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月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった80 BL小説 「うわっ! すみません、大丈夫ですか?」 我に返った井原は慌てて態勢を整えた。 「あ、ああ、平気」 「じ、ゃあ、よろしくお願いします」 飛び出すように部屋を出て行った井原だが、ジンジン痛む足の指もそっちのけで、そのまま洗面台まで行くと、バシ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった79 BL小説 「おい、気をつけろよ、望遠鏡、高かったんだから」 「大丈夫っすよ」 「本かよ、この箱、えっらい重い」 やがて玄関が開いて、口々に言い合いながらそれぞれ荷物を手に豪、東、最後に井原が入ってきた。 「あ、響さん、貴重な休みにありがとうございます!」
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった78 BL小説 面と向かってどんな顔をすればいいのだろうとは思うのだが、響はそれ以上に会えるかどうかが気がかりだったのだ。 多少ぎくしゃくするかもしれないが、少なくとも仲間としては付き合っていってくれると考えていいのだろうか。 元気には泣きついて、いい加
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった77 BL小説 元気のきつい言葉は井原の身に染みたが、響のお断りが、荒川のせいだと思いたかった。 今度こそ、失敗はしない。 第一、引っ越しにしても、要は響と二人で会いたいという単純な目的のためといっても過言ではなかった。 それを言ったら、元気に鼻で笑われ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった76 BL小説 「響さんが荒川先生に理不尽なことを言われているのをたまたま瀬戸川と青山が聞いて、怒った彼女たちが寛斗も巻き込んでクラスでウエーブやらせて、荒川先生をとっちめたんだよ、響さんのために」 元気は淡々と続けた。 「響さんは荒川先生の言ったことを真に受け
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった75 BL小説 「しかし今の子はすごいねぇ」 元気はハハッと笑う。 「紀ちゃんがいたら、ジジクサって言われるぞ」 東が肩眉をあげて忠告した。 「高校生から見たらオッサンだろ、俺らなんか」 「まあな。それより、俺肝心なこと聞いてないっつうか、荒川先生キョー先生に
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった74 BL小説 「あ、荒川センセ」 引き留めた寛斗をそれでも荒川は振り返る。 「あんまし、深く考えない方がいいよ。新任への手荒な洗礼ってよくあることだし、ただのいたずらだから! 俺先生の授業わかりやすくて好きだし」 こいつはどこでもうまく生きて行けるやつの
1年目の後輩に苛立つ人を見ての感想。『それ、あなただって通った道でしょ?』
「1年目の後輩に苛つく」そんな言葉が耳に入ってきました。それを聞いた私の思いは『それ、あなただって通った道でしょ?』。誰にでもあった新人時代と、先輩としての在り方を見つめ直す内容です。
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった73 BL小説 「そうですね、それは思いました」 整然と瀬戸川が言った。 「でも、寛斗に話したら、じゃあ、ウエーブやろうぜって言うのに、咄嗟にそれ以外思いつかなくて、賛同しました」 「あ、俺はさ、クラスのみんなに、キョーちゃんがどうのとか話したわけじゃなくて、
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった72 BL小説 響や東の在学時にもウエーブの伝説は伝えられていたが、もどきをやったクラス数名がいたくらいで、それもサボりたいだけの動機だったから、相手にもされなかった。 「ウエーブって、マジで?」 意外過ぎる出来事に響も唖然となった。 「らしいです。ちょっと職
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった71 BL小説 「こないだ来たやつ、その酒くれたクラウスなんか、妻子あること隠してやがって、とどのつまり絶交したんだけど……俺が来るもの拒まずでつきあってたのが悪かったのかも………ほんと、ロクなことなかったな」 はああと響がため息をつく。 「そんなこんなで十年…
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった70 BL小説 マグカップにコーヒーフィルターをセットし、お湯が沸くと、元気はゆっくりと湯を注ぐ。 「キッチンとバスルーム、増築して正解でしたね」 「まあ、そっちも狭いけど」 「そりゃ、ヨーロッパ辺りと比べるとウサギ小屋かもだけど、俺からすれば十分広い」 香
