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EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 13
ウエスタン小説、第13話。二人の奇妙な旅立ち。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -13. 結局、海を渡ってきたニッポン人約20人は、フナバシが日米の銀行に預けていた御家再興の軍資金を分け合うことで話がまとまり、全員がその資金で日本へ無事に帰ることができた。フナバシに関しては日本へ強制送還された上で逮捕・収監されることとなり、獄中でそのまま人生を終えることが決定付けられた。 アメリカに残ったのは、...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 12
ウエスタン小説、第12話。ラスト・サムライ、闇に消える。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -12.「あっ!?」「いないぞ!? どこ行った!?」 デイモンとキツネは互いに目配せし、ざわめく住民たちに背を向ける。「どうする?」「追う義理も必要もない。逃げた時点で罪を認めたようなものだ。となればいずれお尋ね者になるし、そのうち捕まるだろう」「同感だね。後はフナバシ締め上げてカネ巻き上げりゃ、皆もどうに...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 11
ウエスタン小説、第11話。卑劣な釈明。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -11. 口を抑えて固まるフナバシに、デイモンとキツネだけではなく、住民たちも詰め寄った。「説明しろよ、おっさん」「今まであんだけペラペラ話しといて、急にだんまりか?」「言わなきゃこのまんま袋叩きだ。事情を話せば色々考えてやらないことはないぞ」「き、君たち。保安官は私だ。君たちに裁量は……」 口を挟みかけたダンブレックに、住民...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 10
ウエスタン小説、第10話。デイモンとキツネの糾弾。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -10. 突然現れたデイモンとキツネに、住民たちは一斉にけげんな顔を向ける。「あ……? 誰だ、あんたら?」「私は旅の牧師だ。彼女は……」 ニッポン人だ、とデイモンは紹介しようとしたが――どこでくすねてきたのか、そしてどこで着替えてきたのか――いつの間にか東洋人らしからぬシャツとスカート姿になっていたため、やむなくこう続け...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 9
ウエスタン小説、第9話。三文芝居の裁判劇。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -9. デイモンの予想通り、時代遅れのカタナ装備で盲目的に暴れ回っていた浪人たちは、連携を取って銃武装した町の住民たちにはまったく刃が立たず、ガンスミスの焼き討ちから1時間も経たないうちに、その全員が射殺されていた。 そして彼らとともに海を渡っていたニッポン人たちは彼らの仲間と判断され、まだ港の端でたむろしていたその全員...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 8
ウエスタン小説、第8話。「古代」妄想狂。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -8. キツネにところどころ翻訳してもらいつつ、デイモンはイチカワから、彼らの計画の全貌を聞き出した。「我々は元々、菜代(なじろ)藩家臣の出であったが、諸々の事情で御家は取り潰しとなり、浪人となって千々に散ることとなった。いつの日か御家を再興するべく、元家臣の間で細々とながらも、親の代から協力し合っていたのだが、そうこうす...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 7
ウエスタン小説、第7話。ガンマンとサムライ。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -7. 二人が小屋の陰に潜むと同時に、ニッポン人が二人、通りの向こうから現れた。「***?」「**」 二人は血に濡れた刃物を手に、悪魔のような形相で何かを話している。「何て話してる?」「大した内容じゃない。……次はドコを襲うんだ、だってさ」「あのロングソードで殺して回ってるのか」「アレはカタナだよ」「どちらにしろ、時代遅...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 6
