メインカテゴリーを選択しなおす
朝、直矢が目覚めるとだいぶ雨は弱まっていた。ただ風は未だに強く、窓の外から見える木々がかなり揺れている。「あれ?降水コントローラーは直ったのかな?」すると直矢が起きてきたことに気がついた愛染が声をかけてきた。「主さんの推測通りだぜ。今ニュースでやっている」愛染が直矢の目の前にモニターを広げると、今まさにその事がニュースで報道されていた。『―――なお、風圧コントローラーの復旧は本日昼頃になる見通し。政...
悪い予感というものは得てしてよく当たるものである。それは今回も例外ではなく、直矢の『嫌な予感』は当たってしまった。「古文の課題、面倒くせぇ~。この中から一冊読み込んでこいって。しかも刀剣史と連動して室町、戦国、安土桃山の文書から選べって…勘弁してよ」「室町や戦国―――だったら細川文書でも良いんだね?」歌仙の一言に直矢の顔がぱぁぁ、っと輝いた。「細川文書って、確か歌仙の元の主の家に伝わってるヤツだよね?...
そのニュース速報が飛び込んできたのは、直矢が寝る直前だった。夜のバラエティ番組を見終え、モニターを消そうとした直前である。『気象コントローラーが故障。関係各所が復旧に当たっているが復旧時刻は未定。不要不急の外出は控えるように』「え?コントローラーが壊れたぁ?」素っ頓狂な薬研の声に、直矢と他の刀剣男士の視線もモニターに釘付けになる。「どっかで詳しい状況をニュースでやってないかな?」「だったらNHKだろ...
夕飯時になり、予告通りの『台風コロッケ』が食卓に並んだ。その他松茸の炊き込みご飯にしめじの和風マリネ、しいたけのかきたま汁ときのこ尽くしだ。それを皆で我先にと食べてゆく。華奢な短刀であっても刀剣男士、その食欲は育ち盛り食べ盛りの直矢と遜色ない。「この牛肉とエリンギの甘辛煮も美味しいね」「それは向こうの燭台切に教えてもらったものです。美味しいですよね」「コロッケ、終わっちまったけどどうする?冷凍のヤ...
年に一度の『野分』は、夕方近くになって更に激しくなってきた。それを窓から見ながら直矢は不安そうに歌仙に尋ねる。「ねぇ、本当にこの本丸大丈夫?だんだん雨風が激しくなっているみたいだけど…本当にこれ、政府が降らせているんだよね?何となく建物が揺れている気がするんだけど」本丸は審神者の霊力がある限り壊れることは無いと判っているが、その確信さえも揺らぎそうな風雨の強さである。時の政府がコントロールしている...
「主、そろそろ一息つこうか」ようやく10枚ほどのレポートを書き終えた直矢に歌仙が声をかける。「もうすぐ昼時だ。それにあんまり根を詰めすぎても良いレポートは書けないよ」その一言に直矢は驚き、顔を上げた。「え?もうそんな時間?道理でお腹が減ったと思ったら」「あと5分で正午だ。今日の昼餉はきのこの和風パスタで良いかい?」「勿論!ていうか珍しいね。新物のきのこでも手に入ったの?」「ああ、実は珠緒さんの親御さ...
養成所からの通知メール通り、『二百十日』に当たるその日は朝から暴風雨だった。移動そのものは空間移動装置で雨に濡れずに行えるが、何せ気象コントローラーやその他諸々の機器のメンテナンスも行われる為、万が一を考慮してほぼ全ての学校、企業、店舗が休みだ。「…だからって、こんなに課題出すかな、先生たち!絶対今日明日じゃ終わんないじゃん!!」本来この曜日は『鍛刀実習』と『刀剣史』、『素材分析学』の授業があった...
