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#創作小説
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【残046話】狂愛の果て(4)
その瞬間。 「リーディ……ア様、いらっしゃる……、の?」 幾分大きくなったその声に、エルフェリスとリーディアは顔を見合わせると、すぐさまアルーンが縛り付けられている木の裏側に回り込んだ。 そしてそこにいた者の姿を認めて、リーディアがそ
2024/10/29 14:45
創作小説
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【夜想曲12話】短剣と黒水晶2
Dream12.短剣と黒水晶2 「黒き欠片に還かえったか。華の命は短いものよ。なぁ……サキュバス」 男の目の前で揺れる天秤から黒水晶がひとつ、消えていた。 だが男は不気味に笑い続ける。 「キラか……面白くなってきたわ。ヒヒヒヒヒ」 冷
2024/10/26 09:23
記憶
その部屋には古い木製の椅子がぽつんと置かれていた。簡素な装飾が施された実用を重視したような椅子だった。落ち着いた色合いとしっかりとした造りが重厚さを漂わせている。その部屋には椅子以外は何も無かった。その椅子が部屋の真ん中に一脚だけ置かれていた。部屋の窓からは優しい光が差し込み、椅子に光の帯を掛けている。静寂の空間の中に、光の帯を受けた椅子が一脚だけ置いてある。いつかの一瞬を境に空間ごと固定され、時...
2024/10/25 20:10
薄曇りの空
薄ぼんやりとした空が広がっていた。雨でもなく、晴れでもない、霞がかった空だった。空は弱々しい光を地上に届けていた。その光を受けて辺りは柔らかい存在感を湛えていた。その光は窓ガラスを通して室内をぼんやり照らしていた。鈍い光に照らされ、室内は、全てのものが今にも混ざり合ってしまいそうな不安定な雰囲気を漂わせている。その雰囲気を受けて、僕は、落ち着いた、少し不安な、どこか寂しい気持ちを感じていた。ユミが...
2024/10/25 15:02
【残045話】狂愛の果て(3)
† † † † † 時が凍りついたように、エルフェリスもまた衝撃を受けて固まっていた。 「ロイズハルトが……禁術使い……?」 禁術はもはや伝説の中の伝説。知る人ぞ知る、忘れ去られた過去の遺物。 その術をヴァンパイアの中では唯一ロイズハ
2024/10/24 17:28
【夜想曲11話】短剣と黒水晶
Dream11.短剣と黒水晶 目覚めた時に真っ先に瞳に映ったのは、酷ひどく心配そうな表情を浮かべたクライスとリュイだった。 そしていつも通りのセシルド。 「キラ……良かった!」 私が瞬まばたきを繰り返すと、クライスは長い溜め息と共に笑
2024/10/22 14:30
【残044話】狂愛の果て(2)
† † † † † 慌しく居城内を走り回る者たちの足音が、静まり返った回廊に響き渡る。 先ほどから自室のバルコニーに立ち、泉の方角をじっと見つめたまま動きもしなかったレイフィールは、その騒音がさも邪魔だと言わんばかりの表情で、それでも何
2024/10/20 17:28
古民家カフェ
ある日の昼下がりであった。その日は、暑くもなく、また寒くもない、ちょうど過ごしやすい日だった。私は、隣町まで用事に出かけていた。その帰りの事である。私は、ちょうど良い過ごしやすい気候と、あまり知らない町という好奇心から、なんとはなしにその町をふらふらと歩いてみたい気分になった。見慣れない風景に心が弾む。この町の生活をより知ろうという思い付きから、大通りよりも裏手にあるような生活道路を選んで歩いてい...
2024/10/19 06:25
【夜想曲10話】武装女子の逆襲
Dream10.武装女子の逆襲 ああ、ありがとう。 これも神のお爺ちゃんのお陰かしら。 なんて思うわけないけど、突然救いの手は差しのべられた。 黒い水を浴びたセシルドの身体がみるみるうちに元に戻っていったのだ。 自由を取り戻したセ
2024/10/18 14:48
【残043話】狂愛の果て(1)
苦しい……。 誰か助けテ……? 私はここにいるのに……。 あア……ロイズ様。 助けて下サ……イ……。 「ねえリーディア。こいつらいつの間に紛れ込んだのかなぁ? 初めにいたのは確かにハイブリッドだったわけでしょ?」 アンデッドの群れを振り
2024/10/16 09:57
占いと少年漫画
コーという音と共に、ファンヒーターの暖気が部屋中に行き渡っていく。徐々に温められていく部屋の中でコウスケとカオリは部屋着に着替えると買ってきた本をバッグから取り出した。カオリは、ソファに寄りかかり膝を立てて座ると難しい顔をしながら読み始めた。カオリが買ってきたのは占いの本だ。星座でもなく血液型でもなく誕生日占いでもない、生年月日を一の位になるまで、それぞれ一桁ずつ足していくという本格的なやつだ。1+...
