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泣きながら一気に書きました https://tmykinoue.hatenablog.com/

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

文筆業。 基本的に嘘泣きです。 よろしくお願いします。

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東京都
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東京都
井上智公
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2008/12/16

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  • ディスクレビュー『ART OF CHAOS』/CRASHDÏET

    アート・オブ・ケイオス [CD] - クラッシュダイエットアーティスト:クラッシュダイエットマーキー・インコーポレイティドビクターAmazonスウェーデン産ハード・ロック・バンドの7th。いわゆるスリージーな音像を持つバンドでありながら、近作ではメロディの充実っぷりが著しく、特に前作が素晴らしかったため、期待は大きかった。なにしろ2022年の年間ベスト・アルバム5位に、さらには収録曲の「Shine On」に至っては年間ベスト・ソングに選んだくらいであったのだから。tmykinoue.hatenablog.com tmykinoue.hatenablog.comだがここで一連の表現を過去形にせざ…

  • 短篇小説「本間直人は代行を許さない」

    本間直人は代行を許さない。許さないといっても許さないことすら許されない世の中である。代行といえばいわゆる「退職代行」が良くも悪くも話題になることが多いが、それ以前からこの世はなにもかもが実のところ代行まみれであるのかもしれない。 スーパーマーケットにいる直人は、腰をかがめて棚にせっせと米袋を積み上げている店員に尋ねる。「これってあなたのお米ですか?」 振り返った三角巾の似合う女性店員は怪訝な表情を浮かべつつ、初めての質問に慌てて正解の言葉を探し当てる。「えーっと、もちろんわたしのではなくて、まあなんというかお店の、ということになりますが……」「でもお店のでもないですよね」 訊き手である直人の口…

  • 短篇小説「未然会議」

    わたしは充分な準備を整えたうえで重要な社内会議に臨んだ。といっても、別に企画書等を準備する必要はなかった。なぜならばこれは、この先に何かを生み出したり、立ち上げたりするための会議ではないからだ。この場でアイデアをただ発表しさえすれば、それですべてを完了させることができる。これほどまでに有意義で、かつ効率的な会議はほかにないように思われる。 議長役を務める部長からトップバッターに指名されたわたしは、さっそくひとつ目のアイデアを披露することになった。「ちょっとタイムマシンを作ってみようと思ったんですが」 わたしがひとこと目にそう言うと、同僚たちからは驚きの声が上がった。「なぜですか?」 部長は当然…

  • 絶対に出ない国語現代文入試問題~短篇小説「おやつんクエスト」より~

    ふと自分がこれまでに書いた短篇小説を使って国語現代文の問題が作れないかと思い、問いの作成及びその解答/解説をAIに発注してみることにした。結果、ふざけた本文と生真面目な設問/解説のあいだに、妙な異化効果が生まれているように思う。絶対に試験には出ないので受験生にはなんの役にも立たないはずだが、一方でまともに読解力を試してくるような問題もある。いくら深く読解してみたところで、中身はどうでもいいお菓子同士の戦いでしかないのだが。ちなみに問六、七あたりの解答は、やや踏み込みすぎの感もあって結構怪しい。そこにもまた入試らしいリアリティはあるのだが、物語本文の作者としては、正解とは違う選択肢を選んでしまう…

  • 短篇小説「運命指南役」

    あなたがもし幸せになりたいのならば、家を出てひとつめの角を右に曲がってください。そこでぶつかった相手が、あなたの運命の人です。 誰ともぶつからないようであれば、あなたに必要なのはその角ではありません。そのまま真っすぐに進んで、次の角を左に曲がってください。いいですか、今度は左ですよ。右に曲がったらおしまいです。 しかしそう言われると、あなたは途端に右が気になってくるでしょう。でもあなたは、そこを右に折れたら何があるのかということぐらい、すでに知っているはずです。なぜならばそこはまだあなたの家の近所なのですから、少なくとも一度や二度は、その角を右に曲がったことがあるはずです。もしかすると毎日曲が…

  • 短篇小説「河童少年のモイモイモイスチャー日記 其ノ二十六」

    近ごろ迷惑メールが増えていて困っている。《お得なグリーン副業あります。即日キュウリ百本進呈!》 《マッチングアプリ『カパーズ』にご登録ありがとうございます! 本河童確認をお願いいたします》 《国際河川郵便が届いております。至急お受け取りの手続きを!》 メールはどれも微妙に河童用にカスタマイズされているので、ついつい騙されそうになる。ちなみに「グリーン案件」というのは人間で言うところの「ホワイト案件」というやつで、もちろんわざわざそんなことを言う案件がグリーンであるわけはない。 それに報酬にキュウリをもらえるのはたしかに嬉しいが、さすがに百本もいっぺんに渡されたところで新鮮なうちに食べきれるはず…

  • 「関係者以外立入禁止」みたいな捏造看板10選

    刑事ドラマを観ていたら「関係者以外立入禁止」の看板が出てきて、なぜだかそういう看板を作ってみたくなった。看板それ自体というよりは、そのフレーズの響きがなんとなく引っかかったのかもしれない。なんだかその連続する言葉のリズムの完成度が妙に高いような気がしたのだ(無根拠)。そのうえ意味的にも、単に行為を禁止しているのではなくて、特定の対象者「以外」を「禁止」するというねじれた構造がなんともミステリアスで良い。これはある種の二重否定になっているわけで、一見何かをきつく禁じているように見せかけておきながら、結果としてはむしろ「関係者の立ち入りを積極的に許可している」看板であるとも言える。さらには「関係者…

  • 短篇小説「過言刑事・過田玄堂」〈非戦力系刑事シリーズ〉

    「つまりお前は、地球をまるごと盗んだってわけだ!」 取調室で容疑者の顔面にひん曲げたデスクライトをカッと浴びせながら、ひとりの刑事がそう断言した。この刑事の名を過田玄堂という。「いやいや、だから俺が盗んだのはペン一本っすよ」 万引きの容疑をかけられた若い男は、両掌を天に向けるアメリカ譲りの動きを添えてその発言を否定した。彼の背後に立っているもうひとりの刑事は、そんな容疑者をたしなめるかと思いきや、その向こうにいる玄堂に向かって言った。「玄堂さん、それはさすがに言い過ぎではないでしょうか」 この若いほうの小森村という刑事は、玄堂のいわゆるバディということになる。彼は玄堂のいき過ぎた発言に、毎度頭…

  • 「I love you=月が綺麗ですね」みたいなロマンス意訳選手権

    かつて夏目漱石が「I love you」という英文を「月が綺麗ですね」と意訳したというロマンティックな逸話があるが、あれはどうも根拠が見当たらないらしい。しかし面白い話ではあるので、それを言ったという前提でちょっと考えてみたい。だとすれば、「I need you」をどう訳せば漱石先生は褒めてくれるだろうか。たとえば――「I need you=ジャムの蓋がどうしても開かないんです」というのはどうだろう。同棲していた彼氏が出ていってしまったキッチンで一人、ジャムの瓶の蓋がなかなか開かないのに苦戦しつつ、「ああ、こういうときいつもあの人が助けてくれてたんだな」としみじみ感じ入るという、ラブコメの定番…

  • 短篇小説「馬の耳に念仏そのあとに〈ことわざ後日譚〉」

    「馬が走らなくなってしまったんです!」 村の動物病院の受付に、ひとりの青年が駆け込んできてぶしつけに言った。 それに対し耳にも鼻にもピアスをつけている受付の若い女は、目の前に人が走り込んできたので、思わず「走ってるじゃないですか」と言い返しそうになった。だがそう口にする寸前に主語が異なっていることに気づいて、「それは大変ですね」と当たり障りのないリアクションに収めると、奥の診察室へとその状況を知らせに向かった。 待合室で順番を待っているあいだにも、青年は馬のぶんまでとばかり、そこらじゅうを早足で歩きまわって落ち着きがなかった。そうして十五分ほどして青年の番が来ると、彼は診察室に入るなり、白髭の…

  • ディスクレビュー『WILDERNESS OF MIRRORS』/MYRATH

    Wilderness of Mirrors (CD) - ミラスアーティスト:MyrathワードレコーズAmazon◆独自性と大衆性の接点から湧き上がる圧巻の叙情性「イタリア対岸にあって中東に近いアフリカ」という地理条件を具現化するように、アラビックな旋律をアフリカンなリズムに乗せてオペラティックに歌い上げるチュニジア産ヘヴィ・メタル・バンドの7thアルバム。バンドは4th『LEGACY』でその独特のスタイルを確立して以降、洗練の度合いを増し様々にスケールアップを図ってきた印象があるが、ここへ来ていよいよその独自性と大衆性を両立させ、その音楽はほとんど完成の域に達したように思われる。正直なとこ…

  • 短篇小説「山頂に降り注ぐ川」

    わたしは川下にある山の頂上に住んでいる。つまり川に沿ってずーっと下ってゆくと、その先に山の頂上があるというわけだ。むろん川の流れはそこで行き止まりになる。多くの人がそんなはずはないと言うがこれは本当のことだ。そしてその川下でありながら山の頂上である場所にわたしの家がある。 ちなみに山の上に住むわたしの苗字が「下山」であるというのも、冗談のようだが本当の話だ。しかしこの問題は、頭に「川」の字をつけ足すと即座に解決する。すなわち「川下山=川下にある山」という三文字から、頭の一文字を省略したものと考えればこの地形とぴったり一致するというわけである。 だからといって、そのような省略を安易にしてしまって…