ウエスタン小説、第6話。夜明けの暴動。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -6.「……今のは? アタシも寝ぼけてるってワケかい?」 尋ねてきたキツネに、デイモンはがばっと起き上がり、窓のそばに張り付きながら答えた。「私も一緒に寝ぼけているのでなければ、今の音は私にも聞こえた」「だよね? こっちじゃ、朝一番に鳴くのはニワトリじゃないのかい?」「こっちでも普通はそうだ。つまり今、普通じゃない事態が起こっ...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 5
ウエスタン小説、第5話。お堅い牧師さん。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -5. キツネに言われるがまま身なりを整え直している間に、外はすっかり真っ暗になっていた。「どうする? アタシとしちゃまだ頭が重たいもんで、このまま二度寝しちまいたい気分なんだけども」「ねっ、眠るにしてもだ、一つのベッドに未婚の二人では大変まずいだろう。別の部屋を取りたまえ」「この部屋取ったのはアタシだよ。一緒が嫌だってん...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 4
ウエスタン小説、第4話。酩酊。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -4. デイモンは早々に立ち去ろうとしたため、この町のことをあまり詳しく調べてはいなかったが、どうやらキツネは――薪と油を買い付ける際に周っていたためか――町の地理について明るいらしく、迷いもせずに彼をサルーンに案内した。「いらっしゃ……」 自分の姿を見るなり顔をしかめた店主に構う様子も見せず、キツネはカウンターにべしっとくしゃくしゃの1...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 3
ウエスタン小説、第3話。日米葬儀観。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -3.「……キツネ。何かあったのか?」 一目見て、キツネが何らかのトラブルを起こしていることは明らかだったが、そのキツネに名前を呼ばれてしまい、その上、店主からも「なんとかしてくれよ」と訴えかけるような目を向けられてしまったため、デイモンは仕方なくキツネに声をかける。途端にキツネは、あのけたたましい声で状況を説明してくれた。「ち...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 2
ウエスタン小説、第2話。牧師の仕事。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -2. キツネがニッポンから持って来た通貨は、カネとしての価値はアメリカの地で問うことはできなかったが、「金属」としてなら取り扱ってもらうことができた。「全部で32ドル44セント、……ってのはどれくらいなんだい?」「宿代で言えば……一人一泊1ドル、32人分と言うところだ」「ソイツは良かった。ギリギリ全員分にゃなる」「だが宿の側が受...
EAST LONG DRIVE 1 ~ 東洋人、西の海から ~ 1
新連載。4年ぶりのウエスタン小説。ロング・ドライブの終わりと始まり。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1.「ロング・ドライブ」とは食用牛を繁殖地から消費地まで輸送する、西部開拓時代ならではのビジネスを指す言葉である。 このビジネスのはじまりは繁殖地であるテキサスから、ゴールドラッシュによる人口の急増で食料需要が激増したカリフォルニアへと運ぶものであったが、この時には購入額の10倍、20倍と言う...
韓国創作ミュージカル「ウェスタンストーリー」そう!誰しも主人公!! 뮤지컬 웨스턴 스토리
よろぶん あにょはせよ〜韓国創作ミュージカル「ウェスタンストーリー」뮤지컬 웨스턴 스토리2024-1回目に行ってきました。【シアター】ミュージカル「ウェスタンストーリー」2024.03.13 ~2024.06.09インターパークユニプレックス1館【作品紹介】「死の讃美」の성종완 연
「DETECTIVE WESTERN」イラスト ~ トリスタン・アルジャン(矢端想さんより)
前回のエミルに引き続き、「妄想の荒野」の矢端想(@yabat2)さんから快気祝いのイラストをいただきました。西部劇小説「DETECTIVE WESTERN」の名悪役、「猛火牛(レイジング・ブル)」トリスタン・アルジャンです。いやぁ……こちらも想像通りのいかつい猛牛顔だ。平和な街の常識や倫理が、一切通用しなさそうな目をしている。僕の作品群の中でもトップ10に入るヴィランです。普通に双月世界に迷い込んでも無双しかねない怪人。なん...
「DETECTIVE WESTERN」イラスト ~ エミル・ミヌー(矢端想さんより)
「誕生日祝い兼手術の応援にイラストほしい(´・ω・)」と言うリクエストにもう一人、「妄想の荒野」の矢端想(@yabat2)さんからお応えいただきました。昨年完結した西部劇小説「DETECTIVE WESTERN」の主人公、エミル・ミヌー嬢。可愛くて美しい、素敵なイラストです。ありがとうございました!そろそろ次回作書かなきゃな……。アイデアはあるにはあるんですが、なーんか手を付ける気にならないと言うか。「緑綺星」もそうでしたが...
