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泣きながら一気に書きました https://tmykinoue.hatenablog.com/

妄言コラムと気儘批評と悪戯短篇小説の巣窟

文筆業。 基本的に嘘泣きです。 よろしくお願いします。

井上智公
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2008/12/16

  • ディスクレビュー『72 SEASONS』/METALLICA

    72シーズンズ (SHM-CD)アーティスト:メタリカUniversal MusicAmazonこれはあくまで問題作『LOAD』以降のMETALLICAであって、それ以前のMETALLICAではけっしてない。時が戻らない以上、当然といえば当然だが妙な期待をしてはいけない。つまりその本質はメタルではなくロックンロールにあるということだ。先行公開された数曲のストレートな攻撃性から、彼らはここへ来ていよいよ初期衝動を取り戻したという声もあった。だがそんなことはもちろん不可能なのだ。捏造された初期衝動は若作りの痛々しさを伴う。目指した時点でそれは初期衝動ではなくなる。ベテランが若さに憧れる気持ちは、む…

  • 短篇小説「ピンと来ない動詞」

    今朝、わたしはふと気が生えたのでした。わたしの言葉が、どうもわたしの動作を的確に茹で上げていないということに。 いつものように、わたしは駅へと歩を注いでいました。もちろん、わたしを会社員として抱き締めた会社へと潜るためです。潜るといっても、わたしはスパイではありません。れっきとした正社員なのですが、なぜかいまは潜るという言葉しか思い浮かばないのです。 前にはびこる乗客に続いて、わたしはパスケースで自動改札を奪いました。これは「唇を奪う」というような意味でありまして、あんなでかいものを本当に捕獲したわけではありません。あくまでもわたしは、これから自社へと潜る身なのですから。 階段を早足でめくる途…

  • 最近の耳寄りSONGS

    今年に入ってから、なぜか北欧デスメタル系バンドがゴシック寄りに変化/進化した作品に充実したものが多く、よく聴いている。界隈には「OPETH化」とも言うべき全体の流れがあるように思うが、いずれもそれなりのベテラン勢であり、当初のコアでエクストリームな姿からすると、大きくその音楽性をシフトしている人たちも。それがここへ来て、メロディアスな側面を見事に開花させているのが興味深い。特にENSLAVEDのように、ARCH ENEMYやIN FLAMESあたりのメロディック・デス系を愛聴する一般のメタルファンでさえもかつて聴くのを躊躇ったようなブラック・メタル/エクストリーム・メタル系バンドが、ここまで美…

  • 短篇小説「弁解家族」

    「なんだよ、観てたのに」 酔っぱらった末にソファーで横になっていた夫が、急に喋り出したので妻は驚いた。夫は咄嗟に妻の手からリモコンを取り返すと、テレビに向けた。 「観てたって、何を?」 再び叩き起こされた画面に映し出されていたのは、真夜中の通販番組であった。元グラビアアイドルが、台本どおりの大袈裟なリアクションで矯正下着を売っている。しかし実際に下着を着用しているモデルは、どうやら素人の体験者のようだ。通販番組に出るような段階のタレントは、もう絶対にそのような姿でテレビに出ることはないと決めている。妻にはそのように見えた。 「いやいや、そういうんじゃなくて」おかげで夫は、すっかり目が覚めてしま…

  • 2023年あけましておめでとうございます10選

    あけましておめでとうございます!(「PULL」と書いてあるドアを無理に押して)あけましておめでとうございます!(あんドーナツの真ん中にも穴を)あけましておめでとうございます!(茶碗に盛ったご飯の中央に卵かけ用のくぼみを)あけましておめでとうございます!(子供たちが握っている金魚すくいのポイすべてに、北斗百裂拳で穴を)あけましておめでとうございます!(祝いの言葉に意味ありげな行間を)あけましておめでとうございます!(中身の状態など気にせず、ポテチの袋を思いっきり叩いて)あけましておめでとうございます!(裏山の死体の脇に、のび太の0点テストを埋めるための穴を)あけましておめでとうございます!(羽の…

  • 2022年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・ソング10選

    1位「Shine On」/CRASHDIET オートマトン [CD]アーティスト:クラッシュダイエットマーキー・インコーポレイティドビクターAmazonメタルファンにとって「Shine On」といえば、もちろんRIOTの稀代の名曲「Warrior」なわけだが、ここに新たな「Shine On」の響きを持つ美しい楽曲が誕生した。この曲を聴くと、改めて「Shine On」という発語と哀愁溢れるメロディの、まるで運命づけられたような相性の良さを痛感せざるを得ない。とにかくサビの「シャイノン、シャイノン」がどうにも耳から離れない。その裏を支えて走るギター・フレーズとの絡みも美しい。メロディの力を思い知ら…

