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(本話の量は文庫本換算4.5P程です。)或る秋の深夜。俺(麦倉行・警察官・29歳)は後輩と、灯りの消えた多摩の一大都市の古い繁華街を、自転車パトロールをしていた。一車線のアスファルトに、二三階程の低くて古いビルが向かい合って並ぶ飲み屋通りで、深夜営業をする店の前のみぼんやりと明るくて、そよぐ風は涼しくて、夏から季節が移ろうとしているのを感じる。丁度、このくらいの季節だった、この通りであの奇妙な中年男と出会っ...
(本話の量は文庫本換算6.5P程です。)思えば、この奇怪な戦いのはじまりは、学生時代に多摩の山奥にて『あれ』を目撃したことによる。18時の今、俺(稲岡良仁・29歳・多摩共立大学講師)は一人、3Fのこの研究室のデスクに座っていると、窓からは、手前に広い大学キャンパスと各棟、その向こうに中小ビルの混ざる住宅街、その向こうに中心街の高層ビルやデパートのビル、そしてその向こうには山々、多摩の街が遠く夕日に染まっているの...
(本話の量は文庫本換算7P程です。)無限とは?宇宙とは?そのような問とともに、今、俺(葦笛明・精神神経科医・31歳)の目の前に患者として座る「紳士川崎」と会話した時に、極端な二択を意識してしまうのだ。二択というは、勘違いや茶番劇等といった人知の及ぶものか、人知を圧倒するものかの二択だ。ここは精神神経科の診察室で、シックな色合いの部屋に冷房風は優しく巡るが、多摩の街外れの山裾に有るこの建物の外は、蛙やセミや...
(本話の量は文庫本換算7P程です)或る平日夕方。都内の予備校にて古文を講義中の俺(米津秀行・29歳)は、寝ている時に見る夢に対する現代日本人と古代日本人の認識の違いを述べた所で、はっとしたのは、以前体験をした不可解な現象の記憶と結びついて、筋の通った答えとなった気がしたからだ。いかんいかん、講義に集中しないと。目の前には、俺の一瞬の間に驚いたのだろう、20人程いる生徒たちのほとんどは怪訝そうだったりぽかんと...
(本話の量は文庫本換算4P程です。)或る金曜日の深夜2時、多摩の住宅街の駅前に有る交番、22歳会社員の男が俺(麦倉行・警察官・29歳)に「奇妙な女にお金を脅し取られている」という話しを終えると、またシンと静まり返った。交番前には、車のあまり通らない四車線道路の左右に中低層マンション、アパート、戸建てが並んでいて、小さな飲み屋やコンビニ、スーパー等混ざるが、もう終電後で人通りもあまり無く、店たちもシャッターを...
(本話の量は文庫本換算7P程です。)過去に体験したことが、自分にとってのみならず社会にとっても重要な出来事だったのかもしれないと、後々思い知る場合も有る。勘違いだと思って過ごして来た怪奇体験についても…。―俺(米津秀行・22歳・多摩地方に有る大学の学生)は、興味本位で付いて来た(有り難くもあるが)友人の白壁と共に小道に立って、俺の自宅アパートのベランダを見上げる。ここから見たところ異変もなく、Yシャツやチノパ...
(本話の量は文庫本換算4P程です。)東京でSEの仕事をしている俺だが、夏休みを得て今、妻と息子とともに、俺の田舎へ車で帰省の途上で、後部座席に、チャイルドシートに座ってよくしゃべる息子と適当に相槌を打つ妻。あと30分程走れば田舎の実家に到着するだろうが、中小のビルの並ぶこの大通り、平日夕方の渋滞ラッシュにはまったようで、この車の前にズラリと並ぶ車たちの流れは遅くて停車も繰り返している。まあ、渋滞もまた良い...
(本話の量は文庫本換算6P程です。)冬の灰色の空の下、寒い風の通り抜ける、多摩の或る雑木林。深さ2m程の穴の中で、発掘作業員が、硬い刷毛で湿った土を払って古い石像の顔を詳細にしていく程に、穴を覗いている俺(稲岡良仁・29歳・多摩共立大学考古学科講師)の全身を走る、戦慄を伴った冷たさは、より強いものとなっていった。この石像の顔立ちを、どこかで見たことあると思っていたが、間違いない、あの絵だ。大学の時、友人が自...
(本話の量は文庫本換算11ページ程です。) 或る夏の夕方。俺(米津秀行・27歳・プロ家庭教師)は、仕事のために次の家庭へと電車に乗って、ドア横に寄っかかって立って、ドア窓からぼんやりと景色を眺めていた。高架を走っており、地平線へと広がるオレンジに染まった多摩の平野を、見通せる。住宅街やスーパーが広がって、四車線の大通りが線路に沿うように左右に伸びて、所々で線路に向かう大通りと交差する。大通りから、細かな一...
(本話の量は文庫本換算2P程です。)春休み、俺(稲岡良仁・大学生)は多摩の或る山奥へと天体観測に来ていた。東西南北地平線へと折り重なる山々と茂る木々の大海原のようで、そんな大海原を縫うアスファルト沿いに、俺の泊まっている宿が有って、庭の桜の木は、緑の波間にピンクの彩りを添える。深夜。俺は、片手に持てる素人レベルの望遠鏡と懐中電灯とともに、一人宿を出て、宿裏の山の頂上への土の小道を、三十分程で登りきった。...
