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花より男子の二次小説 総×つくメイン ちょい暗総二郎とエロ門さんがいます あき×つく・類×つくもあり

花男にはまって幾星霜… いつまで経っても、自分の中の花男Loveが治まりません。 コミックは類派! 二次は総二郎派!(笑) 総×つくメインですが、総×つくメインですが、類×つく、あき×つくも、ちょっとずつUPしています!

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2014/04/23

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  • 梅雨の夏バテ? -中編- <another day of 難破船>

    ピアノの調べもあきらの囁き声も聞こえなかったのに、自然に目が覚めた。でもベッドの上にはあたしひとり。もう隣にあきらはいなかった。あたしより早く起き出して、ダイニングでコーヒーでも飲んでいるのだろうか。きっとあたしがよく寝ていて、まだ起こすのは忍びない・・・と寝かせたままにしてくれたんだろう。あー、やっちゃったー。あきらの実家でぐうぐう寝こけるなんて。どんだけ気を抜いてるのよ、あたしってば。旦那様の...

  • 梅雨の夏バテ? -前編- <another day of 難破船>

    「難破船」の2人は、あの後どんな新婚生活送ってるのかなー?と想像してみました。♪∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴・∴♪我が家の目覚ましは美しいピアノの調べ。ジリリリリーン!とけたたましく鳴る目覚まし時計なんかないの。あれは寝覚めの心臓に悪いのだそうだ。だからいつも夢の中でピアノの音をなんとなーく聴いてるうちに、「つくし、朝だよ、おはよう。」ってあきらが優しく耳元で囁いてくれて、それでやっと目が覚める。...

  • 耳に響くは優しい雨音 8

    GWが明けて、いつも通りの大学生活が戻って来た。1、2回生の時に頑張ってみっちり単位を取ったので、今年度は必修の科目が減って、日によっては空きコマがある。1時間半の空き時間、何をしようか・・・?と考えた時、図書館に行くか、ラウンジに行くか悩んで、あたしは結局ラウンジに行く事にした。誰かいるかもしれないしね。もしかしたら・・・、美作さんが来るかもしれないし。来なかったとしても、あそこならゆっくり出来るし...

  • 続・2人はいつも行ったり来たり -後編-

    思いもよらなかった流れに突然巻き込まれた結果、疲れ果てたあたしは一眠りしてしまったらしい。屋根を叩く雨音と、雨樋の許容範囲を超えてしまった雨水がゴボゴボと音を立てて流れ落ちる音と、雷のゴロゴロ音が煩くて目が覚めた。「ん・・・? また雨・・・。」「お前、ホント梅雨好きじゃねえのな。」「だってこの通り煩いし・・・。」「それはつくしちゃんが住み心地じゃなくて家賃の安さを優先してるからだろ。」首の下にはあ...

  • 続・2人はいつも行ったり来たり -前編-

    季節は梅雨。雨が降る日も降らない日も、空気がずっーと湿ってる。しっとりしてると言うといい感じだけど、じめっとしてるがホントのとこ。ふう・・・。吸い込む空気が重たい気がするよー。この分だと、今年もきっと蒸し暑い夏になるんだろうなぁ。あー、北欧とか行きたい。スカッとして、カラッとして、気持ちのいい夏を過ごしたいよ!いや、単なるイメージね。北欧なんか行ったことないし。あたし、北欧どころか北海道の夏だって...

  • 耳に響くは優しい雨音 7

    目が覚めて、最初に見えてきたのは美作さんの優しく微笑む顔だった。夢の続きなのかなぁ?とぼんやり思う。でも何度瞬きしても笑顔はすぐそこにあって。ああ、本当にここにいてくれたんだ・・・とやっと気付いた。あたしの左手は美作さんにやんわりと握られていて、もしかしたら一晩中こうしていてくれたのかもしれないとも思う。その手の温もりを感じ、美作さんの柔らかな表情を見詰めているうちに胸に広がったのは、寝顔を見られ...

  • 耳に響くは優しい雨音 6

    マンションへと引っ越してそろそろ1ヶ月。牧野は新しい生活に慣れてきたように見える。毎日大学に通い、帰りにはバイトに行き、夜にマンションに戻って来る。その合間合間に、牧野の邪魔にはならないように考えながら、俺は毎日のように牧野に会いに行っていた。ランチを一緒に食べたり、空き時間を2人で過ごしたり。バイトの送り迎えしたり、予定がない時は食事に誘い出す。牧野は俺の負担が大きすぎると、いつもちょっと恐縮して...

  • 耳に響くは優しい雨音 5

    カフェで束の間のティータイムを過ごした後、牧野をバイト先の塾の前まで送り届けた。「ありがと、美作さん。行って来ます。」「うん、また後でな。」口角をきゅっと上げて笑いながらこくりと頷き、牧野は助手席から降りていく。塾の入り口前でこちらに向かって小さく手を振ってから中へと入っていく牧野を見送り、俺は車のブレーキを解除した。牧野を迎えに来るまでの約4時間。どう過ごそうかと少し悩んで、あてもなく車を走らせ...

  • I'll be your hero -side総二郎-

    スーパーヒーロー(?)のお話、オマケの1話です。…・・・………・・・………・・・………・・・…曇り空の日が大半だなーと思う。ああ、本当の天気の話じゃないぜ。俺の心の中の事。どんよりした気分で生きているのが通常で。時々土砂降りの日とか、猛吹雪の日とかがあって激しいダメージを食らう。そして偶にあるのが雲一つない晴れの日。清々しい青空に眩しい太陽が輝き、思わず目を瞑りつつも光を目一杯浴びようと天を仰ぐ。そんな『晴れの...

  • I'll be your hero -後編-

    誰も待ってないとは思うんですが…コソコソと続きを書いておりましたので、UPさせて頂きます。前編・中編からよかったらどうぞ。─…─…─…─…─…─…─…─…─…─…─お酒をちょっと飲み過ぎたみたいで、気が付いたら西門さんに支えられつつ、タクシーに乗っていた。多分部屋まで送ってくれるんだろう。車の揺れにつられて頭がぐらぐらする。「おい、つくしちゃん! 寝るなよ。だからほどほどにしとけって言ったのに。」「もー、うるさいなぁ。あ...

  • Eternal sunshine -後編-

    お誕生日SSの筈が放置されていたあきらきゅんです。♥。‧˚♡˚ ‧。♥。‧˚♡ ˚ ‧。♥。‧˚♡˚ ‧。♥。‧˚♡˚ ‧。♥俺はずっと勘違いをしていたらしい。牧野が東屋に拘る理由。それは司を想い続けているからじゃなく、あそこでの出来事を思い出すと恥ずかしいのと、その原因を作った俺と総二郎への恨みだと言う。俺が対峙するべきなのは司の残像ではなく、牧野が抱えているトラウマと、己の浅はかな行動だったと知った。真相を知って、俺は脱力した。そし...

