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~ 追憶 ラナ ~ 髪を掴まれ、叩かれる……、 蹴られる……。 このときの痛みを、 わたしも……、 きもちいい、 と、 感じた……。 ラナさんはこのことを、 好きだと言って居たのだ……。 父がわたしのベッドに来なかったのは、 ほんの数日の間でしか無かった。 数日でまた、 今までと同じになった。 父に言われた通り、 わたしはそのことを母にナイショにして居たのだけれど、 母はわたしのことを、 毎日蹴ったり叩いたりするようになって居た。 父だけでなく、 母もわたしのことを、 ラナさんだと思って居るらしかった……。 わたしは母のことが好きだったし、 この頃はもうわたしにとって、 痛みと快感は完全に同じ…
~ 追憶 ラナ ~ 母が、 「忘れられるよね?」 と、 そう言ったので、 わたしは、 「はい」 と、 返事した。 結局ラナさんを刺した犯人は見つからなかった。 あれから父はずっと元気が無く、 暫く働いては辞めて、 また暫く働いては辞めて……。 そんな生活を続けて居た。 母は毎晩仕事に出るようになって居た。 わたしは髪を伸ばし始めた。 ラナさんみたいになりたかった……。 私が中二の夏のことだった。 その夜は特に蒸し暑く、 部屋にはクーラーなんて無かったし、 わたしは全然眠ることが出来なかった。 父がわたしのベッドに来たので、 「どうしたの?」 と、 訊くと、 「母にはナイショにしておくんだよ」 …
私の文体だと、コメディにしかならないのは、重々承知ではありますが(;^_^A にほんブログ村 Web小説ランキング https://note.com/mad_2025
本日はこちら。一部ホラーマニアの間で話題になっている小説。ホラーっていうかSF? 『右園死児報告』読みました。 右園死児報告Amazon(アマゾン) A…
皆様こんにちは、霜柱です。 スティーヴン・キングの『シャイニング』(深町眞理子・訳、文春文庫)を読みました。 今回はこの
愛の夢:憎い。けれど愛おしい。(愛欲書館)Amazon.co.jp:愛の夢:憎い。けれど愛おしい。(愛欲書館)電子書籍:貴島璃世:Kindleストア※旧タイトル「愛しているから憎くくてたまらない。」に加筆・改訂しました。彼が新しい女を作った。あたしという恋人がいるのに、これで何人目だろう。こんなにも愛しているのに、彼はいつもあたしを裏切る。裏切られるのを知っていながら、愛するのをやめられない。彼が憎い。憎くてたまらない。だって……愛しているから。切なくも哀しい、ダークでグロテスクな愛の物語。♦︎目次愛の夢ひとりめ画家の家双子姉妹ふたりめ、よにんめ、もっといるふたたび、画家の家ヘ人でなし画家の家〜我が運命の女(ファムファタール)♦︎人妻Xシリーズ人妻xAmazonの人妻Xのページにアクセスして、人妻Xのすべ...愛の夢:憎い。けれど愛おしい。
~ 追憶 武仲 ~ 由子さんは、 聞く耳持たぬ。 といった感じで、 俺の口にタオルを詰め込んだ。 俺は、あいつに身体の自由を奪われ、 由子さんに発言の自由も奪われ、 誤解をとく術が……、 完全に無くなってしまったのだった……。 由子さんの目をずっと見て居た……。 由子さんの目から溢れ出した大粒の涙が……、 俺の顔にボロボロと降り注いでくる……。 ガチッ 由子さんが普段使いして居る小さいヤツの音じゃ無い……。 「本気のときはこれなんだ」 由子さんがそう言って居たのを、 俺はよく覚えて居る……。 由子さんが肩で息をして居る……。 あいつは伏し目がちで視線を逸らして居る……。 スライドを引いて、 あ…
