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✚残070話 影はいつでもすぐそこに(4)✚ 「すぐに明かりを点つけるからそこで待ってろ」 それだけを言うと、ロイズハルトは一人暗闇の中へと消えていった。 ヴァンパイアは闇に属する生き物ゆえに夜目よめが利きく。だから普段は明かりを点ける
小説の文字数(掌編・短編・中編・長編)の目安を独自に分類してみた
小説の文字数(掌編・短編・中編・長編)の目安を独自に分類してみました。掌編小説から長編小説まで、各ジャンルの特徴と魅力を解説します。
Dream34.すみません、賢者さんちはどこですか2 ✶★✶✶★★✶★✶✶ 早朝から行動したかいあって、日暮れ前に南の首都にたどり着くことができた私たちは、適当なところに宿を取ってから、賢者を探しに街へと繰り出した。 狭い村なら二手に別れ
1200文字の物語が、誰かの心に灯をともすまで。短編小説作家として大切にしていること
1200文字という限られた世界で物語を紡ぐ理由とは?創作の楽しさと向き合う姿勢、そして物語に込めた想いを綴ります。
✚残069話 影はいつでもすぐそこに(3)✚ そして慌てて彼から目を逸そらす。 激しく動く心臓が身体を突き破りそうだった。 しかし当のロイズハルトは何がおかしいんだと言わんばかりの表情できょとんとしている。 「何って……着替えてんだよ
Dream33.すみません、賢者さんちはどこですか 翌朝早く、私達はいつもよりも手早く出立しゅったつの準備を整えた。 ミルさんはリュイが私達に付いて再び旅立つのを快こころよく了承し、送り出すために、まだ夜も暗いうちから起き出して、馬が潰れ
✚残068話 影はいつでもすぐそこに(2)✚ 「くくっ、エル。そんな反応されたらこっちがびっくりするだろう?」 色白く細身の身体を揺らしながら、ロイズハルトはそう言うとエルフェリスの方に歩を進め、背後からぬっと覗き込んできた。 突然視界
小説を読む上で有益な文学理論はいくつかあります。以下にいくつか例を挙げます: 1. **形式主義**: 形式主義は、文学作品をその形式や構造に着目して分析する理論です。プロットの構造、キャラクターの発展、言語の使用などが重視されます。形式主義のアプローチは、作品の内部メカニズムや構造を理解するのに役立ちます。 2. **構造主義**: 構造主義は、文学作品を社会や文化のシステムと関連付けて分析する理論です。構…
季節の変わり目。身を切る寒さが緩み始め、次第に暖かさが混じり始める時期。日中の暖かさと、夜の冷え込みが両極端な二面性を出している、そんな季節。僕はいつものようにコタツに寝転んで、何をやるでもなくスマホを眺めていた。無為に過ぎていく日々の内に、冬が去り、春が訪れ、夏が来る。季節は変わり、四季は移ろうというのに、僕の生活は変わらない。1日の大半をスマホを眺めて過ごし、時折、居眠りをして、夜が来て眠りに...
Dream32.愛情たっぷり地獄の晩餐 「みなさま、本当にありがとうございました。お陰でミルもこの通り、元気に戻ってくることができました。本当に感謝いたします」 素朴だけど、二人暮らしにしてはかなり大きな一枚板のテーブルを囲んで、私たちはミ
✚残067話 影はいつでもすぐそこに(1)✚ 夜が明けた。 あれほど激しく降り注いだ雨も明け方には勢いを弱め、日の昇る時分にはもうすっかりと上がっていた。 青く茂る葉からは一粒、また一粒と雨露あまつゆが零れ、鳥たちのさえずりがしんと静まる
卒業試験のため、篤人は音大の図書館にある楽譜倉庫の扉を開けた。 ひんやりとした冷気が身体中に襲いかかってくる。 まるで冷凍庫のような寒さからは、この部屋で何年も眠り続ける音符たちの「奏でてほしい」という、悲痛な叫びを感じる。 奥の棚の上段に、お目当ての楽譜はあった。 やや背伸びをして引っ張り出すと、埃の煙の中から、一枚の楽譜が舞い降りてきた。 題名はなく、数十小節ほどの音符が手書きで丁寧に書かれていた。 何の曲だろう… 篤人は鼻歌でそのメロディを口ずさむ。 …初めて聴く曲だ。 誰かのオリジナルかもしれないと思いながら裏面を見ると、右下にコメントが書かれていた。 -香奈、今までた