  • 当ブログ掲載短篇小説アーカイブ

    いつのまにやら本数が増えすぎて自分でも把握できなくなってきたので、とりあえずリストを作ってみました。上のほうが新しく、下にいくほど古いものになります。電子書籍にしか掲載していないものもありますが、そちらも一番下のリンクから無料でダウンロードできるので、この機会にぜひ。短篇小説「風割」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「プペりあい」 - 泣きながら一気に書きました エセペディア文学「穴戸道彦」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「勇者・図棒田ボラ彦の考えすぎて終わらない旅支度」 - 泣きながら一気に書きました 短篇小説「倒置法探偵・置田倒次郎」 - 泣きながら一気に書きました 短篇…

  • 短篇小説「風割」

    ある晴れた穏やかな日曜日。わたしは近所の小型スーパーで買い物をしていた。スーパーといっても個人商店のようなもので、レジはひとつしかない。店員も背の高い青年ひとりしか見たことがないので、おそらくは彼が店主なのだろう。しかし妙に迫力のある看板の書体や、もっと赤かったのであろう幌の色褪せ具合からすると、彼は二代目あるいはそれ以降ということもあり得るのかもしれない。 なにしろ床面積が狭いので品揃えこそ期待できないが、生活に必要なジャンルはまんべんなく網羅されており、商品選びのセンスは悪くない。たとえば醤油は独自のルートでもあるのか、価格が安いわりにほかでは見ない一種類だけが置かれているといった具合だ。…

  • 短篇小説「プペりあい」

    「おプペりのとこすいません」 隣の席でパソコンの画面に向かっていた西山田が、なにやら差し迫った口調で声をかけてきた。西山田は入社一年目の後輩社員である。「別にそんなプペッてるわけじゃないけど、どうしたの?」 私はたしかにややプペり気味ではあったが、ちょっと先輩らしい余裕をかましたくなって鷹揚な態度を見せた。「ここの文字をいったんどこかにプペッてから、もう一度こっちにプペり戻したいんですけど、どうやったら上手いことプペれますかね?」 西山田は画面上のカーソルを右に左に動かしながら訊いてきた。「ああ、その場合はね」それは何度か先輩に教えてもらったことのある方法だったから、私はすぐに答えることができ…

  • エセペディア文学「穴戸道彦」

    穴戸道彦(あなど みちひこ、1970年10月10日-)は、島根県松江市宍道市出身の穴あけ師、墓堀人、ベルトパンチャー、落とし穴クリエイター。有限会社ピットフォール・エンターテインメント代表取締役社長。・愛称は、「掘りえもん」「ホリンドル道彦」「穴奉行」「死の番人」。・弟は俳優の穴戸洞(あなど どう)。彼が出演する映画、ドラマの穴という穴はすべて道彦があけていると言われているが、その真偽のほどは不明。・小学校三年生の昼休み、校庭の隅に木の枝で適当に掘った穴に蟻が次々となだれ込んでいく姿を見て「これだ!」と思い、穴あけ師を志す。当時そのような職業はなかったが、そのときいきなり「穴あけ師」というフレ…

  • 短篇小説「勇者・図棒田ボラ彦の考えすぎて終わらない旅支度」

    図棒田ボラ彦は周囲から勇者として扱われていたが、勇者とは何かなどボラ彦にもわからない。とりあえずボラ彦は自他共に認めるズボラな男であった。しかし彼は勇気があるわけでも喧嘩が強いわけでもないのに王様に呼び出され、お前は勇者で、明日から旅に出ろと命じられてしまったのだ。あるいはズボラこそが勇気であるのかもしれない。 ところがボラ彦はとにかく旅行というものが苦手なのであった。いや正確に言えば旅行それ自体ではなく、旅の準備というものが面倒で面倒で仕方ないのだ。しかも王様曰く、この旅は何泊何日になるのかもさっぱりわからないという。ではいったい鞄に何日分の着替えを詰めれば良いというのか。 いやそれ以前に、…

  • 短篇小説「河童少年のモイモイモイスチャー日記 其ノ二十五」

    冬のオリンピックが終わったと思ったら、もうWBCがはじまっているらしい。だけど今回はネットフリックスでしか観られないようで、もちろんウチはそんな贅沢サービスには入っていないので観られそうにない。そういえばちょっと前にじいちゃんが河原で拾ってきたパラボラアンテナをテレビにつないで、「これでカッパフリックス見放題やで!」ってなぜか関西弁で言ってたけど、別に関西人でもないくせに、なんか金銭的にお得感があるときだけ都合よく関西弁を使うのは関西の人にちょっと失礼だと思った。 ちなみにそれからじいちゃんがテレビを観ているときは、画面上にいつも埼玉のお店のCMばかりが流れていて、たぶんじいちゃんが「カッパフ…

  • ディスクレビュー『MIDNIGHT BLITZ』/TAILGUNNER

    Midnight Blitz (CD) - ミッドナイトブリッツアーティスト:TailgunnerワードレコーズAmazon◆MAIDENフォロワーがPRIESTの翼を得て、さらなる普遍的HMの高みへと羽ばたいた飛躍の作まさか2作目にしてここまで化けるとは思わなかった。現代に80年代ブリティッシュ・ヘヴィ・メタルを蘇らせる英国産バンド、躍進の2ndアルバムである。正直なところデビュー作に関しては、このバンド名の時点で少なからず疑問を感じてはいた。憧れのアーティストの曲名をバンド名に採用するのは珍しくない話ではあるが、IRON MAIDENへのリスペクトを示したいという気持ちには何ひとつ異議はな…

  • 短篇小説「河童少年のモイモイモイスチャー日記 其ノ二十四」

    今朝はベッドの上にぶん投げられた衝撃で目が覚めた。すぐ横にはじいちゃんが立っていて、「お前が『りく』でワシが『りゅう』な!」 と言って鼻息を荒くしている。なにやら夜中に「りくりゅう」と呼ばれるフィギュアスケートの日本人ペアが金メダルを獲得したらしく、じいちゃんはそこで人を持ち上げてぶん投げる技を憶えたらしい。てゆうか僕もじいちゃんも人じゃなくて河童なんだけど。あいかわらずじいちゃんはいにしえの河童のくせに、人間社会の流行に影響を受けやすすぎて困る。 僕が朝食のきゅうりを食べて家を出ようとすると、じいちゃんが玄関先まで駆けてきて、いきなり、「帰ってきたらじいちゃんオリンピックを開催する!」 と謎…

  • ディスクレビュー『KRUSHERS OF THE WORLD』/KREATOR

    Krushers Of The World (CD+ボーナスライヴCD) - クリエイターアーティスト:KreatorワードレコーズAmazon◆次世代をも血肉化して疾駆する最高練度のハイブリッド車これぞベテランのあるべき姿だろう。ジャーマン・スラッシュ・メタルの重鎮が放つ16作目は、自らが影響を及ぼした後続世代の音像及び音楽性を貪欲かつ謙虚に取り込むことにより、スラッシュ・メタルというジャンルを丸ごとアップデートして前に打って出るが如き会心の作。さらに彼らはそうして新たに吸収し血肉化した要素を、自らのアイデンティティと改めて掛けあわせることによって、さらにこの先のシーンを先導してゆくような、…

  • ディスクレビュー『MEGADETH』/MEGADETH

    【Amazon.co.jp限定】Megadeth (初回限定盤 三方背ケース付きCD) - メガデス(メガジャケ付)アーティスト:MegadethワードレコーズAmazon◆自らが生み出した過去の名作群との過酷な、そして最後の戦いメタル界の最前線で戦い続けてきた、MEGADETH17枚目のラスト・アルバム。冒頭2曲の疾走感からつい「原点回帰」と言いたくなるが、中盤からはむしろ脱スラッシュ&グランジ化の色濃い5th『COUNTDOWN TO EXTINCTION』~9th『THE WORLD NEEDS A HERO』あたりの感触が優勢となり、全体を通してみればバンドの歴史を総括するような集大成…

  • 書評『言語化するための小説思考』/小川哲

    言語化するための小説思考作者:小川哲講談社Amazon著名な作家が小説の書きかたを説いた本は数あれど、ここまでリアルに執筆時の思考回路を明かしてくれている本はなかったかもしれない。そのうえこの手の創作論が、多くを過去の名作からの引用に頼りがちであるのに対し、本書では自らの論にあわせてその具体例をわざわざ書き下ろしているという、読む側にしてみれば非常に贅沢な設計になっている。いわば授業の前に、先生がいちいち自作のプリントを拵えて教えてくれているというわけだ。そういう意味で、かつての小説作法本が名作という教科書を手に解説を加える学校の授業であるとしたら、本書には自作のテキストを手に授業を進める個人…

  • 短篇小説「河童少年のモイモイモイスチャー日記 其ノ二十三」

    「最強河童が来るってばよ! 最強河童が来るってばよ!」 今日は朝からじいちゃんがなぜかナルト口調でそう繰り返しながら、食卓の脇にあぐらをかいて背中からはずした甲羅に釘を打ちまくっていた。「なんで甲羅壊してんの?」 僕が素直に疑問をぶつけると、じいちゃんは「壊してんじゃない、ギュンギュンに強化してんだ!」と豪語して、お前の背中にも打ってやろうかと言ってきたので全力で断った。 なにやら昔のヤンキーは木のバットに無数の釘を打ち込んだ「釘バット」という手づくりの武器を振りまわしていたらしく、じいちゃんは釘だらけの甲羅を背負ってその「最強河童」とやらに戦いを挑むつもりらしい。じいちゃんってもしかして元ヤ…