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった69 BL小説 「今度は、少しずつ間を詰めて、絶対ポカしないつもりだったんだ。でも、あの金髪野郎が現れて、俺、頭に血が昇っちまって、つい、告るの早まったのかも」 井原はやはり響しか見えていないらしい。 「お前さ、外野のことも少しは考えた方がいいんじゃね?」 「外
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった68 BL小説 完全に酔っぱらって口にしている言葉が理解できていないのが元気にもわかった。 「こんな田舎で、男同士で、教員同士で、リスクが高いって、まあ、そりゃそうだなって」 響はハハハと笑う。 笑うのだが涙がぽろぽろ零れるのを拭いもせずまた酒をマグカップに
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった67 BL小説 ふと手にしていた携帯に気づいた響は、誰かの言葉が聞きたくなった。 酔っているのでためらいもなく、一つの番号を押した。 五回目のコールで、声が聞こえた。 「響さん? どうしたんですか? こんな時間に」 「なんかさ……深淵の底から俺が呼ばれて
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった66 BL小説 女性の方が結構年上でというだけで結婚なんてあり得ないとするようなこの街で、高校教師が、しかも男同士がつきあうとか、考えも及ばないに違いない。 先生なんて呼ばれるような人間じゃないと思っていた響だが、いつの間にかそう呼ばれることに慣れてしまった。
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった65 BL小説 放課後は理科系の会議があるらしいし、今日は井原の顔を見ないで終わりそうだ。 もっとも響こそ、井原とどんな顔をして会えばいいかわらからなかったから、少し胸を撫でおろしていた。 ぼんやりしていたので、ドア口に人がいるのに気づかなかった。 「和田
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった64 BL小説 「へいへい。なんかこうこの部屋息が詰まりそうだから、ちょっと緊張をほぐそうとしただけじゃん」 お茶らかした寛斗のセリフを聞くと、響もこれは一息ついた方がいいかと立ち上がった。 「ようし、ちょっと休憩しよう。肩に力入り過ぎてる気もするから、寛斗、お
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった63 BL小説 何も聞かずに俺の手を握っていた井原の手はすごく温かくて。 ポトリとひとしずく、下を向いていた響の目から床に落ちた。 ほんとはすごく好きだった。 だから俺なんかといちゃいけないやつなんだって。 またひとしずく、落ちた。 もう何年も胸の奥に
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった62 BL小説 だが所詮モラトリアムの中での思いの延長だ、お前の好きは自分と同じ好きではないかも知れない、響が口にしなかったのは、井原のためだと……。 いずれは井原も誰か愛する人に巡り合って、秀喜のように結婚するのだろうと。 十年越しの初恋なんかもう忘却の彼
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった61 BL小説 こいつらしくもなく何をそんな苦しそうな顔をしているんだ? 「響さん、告られたって、ほんとですか?」 「へ?」 響の方に顔を向けて、まじまじと見据える井原に、響はポケッとした顔になった。 「俺が? ああ、ひょっとして、寛斗のヤツのことか?」
昨日、花子(長女:高3)の部活引退が決まりました。 完敗なら諦めもつきますが、かつてないほどの好調で惜敗だったという・・・ 敗退が決まり顧問の先生のラストミー…
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった60 BL小説 三号に描かれたのはひまわりで、この店では初めて風景画以外の絵となるが、他の風景画と空気感が同じである。 「いいなあ、これベネチアの匂いがする」 「さすが、響さん、感覚的! これどの絵と取り替えたらいいと思います? これ以上飾ると窮屈そうだし」
ハラスメントハラスメント [社会・政治・時事] 私のアメブロの詩を朗読しました。ちなみに詩はフィクションです。アメブロ「とりあえず詩集という...www.n…
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった59 BL小説 「あたしも聴きたい! 本物のピアノ!」 紀子が言った。 「アップライトなら、入らないか?」 「え、ここにか?」 井原の発言に元気は考え込んだ。 「お前無茶なこと言うなよ」 響は呆れたが、元気はうーんと唸ってから、「何とかなるかも」と言う。 「