~ 追憶 武仲 ~ 「このゲス野郎が……」 俺には由子さんの目が、 声を出さずにそう言って居るように感じた……。 理科の先生とラナの会話が終わるまでの間、 俺に出来ることは、どうやら何も……、無いらしかった………。 「武仲さん……、 わたしの髪を掴んで、枕に押しつけながら……、 キス……、してきて……、 それから……」 ラナのすすり泣く声が、 耳にあてたコップの中で渦を巻いて居るように感じた。 そして、まるでその渦の求心力に導かれたかのように、 俺の目からは涙が溢れ出した。 ラナさん……、 マジで……、 マジで勘弁してください……。 言うのなら、 お願いだから最後まで言ってくれ……。 由子さん…
~ 追憶 ラナ ~ 目を覚ますと歪んだ天井が見えた。 頭が割れるように痛い。 突然の吐き気に襲われた私が側臥位の体勢を取ると、 目の前にスッとゴミ箱が差し出された。 「ここに吐け。遠慮はしなくて良いぞ」 由子さんの声だった。 ひとしきり吐いた後、 由子さんに言われて、ぬるめのお湯を少し飲み、 また仰向けになった。 柔らかい布団が頬や首に触れる感触が、とても気持ちよく、 思わず 「はぁ……」 と、 短い溜息が出た。 「何も気にせずに寝てて良いぞ。 わたしは隣の部屋に居るから、用が在ったらこれを鳴らせ」 そう言って、 わたしの枕元にアンティークの真鍮製ベルを置く由子さん。 「もし、わたしが出かける…
~ 追憶 武仲 ~ 俺を見下ろすサリを見上げて居た。 ここ最近、 サリと二人きりになったときは、 一緒にササッと掃除を済ませ、 こんな感じになって居るのがあたりまえだった。 相変わらずの大義名分探しや 言い訳からの芝居ごっこ……、 それに加え今回から、 うっかり、というのがラインナップに加わった。 大義名分でも在り言い訳でも在るのだけれど、 この、うっかりというのは、 中々にしてエスプリの効いた芝居で、 俺は一発で気に入ってしまった。 サリは学校に行って居ないのにとても賢い。 しょっちゅうそう思わせられることが在る。 勿体ないな、 とも思うけど、 もしかしたら 学校に行って居ないからこその賢さ…
~ 追憶 ラナ ~ 左の耳がキーンとなって……、 音の出た場所が……、熱い……。 「お前、僕の話聞いて無かったのか? くちごたえするなって言ったよな?」 昨日に続いて、今日も滅茶苦茶ついて居る。 数時間前に私が思ったことが、 間違いだったということに、今気付いた。 「吞め」 私が頬に手を当てて下を向き、 黙って居ると、 私の視界に影が入る。 「ごめんごめん、ラナちゃんは甘えんぼさんだねぇ」 神さまはそう言ってグラスのウイスキーを煽り、 すぐわたしにキスしてきた。 突然わたしの口内に流れ込んできたウイスキーの、 アルコール度数の高さに思わずむせ込んだところで、 また殴られた。 「お前、いいかげん…
~ 追憶 ラナ ~ トイレから出ると神さまが待って居て、すぐに私の手を取り、 「それじゃ、行こうか」 と、 店の扉を押した。 入るときに聞いたベルの音は、 何だかレトロで可愛いな……。 だったのに、 出るときに聞いたベルの音は、 耳障り以外の何ものでもなく、 神さまの声と同じくらいの 不快さだった。 ダメだダメだ、 と、 自分を諫める。 こういうときは心を切り離し、 頭だけで、全てのことを考えなければならない。 「ラナちゃん、今夜は僕の家に行こうか」 もう、ご飯を食べてしまった後だったので 言いづらいのだけれど……、 こればかりはどうにもならない……。 「あの……、 ごめんなさい……。 実はさ…
~ 追憶 ラナ ~ パスタが出来るまでの間、 神さまの話を聞いて居るふりをしながら、 てきとうに相づちを打って居た。 このときのわたしの頭の中は、 あのひとと過ごした昨夜のことでいっぱいだった……。 「ねえ、聞いてる?」 「え?あ…、 ごめんなさい……、なんだかぼーっとしちゃってて……」 「……」 「……こんなに早く、 また呼んでもらえるだなんて思って居なかったから……、 嬉しくて……」 少し不機嫌そうに見えた神さまの表情が、 すぐまた元に戻り、 わたしの髪の上から耳、頬にかけて、二回撫でてきた……。 そのときだった。 この神さまと初めて会ってイケメンだと思ったあの夜から、 まだ数日しか経って…