  • 2026年○けましておめでとうございます10選

    あけましておめでとうございます!(新年)抜けましておめでとうございます!(自販機のおつり取出口に嵌まっていた指が)溶けましておめでとうございます!(歯が折れない程度にあずきバーが)吹けましておめでとうございます!(ドとミとソの音が出ないクラリネットを)こけましておめでとうございます!(食い逃げ犯がボンクラ刑事の目の前で)よけましておめでとうございます!(水溜まりをよけた先に待っていたもうひとつの水溜まりも)泣けましておめでとうございます!(卒業式で冷たい人と言われる前に)負けましておめでとうございます!(「負けるが勝ち」という言葉を鵜呑みにして)焼けましておめでとうございます!(0点テスト用紙…

  • 短篇小説「倒置法探偵・置田倒次郎」

    「この中にいる、犯人は!」 叫び声を上げた、商店街のど真ん中で、ひとりの探偵が。襟を立てていた、彼は、トレンチコートの。名探偵と呼ばれていた、もちろん自称ではあったが、そのつけ髭の男は。「名にかけて、じっちゃんの!」 決め台詞だった、それが置田倒次郎の、名探偵と自ら呼ぶ男の。 しかし漁師だった、彼の祖父は、探偵でもなんでもなく。ふぐの毒を喰らって死んだ、そのじっちゃんは、てめぇで釣ったふぐの、丸々と太ったふぐの。つまり実の祖父ではなかった、彼がその名にかけたのは、彼の言うじっちゃんは。それは名探偵だった、見知らぬどこかの、たぶんフィクションの、本か漫画か何かで読んだ。 とはいえどうでも良かった…

  • 2025年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

    1位「Set Me Free」/ART NATIONwww.youtube.com当代随一の歌唱力モンスター、アレクサンダー・ストランデルによる天井知らずのハイ・トーンが何段階にも炸裂。パワー解放をサビまで待ちきれず、Bメロですでに暴発。そこからさらに、拳を突き上げたくなる押せ押せの昇天展開。MVのアニメーションは謎。tmykinoue.hatenablog.com Chapter V: The Ascendance - アートネイションアーティスト:Art NationワードレコーズAmazon 2位「The Ending Is Always The Same」/LUKE SPILLERww…

  • 2025年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

    1位『NEVER STOP BELIEVING』/MEMORIES OF OLD 【Amazon.co.jp限定】Never Stop Believing (特典:メガジャケ付)アーティスト:MEMORIES OF OLDSpritual BeastAmazon英国産シンフォニック・パワー・メタル・バンドの2nd。というわりにはさほどパワー感があるほうではなく、スピード・チューンもさほど多くはない。新Voの声も線が細く、やや頼りない印象。そうなるともはや旋律のクオリティ頼みということになるが、まさにそこのみの一点突破で1位に選んだ。よほどメロディを重視して音楽を聴く向きでないと、あるいは物足り…

  • 中身1ページで終わりそうな架空新書タイトル10選

    ありもしない新書のタイトルを、10冊選んでみました。 一瞬疑問には思うけど、答えを聴いたところで「ふーん」としか言いようのないものばかりです。 ◆『なぜピザ屋のバイクには屋根がついているのか』 →斜めから差し込んでくる雨。◆『なぜ名探偵はコートの襟を立てているのか』 →トレンチ限定。ピーコートの探偵はいない。◆『なぜ気象予報士はパステルカラーのセーターを着るのか』 →全身黒ずくめで快晴を告げる暗黒の予報士待望論。◆『なぜゴルフでだけ「猛チャージ」と言うのか』 →あまり猛々しい感じのしない紳士の競技であるにもかかわらず。◆『なぜ柔軟剤は洗剤のフリをしているのか』 →間違い買い誘発のほかに何が?◆…

  • ディスクレビュー『THE WILD CARD』/TREAT

    ザ・ワイルド・カード [CD] - トリートアーティスト:トリートマーキー・インコーポレイティドビクターAmazon◆「エンドゲーム」はどこまでも再結成後も充実作をリリースし続けている北欧メロディアス・ハード・ロックの「良心」――もはやそう呼びたくなるほどにハイ・アベレージな安定感を誇るTREATによる10枚目のアルバム。このあとに「フェアウェル・ツアー」が待っているというので、てっきりこれがラスト・アルバムになるのかと思っていた。しかしいまのところそう銘打たれているわけでもないようなので、ライブ活動を終了するというだけであるのかもしれない。いまだこのクオリティを叩き出せるならば、是非ともアル…

  • 短篇小説「河童少年のモイスチャー日記 其ノ二十二」

    『ちょっとだけカッパー』――今期放送してるドラマの中に河童が入り込めそうなタイトルがあったので、ちょっとだけモジッてみた。 もちろん原題は『ちょっとだけエスパー』だけど、人がちょっとだけ河童になったらいったいどうなるんだろう。頭頂部だけちょっと薄くなるとか、肌がちょっとだけ潤うとか、背筋がちょっとだけ甲羅みたく割れるとか、きゅうりがだいぶ好きになるとか。 きゅうりは人間だってもともとちょっとだけ好きみたいだから、ちょっとだけ河童になると「ちょっと×ちょっと=だいぶ」好きになるっていう計算。 肌が潤うのはお母さまがたに喜ばれそうだけど、ちょっと生臭くはなるのでどっちを取るかってのはある。人間の場…

  • 短篇小説「河童少年のモイスチャー日記 其ノ二十一」

    「お前、立候補してみたら?」 算数の授業中に前の席の小仏くんが急に振り向いてそう言ってきたので、思わず頭の皿が浮いた。そして皿と頭皮の隙間を、冷たい風が通り抜けるのを感じた。 どうも近ごろヘッドソーサーの具合がイマイチなのか、動揺すると皿が浮いてるように感じることがある。「服装の乱れは心の乱れ」って言葉があるけど、河童の場合は「皿の乱れは心の乱れ」ってことになるのか。逆に「心の乱れは皿の乱れ」って可能性もある。どっちにしろ人にしろ河童にしろ、心と体はつながってるってことを感じる。 小仏くんはそれだけ言うとすぐにまた前を向いて、ちょうど前を向ききったところで黒板に算数の式を書いていた先生が、「う…

  • 「新語・流行語全部入り小説2025」

    「ひょうろくのビジュイイじゃん」 エッホエッホと日本中に古古古米を売り歩くおてつたびの途中。カジュアルな温泉旅館つまりオンカジの和室に設置されたオールドメディアで、過酷なドッキリの餌食になっているひょうろくを観た平成女児の「チャッピー」こと茶畑ぴろ美は、薬膳スパイスたっぷりの麻辣湯に舌鼓を打ちながら思わず驚きの声を上げた。美大入学後の最初の授業で描いた絵の、異様にゆったりとしたファーストタッチの時点ですでに首席卒業が決定したとの伝説を持つぴろ美――ゆえにクラスメイトからは「卒業証書19.2秒」と呼ばれていた――にとって、ひょうろくの見た目はモフモフのラブブなんかよりも遥かに魅力的に映った。ミャ…

  • ディスクレビュー『I FEEL THE EVERBLACK FESTERING WITHIN ME』/LORNA SHORE

    I Feel The Everblack Festering Within Me (Ltd. CD Edition in O-Card)アーティスト:Lorna ShoreCentury MediaAmazon◆デスコアの扉をメタル方面へと開く新基準の激音美旋律多くのHMリスナーに「メロディック・デス・メタル」というジャンルの扉を開いたCARCASSの名盤『HEARTWORK』級の衝撃である。あそこからさらにブルータリティの度合いを時代のぶんだけ押し進めた場所に、本作は待っている。誰も事前にイメージできてはいなかったが、いざ聴いてみればすべてが時代の要請であったとしか思えない。まさに『HEAR…

  • 短篇小説「河童の一日~其ノ二十~」

    「お前をカッパ巻きにしてやろうか?」 放課後にクラスメイトの小暮君とカラオケに行ったら、マイク越しにいきなりそう言われて震え上がってしまった。なんでそんな歌を知ってるのか知らないけど、なんでも苗字がおんなじ人が歌っていた昔の曲の歌詞を僕向けにアレンジしてみたらしい。 そういえば僕がそのミュージシャンのことを「その人」って言ったら、「悪魔だよ!」と小暮君は食い気味に訂正してきた。年齢が十万歳を超えてるなんて、おかしなことも言っていた。 そう来たら僕だって、「そんなのいるわけないじゃないか、この陰謀論者め!」って言ってやりたかったけど、「だったらお前だっているわけないんだよ!」って言われるのが火を…

  • 短篇小説「ことわざサービスセンター」

    迷った末に、わたしは電話をかけることにした。「はい、ことわざサービスセンターです。ご用件をお聞かせ願えますでしょうか?」 「あのー、先日こちらでことわざを購入させていただいたんですが……」 「なるほど、ご購入後のご相談ですね。そうなりますと、使用方法に関するお問いあわせですか?」 「いえ、すでに使ったというか、使えることは使えたんですけど……」 「ご使用の上で、何か当社の製品に不具合がございましたでしょうか?」 「いや不具合というか、むしろしっかり機能してしまったというか……」 「なによりでございます。つまりこちらは、製品にご満足いただけたご感想をお伝えいただくお電話ということでよろしかったで…

  • ディスクレビュー『DON'T SELL YOUR SOUL』/MICHAEL SCHENKER GROUP

    Don't Sell Your Soul (CD) - マイケルシェンカーグループアーティスト:Michael Schenker GroupワードレコーズAmazon◆良質な地味さ=滋味あの「神」が北欧の実力派シンガー、エリック・グロンウォール(元H.E.A.T、SKID ROW)を迎えたとなれば、いよいよ久々に泣きメロが炸裂するのではないかと期待を膨らませつつ待ち受けた本作。しかしいざ蓋を開けてみれば、そのように火花散る化学反応は起こっていなかった。少なくともここには、エリックの伸びやかな歌唱を生かすような楽曲は収められていない。本作における彼は、正直なところ三~四割の力で歌っているように聞…