  • 嬉し楽しい二人旅? -後編-

    金沢での2日目の朝。何故かロビーに牧野が立っている。夕方までは自由時間だと言ってあったのに。「どうした、牧野? 何か用があるならスマホにメッセージ送れよ。」そう声を掛けたら、「お茶会に出向かれる先生のお見送りです。」と、本当の秘書みたいなことを言ってにこりと微笑んでる。「別にそんなん良かったのに。」湧いてくる嬉しさを押し殺してそう言うと、「朝ご飯のビュッフェ会場に行くついでよ。」と悪戯っぽく囁いてき...

  • 嬉し楽しい二人旅? -中編-

    「つくしちゃん、新幹線降りたらもう俺の事『西門さん』って呼ぶなよ。」「西門さんこそあたしの事『つくしちゃん』って呼ばないでよ!」「俺は人前でそんなヘマしねえよ。うっかりなのはつくしちゃんの方だろ?」自分がうっかりしているのを否定出来なかったらしく、一瞬うぐぐと言葉を飲み込んだが、仏頂面で聞いてきた。「じゃあ何て呼べばいいのよ?」「んー、『総二郎先生』か、『若先生』か。『総二郎様』なんて呼びたくない...

  • 嬉し楽しい二人旅? ー前編ー

    4月のとある昼下がり。ラウンジで皆で談笑していた時、牧野だけスマホの画面を真剣な顔して睨み、もの凄い速さでスワイプしていた。ちょっと様子がおかしい事に気付いたあきらが「どうした、牧野?何か困り事か?眉間にしわが寄ってるぞ。」と声を掛けている。「んーん、困り事じゃなくてさ。もうすぐ連休あるじゃない?そこで出来るバイト探してるの」「またバイトか。そんなに生活苦しいのか?」「いや、まあ余裕あるって訳じゃ...

  • 比翼の鳥 ー後編ー

    お鍋は美味しく出来ていた。涙の原因にされた無実の葱も甘く煮えていて、鶏肉やお豆腐とよく合う。あたしの手作り水餃子は今夜も類に好評だった。最後の雑炊まで食べて、2人ともお腹いっぱいになり、少し食休み・・・と並んでテレビを観るともなしに観る。興味がないからなのか、ちっとも内容は頭に入ってこなかった。ただ隣に座っている類の気配を仄かに感じつつ、マグカップの中身をこくりこくりと飲んでいる。「ねえ、牧野。」...

  • 比翼の鳥 ー前編ー

    どれだけ時間が経っても忘れられないものがある。しっかりと記憶の蓋を閉めたはずなのに、ふとした瞬間に急に自分の中に甦ってきてしまうのだ。最後に目を合わせた時のまっすぐな眼差しを。大勢の人に揉みくちゃにされながらあたしの名前を呼んでいた声を。こちらに向かって差し伸べてくれていた手を。あれが最後だった。あいつがあたしを想ってくれていた最後の時。忘れられず。捨てられず。逃げられもせず。ずっと抱えたまま生き...

  • Ouch!

    本日、blog開設12周年を迎えましたーーーヽ(´▽`)/︎X♥︎X♥︎X♥︎X♥︎X︎♥︎X♥︎X♥︎X♥︎X︎♥︎X♥︎X1日の終わりの時間が近付いて来る頃、牧野は毎日楽しそうにアイロンを掛ける。ちょっと鼻歌が聞こえてくる時もあるくらいだ。笑い声はしないけれど、にっこりして口角を上げ気味にしながら、アイロン台の上で熱いアイロンを滑らせてる。俺の服の殆どはクリーニングから戻って来て、そのままクローゼットへと運ばれるから、家でアイロンを掛けな...

  • Eternal sunshine ー中編ー

    一緒に時間を重ねたい人っているよね。あたしの学生生活は、英徳という分不相応な所に通っているのとF4と関わったが為に、友達が殆どできない。いつも一緒にいるのは、桜子、類、西門さん、美作さんの4人のみ。桜子は出会った頃は色々あったけれど、今となってはとてもいい友達だ。ちょっと毒舌だけど、それにもすっかり慣れた。でも価値観が違い過ぎるので、優紀とするようなお手頃価格のお洋服や雑貨を探すショッピング・・・と...

  • Eternal sunshine ー前編ー

    俺は知っている。知っていて知らない振りをしている。牧野が我が家に遊びに来る時、絶対に東屋に近付かないことを。だけど庭を歩きながら、東屋がある方角にふと気を取られる瞬間があることを。そんなにか?そんなにまだ気持ちを残している?直接東屋を見られない程、牧野の中に色濃く残る司との思い出。見たくはない筈なのに、気になってしまって、遠い目をしてその思い出を反芻してしまう程に?そんな牧野をこっそりと盗み見なが...

  • The tables turn

    2月14日。St. Valentine's Day。キリスト教ではカップルが愛を祝う日とされているらしいが、ここ日本ではどう間違って定義付けられたのか、女から男にチョコレートを贈って愛を告げる日・・・なんてものに変化している。恋人同士の俺達だけど。牧野は改めて俺に愛を告げてくれんのか?ちょっと期待してしまう俺がいるのは否めない。照れ屋な牧野が、素直な気持ちを口にする・・・なんて滅多にない事だから。こっそりワクワクしちま...

  • Not just a one-night stand ー後編ー

    ドアの向こう側から鋭く響いてくる声は、聞き間違いようがない、昨夜一緒だった人のもの。は? 何で?どうしてここに来てるの?去る者は追わずがモットーの筈なのに。「さっさとドア開けろよ、牧野。」「え? や、ちょっと無理。」「何でだよ? 開けろ。」「あたし寝起きで・・・、パジャマ姿で、顔も髪もぐしゃぐしゃだし・・・」「昨日、もっとすげーつくしちゃん見ちまったからそんなんどうってことねえよ。いいからとっとと、...

  • Not just a one-night stand ー前編ー

    一晩だけの夢。一晩だけのことなんだ・・・と自分に言い聞かせた。皆との新年会の帰り道。とても楽しい時間を過ごした後で気持ちが昂っていたから。お互いお酒も飲んでいて、ちょっと心が弛んでたから。すごく寒い夜だったから。理由付けするならそんなところ。その場限りの関係を結ぶのは、あの人にとっては日常茶飯事。ただ相手があたしだったのは、きっとちょっとした間違いだったのだろう。それでも・・・それでもあたしにとっ...

