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~ 追憶 武仲 ~ 「シー」 サリがそう言いながら体勢を変え、 俺に上から乗っかった瞬間だった。 パンッ 乾いた銃声が聞こえたのは……。 まるで扉は元々開け放たれていたとでもいうような空気感で 普通に入って来る由子さんとあいつ……。 俺とサリは身動きが取れず、 唯々固まり、二人を見ていた……。 俺とサリは、 たぶん、特に悪いことをしていたという訳では無いはずだ……。 けれども俺は、 由子さんはついさっきドアノブを破壊した拳銃で、 俺の頭も破壊するかも知れない……。 と、 そう思った。 俺は由子さんの目を見ようとした。 今の由子さんの心情を、少しでも予想できればと思ったからだ……。 けれども由子…
~ 追憶 武仲 ~ 理科の先生のケータイが鳴って誰かと話し始めた。 相手はどうやら学校の、他の先生らしい。 話しはすぐに終わって、理科の先生は電話を切り、 俺に向かって、 「行かなきゃならなくなった」 と、 言った。 生徒が一名補導されたということで、 呼び出しを喰らったらしい。 理科の先生を見送ると、俺は独りになった。 だけど隣の部屋、 扉の向こうにはラナが居る。 考えるまでも無かった。 扉の向こうに行こう。 俺はそう思った。 ラナは今、体調不良で寝ているのだから、 きっと抵抗出来ないだろうし、 水を吞ませてやったときみたいに 中途半端で止めたりさえしなければ、 きっと誰かに言ったりすること…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「死体運んでるみたいだね」 私と院長の声がシンクロした。 やはり院長と私は、とても気が合う。 由子は随分と疲れていたらしく、 揺すったり頬を叩いたりしても全く目を覚まさないので、 軽く洗った後、てきとうに拭いてから 裸のままベンツの後部座席に転がしておいた。 由子の身体には、首から上と手の平、足の裏以外、 びっちりと隙間無く刺青が入っている。 一見服を着ているようにも見えるので、 特に問題は生じないだろう。 犬に、 「また遊ぼうね」 と言いながら足払いして倒し、 顔をゆっくりと踏んであげたら、 少しだけ声を漏らした……。 私が足を上げるとすぐ、 犬はその場に手をつい…
~ 追憶 バーテンダー ~ 犬がいつもより早く動かなくなった。 それでも私は構わず続けた。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 私は、やっと自分の心の高ぶりが治まってきたのを感じた。 由子を、もう随分と待たせている……。 そろそろ帰ろうかと思い、 動かなくなった犬の脇腹を、もう二~三度蹴ってから部屋を出た。 隣に在る院長室の扉を開けると、 手足を診察台に縛り付けられ、 目隠しされてくちにガムテープを貼られた由子と、 裸の院長が居た。 院長が、 「あ、もう少しだからちょっと座って待ってて」 と言うので、 私は言われた通り椅子に座った。 パソコンの液晶画面に目を遣ると、 丁度犬が身体を起こしたところだ…
山ホラー3選・1冊目|夢枕獏『呼ぶ山』寝てたいGW明けに!夢と現実の間をさまよう幽玄小説
ゴールデンウィーク明けのぼんやりした頭にぴったり。夢と現実の境界がゆらぐ、夢枕獏の山岳ホラー短編集『呼ぶ山』を紹介します。
加門七海『祝山』山の神様を茶化すとこうなる|山ホラー3選・2冊目
加門七海のホラー小説『祝山』をレビュー。山の心霊スポットで起こる微妙な怪異が日常をじわじわ侵食する恐怖を描く。リアルな描写に背筋が凍る一冊。
知念実希人『ヨモツイクサ』ネタバレ厳禁のバイオホラー!|山ホラー3選・3冊目