僕のブログの全次元に存在する超巨大ドーナツチェーン店、「ランクス&アレックス」。西部劇の世界でも双月世界でも、そしてきっと恐らくは、旅岡さんたちのいる街にも出店しています。双月世界における当店は、元々は食堂でしたが、いつしかスイーツショップに転向。この際に、かつて九尾闘技場で「キング」と称された市国の名士であり、また、創業者の義兄でもある三節棍の名手、ウィル・ウィアードに広告塔になってもらった経緯...
https://www.amazon.co.jp/dp/B08R35BKQ3完結から1週間、早くも最終作を含めた電子書籍「DW III」が発売されました。今回も書籍化に合わせて加筆修正を行うと共に、書き下ろし小説「OUTLAW WESTERN 3」を掲載しています。……どっちも誰だか分からない?そんな方は、「妄想の荒野」の代表作、「荒野の放浪娘」を全編チェックしましょう。そう、今回は矢端さんにお願いし、あちらのサイトのキャラクタに出演していただきました!完全...
「DETECTIVE WESTERN」完結記念イラスト ~ 矢端想さんより
と言うわけで、7年間連載してきたウエスタン小説、「DETECTIVE WESTERN」が昨日完結しました。そのお祝いとして、これまでイラストを提供していただいた「妄想の荒野」の矢端想さんから、イラストをいただきました!カラー。そして19世紀らしい、セピア色仕様。矢端さん、本当にありがとうございました!一キャラ、一キャラを眺めると、実に感慨深いですね……。(双月千年世界でやってるみたいに、あとがきインタビューとかやっても...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 15
ウエスタン小説、最終話。新世界へ!- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -15.「むぐ、もぐ……。一体何で、兄貴を追い出すようなことしたんスか?」 ベーコンをかじりながら尋ねたロバートに、エミルはクスクス笑いながら答える。「気ままな旅に一つ、スパイスが欲しくてね」「スパイス?」「本当に単なる一人旅じゃ、退屈だもの。あたしを追いかけるような奴が一人くらいいてくれなきゃ、面白くないじゃない」「ひっでーな...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 14
ウエスタン小説、第14話。無期限捜索命令。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -14. 翌朝――。「エミル! どこだ、エミル!?」 アデルが慌てた顔でサルーンを右往左往し、部屋のドアを片っ端から叩いて回っていた。「何かね、騒々しい。察するにエミルが行方不明にでもなったかね?」 まだ寝間着姿の局長に看破され、アデルはようやく立ち止まる。「そ、そうなんです! あいつ、俺の部屋にこれ挟んで……」 説明しつつ...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 13
ウエスタン小説、第13話。これからのこと。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -13. トリーシャはエミルたちに、自分の農場を案内してくれた。「今は牧畜と酪農を主軸にやってるけど、最近、周りを本格的に開墾(かいこん)してるの。頑張ればマメとかトウモロコシとかいっぱい作れそうだから。上手く行けばもう一儲けできるかもね」「今だって相当儲けてるんでしょ? まだおカネがいるの?」 尋ねたエミルに、トリーシ...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 12
ウエスタン小説、第12話。フェアリーとエンジェル(Fairy and Angel)。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -12.「はぁ……はぁ……」「ぜぇ……ぜぇ……」 組織のあった廃村が火の手に包まれ、JJの屋敷が音を立てて崩れるのを背中越しに聞き付けながら、二人は肩を貸し合う形で、よろよろとその場を後にした。「あんた……大丈夫……?」「こっちの……セリフよ……」 たった2人で300人以上の手勢がいた組織を壊滅させると言う、超人...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 11
ウエスタン小説、第11話。終末の日。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -11. 襲い掛かって来た手下たちを、まずは6人倒す。一瞬で半数がやられ、手下たちはぎょっとしたが、すぐに迫って来る。(6発撃ったらもう終わりだろ、……って? バカにすんじゃないわよ) アンジェは倒れた手下たちの手から小銃をもぎ取り、残った者たちも一掃する。10秒と経たない内に敵を全滅させ、アンジェはさらにもう一人の死体から、小...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 10
ウエスタン小説、第10話。袂別。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -10. 自分たちの父親の、その醜い素顔を知ってしまった二人は、重い足取りでアジトへの帰路に就いていた。「このまま帰ったらまずいわよね。まだ2人だってバラすわけには行かないもの」「そうね……。まずあたしが先に帰るわ。いい?」「ええ。夜になったら玄関開けてね」「分かってる。……ねえ、フィー。この16年、言わないようにしてたけど、でも、ど...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 9