  • She is close yet distant -後編-

    「あー、美味しかったぁ。好きなものでお腹いっぱいであたし今幸せ。あれ? 西門さん、早く食べ終わらないとコロッケ冷めちゃうよ?」牧野を見詰めていたせいで箸が止まりがちになっていた俺。「食うよ。」目の前のプレートに集中して、白飯も味噌汁も綺麗に平らげた。「ね、庶民のご飯も悪くないでしょ?」牧野は空になったプレートと俺の顔を見比べ、にんまり笑顔で俺に聞いてくる。ああ・・・と素直に頷くと、余計に口角が上が...

  • She is close yet distant -中編-

    急いでホームへの階段を駆け降り、ちょっと距離を置いたまま牧野と同じ車両に乗り込んだ。ちらちらと横目で牧野の位置を確認しながら地下鉄に揺られる。牧野がいつもの駅で降りて、アパートへ向かって歩き出したところで声を掛けた。「牧野。」「えええっ? な、何でこんなとこまで来てんの?」「んー、さっきの事謝りたいと思って。」「さっき? 何?」「お前の事、面白いって言っただろ。」「はぁ? そんな事の為に電車乗って来...

  • She is close yet distant ー前編ー

    この前ラウンジで、類が何かに落ち込んでしょぼくれている牧野を緩く抱き留めながら、頭の天辺に唇を寄せていた。それも俺とあきらと桜子の目前でだぜ?!毒など無さそうな無機質な男を装った、類の作戦なんかお見通しだ。あの照れ屋な牧野が、類にはそういう事をさせるのを易易と許してるのが本当に腹立たしい。「何ベタベタしてんだよっ!」と苛ついた声を聞こえよがしに呟いてやったら、やっと牧野が我に返って、類の前から飛び...

  • キスの気配

    鈍感なあたしだけど。『あ・・・、これは・・・』って分かる時がある。東屋のゆったりフカフカなソファで隣同士で座ってて。微かに触れてる右腕がこそばゆい気がしつつ、座り直してちょっと遠ざかる事も、いっその事寄り掛かってぴったりくっ付く事も出来ないまま、お喋りしてる。ちょっと上の空かも知れない。だって仕方ないじゃない。優しい眼差しに温かみのあるちょっと低い声。見惚れてしまうような極上の微笑み。そしてほんの...

  • 大切な話

    「牧野、話があるんだ。」向かい合わせに座っているテーブルの向こう側から響いてきたそれは、ちょっと硬い響きの声で。ああ、ずっと恐れていた時が来ちゃったのかもしれない・・・と、瞬時に思った。聞きたくない。聞いたらこの幸せな時間が終わっちゃう。急に心臓が駆け足になる。あたし自身もこの場から走って逃げ出したくなる。でも先延ばしにしたとしても意味はないんだよね。その時が今になるのか、ほんのちょっとだけ後にな...

  • I'll be your hero -中編-

    何くわぬ顔して隣を歩いている人を、胡散臭いものを見るかのようにじとーっと見詰める。「何で付いてくるの?」「折角会えたんだから、これも何かの縁だろ。飯食いに行こうぜ、つくしちゃん。」「あたし、今日は早く帰りたいの。昨日遅く迄残業だったから疲れてて。食事に付き合ってくれる西門さん好みの綺麗なお姉さんは、きっとあっちの方にいっぱいいるよ。」あたしが視線で示したのは、メインの大きなタワーがランドマークにな...

  • I'll be your hero -前編-

    久々の更新で、いきなり始まる新しいお話。社会人3年目…くらいのつくしのお話です。⋅.˳˳.⋅ॱ˙ ˙ॱ⋅.˳˳.⋅ॱ˙ ˙ॱ⋅.˳˳.⋅ॱ˙ ˙ॱ⋅.˳˳. ⋅ॱ˙ ˙ॱ⋅.˳˳.⋅独りで生きていると、それがどうしようもなく辛い日があったりする。じゃあ恋人を作ればいいじゃないか・・・とか、友達と過ごせばいいのでは?とか、実家に帰れば?とか思われるかもしれないけど。そういうんじゃないんだよね。ただただ、何か確かな存在にぎゅうって抱き締めて欲しいんだ。...

  • 星祭り

    7月最初の週末。俺は牧野の狭い部屋に入り浸っている。俺にとっては牧野と一緒にいるのが最大の目的。だから特に何もしなくてもいい。あれこれと喋ったり、何かを美味そうに食べたりしてる牧野を見てるだけで俺は楽しいけど、牧野は休みの日にやる事が色々あるらしく、のんびり俺の隣に座っていてくれたりしない。今はベランダで干していた布団を「よいしょっと!」なんて言いながら抱えて、部屋の中に戻ってきた。一言手伝ってっ...

  • 耳に響くは優しい雨音 4

    牧野はレポートを書くためのタブレット端末をテーブルに載せてはいるけれど、ちっともキーボードを打つ音が聞こえてこない。さっき総二郎から言われた事について考えているのだろう。俺は『総二郎の話なんか忘れていい』と言ったが、牧野は聞かなかった事には出来ない質だ。総二郎の説く『男女交際の心得』なんて、聞かずとも簡単に想像がつくけれど、牧野にとってはまだ受け入れ難い話だったろう。牧野の方にこっそりと視線を流す...

  • Call my name 55

    猛烈に頭が痛くて目が覚めた。ガンガンと頭の内側から何かで叩かれているかのような激しい痛み。薬・・・薬を飲まなくちゃ・・・痛みで朦朧としながら何とか体を起こすと、そこは知らない場所だった。薄明かりの中視線を彷徨わせると、隣のベッドには桜子さんが休んでいるのが見え、ホテルの部屋に居たことを思い出す。桜子さんを起こさないように、なるべく音を立てないように、そろりそろりとベッドを降り、リビングへと入った。...

  • 耳に響くは優しい雨音 3

    西門さんの怪しい笑い顔に警戒しつつも、何の話か気になって、先を促してしまう。「何?」「あきらはここ1年くらい・・・、いやもっとか?俺と夜の街に繰り出してない。どんなに誘っても、酒を飲みにすら行ってない。この意味、分かるか?」「・・・何となく。」そう言ったら西門さんは呆れた・・・とでも言うようにひとつ態とらしい溜息をついた。「ったく。つくしちゃんはきっとちっとも分かってないわ。お前の前では紳士ヅラし...

  • 耳に響くは優しい雨音 2

    西門さんはいつものようにソファーに脚を組みながらゆったりと座り、何かを企んでいるかのような含み笑いでこちらを見ている。「よっ、つくしちゃん。」「久しぶりだね、西門さん。全然見掛けないから、もう学校来ないのかと思っちゃったよ。」そう言ったら、ぴくりと眉を吊り上げた。「ひでぇなぁ。俺、春は仕事が忙しいんだよ。やーっとそのピークを乗り越えて、ゼミの教授のところに顔出して来たんだ。今迄出られなかった分、機...

