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月夜の猫-BL小説です 花さそう36 BL小説 みんなのあとから屋敷に入った工藤は杉田に「来てくれたのか、すまないな」と声をかけた。 「このお屋敷が賑やかになるの、あまりないことですもの」 笑顔でお茶を振舞う杉田が続けて「ぼっちゃ……」と言いかけたのを工藤は遮って「平造、好きなように見てもらうからあとはい
月夜の猫-BL小説です 氷花22 BL小説 「あんた、ここで何やってんだ!?」 そこへ飛び込んできた怒鳴り声。 「おいおい、久々会った兄貴に対してその言い草はないだろ? 仕事で疲れきって、数ヵ月ぶりにもらったバカンスだってのに」 紫紀は振り返りもせずに言った。 「そんな貴重なバカンスに、何だってわざわざこんな辺鄙
月夜の猫-BL小説です 氷花21 BL小説 紫紀はまたにっこり笑い、続けた。 「実は、君の母上、夏緒さんは、祖母の従兄の息子の許婚者だったことがあるんだ」 「ほんまに? そらまた奇遇ですね」 「そう、義母の佐保子の弟、だから義叔父ということになるんだが、九条祐紀といってね、この人が大和屋の一人娘だった夏緒さんの
月夜の猫-BL小説です 氷花20 BL小説 「あっそう」 紫紀は小首を傾げた。 「いや、マジで、どこかでお会いした気がしたんだが。まあ、こんな美人さん、会ってたら忘れるわけないか」 美人というキーワードに、千雪は心の中で再度ムッとしたが、初対面の相手だからとそれを何とか抑えきった。 「京助の後輩というと、君もお
月夜の猫-BL小説です 氷花19 BL小説 「え……?」 男は一瞬固まった。 「ひょっとして、京助のお兄さん、ですよね? 俺、京助ら戻るまで待ってますよって、先に召し上がって下さい」 今度はまた、ハトマメな眼差しで男に凝視されながら、千雪は続けた。 「……これは、失礼……、いや、てっきり………」 千雪が女に間違
月夜の猫-BL小説です 氷花18 BL小説 「ハッシュドビーフと、言っておりましたが」 藤原は答えた。 「ハッシュドビーフか…」 ちょっとそれは無理だな、と思いながら、千雪は棚を開けてみる。 すると、買い置きのインスタントカレーの箱が目に留まった。 「あ、これ、使こてもええです?」 「それは賄い用かと、お客様に
月夜の猫-BL小説です 氷花17 BL小説 ゆっくり風呂に入って部屋に戻った千雪は、ふっと眠気が襲ってきてしばらくうつらうつらしていた。 目を覚ましたのは、何やら大きな声が聞こえたせいだ。 どうやら公一と京助が怒鳴りあっている。 はたと身体を起こして部屋を出ると、階下が騒がしい。 「救急車呼んだけど、さっき事故
月夜の猫-BL小説です 氷花14 BL小説 どこかから聞こえてくる声が煩いので、千雪は身体を捩って眉を顰めた。 「起きろって、こら」 次にはゆさゆさ揺すられて、ようやく少しだけ目を開ける。 「メシ、食いっぱぐれるぞ! 千雪」 ベッドの横で仁王立ちになっている京助をみとめてからだを起こし、勢い昨夜の記憶を反芻
月夜の猫-BL小説です 氷花13 BL小説 千雪の部屋は客間らしくバスルームもついていたが、一階に広い風呂を藤原が用意したと京助に言われ、せっかくなのでそちらに入ることにした。 「俺も一緒に入ってやろか?」 千雪が温泉でも風呂でも他人と入ることに抵抗があることを知っていて、京助はちょっと絡む。 「遠慮しと
月夜の猫-BL小説です 氷花12 BL小説 「ほんま使わせてもらおかな。けど、京助んち、にぎやかで楽しそうやんな」 千雪は少し羨ましい気がした。 「そうそう、涼さんと俺とは学校は違ったけど同い年だし、いっつも京助さんが先頭に立ってなんかやらかして。時々やってくる綾小路の親戚連中の方が逆に俺なんかのこと、使用人だ
月夜の猫-BL小説です 氷花11 BL小説 「確か、若い頃、ケンブリッジ留学していたって。イギリスには養成学校みたいなのがあるらしいけど、そんなの多分行ってないっすよ」 公一が小首を傾げながら言った。 「留学中、どっかの貴族のうちで修行してたらしいぞ。だからありゃ、筋金入りだ。俺が仰々しいのは嫌いだってうるさく
月夜の猫-BL小説です 氷花10 BL小説 つい調子にのってぽろっと口にしてしまいそうになった京助は、「あのヤロー、誘導尋問しやがって」とむっとしたまま部屋を出る。 「フン、ごまかしよって」 千雪はドアの向こうを睨み付けた。 「京助さん、ダイニングにお食事の用意できました。お風呂はわかしてありますが、お食事のあ
月夜の猫-BL小説です 氷花9 BL小説 現在K大二年で今時の若者らしい風貌の公一は、小さい頃から綾小路家で育ち、京助に少林寺を叩き込まれたというだけあって、いい体格をしている。 やがて門が開いて車が門をくぐるとまた後ろで門が閉じる音がした。 「京助、これを山小屋、言うんか? どういう神経しとんのや」 雪の夜を
月夜の猫-BL小説です 氷花8 BL小説 空港でも千雪は一応小林だとは名乗ったはずだが、またか、という成り行きである。 編集者の反応のように敬遠される方がマシだと思うのはこういう時だ。 「ウッソー? マジっすか? びっくりしたなーーー、すみません。あれ、でも、待てよ、確か、京助さん、例の名探偵の相棒、いましたよね