「一週間の研修旅行、ご苦労であった!」大峰山中に響き渡るような大きな声で候補生たちに労いの言葉をかけたのは指導員役の山伏国広だった。噂によると彼も政府所属らしい。「ここでの修行は終わったが、審神者候補生殿らの修行は終わったわけではないぞ」「いわゆる『帰るまでが研修旅行です!』ってやつですか?」案の定、蒼が山伏の言葉にちゃちゃを入れるが、山伏は『カカカ』と高笑いをすると首を横に振った。「審神者及び刀...
「ただいま~!!向こうも楽しかったけど、やっぱり自分の本丸が一番良いや」玄関に飛び込んでくるなり、直矢は迎えに出ていた刀剣男士らの中に飛び込んだ。「皆、お留守番ありがとうね。やっぱりさぁ、帰りたい場所があるって最高だよね。あと帰りを待ち構えている生姜焼きも!」じゃれつく短刀達とはしゃぎつつ直矢は歌仙に尋ねる。「生姜焼きってことはポテサラも付いてるんだよね?」「勿論。主君の好物を用意できずに初期刀は...
要件:研修旅行6日目今夜はメールが遅くなってごめんね。やっと研修プログラムの最終課題のレポートが終わったんだ。だいぶ勉強にも慣れてきたけど、まだまだ体を動かすほうがいいや。明日はお昼過ぎにこっちを出るから、夕方には本丸に帰れると思うよ。「間違い無ぇ。よっぽどの事が無ければ夕方くらいにこっちに帰ってくるらしいぜ」薬研の呟きに、歌仙が不思議そうな表情を浮かべた。「このメールからすると多分向こうで昼食を...
要件:研修旅行5日目今日は本当に大変な日でした。ニュースでも騒がれているけど審神者候補生誘拐未遂事件があってね。そのせいで今日行うはずだった滝行と稲村ヶ岳への入山は中止になっちゃった。気楽に行けない所だから惜しいけど、来年の楽しみにということで。明後日には帰るからね。このメールを読んだ瞬間、直矢本丸の6人は安堵のため息を吐いた。「主さんじゃなかったんだ、誘拐未遂にあった審神者候補生って。ニュースじゃ...
要件:研修旅行3日目研修旅行も3日目になって、だいぶ周囲を見る余裕も出てきたよ。宿泊している宿坊の近くにお花畑があるんだけど、山藤がとってもきれいでね。まるで歌仙の髪の毛の色みたいでちょっとホームシックになってます。歌仙の生姜焼き、本丸に帰ったら食べたいな。「…4日後の夕飯は生姜焼きに決定だね」直矢からの手紙を読むなり、歌仙はきっぱりと断言した。「だったら特上の豚ロースを注文しておくか?4日後だったら...
要件:研修旅行1日目 厳しい研修と言われているけどたった一週間、わざわざメールをする必要は無いかなと思っていたのですが、指導教員に強く勧められこのメールを書いています。毎年政府に殴り込みに行く刀剣男士がいてニュースになるとの事ですが、皆は絶対に殴り込みに行かないでね。どうやら研修旅行初日に指導教員からのガイダンスがあったようだ。後日直矢の口から直接聞くことになるのだが、『体力的に僅かでも余裕がある...
時の政府と歴史修正主義者との戦いが始まった当初、僅かでも歴史を変えてしまう要素は省いていこうと『刀剣男士が過去に出陣した際、時空を超えての審神者と刀剣男士のやり取りは禁止する』という決まりがあった。何が歴史に影響するか判らなかった当時としては当然だろう。それゆえ審神者候補生や経験が浅い刀剣男士に『簡単に連絡が取れない状況に陥った時、自ら考えて行動する力を養ってほしい』ということで研修旅行プログラム...
GW直前、養成所に通っている審神者候補生らは『一週間修行体験ツアー』に参加するため、大峰山へ旅立っていった。これは強制参加であり、これを体験しないと修了単位が認められず審神者になれない。しかも2年通学の間に2回―――すなわち毎年参加しなければならないのだ。「大丈夫かなぁ、我が主は」落ち着き無く部屋をウロウロする歌仙に養成所から配信される画像を食い入るように見ている愛染、今剣、そして小夜左文字。そんな彼ら...