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2017/11/17

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  • 38

    総二郎の声に類とつくしはサッと入り口を見る。(類:えっ!!)(つ:何でここに総二郎さんが?)つくしはサッと視線を類に戻す。そこには驚きの表情で総二郎を見つめている類がいる。(つ:かなりショックを受けてる。それに類さんがこんなに驚いているという事は相手の女性は知らない人という事。つまり会社のスタッフではない。)つくしはサッと顔を下げる。(つ:以前あたしが見た女性も浮気相手かもしれない。類さん、、、大...

  • 37

    「じゃあ今夜19時に。」「はい。」「遅くなるようならメール入れるから。」「はい。」こうして類は仕事へ向かった。つくしは急いで家事を熟し仕事へ向かう。オフホワイトのハーフコートの下は明るいグレーのセーターに紺のズボンだ。昨夜、何度も服を体に合わせ悩みに悩んで決めた物だ。元々服はかなり少ないがそれ以前にスカートが無い。動きやすい服=ズボンというイメージだし、そのズボンも冬物は一着しかない。後はジーパン...

  • 36

    「ただいま」「お帰りなさい。すぐ夕食にしますね。」「ありがとう。」類はジャケットを脱ぐと手を洗いつくしの手伝いをする。そして二人向かい合って食卓に着いた。「今日は白菜が安かったのでお鍋にしました。色んな食材が食べられるしお酒にも合うと思うので。」「だから日本酒なんだ。」机には日本酒が置かれている。(類:わざわざ日本酒を買ってくれたんだ。だから昨日日本酒は飲めるか確認されたのか。確かにこの料理には日...

  • 35

    更に一か月が経った。類は総二郎に何も言えず悩んでいた。(類:総二郎に牧野の恋心を告げるべきか?だが総二郎が牧野の事を好きとは到底思えない。現に面白がって同棲生活を聞くことはあっても牧野の事を聞くことはない。しかも今も女性と遊び歩いている。気になるなら女性関係には気を付けるはずだ。それに牧野の気持ちを俺が話すのはおかしい。頼まれたわけでもないんだから。何より俺自身が二人の橋渡しをする事を躊躇っている...

  • 34

    「類さんの探偵社には女性の探偵さんもいますか?」(類:初めて俺の仕事について聞いてきた。そろそろ怪しいと思い始めたかな? ここはどう返事する? 本当の職業を話す良いキッカケなんじゃない?)(つ:あっ、類さんが訝しがってる。 これってあたしが類さんに興味があるように思われてるんじゃ? もちろん興味はあるけどそれは契約違反だよね? って事は総二郎さんの事を確認するのは大丈夫かな? でももし女性の探偵さ...

  • 33

    つくしが仕事を始めて一か月が経った。仕事にもだいぶ慣れ疲れもそれほどなくなってきた。そして昨日、初給料がもらえた。もちろん満額ではないが自分が自由に使えるお金だ。しかも今日は仕事が休みの為、早速買い物へ行こうと思っている。「類さん。今日は買い物へ行ってきますね。ジャンバーかコートを見てきます。」「ん。もっと早く買えばいいのに。朝晩は寒いだろ?」(類:頑なに買おうとしなかったんだよな。電車の中は温か...

  • 32

    「類さん。明日から仕事へ行きますね。」「えっ?」類は箸で摘まんでいたジャガイモをポロリと落とす。それぐらい突然だった。(類:仕事?確かに看病が無くなったんだから全然構わないんだけどあまりにも突然すぎる。それにもう少しゆっくりしていいんじゃない?まだ母親が亡くなって二週間しか経っていないだろ?)「見舞いに行かなくなったので時間があるんです。それにここに住まわせてもらっているのに何もお返し出来ません。...

  • 31

    マンションに戻った二人。類はすぐに後飾り祭壇を組み立てる。「ここで良いよな?」「すみません。」つくしはその中央に骨壺を置き、ロウソクと線香を立てる。そして二人は手を合わす。「いろいろありがとうございました。あのっ、葬儀代とか病院の清算とかいくらでしたか?」「あぁ。それは俺が出すから良いよ。」(つ:えっ! かなりの金額になったはず。 お坊さんの手配もしてもらったし棺に入れるお花も大量にあった。)「そ...

  • 30

    同棲生活は順調に進む。類は車の中でスーツに着替え、帰宅する時も車の中で私服に着替える。つくしは家事を熟しながら毎日病院へ見舞いに行く。そして二か月ほど経った頃、突然その日が訪れた。夜中につくしのスマホが鳴り始めた。つくしは腕を伸ばしサッとスマホを取り相手を見る。そこには千恵子が入院している病院が表示されている。「はい。牧野です。」『千恵子さんの娘さんの携帯でしょうか?』「はい。」『実は千恵子さんが...

  • 29

    日曜日類が目を覚ますと既につくしは病院へ行っていた。そして机の上にはメモが置かれていた。《おはようございます。病院へ行ってきます。17時ごろ帰宅予定です。》綺麗に片づけられたキッチン。ベランダには洗濯物が見える。(類:洗濯も終わってる。いつの間に?牧野もいないし今のうちに仕事の続きをやっておこうか。)類はコーヒーを煎れるとパソコンをリビングへ持ってきて仕事を始める。そして昼を過ぎた頃、ふと手を止めベ...

  • 28

    病院からの帰りに二人は少し遅いランチを取るためにうどん店へ入った。セルフサービスのうどん店の為、出来上がりが早い。その割にもちもちしていて美味しい。しかも安い。「安いけど美味しい。」「類さんはこういう店は初めてですか?」「セルフは初めて。気にはなっていたんだけどね。」(類:田村と出かけた時に気にはなっていたんだけど、スルーしてしまっていたんだよな。)「注文の仕方とか分からなくてさ。」「分かります!...

  • 27

    週末、類はマンションへ向かった。「ごめん。母親が変な事を言い出して。」「とんでもないです。あたしの方こそ上手く伝えられたかどうか不安で。でもあたしと類さんの関係を疑ってはいないという事ですよね?」「そうなる。」(つ:あっ、はしゃいだ言い方になったかな?類さんとしては総二郎さんに誤解を与える事になるから同棲は断固として嫌だったはずなのに。)(類:確かに俺達が恋人同士だと疑ってはいないけど、牧野が俺と...