月夜の猫-BL小説です 氷花7 BL小説 編集担当が訪ねてきた時に京助と居合わせたこともあるが、絶対中には入ろうとしない担当者にはもちろん何の不審も抱かれることもなく、実はなし崩し的に半同棲生活となってしまったなどとは、誰も知る由もないだろう。 「五時か、六時半の便には間に合うな」 コーヒーを千雪に渡しながら
月夜の猫-BL小説です 氷花6 BL小説 従妹の小夜子に番号を教えたくらいで、佐久間は目ざとく千雪の携帯を見つけて勝手に登録してしまっただけだ。 もちろん編集担当には教えていない。 小説の担当者はほとんど家電かメールのやり取りくらいで、携帯は持っていないという千雪のウソを信じている上、今や変人で臭いオヤジ小林
月夜の猫-BL小説です 氷花4 BL小説 「そら、頭よし、ルックスよし、家柄よし、加えてあの豪胆さがたまらんのんと違いますか? 女からすれば、あわよくばセレブ婚、でなくても彼女、でなくてもセフレ、ってな具合で、並みのスターごときじゃ太刀打ちできない男ですやん。まあ、今までに京助先輩がつきおうた女も、そんじょそこ
月夜の猫-BL小説です 氷花3 BL小説 すばやくちょうど空いたテーブルを見つけると千雪を座らせる。 「お待たせ~」 やがて佐久間は紙コップのコーヒーと千雪リクエストのカフェオレを両手に、千雪がぶすっと頬杖をついているテーブルに戻ってきた。 「いっつもほら、京助先輩と一緒やと、周り女の子の視線で取り囲まれてるし、
月夜の猫-BL小説です 氷花2 BL小説 千雪のその話題の風貌を信じ込み、その風貌ごと気に入っているという佐久間は、口を開かなければなかなかイケメンの部類なのだろうが、同時にまた十二分に変人の部類に違いない。 「でかい声出すなや」 千雪は思い切り睨みつけながら仕方なく佐久間の向かいに座る。 「そうかて、先輩わ
月夜の猫-BL小説です 氷花1 BL小説 「あ、先輩ぃ、メシ、行くでしょ? 俺、先行って席取っときますわ!」 研究室のドアを開けた小林千雪を廊下の向こうから大きな声で呼んだのは、法学部三年の佐久間徹という。 推理小説研究会、宮島ゼミときて、さらに修士課程にも進むつもりらしい佐久間は、千雪を追いかけるように進路を
月夜の猫-BL小説です 春立つ風に(工藤×良太)239までアップしました BL小説 春立つ風に(工藤×良太)239までアップしました。たまにはクリスマスを(京助×千雪)6までアップしました。たまには、は短編のつもりなので、長くはならないつもりです
月夜の猫-BL小説です たまにはクリスマスを4 BL小説 野球部でピッチャー、しかも直球勝負がモットーだったという良太らしく、今はひたすら工藤の背中を追いかけながら、プロデューサーとして研鑽を積んでいるわけだが、何かあれば怒鳴りまくってキャスティングに見合わないとなればクビを切る、業界では鬼の工藤と称された
月夜の猫-BL小説です たまにはクリスマスを1 BL小説 ただただ慌ただしい師走の半ばのことだ。 キャンパスにもびゅうびゅうと冷たい北風が吹きすさんでいた。 「おい、来週末、空けとけよ」 急に上から降ってきた科白に、ここ数年来なかった寒さに震えながら、学食で熱いうどんをすすっていた小林千雪は、ああ? と胡乱気に
月夜の猫-BL小説です たまにはクリスマスを(京助×千雪) BL小説 毎年年の瀬は、京助も千雪も忙しい。クリスマスなんてものは彼らには何の関係もないキーワードだ。ところが12月の半ば頃、京助がいきなり、来週末空けとけよ、と命令口調でのたまった。千雪は怪訝な顔で何を企んでいるんだ、と京助を見やったのだが……R18
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド358 BL小説 「過ぎてもうた時間は戻らへん、千雪」 研二は自虐的な笑みを浮かべた。 「俺は、お前から逃げてもうた……それが事実や」 「それこそ昔の話やろが! アホ!」 「そうや、俺はドアホや。もし、生まれ変わることがあったら、次は絶対逃げたりはせえへん」 「生まれ変わ
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド357 BL小説 「ずっとこうして…………」 研二は千雪を離すと、愛おし気にその頬に手を置いた。 「お前を抱きしめていたかった」 千雪の目を覗き込むように、研二は笑みを浮かべた。 千雪は研二の言葉が引っ掛かった。 「……俺はずっと……お前と一緒にいたい」 「千雪……
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド354 BL小説 確かに原家は小夜子の母方の親戚とは、もともと後妻の娘である伯母が原に嫁いでからは、伯母の父の葬儀に顔を出して以来、従兄の結婚の際も何の知らせもなく、後で聞いて祝いを贈ったくらいで、疎遠になっていた。 ところが小夜子と紫紀の婚約の話題がマスコミに流れた頃
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド346 BL小説 紫紀と小夜子は看護師に付き添われて京助のベッドに案内された。 あちこち包帯を巻かれているようだが、普通に眠っているようでもあった。 二人はすぐに待合室に戻ってきたが、紫紀は初めて見慣れない二人の女の子に気づいた。 「失礼ですがあなた方ですね、救急車を