🧠ネタバレ厳禁🧠 鳥肌が立つほどのラストが待っている…! 山岳ホラー×医療ミステリー×アニマルパニック⁉️ 知念実希人『ヨモツイクサ』は、ジャンルでは語れない戦慄バイオホラー。 読む前に前情報は最小限に👇
~ 追憶 バーテンダー ~ 十八リットルタンクに満タンの灯油が二つ、 計三十六リットル在ったので、 由子と手分けして家全体の床という床に満遍なく撒いた。 運転席でベンツのキーを回し、 ルームミラーに目を遣ると、 そこに写った家の窓から見える屋内では、 巨大な龍が蠢いていた。 その巨大な龍が、こちらを見て、 自分は今から大暴れをするのだと……、 そう、 言っている……。 後ろ髪引かれたが、リスクはできる限り避けるべき。 炎の龍が大暴れするのは想像だけで辛抱し、 私はベンツのギアを入れた。 「帰ったらミートソースパスタつくってよ。つゆだくで」 「嫌だよ」 二人で笑った。 「ちょっと車止めてくんない…
本日のご紹介はこちら。『最恐書き下ろしシリーズ』最新作。粒ぞろいの短編をどうぞ。 『慄く』読みました。 慄く 最恐の書き下ろしアンソロジー (角川ホラー文庫…
~ 追憶 ラナ ~ わたしの興奮が治まったのは、 あれから随分と時間が経ってからのことだった。 数十分、或いは数時間。 時計が無いのでわからないけれど、 随分と長い時間が経過したということだけは解っていた。 興奮が収まって行くのに比例して、 ふらつきや吐き気、頭痛も全て、戻ってきた……。 帰ろう。 一瞬そう思ったのだけれど、 わたしに帰る家は無い。 あの人のことが、心に浮んだ。 ここから由子さんのタトゥースタジオまでの距離はかなり近い。 切れ味が随分と鈍くなり。 刃こぼれまでしている菜切り包丁を、 わたしは小さなゴミ箱にそっと入れて、 記憶の中では神さまだったはずの塊に毛布を被せた。 神は自分…
~ 追憶 ラナ ~ 予想通り、一番奥の部屋は神さまの寝室だった。 部屋にはベッド以外に物が殆ど無く、 在るものはといえば、小さな本棚と、 そこに入った数冊の本、 あとは小さなゴミ箱くらい。 本当に寝室のみとして使っている部屋なのだろう。 わたしはベッドに神さまを優しく寝かせてから、 神さまの向こう脛を菜切り包丁で斜めに切った。 白いものが見えた。 「ねえ、気持ちいい?」 今度はわたしが神さまに訊く番だった。 菜切り包丁を十回、二十回……、 何度も何度も振った……。 神さまの身体を何度も何度も切りながら、 わたしは、 何度も何度も訊いた。 「ねえ、気持ちいい?」 しつこく、しつこく、 しつこく訊…
『ユビキタス』【読書感想】~絶滅したことのない不滅の生命体~
本日ご紹介の本はこちら。『リング』の鈴木光司さんが送り出したバイオホラ―…ん?ホラーか? 『ユビキタス』読みました。 ユビキタス (角川書店単行本)Amaz…
~ 追憶 ラナ ~ 三つの感覚があった。 一つめは、わたしの中に、どくどくと流れ込んでくる感覚……。 二つめは、床に強く押しつけられていたわたしの顔から押力が抜けた感覚。 そして三つめは、 わたしのお腹にあたっている菜切り包丁の、硬く、冷たい感覚……。 「あっ」 神さまはそう言って、自分の顔に手を遣った。 一振り目は、逆手に持った菜切り包丁を、左斜め下から右斜め上へ。 わたしがまだ小さかった頃、 父の膝の上で何度も何度も観た映画、 父もわたしも大好きだった、あの映画のワンシーンを思い出した。 わたしは今、 座頭市。 偶然だけど、パンツを履いていなかったので、更に俳優寄せで気分が上がる。 「ラナ…