ふと外の様子を眺めると、空は夕焼けに染まり始めていた。 静かに流れるショパンのピアノを聴きながら、昌和はヴァイオリンのチューニングをする。 毎日この時間になると客は来なくなるので、閉店の準備もしながら、昌和は並んでいる楽器たちとの時間を過ごしている。 「もう今日はお客さん来ないんじゃない?コーヒーでも飲む?」 レジの裏にある事務室から、大学生の娘の彩花が顔を出す。今日はアルバイトが休みらしく、早めに帰ってきてくつろいでいたようだ。夕方にコーヒーなんて飲んだら、夜眠れなくなってしまうだろう。 「お父さんって、いつも音楽のことばかり考えているよね。すごいわ。」 小さな楽器屋の娘ではあるが、
「ホットコーヒーお願いします。」 はい、と一言つぶやき、マスターはコーヒーを淹れ始める。 土曜の午後は、このカフェのカウンターで過ごすというのが、圭吾にとっての個人的なルーティンだ。 平日は営業で取引先をまわったり、提案の資料を作成したりと、ほとんど仕事に費やされている圭吾にとって、土曜の朝に家の掃除を片付け、近所にあるこのカフェで午後をゆっくり過ごすのが、至福のひとときだ。 14時になると、カウンターの隣の席に、美咲という同い年くらいの女性が座り、彼女もホットコーヒーを注文する。 マスター曰く、月に2回ほど土曜のこの時間に訪れるらしい。つまり彼女にとってみれば、来れば必ず圭吾がい
「じゃあ行ってくるね。私はミーティングで夜遅くなると思うけど、ママは多分18時までには帰って来るから。パパはどうだろ?ま、ごゆるりと〜」 絵美は手を振りながら家を出た。ご丁寧に、俺がいるのに鍵まで締めて。 俺は暇でも、周りは仕事なんだよなあと、涼は寝転がったまま白い天井を見上げて考える。 システム開発会社に勤務している涼は、担当していたプロジェクトが一段落したものの、スムーズにすぐに次のプロジェクトというわけにはいかなかった。 もちろん、来月1日からは、製造業のお客様のシステム開発プロジェクトに関わることが決定している。 しかし、31日まで担当するはずだったプロジェクトを、一週間早く
Dream31.セルフ封印を編み出した!2 「え、ちょっと待って、ホントに良いの?」 封印か消滅かを迫っている側にもかかわらず、夢魔の真意が掴めなくて動揺してしまう。 けれど夢魔は、もう迷いのない瞳で私を見上げた。「良いんです。自分で分から
2025年1月を無職で迎えた私。適応障害を患い、療養しながらAIや量子力学を学んでいた。フリーランスとして活動していくことを決め、準備しているところに現れた壮年の男性。声を掛けられ、不思議な親近感と違和感を感じた。彼は一体、何者なのだろうか?
✚残066話 雨の夜の再会(5)✚ 「エルっ?」 背後から二つの声がエルフェリスの名を呼んでいる。 けれどもその声はもはやエルフェリスの耳には届いていなかった。 ただただ、回廊かいろうの向こうに消えた影だけを追っていたエルフェリスには
Dream30.セルフ封印を編み出した! 私の不用意な一言で夢魔が泣いてしまったが、なんとか一生懸命みんな(主にリュイ)で宥なだめて泣き止ませることに成功した。 はぁ……めんどくさい。 心の底からそう思ったが、それを口にするとまた泣いてし
私は絶対に捜さなくてはならない。彼を。絶対に。5月 東鏡都巨土区(とうきょうと おおたく) マンション一室—–「…それで…あなたたちが…」「異能者、蛇尾川(さ…
✚残065話 雨の夜の再会(4)✚ 赤くなったり蒼あおくなったり、今夜は本当に忙しい。 心底疲れ果てた体を少し休めようと、エルフェリスもソファに深く身を沈めた。しかしそこでふと気付いたことがあった。 「……てかなんで私たち並んで座ってん
Dream29.どこまでも落第する夢魔2 そして呟く。「……いない?」 それは茫然自失ぼうぜんじしつとも、喪失感そうしつかんとも言い難がたい声色で辺りに響き渡った。 その瞬間を、セシルドは見逃さない。「あんたの中のアンタならここにいるぜ」
冬のある日の夕方。夜に向かって時間と共に寒さが強くなっていく、その始まりの時間帯で、昼と夜を隔てる昼の残滓のような終わりの時間帯。気だるい疲れを全身に宿し、日が落ち切るまでのこの僅かな間を僕はこれと言ってすることもなく持て余していた。日没まで後1時間はあるだろう。その1時間をどう過ごすか、ソファに腰掛けてぼーっと何を観るでもなく眺めながら思案というほどでもないが、ぼんやりと思っていた。ソファの右手に...