~ 追憶 ラナ ~ わたしは、早く一人で生きて行かれるようにならなければならない。 その為には、 お金が必要だ……。 昨夜の幸せな気分から、 わたしの心が一気にブルーになったところでケータイが震えた。 メールを読んだわたしは思わず、 「オーケー」 と、 あのひとがよく使って居る言葉を真似て居た。 あのひとと使い時が違うということは、 ちゃんと理解して居たのだけれど、 それでもあのひとのよく使って居る言葉を真似ることによって、 あのひとを近くに感じることが出来る。 これはわたしにとって、とても幸せなことだ。 数日前に初めて降臨した神さまが、 早くもリピートしてくれるのだという。 しかもこの神さま…
~ 追憶 ラナ ~ 昨日に続いて、今日も滅茶苦茶ついて居る。 神さまからのメールが届いたときには、そう思って居た。 昨夜はあのひとに遊んでもらえた上に、 美味し過ぎるお料理までつくってもらえた。 あのときみんなが手を上げたので、 私も反射的に手をあげてしまったのだけど、 手をあげてしまったすぐそのあとで、 自分の胃に、 最早別腹が存在できない程のキャパシティーオーヴァ―で 食べ物が詰まって居るということに気が付いた……。 だけど折角あのひとが……、 折角あのひとが、私の為に アイスを取りに行ってくれると言って居るのだ……。 今更断れる訳が無い。 私は……、覚悟を決めざるを得なかった……。 けれ…
~ 追憶 武仲 ~ 俺は......、 「はい……」 と、 答えた。 未だ手を付けて居なかったはずのソーセージが……、 何故か半分になって居た……。 顔を上げると理科の先生が、 何故か明らかに自分のくちのサイズの キャパシティを超えて居ると思しきものを頬張り、 一生懸命に咀嚼して居るところだった……。 パスタを食べ終わったあと、由子さんが、 「わたしアイス食べるけど他に食べたいひとー」 と言って手をあげたので、俺も手をあげた。 他のみんなもそれに続いた。 由子さんが立ち上がろうとしたら、 「取ってくるよ?」 と、 あいつ。 あいつが立ち上がろうとしたとき 理科の先生が何か耳打ちし、 あいつは軽…
~ 追憶 武仲 ~ 由子さんは一度そういう気分になったら、 どうしても、 たとえそれが来客中で在ったとしても、 そうしなければ気の済まない性格なのだ……。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 由子さんとテーブルに着いたとき、 幸いにもまだ料理は出来て居なかったのだけれど、 理科の先生の、 「もういいよー、つくってー」 というあいつへの声かけで、 みんなに気を使わせてしまって居たことを知った。 折角気付かないふりをしてくれて居るのに、 ここで俺が謝ったら台無しになると思い、 心の中で礼を言い、 由子さんと一緒に、黙って座った。 理科の先生が、また台所へ向かって声をかける。 「武仲くんのピーマンは、私…
~ 追憶 武仲 ~ 先生は段ボール箱をあいつの傍にガチャッと置いて、 あいつに深い口付けをしてから、 「ごはんつくって」 と、 そう言って、今置いたばかりのダンボールを指さした。 あいつは、 「オーケー」 と言って、 自分の腰に巻き付いた女の子のことなんか全く気にせずに立ち上がる。 女の子、ラナが何かむぐむぐ言ったような気がしたけれど、 どうやら目は覚まさなかったようだ。 顔を覗き込んだら、さっきと同じ表情で、 すやすやと変らぬ寝息を立てて居た。 あいつがダンボールから最初に取り出したのは、 円いところから持ち手まで銀色一色のフライパンだった。 あいつは、 「あー」 と、 珍しく、いや、 たぶ…