~ 追憶 ラナ ~ ゆっくりと回転するステージの上で、身体を起こそうとしたら、 急な吐き気に襲われて嘔吐した。 回転しているのは、ステージではなく、 自分の頭なのだと気づき、 それと同時にここがストリップ小屋ではなく、 神さまの家だということを思い出した。 あれからどれくらいの時間が経過したのかは解らないけれど、 窓から差し込む月明かりと静けさから、 真夜中で在るということはわかった。 頭痛と吐き気が酷く、頭はぐるぐる回り続けているのだけれど、 幸い記憶はしっかりしていた……。 とりあえず、何とか上体を起こし、 あたりを見回す。 ひとまず安全。 近くに神さまは居ない。 わたしの手は、身体の後ろ…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「なんだよおまえ……、 教える必要なんて無いじゃん……、 楽で良いけどさ......」 由子は驚いて、 というよりも、ちょっと嫌そうな様子でそう言った。 きっと私に何かを『教える』という行為を、 『プレイ』として愉しみたかったのだろう……。 本心を隠しきれない子供のような由子の瞳を見て、 私は少しだけ、申し訳無い気持ちになった。 族狩りを探して居る暇が無かったので、 某組事務所で一台ベンツを借りた。 ベンツを貸してくれた担当の人には、 とりあえずトランクに入ってもらった。 由子が私に、 「運転席に座れよ」 と、 そう言ったので従った。 「とりあえず勘で運転してみな。…
~ 追憶 ラナ ~ だからわたしは、 自分の部屋の扉の横壁に張り付くようにして立ち……、 待った。 母を。 大好きな、 母を。 玄関のドアが開き、 そして閉まる音で、母の帰宅を知った。 母は今夜も、真っ先にわたしの部屋へと来てくれた。 わたしの部屋のドアを開け、 いつもならわたしが眠って居るはずのベッドへ向かって、 真っ直ぐに歩いて行く。 けれど、 今夜の私はドアの横に立って居る。 母の後ろ姿を見ながら、 また母と仲良くなった未来を夢想する。 わたしは先ず、 母の背中を 斜めに切った。 わたしは、台所に在った菜切り包丁を持って来て居た。 普段、三徳包丁ばかり使うので、 菜切り包丁は滅多に使わな…
~ 追憶 ラナ ~ ある日わたしは、台所で手を切った……。 野菜を切って居るときに……。 失敗したのではない。 この包丁で手を切ったら、 わたしはどう感じるのだろうか? そう思って、 切る気で切った……。 結果は思った通りだった。 今までに経験したことの無い快感が、 わたしの身体を駆け昇った。 脳が溶けかけた。 今なら父を、 努めて大好きだと思わなくても素でできる。 そう思った。 そしてわたしは、 すぐに閃いた。 母と仲良くなる方法を。 この快感を、 母にも教えてあげるのだ。 そうすれば母は、わたしに感謝し、 また以前のように、 わたしのことを大好きになってくれるに違いない。 と、 そう思った…
~ 追憶 ラナ ~ 髪を掴まれ、叩かれる……、 蹴られる……。 このときの痛みを、 わたしも……、 きもちいい、 と、 感じた……。 ラナさんはこのことを、 好きだと言って居たのだ……。 父がわたしのベッドに来なかったのは、 ほんの数日の間でしか無かった。 数日でまた、 今までと同じになった。 父に言われた通り、 わたしはそのことを母にナイショにして居たのだけれど、 母はわたしのことを、 毎日蹴ったり叩いたりするようになって居た。 父だけでなく、 母もわたしのことを、 ラナさんだと思って居るらしかった……。 わたしは母のことが好きだったし、 この頃はもうわたしにとって、 痛みと快感は完全に同じ…
~ 追憶 ラナ ~ 母が、 「忘れられるよね?」 と、 そう言ったので、 わたしは、 「はい」 と、 返事した。 結局ラナさんを刺した犯人は見つからなかった。 あれから父はずっと元気が無く、 暫く働いては辞めて、 また暫く働いては辞めて……。 そんな生活を続けて居た。 母は毎晩仕事に出るようになって居た。 わたしは髪を伸ばし始めた。 ラナさんみたいになりたかった……。 私が中二の夏のことだった。 その夜は特に蒸し暑く、 部屋にはクーラーなんて無かったし、 わたしは全然眠ることが出来なかった。 父がわたしのベッドに来たので、 「どうしたの?」 と、 訊くと、 「母にはナイショにしておくんだよ」 …