2024/10/15 19:47
暖房
エアコンの運転が冷房から暖房に変わった季節。先日まで寝苦しい夜で、冷房をつけて寝ていたのに、今夜は暖房をつけて寝た。そろそろ10月も半ばにさしかかるとさすがに夜は寒い。暖房をつけていながら夜中に寒さで目を覚ました。そろそろ寝間着も半袖半ズボンでは寒いかなどと思いながら、布団を引き寄せて深く被った。布団を深く被った状態で、スマホに手を伸ばす、スマホの時刻には2時36分と表示されている。まだ寝てからそれほ...
2024/10/11 15:56
【夜想曲09話】夢の中の、夢2
Dream09.夢の中の、夢2 「ふふふ。どう? 私のコレクションたちは」 サキュバスはそう言うと、噴水の上に浮遊したまま足を組んで笑った。 「何よコレ! 元に戻しなさいよ!」 反射的に柱に駆け寄っていた私は、石化したセシルドの身体に手
2024/10/11 09:57
【残042話】聖なる血の裁き(8)
ワンドの先から白い閃光を何度も何度も放つと、それは瞬く間に大きく炸裂した。神聖魔法の中でも一番威力の弱い魔法ではあったが、それでもただのハイブリッドが相手ならば十分すぎるほどの威力を発揮した。その証拠に、閃光の走った後には無数の灰の山が積
2024/10/10 21:19
逆位置の塔
シーンと静寂に包まれた世界に、微かに星が瞬く夜。その夜は、大地を照らす月も無く、あらゆる物を隅々まで満遍なく漆黒で満たしていた。その漆黒のなかで、すべての生き物たちが動くことをやめて、身を横たえ、ひと時の安息に身を休ませている時間、僕はこの塔からの脱出を試みていた。この鉱物なのか生物なのかも判別しない塔は、堅い表面を僅かな星明かりに浮かび上がらせて、時々脈動し、呼吸をし、そうかと思えば押し黙り、微...
2024/10/07 05:46
【夜想曲08話】夢の中の、夢
Dream8.夢の中の夢 ――何が起きてももう驚くまい。 この世界は本当に不思議だと思う。 それがたとえ私たちの夢で成り立っている世界だとしても、だ。 独立したひとつの世界として存在するラルファールと、私の本当の世界を比べる事からし
2024/10/06 19:44
【残041話】聖なる血の裁き(7)
辺りはいつの間にか大量の灰で溢れていた。わずかな風でもそれは砂塵さじんのごとく舞い上がり、宵闇よいやみの中を、灰色のベールで覆うように飛散しては消えていく。あれほど透明度の高かった泉も今や初めに見た姿を留めてはおらず、ゆらゆらと水面を漂う
2024/10/05 14:48
【夜想曲07話】夢魔
Dream7.夢魔 “ブレイブ” “ウィザード” “ナイト” そして“ヒーラー” どれも魔具使いの階級クラスを表す呼称。 この他にもいくつかあるらしいけれど、最も一般的なのがセシルドの“ナイト”なのだそうだ。 細かい説明を聞い
2024/10/01 14:35
【残040話】聖なる血の裁き(6)
しかしその間にも残った男たちは次から次へと襲い掛かってきた。 このままではリーディアの負担は増す一方だと悟ったエルフェリスはふらつく頭を何度も振って、それから肢体したいに力を込めてワンドを杖代わりに立ち上がる。一瞬目の前が真っ暗になり身
2024/09/28 06:59
僕の神様がこう言ってる
パソコンに向かい作業をしていると、僕の神様が話しかけてきた。僕を作った神様は、姿は見えないが、声だけで語りかけてくる。「いつまでこんな生活を続けるつもり?いい加減、君も神様になったら?」僕はというと、またこれか、とうんざりした顔で作業中の手を止めて、コーヒーが入っているマグカップに手を伸ばす。コーヒーを一口飲むと、神様に向かっていつものセリフを呟いた。「はい、分かってますけど、神様になることは、な...