  • 短篇小説「騙しあい」

    「かかったな!」 穴の上からわたしを見下ろしながらそう言っているのは、幼なじみのひろ志であった。久々に故郷へ帰ってきたところ、実家の庭先でわたしは落とし穴に落とされていたのだ。十年ぶりの再会にしては、ずいぶんと手荒なマネをしやがる。「そっちこそかかったな!」 わたしは口の中に入ってきた砂利やスチロールの破片をペッペと蜆のように吐き出しながら、ひろ志を見上げて言った。「お前がここを掘ることくらい、もちろんわかりきっていたよ。おかげで手間が省けて助かった!」 わたしが手で穴の底をひと掻きすると、チョロチョロと水が染み出してきた。それは正確に言えば水ではなく、温かいお湯なのであった。「ちょうど温泉を…

  • ディスクレビュー『SONGS OF YESTERDAY』/RUST N' RAGE

    Songs Of Yesterdayアーティスト:Rust N' RageFrontiers RecordsAmazonフィンランド出身のハード・ロック・バンドの4th。ジャケットからもひしひしと伝わってくるように、80年代アメリカン・ハード・ロック影響下にあるスリージーな音像だが、彼らの魅力の本質はその北欧然としたメロディの質にこそある。その事実を改めて感じさせたのが前作の冒頭を飾った哀愁ほとばしる「Prisoner」という楽曲で、なによりもメロディを重視する当ブログでも2022年ベスト・ソング部門の2位に選んでいる。tmykinoue.hatenablog.comそんな前作に比べて、今回は…

  • 短篇小説「ストレートネックな男」

    首園直樹は近ごろ寝覚めが悪いような気がする。きっとストレートネックのせいだ。そういえば靴底の減りも妙に早いような気がしないでもない。それもストレートネックのせいなんじゃないだろうか。階段を降りるとき膝が痛いのも年に二度ぎっくり腰になるのも、きっとストレートネックのせいに違いない。首が真っすぐであるばっかりに。 直樹は最近ブログのアクセス数が減ってきている原因をつかめずにいる。これもストレートネックのせいだと思う。ちなみにブログの内容は、ストレートネックについて書いているものだ。もちろん書くときの姿勢がストレートネックであるのは言うまでもない。 だとすると読んでいる本の内容がいまいち頭に入って来…

  • 短篇小説「倍速刑事」〈非戦力系刑事シリーズ〉

    今日も倍速刑事が商店街を倍速で駆け抜けている。倍速で食い逃げ犯を追いかけているのだ。 昼休みに街中華のカウンターで出てきたばかりのラーメンに口をつけた刹那、その一番奥の席から黒いキャップをかぶった男がすっくと立ち上がり、何も言わずに店外へと駆け出していった。 その様子に違和感を覚えた倍速刑事は一瞬、「ここって食券方式だったかな?」と倍速で考えてみたが、この店の常連である彼はそんなはずがないことに倍速で気がついた。 とはいえ店主が例の台詞を叫ぶまでは、いかな倍速刑事といえどもスタートを切るわけにはいかない。彼はカウンターの奥で鉄鍋を振っている店主を振り向かせるために、「店主!」と倍速で声をかけた…

  • ディスクレビュー『GIANTS & MONSTERS』/HELLOWEEN

    ジャイアンツ&モンスターズ ~デラックス・エディション [生産限定盤] [2CD] - ハロウィンアーティスト:ハロウィンビクターエンタテインメントAmazon◆演奏における「民主制」と作曲における「分業制」の相性オールスター七人編成による二作目。基本的には前作について書いた以下のレビューで指摘した「大所帯の民主制」問題が継続しているが、全体にややこなれてきた印象もあり、バラエティ豊かな作風となっている。tmykinoue.hatenablog.com今作で改めて感じたのは、果たして大所帯の「民主制」と作曲段階の「分業制」は両立可能であるのかという問題。普通、全員が同等の発言権を持つ「民主制」…

  • 短篇小説「誠実な神」

    神社の賽銭箱に小銭を投げて手を合わせ、頭の中で願いごとを繰り返していると、どこからともなく強めにエコーのかかった声が響いてきた。「ならば次の宝くじを買うが良い」 わたしはこれが神の啓示というものなのかと思った。しかしそれ以前に気になることがあったので、わたしは脳内に神への疑問を思い浮かべてみた。「たしかにありがたい情報ではあるんですが、わたしの願いごととは答えがだいぶズレているような気が……」 わたしが願ったのは片想い中の相手との恋愛成就であって、お金が欲しいという願いではなかった。「だが金さえあれば、たいがいのことはなんとかなるであろう」 わたしは神とも思えぬその発言に耳を疑った。しかしその…

  • ディスクレビュー『WONDERLAND』/CROWNE

    Wonderland - クラウンアーティスト:CrowneワードレコーズAmazonART NATION、H.E.A.T、DYNAZTY、EUROPE、THE POODLESのメンバーが結集したスウェーデン美旋律集団の3rdアルバム。プロジェクト的でありながらメンバーチェンジもなく、リリースペースも二年に一作と安定しており、前作が素晴らしかったというのもあって、いまこそ頂点に昇りつめる絶好のタイミングでのリリース。だが少々、こちらの期待が多きすぎたのかもしれない。正直なところ、聴く前から今年の年間ベストアルバムはこの作品になるだろうと予想していたほどに。いやたしかに、相変わらず北欧メロディア…

  • 短篇小説「妙な質問」

    「あなた、お腹が痛いんじゃないですか?」 会社から駅へと向かう帰り道を歩いていると、若い女性からそう声をかけられた。わたしは一日の業務を終えて、ひどく疲れた顔をしていたのかもしれない。だがたしかにお腹は空いていたがまったく痛くはなかったので、わたしは心配してもらったお礼の言葉を添えてそう答えた。しかし女は引き下がることもなく、続いて質問を繰り出してきた。「でも明日から、どうするつもりなんですか?」 そう言われても、どう答えて良いものかわからなかった。いま現在でさえ腹が痛くはないのだから、明日どうするもこうするもない。このあとで食う物にもよるだろうが、ただ普通に食事を摂って風呂に入って寝るだけで…

  • 夏草の乱

    すっかり大人になりすぎてみると、そういえばしばらくやってないなぁということが出てくる。子供のころはそういうことはなかった。しばらくというほど長く生きていなかったからだろう。少し離れたスーパーからの帰り道、少なからぬ荷物を肩にかけて歩道の上を歩いていた。ついあれこれとまとめ買いしてしまったせいでバッグがすっかりふくらんでしまい、そうなると狭い歩道上で人とすれ違うのもやや慎重になる。長ネギの飛び出たバッグの圧で相手を脇に追いやるのも申しわけないし、そのぶんだけこちらが一歩脇にずれたり不自然に腰をくねらせたりするのも骨が折れる。なのでそういうときは、なるべくなら向こうから誰も来てほしくないとうっすら…

  • ディスクレビュー『MESSAGES TO THE FUTURE』/MARTUROS

    amzn.toなんとなくジャケットに雰囲気があるので聴いてみたら、結構当たりというパターンの一枚。スロバキア産正統派ヘヴィ・メタル・バンドによる3rdアルバム。やはり近ごろの流行りなのか女性Voを擁しており、それもいまやありがちな選択肢になってきているとはいえ、そこで80年代の大御所らとは異なる部分を最低限担保できているからこそ、てらいなくオーセンティックなHMをプレイできているのかもしれない。フックのあるギター・リフとキャッチーな歌メロで構成してゆくという、ややパワー・メタル寄りの様式美HMと言ったあたりの音楽性で、いわゆる「NWOTHM」の一派とみなされるのかもしれない。だがその楽曲のクオ…

  • 短篇小説「風の吹きまわし」

    その日は朝から、いつもとは違う風が吹いていたように思う。 朝の食卓につくと、いつもは半熟の目玉焼きの真ん中を箸で突き破ってから食べる父が、白身から黄身の周囲を丁寧にくり抜いてから口に運んでいた。どういう風の吹きまわしであろうか。 ちなみに父の右のほっぺたにはそこそこ大きなほくろがあって、その中心からは一本の毛がにょろりと生えている。わたしはそれを「父が目玉焼きの目を突きすぎてきたことによる呪い」であると考えてみたりもしてきたのだが、だとしたら今朝のような食べかたを続けていればほくろが丸ごとぽろりと剝がれ落ちる日がじきに来るのかもしれない。ほくろを黄身、その周辺の地肌を白身に見立てるとそういうこ…

  • ディスクレビュー『LET THERE BE DARK』/TOWER

    Let There Be Darkアーティスト:The TowerCruz Del Sur MusicAmazon近ごろこの手の、80年代にレイドバックした普遍的なハード・ロック/ヘヴィ・メタルを女性Vo.で味変したバンドが増えている。そうなるとこれはいかにもその中に埋もれてしまいそうなタイプの作品ではあるのだが、そのせいで音楽の質にかかわらず見過ごされてしまうとしたら、少々もったいない一枚だろう。そのうえで誤解を招きがちなのは、このデス/ドゥーム・メタル系を連想させるジャケットと、呪術的な雰囲気を強調したメンバーのルックス及びMVで、実際に聴いてみると思いのほかカッチリとした正統的なギター・…

