※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
つくしは真木子の手を取ったまま道明寺家の車へ走る。車の手前まで来ると自然に後部ドアが開き、そこに飛び乗った。中にはF4が待っていた。「遅くなったかな?」「いや。 丁度良い時間だったんじゃね?」「あっ、紹介するね。 あたしの友達の遠藤真木子ちゃん。」「「「「よろしく。」」」」真木子は車を見た時から驚きすぎて声にならない。目の前にF4が揃っている。しかも車内という密室で同じ空気を吸っている。「よろしく」と...
翌日、類とつくしは小田原城付近の寺へ向かった。小田原城付近から順に東へしらみつぶしに探す作戦だ。そんな中、類がつくしに尋ねる。「そろそろクリスマスだけど予定ある?」「うん。 今年は伯父さん達と一緒に過ごすことにしてる。 日本ってクリスマス休暇が無いんだね。 アメリカでは中旬ごろから休みになるのに。あっ、でも年が明けたらすぐに仕事とか学校が始まるけどね。」「そうだな。 日本の場合は年末年始を中心にし...
12月になった。F4はラウンジでクリスマスパーティーについて話し合っていた。「なあ。 牧野も呼ぼうぜ。」もちろん皆、賛成だ。「俺ん家にするか?」司の言葉に三人は頷く。毎年、司の家で集まる。あきらの家はメルヘンな母と妹達で家中飾られクリスマス気分を味わえるが、四人は既にそう言う年頃ではない。「牧野さんなら、そう言う雰囲気の方が好きそうだけどな。」「だろうな。 だが俺達が寛がれねぇ。 当然、妹達もいるだ...
小田原城、SAMURAI館の観覧を終えた後、二人はゆっくり城内を歩く。綺麗に整備され歩きやすい。もちろん二人は手を繋いだままだ。「落ち着いた?」「なんとか。 それにしてもこんなに感情が揺さぶられるとは思わなかった。」「仕方ないよ。 楓弥様はその時の興奮や熱気を直接肌で感じていたんだから。」「ん。 歴史で戦国時代を学んだ時は、そんな事もあったんだという第三者目線だったけどな。」「そうだね。 あたしの場合、...
10月前世を告白してから初めての城巡りに類とつくしは小田原城を選んだ。この小田原攻めで楓弥は亡くなった。つくしは類に問う。「覚えてる?」「全く。」楓弥の記憶の中にあるであろう小田原城。だが目の前の城は類には全く覚えがない。「確か小田原攻めの後、改修されたんだよね?それに明治時代に廃城され周辺の建物も解体。 しかも関東大震災で石垣も崩落。昭和になって再建されたんだよね? つまり楓弥が見た城では無いとい...
つくしは祖父の話を聞き、なぜすぐに自分を引き取ってくれなかったのかよく分かった。そこに自分の意思が関わっていたとは思わなかったし、幼い自分はあんな父親でも頼りにしていたんだろう。「確かに暴力は受けなかったし食事も皆と同じ物を出されてた。ただ、、、あそこにあたしの居場所がなかっただけ。あたしという存在を無視されて、まるで存在しないような感じだった。会話もあたしだけを無視していたし、外出する時もあたし...
祖父の後悔を聞き、つくしは胸が熱くなる。祖父は父を信頼していたからこそ母との結婚を許したのは間違いない。だが、父はそれを完全に裏切る行為だ。そして会社のトップを欺けるほどに父は外面が良いんだろう。「お爺ちゃん。 お爺ちゃんは何も悪くない。お母さんはあんな父でも本当に愛していたんだと思う。父の裏の顔を知らずに純粋に愛していたんだと思うから。それはお母さんだけじゃなく会社の上司や周囲もそう思っていたは...
F4との楽しいランチが終わりを迎える頃、類はワザと小田原城とその周辺の寺について話始めた。それは他の三人には全く興味の無い話。その為、続きはつくしを送りながら話すことになった。「お前ら、ほんとに小田原城が好きだよなぁ。」「だって豊臣軍に白旗を上げた経緯を知りたいだろ?」「そんなもんか? それよりも本能寺の変で織田信長の遺体が見つからなかったという方が面白くねぇか?」「それは他の人も色々調べているだろ...