  • 26

    麗はニコッと笑った後、再び質問する。「探偵業という事に関してはどう思われてる?」「不確かな収入だと思いますし、体が資本だと思います。私も今は類さんに甘えていますが、母親の事が終わりましたら働きます。決して類さんだけに負担を負わせません。もちろん家事は好きで苦ではありません。贅沢な料理は作れませんが仕事に邁進してもらえるよう頑張ります。突然の事でお母様にはご心配をおかけしていますが、どうぞ温かく見守...

  • 25

    「あらっ?」(つ:しまった~~~!写真を立てかけたままだった!結婚していると思われたよね?結婚したことにする?いや、それは逆効果。勝手な行動は親子の信頼関係を失うはず。じゃあどうする?どうする?どうする~~?)(麗:そうそう。この写真の事も確認したかったのよ。 ちょうどよかったわ。)「結婚? したのかしら?」(つ:怒ってる!確実に怒ってるよね。かなり低い声になってる!そりゃぁ母親に報告することなく...

  • 24

    麗につくしをマンションに住まわせていると話をしてから既に3週間が経った。その間も類は週末にはマンションで過ごしていた。「まだ母さんは来ていない?」「うん。まだ来られていない。」(類:忙しいと言っていたけど本当に忙しかったんだ。でなければすぐにでも顔を見に来るはず。それだけ関心が高いと思ったんだけど違ったか?)「もしかしたらあたしが病院に行っている時に来られたのかも?」「かもしれないな。まっ、考えて...

  • 23

    類が自宅に帰ると、待ってましたとばかり麗が話しかけた。「デートしてきたんでしょ?」「ん。まあ。」(類:関心が高いな。まあ相手が気になって仕方ないんだろうけど。)「どこでデートしたの?映画?」(麗:まさか一日中マンションに籠っていた訳じゃないわよね?)「いや?買い物、、、」(麗:何かをプレゼントしたのかしら?それって物で彼女の心を繋ぎとめている事にならない?)(類:夕食の材料を買っただけだけどね。で...

  • 22

    日曜日。つくしは類を起こさないようソッと部屋を出る。するとマンションの入り口で総二郎とバッタリ会った。「あっ、牧野さん。今から病院?」「はい。」総二郎は和装だ。その姿につくしは思わず魅入ってしまう。「総二郎さん。その格好は?」(総:あっ、やべぇ。探偵だったな。)「潜入の為にちょっとな。」「そうなんですか。」(総:俺もまだまだだな。この姿を見ても茶道に結びつかないし西門流が認知されてねぇ証拠だ。)(...

  • 21

    土曜日になり類はマンションへ向かった。《明日は9時には病院へ向かいます。買い物をして16時頃に帰宅予定です。》昨夜のメール通り、マンション内につくしの姿はない。室内は綺麗に掃除されベランダには洗濯物が干されている。(類:几帳面な女性なんだろうな。それに俺の睡眠を邪魔しないため早々に見舞いに行ったんだろう。帰宅時間を書いたのは、音を立てるかもしれないからだろう。探偵という偽りの職業を言ったせいで寝不足...

  • 20

    水曜日の夜。あきらから電話があった。『類。今大丈夫か?』「ん。家だから。」『じゃあ大丈夫だな。山尾拓海の件なんだが、名前も偽名だ。本名は萩原信二。33歳。現在の仕事はコンビニアルバイト。既に別の女性と付き合っている。その全てがマッチングアプリだ。付き合っている間に女性に貢がせて結婚話が出始める頃に一方的に別れてるみてぇだ。電話も女性が変わる度に替えているみてぇで、別れると同時に音信不通になる。もち...

  • 19

    つくしは起きると直ぐに洗濯を始める。そして朝食を済ませると掃除をし洗濯物を外に干す。昨夜のうちにほとんどの片づけは終わっている。結婚式の写真もテレビの横に置いてみた。(つ:類さんが来る週末には隠すけど、それ以外は出しておいても良いよね? 綺麗に撮れているし契約結婚をしていると自分を戒めるために使いたいんだよね。 自堕落な生活をしてはダメ! 類さんの好意で住まわせてもらっているんだから、手を抜くこと...

  • 18

    佳世が類の部屋にコーヒーを持ってきた。「佳代。暫くマンションの掃除洗濯は必要ない。」「と言いますと、他の方を雇われたという事でしょうか?」「まあそう言う事。また必要になったら頼むから。」「畏まりました。」「それと母親には内緒にしてほしい。知られるとうるさいから。」「畏まりました。」佳世は一礼して下がっていく。類はこれで暫く安泰だと思いながらコーヒーを口にした。同じころ自室に戻った麗はあれこれ考える...

  • 17

    ベッドサイドの引き出しに避妊具を入れた総二郎はニヤリとしながら類に告げる。「まあ万が一の時の為だからよ。ぜってぇ捨てるなよ。その時になって慌てふためくのはカッコ悪りぃぜ。」類は不貞腐れながら部屋から出る。それに続くように総二郎も出た。「それにしてもこの部屋で生活するにはこんなに足りないものがあったんだな。」「そうみたい。物干し竿も炊飯器も無かったしね。」「確かにそうだな。単にお前が寝るためだけの部...

  • 16

    類は初めてファーストフードのハンバーガを口にする。決して美味しいとは思わないが値段を考えるとこんな物だろうという感じだ。「今日も病院に行く?」「ちょっと顔を見に行ってきます。」「ここの片づけはどうする?」「ゆっくりやります。仕事もありませんし。」類はリビングに置かれた大量の品物を見る。(類:牧野が使う物ばかりだから牧野自身が片付けた方が後々分かりやすいと思う。)「空いているスペースは自由に使って構...

  • 15

    ホームセンターに足を踏み入れた類は驚く。広々とした店内の床はコンクリートむき出しだ。そこに大きなカートを押しながら人々が行き交っている。つくしも大きなカートを手に取るとそこに買い物かごを二つ置いた。「じゃあ、先に調理器具コーナーへ行きましょう。」「あっ、俺が押すよ。牧野は必需品をここに入れて?」「はい。」こうしてキッチン用品コーナーから回り始めた。メモを手に必要な品の場所へ来ると数ある中から安価な...

  • 14

    つくしがドライヤーを終えリビングへ戻ってきた。「牧野。車の手配をしたから明日は10時に出ようと思う。」「ありがとうございます。」(つ:本当に探偵社の車を借りたのかな?それともタクシーかな?)「それで何を買うかリストは出来た?」「とりあえずリストアップは終えました。」つくしはメモを類の前に置く。そこには沢山の品が書かれている。「数店舗回る必要があるな。まずは電気店からか?」「もしメーカーに拘らないのな...