  • 短篇小説「そういうとこ」

    想田佑介は、いつも自分ばかり叱られているような気がした。周囲とまったく同じようなことをしているつもりなのに、いつだってなぜか自分だけが叱られる。しかもそのときの台詞は、なぜかいつも決まっているのだった。 つい先日もそんなことがあった。早めに出社して会議室へ赴き、人数分の資料をデスクの上へあらかじめ配置していると、二番目にやってきた先輩社員の島村が、想田の肩を叩いてこう言った。「お前、そういうとこだぞ」 しかし想田には、何を叱られているのかがわからなかった。もしかすると、この資料を配付する行為をやめろと言われているのかもしれないが、会議に必要な資料なので配らないというわけにもいかない。それにそれ…

  • ディスクレビュー『GRAVITY』/LEVERAGE

    GRAVITY (輸入盤)アーティスト:LEVERAGEFRONTIERSAmazonこれは「化けた」と言っていいと思う。2006年から活動しているベテランにそのような言葉はふさわしくないかもしれないが、これまでとは明らかに楽曲の持つキャッチーさのレベルが違う。人間、化けるのに早いも遅いもないということを改めて思い知らされる。フィンランド産メロディアス・ハード、4年ぶり6枚目のアルバムである。その変化/進化の背景にある要因は、残念ながら2022年に訪れた前Voの死というマイナス要因であったかもしれない。だがそのように変わることを余儀なくされる苦境の中、新Voを迎えて制作された本作は、まさに起死…

  • ディスクレビュー『SIGN OF THE WOLF』/SIGN OF THE WOLF

    Sign Of The Wolf サイン・オブ・ザ・ウルフ~狼の徴(しるし)~アーティスト:SIGN OF THE WOLFRUBICON MUSIC ルビコン・ミュージックAmazon「残党」という言葉にポジティブな響きはないが、これは史上もっともその言葉をポジティヴに響かせることに成功している作品かもしれない。ここには正統派ハード・ロック/ヘヴィ・メタルの美点が、絶妙なバランスで結晶している。あのDIOの残党によるプロジェクト――といえば当然LAST IN LINEが思い浮かぶわけで、Voをはじめとするメンバーもそれなりに共通しているのだが、やはり今回はRAINBOWの『RISING』で弾…

  • ディスクレビュー『CHASING EUPHORIA』/HAREM SCAREM

    Chasing Euphoriaアーティスト:Harem ScaremワードレコーズAmazon◆近作の中では随一。そして足りない最後のピース。このバンドに関しては、時期による音楽的方向性のブレがそれなりに大きいがゆえに、はじめに各時期に対するスタンスを明確にしておくべきだと思っている。僕の場合はご多分に漏れず2nd『MOOD SWINGS』から入った口で、しかしアルバムとして一番好きなのは溯っての1st『HAREM SCAREM』。ちなみに1st収録の「Something To Say」は、かつてHR/HMオールタイム・ベスト・ソングの6位に選んでいるほど。tmykinoue.hatenab…

  • 客中求人5

    「お客様の中に、『ちょいと飛行機を操縦してみたいぞ』というお客様はいらっしゃいませんか?」「お客様の中に、『行けたら行く』と言って一度も行ったことがないお客様はいらっしゃいませんか?」「お客様の中に、残尿のほうが本尿よりも多く出るお客様はいらっしゃいませんか?」「お客様の中に、MBTI診断で全16種類を制覇したお客様はいらっしゃいませんか?」「お客様の中に、〈きのこの山〉vs〈たけのこの里〉論争に終止符を打てるお客様はいらっしゃいませんか?」「お客様の中に、洋楽を歌うと邦楽に聞こえるお客様はいらっしゃいませんか?」「お客様の中に、三代目 J SOULお客様はいらっしゃいませんか?」「お客様の中…

  • 当ブログ掲載ディスクレビューアーカイブ

    ブログという形式上、どうしても過去に書いたものが探しづらくなってしまっているので、こちらに一覧を用意しました。改めて見てみると、年によって書いている量に相当な偏りがありますね……。もう少しコンスタントに書いていきたいと思っています。いちおう年別に分けてみましたが、これは執筆時期であり、作品のリリース年ではないことをご承知おきください。【2025年】 ディスクレビュー『CHAPTER V: THE ASCENDANCE』/ART NATION - 泣きながら一気に書きました ディスクレビュー『SKELETÁ』/GHOST - 泣きながら一気に書きました ディスクレビュー『THE FATHER O…

  • ディスクレビュー『THE ASCENDANCE』/ART NATION

    Chapter V: The Ascendanceアーティスト:Art NationワードレコーズAmazon★想定のさらに上を行く圧巻の歌声に打ちのめされる悦び相変わらず惚れ惚れするような歌声だ。当代随一の実力派Voアレクサンダー・ストランデルを擁するスウェーデン産メロディアス・ハードの5th。いや「擁する」というよりは「率いる」と言うべきか。音色的には、シンセサイザーをフィーチャーしたスペイシーな印象がこれまでより強まっているが、この圧倒的な歌声を前にそんなことは瑣末事に過ぎない。むしろそのエネルギッシュな歌唱はあまりにも力強すぎて、人によっては押しつけがましさを感じるくらいだろう。たとえ…

  • ディスクレビュー『SKELETÁ』/GHOST

    Skeletáアーティスト:ゴーストユニバーサル ミュージックAmazon◆「BLACK SABBATH meets BOSTON」? 闇夜に明かりを灯す暗黒界の産業ロックスウェーデン産グラミー賞バンドの6thアルバムは、予想通りさらにキャッチーな路線へと開けた作品になった。ここまで来るともはや初期のゴシック的暗黒感は薄まったと言わざるを得ないが、しかし音作りの壮大さと奥行き、そしてメロディの湿り気にはその残り香が充分に残っている。キャッチーであるとは言ったが、当初は一聴したところやや地味な印象を受けた。その要因はおそらく、これまでのようにパンチの効いたイントロを持つ曲が少ないからであると思わ…

  • 短篇小説「とはとは」

    ドキュメンタリー番組の最後は、「とは」に対する答えで締めくくるのがお約束というものだ。だが超一流の投打二刀流日本人メジャーリーガーが登場したこの日の『激熱大陸』は、惜しげもなくその質問から幕を開けたのだった。「あなたにとって、〈野球〉とはなんですか?」 「えっ、いきなりですか……まあ、なんというか、う~ん……〈人生〉、ですかね」 「では、〈人生〉とはなんですか?」 「まあ、そうなるとやっぱり、〈野球〉ってことになりますね」 「では、あなたにとって〈野球〉とは?」 「ああ、まあそうなっちゃいますよね。じゃあもっと具体的に答えたほうがいいんですかね。えーっと、じゃあ〈仕事〉ってことで」 「では、あ…

  • 短篇小説「空跡」

    その朝、私は学校へは行かなかった。だがそれは、私が学生ではないからではなかった。だからといって会社へ行ったわけでもない。 もちろんそれは、その日出かけなかったという意味でもなかった。とはいえ私は海にも行かなかったし、スキー場にも行かなかった。それは季節がそれぞれふさわしくなかったから、というわけではないし、私は水泳部でもスキー部でもなかった。 だからといって私は、恋人と二人で野球場へ行ったりもしなかった。朝からやっているとしたらプロ野球ということはなく、高校野球や草野球、少年野球ということになるが、私は野球部員ではないし、もちろん監督でもない。そもそも野球をする趣味はないし、子供が少年野球チー…

  • 短篇小説「第一村人刑事」〈非戦力系刑事シリーズ〉

    「ようこそ、ポリクルベリーの町へ!」 初めて足を踏み入れた町で最初にそう話しかけてきたのは、トレンチコートの襟を立てたいかにも怪しげな男であった。その言葉とは裏腹に、笑顔など微塵もない。それどころか男は眉間に深い皺を寄せ、警察手帳らしきものをつきつけながらそう言ってきたのであった。 そうなると旅人でありひとりの冒険者であるわたしも、いったんは立ち止まらざるを得ない。まずは軽く会釈を返し、男からの質問を待った。もちろん悪事を働いた憶えはないが、だからこそ訊かれたことには正直に答える必要がある。近ごろこの町で、なにか事件でもあったのだろうか。 しかし待てど暮らせど、男から続く質問が来ることはなかっ…

  • 短篇小説「つもり刑事」〈非戦力系刑事シリーズ〉

    新米刑事の未村が、コンビニであんパンと牛乳を買ってパトカーへと駆け戻ってきた。しかしそのタイミングは、実に間が抜けていた。それらは彼が影響を受けたテレビドラマによれば、あくまでも張り込み中における定番の食事ということになっている。しかしこのときすでに張り込みは終わっており、容疑者はすでに逮捕されたあとであった。 それでも初めての張り込みの記念にと、その最中には叶えられなかった念願を、遅ればせながら叶えておこうということらしかった。しかしいざ相棒の待つ車に戻ってみると、パトカーの後部座席のドアが全開になっていた。その奥ではベテラン刑事の津森が、座ったまま器用に折りたたんだ新聞を読んでいる。「津森…

  • 縦横無尽にドラムが炸裂するメタル名曲10選

    ちなみに曲名前の番号は、順位ではなく紹介したい順あるいは曲順に近い意識で便宜的につけたものです。1.「Room For One More」/ANTHRAX www.youtube.com一曲を通じて楽曲の主導権を握るドラムの圧倒的存在感。 もはやギターと一体化したドラム・リフが遠慮会釈なく跳ねまわる。 リード楽器としてのドラムの可能性を感じさせる一曲。Sound of White Noiseアーティスト:AnthraxElektraAmazon 2.「Bitter Peace」/SLAYER www.youtube.com重々しいイントロからゆっくりと坂を登り、頂上でいったん静まったかと思いき…