  • 耳に響くは優しい雨音 1

    『粉雪舞い降りる君の肩先』の続編です。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・<つくし20歳 あきら21歳の陽春>春が来た。と言うか、気が付いたら春になっていた。色んな事があって、気持ちが落ち着かない、やたらと目紛しい春休みを過ごし、更に急な引っ越しまでして。気が付いたら桜が咲いていた。引っ越しは美作さんから提案された事だった。あたしの事を本当に心配してくれているのは分かっている。美作さんからし...

  • I stare at your sleeping face

    『close your eyes』と『I wanna be someone else』の後日譚です。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・想いが通じ合って、恋人と呼べる存在になった牧野は、かつてのように明るく眩しく笑ってくれるのではないかと思っていた。それを見られたら、そしてその笑顔を俺に向けてくれたら・・・と願っていた。だけど、あの笑顔はどこかに消えたまま。いつもどこか憂いを抱えている瞳と、淡い微笑みがそこにはあった。夜中に...

  • 粉雪舞い降りる君の肩先 20

    半年なんかじゃなかった!1年8ヶ月放置されてた、このあきら!・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・買い物から戻り、リビングの奥にあるアイランドキッチンのあちこちを開けたり覗き込んだりしてから、牧野は料理を始めた。俺はそれをダイニングの椅子から見守っている。「シンクもワークトップも広くて使いやすいね、このキッチン。でもこの作り付けの食器棚は、大きくって中身ガラガラ。どこもかしこもだけど、この食...

  • 粉雪舞い降りる君の肩先 19

    半年以上放置されてたあきらが帰って来ました…頑張れ、あきら笑・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・結局俺の我儘に押し切られ、牧野はマンションへの引っ越しを了承してくれた。牧野はマンションの中の一部屋が俺の持ち物だと思っているようだけれど、本当は一棟全て俺名義の物件だ。俺名義と言っても、節税対策で祖父の持ち物だったマンションを購入した形にして、その各部屋を賃貸物件として貸し出す・・・という、...

  • Weekend escape ーextraー《森田さんの独り言》

    ちょっと思い付いたのでオマケを笑・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・産休が明けて復職してから、偶にこっそりと1人時間を持つ事にしてる。息子のお迎えは主に私の役目だけれど、ダンナが定時退勤出来る日は、保育園に寄って家に連れ帰ってくれる。そんな時、私はダンナに内緒でちょっとだけ寄り道をする。ほんの20~30分のフリータイム。帰りにスーパーに寄って、食材が入ったエコバッグを下げて帰れば怪しまれる事...

  • Weekend escape ー後編ー

    「ほら行くぞ。車、あっち。」森田さんがいなくなったことで若宗匠モードは終わったらしい。また不機嫌そうに顎先で方向を示された。もうついて行くしかないから、すごすごと後に続く。こういう口数少ない時ってちゃんと受け答えしてくれないから話しづらい。でも聞くしかない。「ね、ねえ? 今から旅行って本気?」「ああ。」「あたし、何の支度もない。」「要るものは全部買ってやるよ。」「いやいやいやいや・・・」「ホテルで...

  • Weekend escape ー前編ー

    Blog開設11周年記念の最後を飾るのは、拙宅の主人公・総サマです。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・あー、あたし、今週も仕事頑張った!エライ!誰も褒めてくれないから、自分で自分を褒めていく!ご褒美・・・じゃないけど、土日のどこかでちょっとだけでも会えたらいいのに。でも忙しいって言ってたなぁ。じゃあメッセージだけでも送ってみる?いや、でも、忙しい時に返信しなきゃって思わせるのも悪いよねぇ。う...

  • Make me happy, make you happy !

    Blog開設11周年記念の第2弾は、この頃ほったらかされてるあきらきゅんです。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・美作さんがコーヒーを、あたしがミルクティーを飲んだマグカップをシンクで洗っていた時、美作さんがさり気なさを装いながら、少し緊張した響きの声でこう言った。「ああ、そう言えば明日、司に会うと思う。」別に緊張しなくてもいいのに。もっと言うなら、それをあたしに言わずに隠しておいたっていいの...

  • Something special

    本日、拙Blogは開設11周年を迎えました。その記念に…と登場してくれるのは、誕生日SSをぶっちぎられたルイルイです。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・。・俺の手の中に、小さくて、銀色で、ひんやりとしたものがある。ぎゅっと握っていると、徐々に温まっていく。牧野が俺にくれた、大切なもの。春の雨って案外冷たいと知った。桜が咲いて散るくらいに季節は進み、汗ばむ陽気の日もあったのに。今日は土砂降りの雨だし...

  • Call my name 54

    桜子が何か言い出す前に、口火を切る事にした。あわよくば、あの探るような視線を逸らせるだろうか?「あいつ、眠ったのか?」「ええ、まだきっとお辛いのでしょう。お疲れでもあるでしょうし。目を閉じられて程なくして寝息が聞こえてきました。」「桜子も今夜ここに泊まれるか?」「先輩が心配なのでそうさせて頂きます。あと、先輩がお嫌でないのなら、明日病院に行かれるのにも付き添いたいのですけれど。」「それは助かる。俺...

  • Call my name 53

    リビングスペースに置かれたL字型のソファの長い方に牧野がクッションに凭れつつ横になっているのが見える。ブランケットを掛けられ眠っているようだが、顔色が良くない。血の気を失っていて、妙に青白いのがざわざわとした不安を呼ぶ。桜子がソファの手前で小声で話し始めた。「この部屋まで来て、お風呂に入られたら、少し落ち着かれたように見えたんです。お紅茶を飲みながらお話し始める時までは、特にお辛そうでもなかったの...

  • Call my name 52

    バスルームの床に脱ぎ捨てた服のどこかから、携帯電話に着信している振動音がする。その音に導かれて、俺は湯が冷めかけたバスタブから出て、濡れたジャケットを拾い上げ、その内ポケットを探った。桜子からだ。通話が始まった途端に、桜子が一気に喋り始めた。「西門さんっ!先輩がお倒れになって・・・。私、どうすればよろしいですか?先輩は薬を飲んで休めばいいと仰っていたんですけれど・・・」「桜子、落ち着け。」「でも・...

  • Call my name 51

    桜子さんの問いかけに、私はこくりと頷いた。「知らない方々でしたけど・・・。お相手は私を知っているようでした。」「何人いましたか? 男性でした? 女性でした?私が先輩のいらしたテーブルへ戻った時には、辺りにはそんな様子の人はいませんでした。」「女性の方3人で、私に恨みがあるかのような事を言っていて・・・。その中の1人が私の肩を押したんです。プールに落とそうとは思っていなかったのかもしれません。ただ突然だ...