  • 2022年ハード・ロック/ヘヴィ・メタル年間ベスト・アルバム10選

    1位『THE TESTAMENT』/SEVENTH WONDER ザ・テスタメントアーティスト:セヴンス・ワンダーマーキー・インコーポレイティドビクターAmazon現KAMELOTのVo.トミー・カレヴィックの圧倒的な歌唱力が乱舞するプログレ・メタルの傑作。前作『TIARA』の時点ですでにバンドの限界点まで来たかと思われたが、そこからのさらなる歌メロの上積みっぷりには正直驚かざるを得ない。プログレ・メタルというジャンルにおいて、歌がけっしてないがしろにされているとは思わない。だが重視されるのは歌の中でも「歌唱力」のほうで、その中身である「歌メロ」に本気の力が注がれているかというと、疑問符がつく…

  • 「新語・流行語全部入り小説2022」

    とある昼下がり、頭から色とりどりの女性用下着をかぶった顔パンツ姿の中年男性五人が、中華料理屋の回転テーブルでガチ中華を囲んでいた。そこは店の前に猫よけのペットボトルが並び、軒先にカラスよけのCDが吊されているような古びた中華屋であった。 全員が薄手の布をかぶって向かい合うその様子はまるでスパイ組織のようでもあったが、彼らが読んで育った漫画は残念ながら『SPY×FAMILY』ではなかった。彼らはいわゆるOBN(オールド・ボーイズ・ネットワーク)、つまりかつて『BOYS BE…』というラブコメ作品に青春を捧げた読者たちなのであった。「青春って、すごく密なので」――そんな言葉が胸に響くような思春期を…

  • 短篇小説「行間の多い料理店」

    この世でもっとも味気ない読みものは、情報を伝えるためだけに存在する文章だ。その代表と言えるのが一覧表の類であり、場所が料理店であれば、それはメニューと呼ばれることになる。 私が先日初めて訪れたレストランにも、当然メニューというものがあった。私はオフィス近くの路地裏にあるその店が、以前からなんとなく気になっていた。それはなによりもまず、その店頭に張り出した赤い日よけにプリントされている、奇妙な店名のせいであった。〈レスト ラン〉 それ以外に文字が記されていない以上、これが店名のすべてということになる。このシンプル極まりないフレーズは、明らかに一行で収められる横幅に二行で、いやその行間を律儀にカウ…

  • 時事コント「まさかり問答」

    空港の保安検査場。ひとりの男が、セキュリティゲートを通過する。金属探知機「ピーッ!」 保安検査員A「ちょっと失礼します。なにか金属製のものはお持ちですか?」 男「特にないよ……あ、もしかしてベルトかな?」男、再びセキュリティゲートを通過。金属探知機「ピーッ!」 男「もう何もないぞ。機械の故障じゃないのか?」 保安検査員A「いえ、そんなはずは……」保安検査員Aの上司らしき男が、異変を察して近づいてくる。保安検査員B「どうしたの?」 保安検査員A「こちらのお客様が、どうしても鳴るもので……」 保安検査員B「あの、失礼ですがお客様は、もしかしてあの有名な……」保安検査員Bが、右手のスナップを利かせて…

  • 人生半分損してる

    人生の半分というのは、思いのほか小さな分量であるらしい。「ピクルス食べないの? それ人生の半分損してるよ」 酢漬けの半生。「おしぼりで顔拭かないの? それ人生の半分損してるよ」 なのに脇は拭くのね。「『ターミネーター』の1観たのに2観てないの? それ人生の半分損してるよ」 シュワちゃんが幼稚園の先生になる映画は観てるのに。「『いいとも』のタモリしか観たことないの? それ人生の半分損してるよ」 ズル休みすると会える人。「今までずっと口呼吸してたの? それ人生の半分損してるよ」 異臭騒ぎにひとり気づかぬ張本人。「歌詞カード見ながら曲聴いたことないの? それ人生の半分損してるよ」 読んでますます意味…

  • ディスクレビュー『THE TESTAMENT』/SEVENTH WONDER

    ザ・テスタメントアーティスト:セヴンス・ワンダーマーキー・インコーポレイティドビクターAmazonより輪郭を明確にした歌メロの充実が、バンドの格をさらなるメジャー・フィールドへ押し上げるに違いない。そう確信させるに充分な、スウェーデンのプログレッシヴ・メタル・バンドの6th。前作『TIARA』も全方位的に開放感を増した素晴らしいアルバムで、明らかな成長を感じさせる作品だった。当ブログでも、年間ベストアルバムの7位に選んでいる。tmykinoue.hatenablog.comだがその作品としての完成度の高さは、あとほかにどこへ伸びしろが残されているのかわからない状態を示してもいた。そしてプログレ…

  • 短篇小説「二次会の二次会」

    今夜も我ら「二次会」は大いに盛り上がった。「二次会」といっても正確にはまだ「二次会」の一次会で、これから我々はいよいよ「二次会」の二次会へと向かうところだ。 我々が言うところの「二次会」というのは二次的、つまり各所で副次的な役割を果たす人間の集まりで、副部長、副店長、副支配人、副キャプテンなど、その肩書きに「副」の字がつく人々が一堂に会するサークルである。それぞれが副次的な役割に甘んじているがゆえに、そこは自然と愚痴の温床になる。ゆえにサークルというよりは、いっそ秘密結社と言ってみたくなる気分もある。上司(=副次的でなく主たる役割の人々、たとえば部長や店長)への愚痴が違いを惹きつけあうように、…