  • ディスクレビュー『THE FATHER OF MAKE BELIEVE』/COHEED AND CAMBRIA

    The Father of Make Believeアーティスト:Coheed & CambriaCoheed and CambriaAmazon◆個々の楽曲とアルバム全体の魅力を両立した至高のコンセプト作これは着実にキャリアを積み重ねてきたバンドが10作目にしてたどり着いた、アメリカン・プログレッシヴ・メタルの傑作である。と、シンプルに言えばそういうことになるのだが、もちろんことはそう単純ではない。そもそも彼らの音楽性を「プログレ・メタル」と言い切ることも難しい。たしかに音像的にはプログレッシヴ・ロックにメタルのエッジを加えた形ではあるのだが、その根っこにはパンクやハードコア的な野性味も確実…

  • ディスクレビュー『BEYOND TOMORROW』/GINEVRA

    Beyond Tomorrowアーティスト:GinevraFrontiers RecordsAmazon◆高品質な歌とギター特化型地味作とにかく抜群に上手い歌とギターを堪能するための作品である。逆に言えば、その二要素がメロディアスな音楽にとっていかに重要であるか、またそれだけでどこまで到達できるのかを実験しているかのような潔さを感じさせる。VoはSEVENTH CRYSTALのクリスティアン・フィール、Gtは「プロジェクトやりすぎおじさん」ことマグナス・カールソン。加えてBaにH.E.A.T、DrにECLIPSEのメンバーを招喚するという、北欧の実力者を集めたバンド(というかプロジェクト?)の…

  • ディスクレビュー『BLOOD DYNASTY』/ARCH ENEMY

    Blood Dynasty(ブラッド・ダイナスティ)アーティスト:ARCH ENEMY(株)トゥルーパー・エンタテインメントAmazon◆高品質なメロディとブルータリティの分離北欧メロディック・デス・メタルの雄どころか、もはやヘヴィ・メタル界全体におけるひとつの基準点と言っても過言ではないARCH ENEMY12枚目の作品。最初に言っておくが彼らの近作を好んで聴く人にとって本作はなんの問題もない、むしろ前作の疾走チューン不足を的確に補うような作品で、期待を裏切られるようなことはまずないだろう。基本的な質は間違いなく高い。そのうえで不満を述べるとしたら、僕のようにそもそも現Voのアリッサどころか…

  • 短篇小説「風が吹けば桶屋が儲かるチャレンジ route 2」

    (※これはどうすれば風が吹くだけで桶屋が儲かるかという、その道筋を考えるためだけに書かれた実験小説の第二弾である) 一陣の風が、吹いた。 山から降りてきたその風はアスファルトの上を滑り、大量のスギ花粉を運んだ。その花粉をめいっぱい吸い込んだ通学中の小学生男子が、ひとつくしゃみをした。くしゃみをした勢いですでにぐらぐらになっていた少年の乳歯が抜けて、口の外へと飛び出していった。気づいた母親が、すぐにそれを拾って塀の向こうの屋根の上に投げた。なんかそうしたほうが良いという話を聞いたことがあったからだが、何がなぜどう良いのかは知らないままに。 だが母親の投げた乳歯は、もちろん屋根の高さにまでは届かな…

  • ディスクレビュー「GAME OF FACES」/DYNAZTY

    Game Of Facesアーティスト:DynaztyワードレコーズAmazon◆高密度、高精度で組み上げられたメロディの宝石箱隅から隅まで、煌びやかなメロディがギッシリと高密度で詰め込まれた作品だ。現AMARANTHEの男声Vo.であるニルス・モリーンを擁するスウェーデン産メロディック・ハード・ロック・バンドの9作目は、日々メロディを追い求めている聴き手ならば素通りできない輝きを放っている。個々の旋律が極限まで研ぎ澄まされているうえに、そのつなぎに一分の隙もない。これぞまさにメロディの宝石箱や!――そう彦摩呂風に言いたくもなってくる(not 海鮮丼)。だがその隙間なく埋め尽くされた高密度と高…

  • ディスクレビュー『PARASOMNIA』/DREAM THEATER

    パラソムニア (ジャパン・リミテッド・エディション) (特典なし)アーティスト:ドリーム・シアターソニーミュージックエンタテインメントAmazon◆ドラム戻って質高まらずギター飛翔すオリジナル・メンバーであるマイク・ポートノイの復帰作。彼が抜けて以降、軽めのドラム音に不満を抱いていたメタル者にとってこれは歓迎すべき復活劇であるはずなのだが、事態はそう単純ではなかった。たしかにそのタイトで引き締まったドラムの音作りには、「やはりこの音でなければ」という必然性を改めて感じる。だがそれ以上に、作曲面及びアレンジ面における限界が見えてしまっていることのほうが大きな問題であるだろう。まずはそのドラムに関…

  • ディスクレビュー『MARCH OF THE UNHEARD』/ THE HALO EFFECT

    March Of The Unheard(マーチ・オブ・ジ・アンハード)アーティスト:ザ・ヘイロー・エフェクト(株)トゥルーパー・エンタテインメントAmazon創始者イェスパー・ストロムブラードを中心に、IN FLAMES関係者五名が時系列を飛び越えて結集したバンド、あるいはプロジェクトが放つ2nd。この手の企画は単なる懐古趣味に終わることが多いが、順調に二枚目が出たことからもその内容の充実度は推して知るべし。1stも良質な作品であったが、ここへ来てより焦点が絞れてきたというか、原点回帰への照れがなくなったように感じる。その音楽的方向性は、やはりイェスパー在籍時のIN FLAMES。だが彼がい…

  • 2016年~2024年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選リスト

    そろそろ自分でも過去に選んだお気に入り作品を見渡せる形にしておきたいと思い、これまでの年間ベスト・アルバムをリスト化してみました。【2024年】ブラッド・アンド・エンジェルズ・ティアーズアーティスト:ヴィジョン・ディヴァインキングレコードAmazon1位『BLOOD AND ANGELS' TEARS』/VISION DIVINE 2位『THE SKIES ABOVE ETERNITY』/FELLOWSHIP 3位『CLEAR COLD BEYOND』/SONATA ARCTICA 4位『TEENAGE REBEL』/NESTOR 5位『PLEASURE BEATS THE PAIN』/REM…

  • 電子書籍『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』無料配布開始のお知らせ

    こつこつと書き溜めた短篇小説をなんとか自力で電子書籍化した『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』。いまやその後に書いたものもこのブログに続々と蓄積されていっているけれど、そういえばあれっていつ出したんだっけ?――そう思ってAmazonのページで確認してみたところ「2014/3/3」とのこと。なんともはやリリースから10年(もうじき11年)も経っている……!という時の高速展開に衝撃を受けて、これを機に誰でも無料でダウンロードして読める形にすることにしました。そもそも最初から自己紹介がてら、ポートフォリオ代わりの見本市として無料で行こうという考えはあったのですが、どうも一番目に触れるチャンスの多…

  • 当世十大あけましておめでとうございます2025

    あけましておめでとうございます!(先生に怒られて閉めたお口のチャックをその手で)あけましておめでとうございます!(銀行員がお客様の貸金庫を無断で)あけましておめでとうございます!(身に憶えのないメールの添付ファイルを片っ端から)あけましておめでとうございます!(キッチンハイターする際には部屋中の窓という窓を)あけましておめでとうございます!(あけたら保証対象外になりますと書かれているのに裏蓋を力ずくで)あけましておめでとうございます!(〈あけない夜もあるさ〉と泣きながら歌った直後に夜が)あけましておめでとうございます!(飲みかけの牛乳がまだ残ってるのにいま買ってきたほうを)あけましておめでとう…

  • 2024年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

    1位「Eternity」/FELLOWSHIP『三國無双』でステージ・インしたところに流れてきそうなワクワクするイントロから、一撃で印象に残る流麗なギター・フレーズ、そして切なすぎる歌メロの連鎖と、かつての昭和歌謡やアニメソングでもここまでは泣かせないだろうというくらい全編哀しみに満ちあふれた名曲。メロディの方向性的には断トツの1位。ザ・スカイズ・アバヴ・エターニティ [CD]アーティスト:フェローシップマーキー・インコーポレイティドビクターAmazon 2位「The Broken Past」/VISION DIVINEwww.youtube.comアルバムが素晴らしかったのでほかにも選びたい…

  • 2024年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

    1位『BLOOD AND ANGELS' TEARS』/VISION DIVINE ブラッド・アンド・エンジェルズ・ティアーズアーティスト:ヴィジョン・ディヴァインキングレコードAmazon欧州様式美HMの結晶。VISION DIVINEといえば、ミケーレ・ルッピ(Vo.)在籍時の3rd『STREAM OF CONCIOUSNESSS』が名盤として名高いが、それに勝るとも劣らぬクオリティ。いわゆるコンセプト・アルバムであり、二部構成になる壮大なサーガの第一部とのことだが、一枚の作品としての完成度が非常に高く、最初から最後まで通して聴くことの意味を確実に感じさせる。とにかく美旋律に尽きる。www…