2024/09/27 08:47
【夜想曲06話】魔具使い
Dream6.魔具使い 村人たちの会合をある程度見届けた後、私たちは急いでセシルドが待つ宿屋へと戻った。 ものすごい剣幕けんまくで部屋に飛び込んだ私たちとは対照的に、セシルドはリュイの伴奏に合わせて下手くそな歌なんか歌っちゃってた。
2024/09/25 06:23
【残039話】聖なる血の裁き(5)
「うぐっ?」 リーディアの行動が理解できないのか、男は初め訝いぶかしげに顔をひそめていた。だがすぐに膨張した花びらを鋭い牙が掠かすめると、男の口から大量の血が溢れ出した。 エルフェリスから吸い取った赤い血が。 リーディアはその時を見計
2024/09/23 12:51
ポスティング広告
夜が明け切る前の薄暗いリビングで、ソファに座り頭を抱えていた。目の前の座卓テーブルの上には、雑多に物が置かれ、昨日入った広告類が無造作に重ねてある。重ねられた広告の隣にテレビのリモコンが投げ出してあり、カーテン越しの光を受け重く光っていた。テーブル上の薬缶から薬を取り出すと、カッターで半分に割って口に入れ、コーヒーで飲み込む。寝室の目覚まし時計が6時を告げていた。目覚まし時計をそのままに、テレビを...
2024/09/21 20:37
【夜想曲05話】黒の胎動
Dream5.黒の胎動 赤き月よ、出でよ。 そしてこの大地を染めてしまえ。 白き月などもはや不要。 我れが望むは黒の月なり――。 どこかで何かが妖しく蠢うごめいていた。 地底なのか、はたまた地上なのか、それすらも分からないい暗い
2024/09/20 22:22
ヒト科ヒト属ヒト
何も持たずに出て来た。所持金はなく自販機でジュースさえ買えない。行くあても帰る場所もない。ヒト科ヒト属ヒト街行く人たちと分類は同じだけど違う。産まれた時から持っている説明のつかない疎外感を心の奥に抱え、あてどなく街を彷徨う。街外れの公園でベンチに座り、しばらく木の葉が風に揺れるのを見る。そうしているとお腹の虫がぐぅっと鳴った。お前は腹が減っているのか。そう問いかけてベンチから立ち上がると、水飲み場...
2024/09/19 19:30
【残038話】聖なる血の裁き(4)
「しかし俺たちも見くびられたモンですよね、まさかドールなどから指図されることになろうとは」 この場の緊張感とは正反対の軽さを含んだその声に、リーダーらしきあの赤目の男は大きく欠伸あくびをしながら面倒そうに同意した。その言葉に、エルフェリス
2024/09/17 08:28
4.その名で呼んだらブッ飛ばす
Dream4.その名で呼んだらブッ飛ばす かくして最初の目的地は決まったワケだが、同時に私はぐうぐうといびきをかいていた。 しかも夢の世界にいるというのに、ご丁寧にもまた夢を見ていた。 そして朝。 いつもの如ごとくでなかなか起きない
2024/09/15 21:21
保護
く、苦しい。。。早く抜け出さなくては、、、この問題は、1分1秒を争う。全力で脱出しなくては、このままだと腐っちゃう。このまま腐っていくのは嫌だ。一刻も早く、ここから抜け出してオムレツにして貰うんだ。誰も食べてくれる人は居ないけど。僕はオムレツになるんだ。...
2024/09/14 21:03
ふたり暮らし
「おはよう、今朝は早いね。」と、言いながらヨシフミが眠たそうな目をこすりこすり、部屋のドアを開けると、カオリがテーブルに突っ伏していた。寝ているのか、反応が悪い。ややあって、彼女はむくりと起き上がると、口をむにゃむにゃしながら、くまのできたひどい顔で「おはよう。うん、あまり眠れなかった。」と答えた。いい終わらないうちに、こくっと意識が飛びそうになって、慌ててテーブルに置かれたマグカップに手を伸ばし...
