決まってる」 藤堂得意のわかる
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき4 BL小説 大体、『プラグイン』にしたって、ちょっとくらい仕事がなくたって、どうにかなるような会社じゃないのだ。 代表の河崎にせよ藤堂にせよ、別に働かなくても十分暮らしていける身分である。 なのに、みんな仕事人間だから、仕事に対する姿勢は半端じゃないけれど。 しかし
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき3 BL小説 「業界では鬼が走り出したって、どこでも戦々恐々だって話だよ」 今日もまた、夕方、良太の好きなシュークリームを手土産にふらりと現れた藤堂が言った。 代理店プラグインのスタッフで、元は大手代理店英報堂のエリートだ。 「はあ??」 怪訝な顔で聞き返す良太に、
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき2 BL小説 良太が振り返ると、立ったまま受話器を握り締めていた工藤は一瞬絶句していた。 下柳が知らせてきたのは、青山プロダクションの仕事には起業当初から携わってきた映像制作会社社長の訃報で、自殺だったという。 従業員十数名、外部要員も数十人くらいいただろう、良太が覚え
月夜の猫-BL小説です 月夜の猫-BL小説です BL小説 明け方から強風を伴って降り出した雨が通勤客を悩ませていた。 気まぐれな春の嵐は八時を過ぎても衰えを知らず、都心へと大挙して向かう人々の足を阻んでいる。 幸か不幸か通勤距離数十メートル、徒歩数分という環境にある広瀬良太には暴風雨もあまり関係がない。
月夜の猫-BL小説です 夢のつづき(工藤×良太33) BL小説 夢のつづき(工藤と良太33) 「月の光が静かにそそぐ」のあとになります。(R18) ただでさえ仕事中毒のように国内国外飛び回っている工藤が、ここのところ一段と忙しない。その上、山野辺がまた妙に工藤に絡むのだが、どうも様子が普通ではないし、工藤もこそこそ誰かに会
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ15(ラスト) BL小説 一方、気持ちが悪くなって目を覚ました良太は、つい工藤と久しぶりなのに浮かれて飲みすぎたと後悔しつつ、何もかももどしてやっとラクになった。 「ったく、俺って、もったいないことばっかしてるよな」 自己嫌悪を引きずったまま、ちょっと汚してし
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ14 BL小説 まあ、工藤がブランドもんなんか似合ってるなんてのは、今に始まったことじゃないし。 沢山のモデルやタレントがいたが、このダークグレイのスーツは工藤が一番似合って見えたとか。 年輪と渋みを重ねた分、きっとこの隣に座る男の魅力になっているんだろう、な
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ13 BL小説 最近、飲酒運転の目に余る報道が多くなってから、工藤はこういったレセプションでも極力タクシーを使うか、グラスの酒には一切手をつけないようになった。 良太も、工藤が口をつけていたらと考えて、シャンパングラスも形だけ手に持っていただけだ。 「うわーで
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ11 BL小説 昨年末、大和屋のイベントプロジェクトの件で出演依頼をしたものの、所属事務所には断られたため、まだ古谷に直接合ったことはなかったのだが、MLBで活躍したレジェンド野茂同様、古谷は良太にとってはやはりヒーローなのだ。 「お前、何寝ぼけたこと言ってんだよ
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ10 BL小説 仕方なく良太は、あれは仕事の合間でスタッフも周りに何人もいたのだと、何度も言い訳メールをするはめになった。 「ただでさえ、マスコミ押し寄せてるんだ、気をつけろよ」 「冗談じゃない! ってか工藤、社長、どこ行ったんだよ」 他にもその手の電話やらメー
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ8 BL小説 特に自然や地球温暖化などに関しては下柳のように熱弁を振るうことはないにせよ、機会さえあればそれこそ今ある仕事も良太や秋山に丸投げしてそっちに飛びつきたいのだろう。 だがいかんせん、一国一城の主ともなれば、どうしても放り出すわけに行かないものもある。
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ7 BL小説 そんな様子を見やった良太は、どうせ工藤のことだから、斎藤に良太を引き合わせたというのは、いずれまた自分の代わりに良太を人身御供に差し出そうという魂胆があるに違いないと睨んでいる。 危ない、危ない、自分から火の中に飛び込んじまうとこだった。 この
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ6 BL小説 しかしまさか、撮られているのが良太とは思わなかった工藤は、それを見て苦笑せざるを得なかった。 「かなりの腕だ。そんじょそこいらのカメラマンのやり口じゃないな。名前も…ない」 アスカがわざわざ見開きで置いていったに違いないと怒りつつも、良太はわたわた