私の文体だと、コメディにしかならないのは、重々承知ではありますが(;^_^A にほんブログ村 Web小説ランキング https://note.com/mad_2025
本日はこちら。一部ホラーマニアの間で話題になっている小説。ホラーっていうかSF? 『右園死児報告』読みました。 右園死児報告Amazon(アマゾン) A…
皆様こんにちは、霜柱です。 スティーヴン・キングの『シャイニング』(深町眞理子・訳、文春文庫)を読みました。 今回はこの
愛の夢:憎い。けれど愛おしい。(愛欲書館)Amazon.co.jp:愛の夢:憎い。けれど愛おしい。(愛欲書館)電子書籍:貴島璃世:Kindleストア※旧タイトル「愛しているから憎くくてたまらない。」に加筆・改訂しました。彼が新しい女を作った。あたしという恋人がいるのに、これで何人目だろう。こんなにも愛しているのに、彼はいつもあたしを裏切る。裏切られるのを知っていながら、愛するのをやめられない。彼が憎い。憎くてたまらない。だって……愛しているから。切なくも哀しい、ダークでグロテスクな愛の物語。♦︎目次愛の夢ひとりめ画家の家双子姉妹ふたりめ、よにんめ、もっといるふたたび、画家の家ヘ人でなし画家の家〜我が運命の女(ファムファタール)♦︎人妻Xシリーズ人妻xAmazonの人妻Xのページにアクセスして、人妻Xのすべ...愛の夢:憎い。けれど愛おしい。
~ 追憶 武仲 ~ 由子さんは、 聞く耳持たぬ。 といった感じで、 俺の口にタオルを詰め込んだ。 俺は、あいつに身体の自由を奪われ、 由子さんに発言の自由も奪われ、 誤解をとく術が……、 完全に無くなってしまったのだった……。 由子さんの目をずっと見て居た……。 由子さんの目から溢れ出した大粒の涙が……、 俺の顔にボロボロと降り注いでくる……。 ガチッ 由子さんが普段使いして居る小さいヤツの音じゃ無い……。 「本気のときはこれなんだ」 由子さんがそう言って居たのを、 俺はよく覚えて居る……。 由子さんが肩で息をして居る……。 あいつは伏し目がちで視線を逸らして居る……。 スライドを引いて、 あ…
~ 追憶 武仲 ~ 「このゲス野郎が……」 俺には由子さんの目が、 声を出さずにそう言って居るように感じた……。 理科の先生とラナの会話が終わるまでの間、 俺に出来ることは、どうやら何も……、無いらしかった………。 「武仲さん……、 わたしの髪を掴んで、枕に押しつけながら……、 キス……、してきて……、 それから……」 ラナのすすり泣く声が、 耳にあてたコップの中で渦を巻いて居るように感じた。 そして、まるでその渦の求心力に導かれたかのように、 俺の目からは涙が溢れ出した。 ラナさん……、 マジで……、 マジで勘弁してください……。 言うのなら、 お願いだから最後まで言ってくれ……。 由子さん…
~ 追憶 ラナ ~ 目を覚ますと歪んだ天井が見えた。 頭が割れるように痛い。 突然の吐き気に襲われた私が側臥位の体勢を取ると、 目の前にスッとゴミ箱が差し出された。 「ここに吐け。遠慮はしなくて良いぞ」 由子さんの声だった。 ひとしきり吐いた後、 由子さんに言われて、ぬるめのお湯を少し飲み、 また仰向けになった。 柔らかい布団が頬や首に触れる感触が、とても気持ちよく、 思わず 「はぁ……」 と、 短い溜息が出た。 「何も気にせずに寝てて良いぞ。 わたしは隣の部屋に居るから、用が在ったらこれを鳴らせ」 そう言って、 わたしの枕元にアンティークの真鍮製ベルを置く由子さん。 「もし、わたしが出かける…