2024/09/13 22:38
【残037話】聖なる血の裁き(3)
「二人とも殺して良いと言われているんでね」 男の中の一人がそう言って、白い牙を覗かせた。 「誰の差し金ですの……」 そんな中、ようやく息を整えたリーディアがゆらりと立ち上がり、エルフェリスを庇かばうように一歩前へ進み出た。 満身創痍の
2024/09/11 14:07
3.夢の世界ラルファール
Dream3.ラルファール 兎とにも角かくにも、行動を起こすにはこの世界に対するある程度の知識が必要だろうということで、どっぷり日が暮れるまでクライス先生による歴史と社会の講義を受けた。 背後にはセシルド。 欠伸あくびひとつしようもの
2024/09/09 15:01
【残036話】聖なる血の裁き(2)
「……な……ッ」 エルフェリスは驚愕きょうがくのあまり絶句した。 初めて見る男だった。すらりとした長身に、長く伸びた髪の毛を風になびかせ、まるで先ほどからそこにいたかのようにごく自然に、笑みを浮かべて立っていた。 少しばかり骨ばった顔
2024/09/07 09:15
2.奔放王子と生意気従者
Dream2.奔放王子と生意気従者 確かに私は夢見ゆめみが良かった。 内容を覚えているいないはともかく、毎晩何かしら夢を見ていた気がする。 夢は深層心理の現れだとか、眠りの浅い証拠だとか言われるけれど、それでも何も見ないと言うのはつま
2024/09/05 20:22
1.いじける神様
足元に二人の男が転がった。 少し遅れて、金属の乾いた音が虚むなしく響く。 「まったくもう……お陰で遅刻じゃないの!」 恐らくは聞こえてないだろうけど、間抜けな顔で白眼を剥むく男たちに悪態あくたいを付くのを忘れない。 だって分かるでし
2024/09/04 01:40
短剣と夜想曲【異世界転移ゆる系ファンタジー小説】
大人も子供も武装する現実世界から、夢の世界へと召喚された女子高生キラ。 神を名乗るおじいちゃんに助けを求められ、旅の仲間となる二人連れの元へと吹っ飛ばされる。 そこは、人々に悪夢を見せるという夢魔の蔓延る世界。この世界を救わないと、元いた世
2024/09/04 00:50
【残035話】聖なる血の裁き(1)
道なき道をリーディアに手を引かれながら、一歩一歩を確かめるようエルフェリスは進んだ。 月も姿を隠す今夜は異様なほどに静かで、そして何より闇深い。先ほどに比べればだいぶ目も慣れてきたが、それでもやはり不自由さは拭いきれず、時おり地面から這
2024/09/03 00:43
忘れ物
お社の裏手に向かって「ただいま」と大きな声を掛けた。学校からの帰宅の時間帯、それぞれ自分たちの仕事に忙しい両親に対する挨拶だ。参拝客が数人、こちらを振り返る。西日に照らされたお社の柱が神々しくもある時間帯。錦戸護は踵を踏み潰した靴で石段を駆け上がった。神社幕が風に揺れ、神社のぼりがハタハタと棚引いている。お社の裏手にある平屋の古い戸建てが錦戸護の生家である。神主をしている父親は、祈祷などでは生計が...
2024/09/01 21:58
遊園地
隣室の灯りがドアの僅かな隙間から暗い部屋に漏れている。僕は、その暗い部屋の中で、ベッドに横たわり身体を硬直させて緊張していた。暗闇は、部屋の中すべての物の輪郭を曖昧にして一色の漆黒に同一化している。その暗闇の部屋では、僕自身も同一化された物のひとつで、僕という存在はひどく曖昧な物で、僕が周りに溶け出し、僕が僕で無くなってしまうような、僕という物の存在の危うさを感じながら、僕は、小さく呼吸をし、身を...
2024/08/25 11:47
【残034話】手がかりと甘い罠(7)
「あら、おかえりなさいませ。エルフェリス様」 二人と別れたエルフェリスが自室のドアをゆっくり開けると、窓辺に置かれたテーブルの縁に腰掛けてティーカップを傾けるリーディアに声を掛けられた。 「あれ? まだ寝てないの?」「お帰りをお待ちしてお
2024/08/25 10:45
【残033話】手がかりと甘い罠(6)
その後、デューンヴァイスの部屋を一足先に出たエルフェリスは一人、部屋が立ち並ぶ回廊に備え付けられた広いバルコニーの手すりに漠然と身を預けたまま、ゆっくりと昇りゆく太陽を見つめていた。 この城に来てからはヴァンパイアの生活に合わせていたた
2024/08/18 08:46
喜びの踊り
帆布で作られた気嚢に水素ガスを満たしたガス袋が風に揺れていた。ガス袋は鋼索により、船室に固定され、船室は8方向に伸びるロープにより、大地に杭で留められて、浮かび上がらないように固定されている。ハルカが地上に向かって声を上げる。その声を合図に、地上作業員たちがロープをマチェットで断ち切った。次の瞬間、飛行船は静かに浮かびあがり、大地に巨大な影を落とす。飛行高度まで浮揚したのを見届けると、カインがエン...