  • 13

    類が先にお風呂に入る。ゆったりとしたバスタブは類が足を伸ばせる大きさだ。このマンションは花沢所有の物。最上階のこの部屋は類が室内を改装した。ぶち抜き寝室を広くすることも考えたが、解約後他者に貸すことを考え二部屋のままにした。それはすぐに功を奏した。類のマンションに親友達が泊りがけで遊びに来た時にもう一部屋を使うことが出来るから。風呂から出てシャンプーをする。(類:そう言えばこのシャンプーは男性用か...

  • 12

    約一時間ほど病室で過ごした後、二人は帰る事にする。「じゃあまた明日来るね。」「そんなに毎日来てもする事ないわよ?」「その時はその時。単にあたしがママと一緒に居たいだけだから。じゃあね。」つくしは千恵子に手を振る。類はぺこりと頭を下げ病室を出た。「ママと二人っきりの時、何か聞かれましたか?失礼な事は言ってなかったですか?」「失礼な事じゃないけどこの結婚に疑問を持っていたのは事実。だから順番は違うけど...

  • 11

    病院に到着すると土曜日の為入り口が閉まっている。つくしは類を案内しながら見舞客用出入り口へ向かい、そして母親の病室へ向かう。するとトイレから車いすに乗った女性が出てきた。「あっ、ママ!」その女性につくしがママと声をかける。類はサッと表情を引き締める。「つくし?」「式も終わったから、類さんと一緒に来たの。類さんもママに挨拶したいからって。」千恵子はつくしの後ろにいる類を見る。「初めまして。」「病室に...

  • 10

    総二郎が戻ってきた。手には額に入った大小の写真がある。「ほいっ。綺麗に撮れてるぜ。」二人はその写真を見る。とても偽装とは思えない雰囲気で撮れている。(類:凄いな。写真だけ見るとほんとに式を挙げたカップルみたいだ。)(つ:うわっ。類さんカッコイイ。この契約が終わったらこの写真貰おう。)「どうして二つ?しかも額に入っているけど?」「一つは牧野さんのお母さんの病室に飾れば良いかなと思ってさ。もう一つはこ...

  • 9

    コーヒーを一口飲んだ後、つくしは口を開いた。「今日は本当にありがとうございました。あたしの無茶なお願いを聞いてくださって感謝しています。」「いや、俺にとってもラッキーだったから。ホント母親には困っていたんだ。」(類:これで嘘ではないことになるし一か月後見合いをしなくて済む。)(つ:お母さんの気持ちもわかるんだけど、何時かは理解してくれると思う。だって総二郎さんって素敵な男性じゃない?男女問わず目に...

  • 8

    食事が終わり、西門の車で類のマンションへ向かうのだが運転手付きの車につくしは驚く。(つ:どういう事?探偵さんって運転手付きなの?)(総:怪しまれてるよな。探偵が運転手付きの車を持っている事が信じられないのも無理はないか。)「彼はプロのドライバー。ほらっ、対象者がタクシーに乗った場合、巻かれないように運転する必要があるだろ?その時、こういう格好をしていればバレないからさ。」「なるほど。という事はこの...

  • 7

    「じゃあ俺のマンションで過ごすとして、、、条件がある。」「なんでしょうか?」「牧野さん以外の人を連れ込まない事。それは男性も女性も同じ。」「はい。分かりました。」(つ:元々二人の愛の巣なんだから第三者に踏み込んでもらいたくないよね。)「俺の部屋には入らない事。」「分かりました。」(つ:何か特殊な道具とかあるのかな?単に黒髪さんとのテリトリーだから見られたくないのかな?そりゃぁあたしだって枕が二つ並...

  • 6

    類とつくしはチャペルで写真を撮っている。「二人共こっちを見て。」あれから類は急いで白のタキシードに着替えた。そしてチャペル内で総二郎に写真を撮ってもらっている。類の申し出につくしは戸惑った物の、チャペル使用時間は限られているし写真さえ撮れば母親に結婚したと思わせることが出来ると強引に押し切った。詳しくはその後でいろいろ話をしようと、とりあえず写真を撮る事にした。「これぐらいで良いんじゃねぇか?」二...

  • 5

    控室に入ると、机を挟みつくしの前に総二郎と類が並んで座る。そこにスタッフがお茶を持ってきた。「新郎が来たらすぐここに連れてきてくれる?それまでちょっと彼女と話をしているから。」「畏まりました。」スタッフは一礼して下がる。それをポカンと見るつくし。「あのっ、あなた方は食事をしに来られたんですよね?」「そうだけど?」「でもスタッフの方がかなり低姿勢でお二方の指示に従っているのはどうしてですか?」総二郎...

  • 4

    土曜日約束通り10時に総二郎は類のマンションのインターホンを押した。『はい。』「用意できたか?行くぞ。」『分かった。直ぐに降りる。』オートロックタイプの為、総二郎は一階で類が降りてくるのを待つ。暫くしてエレベーターから類が降りてきたのだが、大きなあくびをしている事から明らかに寝起きと分かる。「お待たせ。」「お前、さっき起きたところだろ?」「まあね。10分ぐらい前に起きたところ。」「きちんと起きれた...

  • 3

    類は自室へ戻ると急いで総二郎に連絡を入れた。『類か?なんだ?』「あのさ。面倒な事になってさ。あきらの婚約を知り、母親が俺に女性を紹介したいと言い始めたんだ。」『そうなるよなぁ。でも突然婚約とか結婚という訳じゃねぇんだろ?』「その点は大丈夫なんだけど、ただそれすらも鬱陶しくて咄嗟に嘘をついたんだ。SNSでやり取りしている女性がいるから無理ってね。」『はあ?』「そうしたら名前ぐらい教えろとか、かなり食い...

  • 2

    水曜日にはあきらの婚約が報道された。何も知らなかった田村は驚きと同時に急いで類の執務室へ入る。「専務。美作専務が婚約されたそうですがご存知でしたか?」「あぁ。直接本人から聞いた。」「さようでございますか。お付き合いされている方がいらっしゃるとは知らなかったもので驚いたのですが。」「政略結婚だからね。日曜日に突然婚約しろと言われたらしい。あきら自身も驚いてた。」「突然ですか。それはまた、、。」「そう...

  • 1

    月曜日類は急遽あきらに呼び出され20時に古民家風レストランへ向かった。「よぉ!悪いなぁ。」「いや、ただ連絡は早めにして欲しい。」こうして急に呼び出されることもここ数年かなり減っていた。それだけ仕事が忙しく重責を担い、簡単に都合が付けられなくなったのが理由だ。今日もたまたま明日に回せる仕事だったし、どうしても話しておきたいことがあると言われた為なんとか時間を作った。それにたまには気心が知れた親友達と...