~ 追憶 武仲 ~ 俺を見下ろすサリを見上げて居た。 ここ最近、 サリと二人きりになったときは、 一緒にササッと掃除を済ませ、 こんな感じになって居るのがあたりまえだった。 相変わらずの大義名分探しや 言い訳からの芝居ごっこ……、 それに加え今回から、 うっかり、というのがラインナップに加わった。 大義名分でも在り言い訳でも在るのだけれど、 この、うっかりというのは、 中々にしてエスプリの効いた芝居で、 俺は一発で気に入ってしまった。 サリは学校に行って居ないのにとても賢い。 しょっちゅうそう思わせられることが在る。 勿体ないな、 とも思うけど、 もしかしたら 学校に行って居ないからこその賢さ…
~ 追憶 ラナ ~ 左の耳がキーンとなって……、 音の出た場所が……、熱い……。 「お前、僕の話聞いて無かったのか? くちごたえするなって言ったよな?」 昨日に続いて、今日も滅茶苦茶ついて居る。 数時間前に私が思ったことが、 間違いだったということに、今気付いた。 「吞め」 私が頬に手を当てて下を向き、 黙って居ると、 私の視界に影が入る。 「ごめんごめん、ラナちゃんは甘えんぼさんだねぇ」 神さまはそう言ってグラスのウイスキーを煽り、 すぐわたしにキスしてきた。 突然わたしの口内に流れ込んできたウイスキーの、 アルコール度数の高さに思わずむせ込んだところで、 また殴られた。 「お前、いいかげん…
~ 追憶 ラナ ~ トイレから出ると神さまが待って居て、すぐに私の手を取り、 「それじゃ、行こうか」 と、 店の扉を押した。 入るときに聞いたベルの音は、 何だかレトロで可愛いな……。 だったのに、 出るときに聞いたベルの音は、 耳障り以外の何ものでもなく、 神さまの声と同じくらいの 不快さだった。 ダメだダメだ、 と、 自分を諫める。 こういうときは心を切り離し、 頭だけで、全てのことを考えなければならない。 「ラナちゃん、今夜は僕の家に行こうか」 もう、ご飯を食べてしまった後だったので 言いづらいのだけれど……、 こればかりはどうにもならない……。 「あの……、 ごめんなさい……。 実はさ…
~ 追憶 ラナ ~ パスタが出来るまでの間、 神さまの話を聞いて居るふりをしながら、 てきとうに相づちを打って居た。 このときのわたしの頭の中は、 あのひとと過ごした昨夜のことでいっぱいだった……。 「ねえ、聞いてる?」 「え?あ…、 ごめんなさい……、なんだかぼーっとしちゃってて……」 「……」 「……こんなに早く、 また呼んでもらえるだなんて思って居なかったから……、 嬉しくて……」 少し不機嫌そうに見えた神さまの表情が、 すぐまた元に戻り、 わたしの髪の上から耳、頬にかけて、二回撫でてきた……。 そのときだった。 この神さまと初めて会ってイケメンだと思ったあの夜から、 まだ数日しか経って…
~ 追憶 ラナ ~ わたしは、早く一人で生きて行かれるようにならなければならない。 その為には、 お金が必要だ……。 昨夜の幸せな気分から、 わたしの心が一気にブルーになったところでケータイが震えた。 メールを読んだわたしは思わず、 「オーケー」 と、 あのひとがよく使って居る言葉を真似て居た。 あのひとと使い時が違うということは、 ちゃんと理解して居たのだけれど、 それでもあのひとのよく使って居る言葉を真似ることによって、 あのひとを近くに感じることが出来る。 これはわたしにとって、とても幸せなことだ。 数日前に初めて降臨した神さまが、 早くもリピートしてくれるのだという。 しかもこの神さま…
~ 追憶 ラナ ~ 昨日に続いて、今日も滅茶苦茶ついて居る。 神さまからのメールが届いたときには、そう思って居た。 昨夜はあのひとに遊んでもらえた上に、 美味し過ぎるお料理までつくってもらえた。 あのときみんなが手を上げたので、 私も反射的に手をあげてしまったのだけど、 手をあげてしまったすぐそのあとで、 自分の胃に、 最早別腹が存在できない程のキャパシティーオーヴァ―で 食べ物が詰まって居るということに気が付いた……。 だけど折角あのひとが……、 折角あのひとが、私の為に アイスを取りに行ってくれると言って居るのだ……。 今更断れる訳が無い。 私は……、覚悟を決めざるを得なかった……。 けれ…