~ 追憶 武仲 ~ 俺はそのことが頭を過る度、全力で掻き消した。 深く考えてはいけないことだと思ったからだ……。 もしもこのことを、深く考えてしまったら……、 あいつと同じように、 それが当然で在るかのごとく対価を受け取って居るこの俺の、 大義名分或いは言い訳……、 それが、 意味を成さないもので在るのだということに……、 気付いてしまう可能性が非常に高いということが……、 解りきって居たからだ……。 「お前って料理出来んの?」 由子さんが料理をして居るところを今までに一度も見たことは無いし、 間違いなく出来ないとも思って居る。 それなのにこの、由子さんのタトゥースタジオ兼自宅には、 料理の本…
~ 追憶 武仲 ~ ふと気付くと、 随分と静かだった。 ベッドを見るとあいつは、 何事も無かったかのように腰掛けて、 本のページをめくって居た……。 あいつの腰に巻き付くようにして、女の子……、 たしか……、 ラナって呼ばれて居たと思う……、 は、 すやすやと幸せそうに寝息を立てて居る……。 安心しきった表情で、 あいつのことを随分と信頼して居るような雰囲気だ。 「あのひとのこと、たぶんみんな好きですよ?」 そう、サリは言う。 ここには好きなときに来て良いし、 好きなときに泊まって良い。 お酒以外の飲み物や食べ物は、 勝手に飲んだり食べたりしても良い。 でも、 これがもし無料だったとしたら………
~ 追憶 武仲 ~ 「ねえ……、 色々思い出しながら話してたら、何か怖くなって来ちゃった……」 サリの声と目は明らかに、 何かを怖がって居るようには感じられなかったのだけれど、 きっと大義名分、 或いは、普通に言い訳と言ってしまっても良いか?……、 それが欲しかったのだろうと思い、 「あ、うん、ゴメンね……、嫌なこと思い出させてしまって……」 と、 一応サリの芝居に乗っかってから、 さっきの続きを始めることにした。 ・・・・・・・・・・・・・・・ サリはまた語り出す。 あれは月明かりが眩しく感じられるほどの、明るい夜だった......。 「満月の夜は犯罪が多いと聞いたことも在って、 不安を感じ…
~ 追憶 武仲 ~ どうやらタイミングが悪かったらしく、 サリが言葉を詰まらせてしまったので、 「あ、ゴメンゴメン、あとでいいよ」 と言って、 一回終わらせることにした。 スピードを上げると、 後で良いと言ったのにサリが何か喋ろうとしたので、 俺は気を使い、 手でサリのくちを塞いで喋ることが出来ないようにしてあげた。 そして更にスピードを上げる……。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 一回終わらせてから少しだけ待って、 もう話せるかな?と思ったので、俺はもう一度尋ねた。 「ねえ、ここに来る女の子達って、どういう女の子達なの?」 サリはまだ少しぼ~っとした感じだったけど、 「ここに来る女の子達は、…
~ 追憶 武仲 ~ そしてその女の子は……、 懇願するような目で、あいつのことを見た。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 俺がここに住むようになって初めての、 由子さんがバイトに出かける夜のことだった。 「もしも今夜誰か女の子が来たら、すきにしていいから。 あ、でもサリが来たときだけは、掃除しろって言ってやって。 あいつは掃除が上手い」 初めて聞く名前だったけれど、誰がサリなのかはすぐに解ったので、 「了解」 と、 そう言って俺はバイトに行く由子さんを見送った。 その日の夜にサリは来ず、 他の、初めて見る女の子が来た。 「誰?由子さんは?」 と、 そう問われたので、 「今夜はバイトに行ってるんだ…
読書メーター2月のまとめ(2025)~ホラーばっかりやん…~