  • 28

    司はあきらと総二郎の待つフロアの隅に向かって歩きながら、つくしとの初対面の時の事を必至に思い出す。初対面は俺が幼稚舎へ通っている時だった。突然両親に呼ばれて行った先に、外国人の家族とブラウンが居た。そして紹介されたが、あの時はもうすぐこいつらが遊びに来ることになっていたから、さっさと帰れよ!と思っていて機嫌が悪く、、。ここまで思い出したところでつくしの言葉を思い出す。《あんたのすぐ傍にいる人だった...

  • 27

    英徳の卒業式。司、あきら、総二郎は類の姿を探すがどこにもいない。「あいつまさかさぼりか?」「だろうな。」「まっ、プロムにしか興味が無いんだろうよ。」あきらと総二郎は呆れた口調で話す。「仕方ねぇ。 俺達もプロムに参加するとしよう。」「だな。 二人がどんな姿で登場するか見てぇしな。 司も必ず来いよ。」「俺もか?」「当たり前だ。 ブラウンさんがどんな姿で登場するか見てぇだろ?」「お前も見たいだろ? 許嫁...

  • 26

    ランチルームの一件から、類とつくしの仲の良い姿が学園内で何度も見られる。必ず手を繋ぎ笑いながら何かを話している姿だ。もちろんつくしに意地悪する人は誰もいない。類がつくしの父親の職業を告げた事もあるが、学び舎は沢山の物を学び吸収し交友関係を広げる場と言う言葉が広まったから。そしてバレンタイン当日。つくしは類に小箱を渡す。「日本では女性からチョコを贈るんだってね。 真木子ちゃんから聞いてびっくりした。...

  • 25

    類が注文する姿はレアだ。ホール内は何を注文するか聞き耳を立てている。「あたしはA定食にしよう。 真木子ちゃんもA定食で良い?」「じゃあ俺も同じで。」こうして三人はA定食を頼む。もちろんその後からは皆がA定食を頼むために長い列ができる。三人はそれぞれトレーを手に取り席に座ると、類は早速クラスでの様子を真木子に問う。真木子は言葉を選びながらも些細な虐め、妬み、僻みなどを話す。「類。 虐められていると言って...

  • 24

    つくしは視線を類から司へ移動すると大きな声で告げる。「道明寺! 過去三回しか会った事なかったけど、そのどれもあたしには全く優しく無かったよね。」突然つくしが話しだし、しかもその言葉は敬語でも無く友達に対するような物。こういう言葉遣いをされるのは親友以外初めてだ。しかも先ほど類と話すときは英語なのに対し、自分には日本語だ。つまりホールに居る全員に聞かせたいという気持ちだと分かる。それは先ほど自分が許...

  • 23

    「おい! お前だよ! つくし・ブラウン! いや、牧野つくし!」司はいつまでもこちらを向かないつくしにイライラが増している。周囲が全く見えていないし、見えていたところで関係ないという感じだ。つくしはこの場で何を言われるのか分からないがこのままでは不味いとゆっくり顔を向ける。既にフルネームを言われている。この後司から何を言われても、多くの生徒から謂われない言葉が投げかけられると分かる。だがここまで来て...

  • 22

    翌日、つかさは意気揚々と学校に向かった。そしてキョロキョロとつくしの姿を探す。もちろんすぐに見つけだしその場で解消を告げるつもりだ。だがこれだけ似たような女性がいると、誰がつくしか分からない。やべぇなぁ。全く分からねぇ。あきらと総二郎なら見つけ出してくれるだろうから昼休みまで待つか。こうして司はサッサと教室へ向かった。その数分後に総二郎とあきらがやってきた。そして周囲を見回し小声で告げる。「すっげ...

  • 21

    『実はさ、一昨日の日曜日に俺の家に兄と一緒にプレゼントを持ってきやがった。 考えられねぇだろ? 兄と一緒だぜ? 一人で行動できねぇのかよ!』「じゃあ受け取ったんだね?」別に兄と一緒でも良いと思うけど?単に一緒に買い物をしていたかもしれないし、そのついでに寄っただけかもしれないしさ。『ちょうど総二郎とあきらと出かけていたから使用人が受け取りやがった。 俺ならその場で突き返すけどな。 しかも中身はボー...

  • 20

    リアムの表情は真剣だ。先ほどまでの優しい口調ではなく怒りを滲ませた口調でつくしに告げる。『足を見せろ。』『お兄ちゃん。 それセクハラだよ?』『良いから見せろ。』つくしは全て知っていると判断する。それだけ真剣な表情だし心配しているのが分かる。仕方なくつくしは蹴られた方の太ももを見せる。『痛くないか?』『痛いけどシップを貼ったから。』リアムは鞄からシップを取り出すとつくしに渡す。『暫く必要だろ? それ...

  • 19

    数分後、見知らぬ電話番号から着信があり、すぐに通話ボタンを押す。もちろん英語が聞こえてきた。『初めまして。 ルーカス・ブラウンです。 つくしの父親です。 つくしが事件に巻き込まれたとお聞きしたのですが。』『初めまして。 花沢類と申します。 先ほど父親に連絡して、あなたに連絡を取ってもらいました。 後で警察からも連絡があると思いますが私の方から先に経緯を説明しておこうと思い電話致しました。』『花沢物...

  • 18

    あきらと総二郎は道明寺邸で司に報告していた。「ブラウンさんは学校では牧野つくしとして通っている。 その方が溶け込みやすいからだろうなぁ。 しかも父親が社長では無い事に一部の女生徒が蔑んでいるみてぇだ。 確かに社長じゃねぇがその辺の社長よりもかなり格上なんだけど、それをひけらかさねぇ。 目立つことを嫌う性格のようだな。」「勉強はかなり優秀。 海外では飛び級しているようだ。 もちろん自分から自慢したわ...

  • 17

    あれは幼稚舎で司、あきら、総二郎と言う友達が出来た頃だった。何度か司の家に遊びに行っていたがその時もそうだった。見事なバラが咲き誇る中、門を入ったところでバラの垣根に小さな黒い物体を見つけた。猫だと思った。そう思うと、運転手に声をかけた。「止まって。 ここで降りる。」そして車から飛び出すと猫と思われる黒い物体に近づいた。だがすぐに猫では無い事に気づいた。白い服を着ている小さな子供だ。小さく丸まるよ...