  • Call my name 50

    水底に落ちていくのとは逆の強い力が私を無理矢理上へ上へと引っ張り上げようとしている。それが何なのか?と考える間もなく、体が一気に起こされ、顔が水から出てプールの底に足が着いた。思わず酸素を取り込もうとして、更に水も吸ってしまったようで、ゲホゲホと激しく咳き込むのを止められない。やっと空気が体の中に入って来た・・・と感じ安堵した時、自分が誰かの腕の輪の中にいる事にやっと気付いた。目の前にはぐしょ濡れ...

  • Call my name 49

    美作さんの会社主催のパーティーだなんて、そんな場に招待されても、行きたいとはちっとも思えなかった。私みたいな者が行くのには相応しくない晴れやかな場だろうし、何より知らない所に行かねばならないのはとても怖かった。私はここにいるのが一番落ち着くのだ。余計な事を見聞きしない、いつもと同じ景色が目の前に広がる『寂の空間』に包まれて生きているのがほっとできる。たとえその中で誰からも顧みられないとしても。ぐる...

  • Love is the best medicine ー後編ー

    熱が高いせいか、牧野は熟睡できないようで、度々目を覚ました。そのタイミングで、冷やし枕を交換し、水分を摂ってもらい、他に何かして欲しい事はないかと聞くけれど、「んーん、大丈夫。」とほんのり微笑むばかり。こんな時に無理して笑わなくてもいいのに・・・と思わずにいられない。そのうち牧野はまた浅い眠りに戻っていき、俺は側で見守っているだけになる。牧野の部屋で過ごす夜の時間は、今迄聞いた事のない音がした。深...

  • Love is the best medicine ー中編ー

    何かちょっと変だと思ったんだ。バイトで疲れてると言っても、寝るのには早過ぎる時間に「寝ちゃってた」って言うし。俺の話に「うん」「うん・・・」と相槌を打ってはくれているけど、声が何だかいつもより気怠げで。合間に聞こえてくる吐息が電話越しに荒く響いてくる。「お休み、牧野。いい夢を。」とは言ったけれど、様子がおかしい・・・という気持ちは拭えない。きっと体調を崩して、それを俺に隠しているのだとピンときた。...

  • Love is the best medicine ー前編ー

    何かちょっと変だと思ったんだよね。バイト帰りに日が暮れた暗い道を歩いてたら、何故か息切れしたの。あたしは普段運動とかしないけど、体力にはまあまあ自信がある。なのにてくてく歩いているだけで少し息が苦しくなったから、不思議に思いつつ歩くペースを遅くした。深呼吸しつつ様子を見る。冷えた空気が肺の中に入ってきて、また出ていった。でもいつもより肺が狭くなっているような感覚がある。おっかしーな?まあ、ゆっくり...

  • Sweet sweet my lover ー後編ー

    本当に申し訳ない事ですが、3年も放置していたこのお話を終わらせる時が来ました!読み手様も、あきらも、つくしも、ごめんねー!お手数ではございますが、前編、中編から読み直して頂けたらと思いますm(_ _)m☆゚・:。♡。:・゚☆゚・:。♡。:・゚☆゚・:。♡。:・゚☆゚・:。♡。:・゚ずっと口を塞がれてるから息が出来なくて、頭がどんどんぼうっとしてきた。心臓がドンドンドンドン太鼓のように大きな音を立てているのが聞こえる。もうダメ・・・、あたし、倒れ...

  • Call my name 48

    服を着たまま飛び込んだせいで、水を吸ったスーツは途端に重たくなり、体に纏わりついた。まるで水底に引き摺り込もうとする鋼の鎖に絡め取られたかのようだ。そのせいでとても動きにくく、更に夜のプールの中の視界は暗くぼやけていたが、目指すものはプールの底近くに沈んでいるのが分かった。必死にそこに向かって腕で水を掻き、脚で蹴る。何とか牧野の元に辿り着いて、俺は必死に手を伸ばした。細い腕を掴んで自分の方に引き寄...

  • Call my name 47

    美作の創立記念パーティーは、都内のホテルで大々的に開催された。道明寺系列のホテルが使われなかったのは、美作と古くから付き合いがある所を選んだからなんだろうけれど、道明寺ではなかった事に心のどこかで安堵しているのは、俺が司に纏わる所に近寄りたくないと思っているからなんだろう。煌びやかに飾られたメインのバンケットルーム、そこから続く中庭が見渡せる広々としたテラススペース、そしてその下に広がるガーデンプ...

  • 2人はいつも行ったり来たり

    2月14日。外は北風が吹き荒ぶ、とびきり寒い日だけれど、牧野の部屋の中はポカポカしてる。というか、2人でくっ付いてるから暖かいのか?そう、今日はSt. Valentine's Day。恋人達の愛の確認をする日!俺はただただ牧野と一緒に過ごせればいい。それじゃいつもと変わらないって言われるかもしれないけれど、そこはバレンタインデーにかこつけて、いつもの倍イチャイチャしてやる!そもそもバレンタインなんてモノは俺にとっては、...

  • Call my name 46

    まんまと類の挑発に乗せられ、駆け付けたホテルのラウンジ。類は『思った通りだ』と言わんばかりにほくそ笑んでいて、牧野は俺が現れた事に驚いて言葉もない・・・といった風情だ。してやられた・・・と思いつつも、どこかほっとしている俺がいた。類が牧野に何かする訳がない事は重々承知している。牧野の意思でこんな所に来ているのではないのも分かっている。それでも口からは安堵の溜息が漏れた。類から牧野を引き離し、車の中...

  • sign

    「なぁ、クリスマスって何欲しい?」と聞いた時の牧野の答えは「えー? あたし欲しい物なんかあるかなぁ?美味しい物食べられて一緒にいられたらそれでいいんだけど。あ、そうだ!イルミネーション見に行きたい!あそこのが綺麗だって聞いたよ、大井競馬場。あたし、競馬なんて興味ないけど、お馬さんは見てみたいなぁ。カッコいいよねー、サラブレッド。イルミネーションとお馬さん、両方見れるなんてめっちゃお得じゃない?」そ...

  • INDEX

    ...

  • INDEX -総二郎SS-

    ...

  • 言えない言葉があるんです ー後編ー

    やがて誕生日の食事会はお開きになった。各々車に乗って帰ろうとした時、今しかない!と思って牧野に「送ってってやるよ。」と申し出てみたが「え? いいよ。類のお家の車に乗せてもらうから。」と、あっさり断られた。類もそれを当然のように受けるのかと思いきや、意外な事に「牧野、今夜は総二郎に送ってもらえば?」と言い出した。「な、なんで?」「んー、俺もう眠いから真っ直ぐ家に帰りたい。」「そ、そっか。もう遅いしね...