本日も3000を超える文字数でごめんなさい。読メの部分は覚書なので読み飛ばしていただいてOKです。 2月の読書メーター読んだ本の数:15読んだページ数:434…
~ 追憶 武仲 ~ 俺の身体をするりと避けて、黙って部屋に入って行った女の子は、 ベッドに腰掛けて本を読んで居たあいつの前へ行って、 当たり前の様に、短いスカートの裾を持ち上げた。 下着は身につけて居ない。 前来た時と、同じだ......。 小さな動きのひとつひとつや、 細かな台詞まで、 全て覚えてしまって居る、 何度も何度も見返した、大好きな映画のワンシーンみたいに感じた。 あいつはまだ、女の子が傍に来て居ることに気付いては居ない。 いや……、 気付いて居ないふりをして居るだけか?……。 女の子が、そのままの姿であいつにもう一歩近付く……。 女の子が持ち上げているスカートが、 あいつの視線の…
~ 追憶 武仲 ~ インターホンが鳴ったので見に行くと、 女の子が立って居た。 知って居る顔だった。 前にもここへ来たことが在る女の子だ。 「由子さんは?」 「今夜はバイトだよ」 と、 俺がそう答えたらその女の子は、 俺の身体をするりと避けて、 黙って部屋に入って行った。 由子さんとつきあうようになってから、 というか、 初めてこの、由子さんのタトゥースタジオ兼自宅に 連れてこられたときから、 ここが俺の住む場所になった。 由子さんが、 そうしろと言ってくれたのだ。 俺はもう、パンを盗むこともしなくて良くなった。 これも、由子さんがそうしろと言ってくれたのだ。 「対価は貰うけどな」 そう言って…
本日はこちら。試写会に行ったら呪われた。 『死写会』読みました。 死写会Amazon(アマゾン) Amazon.co.jp: 死写会 電子書籍: 五十嵐 …
~ 追憶 由子 ~ 私が喋り終える前に、 ターゲットの男は両耳を押さえて蹲り、 すぐSP達に隠されて見えなくなった。 路面に残る鮮やかな赤色だけが、 ターゲットの存在を、 忘れさせないポイントだった。 契約して居る企業から、 ある企業のトップを脅かして欲しいという依頼が入った。 方法は問わないが、 いつでもお前を消せるのだということを、 しっかりとその男の記憶に刻みつけてやって欲しいとのこと。 ターゲットの現れる場所と日時は事前に聞いて居た。 その日は大きな会合が開かれるのだという。 ターゲットが会場から出て、 車まで歩く短い時間に、 依頼内容を遂行しなければならない。 実弾を装填し、 安全装…
『或るバイトを募集しています』【読書感想】~すぐ読めるモキュホラ~
本日はこちらのモキュホラ。中高生の皆さんや、本なんか読めないよって方々におススメでーす 『或るバイトを募集しています』読みました。 或るバイトを募集していま…
~ 追憶 バーテンダー ~ 最中女がくちを開く。 「由子のヤツ……、随分…と……愉しそう…だ…ね……。 武仲君も…元気そうで……よかっ……た……...」 「前にも言ったろ? 死体が急に喋りだしたらびっくりするからやめろって……」 死体は声を出さずに笑った。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 翌日の朝学校で、 教室に入ると武仲と目が合ったのだが、 何故か武仲は、 スっと視線を逸らした……。 私は、 そのまま机に突っ伏して狸寝入りを決め込もうとした武仲の頭を掴み、 強制的に目を合わさせた。 「何故目を逸らす?」 「……な…なんていうか……、もしかしたら……、 お前が、怒ってるんじゃないかと……、思っ…
~ 追憶 バーテンダー ~ 私は、女との会話を終え、 電話を置いたところで台所へと向かった。 正直かなりお腹が空いて居たので、 冷蔵庫に何か無いか見に行こうと思ったのだ......。 果たして、冷蔵庫の扉を開けた私は 愕然として居た。 由子の冷蔵庫にはビールがパンパンに詰まって居り、 食べ物といえば 使いかけのバターしか確認出来なかったからだ……。 私がそっと冷蔵庫の扉を閉めると、 私の腹が、また グウ…、と、鳴ったがその音は、 ドアノブをガチャガチャする音にマスキングされた。 一応のぞき穴で確認してから鍵を開けると、 女はすぐ私に抱きつき、口付けて来た。 隣の部屋からは、由子のうるさい声が聞…