ウエスタン小説、第9話。最低の男。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -9. フィーもアンジェも、自分とそっくりな相手の顔のことを、それなりに美人な方だと互いに認識していたし、ジュリウスを始めとする、周囲の評価も高いものだった。だから何となく、自分たちのそれぞれの親――どちらかの母であるミカエルと、そしてもう一方の父であるルシフェルのことも、美しい顔立ちなのだろうと夢想していた。「……っ」 だが今、目...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 8
ウエスタン小説、第8話。狂い始めた歯車。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -8.「どうしたのだ、トリーシャ? 今のは前回、お前が仕掛けた手ではないか」 アンジェがアレーニェと出会って1週間後、とうとうJJがチェスの席で詰問してきた。「えっ? そう……だったかしら」「忘れたと言うのか? 頭脳明晰なお前らしくない。つい3日、いや、4日前のことを覚えておらんとは。いや、と言うよりも……」 フィーが倒した白...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 7
ウエスタン小説、第7話。妄執と情熱と。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -7. フィーとアンジェは組織の者たちに知られぬようこっそりとルシフェルのことを探り、そして程無く、「ルシフェルがアジトの付近をうろついているらしい」と言う情報を、組織がつかんでいることを知った。「だからおじいさまは、迷ったってわけね」「今更ノコノコと戻って来るくらいだから、相手なりに改心したんじゃないか、……って考えたのね、...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 6
ウエスタン小説、第6話。大閣下の後継者。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -6. 彼女との会話を交わすにつれ、どうやらJJはトリーシャのことを、「ろくでなしが作った子供」ではなく、「愛しい孫娘」と認識し直したらしい。彼女が16歳になった頃には、JJはトリーシャを、己の正当な後継者として扱うことを明言した。「チェックメイトです、おじいさま」「なんと!?」 白黒の盤面に視線を落として苦々しげにうなり...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 5
ウエスタン小説、第5話。フィーとアンジェ(Fée et Ange)。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -5. 大変な秘密を一人で抱える羽目になったジュリウスだったが、彼の献身の甲斐あって、二人のトリーシャは聡明かつ物分りの良い、それでいて勇ましい娘たちに成長した。 二人はジュリウスの苦労を幼い身で良く理解してくれたし、離れに住まわされて何年か経ち、どうにかJJの怒りも冷め、アジト内に限定しての外出許可を与え...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 4
ウエスタン小説、第4話。奇妙な相談。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -4. 悪の道に堕ちた身ではあるが、ジュリウス・アルジャンは元々貴族の出であり、高潔と品行方正を己の誇りにする男である。親を失った赤ん坊を荒野のあばら家に放っておくような、非道で恥ずべき行いをするはずも無く、彼は赤ん坊を、組織のアジトにしている廃坑そばのゴーストタウンに連れ帰った。 と――。「おお、ジュリウス! 久しぶりじゃねえ...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 3
ウエスタン小説、第3話。ジュリウスの討伐劇。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -3. ようやくジュリウスがマイヨンのところに行き着いたところ、彼はジュリウスの前にひざまずき、深々と頭を垂れた。「申し訳ございません、アルジャン様! どうかこのまま、何も見なかったことにして、お帰りいただけませんか」「それは無理な相談だ。こうして見付け出した以上、私は任務を遂行する義務がある」 マイヨンの願いをにべも...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 2
ウエスタン小説、第2話。天使と悪魔。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -2. JJが合衆国の地に足を踏み入れた時、手下はわずか――腹心のジュリウス・アルジャンと、ダビッド・ヴェルヌ。パトロンであり、アメリカへの逃走ルートを用意したアルテュール・リゴーニ。そして下僕のアンリ=ルイ・ギルマンと、エイミッシュ・マイヨンの5人しか残っていなかった。 そして彼の家族も元々、子供がわずかに2人――兄のルシフェル...