「教えてください。 あたしは愛人の子供なんですか?」つくしの真剣な表情にF4は驚く。それだけ苛めのような物は深刻で出生について悩んでいると分かった。類と司はその事実に怒りを覚えなかなか言葉が出ない。それを察し、総二郎が尋ねる。「今日も何か言われたのか?」つくしはもう隠す必要は無いと思っている。逆に区役所へ行く必要はなくなり感謝だ。「はい。 同じ学年に義妹の牧野愛子がいます。その愛子さんがあたしの事を...
つくしは周囲に気を付けて駐車場へ向かった。既にほとんどの人は下校しており、駐車場もかなり空いている。するとつくしの前に一台の車が静かに停まり窓が開けられた。そこには総二郎の顔がある。その車につくしは飛び乗った。「すみません。 遅くなりましたか?」「丁度良い時間だったんじゃねぇか?」中にはF4が勢ぞろいしている。司とは北海道以来だし、総二郎とは7月のお稽古以来、そしてあきらとはお稽古初日以来だ。「どこ...
F4は始業式をさぼりラウンジにいた。あきらはポケットに入れていた紙をテーブルの上に置く。「牧野さんの事、調べたぜ。」「どうだった?」類はテーブルの上の紙を手に取り、あきらの言葉に耳を傾ける。「牧野さんの母親は東条元会長の娘で会社は元会長の長男が社長に就いているし、その息子が後継者として今は専務の地位で仕事をしている。だから牧野さんが東条を継がなくても問題ねぇ。」三人は頷く。「牧野さんの父親は祖父の秘...
二学期が始まった。つくしは久しぶりの学校に早くもどんよりとした気持ちになった。「このネックレスをイタリアで買ったんですの。」「良くお似合いですわ。 私はこちらの指輪をフランスで買いましたの。」「まあ素敵。」教室に入ると同時に夏休みの話題になるのはどこの国も変わらないが、こうして品評会のようにアクセサリーを自慢するのは如何な物か?しかも校則で禁止されているのに皆堂々と身に着けている。そんなつくしに、...
8月末。司の家では久しぶりに四人が集まっていた。「久しぶりだなぁ。 総二郎は茶会か?」「あぁ。 父親の地方巡業に付き合わされた。」「あきらは?」「母親と妹達とカナダへ行っていたんだが凄く疲れた。」「まあ俺達と趣味が違うもんな。 類はフランスだろ? 静に会ったのか?」「あぁ。 会った。 というより母親が静を甲斐甲斐しく世話していたのには驚いた。」「へぇ。 まあ類の母親と静は元々仲が良いからなぁ。」「...
類はフランスから帰国して二日後に、つくしのマンションへ向かった。そして二人で都内の図書館へ向かう。その車内で、類はフランスで買ったお土産を渡す。「これ。 フランスのお土産。 クッキーだから。」「ありがとうございます。 クッキー好きです。 あっ、あたしからもお土産です。 コースターなんです。」二人は互いに交換する。「可愛い缶ですね。 クッキーを食べ終えたら小物入れにします。」「へぇ。 これは五稜郭?...
つくし達は東京へ戻る為に空港に来ていた。そこでつくしはお土産を買うために店を巡っていた。自宅で食べるお菓子はもちろんの事、自分用として綺麗なキャンドルを手に取る。そしてふと類と総二郎にもお土産を、、、と思う。「ねぇ道明寺さん。」「なんだ?」「道明寺さんは何をお土産に貰ったら嬉しい?」「俺か? 特にねぇなぁ。」「そっかぁ。 西門さんと類さんに何かお土産をと思ってるんだけど、キャンドルも要らないだろう...
レストランでは静はワイン、類はジュースを頼む。アルコールは18歳以上となったからだ。「真面目ね。 日本では隠れて飲んでいるでしょ?」「法律でそうなっているからね。」確かに親友達とはたまに飲んでいる。だがレストランなどの公の場では万が一のことがあれば親やレストラン側にも迷惑がかかる。司ではないがそれは避けたいし、それこそフランスへ来いと言われては堪らない。前菜が運ばれ食事を始める中、類は切り出した。「...
類はパーティー当日になり用意された服に袖を通す。濃紺のスーツに蝶ネクタイだが、あつらえたようにピッタリで驚く。静はシャンパンゴールド色のマーメイドタイプのイブニングドレスを着て来た。「まあ静ちゃん。 やっぱりその色と形が良く似合っているわ。」「ありがとうございます。」二人の話を聞く限り、どうやら二人で選んだ服のようだ。靴や鞄まで色を合わせ、少し大人っぽい雰囲気を醸し出している。「じゃあ今日は類君を...