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ4 BL小説 みんな、何かしら人より厄介な人生を抱えて生きてきたせいなのか、この会社の面々に今までもどれだけか助けられたか知れない。 いや、抱えてなくてもか。 ふと、ドラマの撮影前にわざわざアスカがオフィスに立ち寄ったのは、別に良太をからかおうというわけでもな
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ3 BL小説 KBCで六月放映予定のドラマ『花の終わり』のロケに二月の終わりからかかりきりで、北海道や東北方面にしげしげと足を運んでいるのだが、未だに何かにつけて悶着を起こす監督と脚本家の間で四苦八苦だ。 何しろ、スポンサー側が山之辺芽久というモデルあがりの女優
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ2 BL小説 確かに市川と仲はいい。 だがそれはあくまでも互いに仕事上でのことだ。 「第一、このいかにもどっか怪しいとこみたいに撮りやがって、これ、NTVの玄関横なんだぞ! パワスポのみんなとメシ食って、俺がたまたま彼女を乗っけてっただけで! 周りにみんないるし
月夜の猫-BL小説です 春のエピソード、追加しました BL小説 桜の便りもちらほらきかれ 長い冬にもようやく春の兆しがみえてきた感があります。 Primavera2025 に、「月の光が静かにそそぐ(工藤×良太32)」追加しました。 「逢いたい」の後エピソードです。 アレクセイとロジァ も、まだ変更
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ BL小説 「逢いたい」のあとになります。相変わらずドラマ撮影では面倒な面々に振り回されている良太だが、ある日写真週刊誌に良太と局アナの写真が意味ありげに掲載されて慌てふためく。案の定沢村に揶揄されたり、妹や友人からどういうことだと電話やメールが相次ぎ……。
月夜の猫-BL小説です 月の光が静かにそそぐ1 BL小説 乃木にある青山プロダクションの静かなオフィスに無粋な喚き声が響き渡ったのは、桃の節句も過ぎて、時折強烈な春の嵐に見舞われながらも暖かな日差しが混じるようになった三月も始めのことである。 「ちょっとぉ、うるさいわよ、良太。大きな声出さないでくれる? た
月夜の猫-BL小説です 逢いたい15(ラスト) BL小説 部屋を出る前に良太は工藤と今後のスケジュール確認をした。 坂口のドラマが入ってくるとなると、尚更工藤の忙しさに拍車がかかりそうだ。 「この辺り、レッドデータアニマルのドキュメントとの調整が必要になりますよね」 「お前は今のドラマが終わったら少しは
月夜の猫-BL小説です 逢いたい14 BL小説 時間は人の思いなんかそっちのけで過ぎていくし、どんなにこのままずっとこうしていたいなんて言ってみたところで、無慈悲にも朝はくる。 ほんと、沢村の気持ちが嫌ってほどわかるって…… やたら眩しい光に目が覚めた良太がむっくりベッドに起き上ると、工藤はとっくにル
月夜の猫-BL小説です 逢いたい13 BL小説 下着とワイシャツ、それにポカリスエットを買って良太がホテルに戻ると、工藤はソファセットでタブレットを開き、また電話をしていた。 良太は邪魔をしないようにと思いながら広いバスタブに湯を張ると、ゆっくりと身体を沈めた。 工藤に逢いたくて、札幌まで来てみたのだが
月夜の猫-BL小説です 逢いたい12 BL小説 「また連絡してくれ」 「お疲れ様です」 「ではよろしく」 工藤は坂口と宇都宮に素っ気なく返すと、良太を肩に抱えながら出口へと向かう。 コートと良太の預けた土産物の袋を手にバーを出て、工藤は良太をエレベーターに乗せたが、酔いと疲れで頭は眠っているらしい。
月夜の猫-BL小説です 逢いたい11 BL小説 良太の中では、工藤の機嫌がこれ以上悪くならないうちに切り上げたい話題なのだが。 「こいつに役者なんか無理ですよ」 案の定工藤の口調が尖ってきたのを良太はヒシヒシと感じる。 「ほう? 何だか天下のプロデューサー工藤高広の台詞とは思えないな」 口元には笑みを浮
月夜の猫-BL小説です 逢いたい10 BL小説 「川崎だっけ? あ、そういえば君の番組にはよく出てるよね、関西タイガースの沢村。彼って結構気難しいって聞いてるけど」 何だかもう馴染みの友人相手かのように、宇都宮は気さくに話しかけてくる。 「はあ、まあキッズリーグの頃からの腐れ縁のよしみで……」 工藤と坂
月夜の猫-BL小説です 逢いたい9 BL小説 まあ、確かに山内ひとみは演技、美貌ともに申し分ないだろう。 だが、都合つけといてくれ、という坂口の言葉からして、有無を言わせないところがあり、ひとみから文句の一つや二つは覚悟しなければならないだろう。 うっわあ、どうしよう、俺、つい、口がすべっちゃってって
月夜の猫-BL小説です 逢いたい8 BL小説 「そうかぁ? 彼女の方は満更でもないみたいじゃないか? ドラマ、お前のプロデュースだろうが」 なおも坂口は引き下がらない。 「別の仕事で手いっぱいなんで、広瀬に任せてます」 任せてって丸投げの間違いだろ。 工藤のセリフを耳にして、良太が心の中で突っ込みを入れ
月夜の猫-BL小説です 逢いたい7 BL小説 「女子高生っても卒業前の三年生から女子大生になるって設定だからな」 坂口が一人頷く。 「にしたって、女子高生、十八歳と俺四十二歳が恋愛しちゃっていいんですかね、下手すると援交?」 「だから君なんだよ。ほかの四十二歳じゃ、ほんとに援交オヤジにしか見えないだろ」