✚残064話 雨の夜の再会(3)✚ 「こっち見ないでよ……」 そんな真面目な顔をして私を見ないで。 そう思いながら、しばしデューンヴァイスから視線を外した。そうでもしないととてもじゃないが心臓がもたない。 普段は調子の良い表情しか見せ
Dream28.どこまでも落第する夢魔 人格が入れ替わった途端にパニックを起こしてぶっ倒れた夢魔を、私たち四人は取り囲むようにして見下ろしていた。 完全に白目を剥むいて、口から泡を吹いて気絶している。 その傍かたわらには小さな黒い珠たまが
1人、野原に立つ。結局、僕だけが生き残った。この広大な世界にただ僕1人だけが生き残った。文明の音が消えて10年は経つ。僕もだいぶ歳をとった。冬に入ってから雪が降り続いている。もうずっとだ。静かだ。誰も居ない世界が、より一層静まり返っている。静かな野原に1人立ち、僕は積もっていく雪をいつまでも眺めていた。...
✚残063話 雨の夜の再会(2)✚ それからしばらくして。 「いてー……」 頬に赤いカエデの葉にも似た烙印らくいんを押されたデューンヴァイスとともにハイブリッドヴァンパイアやドールで賑わうロビーまで下りたエルフェリスは、その一角に置かれ
『次はー鉱金コウガネ、鉱金終点です。KR外環状線、景都ケイト都営地下鉄線はお乗り換えください。本日も景王ケイノウ電鉄をご利用いただきましてありがとうございました』 と、車内放送が鳴り響くと、明雲ア
Dream27.リュイの調べ 「あーもう、せっかく俺が引き付けてたのに邪魔しやがって、あのバカ金魚が!」 私に向かって突撃してくる夢魔の背を追って、セシルドがぼやきながらもこちらへ進路を変えた。「ミルさんは離れて! リュイの傍そばに!」
✚残062話 雨の夜の再会(1)✚ 感動の再会に涙する。そんな光景を今まで何度も何度も見てきた。 教会という場所柄、訪れる人々は十人十色じゅうにんといろ。様々な想いを抱いてやって来る。 自らの幸福を願う者、他人の未来を願う者、日々に失
✚残061話 狂える月(4)✚ 急進派とも革新派ともいわれるヘヴンリーらの勢力と真っ向から対立する戦闘集団。 そのトップが……リーディア? エルフェリスの双眸そうぼうが何度も何度も地を這はう。 確かに、リーディアは女性にしては随
寒い。とても寒い。身体の芯から熱を奪っていく厚い冷気の膜に埋もれて、シオリは身体を小さく振るわせてちーんと身を縮ませた。コタツの電源をオンにして肩までコタツに入り込むと、身じろぎもせずに固まっている。じんわりと温かくなってきた。優しい温かさに徐々に気分が和んでくる。コタツに潜ったまま寝転んでスマホをやっていると、バッテリーが20%を切ったという通知がスマホの画面に表示された。しぶしぶコタツから這い出...
Dream26.あの人の為ならとり憑かれたって 「彼はずいぶんと無茶な戦い方をしますねぇ。見てるこちらがハラハラしますよ」「やっぱリュイもそう思う?」 二重人格の夢魔相手にロングソードを巧たくみに操りながら、かつ相手の懐ふところに飛び込むよ
✚残060話 狂える月(3)✚ 彼がどれほどの時を生きてきたのかなどエルフェリスの知るところではなかったが、この目は確かに人を惹き付ける。この存在は確かに人の心を掴むのだ、とエルフェリスは思った。 まるであの空みたいだと。 暑い暑い日
Dream25.ナイト2 これはいよいよ本気でヤバそうだ。 セシルドの嘘つき。 夢魔よりも早く戻るって言ったじゃないか。 心の中でセシルドへの恨み言を呟きつつ、頭のスイッチを完全な戦闘モードに切り替える。 額から流れ落ちる汗の感覚に苛いら
1週間後の夜に2回目のテストを実施した。三日月が綺麗な夜だった。プログラムの一部を修正して仮想環境で入念にシミュレーションを行った。そのなかで幾つかのバグを潰し、システムがより安定するようにパラメータの微調整を行った。また太陽フレアの影響を抑えるため、電磁干渉を抑制するシールドケーブルに変えて、またその長さも極力短いものに変更した。ドッグに腰掛け停止しているデボラC84は、地下室の白色灯に照らされて、...
清々しい晴天の冬の空には、小さく太陽が顔を出し雲が早く流れていた。2025年1月2日のこの日も僕はいつものように地下室に篭り作業をしていた。正月もお盆もなくいつものルーティンをこなす。決まったことを決まった時間いつものように行う。決して例外は作らない。ストイックなのではなく、ただ日常を壊したくないだけだ。いつもと同じように地下室でデボラC84を組み立てていた。デボラC84は人工知能を搭載する予定の自律型ロボッ...