~ 追憶 武仲 ~ 俺は......、 「はい……」 と、 答えた。 未だ手を付けて居なかったはずのソーセージが……、 何故か半分になって居た……。 顔を上げると理科の先生が、 何故か明らかに自分のくちのサイズの キャパシティを超えて居ると思しきものを頬張り、 一生懸命に咀嚼して居るところだった……。 パスタを食べ終わったあと、由子さんが、 「わたしアイス食べるけど他に食べたいひとー」 と言って手をあげたので、俺も手をあげた。 他のみんなもそれに続いた。 由子さんが立ち上がろうとしたら、 「取ってくるよ?」 と、 あいつ。 あいつが立ち上がろうとしたとき 理科の先生が何か耳打ちし、 あいつは軽…
~ 追憶 武仲 ~ 由子さんは一度そういう気分になったら、 どうしても、 たとえそれが来客中で在ったとしても、 そうしなければ気の済まない性格なのだ……。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 由子さんとテーブルに着いたとき、 幸いにもまだ料理は出来て居なかったのだけれど、 理科の先生の、 「もういいよー、つくってー」 というあいつへの声かけで、 みんなに気を使わせてしまって居たことを知った。 折角気付かないふりをしてくれて居るのに、 ここで俺が謝ったら台無しになると思い、 心の中で礼を言い、 由子さんと一緒に、黙って座った。 理科の先生が、また台所へ向かって声をかける。 「武仲くんのピーマンは、私…
~ 追憶 武仲 ~ 先生は段ボール箱をあいつの傍にガチャッと置いて、 あいつに深い口付けをしてから、 「ごはんつくって」 と、 そう言って、今置いたばかりのダンボールを指さした。 あいつは、 「オーケー」 と言って、 自分の腰に巻き付いた女の子のことなんか全く気にせずに立ち上がる。 女の子、ラナが何かむぐむぐ言ったような気がしたけれど、 どうやら目は覚まさなかったようだ。 顔を覗き込んだら、さっきと同じ表情で、 すやすやと変らぬ寝息を立てて居た。 あいつがダンボールから最初に取り出したのは、 円いところから持ち手まで銀色一色のフライパンだった。 あいつは、 「あー」 と、 珍しく、いや、 たぶ…
~ 追憶 武仲 ~ 俺はそのことが頭を過る度、全力で掻き消した。 深く考えてはいけないことだと思ったからだ……。 もしもこのことを、深く考えてしまったら……、 あいつと同じように、 それが当然で在るかのごとく対価を受け取って居るこの俺の、 大義名分或いは言い訳……、 それが、 意味を成さないもので在るのだということに……、 気付いてしまう可能性が非常に高いということが……、 解りきって居たからだ……。 「お前って料理出来んの?」 由子さんが料理をして居るところを今までに一度も見たことは無いし、 間違いなく出来ないとも思って居る。 それなのにこの、由子さんのタトゥースタジオ兼自宅には、 料理の本…
~ 追憶 武仲 ~ ふと気付くと、 随分と静かだった。 ベッドを見るとあいつは、 何事も無かったかのように腰掛けて、 本のページをめくって居た……。 あいつの腰に巻き付くようにして、女の子……、 たしか……、 ラナって呼ばれて居たと思う……、 は、 すやすやと幸せそうに寝息を立てて居る……。 安心しきった表情で、 あいつのことを随分と信頼して居るような雰囲気だ。 「あのひとのこと、たぶんみんな好きですよ?」 そう、サリは言う。 ここには好きなときに来て良いし、 好きなときに泊まって良い。 お酒以外の飲み物や食べ物は、 勝手に飲んだり食べたりしても良い。 でも、 これがもし無料だったとしたら………
