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(本話の量は文庫本換算4P程です。)或る金曜日の深夜2時、多摩の住宅街の駅前に有る交番、22歳会社員の男が俺(麦倉行・警察官・29歳)に「奇妙な女にお金を脅し取られている」という話しを終えると、またシンと静まり返った。交番前には、車のあまり通らない四車線道路の左右に中低層マンション、アパート、戸建てが並んでいて、小さな飲み屋やコンビニ、スーパー等混ざるが、もう終電後で人通りもあまり無く、店たちもシャッターを...
夏と言えば怪談怪談と言えば稲川淳二稲川淳二ミステリーナイト2025毎年、栃木県宇都宮を皮切りに全国各地での公演が予定されていますある意味、栃木での反応が淳二…
怪談 ~正座する男~ 夕闇が迫る11月、冷たい雨が降りしきる中、優里は駅に降り立った。時刻はすでに21時を過ぎている。どうも昼間から少し熱っぽく感じられ、体調が優れない。家路の途中に川があり、いつもなら遠回りになってでも街灯があり明るい大橋を選ぶところだが、一刻も早く家に着きたい一心で、優里は暗くて人通りの少ない近くの歩行者専用の橋へ向かった。 駅を出て土手沿いの道を少し歩くと、眼下にひっそりと佇む歩行者専用の橋が見えてくる。そこへ続く下り坂は土手の上からは死角になり、橋の街灯も球切れ点いていないものもあり心許ない。普段なら夜中に一人で渡ることをためらう場所だが、急ぐ気持ちが優里の警戒心を鈍ら…
昔、学生時代の頃。私が運転する自動車でリッチな友達の軽井沢の別荘に向かっていた。同乗していたのは先輩女子1名と同級生男子1名の合計3人だった。先輩女子は身長…
赤虫村の怪談のご紹介です。 前作影踏亭の怪談の記事はこちら。 赤虫村の怪談【電子書籍】[ 大島清昭 ] 【あらすじ】 独特の妖怪が多く伝わっている赤虫村。 怪談作家呻木叫子(うめき きょうこ)
・オンライン ・店内(7月からスタート!) ともに 朗読講座『怪談【間】のマスター塾』 を開催しております 怪談に特化した朗読講座でございまして 怪談作品で 【間】の取り方を お稽古しましょう! と言った内容でございます と言うことで 発声練習においても 【間】のトレーニングを! で ご提供いたしましたのが 「ガマの油売り」でございます YouTube用にAIさんに描いてもらった「ガマの油売り」イメージ画 「油」の文字そんなに書いてくれなくてもよかったのだが…画像生成:OpenAI ChatGPT(DALL·E) 【ガマの油売り なんで「間」の鍛錬になるの?】 怪談朗読講座で発声練習テキストと…
怪談 ~鉛筆占い~ 宵闇が教室を包み込む頃、慎太の鉛筆占いは始まった。それは最初はただの遊びだったはずだ。六つの面に「大吉」「吉」「中吉」「小吉」「凶」「大凶」と書かれた鉛筆をサイコロのように転がす。慎太は涼しい顔で言う。「これ、よく当たるんだぜ。この前、大吉が出たやつは、親が宝くじに当たったってさ」俺は冗談半分に尋ねた。「じゃあ、大凶が出たらどうなるんだ」慎太は表情一つ変えず、ごく当たり前のように呟いた。「大凶が出たら、死ぬよ」その言葉に、背筋が凍りついた。まさか、そんな馬鹿なことがあるはずがない。「今まで大凶が出たやつなんて、いるのか」慎太は頷いた。「ああ、いるよ」「誰だ」と聞くと、慎太は…
私は幼少の頃から俗に言う幽霊をたくさん見てきました。私の母親も見える人でした。逆に父親と妹は見える人ではなかったので、私は子どもの頃には「見える人」と「見えな…
明日6/19(木) オンライン『怪談【間】のマスター塾』が スタートいたします おかげさまで 午前のクラスは満席となりました! ありがとうございます! www.youtube.com 【基本 個人授業になりますね】 オンライン朗読講座『怪談【間】のマスター塾』は 毎週木曜日 ①10:30~12:00 ②13:30~15:00 の2クラスでの開催です ご希望の木曜日とクラスを選んでいただく形です ので チラシや広告では 先着6名様と記載しておりますが 同時に同日時をご希望された場合の但し書きでございまして 実際には お誘い合わせてお仲間と同時にお申込み と言う場合は別といたしまして ご希望日時が…