  • 16

    『そのままの方が似合ってる。 何でみつあみを?』『さっきも言ったけど、許嫁が言ったから。 目立つなってね。 つまり注目されるなという事でしょ? 日本人はやまとなでしこと言う大人しくて男性の一歩後ろを歩くような女性がいて、きっとそう言う女性が理想なんだと思った訳。 それでネットでやまとなでしこらしい学生の髪型を調べたらカチッとしたみつあみ姿だったって訳。』『へぇ。』やまとなでしこが司の理想?全然違う...

  • 15

    『じゃああたし達も帰りましょうか? あっ、カヌレ!! 類もカヌレを買うのかな?』類はプッと吹き出す。こんな事がありながら当初の目的のカヌレを思い出す当たり、天然も入っていると感じる。『いや、カヌレはつくしに譲るよ。』『ありがとう。』『でももうしばらく帰れないと思う。 警察に事情を説明しないといけないから。』そこに店員が氷とタオルを持ってきた。店内で売っているパックに入った物だ。「とりあえずこれで冷...

  • 14

    目に飛び込んだのは金庫の中身をバックに詰めている黒ずくめの犯人二人と部屋の隅に両手両足を縛られた店員二人の姿。類が飛び出す前につくしが一歩を出しその後ろから類が追いかける形で手前の犯人をつくしが、後ろの犯人に類が向かった。まさか二人が出てくるとは思わなかった犯人は驚きで動作が遅れる。しかも現金を詰め込む為か拳銃を床に置いていた。つくしは犯人の背中を蹴ると俯けになった犯人の両手を後ろに持っていき、腰...

  • 13

    『立ち上がるよ?』『うん。 お願い。』類はつくしの足をしっかりと持ちゆっくりと立ち上がると通気口の下へ移動する。つくしは両手で通気口をずらす。『足をしっかり持ってくれる? ちょっと覗いてみるから。』『分かった。』つくしは腰を浮かし、立ち上がる格好で通気口の中を覗く。その為、類の顔にスカートが覆い被さり、少し上を向けばパンツまで見える状態だ。こんな体勢、、、何かの罰ゲームだろ?と自分で自分を憐れむほ...

  • 12

    「おい! ここに金を入れろ! 防犯スイッチを押すなよ。」入り口から大きな声が聞こえ二人は同時に入り口を見る。店員はすぐに両手を上げている。すると黒いニット帽を被りサングラスをかけ口元にはマスクをし黒い上下の服を身に纏った男性二人が、手に拳銃のような物を握りしめているのが分かった。犯人の一人はすぐに入り口のドアを閉めるとつくしと類の元へ近づいてきた。類はすぐにつくしの盾になろうと前に立つ。「おい。 ...

  • 11

    月曜日、つくしはいつも通り学校を終えると真木子と一緒に駅へと向かった。「ほんと英徳は車通学が多いよね。」「だね。 専用駐車場まであるしね。 まあ資産家の子供が通う学校だからねぇ。」「アメリカは13歳まで子供を一人で外出させられないのよ。 学校はもちろん習い事も全て親が送迎するかスクールバスを利用。 一人で留守番も禁止。 マンションに住んでいる場合、一階の郵便物を取りに行くのも禁止だよ。」「厳しいね。...

  • 10

    司はあきらと総二郎を引き連れ帰宅した。すると使用人からすぐにプレゼントを渡された。「これをブラウン様が持ってこられました。 司様のお誕生日プレゼントだそうです。」「要らねぇ。」「困ります。 どうか受け取ってくださいませ。」使用人は困り顔だ。そのプレゼントを総二郎が代わりに受け取る。「司に渡しておきますよ。」「んとに余計な事を。 おい、俺の部屋にアルコールと何か摘まみを持ってこい。」「畏まりました。...

  • 9

    休日。つくしは兄のリアムと共に買い物へ出かけた。と言うのも父親のルーカスから司の誕生日にプレゼントを贈ったらどうかと言われたためだ。その時に初めて司の誕生日を知った。知った以上、何かを贈るべきか?と思った物の何を贈って良いのか分からない。趣味の悪い物や気に入らない物を贈ればまた何か言われる可能性があるからだ。その為、兄と相談しながら買う事に決めた。『どんなものを贈るつもりだ?』『あたしからのプレゼ...

  • 8

    翌日。つくしが学校へ行くと女生徒のほとんどが黒髪にみつあみ、そして眼鏡をかけている。昨日真木子が言った通りになっており、そうまでして道明寺に睨まれたいのか?と不思議に思う。だがこれで自分が目立たなくなりラッキーと感じる。そして教室に入ると先に来ていた真木子が駆け寄ってきた。「ねっ? そうなったでしょ?」「うん。 ビックリした。 そんなに道明寺さんに睨まれたいのかな?」「それがファン心理と言う物なの...

  • 7

    つくしと真木子はホールに居た女生徒に囲まれていた。「F3があなた方をジッと見ておられたんですけど何かしました?」「私もビックリしたんですけど何もしていません。 ねぇ、つくしちゃん。」「はい。 何も。」それは三人の視線をすぐに辿った人たちも同じ気持ちだ。二人は何もしていないのに、F3は二人の方を見ていた。だとすれば、、、「その髪形かしら?」「確かに黒髪にみつあみはあなたしかいないわよね。」「もしかしてそ...

  • 6

    午前の授業が終わり、司とあきらと総二郎は廊下に出た。「んとに何で始業式から授業が行われるんだよ!」「仕方ねぇよ。 そうでもしねぇと授業時間が足りねぇんだろ?」司は舌打ちをする。こんな事なら一日休めばよかったぜ。それをこいつらがあの女の姿が見てぇというし、俺もまあどんな風に接触してくるのか興味もあったんだけどよぉ。だが全然接触しねぇじゃねぇか。何で休み時間の度に廊下に出てあいつが来るのを待ったり、そ...

  • 5

    つくしは担任に案内され教室へ向かう。そして中に入ると同時に皆の視線が集まる。幾度となく転校を繰り返してきたつくしだが、やはり最初は緊張する。「今日からこのクラスの一員になる牧野つくしさんだ。 イギリスから来られたばかりだ。 皆、色々教えてあげて欲しい。 じゃあ自己紹介をしてもらおうか。」「はい。 牧野つくしです。 よろしくお願いします。」「じゃあ席はあそこへ。」「はい。」朝のホームルームとオンライ...