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド344 BL小説 藤原が京助の事故を知ったのは、午前八時半を回ったところだった。 昨日からの寒波で冷え切っていた上、早朝は都心でも雪混じりの小雨が降っていた。 「あのっ、京助さんの後輩の佐久間いうもんですけど、さっき京助さん事故で病院に運ばれて………」 連絡はT大法学部
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド331 BL小説 鮭と卵焼き、ハムとほうれん草、山芋とワカメなどのサラダ、それにフルーツヨーグルトにご飯とみそ汁としっかりした食事だ。 食後にコーヒーが出て、それぞれ一息ついた。 「それで? 今日はどこに行くって?」 京助が千雪似聞いた。 「酒田とか鶴岡とか」 ボソリと
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド318 BL小説 日比谷、芝ビルにある甘味処やさかでは、午後の繁忙時が過ぎ、スタッフが順次休憩に入り、研二はたった今入ってきた年配女性二人組がテーブル席に着くと、メニューやお茶をトレーに乗せて立った。 「ご注文がお決まりになりましたらお声掛けください」 不愛想で強面、
映画『ナイブズアウト/knives out』の意味は?考察と感想
映画『ナイブズアウト/knives out』名探偵と刃の館の秘密 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』などのラ - yumeitoの映画や小説映画『ナイブズアウト/knives out』の意味は?考察と感想 2022年3月26日 https://yumeito.com/knives-out-movie/
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド317 BL小説 そろそろ出かける時間になったのを、カウンターの上に置かれたデジタル時計で確認すると、研二はコーヒーを飲み干して立ち上がった。 「洗い物はやっとくし」 「食洗機に放り込んどいたらええ」 セーターの上にレザージャケットを羽織ると、研二は玄関に向かう。 「千雪
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド314 BL小説 九時を過ぎている。 それにドアチャイムだ。 宅配業者ではないだろうし、来客の予定は聞いていない。 ただし、オートロックとはいえエントランスのドアは下手をすれば住人の誰かに続いてなら入れてしまうが、その前に管理人室がある。 「何や、研二、鍵忘れたんか?」
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド308 BL小説 「エラリークイーン。また全巻読も思て。まだ、国名シリーズの途中、ギリシアや」 「何冊あるんや?」 「四十冊くらいか?」 「こないだ読んどったんは何やった?」 「ヴァンダイン。あれも何べん読んでもおもろい」 研二は本に目を落とす千雪を見て微笑み、風呂
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド301 BL小説 その料理人が泉水といい、ただでは屋敷をもらえないというので、何かあるとこの屋敷で会合などで利用するようになり、その息子が後を継いで、今はたまに綾小路家専用の料亭のように使われている。 親同士の付き合いもあり、速水は子どもの頃からたまに連れられてきていた。
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド291 BL小説 「今、小夜子さんのところで、初釜や初生け用の訪問着を誂えていただいたの。出来上がりが楽しみ」 「そうですか」 研二は微笑んだ。 接客業なんだからなるべく笑え、とは千雪の命令だ。 とはいっても意識して笑うのに研二は苦労している。 そこへいくと、理香は
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド271 BL小説 「ほな、行くとこあるよって」 その時振り返った千雪を京助は息をのんで見つめた。 これまで容姿などにさほど頓着したことのない京助は、周囲の人間が言う程その千雪の美貌を顧みたことなどなかった。 それを今さらながらに気づかされたかのような気がした。 「おい、千雪!」 コート
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド272 BL小説 二人ほど人が入っていた。 作品は十号くらいまでの小品が主で、キャンバスから油絵の具の臭いがする。 奥に立っているセーターにジーンズの若い学生が作者のようだ。 南欧あたりだろうか、明るい画面に海と建物が輝いている。 今時の学生にしては奇をてらったようなところもなく、かといっ
月夜の猫-BL小説です メリーゴーランド266 BL小説 「次、お前、乗り換えやで」 虎ノ門を過ぎると、三田村が千雪に言った。 「わかっとるわ」 尚も心配気な顔で、三田村は千雪を見た。 アナウンスが霞が関を告げると、「ほならな」と言いおいて、千雪は降りる客に紛れた。 ドアが閉まっても三田村はホームの千雪を追ったが、ぼんやりながら