オンライン朗読講座 『怪談【間】のマスター塾』 只今の取組は 田中貢太郎『圓朝の牡丹燈籠』です 『怪談牡丹燈籠』表紙三遊亭圓朝文事堂国立国会図書館デジタルコレクション 講座取組作品ラインナップ 既に数作品をご準備しております さて 次回作は? 【怪談 されどジャンルは様々】 怪談に特化いたしました 『怪談【間】のマスター塾』 ■オンラインは6/19(木)より始動 すでにご予約をいただいております ありがとうございます! 毎週木曜日 ①10:30~12:00 ②13:30~12:00 ■実店舗での講座は 7月からスタートです 毎週火曜日 ①10:30~12:00 ②13:30~15:00 怪談一…
緑川聖司・作/竹岡美穂・絵『追ってくる怪談 緑の本』を読んだ感想
皆様こんにちは、霜柱です。 『追ってくる怪談 緑の本』(ポプラポケット文庫)を読みました。 今回はこの本を読んだ感想を書
緑川聖司・作/竹岡美穂・絵『時をこえた怪談 金の本』を読んだ感想
皆様こんにちは、霜柱です。 『時をこえた怪談 金の本』(ポプラポケット文庫)という本を読みました。 今回はこの本を読んだ
怪談 ~寿命~ カウンター席しかないバーでオカルトが好きな常連客の3人がインテリジェンスデザインの真偽について話をしていたが、議論が尽きたのか、みな次第に口数が少なくなってきた。そんな時、常連客の一人、40代くらいで身なりの良いスーツ姿、皆から”先生”と呼ばれる男が、知り合いの男性から不思議な力の話を聞いた、と話を始めた。 その男性の名前は宮下といいます。彼には、人の寿命の残り日数が見えるという不思議な力がありました。相手の顔をじっと見つめると、頭の中に数字が浮かんでくるのです。それが、その人の命が尽きるまでの日数でした。幼い頃、宮下さんはその数字の意味を理解していませんでした。しかし、数字の…
久しぶりに息子とデート。待ち合わせの時間までにはまだ間があるのでブラブラ・・・・・駅中のお店を見るだけでも楽しいですね。(相当なおのぼりさん (>_...
怪談 ~再生~ 熱気を孕んだ八月の風が窓から吹き込み、一翔の部屋に散らばる漫画雑誌のページをめくった。高校の夏休み、同級生の一翔、勝、壮真、そして守は、惰性のように一翔の家に集まっていた。蝉時雨が容赦なく降り注ぐ昼下がり、どこか倦怠感を覚える時間を破ったのは、勝の一言だった。「なあ、夜になったらさ、肝試し行かない?」その提案に、一翔と壮真の目が光る。勝はニヤリと笑い、皆の視線が守に集まった。守は、普段から物静かで、刺激を求めるようなタイプではなかった。「肝試し…どこに?」一翔が尋ねた。勝は少し声を潜めた。「この町の外れにあるだろ? あの刑場跡地。」その言葉に、部屋の空気が一瞬にして冷えた気がし…
影踏亭の怪談のご紹介です。 作者が栃木県出身とのことで、立ち寄ったツタヤで激推しされていたので読んでみました。 影踏亭の怪談/大島清昭【3000円以上送料無料】 ※本記事はネタバレを含みます。 【
怪談 ~瞼~ 目を閉じると瞼の裏に映る人影。常にではないが、それは現れる。そしてそれは笑いかける、俺に向けて。最初は気のせいかと思った。疲れているだけだと。しかし、その影は日に日に濃くなり、笑みは嘲笑の色を帯び始めた。まるで、俺の心の奥底にある弱さを見透かしているかのように。ある夜、眠ろうと目を閉じた俺は、恐れつつもついにその人影に問いかけた。「お前は、一体何者なんだ」しばらくの沈黙が続いた後に、それはゆっくりと応えた。その声は、まるで壊れたオルゴールの音色のように、耳障りで不快だった。「私は、お前の心の影。お前が目を背けている、真実の姿だ」まさか反応があるとは思わず、俺は絶句し言葉を続けるこ…