  • 4

    英徳が近づくにつれやけに車が多いと感じるつくし。それが門に向かって続いている事に気づくまでそう時間はかからなかった。左車線を車がのろのろと走り、それがまっすぐ門へと続いている為だ。しかも後部座席には英徳の制服を身にまとった人が乗っている。なんで?つくしはネットで調べた日本の通学風景と違うと感じる。ネットでは日本は小学生から子供達だけで登校していると書かれていた。もちろん帰りも子供達だけで帰る。親が...

  • 3

    1月つくしは英徳の制服に身を包み、髪を二つに分けみつあみにする。それはネットで見つけた「やまとなでしこ髪形」と言う物を参考にした。そして眼鏡をかけた。『ママ。 どう? おかしなところはない?』『おはよう。 えっ? どうしたの?』『やまとなでしこに見える髪型らしいから。』母親のオリビアは驚くものの『やまとなでしこ』と言われたら何も言えない。父親のルーカスの仕事の都合で各国で暮らしてきたブラウン家。そ...

  • 2

    道明寺邸のリビングでは要とルーカス、オリビアが和やかに談笑していた。『それにしてもつくしちゃんはかなり美しく成長したなぁ。 確かにルーカスが自慢するだけの事はある。』『だろう? 自慢の娘なんだ。』『お前から養子を取ると聞いた時は驚いたし、つくしちゃんの姿を見た時の衝撃は今も忘れられない。 年齢の割にかなり小さく細かったし、大人しそうな感じを受けたからなぁ。』『私も同じだった。 だがリアムがどうして...

  • 1

    12月28日つくしは緊張した面持ちで両親の後について道明寺邸の門を潜った。『つくし、覚えているかい? 14年ほど前になるか? この家に来た事があるんだが。』つくしは庭に目を向ける。そこにはバラの花は咲いていない物の、バラと思われる垣根が庭一帯を覆っている。『バラを覚えてる。 お兄ちゃんと一緒にバラを見た記憶がある。』『あの時はつくしを引き取ってまだ10日ほどだったかな? 会話もままならず、兄のリア...

  • 47

    ヒュンッ類は自分のいた2024年11月に戻る。そこにはボックス型のタイムマシンがあるが葵の姿はない。ただ中にメモが残されていた。【パパへ。 机の左の引き出しの中にあるLOVE48という雑誌はあたしが結婚する時にプレゼントしてね。習得したいから。 葵】その文面にフッと笑う。そして無事未来へ戻ったと感じる。その未来の葵に心の中で告げる。――ありがとう。葵。プレゼントするよ。そして自分の腕を見る。そこにあった腕時計型...

  • 46

    2024年10月つくしの叫び声に、使用人やボディガードなどが飛んでくる。「中に、、中に、、」つくしは葵を抱きかかえ震えている。そのつくしと葵を使用人が守るように囲み、ボディガード数人が室内に入る。するとバスルームからうめき声のような物が聞こえる。そこに向かうと、右手を押さえ丸まるように蹲っている男がいる。その隅には刃物がある。一人のボディガードはすぐに刃物を取る。もう一人のボディガードは蹲っている男を見...

  • 45

    二人の耳には小山田の自慢話が聞こえている。《君の数々の理論や数式からタイムマシンを作る俺って天才だろ?君にもできなかったタイムマシンが作れたんだから。それなのに単なる大学教授。数々の論文を発表しても夢物語と誰も取り合ってくれない。おかしいと思うだろ?さぁ無駄話は終わりだ。 移動が終わったらそのデータをこちらに投げろ。》《もう良いでしょ! 葵を返して!》二人の耳にはつくしの緊張感がリアルに伝わる。そ...

  • 44

    ヒュンッ類と葵は、類とつくしの部屋に現れた。「過去に来れたかな?」「シッ!」類は葵の口を止める。隣の葵の部屋から声が聞こえるからだ。《ママ。 パパ。 あ~お。》《凄く似てる。 パパも凄く喜ぶと思うよ。》《あ~お、マ~マ。 パパ。 目目。》《口は?チュッするところは?》《笑ってるね。》《うん。》《良く描けてる。パパに見せた後に飾ってもらおう?》《うん。》二人はお絵描きをしていると分かる。「お絵描きを...

  • 43

    2024年11月類はぐっすり眠っている葵の髪を優しく撫でる。頭の中はまだ整理がつかない。つくしが亡くなって一か月が経とうとしているのに、なんで僅かな証拠すら出てこないんだ?なんで自殺と決めつけるんだ?何度思い出しても朝は普通だった。週末に動物園に行くことを喜んでくれた。笑顔で葵と共に送り出してくれた。そこに悩みを抱えている素振りは全くなかった。だから絶対に自殺じゃないのに、、。ねぇ葵。何か見てない?誰が...

  • 42

    葵は、腕時計とカッターを手に自分の部屋へ戻る。そしてパソコンを立ち上げ、そのマイクロチップを差し込んだ。すると中にはファイルが三つ入っている。一つ目をクリックするとそこには『二酸化炭素から電気に変換する方法』というタイトルと共に、数式のような物や説明書きがずらずらと出てくる。「これって、、、MIMASAKAが開発した物?」そう呟くが明らかにおかしいと感じる。ママは10年前に亡くなった。という事は10年前に...

  • 41

    翌朝、類は仕事へ行くことに。葵は週明けから学校へ行くことになっている。「今日中に荷物の片づけを終わらせること。」「分かってる。」「一人になるけど大丈夫?」「もちろん。佳代さんや使用人さんがいるしね。困ったことがあれば誰かに聞くよ。」「ん。 それと今夜は遅くなる。 夕食は先に食べておいて?」「分かった。」葵は類に手を振り、類は車に乗って仕事へと向かった。車が見えなくなったあと、葵は踵を返す。そして佳...

  • 40

    翌日、類と葵は英徳への編入手続きの為学校へ向かった。事務手続きをしていると学園長が在宅という事で挨拶をするために二人で向かう。「お久しぶりです。」「花沢さん。お元気でしたか?」「なんとか。」「そちらが娘さんですね?」「はい。葵と言います。」「そうですか。奥さまによく似ておられますね。」「はい。凄く。」「中学一年への編入になりますが。」中学一年と聞き、葵は思わず大きな声を出す。「えっ?なんで中学一年...