DETECTIVE WESTERN 15 ~ 新世界の誘い ~ 1
ウエスタン小説、最終作。闇の叡智、新大陸へ。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 19世紀のヨーロッパ大陸は、ほとんど常にフランスの動向に左右されていたと言っても過言では無い。2度の帝政と王政の復古、そしてその合間、合間に立ち上がってくる共和制と、フランスと言う国家そのものが目まぐるしく形を変え、その度に、周辺国は翻弄され続けてきた。 そして当時既に60の大台を超えていたこの小男もまた、フ...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 14
ウエスタン小説、第14話。ミズ・キャリコ。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -14. キャリコ農場に到着したエミルたちの前に、カウボーイ風の男が現れた。「ミズ・キャリコがあんたらを待ってる。案内するよ」「ええ、ありがと。……ところであんた」 そそくさと背を向けかけた男に、エミルが声をかける。「前に会ったことがあるわね?」「気のせいだろ? ……と言いたいところだが、ごまかすのは無理っぽいな」 男はそう...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 13
ウエスタン小説、第13話。にぎやかで穏やかな西部町。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -13.「ピクニックに行く程度のつもりだったけど、……そんな雰囲気じゃ無いわね」 エミルは駅を出るなり、こんなことを言い出した。「副局長は田舎だろうって言ってたわよね」「だな」「ここが田舎だって言うなら、マンハッタン島は人口過密で沈没するわよ」「っスね」 その町は東部沿岸と遜色無いくらいに、人と馬でにぎわっていた...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 12
ウエスタン小説、第12話。後日談と懸案事項。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -12.「DCの『友人』からも称賛されたよ。特別に名誉勲章と感謝状をもらえるそうだ」 局長は高笑いしつつ、今回の成果を皆に報告していた。「それで、いくらになったのかしら。あなたには金ピカメダル一枚より、緑色のリンカーン一人の方が大事でしょ?」 エミルに突っ込まれ、局長はニヤっと笑って返す。「うむ、その通りだ。ま、あっち...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 11
ウエスタン小説、第11話。とても奇妙な、事件の顛末。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -11. 女が拳銃を海に捨てたところで、東の稜線から太陽が昇り始め、彼女の顔にも陽の光が差した。「なっ……」 そこでようやくアデルたちは、彼女の顔をはっきり確認できた。「え……エミル?」「こっちにも姉御、あっちも姉御、……ど、どう言うことスか?」「エミル君、君には双子の姉がいたのかね?」 3人はエミルと、彼女そっくり...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 10
ウエスタン小説、第10話。半死人の証言。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -10. と、ベッドの上の包帯男が、「うぐ……」とうなる。「あら?」 エミルが目を向けたところで、ディミトリが息も絶え絶えと言った様子で口を開けた。「こ……ここ……は?」「ニューマルセイルのサルーン。まだこの世よ」「……ぼ……くは……」「あんたはディミトリ・アルジャン。ついさっきまでクソ組織の幹部サマだったけど、今は棺桶に片足突っ込ん...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 9
ウエスタン小説、第9話。カバー・デブリーフィング。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -9. 昼頃になってようやく、ニューマルセイルの港に州軍が押しかけて来た。「今日、電信電話網が復活したのはありがたかった。でなければここに君たちがいることを突き止めるのは、もっと後になっていただろうからね」 やって来たリロイに、アデルが応対する。「ここに逃げてきた4人のうち、トリスタン・アルジャンとジョルジオ・リ...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 8