怪談 ~日記~ 数年前、私は趣味のカメラを持って、廃墟となった古い洋館を訪れた。蔦が絡まり、窓ガラスは割れ、内部は荒れ放題。それでも、どこか惹かれるものがあり、夢中でシャッターを切っていた。その洋館の一室で、私は古い日記を見つけた。表紙は色褪せ、所々破れている。興味本位でページをめくると、そこには若い女性が書いたと思われる手記が綴られていた。内容は日常的なものだったが、次第に「何か」に怯えるような記述が増えていく。「昨夜も、あの視線を感じた。誰もいないはずなのに…」「誰もいないのに私を呼ぶ声が聞こえてくる...」「お願い、私を見つけないで…」日記の最後は、乱れた文字で「もう、逃げられない…」と…
先日、息子が10時過ぎに帰宅してごはん食べてた時。 アタイも同じダイニングテーブルを使い椅子に座ってブログの下書き書いてたん。 脚が辛くなってきたので位置…
営業帰りのTさんは、終電間近の車内でついウトウトしていた。 疲れ切った身体がシートに沈み、気がつけば聞き慣れないアナウンスが聞こえた。 「━━まもなく、〇〇駅、〇〇駅です」 何と言ったのかよく聞き取れなかった。 寝過ごしたのかと思い慌てて立ち上がり、扉が開くと同時にホームへ降りる。 だが、そこはどこかおかしかった。 薄暗い地下鉄の駅。 照明はあるが薄汚れており、どの光も白く濁っていた。
これは長年山岳ガイドを務めるという、Kさんから聞いた話。 標高二千メートルを越える某山系で、ルート調査と称して単独行動をとっていたときのことだった。 その地域には、遭難者や登山客の緊急避難用として建てられた、古びた無人の山小屋がいくつか点在している。 Kさんがその晩利用したのも、そうした小屋のひとつだった。
ソロキャンプが趣味のYさんは、週末になると人の少ない山奥に分け入って、一人で自然の中に身を置くことを楽しみにしていた。 その日も、地図にも載っていないような旧道を進んだ先の、廃れた林道脇の空き地にテントを張った。 標高も高く携帯の電波は届かないが、水場もあって静かな場所だったという。 夕方には焚き火を起こし、持参した小鍋で湯を沸かして簡単な夕食をとった。 風の音もなく、虫の声と木々のざわめきが心地よく響いていた。
Rさんたちは、大学時代の友人同士で計画した夏の小旅行で、山奥のキャンプ場にある古びたバンガローを借りた。 森に囲まれたその場所は街からも遠く、電波もほとんど入らない。 だが静かさを楽しむにはちょうど良かった。 建物は木造で玄関の引き戸がきしむ音や、床板のたわむ感触に少しばかり古さを感じたが、それもまた風情だと皆で笑った。 ただ部屋の天井がやけに低く、寝転ぶと手を伸ばせばすぐに届きそうな距離だったのが少し気になったという。
Cさんがそのキャンプ場を訪れたのは、ちょうど夏が終わる頃だった。 人里から離れた山あいにあるその場所は、シーズンが過ぎると人もまばらで、静かに過ごしたいソロキャンパーには好まれるという。 管理棟も午後5時には閉まり、夜は完全に無人になるのが常だった。 その日、Cさんのサイトには他に客はおらず、まわりのサイトも空のままだった。 焚き火を眺めながら時間を過ごしていたが、炊事場に忘れ物を思い出して、ランタン片手に歩き出したのは夜の10時過ぎだった。
Tさんは都内の編集プロダクションで働く若手社員。 雑誌の特集記事が立て込んでいたその週、彼は連日、終電ギリギリまで会社に残ることが多かった。 金曜の夜、その日も昼からずっとパソコンとにらめっこしていたTさんは、資料の校正とレイアウト調整に追われ、あっという間に時間が過ぎた。 21時をすぎたあたりで、フロアにいた社員たちは一人、また一人と帰り支度をはじめた。 22時前には、課長が「戸締まり頼むな」と声をかけて退社。 23時を回った頃、静まり返った社内に残っていたのは、もうTさんだけになっていた。
Mさんというフリーランスの映像編集者から聞いた話。 その日は仕事部屋にこもり、日々クライアントから送られてくる動画データと向き合っていた。 手がけていたのは小劇団のプロモーション映像だった。 劇団名は「深縁座(しんえんざ)」。 都内の小さな劇場を拠点に活動しているが、演出や構成が尖っており、業界では注目され始めているという。