つくしはジャガイモ揚げが目に止まった。そこは数十人が並んでいる。「あれ食べませんか?」「並んでるぞ?」「美味しいから並んでいるんですよ。 行きましょう。」「マジか? だったらこいつら押しのけて行こうぜ。」「ちょっ! 駄目です。 きちんと並ばないと。」「何でだよ! 俺は道明寺だぞ! 俺様を並ばせるつもりかよ。」「当たり前でしょう!」つくしは司が今にも最前列へ向かおうとするのを必死に止める。そしてその...
翌日、祖父達はゴルフへ向かい、つくしと司は洞爺湖へ向かった。ずっと車窓から景色を眺めているつくしに、司が問う。「あのよぉ。 類とは城や寺巡りをやってるのか?」「まだ一度しか行っていないんですが、これからも一緒に行くことになっています。」「へぇ。 あの類となぁ。 あいつと話が合う人間がいるとはなぁ。」司はどこか遠くを見ながら告げる。幼いころから類を見て来た司は、類自身が自分の傍に女性を近づけたのが信...
類は夕食の時間になりダイニングへ向かう。そこには両親と静の三人が既に席についていた。会話もほとんど母親と静が行い、父親と類は黙々と料理を口に運んでいた。そして窮屈な食事が終わりを迎える頃、母親が類に告げた。「類君。 静ちゃんを家まで送って行ってあげてね。」「俺が?」「えぇ。 時間も遅いし。」内心、舌打ちをした後、渋々静をマンションまで送る事する。母親の魂胆は二人っきりにさせたいという気持ちだろうが...
北海道新千歳空港に到着した祖父とつくしは、すぐに宿泊するホテルへ向かった。「凄く綺麗な景色だね。 東京と違って自然豊かだし。ホテルには温泉が引かれて露天風呂もあるんだよね?」「あぁ。 そんなに温泉が楽しみか?」「もちろん! 自然を見ながらお湯に浸かれるって良いよねぇ。ところで今回も西門のお爺ちゃんも来るの?」「一日遅れて来る事になっている。」「じゃあその時に次期家元のお茶は美味しいです。 お稽古も...
類はフランスへ向かう為、羽田空港に来ていた。そしてチラチラと周囲を窺う。すると名前を呼び手を振り回しながら近づいてくるつくしの姿を捉えた。「類さ~ん。 類さ~ん。」既に視線が合っているにも拘らず、大きな声で名前を呼び手を振り続ける行動がおかしくてならない。しかも前日に空港で落ち合う約束をしている。時間も場所も伝えているのだから、そこまで目立つ行動を取らなくても良い物なのだが、、、まあ確かに人が多い...
花沢邸の美味しい夕食を食べながら、二人は小田原攻めの話に終始する。それは使用人の目には勤勉なつくしとして映る。何よりそれに対して類も答えながら食事が進んでいる。今までこんなに夕食を召し上がったことがあるだろうか?というくらいだ。「だから小田原城は白旗をあげたけど、城主と一部の者だけが切腹しただけで済んだだろ?そこに楓弥の父親の名前は無いと言う事は生きていたはずなんだ。つまり、、父親に情があれば楓弥...
類は部屋に置いていた桜貝を手に取り応接室へ戻った。そしてそれをつくしの前に置く。「これがGWに俺が拾った桜貝。 海岸を歩いていたら見つけたんだ。色々な貝の欠片が落ちていたんだけど、これだけ綺麗な形で残ってたしピンク色が目についてさ。」「綺麗ですね。 あたしも同じです。」そう言いながらつくしは財布を取り出す。そして巾着袋の中から桜貝を取り出し、類の桜貝の横に置く。大きさも同じぐらいだ。「ちょっと見せて...
カタッ不意に扉の方から小さな音が聞こえ、二人は我に返る。それはもうすぐ唇が重なり合う寸前で、慌てて二人は体を反らせた。「ごめんっ。」「いえ。 私の方こそすみません。」急いで謝った後、二人はゆっくり扉の方を向く。そこは確かに閉まっていたのだが、二人は途中から自分の意識が飛んでいたと感じていた。すっかり楓弥と蒔乃の感情に支配され、目の前の姿もそれぞれの姿に変わって見えていた。だが、、、二人の心はホッと...