  • 言えない言葉があるんです ー中編ー

    認めたくはないんだが。どうやら俺は牧野が好きらしい。いつも気がつくと視線は牧野の方に向かっている。どうにか不自然じゃなく近付きたくて、揶揄う振りをしつつ話し掛けるけど、憤慨されて逃げられるのが常だ。じゃあもっといいアプローチをしろよ!と自分でも思うけど・・・。俺お得意の女の口説き文句なんか、あいつは聞きたくもないだろうし、言ったところで剣もほろろに拒絶されるのがオチだ。どうしたらいいのかと考えあぐ...

  • 言えない言葉があるんです ー前編ー

    好きだよって言えたらいいのに。絶対に言えないけれど。この人はそういうのを求めてないから。分かってる。そんなの最初から分かってた筈なのに。今は好きって言いたくて、その衝動を抑えるのにかなり苦労してる。結局口から溢れるのは密かな溜息だけ。「どうした?」って聞かれても、いつでも「別に何も。」と答えてる。12月3日は何の日かって、西門さんの誕生日だ。そういう特別なイベントの時は女の人と過ごさないそうで。優し...

  • I wanna be someone else ーanother side of "close your eyes"ー 後編

    あたしが『親友の恋人だった女』だから、貴方はいつも「目瞑ってろよ。」って言うんだよね。他の誰かをその腕に抱き締める時、そんな台詞は言わないでしょう?それならあたしも、そんな存在になりたいな。貴方に「目瞑ってろよ。」とは言われない、単なる『女』に。『親友の恋人だった女』じゃなく。何の肩書もない、柵もない、『ただの牧野つくし』になれたなら。貴方とあたしはもしかしたら向かい合えるんじゃないかって。いや、...

  • I wanna be someone else ーanother side of "close your eyes"ー 前編

    身代わりでいいと思った。身代わりでもいいから、傍にいたかった。司を想っている事なんか最初から分かってる。それでも牧野を抱き締めずにはいられない。身代わりとしてでも必要としてくれるのなら、俺はどんな役にでもなってみせる。司から掛かってきた国際電話。珍し過ぎて、嫌な予感が過ぎってく。「さっきあいつに電話して別れるって告げた。」「はぁ? 何でだよ?牧野はずっとお前の事信じて待ってるってのに!」「だからも...

  • Call my name 45

    私が温かなミルクを飲み終わってカップをソーサーの上に返していると、花沢さんがふふふっと笑い声を溢した。何だろう、おかしな振る舞いをしてしまっているのだろうかと花沢さんの様子をそっと窺うと、視線は私ではなく、もっと遠くの何処かに向かっていて、つられて私もそちらを向く。何か面白い事が起こっているのかと思いきや、目に飛び込んで来たのはこちらに向かって歩いてくる総二郎先生だった。それに気が付いて、心臓がび...

  • Call my name 44

    花沢さんが雨宿りに・・・と連れていってくれたのは、公園のすぐ横にある大きな建物。近付いてみるとそこは、足を踏み入れるのを躊躇ってしまうような豪華な造りのホテルだった。高い高い天井のエントランスの中は、磨き上げられた大理石の柱に、複雑な模様が織り込まれたカーペットが敷き詰められている。見上げるときらきらとしたシャンデリアが美しく輝き、ホールの真ん中には大きな生花のアレンジメントが飾られ、行き交う人は...

  • Call my name 43

    テーブルの向こう側から、花沢さんの屈託のない声が聞こえてくる。「あー、俺、朝ろくに食べてこなかったからお腹空いた。牧野、食べられない物ある?」「いえ、特には。」「うん、ホントは知ってたけど、一応聞いてみた。じゃあこのランチのコースで。飲み物は・・・、季節のノンアルコールカクテルっていうのを試してみようかな。牧野も同じでいい?」「はい。」花沢さんはメニューをパタリと閉じて、お店の人に返している。私は...

  • Call my name 40

    総二郎先生は私を見なくなった。ちらりとこちらの方に視線を投げる事すら無くなった。以前のように話し掛けられる事も一切ない。お茶のお稽古に呼ばれる事もない。まるで私なんてここにいないかのように、私は空気になってしまったかのように、先生は振る舞われている。それは身を切られるように辛い事だった。実際に切れた掌の傷なんかより、よっぽど激しい痛みを感じる。いつかそんな日が来るのだろうと、ぼんやりと想像はしてい...

  • 指先の魔法 -side あきら-

    艶々として張りのある真っ直ぐな髪の毛。日頃触れる事の多い双子達の細くてふわふわとした猫っ毛とは全く違う手触りだ。丸みを帯びた後頭部をそうっと撫で下ろす。何度も何度も同じリズムで。するすると滑っていく指先で、最後に少しだけ髪を梳いて、また上から下へと撫でていると、牧野からはあっさりとすうすうという寝息が聞こえて来た。よっぽど根を詰めて勉強して疲れてたんだろう。絵夢や芽夢を寝かし付ける時、繰り返し同じ...

  • That's why I'm here…

    近畿地方を直撃しそうだという台風並みの猛威を振るう春の嵐の影響で、ここ東京でも断続的に雨が降っている一日だった。車に乗り込んだ時は殆ど止んでいたのに、邸に向かって夕方の混み始めた道を進んでいると、急に土砂降りになった。車のボンネットを叩く雨音が俄かに激しくなり、運転手は低速で動かしていたワイパーを高速へと切り替えて、何とか視界を確保しようとしている。「大野さん、雨が小降りになるまで無理に走らなくて...

  • 春の訪れ

    あたしが変わらなければいいだけなんだ・・・と、ずっと自分に言い聞かせてた。あいつに忘れられて。それでもあたしは忘れられなくて。いつか、何かの拍子に記憶が戻ったら、あいつはあたしのところに帰って来てくれる筈。だって言ってたもん。NYには帰らないって。家を出るって。正気に戻ったら、絶対に有言実行しちゃうよ。あいつはそういうヤツだもん。だから、あたしはその時まで変わらなければいい。いつも通りに暮らして。自...

  • 指先の魔法 -side つくし-

    試験期間直前の週末。レポート採点の科目は締切が迫るし、試験勉強はしなきゃいけないしで、あたしはバイトを休んで勉学に勤しんでいる。この土日はF3が入れ替わりで得意科目を教えてくれるというので、美作さんちのライブラリーに通わせてもらっていた。お天気のいい日曜日。青空の下をお散歩でもしたら気持ちいいだろうに、あたしは勉強に次ぐ勉強だ。でも美作さんちって勉強捗るの。ライブラリーは落ち着いた雰囲気で、双子ちゃ...