  • 39

    葵は類の腕の中から顔を上げる。「パパ。 あの隔離部屋を見せてくれる? それとバスルームも。 何か思い出すかもしれないし。」「良いよ。」類は隔離部屋に暗証番号を入力するとロックが開く。そしてゆっくりとドアを開いた。中には机と椅子と本棚、そしてパソコンが一台残っている。「この部屋には監視カメラはなかったんだよね?」「情報流出を防ぐためにつけなかった。 パソコンもネットに繋がなかったしね。」「パパたちの...

  • 38

    ソファーに置かれたイルカ。それを見た時にそのイルカを大事に抱えたつくしが見えたような気がして、類は目元を押さえる。十年が経過したというのにまだ色濃くつくしの姿を思い出してしまう。もう大丈夫だろうと思って帰国したのに全然駄目だ。きっとベッドに横になってもつくしの温もりを探して眠れなくなるかもしれない。すると葵が再び声を上げた。「あっ、あれは何?」類は葵が指差す方を見る。それは隔離部屋を指している。類...

  • 37

    2034年10月日本の花沢邸に着いた類と葵。「覚えてる?」「全く覚えてない。」断言する葵に類は苦笑する。もちろんそうしたくてフランスへ連れて行った。辛い記憶を忘れてほしくて。すると佳代が出てきた。「お帰りなさいませ。類様、葵様。」「ただいま。」「ただいま戻りました。」類の記憶よりも数段老けた佳代の姿に、10年という長い月日を噛み締める。それは佳代も同じようだ。葵の姿に涙している。「申し訳ございません。 ...

  • 36

    2034年9月あれから約10年が経とうとしている。類は34歳、葵は12月で13歳になる。今もフランスで暮らしているが、そろそろ日本へ戻ろうかと考えていた。「パパ。おばあちゃま。行ってきます。」「行ってらっしゃい。」「気をつけて。」葵は類に手を振り元気よく家を出て学校へ向かう。もちろん花沢の車での送り迎えだ。「いつも元気よねぇ。」「ん。それでそろそろ日本へ戻ろうと思う。 ここの教育はオープン過ぎてさ。 ...

  • 35

    類は仕事へ行く日になった。すると葵が泣き始め、類から離れない。「いや。パパ。パパ。」首を振り必死に縋りつく葵を、類は優しく抱きしめる。「仕事が終わったら帰ってくるから。絶対に帰ってくる。葵を一人にはしないから。」麗も葵に諭しながら葵を受け取ろうと手を差し出す。「パパが帰って来るまでおばあちゃまと一緒に遊びましょう?お絵描きしましょうか?葵ちゃん凄く上手だものね。」だが葵は麗の手を取ろうとしない。そ...

  • あけましておめでとうございます 2024

    あけましておめでとうございます。今連載中の『15 years story』ですが、まさかこんな展開で正月を迎えるとは思いませんでした。明るい話で年を迎えたかったところですが申し訳ありません。ですがこのままで終わるはずがないので、お時間のある時にぜひお越しください。類つくを書き始め沢山の作品が生まれました。なんと、10年も書いているんです(笑)こんなに書いていると昔の作品を忘れ、同じような展開も増えてきたように思い...

  • 34

    類は二週間の休暇を貰っていたが、そろそろ仕事を始めなければならなくなった。その前に、、、と、葵と共に動物園へ向かった。園内に入ると葵は大喜びだ。「あっ!」何かを見つけては駆け出していく。それを追いかけ興味を示したものを説明し、しっかり手を繋いで歩く。「ママは?」「ママはお空に行った。」「おそら?」類は葵を抱き上げ空を指差す。その指先を追い、空を見上げる。もちろんつくしの姿はない。「ママは?」「ん。...

  • 33

    翌日の夜、聡と麗が帰国した。そしてつくしを見て泣き崩れる。「どうしてこんな事に?きっと私の責任だわ。私が研究開発よりも子供と過ごす時間を大切にして欲しいと言ったから。きっともっと研究に没頭したかったのよ。だから悩んで、、、私の責任だわ」「それはない。麗の所為じゃない。シャルちゃんはそんな事で自ら命を落とすようなことはしない。絶対にな。」聡は麗を慰める。類は葵を下すと優しく声をかける。「ばあばにハグ...

  • 32

    その夜、あきらと総二郎が花沢家を訪れた。あきらに至ってはスーツ姿で仕事の帰りと分かる。二人とも神妙な面持ちで類に掛ける言葉がないようだ。「こっち。」類は二人をつくしの元へ連れていく。そこには眠っているような姿のつくしが居る。二人は信じられない表情で手を合わせた。「シャルちゃん。何があった?」「なあシャルちゃん。目を開けてくれよ。」二人の声は涙声だ。鼻をすすりながら声をかけている。「類。何があった?...

  • 31

    類はサッと風呂場の周りを見ながら問う。「妻以外の痕跡はありませんか?」「今はまだ分かりません。指紋を採取している段階ですので。」「ナイフを握っていたと言いますが、どのナイフですか?」それを受け、鑑識が袋に入れたナイフを見せる。「こちらになります。」「このナイフに不審な点はありませんか?」「こちらからも指紋が出ていますので奥様以外の物があるかどうかを調べます。それとこのナイフの入手先を調べます。」「...

  • 30

    類はジッとつくしを見つめながら佳代に問う。もちろん冷静ではいられない。だが自殺するはずがないし、犯人を突き止めたい気持ちだ。「どういう事?何があった?俺が仕事へ行ってからの事を話して。」「はい。午前中は葵様と絵本を読んだりブロックで遊んでいる姿を拝見しております。至って普通に笑いながら遊ばれておりました。そしてランチも普通に食べられました。その後、葵様がお昼寝をされ、つくし様は一人で公園へ散歩へ行...

  • 29

    葵は、ドンドンとバスルームのドアを叩き続ける。何時もなら明るい声で返事があるのにそれが一向にない。ドアが開く気配もない。「ママ、、、ママ、、、ママ、、、」つくしの名を呼ぶが一向に返事がない。寂しいという気持ちがあふれ出て、いつしか泣きながら名前を呼んでいた。そこに佳代が入ってきた。そろそろ葵が起きてくるころだと思ったからだ。「つくし様?葵様は起きられて、、、」佳世は部屋に入るなりピタリと足が止まる...

  • 28

  • 27

    つくしは歩きながら必死に考える。10年前に自殺しているという事は、何かがあったのは確実。自殺する理由なんて何一つないんだから。類とも変わらず愛し合っているし可愛い娘もいる。そろそろ二人目が欲しいと話しているし週末には動物園にも行く。じゃあなんで自殺を?データが流出したことを知ったから?でもそれなら類に話して何か手立てを考え犯人探しをするはず。自殺はしない。何があった?分からない。分からないけどこの...