(本話の量は文庫本換算9P程です。)あくまで筆者の感想ですが、人類がどの程度この宇宙を理解しているのかは、理科学にも顕れていると思っています。それで、中学理科物理分野で、物質は原子が集まって構成されていて、その原子は陽子中性子電子が集まってできていると習いますが、その陽子中性子はクォーク等でできていて、そのクォークは何でできているのかは?未だ現代の物理学では理解されていません。さらに、この宇宙には現代...
(本話の量は文庫本換算3P程です。)囲炉裏のパチパチいう音と鍋のシュワシュワいう音を聞きながら、窓を通して真っ黒の空から銀色の雪がヒラヒラウジャウジャ止めどない景色を眺めていると、余計に暖かく感じられるのだった。普段東京で暮らす俺(米津秀行・29歳・予備校講師兼フリーライター)は、貯金に余裕が有るわけもないが、憧れの雪国へと気ままな一人旅に来ていた。旅館も多少奮発した。木造の、古くて広くて、天井の高い部屋...
(本話の量は文庫本換算3P程です。)グローバルの現代だが、ローカルな場所にのみ受け継がれているものは多々有る。幻想的かつ怪奇的なものは、特に…。深夜のヴァイオリン|風に舞う遠い遠い記憶【無料短編小説・幻想怪奇・音楽】大学入学のために、俺(稲岡良仁)は、多摩地方の農村部に有るこの古いアパートに引っ越して来て、二週間になる。農村部の風景は、丘の点在する広い平野に、田畑や果樹園の広がる場所もあれば住宅街の一角も...
(本話の量は文庫本換算4P程です。)或る秋の20時。明日は休日だと思うと、仕事帰りの疲れも心地良く、知らない料理屋を探しに、自宅アパート最寄り駅の一つ手前、多摩の一大都市の駅を降りて、小旅行気分で歩いていた。洗練された中心街|多摩の街外れに灯る古い看板【無料短編小説・幻想怪奇・散歩】駅舎を出てすぐ、南北大通りが走るが、大通りに沿って、高層ビルや大手デパート等現代的な建物は立ち並んでいて、色鮮やかでアートの...
(本話の量は文庫本換算3P程です。)一人飲みも終盤の深夜2時、シンとしたアパートの部屋で、テーブルに並ぶ異銘柄のビール6缶を眺めていると、怪奇現象に禁酒を阻まれた経験を、俺(米津秀行・29歳・予備校講師ならびにオカルトライター)は、思い出してしまった。―禁酒|見知らぬ農村の夢【無料短編小説・幻想怪奇・笑い】俺は、就職してから毎晩、ビールなら6缶、ワインなら720mlボトルを赤・白1本ずつ、焼酎なら900mlを3分の2くらい...
(本話の量は文庫本換算4P程です。)俺(米津秀行・29歳)は大学時代、一時多摩市に有る木々茂る丘の寮に暮らしていたが、綺麗かつ奇妙な夜景スポットを見つけたのだった。オカルトライターの俺は、その時のことを考察しようと、思い出す。―日常の中の非日常|星降る丘の芋焼酎【無料短編小説・幻想怪奇・恋愛・夜景】寮の最寄り駅付近は中層ビルが立ち並ぶ繁華街で、夜には色とりどりの灯りが思い思いに踊っているが、繁華街を抜けて東西...
(本話の量は文庫本換算5P程です。)高層ビルの合間からスタートした新幹線の車窓だが、住宅街を縫って川を越えて、山々や田が地平線へと広がる風景へと巡った。東京の大学に通う俺だが、帰省先の田舎までは三時間以上の道のりで、これを良い機会として、幼い頃から未解決である自分の不可解な記憶について考察をしてみる。―田舎の家|才能?見知らぬ魚たちが煌めく川【無料短編小説・幻想怪奇】俺は、山間の村で、就学前から高校まで...
(本話の量は文庫本換算5P程です。)或る秋の夜。多摩の街外れのバーにて、男女四人は田舎町の本屋での万引事件について議論していたが、妙な犯人像が浮上したことに、未知への不安と冒険心は掻き立てられた。オレンジのランプが焦げ茶の木製家具や床を照らす、シックな店内の窓際テーブル。俺(稲岡良仁・いなおかよしひと・29歳・多摩共立大学考古学科講師)は、仕事であることを忘れずに「ではあなたたち三人の本日までの行動をまと...
(本話の量は文庫本換算10P程です。)生活のために会社員を続けている俺(米津秀行・25歳・ホラー小説家志望)は、終業後のシンとしたオフィスにて、先方からの連絡を待ちながら思い出してみる、あの時のことは小説家になるチャンスだったのかもしれないと。ファンタジーなのかホラーなのか、判別できないあの出来事を。―一年程前の或る深夜。俺は友人白壁(犯罪心理学者になると言いつつ大学院に在籍してイカれた人間の登場するミステ...