  • 書評『もうひとつの街』/ミハル・アイヴァス

    チェコ出身の作家と言えばやはりカフカだが、まさにカフカに近い作風を期待して読んだ一冊。結論から先に言えば、多くのカフカ・フォロワーの作品がそうであるように、その欲求は半分ほど満たされ、半分ほどは満たされず。しかしカフカについて改めて考える良いきっかけになった。そもそもこの作品をいま読もうと思ったのは、ちょうど少し前に自分の書いた中篇小説が似たようなモチーフを持っていたことがきっかけだった。それは大まかに言えばすぐ傍にある別世界に迷い込むといったもので、それこそカフカの『城』の影響を受けて書きはじめたような気がする。なので個人的にはほかにどのような書きかたがあり得たのかと、ある種の答えあわせをす…

  • 短篇小説「み覚」

    「わかりみが深いわね」 辛子が頷きながらそう言うと、甘彦は小さく首をひねりながら、 「でもおかしみはないよね」と言った。 それはけっして楽しい話題ではなかったが、そんな中にも常におかしみを求めるのが甘彦だった。昼飯時のファミレスは混雑していて、なかなか注文の品は届かない。「でもおかしみが入ると、わかりみが減るじゃない」 辛子はおかしみとわかりみは、相反する要素だと思っている。 「いやおかしみが入ったほうが、わかりみもさらに増すはずだよ」 やはり二人は価値観が合わないのかもしれない。 「まあそう言われてみると、それはそれでわかりみが深いかも」 辛子には意外と謙虚なところがあった。あるいはそれが自…

  • 「新語・流行語全部入り小説2024」

    令和の米騒動の影響により給食にアサイーボウルばかり出てくるようになったアザラシ幼稚園に、裏金問題により江戸幕府界隈を追われた侍タイムスリッパーが保父として採用された。時に人殺しさえ厭わない幕府の過酷な労働に比べれば、それが明らかなホワイト案件であることに間違いはなかった。 この幼稚園には教員らのあいだにソフト老害が蔓延っており、おかげで保護者たちからは「初老ジャパン」と陰口を叩かれることもあった。これはこれでカスハラと言えないこともないが、ならばソフトどころではない本物の老害を入れてしまえば良いのではないかと、園長はにわかに発想を転換させた。それが遠く江戸時代からやって来た人材となれば、それが…

  • 短篇小説「モチベーター」

    ある日、男がコンビニで万引きの容疑をかけられた。昭和の工場長のような店長にバックヤードへ連れ込まれた男は、席に着くなり持っていたトートバックを丸ごとひっくり返される。十数個の菓子パンが、テーブルの上へ脱獄囚のように飛び出した。それを見た店長は「そらみたことか!」としてやったりの顔をして、卓上の受話器をすでに摑まえている。それでも男は落ちついた口調で、店長に「よく見てください」と胸を張って要求した。商品を一点一点手に取って入念に確認しはじめた店長は、徐々に濃くなってゆく疑問符を、顔の真ん中に浮かべつつ男に訊いた。「レシートはあるのか?」 「もちろん、そんなものありませんよ」 「じゃあ全部盗んだっ…

  • 「レインボーブリッジ、封鎖できません!」みたいなフレーズ選手権

    ちょっと前から新作映画公開に合わせて、『踊る大捜査線』シリーズの再放送をやっていたのだが、中でも有名なのが『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』に出てくる表題の台詞。とはいえ、実はこれまで僕がその台詞をさんざん耳にしてきたのはモノマネ芸人によるものばかりで、そういえば本物を聞いたことはなかった。ならばこの機会に聞いてみようということで作品を観つつ、いまかいまかとその登場を待ち受けていたのだが、いざ当該シーンになると案外あっさりとしたもので、張り切った名台詞というよりは、単なる現状報告という感じの落ち着いたテンションで「え、これだけ?」と肩すかし。だがよくよく考…

  • 短篇小説「河童の一日~其ノ十九~」

    テレビドラマ『ビーチボーイズ』の再放送を録りためていたやつを一気に観た。河童だってドラマは観るし、反町にも竹野内にも憧れるよねこんな世の中じゃPOISON。いや竹野内のほうは非POISON。 だけど耐水性を考えれば、むしろ水辺に生息する僕こそが「ビーチボーイ」と呼ばれるべきなんじゃないのか?――とか思ってみるけど、ビーチとはあくまでも海岸のことであって川岸をビーチとは呼ばないので、残念ながら河童はビーチボーイにはなれないっぽいと気づいてズンと落ち込んでみたり(「ぽい」からの「ズン」)。 かといって文字どおり「リバーサイドボーイ」となると途端に貧乏くさくなる気がするし、爺ちゃんにそう呼んでほしい…

  • 書評『現代生活独習ノート』/津村記久子

    津村記久子の小説には気づきが多い。つまりそれは読むことによって、これまで自分が気づかなかったことにふと気づかされるということだ。それは自分の人生がより豊かになるということかもしれない。あるいは、気づかなくて良かったことにまで気づかされてしまうこともある。楽しいことだけに気づいて、悲しいことにだけ気づかないふりをすることはできない。それでも気づかないよりは気づいたほうが、楽しめる機会の絶対量は確実に増える。あとはその機会を、気づいたこっちが生かせるかどうかだ。その素材は必ずしも楽しげなことばかりではなく、それこそ悲しいことや理不尽な出来事であるかもしれない。むしろ笑い話やコントの材料と考えるなら…

  • ChatGPT短篇小説「集まれ、ジェネリッ君」

    【※以下の小説は、私がふと思いついた題名で小説を書くようChatGPTに依頼し、さらにはいくつかのリクエストを繰り返しながら複数のバージョンを出してもらい、それらを当方で比較検討しつつそれらを編集、融合、加筆訂正した結果、最終的にもっともらしい一篇に仕上がったような気がするものである】 町の片隅にある、古びた小学校の体育館。そこで毎週日曜の午後、ひっそりと開かれる集会があった。集まるのは「特に個性がない」と自称する人々で、彼らは互いを「ジェネリッ君」と呼びあっていた。町の人々は誰も彼らの存在を知らず、気にも留めていなかった。彼ら自身も、自分たちがどうしてそこに集まっているのか、誰ひとり思い出す…

  • 短篇小説「オーバーツーリスト」

    初めて日本の空港に降り立ったボブは、ロビーですれ違ったマダムが携えていたなんでもない花柄のエコバッグにすっかり目を奪われると、青い瞳を溺れるほど潤ませて歓喜の声を上げた。「なんて美しい花! なんという大自然! 僕はもう感動でどうにも涙が止まらないよ! ヘイ、そこの世界一ダンディなジェントルマン、いますぐに霊柩車を呼んでくれるかい?」 そう話しかけられた半ズボンの少年は、「は? 呼ぶなら救急車じゃねえの?」とベンチでグミをクチャクチャ噛みながら、ついでに鼻もほじりながら訊き返した。ボブは握り込んだ拳の中に親指を隠しながら答えた。「いやこれほどまでに感動してしまったら、救急車程度じゃとてもまにあわ…

  • 短篇小説「シゴデキな男」

    迅内はとにかくシゴデキな男だった。彼はいつもナルハヤであらゆるムリナンをゼンクリしてゆく。その鮮やかなシゴプリはまるでヨクデキのスパコンのようであると、社内ではウワモチである。 だがシゴデキな人間によくありがちなことだが、彼はオモガケな凡ミスをする部下や同僚にキビアタする傾向があり、そのストレスから来るサケオボのせいで翌朝ネボチコした後輩をさらにシカリツすることも少なくなかった。 ある日、そんなシゴデキな迅内にパワハラの疑惑がモチアガした。彼のシゴオワがあまりにもハヤスギなせいで、周囲の社員らはプラキズをつられたうえですっかりジシシツし、その結果どうにもモチベシが上がらないうえにまったくヤルキ…

  • 短篇小説「み覚」

    ↓こちらに短篇小説を書きました。 monogatary.comリンク先へ飛ぶひと手間をおかけしてしまって恐縮です。 ほとんど会話文なので読みやすいかもしれません。 読みやすさと面白さに関係があるのかはわかりません。 気軽にお読みいただければ幸いです。ランキング参加中短編小説置場ランキング参加中小説 novelsランキング参加中純文学小説、詩ランキング参加中言葉を紡ぐ人たちランキング参加中創作ランキング参加中ナンセンス

  • 近ごろの良曲

    身も蓋もないエントリだが、たまにはシンプルに最近よく聴いている音楽を素直に紹介してみようかと思い。というのも、時々はこうやって書き留めておかないと、いざ年末になって「今年って何聴いてたっけ?」となってしまい、年間ベスト作選びをまた一からやるハメになる。かといって、一作ごとに逐一レビューを書いていくのも労力がいる。別に年間ベストだってわざわざ選ばなくても良いのだけど、勝手恒例にしてしまっているので選ばないわけにもいかない。それにそこでまた選んでおかないと、今度は十年後とかに「あの頃って何聴いてたっけ?」と頭を悩ませることになる。それだって別に悩ませとけばいいんだけれども。てなわけで、最近よく聴い…

  • EURO2024日記~22日目~(了)

    1ヶ月に渡る欧州の熱戦は、スペインの優勝で幕を閉じた。前半は中盤でのボールの奪いあいが続き、互いになかなかシュートまでたどり着けないという、いかにも強豪同士の決勝戦らしい展開。しかし局面ごとの強度が高いため、退屈さは感じない。緊迫した前半のあとには良くあることだが、後半開始直後にふと緩んだ隙を逃さず、絶賛売り出し中のヤマル×ウィリアムズという若手コンビが躍動してスペインが先制。なにしろ観ているこちらも油断していて、気づいたらネットにボールが吸い込まれていた。イングランドは満を持してルーク・ショーを先発起用。これで左利きを左サイドバックに持ってくるという、ある種当たり前の布陣がようやく可能になっ…