  • 何はなくとも

    今日は牧野の誕生日。分かっちゃいたけど、年末年始はどうにも忙しくて。やっと牧野の部屋に辿り着いた時には日付が変わる直前。牧野は俺が来るなんて思ってもなかったんだろう。独りぐうすか眠ってた。薄暗い部屋の中、微かな寝息を吐きながら、牧野がぎゅうっと抱きついているのは俺・・・じゃなくて、俺が普段使っている枕だ!何だよ?もーのすごく虚しい。まるでこれじゃ俺なんかいなくても枕さえありゃいいみたいじゃね?と思...

  • my happiness ~sequel of 独り占め~

    このお話は「fake」の後日譚「独り占め」の更にその後…の2人です。とっくに書き終わったお話でしたが、あのソファで2人はどんな風に過ごしてるのかな?とぼんやり考えていたのです。お誕生日SSとしてお納め下さい。♡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈♡お早う。頂きます。ご馳走様。行ってきます。ただいま。お休み。そんな日常の挨拶にいちいち律儀に応えてくれる。お早う。召し上がれ。お粗末様でした。行ってらっしゃい。お帰りなさい。お休みなさ...

  • 現在チャットルームを開放しています!

    皆様、今晩は。hortensiaです。開店休業状態、スミマセン。安定のギリギリ告知ですが。明日12月3日は我らが総二郎のお誕生日です。なので例年通り「お誕生日おめでとー!」を😱チャット会開催します。今回もLINEのオープンチャット機能を使ってのチャットルームです。(LINEされていない方、申し訳ないです・・・)既に開放中ですが、管理人はいつでもINしている訳ではないので、チャット会まではしーんとしているかもしれません。...

  • Best friend or sweetheart ?

    牧野の部屋で何をするともなく過ごしてる夕べ。10月も今日で終わり。日が暮れるのは早くなり、外の空気はかなり肌寒くなったけれど、この牧野の部屋はまだ暖房器具は使わないのだそうだ。そんなタイミングではないらしい。郷に入っては郷に従え。我儘は言わない事にしている。畳の床で脚を投げ出し、ぼうっとテレビの画面を見ていたら、不意にブランケットが目の前に降ってきた。「類、それ掛けてるとあったかいよ!肌触りもいいの...

  • 粉雪舞い降りる君の肩先 18

    「なあ、牧野・・・俺、今から物凄く格好悪い事言うよ。」間近にある牧野の濡れたように耀く瞳に、俺だけが映っている。それはとても嬉しい事なのに、俺の中に隠されている後ろ暗い思いを何も知らないからこんなに無垢なのだと思うと、自分の中に罪悪感が芽生える。そして胸のどこかがじくじくと疼く。引っ越して欲しいだなんて、単なる俺の我儘でしかない。俺の独占欲からこんな事を言い出してる。なあ、牧野。頼むから、司をずっ...

  • 粉雪舞い降りる君の肩先 17

    美作さんの腕の中はドキドキする。ただドキドキするだけじゃなくて、優しく護られている安心感もある。なのに同時に、足元を何かに掬われそうな心許ない気持ちも湧いてきて、広く温かな胸に触れてしまった緊張で身体をカチコチにさせながら、自分の中の様々な感情の波に揺られて混乱していた。頭の上から「はぁ・・・」という溜息が小さく聞こえてくる。その意味に思いを巡らす前に、美作さんが「ヤバい。」と呟いた。え?何がヤバ...

  • 粉雪舞い降りる君の肩先 16

    牧野と手を携えて歩いていくと決めた。そしてそれを牧野も受け入れてくれた。だけど、その次に何をしていいか見えなかった。牧野がずっと抱えてきた痛みや、俺と一緒にいる事で新たに抱えてしまった不安を和らげる為に、どうするべきなのか?そして、牧野との距離感も分からない。ずっと手を繋いできた。時々ハグもした。だけど、それ以上の事をするのはどうしても躊躇われた。牧野はそんな事を求めてないんじゃないかと思ったから...

  • 粉雪舞い降りる君の肩先 15

    想いを告げた日から1週間。今日は牧野のアパートに招かれている。俺の誕生日をうっかり忘れていた牧野による、仕切り直しの祝いの食事をご馳走してくれる約束だった。12時丁度。牧野が指定してきた時間にドアをノックすると、「はあい!」と朗らかな声が聞こえてきて、そしてドアが開いた。俺の顔を見た途端、ぱっと明るく輝くような笑顔になった牧野が現れる。「流石美作さん。時間ぴったり!」「今日はお招きありがとう、牧野。...

  • 君の願い、俺の願い

    梅雨はどこに行ったのか?と思う程に蒸し暑い東京の7月が始まった。そこかしこで鮮やかに咲いていた紫陽花は色が淡くなり、それと反比例して街路樹の葉の緑とその下に落ちる影は濃くなった。それらも本格的な夏の始まりを告げているようだ。それでも陽が傾くと空気は急に涼しくなる。今夜はいつものメンバーで食事する事になっている。店を予約したのは俺で、邸から店に行く途中に牧野のバイト先があるから、ピックアップするのも...

  • 現在チャットルームを開放しています!

    皆様、今晩は。hortensiaです。またもやギリギリ告知でございますが。本日7月7日、七夕ですね。夏は誰のお誕生日もないので、七夕にかこつけてチャット会しようかな・・・と思います!今回もLINEのオープンチャット機能を使ってのチャットルームです。(LINEされていない方、申し訳ないです・・・)既に開放中ですが、管理人はいつでもINしている訳ではないので、チャット会まではしーんとしているかもしれません。もし事前に覗か...

  • 愛しさの塊

    久しぶりに会えるという日の夜。折角「ご飯作って待ってるね。」と言ってくれていたのに、俺が牧野の部屋に辿り着いたのは、飯の時間どころか、日付が変わってしまった午前1時過ぎ。怒って寝てしまっているだろうか?と思いつつ、そうっとドアを開けた先に見えたのは、テーブルの上に並べられたラップのかかった皿と、待ちくたびれてその狭間に突っ伏して眠っている牧野の姿だった。俺と一緒に食べようと思って、料理に手を付けず...

  • 拙blogの文字サイズについて

    いつもお運び有り難うございます。hortensiaです。コメントへのお返事、溜め込みまくってて、ホント申し訳ないです。もうちょっと落ち着いたら、少しずつでもお返事していきたいと思っております。この度、拙blogの「小さい字が読みにくい」とのご意見を頂きました。ナルホド、ほかにも同じように思われている方もいらっしゃるかもしれない…と思って、記事にてご回答させて頂く事にしました。...