~ 追憶 バーテンダー ~ 途中で止まった台詞を由子が引き受ける……。 「わたしさ、今あんまりお腹空いてないからこれも食べなよ」 私も由子と同じように武仲に、 バタートーストを差し出して、軽く二回ほど頷いた。 結局食パン二斤分のバタートーストを一人でたいらげた武仲は、 とても幸せそうな顔をして居た。 この、とても幸せそうな顔をして居る少年は……、 ひとごろし なので在る......。 由子が大きなあくびをして、 おもむろに服を脱ぎだした。 今度は武仲も目を逸らさない。 由子は武仲が腰掛けて居るベッドにするりと横たわり、 「わたしちょっと仮眠とるからさぁ、あの女呼んどいてよ」 そう言って私に電話…
【2025年最新】背筋が凍るホラー小説傑作3選!今年読むべき恐怖の物語
「2025年に読むべきホラー小説を厳選!都市伝説、心霊現象、SNS怪談をテーマにした短編ホラーを紹介。背筋が凍る恐怖の物語があなたを待っている。『語りの灯火』の最新ホラー傑作をチェック!」
~ 追憶 バーテンダー ~ 図太かったり 普通だったり ピュアだったり……、 わけわかんないな、こいつ……、 と、 そう思った。 天井近くに在る、光を取り入れるための窓を見上げた先には、 雲間に見え隠れする幾つかの星が、 まるでゆっくりと 自らの力で……………… 点滅して居るかのように見えた………………。 「腹減ってんだろ?パンしか無いけど食べるか?」 「え?あ、良いんですか? はい、食べたいです。パン………、 好きです………………」 由子は全身刺青の長身で、 目付きは鋭め。 一見かなり恐い感じだが、 実はとても優しい。 それにしても武仲……。 不思議な奴だ……。 由子のヴィジュアルを見ても全…
~ 追憶 バーテンダー ~ 由子が大急ぎで表へ出て、 扉が閉まると同時に武仲がむくりと起き上がった。 長めの眠りから覚めた武仲の第一声は、 「お前、婦警さんともつきあってんの?」 だった。 「疲れたろ?シャワーでも浴びてくれば?」 ここが、まるで自分の家で在るかのように私が言うと、 武仲は、 「え?いいの?サンキュー」 そう言ってシャワールームに入っていった。 武仲は、間違いなくここが私の家だと思って居るだろう。 明らかに……、湯船に湯を張る音が聞こえてきた。 私は確か……、 「シャワーでも浴びてくれば?」 と、 そう言っただけのはずなのだか……。 しかし、 特に嫌な気はしなかった。 無駄に気…
~ 追憶 バーテンダー ~ 由子の声が あまりにも大きくなってきたので、 武仲が目を覚ますのではないかと思い、 武仲を横たえたベッドに視線を遣ると……、 片目だけ細く開いて居る武仲の視線と 私の視線がぴたりと合った……。 その瞬間 武仲の上瞼と、下瞼の距離は狭まったが、 完全に閉じることはなかった……。 武仲の疲れは、 どうやらやっと、 とれたらしかった.........。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 「あ…、いけね……」 「どうしたの?」 「一旦ブレイク。車、捨ててくるよ」 「ああ……、そうだよね」 荷物を運ぶ為に、 由子が続狩りから狩ってきたワンボックスを、 由子のタトゥースタジオ兼自…