Yさんは都内の大型テナントビルに入居する企業で、総務を担当していた。 その日は決算前の資料整理で、22時をまわってもフロアに残っているのはYさんひとり。 オフィス内は照明を落とし、足元灯だけが点いた半分暗がりの状態だった。 コーヒーを飲みすぎたせいか、ふと尿意を覚えてトイレへ向かった。 トイレのある廊下はいつもより妙に静かで、蛍光灯の光もどこか青白く感じる。 だが、疲れもあってYさんは深く考えず、個室を使ったあと、手を洗いに洗面所の前に立った。
Aさんという人から聞いた話。 Aさんの勤務する会社は、駅近の古いビルに入っている。 築年数は数十年は経っているが、内装はリノベーションされていて、働いていてとくに問題はなかった。 ただ一つ、社員の間で「ちょっと気味が悪い」と噂されていたのが、フロア奥にある使われていない会議室だった。 正式には「第六会議室」。 図面にも名前は残っているが、なぜか予約システムには表示されず、鍵も常に管理部で預かったままだった。 使っているところを見た者は誰もいない。
これはSさんが中学時代の話。 Sさんが通っていた中学校の近くには、ちょっと変わったものがあった。 それは道沿いの民家の塀の脇に、なぜか姿見が立てかけられていたのだ。 全身が映るほどの大きな鏡。 縁は古く傷だらけで少し傾いているが、それでも人が通るたびに姿を映す。 Sさんは最初こそ違和感を覚えたが、毎日通るうちに当たり前の風景になっていった。 不思議なことに風の強い日も、台風の翌日も鏡は倒れていない。 それどころか、土台に重りがあるわけでもないのに、まるで誰かが毎朝立て直しているかのように、同じ角度でそこにあった。
ネットで知り合ったRさんが、中学生だった時に体験した話。 Rさんは夜の21時過ぎ、小さな学習塾の入り口を出た。 雨がしとしと降っていて、空気はどこか重たかった。 周囲の民家はすでに灯りを落とし、通りも人けがない。 いつもなら同じ中学生たちが数人、送迎バスを待っているのだが、今日はもう誰もいなかった。 「質問なんかしなきゃよかったかな…」 英語の文法がよく分からず、つい授業後に先生を捕まえて長話になってしまったのだ。 塾の閉館時間ギリギリまでいたせいで、Rさんは一人だけ取り残されていた。
高校生のTさんには、帰り道にどうしても気が進まない場所があった。 駅から少し離れた古い踏切━━線路の両側はくすんだ雑草が生い茂り、夜ともなれば灯りも乏しく人通りもほとんどない。 別に誰かが亡くなった場所というわけでもない。 ただTさんは小学生の頃からずっと、その踏切を渡るたび視線のようなものを感じていた。 風が吹いてもいないのに草むらがざわりと動く音。
Yさんが小学生の頃に通っていた学習塾の話。 その塾は商店街のはずれの、古い雑居ビルの4階にあった。 エレベーターは使えず、いつも階段で上り下りしていた。 ビルの階段は、鉄の手すりがついたコンクリート打ちっぱなしで、3階と4階の間の踊り場だけがなぜか電灯が暗く、昼間でもうっすら影がかかっていた。 おかしな事に気づいたのは、たしか小学4年生の頃。 ある雨の夕方、いつものように塾へ向かい、3階を過ぎて暗い踊り場へ差しかかったときだった。 そこにひとりの女の子が立っていた。
地元の山岳会に所属しているという60代のSさんが、ある秋の日に体験したという話。 その日、Sさんは県内でも特に整備が行き届いたと評判の登山道を、ひとりで登っていた。 紅葉の見ごろには少し早かったが、涼しい風が吹いていて、歩くにはちょうどよい天気だったという。 頂上まではあと一時間ほど。 落ち葉を踏みながら淡々と歩いていると、後ろから「ガサッ、ガサッ」と、誰かが枯れ葉を踏む音がした。
Kさんが大学の友人たちとキャンプに出かけたのは、ちょうど夏休みの終わり頃だった。 場所は県内の山間にあるキャンプ場で、水道や簡易シャワーはあるものの、建物らしい建物は管理棟と仮設トイレくらいしかないような場所だった。 夜は焚き火を囲んでくだらない話で盛り上がった。 酒も入って誰からともなく「怖い話でもしようぜ」という流れになり、軽い怪談の応酬が始まった。 やがて日付も変わる頃、それぞれのテントに戻っていった。