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった58 BL小説 かぐわしい香りのコーヒーが鼻孔をくすぐると響は全身がほっとするような気がした。 「一日の仕事上がりに元気のコーヒーって、ほっとするよなあ」 隣で井原が響が考えたようなことを口にした。 「そういえば元気、相談って何?」 一口温かいコーヒーを飲ん
『ハラスメント』職場で落ち込む後輩に対し何を言おうか考えたが私の言葉はどれも"ハラスメント"になってしまうので心の中で『こういう時もあるよ』と声をかけてそっと…
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった57 BL小説 エチュードの一番から三番を弾いたあと、響はスケルツォの三番を弾き始める。 細かな音が目に見えぬドレープを作り広がってゆく。 古いピアノは時折響の耳にかすかな歪みを感じさせるが、それもまた音の羅列に表情を与えていく。 最後の音を弾いてからふ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった56 BL小説 確かに青山は技巧的には巧い。 だが、曲の理解度でいえば、この曲に関わっている時間が長いだけ寛斗の方が高いだろう。 それに。 瀬戸川は寛斗と一緒にコンクールに出たいに違いないのだ。 「技巧を取るか、曲の理解度を取るかでいえば、多少下手でも
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった55 BL小説 そして忘れていたシーンの中に井原がいた。 喜怒哀楽がはっきりしていると生徒が言っていたが、すぐに思い浮かぶのは笑っている井原で、怒ったり泣いたりと言ったシーンも思い出されて、そういえば忙しいやつだったと響は苦笑する。 そんな昔の思い出に浸
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった54 BL小説 遅かれ早かれ、そうなることはわかっていたさ。 黒板消しを置くと、響は手をぱんぱんと払い、準備室に入った。 考えごとをしていたので、あっという間にガツガツと弁当を平らげた響は弁当のからをビニール袋に突っ込みゴミ箱に放ると、音楽室を出た。 そ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった53 BL小説 「キョー先生は井原先生よりなんか年齢超えてるって感じ」 「ええ?」 瀬戸川の言葉に響は首を傾げる。 「だって、制服着てそこにいてもおかしくないっていうか」 「何、俺ってオッサンになってもガキっぽいってこと?」 くすくす笑いながら瀬戸川は、「顔
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった52 BL小説 いつもの井原だ。 土曜日、急にクラウスが現れて、しかも井原といる時に、響は内心焦り、イラついた。 井原は響の説明を額面通り受け取ったわけではないような気がした。 何か言いたげな顔をしていたが、今日のあのようすではさほど気にもしていないのだ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった51 BL小説 「すみません、後ろの人、静かにしてください」 響が説明をいったん切ったところで、最前列に座っていた青山という女生徒がきりりとした声で後ろでふざけ合っている男子生徒を注意した。 一瞬シーンと静まり返ったあと、響は何ごともなかったかのように黒板に
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった50 BL小説 元気は鮎をつつきながら、「パーティは俺の店でやるんだが」と付け加えた。 「元気の店でか? またライブやる?」 井原は俄然目を輝かせた。 「お前は! まあ、やる予定だけどまだ詳細は未定だ。今度みんなで話すことになってる」 「わかった、俺も混ぜろ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった49 BL小説 「響さんは何か隠してる」 井原はまた唐突に口にする。 「響さんがどうかしたんですか?」 「おい、お前、響さん、響さんて気安そうに! どういう了見だ?」 何気なく聞いた豪に、井原が突っかかる。 「いや別にどういう了見も何も………」 わけが分か
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった48 BL小説 「なあ、あの人、向こうで付き合ってたとかそういう話、聞いてるか?」 井原は必死な顔で元気に聞いた。 「響さんがそんなこと俺に話すと思うか?」 「だよな……」 元気の冷ややかな口調に井原はまた一つ溜息をついた。 「響さんを訪ねてきた金髪碧眼の色