  • I just want to…

    ああ、そろそろ夏なんだな・・・と思ったのは、あいつが自分の半袖Tシャツの右袖で目元を拭っているのを見つけた時だ。講義が終わった広い教室に一人ぽつんと座ったまま、あいつは声もたてずにひっそりと泣いていた。俺がそれを見てしまったのなんか、まるっきり気付いていない。手元の携帯の画面を見詰め、ぽろりと涙を流し、そしてそれをそっと拭ってから、目を瞑って大きく深呼吸した。携帯で何を見たのか、聞かなくても分かる...

  • Sparkle!

    「あたし、雨上がりの夜って好き!」そう言って、腕に掛けた傘をぶらぶら揺らしつつ笑う牧野の横顔が、街灯に照らされて淡く浮かび上がる。「色んな物に雨粒がくっ付いてるからキラキラして見えて。空気がしっとりしてて、ほら、深呼吸するといつもより酸素が濃いような気までしてくるでしょ。」立ち止まって軽く目を閉じて、本当に深く息を吸い込んでいる。ばーか、雨上がりに急に空気中の酸素濃度が上がったりする訳ないだろうが...

  • 雨の夜明け

    空が薄らと白み始めた明け方。しとしとと降る雨の音が、細く開けられた窓から冷気と共に流れ込んでくる。気に入っていると言っていた柔らかなブランケットに無造作に包まって、カーテンの狭間から窓の外を見ている牧野がいた。こんな朝早くに何してんだ?窓開けてて寒くないか?雨音聞いてんのか?それとも・・・ 雨の日に別れた男を思い出してる?どれもこれも口には出さないまま、半分ブランケットで隠れている後ろ姿をじっと見...

  • 雨の夜明け

    空が薄らと白み始めた明け方。しとしとと降る雨の音が、細く開けられた窓から冷気と共に流れ込んでくる。気に入っていると言っていた柔らかなブランケットに無造作に包まって、カーテンの狭間から窓の外を見ている牧野がいた。こんな朝早くに何してんだ?窓開けてて寒くないか?雨音聞いてんのか?それとも・・・ 雨の日に別れた男を思い出してる?思い付いた言葉はどれもこれも口には出さないまま、半分ブランケットで隠れている...

  • ご連絡をお願いします

    プレゼント企画に5月1日にご応募頂いた、和田様メールをお送りしたいので、下の問い合わせフォームからご連絡をお願いします。[FC2メールフォーム]...

  • 9周年プレゼント企画のお知らせ🎵

    祝・Blog開設9周年!先日、拙宅はなんと10年目に突入しました。こんなに続けられるとは、始めた時は思っていなかったです。いつもお読み頂き、応援してくださって有り難うございます!去年の総二郎のお誕生日の時にプレゼント企画をさせて頂きましたが、色んな方から喜んで頂けたり、楽しいやり取りをさせて頂いた事に、管理人、味をしめまして笑9周年のお祝い企画してとして、また考えてみました。良かったらご参加下さいませ。...

  • Full of smiles 《Akira’s view》

    「あいつ、綺麗だな。」隣で司がそんな事を呟くから、つい横顔をじっと見詰めてしまった。司の視線は真っ直ぐに牧野に向かってる。「ホントに綺麗だ。」言葉の響きは、とびきり優しく、司の想いが滲んでいて、俺まで切なくなってしまった。だけどそれきり口を結んだ司の横顔は、少しだけ口角が上がっているように見える。俺ももう一度2人の方へと顔を向けると、そこには今まで見てきた中で一番眩しく輝いている牧野の笑顔と、こん...

  • Midnight call

    深夜に掛けた電話。何度目かの呼び出し音の後、牧野の寝惚けた声がする。「ん・・・、西門さん?」「わりぃ、寝てたか?」「んー、ソファで転寝しちゃってたから、起こしてくれて丁度よかった。こんな遅くまでお仕事だったの?」「まあな。酒の席だったから。」「そっか。お疲れ様ー。結構飲まされちゃった?」「多少は。でもご存知の通り、俺うわばみだから。つくしちゃんと違ってそうそう簡単には酔わねえの。」「それ、いいんだ...

  • I’m just loving you

    ♪性別も 年齢も 家柄も 国籍も 外見も 年収も 過去も何もかも全部関係ないのが恋だろ 乗り越えられんのが恋だろ♪こんな事を歌っている奴は、実際にはそれら全部を乗り越えた事ないんじゃねえか?気持ちさえあればあれもこれも乗り越えられると信じてるなら、それは夢物語だ。リアルはそんな優しい世界じゃねえ。現に俺は四苦八苦してる。牧野じゃ駄目だと言われる事は最初から承知の上。それでも俺には牧野しかいないんだと分から...

  • 君のための指輪

    このところずっと海外に行く度に、宝飾店に足を運んでしまう。いや、海外だけじゃない。日本でだって、どこでも目に付いた店があったら入ってしまう。探しているものはただ一つ。牧野の薬指を彩る為の指輪。だけど、どこでどんな指輪を見ても、これだ!というものに巡り会えない。大きな石の綺羅びやかなもの、小さな石の可愛らしいもの、石のグレードが高いもの、デザインが優れているもの・・・。美しい指輪は沢山ショーケースの...

  • 現在チャットルームを開放しています!

    ちょっとご無沙汰してます、hortensiaです。今晩は。まあ、色々ありまして…春は花粉とか、花粉とか、花粉とか(´༎ຶོρ༎ຶོ`)いや、それ以外にも色々とございまして、頑張れないでおりました。そしていつも通り、ギリギリ告知でスミマセン。明日、30日は類のお誕生日なのです。なので、平日ですが今夜チャット会開催します。また0時になったら皆様で「おめでとー!」と叫べたら嬉しいです。今回もLINEのオープンチャット機能を使っての...

  • 牧野を腕の中に閉じ込める。どこにも行かないように。他の誰かが牧野の目に入らないように。そう、俺の腕は柔らかな檻なんだ。牧野を捕らえて逃さないようにする為の檻。素直に抱き留められているこいつは、俺を見上げて、ふんわりと笑う。そしてふっくらとした頬を俺の胸に添わせて、「こうしていると安心する。」と呟いた。俺はちっとも安心なんか出来やしない。こんな時間はいつこの手から零れ落ちてしまうか分からない。檻の格...

  • 粉雪舞い降りる君の肩先 14

    昨日もとい今朝牧野の部屋を出てから半日ぶりに顔を合わせた。牧野はどこか気恥ずかしそうだ。あまり俺と目を合わせてくれない。昨夜いっぱい泣いてしまったことや、うっかり寝入ってしまったのを気にしているんだろうか。そんなの、気にしなくていいのに。そう思いながら車に乗せた。「今日はどこに行くの、美作さん?」「うーん、どこ行こうか?昨日遠出したから、今日は近場がいいかな。牧野はまた明日からはバイトなんだろうし...

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