~ 追憶 武仲 ~ 「ねえ……、 色々思い出しながら話してたら、何か怖くなって来ちゃった……」 サリの声と目は明らかに、 何かを怖がって居るようには感じられなかったのだけれど、 きっと大義名分、 或いは、普通に言い訳と言ってしまっても良いか?……、 それが欲しかったのだろうと思い、 「あ、うん、ゴメンね……、嫌なこと思い出させてしまって……」 と、 一応サリの芝居に乗っかってから、 さっきの続きを始めることにした。 ・・・・・・・・・・・・・・・ サリはまた語り出す。 あれは月明かりが眩しく感じられるほどの、明るい夜だった......。 「満月の夜は犯罪が多いと聞いたことも在って、 不安を感じ…
~ 追憶 武仲 ~ どうやらタイミングが悪かったらしく、 サリが言葉を詰まらせてしまったので、 「あ、ゴメンゴメン、あとでいいよ」 と言って、 一回終わらせることにした。 スピードを上げると、 後で良いと言ったのにサリが何か喋ろうとしたので、 俺は気を使い、 手でサリのくちを塞いで喋ることが出来ないようにしてあげた。 そして更にスピードを上げる……。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 一回終わらせてから少しだけ待って、 もう話せるかな?と思ったので、俺はもう一度尋ねた。 「ねえ、ここに来る女の子達って、どういう女の子達なの?」 サリはまだ少しぼ~っとした感じだったけど、 「ここに来る女の子達は、…
~ 追憶 武仲 ~ そしてその女の子は……、 懇願するような目で、あいつのことを見た。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 俺がここに住むようになって初めての、 由子さんがバイトに出かける夜のことだった。 「もしも今夜誰か女の子が来たら、すきにしていいから。 あ、でもサリが来たときだけは、掃除しろって言ってやって。 あいつは掃除が上手い」 初めて聞く名前だったけれど、誰がサリなのかはすぐに解ったので、 「了解」 と、 そう言って俺はバイトに行く由子さんを見送った。 その日の夜にサリは来ず、 他の、初めて見る女の子が来た。 「誰?由子さんは?」 と、 そう問われたので、 「今夜はバイトに行ってるんだ…
読書メーター2月のまとめ(2025)~ホラーばっかりやん…~
本日も3000を超える文字数でごめんなさい。読メの部分は覚書なので読み飛ばしていただいてOKです。 2月の読書メーター読んだ本の数:15読んだページ数:434…
~ 追憶 武仲 ~ 俺の身体をするりと避けて、黙って部屋に入って行った女の子は、 ベッドに腰掛けて本を読んで居たあいつの前へ行って、 当たり前の様に、短いスカートの裾を持ち上げた。 下着は身につけて居ない。 前来た時と、同じだ......。 小さな動きのひとつひとつや、 細かな台詞まで、 全て覚えてしまって居る、 何度も何度も見返した、大好きな映画のワンシーンみたいに感じた。 あいつはまだ、女の子が傍に来て居ることに気付いては居ない。 いや……、 気付いて居ないふりをして居るだけか?……。 女の子が、そのままの姿であいつにもう一歩近付く……。 女の子が持ち上げているスカートが、 あいつの視線の…
~ 追憶 武仲 ~ インターホンが鳴ったので見に行くと、 女の子が立って居た。 知って居る顔だった。 前にもここへ来たことが在る女の子だ。 「由子さんは?」 「今夜はバイトだよ」 と、 俺がそう答えたらその女の子は、 俺の身体をするりと避けて、 黙って部屋に入って行った。 由子さんとつきあうようになってから、 というか、 初めてこの、由子さんのタトゥースタジオ兼自宅に 連れてこられたときから、 ここが俺の住む場所になった。 由子さんが、 そうしろと言ってくれたのだ。 俺はもう、パンを盗むこともしなくて良くなった。 これも、由子さんがそうしろと言ってくれたのだ。 「対価は貰うけどな」 そう言って…