Mさんたちが大学のゼミ仲間と訪れたキャンプ場は、県境の森の中にあった。 宿泊は古びたバンガローだったが、簡易シャワーや炊事場もあり、学生たちには十分だったという。 夜になってバンガローの横で焚き火を囲んだ。 火を見ながら語る他愛ない話や、持ち寄ったギター、マシュマロ焼き体験。 そうした時間が過ぎる中、Nさんがスマホで焚き火を連写しはじめた。 「スロー動画っぽく編集したいんだよ」 と言いながら、何十枚も角度を変えて撮っていた。 その場では特に何も起きず、皆、焚き火を見つめながら眠たくなり、それぞれバンガローへ戻っていった。
怪談 ~自殺の理由~ 夜風が肌を刺す。コンクリートの冷たさが靴底から伝わり、男の焦燥感を増幅させた。百メートル。この高さならば、万が一を考えての躊躇など無用だろう。彼は柵のない屋上の縁に立ち、眼下の街を見下ろした。無数の光が瞬き、まるで遠い星のようだ。その光の一つ一つに、それぞれの生活がある。自分とは無縁の、輝かしい世界。その時、突然に風が強く吹きつけた。ぐらりと体が揺れる。咄嗟に手すりを探したが、当然そこには何もない。バランスを失った体は、重力に従い、無慈悲に落下を始めた。落ちていく。景色が猛烈な速さで迫ってくる。風圧が全身を叩きつけ、息が詰まる。その瞬間、男の脳裏に鮮烈な後悔の念が押し寄せ…
怪談 ~サバイバルゲーム~ かつての大戦の際には激戦地だったと言われている太平洋に浮かぶ小島、今では無人島となったその地でのサバイバルゲームは、陽太たちが今まで体験してきたいかなるゲームを超える最高のものになるはずだった。島に向かう船上で仲間たちみな興奮を隠しきれずにいた。 この日のサバイバルゲームはチーム戦ではなく個人戦で行われることになっていたため、島に上陸するとすぐに、仲間は森の中へと散っていった。 陽太も遅れまいと深い森に足を踏み入れた。しかしその瞬間から、楽しい時間は悪夢へと変貌した。木々のざわめきにかき消され、気づけばそこかしこに感じられていた仲間たちの気配はどこにも感じられなかっ…
怪談 ~廃屋~ 一裕は、従業員わずか十数名の小さな解体業者で事務員として働いていた。蒸し暑い夏の朝、現場作業員のリーダーである田中から会社に電話が入った。「今日の現場は社長が直接依頼を受けた仕事だったよな」電話口から、いかにも不機嫌そうな田中の声が響いてきた。「そうですよ」一裕は顔をしかめながら答えた。「社長はいるか?」「今、外出中でいません」電話の向こうで、舌打ちのような音が聞こえた。田中は苛立ちを隠そうともせずに言った。「さっきから社長の携帯に電話してるのに全然繋がらないんだ。一体どうなってんだよ」「何かあったんですか」「何かあったなんてもんじゃない。このままじゃ作業が進められない。とにか…
怪談 ~雑巾~ 夕焼けが校舎を茜色に染める放課後。人気のない小学校の廊下を、小学三年生の修哉は一人、音楽教室に向かってトボトボと歩いていた。修哉のクラスでは掃除当番は男女のペアだったが、今日修哉のペアの女の子は風邪で学校を休んでいたため、音楽教室の掃除当番は彼一人ですることになった。窓の外では、カラスが不気味な声で鳴いている。修哉は少し心細くなりながらも、早く終わらせて帰ろうと、音楽教室に着くと、まずは机を拭くために、ほうき入れの隅に置いてあった古びた雑巾を手に取った。その雑巾は、今まで見た他の雑巾と比べて明らかに異質だった。全体的に灰色にくすみ、所々に黒ずんだ染みがこびり付いている。まるで長…
今また、怪談ブームだということです。もう30年以上前になりますが、私が小学生の頃は夏休みになると、テレビで怖い話だとか心霊写真だとかの番組が放送されていました。今でもそうなんでしょうか。Tverなんかを見ていると、怪談とは少し違いますが、最近はモキュメンタリーホラーの番組がよく作られているようですね。これはどちらかといいうと、子供向けというよりは大人向けのように思います。私は子供の頃からどちらかと言えば怪談が好きな方だったかと思いますが、怖い話が好きというよりは不思議な話が好きでした。世にも奇妙な物語とか好きでしたね。 小学生の時だったかと思いますが、自分の住んでいる街が街の風景はそのままで人…