底冷えする深夜、ベランダで僕はカンナと2人で星空を見上げていた。凍てつく寒さに頬が痛いし、手袋をした指がかじかむ。南の空にオリオン座が輝いていた。星空を見上げて、身を寄せ合い、白い息で会話し合う。まるで寒さを忘れてお菓子の家を頬張るヘンデルとグレーテルみたいに、僕らは星空を眺めながら夢中で会話をする。「みて。リゲルの東の小さな星がよく見えるね。」「カイバルンだね、そうだね。よく見えるね。オリオン座...
✚残059話 狂える月(2)✚ 「癖で人を殺すような男なの? ……ルイって」 頭ではこの場から離れねばと分かっているのに、エルフェリスの中の好奇心がヘヴンリーの話を聞かせろと暴れ回る。 だからエルフェリスはあえて考えるのを止めて、ヘヴン
✚残058話 狂える月(1)✚ もやもやする気分を引きずったまま、エルフェリスは一人、日の差し込まない回廊かいろうをとぼとぼと自室へ向かって歩いていた。 太陽はもう完全に姿を現しているというのに、遮光しゃこうのガラスで覆おおわれたこの城
Dream24.ナイト さてこの状態どうしよう。 セシルドが消えてから早数分。 言われた通り、ロングソードを握り締めたまま、セシルドがリュイ達を伴ともなって帰るのを待っていた。 それなのに。 なんてお約束な展開。「ちょっとは空気読みなさい
✚残057話 ある夜の出来事(2)✚ 広くて冷たい回廊を足早に歩く彼の姿を見失わないよう、努つとめて足音を立てないよう注意しながら小走りで付いて行く。 ロイズハルトをはじめとするヴァンパイアは五感が人間よりも優れていると聞くから、エルフ
粘土にナイフを突き立てた。ケーキにロウソクを立てる様に、つるんとナイフは粘土に入っていく。僅かな抵抗もない感触が心地いい。その感触を楽しみながら小分けパックのお豆腐大に四角く粘土を切り取ると、切り取った粘土を、形を変えやすいように丸くしていく。四つほど丸くしたところで一列に並べると、端の方に串を入れて四つを串刺しにした。四つの丸い塊が一本の串で串刺しになっている、それの塊の端から出ている串を掴むと...
Dream23.拒む愛妻3 「変な……天気。リュイ達の方は大丈夫かなぁ」 ふとあの場に置いてきた二人の事が気になった。 夫婦とはいえ、ミルさんは今夢魔に魅せられている。 もしあの二人の方に夢魔が現れたら? ヒーラーのリュイ一人で太刀打ちでき
✚残056話 ある夜の出来事(1)✚ 「エルフェリス様、お加減いかがですか?」「うん、もうすっかり元気! 心配かけてごめんなさい」「まったくですわ。しばらく無茶は禁止でしてよ」「はーい。……てか別に無茶なんかしてないんだけどなぁ」「してます
炬燵で寝そべってスマホをしていた。誰も観ていないテレビではディズニーのアラジンをやっている。物語は佳境なのか切迫した声が聞こえてくる。アラジンの危機迫った金切り声をBGMに、僕はというとマネーフォワードで今月の収支を見返しては、ため息混じりの繰り言を呟いている。「マジか、そう来ますか?」そう繰り返すたびにこの現実から目を逸らしたい気分に襲われる。目前の危機にじんわりと汗をかいている。きっとこの窮地を...
Dream22.拒む愛妻2 きれいな放物線を描いて茂みに落下する物体。「っ?」 物体を確認するために恐る恐る茂みをかき分けると、そこには見慣れたあの顔が恨めしそうにこちらを睨み付けていた。 ……。 …………。「……妖怪?」「誰が妖怪だボケ
✚残055話 ルイの帰還(3)✚ † † † † † そしてそれからまた数日後、ついに城内が尋常じんじょうでないほどにざわめき立つ瞬間を迎えた。 城に住まうありとあらゆる者が出迎える中を、帰って来たのだ。あの男が。 けれどエルフェリ
Dream21.拒む愛妻 さてさてこれは一体どうしたことか。 あたし、ちょっと邪魔者みたい? ――そんな状況。「帰りましょう? ミル」「……嫌です。ここにいます」「なぜ? ここは夢魔が作り出した偽いつわりの世界ですよ?」「……」 リュイの
✚残054話 ルイの帰還(2)✚ 以前ちらりとレイフィールのドールにそのような話を聞いたことがあったが、それよりもなお計り知れないようなことが、日常的に繰り返されていたとかいなかったとか。 だからあのような結末を迎えたにもかかわらず、ド