  • 自作短篇小説「窓のない観覧車」をマインドマップ化する試み(本末転倒)

    小説を書く手段として、いわゆる「マインドマップ」というものを使ってみようと思った。いま流行っているのか、それともだいぶ前から流行っているのかもしれないが、以前お笑い芸人のかが屋がネタ作りの際に使っていると聴いて、なんとなく気になってはいた。あの言葉が枝分かれしていく、チャートみたいなやつである。とはいっても、いきなり何をどうやっていいのかわからない。ということで、まずは自分が先日ここに書いた短篇小説「窓のない観覧車」を、マインドマップ化してみてはどうかと考えた。通常とは逆の手順になるが、手はじめには素材があるほうがやりやすい。tmykinoue.hatenablog.comソフトはとりあえず、…

  • 短篇小説「窓のない観覧車」

    窓のない観覧車に、髭のない少年が乗っていた。窓のない観覧車は不粋だが、髭のない少年は不粋とは言えないだろう。少年にこの先、髭が生えてくるかどうかはわからない。 もちろん高所からの絶景など、望むべくもない。だがどれだけ待っても観覧車に窓がつかないのは、まず間違いのないところだった。足し算から掛け算の時代を経て、いまや何ごとにつけ引き算の求められている世の中だ。そんなご時世、なにかしらオプションが増えるというのはあり得ない選択肢というほかない。 それは観覧車というよりは、荷物を載せて運ぶコンテナというほうがふさわしかった。それに乗って観覧できるものといえば、ただ錆の浮いたコンテナの無愛想な内壁だけ…

  • 短篇小説「帰ってきた失礼くん」

    「失礼しま~す!」 今日も失礼くんが、元気よく知らない店に入りこんでゆく。本日の訪問先はパン屋だ。しかし失礼くんは特にパンを食べたいわけでも、誰かにおつかいを頼まれているわけでもない。ただ純粋に、失礼したい一心でそう言っているのだ。「ほら僕って、朝はごはん派じゃないですかぁ」 入口付近にあるトレイとトングを手にした失礼くんは、トングを無理やり箸のように握ってそう言った。店内には他に客も店員もいるが、特に誰に向けて言っているわけでもない。みな知らんぷりを決め込んでいる。もちろん彼にわざわざ朝食の好みを訊いた者など、誰もいなかった。「だけど最初にこのトレイとトングを手に持ってしまったからには、もう…

  • 最近聴読目録

    最近聴いたり読んだりした/している作品についての所感。 【音楽】 ◆『MY FATHER'S SON』/JANI LIIMATAINEN マイ・ファーザーズ・サンアーティスト:ヤニ・リマタイネンマーキー・インコーポレイティドビクターAmazon 元SONATA ARCTICAのギタリストのソロ作。もちろんそれ的な北欧メタル曲もあるが、思いのほか幅広いメロディ・センスを感じさせる楽曲群。豪華なゲスト・ヴォーカル陣の中でも、とにかく③「What Do You Want」⑥「The Music Box」におけるレナン・ゾンタ(ELECTRIC MOB)の歌唱が素晴らしい。その節回しは十二分に粘っこい…

  • 短篇小説「芝生はフーリッシュ」

    どうやらわたしは公園のベンチで、サングラスを掛けたまま眠り込んでいたらしい。おかげで昼か夜か、起きてすぐにはわからなかった。サングラスを外すと、これまでに見たことのないような、色とりどりの世界が目の前に広がった。色とりどりにもほどがあった。それはつまり自動的に、夜ではないということになる。 正面にフーリッシュグリーンの芝生が広がり、それを囲い込むように配置されたオールドスクールレッドのベンチの脇には、ミートボールブラウンの土に満たされた花壇が並んでいる。 花壇のそこここには、アコースティックブルーやオルタナティヴイエローやジューシーオレンジに彩られた花が咲き乱れ、その傘の下をデスパレートブラッ…

  • あぶないタッチ病

    長年愛用していたiPhone 6が壊れた。かもしれない。かもしれなくないかもしれない。なんといっても「6」だ。いったい何世代前の機種ということになるのか。もちろん普段から動作は重い。それが故障による症状なのか、単に性能が時代に置いてけぼりを食っているだけなのか、その判別が難しい。人間の年齢に換算すれば、老人であることは間違いない。むしろ長生きしているほうだと思う。すでにバッテリーの手術だって一度行っている。タッチパネルが反応しなくなってしまったのである。だが毎回ではないのがややこしい。呼べば三回に二回は振り向くが、一回は無視されるくらいのイメージ。つまり健全な反抗期の息子が返事をするくらいの頻…

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