画像はJAF参照 突然、また思い出した。車の話でJAFで毎年、会員の運転中の体験談で不思議な話が特集されているが私事だが、思い出したので備忘録に付け足した。 22歳前後の若い頃「中古車を販売会社にいた友達から買った」日産サニークーペだ夜通勤帰りの途中に3回猫が飛
怪談 ~冬山~ 俺は友人の佐々木と二人で冬山登山をしていた。山の中腹にある山小屋で一泊し、翌日に頂上を目指す予定だったが、翌日は午後から天候が崩れると予報が出ていたため、佐々木と相談し朝早くから登頂することにした。翌日、まだ夜明け前の薄暗い中を出発し、昼前には頂上に辿り着くことができた。しかし、その頃には予報よりも早く天候は悪化し始めていた。白い雪が渦を巻き、空は鉛色に染まっていた。下山を開始して間もなく、天候は急激に悪化の一途を辿った。猛烈な吹雪が視界を奪い、風は容赦なく身体を叩きつける。足元は雪に覆われ、踏み出す一歩ごとに不安が募った。次第に前に進むことが困難になり、遭難の二文字が頭をよぎ…
怪談 ~音~ 大学入学と同時に引っ越したマンション。築年数はそこそこだが、駅からのアクセスも良く、家賃も手頃だった。しかし、引っ越して数日後から、奇妙な出来事が起こり始めた。夜中、草木も眠る丑三つ時の2時過ぎになると、必ず「コツ、コツ、コツ……」という、何かを堅いものに叩きつけるような音が聞こえてくるのだ。その音は、毎晩決まって5分間だけ続き、その後、嘘のように静寂が訪れる。最初は、上の階の住人が夜中に何か作業でもしているのかと思った。しかし、マンションの管理会社に相談し、他の住人に確認してもらったところ、そのような音を立てている人はいないという。音が聞こえるたびに、音源を突き止めようと試みた…
怖い話と聞いて思い浮かぶのはリアルなら病気や震災、無差別殺人など人間や自然が引き起こすものですが、一般的に幽霊などの話。しかし幽霊話はというとひとつも思い浮かびません。霊感といったものに全く無縁な人生です。昔、専門学校時代の話。殆ど18~19歳の友人ばかりで
怪談 ~月光~ 男は一人山奥にいた。今日は満月のはずだが、生憎空は厚い雲で覆われ一筋の月の光も見られない。足場の悪い中、男は必死にスコップを使い穴を掘り続けた。やがてポツポツと雨が降り始めたと思ったら、あっという間に大雨となった。ずぶ濡れになりながらも、やっと穴を掘り終えると、近くに止めてあった車のトランクを開いた。中には若い女性の遺体が体を丸めるように収まっている。トランクから女性の遺体を穴の中に移し土の上に寝かせると、さきほど穴を掘った時に出た土を、穴の中の女性を覆うように戻していく。全ての土を穴に戻し終えた男は、スコップを放り出すと力尽きたように倒れ込んだ。荒く息を吐き出しながら、他とは…
怪談 ~無限~ 真夏の暑い公園、蝉の鳴き声だけが異様に響き渡る。ベンチに座る男、健太の額には脂汗が滲んでいた。その目の前には、異様な二人の姿があった。一見親子のようにも見えるその二人は髪の長い女と少年。しかし、その女は真夏だというのに黒いコートを纏い、顔色は青白く、生気を感じさせない。少年の瞳は虚ろで、まるで人形のようだった。そのあまりにも異質な雰囲気に、健太は言いようのない不安を感じていた。女は健太を見据え、冷たい声で語り始めた。「あなたが今進んでいる道は、血塗られた不幸な未来へと繋がる道。あなたにとっても、彼女にとっても。」「はっ、なんだいきなり。どういうことだ。」健太は、女の言葉に戸惑い…
怪談 ~時をかける~ 幼い頃、陸生の母はある日突然姿を消した。誰にも理由は分からず、警察にも捜索願を出したが、母が見つかることはなかった。 時は流れ、陸生は40代となっていた。ある日、ふらりと入った喫茶店で店員を見て驚愕した。その女性は失踪した母に瓜二つだったのだ。「母さん…」思わず呟いた陸生の声に、女性が顔を上げた。「陸生なの…」女性は、陸生の名前を呼んだ。間違いなく陸生の母だった。詳しく話を聞くと、母はタイムスリップによって未来の世界へと来ていた。母の中では陸生の前から姿を消してから、まだ2年ほどしか経っていないと言った。そのため、今では陸生の方が母親よりも年上になっていた。普通ならとても…