~ 追憶 バーテンダー ~ 由子のタトゥースタジオ兼自宅に到着し、 二人で武仲を運んだ。 武仲は、まだ目を覚まさない。 武仲をベッドに寝かせたところで、 由子がいきなり私のくちを塞いできた……。 一旦くちを離させてから、 「どうしたの?」 と、 一応尋ねると、 「あんなに沢山運んでやったんだから、 今日は私の好きなようにしても良いんだろ?」 と、 由子。 私は「いいよ」と答えるしか無かった。 ・・・・・・・・・・・・・・・ 由子の声が あまりにも大きくなってきたので、 武仲が目を覚ますのではないかと思い、 武仲を横たえたベッドに視線を遣ると……、 片目だけ細く開いて居る武仲の視線と 私の視線が…
~ 追憶 由子 ~ 嗚呼……、 たまらなく眠い………。 折角お昼寝をしようと思い、 ベッドに倒れ込み、 ウトウトとしかけたところで電話が鳴った……。 昨日、 偶々通りかかった交番の中に居た警察官の顔に見覚えが在った。 記憶を辿ろうと思ったが、 その前に思い出した。 バイト先の御常連さんだった。 私は、ちょっとからかってやろうと思い、 そっと交番に入って その警察官を後ろから縛り上げ、 目隠しと猿轡もした。 私の顔は見られて居ない。 警察官は、 かなり大きな恐怖を感じて居る様子で、 抵抗するそぶりも見せたが……、 私が奥の部屋へと引きずって行き、 上着をめくってから、そのミミズ腫れだらけの背中を…
『穢れた聖地巡礼について』【読書感想】~ヒトコワオカルトモキュホラ全部乗っけ盛り~
本日はこちら。『近畿地方のある場所について』で一躍メジャーになった背筋さんの新作。 『穢れた聖地巡礼について』読みました。 穢れた聖地巡礼についてAmazo…
~ 追憶 理科教師 ~ 今日は珍しく、武仲君の心が読める……。 いつも私の授業中、 武仲君の心の中は、 私とあの子が一緒に居るところを詳細に思い出すことに、 その面積の全てが使われて居た。 だからこれまで武仲君の、 それ以外の、通常の心を読むということが出来なかったのだ……。 私は他人の心を読むことが出来る。 読む、というのは文字通りのそれで、 聞こえたり感じたりするのでは無く、 本当に文字として確認出来るという意味だ。 その文字は、その人の傍に浮いた状態で、 パッと現れ、そしてまたすぐにパッと……、 消えてしまう。 それは、本当にすぐ消えてしまうものなので、 本当にその人の心が読みたい場合は…
~ 追憶 バーテンダー ~ ワンボックスの運転席で眠って居た由子を揺すり起し、 二人で院長と犬に、 「バイバイ」 と言った。 この日も院長は、 「バイバイ」 と、返してくれた。 犬は吠えずに お辞儀した。 院長の言う通り、賢い犬だと思った。 「ねえ由子、 こないだ言ってた、 院長とあの女が映ってる動画観たいよ」 「ああ、そうだった……、 すっかり忘れて居たよ、ゴメンゴメン」 まだ眠気がおさまらないらしく、あくびをしながら由子が続ける。 「そうだ……、 今夜あの女呼び出してさ、 縛り上げて身動きとれなくしてやってから、 皆で一緒に観るってのはどう?」 由子はやっと覚醒して来たらしく、 大きく目を…
~ 追憶 バーテンダー ~ ブルーシートに包まれた大きな荷物を、 二つワンボックスの後ろに積み込み終えた由子は、 「そんじゃぁ行こっか」 と言って口角を上げた……………………………………… 病院に着き、 前回同様由子が電話をかけると、 出迎えてくれたのは院長では無く……、 あのときの犬だった……。 由子は気付いて居ないらしかったが、 あのとき歯科医師のところに居た犬だ。 ワンボックスの後ろに積んできたものは、 今回も担架を使って、院長と二人で運んだ。 運びながら犬のことを尋ねると、 「急に飼い主が居なくなったあの子が不憫に思えてね」 「本当は?」 「以前から狙ってたんだよ」 院長は声を出して笑…