「その後、姫と初めての閨事が行われたことが城内に駆け巡った。それにより侍女や女中、家臣が嫉妬を覚え殺気立っていると聞いて急いで短刀を作らせた。もしかして嫉妬に狂った者が姫を襲うかもしれないと不安に思ったからだ。」つくしはなぜあの後短刀を渡されたのかという疑問が今解消された。確かにあの後、侍女から嫉妬のような視線を感じたのは事実だ。特にしずの嫉妬は酷かった。「短刀に牡丹を施したのは、姫の秘所がまるで...
二人の心は前世が支配していく。誤解が生じていると分かった時点から齟齬を解消させたくて仕方なかった。「蒔乃姫。 私は出会った時からずっと姫をお慕いしておりました。」「私も同じです。 楓弥様。」「初めてお会いしたのは姫のお城でした。あの時、一番端に座っている姫に一目で恋に落ちました。 私がまだ11歳の頃です。そこから無謀にも姫を妻にするために頑張ってきました。」「ありがとうございます。」つくしは頬を染...
「もしかして、、、牧野って蒔乃姫?」類がつくしを見ながらポツリと言葉を漏らす。つくしはその言葉に目を見開き類を見た。そして確認するように問う。「もしかして、、、楓弥様?」つくしの声色は夢の中で何回か聞いた蒔乃姫の声色だった。会話を交わしたのは数えるほどだが、体調の悪い蒔乃は声も小さく尋ねる様な声だった。類は思わずつくしを抱きしめる。何故だか分からないが体が自然に動いた。ずっと探していた物を見つけた...
類とつくしは、ゆっくりと見て回る。そして笠原家の墓がある寺では、一つ一つじっくり見る。だが楓弥の名前は見つけられなかった。丁度昼前だった事もあり、次の場所へ歩きながら近くのそば屋に入る。今日は小机城周辺の散策を予定している為、まだまだ歩く。外は暑いし定期的に水分補給をしているものの、そろそろ冷房の利いた部屋に入りたいと思っていたところだ。入ると同時に二人は同じ言葉が漏れる。「「涼しい、、、」」あま...
類とつくしは連絡先を交換した物の、お茶の稽古の時に纏めて話をすれば済む事と特に連絡を取らなかった。そしてお茶の稽古もきちんと行った。「牧野は茶道は初めてだと分かったが、畳の歩き方とか座り方とか本当に誰かに教わっていないのか?凄く綺麗なんだが?」「教わってはいないけどテレビとかで見た事があるからかな?」つくしは夢の中の蒔乃の仕草がそのまま行動として出ていると分かっているが、それを話すことは出来ず誤魔...
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※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...
季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...
月曜日類は6時に起きる。何時もは6時半に起きるところを朝食をとるために30分も早く起きた自分に苦笑する。一階に降りると既に朝食が食卓に用意されていた。それは昨夜の事。『明日は何時に仕事に行かれますか?」』『7時過ぎ。』『では6時頃に起きられますよね?朝食は洋食で良いですか?いつもはコーヒーだけと言っていたので。』起きられますよね?と疑問形ながら決定事項だった。三食食べさせるという義務を背負っているか...
スーパーに到着した二人。つくしはすぐにカートを手に取る。「俺が押すから。」「ありがとうございます。」つくしはカートを類に託すと店中に入った。入ると直ぐに野菜コーナーだ。その中で本日のお買い得品をチェックする。「ジャガイモが安い。肉じゃがにしようかな。」肉コーナーへ行ってもお買い得品をチェックする。「スペアリブが安い。買っておこう。」魚コーナーも同じように本日の目玉を注目している。類にしてみればそれ...
日曜日つくしはスッキリと目覚めることが出来た。外はまだ薄暗い。急いで布団を畳むと部屋の隅に置く。そして静かに階段を降り顔を洗うと洗濯機のスイッチを押す。洗濯機が回っている間に朝食の準備に取り掛かる。と言ってもサラダとスクランブルエッグとパンにヨーグルトという簡単な物だ。準備を終えると時計を見る。時刻はまだ7時前。勝手口から外に出ると明るくなり始め周囲の様子が伺える。東京都内だというのにシーンとし物...
「夕食が出来ましたよ~。」その声にリビングからダイニングテーブルへ移動する。そこには魚料理を中心にした和食が用意されていた。「お口に合うか分からないですけど、EDを治すには食事も大切らしいんです。特に高脂肪、高塩分はダメなんです。今まで外食で済まされていたようですが、まさにダメダメ食事だったみたいです。」「そうなんだ。」確かに外食は高カロリー、高塩分にまちがいないだろうけど、そもそもEDじゃないんだよ...