本日はこちら。試写会に行ったら呪われた。 『死写会』読みました。 死写会Amazon(アマゾン) Amazon.co.jp: 死写会 電子書籍: 五十嵐 …
~ 追憶 由子 ~ 私が喋り終える前に、 ターゲットの男は両耳を押さえて蹲り、 すぐSP達に隠されて見えなくなった。 路面に残る鮮やかな赤色だけが、 ターゲットの存在を、 忘れさせないポイントだった。 契約して居る企業から、 ある企業のトップを脅かして欲しいという依頼が入った。 方法は問わないが、 いつでもお前を消せるのだということを、 しっかりとその男の記憶に刻みつけてやって欲しいとのこと。 ターゲットの現れる場所と日時は事前に聞いて居た。 その日は大きな会合が開かれるのだという。 ターゲットが会場から出て、 車まで歩く短い時間に、 依頼内容を遂行しなければならない。 実弾を装填し、 安全装…
『或るバイトを募集しています』【読書感想】~すぐ読めるモキュホラ~
本日はこちらのモキュホラ。中高生の皆さんや、本なんか読めないよって方々におススメでーす 『或るバイトを募集しています』読みました。 或るバイトを募集していま…
~ 追憶 バーテンダー ~ 最中女がくちを開く。 「由子のヤツ……、随分…と……愉しそう…だ…ね……。 武仲君も…元気そうで……よかっ……た……...」 「前にも言ったろ? 死体が急に喋りだしたらびっくりするからやめろって……」 死体は声を出さずに笑った。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 翌日の朝学校で、 教室に入ると武仲と目が合ったのだが、 何故か武仲は、 スっと視線を逸らした……。 私は、 そのまま机に突っ伏して狸寝入りを決め込もうとした武仲の頭を掴み、 強制的に目を合わさせた。 「何故目を逸らす?」 「……な…なんていうか……、もしかしたら……、 お前が、怒ってるんじゃないかと……、思っ…
~ 追憶 バーテンダー ~ 私は、女との会話を終え、 電話を置いたところで台所へと向かった。 正直かなりお腹が空いて居たので、 冷蔵庫に何か無いか見に行こうと思ったのだ......。 果たして、冷蔵庫の扉を開けた私は 愕然として居た。 由子の冷蔵庫にはビールがパンパンに詰まって居り、 食べ物といえば 使いかけのバターしか確認出来なかったからだ……。 私がそっと冷蔵庫の扉を閉めると、 私の腹が、また グウ…、と、鳴ったがその音は、 ドアノブをガチャガチャする音にマスキングされた。 一応のぞき穴で確認してから鍵を開けると、 女はすぐ私に抱きつき、口付けて来た。 隣の部屋からは、由子のうるさい声が聞…
~ 追憶 バーテンダー ~ 途中で止まった台詞を由子が引き受ける……。 「わたしさ、今あんまりお腹空いてないからこれも食べなよ」 私も由子と同じように武仲に、 バタートーストを差し出して、軽く二回ほど頷いた。 結局食パン二斤分のバタートーストを一人でたいらげた武仲は、 とても幸せそうな顔をして居た。 この、とても幸せそうな顔をして居る少年は……、 ひとごろし なので在る......。 由子が大きなあくびをして、 おもむろに服を脱ぎだした。 今度は武仲も目を逸らさない。 由子は武仲が腰掛けて居るベッドにするりと横たわり、 「わたしちょっと仮眠とるからさぁ、あの女呼んどいてよ」 そう言って私に電話…
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