2024/08/15 13:32
環
立秋を過ぎ、空にわずかな秋っぽさを感じるようになった頃、私は、一人、山のなかを歩いていた。辺りには、秋の七草の1つ、オミナエシが群生しており、可憐な黄色い花が木漏れ日に溢れる山中を幻想的に彩っている。ヒグラシの声に包まれながら、その浮世離れした景色の中に居ると、現実感が失われ、夢なのか現実なのか分からない感覚になった。しばらくその場で立ち止まり、忘我の淵を彷徨っていると、風が吹き下ろしオミナエシの...
2024/08/10 18:38
【残032話】手がかりと甘い罠(5)
「今……何て言った?」「え? 十字架のネックレスだよ。クリスタル製かなぁ……ドールが十字架身に着けてるのなんて初めて見たからさぁ、不思議で、ねぇ?」 それがどうしたの、とレイフィールは屈託くったくの無い笑顔を見せたが、エルフェリスは逆に、
2024/08/10 08:27
【残031話】手がかりと甘い罠(4)
「誰だ? エリーゼって」 すると、話の成り行きが分からないロイズハルトがすかさずそう呟く。それに対してエルフェリスは手短に内容を説明してみせた。合わせてレイフィールにも解りやすいように、簡潔に、けれども丁寧に。 が、やはりここでも彼女が
2024/08/07 10:33
団欒
田中修司 今年の4月で36歳になったばかり。ダークグレーのスーツに身を包み、会社から帰宅途中だった。商社とは名ばかりの問屋を大きくしたような会社で庶務課に在籍しており、忙しさとは無縁の職場で、毎日が定時上がりという恵まれた環境にいた。3年前に新築した家では、妻の早苗が一人で待っている。早苗とは学生時代に結婚し、今年で15年目となる。何回か子供を持とうとしたが、叶わず、そのうちに諦めてしまった。以来、早苗...
2024/08/04 01:37
【残030話】手がかりと甘い罠(3)
エルフェリスたちの視線が一斉に部屋の入り口へと向けられる。入ってきた男はいきなり注目を浴びたことに対して少々驚いたようだったが、何かを悟ったのかすぐに口元を緩めた。 「なんだ? 揃いに揃って……。俺も混ぜろ」 そう言ってにやりと笑った男
2024/08/02 06:44
1.鍾乳洞と平家落人村
私 が高校の時に推理小説を読み出しました。昭和50年に大学に入学してからは海外の推理小説を読みふけり、エラリークイーン、アガサクリスティーは全館読みました。私も書いてみたいと思いましたが、原稿用紙の3~4枚ぐらいしか書けませんでした。その頃の作文が出てきたので見てみると、なん...
2024/07/28 14:31
層積雲
2、3日前に梅雨が開けたらしい。今日は文字通り茹だるような暑さで滴る汗を拭いながら作業に当たっていた。昨日の夜は町の放送で、水分補給をして十分注意してくださいという注意喚起の熱中症警戒アラートが流れていた。その町の放送に心理的にも影響され昨晩は寝苦しい夜だった。片付かない荷物がうずたかく置かれている窮屈な部屋の中に居た。その部屋でパソコンに向かい仕事をしている最中だった。椅子を少し後ろに引くと、高...
2024/07/27 19:22
【残029話】手がかりと甘い罠(2)
「やれやれ、レイのせいで進む話も全然進みやしない」 エルフェリスとレイフィールの手が離れたのを見届けると、デューンヴァイスは心底疲れたように床の上で大きく胡坐あぐらをかいてそう言った。その言葉に、エルフェリスも一連のやり取りの中ですっかり
2024/07/27 08:11
【残028話】手がかりと甘い罠(1)
「……いったぁ! まだ痛いよッ! デューンのせいだからね!」 氷のうを頭に載せたまま、レイフィールは向かいのソファに腰掛けるデューンヴァイスに非難の眼差しを向けた。 けれど対するデューンヴァイスはどこ吹く風。まるで気にした様子もなく、し
2024/07/23 07:57
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