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった47 BL小説 クラウスが井原にきつい視線を送っていたことで、おそらく響に別れを告げられた男が、井原を見て新しい恋人かと聞いたのだろう構図が井原の頭にくっきり浮かんだ。 Liebhaber、は何となく聞き取れた。 それが恋人という意味だろうことくらいは知っ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった46 BL小説 しかも家までつきとめるとか、いったいどうやって……。 響はクラウスのことなど井原には知られたくなかったのだが、車を家の前に置いているから帰れとも言えない。 家に近づくと、門の中から長身の男が出てきて、響を認めると、「ヒビキ!」と呼んだ。 「何
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった45 BL小説 祖父がまだ車を運転していた時、車二台分のガレージを作ったので、今は父親のセダンの横に響のヴィッツが入っているが、ちょうど一台分くらいの駐車スペースは玄関の前にあり、ピアノのレッスンに来る生徒の親が停めている。 二人はのんびり歩いて元気の店に向
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった44 BL小説 「いやあ、もう何年振りかだから、どこへでも」 そう言った井原は、車に乗り込むと北アルプスへと続く道を上っていく。 「おい、この車、スタッドレス履いてるのか?」 「そりゃもちろん。まだまだ上の方は雪があったりしますからね」 さらに上がると、断崖
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった43 BL小説 それから不動産屋に戻ると、井原はたったか契約金を支払った。 「さてと、ランチ行きましょう! お礼に奢ります!」 大家に簡易ガレージ設置のことを確認してもらい、OKが出たところで、井原の提案に響も、「そういえば、腹減った」と頷いた。 「やっぱ土
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった42 BL小説 「いい車って言うなら、元気のランドクルーザーじゃないすか」 井原は不動産屋への道を軽くハンドルを切りながら車を走らせる。 「ああ、でかいよな。でも器材積むし、あの黒、元気に似合ってる感じ」 「まあ、そうっすね」 ちょっと拗ねたような口調の井原
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった41 BL小説 「からかわないでくださいよ、それより十時くらいで大丈夫? 土曜日」 井原は真剣な目を向けてくる。 「ああ、いいよ」 「じゃあ、十時に迎えに行きますから、よろしく」 響の返事をもらい、慌てて美術室を出たと思うと、また井原は戻ってきた。 「あのさ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった40 BL小説 それが功を奏したか、生徒たちには割と早く顔を覚えてもらえたと、一年生クラスの二回目の授業を終えた昼休み、響は美術室を訪ねた。 「ああ、音楽っていいですよね~、そういう手段っていうか、もちろん、響先生の手腕があってこそだけど。俺なんか、キュビズム
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった39 BL小説 「彼女ができないって叫ぶ前に、ちっとは引き締めろよ。身も心も。紀ちゃんを見返してやれって気になんないのかよ」 元気にきっちり言われた東は、「わかった! 明日から俺はポテチを断つ!」と一人喚く。 「明日と言わず、今日からにすれば? 響さんは、
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった38 BL小説 「何か、ドイツ語っぽい言葉で怒ってなかった?」 席に戻った響に心配顔の井原が尋ねた。 「嫌なやつから。何でこの番号わかったのか。うちに電話して聞いたのかも。クソ!」 腹立ちまぎれに響は言い放つ。 「嫌なヤツって、大丈夫? 何ならボコってやるけど
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった37 BL小説 「俺は好きな子からしかもらわないって決めてるから悪いって断った」 井原が断言すると、東が、「くっそ、俺もそんな科白はいてみたいよ」と自棄っぱちに言い放つ。 「響さんも実は女の子に色々もらってたでしょ?」 元気が響に振ってきた。 「俺はないよ。と
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった36 BL小説 以前祖父がヨーロッパ旅行のついでに響を訪ねて来てくれた時に、響はたまたまクラウスがいたので紹介したが、二人になった時、クラウスと付き合っていることを祖父には告げた。 祖父は案の定、それをきちんと受け入れてくれた。 しかし、父親にも話してくれ
月夜の猫-BL小説です そんなお前が好きだった35 BL小説 「俺も勝手に誰か振り込んでくれねーかな! そしたら部屋借りて、自信もって女の子ゲットに全力を尽くす!」 東が拳を上げて宣言した。 「お前のアーティスト魂はちっせえんじゃないの?」 元気はスタッフを呼んで、生ビールを追加した。 「俺、じゃあ、久