~ 追憶 バーテンダー ~ 「由子ありがとう」 「べつにたいしたことじゃ無い」 由子に電話して、事情を説明しようとしたら、 「行けば良いんだろ?」 と言って、すぐに来てくれた。 まるで私からの電話を、 すぐ近くで待ってくれて居たかのような迅速さだった。 今回由子が乗ってきた車は、前回とは違う車種だったが、 同じくワンボックスで、 もちろん族狩りから狩ってきたものに違いなかった。 先に高校生らしき男達七体を積み込み、 眠って居る武仲をその上に置いた。 あの後武仲はぐっすりと眠ってしまい、 その後どれだけ揺すっても起きないのだ。 由子が電話をかけだした。 相手はもちろん、あの病院の院長だ。 私は電…
~ 追憶 武仲 ~ 小さくなっていく父親の後ろ姿を見ながら俺は、 もう帰って来るな。 車に轢かれて死んでくれ。 お願いだから……。 と、そう思った。 冷蔵庫の扉を開けられないように、 父親が貼ったらしいガムテープを剥がした。 絶対にそうだと思っては居たけれど、 俺は確かめずに居られなかったのだ……。 ゆっくりと扉を開けた。 目に飛び込んできたのは、 手首から腕の付け根まで、 隙間無く無数に刻まれた刃物の痕だった……。 殆どが古傷で、 その傷跡は少し盛り上がって居る。 新しい傷跡も在る。 新しい傷痕は赤い色で、 そしてそれはまだ盛り上がって居ない……。 見慣れた傷跡だったけれど、 一応裏返してみ…
1月の読書メーター読んだ本の数:16読んだページ数:4071ナイス数:1722(ありがとうございます)姑の遺品整理は、迷惑です (双葉文庫)の感想遺品整理に1…
~ 追憶 武仲 ~ 父親も母親も、薬の量が日に日に増えて居るのは、二人の様子で解った。 連日寝ないで騒がしくして居たり、 暑くも無いのに汗だくだったり、 突然大きな声を出したり。 物を壊したりすることもあった……。 兎に角明らかに……、 二人は異常だった……。 この頃の俺は、 言われなくても自主的に外へ出るようになって居り、 他の学校の奴に喧嘩を売ったり、 盗んだお菓子を食べたりして過ごして居た。 暗くなると家に帰って、 冷蔵庫を開ければ、まだ何かしら食べるものは入って居た。 無いときも在ったけど、 大抵パンくらいは在った。 だけどだんだんと、 何も入って居ない日が多くなり、 遂には冷蔵庫を開…
~ 追憶 武仲 ~ 俺の父親は、 まるでサッカーボールでも蹴るみたいに、 その金色の頭を、何度も何度も蹴った……。 金色が赤色に変って、 俺の父親の足にすがりついて泣き叫ぶ六年生を見たとき、 俺は父親のことを、 心底カッコイイと思った。 その後も俺は、 父親が暴力を振るう姿を何度も見た。 何か問題が起きたとき、 暴力で簡単に解決してしまう父親を見て、 自分もこうなりたい。 父親のようにカッコよくなりたい。 と、そう思うようになった。 この頃の父親は、本当に、本当に、 俺の憧れだった……。 それから二年間ぐらいまで、俺の家族は幸せだった。 俺が小三になって暫くした頃、突然母親が、 父親と別れたの…
本日はこちら。正真正銘ホラー、そしてミステリ。 『さかさ星』読みました。 さかさ星 (角川書店単行本)Amazon(アマゾン) 出典:https://…
~ 追憶 バーテンダー ~ 私は一か八か正面から真っ直ぐ歩いて行くことにした…………………… その代わり……… 心を無にして……… 完全に気配を消して行く……………………………… 完全に気配を消し去れば たとえ正面から行ったとしても………… おそらく奴らには気付かれずに近付くことが出来………… 独りずつ順番に片付けることも可能なはずだ…………………………… 私はアイスピックの柄を左手の平に当て ニードル部を人差し指と中指の間から出すように持ち替えた…………………… これはあのとき、芳田達を片付けた後に思いついた持ち方で ニードルこそ一本だけしか出て居ないが イメージ的にはベアクローのつもりだっ…
『楽園の真下』【読書感想】~カマキリパニック小説、虫嫌いは忌避せよ~
本日はこちら。南の離島で何かが起きる!ドキドキハラハラムシムシ! 『楽園の真下』読みました。 楽園の真下 (文春文庫)Amazon(アマゾン) Amazo…