  • 26

    ヒュンッと体が無重力のように宙に浮く感覚を覚えた後スッと重力がかかった。自分の体を見るが特に変化はない。恐る恐るトイレから出るとそこには見た事もない遊具が設置されている。「本当に10年後に来た?」もちろん周囲にボディガードの姿はない。つくしは急いで公園から出ると近くのコンビニへ向かった。そこには見たことの無いデザートや商品が並んでいる。だが新聞が見当たらない。「あの。新聞はありませんか?」「新聞?...

  • 25

    2024年10月つくしは大学を無事卒業して7か月が経った。葵ももうすぐ3歳で言葉も活発になった。二人は仕事に向かう類を玄関前で見送る。「いってらっしゃい。」「パパ。チュッ」葵は投げキッスでエールを贈る。その可愛い姿に類は目を細め葵の頭を優しく撫で、つくしにはキスをする。「行ってくる。日曜日は動物園に行こう。そろそろ葵も喜ぶんじゃない?」「うん。絵本だと大きさが分からないもんね。」「だな。葵~。本物の像と...

  • 24

    楽しい沖縄旅行が終わり、五人は東京へ戻った。その翌日、聡と麗は揃ってフランスへ戻ることに。聡は分かっていたが麗まで一緒に戻る事は初耳だ。「私だけが葵ちゃんに触れ合っていたから聡さんが嫉妬してね。だから一度帰るわ。でもまた来るから。」そう言うが、実のところは聡が寂しがっているからだと類は思っている。もちろん麗だけが孫に会えること、久しぶりに会った孫が少し人見知りをしてあまり懐いてくれなかったこと等も...

  • 23

    聡も合流し、皆で美ら海水族館へ向かう。類とつくしは新婚旅行以来となり、あの当時を思い出し懐かしく感じる。「そうそう、入り口にジンベイザメの銅像があったね。」「ん。さてどこから回る?」類はベビーカーを引いている。その隣につくし、三人の後ろに麗と聡が案内図を見ている。「ショーもあるのね。先にショーを見る?」「葵ちゃんは起きてるかな?」「ん。今はまだ起きてる。」という事で五人は先にショーを見る事に。類は...

  • 22

    翌日、麗とつくしは葵と共にプライベートビーチに向かった。そしてパラソルの下に葵を下す。すると砂を手に取り遊び始めた。そこにスコップやバケツを置き、つくしも一緒に砂遊びを始める。麗はサングラスをかけサマーベッドに横になり日光浴を始めた。もちろん購入した水着を着ている。暫くすると三人の前を男たちが通り過ぎる。そして再び踵を返しチラチラ見ながら通り過ぎる。その声が二人の耳に届く。「親子だよな?」「年の離...

  • 21

    沖縄に着いた三人はタクシーでホテルへ向かう。そこはメープル沖縄だ。「メープル?司の?」「えぇそうよ。『知り合いの』って話したでしょ?楓さんに聞いたのよ。そうしたら空きがあるというから予約したって訳。」麗はウインクをしながら告げる。西田の一件以来、楓は花沢に頭が上がらない。もちろん仕事で優遇を依頼したことは一度もない。今回初めて無理をお願いした。「さあ部屋に入りましょう。フロントで受付をしましょうか...

  • 20

    2022年8月葵は8か月になりハイハイが盛んになった。その姿がまた可愛く、類と麗はメロメロだ。「今年の盆には聡さんも来るそうよ。」「あの人、急に暇になった?」もちろん皮肉だ。凄く苦労してスケジュール調整をしているのは分かっている。ただ今まで碌に日本に帰国しなかったのに葵が生まれた途端帰国回数が増えた事に厭味の一つも言いたくなっただけだ。「それ嫉妬ね。自分の時は放ったらかしにしたくせに!ってことでし...

  • 19

    4月類は大学四年、つくしは大学三年になった。大学四年の類は前期に少し授業があるだけで後期はほとんどない。卒論に当てる機関だと思うが類は早々に提出しようと考え既に取り掛かっている。つくしは久しぶりの対面授業でワクワクしている。自宅に残す葵も気にはなるが麗が居るし、大学は気分転換にもなる。それにまだ目を通していない卒論もある。空きコマはその卒論を読み漁ろうと考えている。そこに友達のしおりがつくしの姿を...

  • 18

    3月子供の成長は早いというが、たった三か月で葵の体重は6キロほどになった。生まれた時の倍だ。顔も丸くなり手足はぷくぷくとしてはちきれんばかりだ。表情も豊かになりよく笑うようになった。そうなると見る人を魅了する。聡も日本に出張という形で3月初めに帰国している。滞在期間は約1か月と言うが、葵の姿に半年に伸ばそうかと真剣に考え始めている。麗に至ってはずっとここに残りたいと何度も口にしている。それに辟易して...

  • 17

    クリスマスが終わった12月26日に親友達が花沢邸を訪れた。「「いらっしゃい。」」「おめでとう。これ出産祝い。」四人はそれぞれプレゼントを類とつくしに渡す。「「ありがとう。」」「おい、葵はどこだ?」類とつくしの腕には葵の姿が無い。「リビングに居る。今、寝てるから。」「寝てるのか。類によく似てるな。」総二郎は茶化す。もちろん赤ちゃんは一日のほとんどを寝ていることぐらいは知っている。「今はね。でも良く泣...

  • 16

    分娩室から病室へ移動したつくしを類は労わる。「ありがとうシャル。お疲れ様。」「こちらこそありがとう。凄く心強かった。」二人は互いを労う。すると綺麗に顔や体を拭いた赤ちゃんを看護師が連れてきた。「かわいい赤ちゃんですよ。」その赤ちゃんをつくしの腕に抱かせる。つくしも初めて抱く小さな赤ちゃんにおっかなびっくりだが、赤味が少し取れ顔が良く分かる。「可愛い。」「ん。凄く可愛い。」類もつくしの腕の中の赤ちゃ...

  • 15

    11月つくしはオンラインで講義を受けている。今日はブラックホールに吸い込まれた星はそのままの形で別次元で存在しているのかという事を講義している。と言っても相手はつくし一人。講義というよりディスカッションのような形だ。『つまり異次元に行った星はそのままの形を保てるか?という事だと思うんだが、ここで素粒子が空間移動に耐えられるかが問題になる。』「はい。素粒子は電子によって結合されていますが異空間にも電子...

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