  • EURO2024日記~21日目~

    準決勝2試合目はイングランド対オランダ。どちらも監督の采配に方針があるのかないのか良くわからないまま、しかしなんだか結果的に勝ち上がってきた両チーム。もちろん個のクオリティの高さが前提ではあるわけだが。イングランドはてっきりルーク・ショー先発で来るかと思いきや、相変わらず本職右サイドバックのトリッピアーを左に置いて機能不全。前戦から3バックにしてフォーデンの動きは改善されたものの、彼が中にいるぶんだけトリッピアーが左で孤立する場面が増えている。しかし孤立しているということはスペースがあるということでもあって、彼にボールを出したくなる場面も結構あるのだが、そのたびにトリッピアーの位置が高すぎたり…

  • EURO2024日記~20日目~

    待ちに待った準決勝1試合目は、スペイン対フランス。フランスのスタメンにグリーズマンがいない時点で、頭に大きめの「?」が浮かぶ。出場停止ではないようだし、後半から出てきたことを考えると怪我でもなさそうだ。コンディションの問題はいくらかあったのかもしれないが、誰が見てもこのチームの軸である彼をこの大事な一戦で外すという選択肢は、まったく想像していなかった。このフランス代表はエムバペのチームに見せかけて、実はグリーズマンのチームであるという共通認識があるように思っていたが、少なくとも監督のデシャンにそんな考えはなかったということか。それがまず衝撃だった。リンク役であるグリーズマンのいないフランスは、…

  • 短篇小説「あの店は子沢山」

    うちの店には優秀な「子」がたくさんいる。子沢山という意味ではない。なぜならば主語は親ではなく店であるからだ。もちろん子供が働いているという意味でもない。そんなことをして労働基準法を堂々と犯すわけにもいかないし、その必要もない。みな立派に成人しており、その親ではなく本人と正式な社員契約すら結んでいる。 すべてのはじまりは店頭に立つ売り子だった。そのころ彼女以外の店員たちは、誰ひとりとして「子」とは呼ばれていなかった。しかし店のバックヤードで棚卸しをしていた店員らには、それが不満であった。なぜ彼女だけが「子」と呼ばれ、上司から可愛がられるのか。 たしかに売り子は表に出る商売であるから、店員の中でも…

  • EURO2024日記~19日目~

    イングランドは案の定、スイスの組織的な守備に苦戦。特にトリッピアーが左で孤立していた前半は、攻撃が右サイド偏重、左サイドは完全に死んだ状態で、スイスも守りやすかったに違いない。何事につけ選択肢が一つしかない場合、常にそれは相手にとって御しやすい。二択以上から、初めて敵にも迷いが生じることになる。そこを打開するにはもうほとんど右のサカにボールを預けるしかなく、サカが右サイドを抉って中にクロスを入れるというトライが続く。しかし何度繰り返しても入れた先のエリア内には誰も間にあっておらず、なぜセンターフォワードのケインがそこにいないのか、あるいは空いたスペースにベリンガムやフォーデンが走り込んでいない…

  • EURO2024日記~18日目~

    いよいよ準々決勝の戦い。しかも最初の一戦が、事実上の決勝戦との呼び声も高いドイツ対スペイン。互いにボールを持ちたがるチームという印象があるが、いざ直接当たってみるとやはりスペインのほうが明らかにボールを持てる。数字上のポゼッション率以上に、自在にボールをまわすことができている。ポゼッション・フットボールにこだわって結果を出してきたこの国の歴史が、もはや文化としてチームに根づいているというべきか。しかしドイツも負けじと、ボールを奪って粘り強く工夫ある攻撃を試みる。特に前半はインテンシティが高く、目が離せないスピーディーな展開に。ところが後半がはじまってスペインが先制すると、まもなく構図がガラリと…

  • EURO2024日記~17日目~

    まずはルーマニア対オランダ。オランダはクーマンの采配こそイマイチ信用できないながらも、この試合に関しては終始ゲームを支配できていた。それにしてもガクポの決定力は素晴らしい。左サイドでの彼は翼を広げて生き生きとプレーしているように見える。オランダの攻撃に関しては、これまでマレンがどこか浮いているような気がしていたが、この試合ではむしろシャビ・シモンズのほうが周囲とズレている感じで、マレンのほうがチームにフィットしているように見えた。あと中盤のスハウテンの上手さには驚いた。寄せられても簡単にはボールを失わず、瞬時の判断で全方位に気の利いたパスを配球できる選手。後半まだ1点差の段階であっさり彼をベン…

  • EURO2024日記~16日目~

    ベルギーは最後まで噛みあわないまま終わった。トロサールは先発をはずされたうえに途中からすら使われず、同じくシュートに定評のあるティーレマンスも投入なし。サリバに完璧に封じられていたルカクを下げて、ほかのエリアに決定力を求めるしかない状況の中、シュート力のあるこの2人を使わなかった采配は理解に苦しむ。デデスコは結局のところ、謎に可愛がっているルカクと心中した形に。これでベルギーは一気に世代交代を余儀なくされることだろう。フランスはスペインほど仕上がっている感じでもないが、内容的には妥当な勝利。今回はなぜかグリーズマンをサイドに置いてみたりと、こちらはこちらでもったいない采配も目についたが(やはり…

  • EURO2024日記~15日目~

    それにしてもイングランドはいったいなんなのか。これまでよりも少しだけ良くなったのは中盤のメイヌーのところくらいで、彼と周囲との連携は、少なくともアーノルドの中盤起用に比べればだいぶマシになったようには感じる。だがそれ以外は相変わらず連動性に乏しく、観ていて面白いとも強いとも言いがたい。しかし結果こうして勝ちきってしまうのだから、強いことは強いということになるのだろうか。その土壇場同点ゴールを決めたベリンガムは、動きが重いわりには初戦から王様感が漂っていて、彼があんなスーパーなオーバーヘッドキックを決めたことすらも、なんだか自然なストーリーとして受け容れられる感がある。そして途中からパーマーを投…

  • EURO2024日記~14日目~

    さて、大会もいよいよ決勝トーナメントに突入。初戦はスイス対イタリア。とにかくイタリアはまったくいいところがなかった。今回は、評判うなぎのぼり中のカラフィオーリを出場停止で欠いたことも多少の影響はあったと思うが、守備的なわりに守備も緩いというちぐはぐな状態になっていた。それにしてもジョルジーニョはなぜ使われなかったのだろう。守備強度を考えてのことか。今大会のイタリア代表には、そもそも守備を重視してこのメンツを選んでいるのか、という疑問もあって、監督のスパレッティにもローマでトッティの0トップを採用した攻撃的戦術のイメージが強い。にもかかわらず、なぜこんなに消極的なチームが出来あがってしまったのか…

  • EURO2024日記~13日目~

    ウクライナ対ベルギーは、とにかく何もかもがしょっぱい試合だった。まずはウクライナのスタメンにジンチェンコとムドリクがいないことに驚いた。ムドリクは怪我らしいので仕方ないにしても、ジンチェンコはこのチームの核ではなかったのか。もちろんこの大会では核らしい働きができていなかったから外されたのだろうが、ここで評価を下げてアーセナルに帰ってくるとは思わなかった。ベルギーは相変わらず噛みあっていないというか、むしろさらに悪くなっているくらい。これはもう個人どうこうのレベルではなく、チームとしてまったく機能していないレベル。最後にあざとく引き分けを狙いにいくあたりも、これだけのメンバーを揃えておいてそんな…

  • EURO2024日記~12日目~

    オランダ対オーストリアは意外な展開に。オーストリアのサボらない、サボれないプレッシングは、さながらラングニック将軍率いる軍隊の如く。オランダはガクポがさすがの決定力を見せたが、右サイドで起用されたマレンがどうにも空まわり気味。ここは前戦で存在感を見せたフリンポンを使うべきだったと思うが、なぜか先発でシャビ・シモンズを使わなかった(そして前半のうちに思い出したように投入)あたりも含めて、クーマンの謎采配。オーストリアの組織力が、この先のレベルでも通用するのかどうか。いまのところ今大会の台風の目は、このチームということになりそうだ。フランス対ポーランドは、突破を決めているフランスがメンバーを落とし…

  • EURO2024日記~11日目~

    グループBの2試合。アルバニア対スペインか、クロアチア対イタリアか。どちらを観るべきか迷ったが、スペインがスタメンをなんと10人も入れ替える(なぜ1人残した?)という思いきりを見せてきたため、イタリアのほうを選択。イタリアは引き分けでも突破できる状況でもあり、案の定守備的な入り。この現実的すぎるメンタリティは、メンバーがどうなろうと監督が誰であろうともはや不変であるらしい。対するクロアチアも明らかなアイデア不足に陥っており、これならばスペインのほうを観ておけば良かったと思う前半。しかし後半にクロアチアが先制して、ようやくイタリアの攻撃にスイッチが入る。しかし入ったところで、そこまで攻撃陣が充実…

  • EURO2024日記~10日目~

    気づけばもう大会も10日目。試合数も少し落ち着いてきて、観るこちらとしてもだいぶ気が緩んできているという自覚がある。そしてこの先には遠からず大会の終了が見えてきているような気もしはじめて、すでに寂しさすらもうっすらと。いや本番は決勝トーナメントに入ってからなんだぞと、それはもちろんわかってはいるのだが。さて、すでにグループリーグ突破を決めており、あとは1位通過を狙うかどうかという状況の開催国ドイツと、この一戦に突破がかかっているスイス。そうなるとモチベーション的にはもちろん後者が上ということになるが、ドイツもメンバーを落とさずに来た。前半ドイツの先制ゴールで試合はもうほとんど決まりかと思いきや…

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