ウエスタン小説、第8話。チェックメイト。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -8.「ふうっ……はあっ……や……やった……!」 トリスタンが倒れたのを見届けたところで、イクトミはまだ銃口から硝煙をくゆらせるSAAを胸に抱き、ふたたび仰向けになった。「やったぞ……僕は……つ、つい……に……」 声が聞こえなくなり、すっかり呆けていたアデルは我に返る。「……あ、……っと! イクトミ! おい、大丈夫かよ!?」 アデルに続き、エ...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 7
ウエスタン小説、第7話。命運分けたスタイル。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -7.「なっ……」 思わず、アデルは木箱の陰から飛び出していた。「おい! イクトミ、……おい!」 どう声をかけていいのか分からず、アデルは名前を呼ぶに留まる。と、ひざ立ちになっていたトリスタンが、足に絡みついていたホルスターをむしり取って投げ捨て、のそっと立ち上がった。「次は貴様が相手か?」 アデルとトリスタンの目線が合う...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 6
ウエスタン小説、第6話。最後の決闘。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -6. エミルは素直にイクトミに場を譲り、元通り木箱の陰に隠れる。「あら」 と、そこにアーサー老人が立っていることに気付き、肩をすくめた。「あなたの入れ知恵かしら?」「うむ。元々、大閣下の経歴と西海岸の町とを比較し、周辺地域で何かあれば恐らく、奴はここを緊急時の脱出路に使うだろうと踏んでいた。そして一週間前、突然西部のあちこち...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 5
ウエスタン小説、第5話。港にて。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -5. 時刻はまもなく朝の6時になろうとしていたが、まだ、東の稜線に光は差していない。その寂れた港はまだ暗く、人の姿は無い。と――沖の方から一隻の船が、ポン、ポンと排気音を上げながら近付いて来た。「着きました」 まもなく船は桟橋に着き、小山のような男が一人、どすんと降り立った。「お手をどうぞ、閣下」「うむ」 続いて下卑た顔の老人が、...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 4
ウエスタン小説、第4話。夜明け前の制圧作戦。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -4. 未明頃にケープビーチを出発した州軍の艦隊は、明け方直前にはその海域に到達した。「あれが目的の島かね?」 海に浮かぶその影を指差した局長に、ジョン司令がうなずいて返す。「ああ、あれがサンドニシウス島だ。俺たちが知ってる限りじゃ漁師が中継地にしてる、直径6~7マイルくらいの無人島、……だったはずだが」 真っ暗な状況で...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 3
ウエスタン小説、第3話。あぶり出し。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -3. 局長から無茶な注文をされたものの、それでもジョン司令はその通りに答えてくれた。「あんたのご注文通り、500人。基地にいる全員を大急ぎで動員させた。おかげでまだコック姿のヤツまでいる始末だよ」「ありがとう、ジョン。ではすぐ出発だ。準備してくれ」「へいへい、仰せの通りに!」 ジョン司令が憮然とした顔で、大股で歩き去ったとこ...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 2
ウエスタン小説、第2話。出動要請。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -2. 1週間の期限付きで西部全域の電信電話網が封鎖されてから6日後――パディントン探偵局一行は、どうにかC州に到着することができた。組織が本拠地を特定されたこと、そしてこの封鎖作戦自体に勘付くかどうかが最大の懸念であったが、この6日間で襲撃されることも無く、また、尾行者らしい影も無かったことから、その懸念が杞憂であったことは確か...
DETECTIVE WESTERN 14 ~ 西の果て、遠い夜明け ~ 1
ほぼ1年ぶりのウエスタン小説。ルイス=クラーク探検隊。- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -1. 15世紀の終わりにヨーロッパ人がその地に足を踏み入れたその時から、「その夢」はほのかに、彼らの心に現れた。やがて彼らがヨーロッパと袂別し、「アメリカ人」と呼ばれるようになって以降も、彼らはその目標を達成すべく、歩み続けた。 そして1805年、ジェファーソン大統領の個人秘書であったメリウェザー・ルイスと...