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2017/11/17

  • 227

    フランスに着いた類は、その足で家へ向かった。「いらっしゃい類君。」「ただいま。」ニコニコした笑顔で出迎えた麗だが、類の表情がイマイチであれ?と思う。予定ではニヤニヤした笑みが押さえきれず、ルンルンとした足取りで開口一番『牧野ともう一度付き合うことにした!』と報告すると思っていた。それが全く違い、サッサと自室へ入っていった。つくしちゃんがここに来たとき、類君と会ってみると言っていた。その為、フランス...

  • 226

    つくしは電車を乗り継ぎお台場まで来た。そして自由の女神に向かって歩く。一年半前もそうだが、この付近はやたらとカップルが多い。みんな仲良く手を繋いで歩いている。自分も以前は同じように温かい手をしっかり握っていたのに、、と思うと、今更ながら辛い。ただあの時の自分の選択を後悔したくない。あの気持ちのままでは類に向き合えないし笑う事すらできなかった。けど今の気持ちになるまでに時間がかかりすぎた。西門さんも...

  • 225

    茶道の後、蕎麦屋で昼食を取り、つくしはロバートとレオを連れ葉山の家へ向かった。今、どういう状態になっているのか見たかったからだ。すると管理をしてくれる人が待ってくれていた。麗に任せっきりでどういう人が管理しているのか知らなかったが、気さくな女性で安心する。家も雨戸を開け空気の入れ替えやこまめに掃除をしてくれていた。「ありがとうございます。」「いえ。 どこか気を付けて欲しい所とかありましたらおっしゃ...

  • 224

  • 223

    道明寺邸に到着すると、タマに出迎えられる。「お帰り。 つくしさん。」「タマさん。 お久しぶりです。 お元気でしたか?」二人はしっかり握手する。つくしの目には、また一回り小さくなったように見えるタマだが、まだメイド服を着て現役のようだ。「あぁ、なんとかね。 それにこんなかわいい子供たちを見られたし、まだまだ長生きしないとね。」「はい。 是非是非。」つくしは客室に荷物を置くと、早速庭からバラの花を数本...

  • 222

    つくしとロバートが羽田空港に到着した。『日本は治安が良くて助かる。 ずっとつくしを気にすることなく観光が出来たから。』『確かにその点は良いよね。 それに親切な人が多いし。』と言いながらゲートを出る。するとそこには椿とレオ、そして椿の腕の中にはアイラがいた。『つくし! こっち! 待ってたよ!!』『つくしちゃ~ん。』手を振る三人の元へつくしは駆け寄る。『お久しぶりです! 椿お姉さん。 レオ君、元気にし...

  • 221

    9月になった。類は、フーと大きく息を吐き、首をコキコキ鳴らす。既に20時を超えそろそろ帰ろうかというところだ。一週間後にフランス出張がある。それまでに国内の仕事を片付けておきたい。その前に北海道出張もある。約三年前にオープンした施設の現状把握だ。既に数店舗空きが出ており、これ以上の撤退は避けたいところだが、新たなテナントは何を誘致すれば良いか、それが纏まらない。とりあえず現地へ行って考えるつもりだ...

  • 220

    つくしは麗と共に花沢邸へ。その車中もロスでのつくしの生活を麗が聞きまくる。椿とその夫によくしてもらい、子どもたちに癒され楽しい日々だと分かりホッとする。言葉の壁も楓が家庭教師を雇い、大学が始まるまでにとりあえず何とかなった事。その大学には留学生が多く、同じように英語に不慣れな学生たちもいた事。その学生たちにアメリカのクラスメイトが手を差し伸べ充実した学生生活が送れ、無事卒業できた事などを伝えた。麗...

  • 219

    フランスに着いたつくしを出迎えたのは麗だ。「つくしちゃん! 久しぶり~!」その声にボディガードがサッとつくしをガードするように前に出る。今回は初めての海外巡り。治安が良くない地域もあるし、少しずつ人気が出てきたつくしのファンが押し寄せる可能性もある為、ロバートは二人のボディガードを同行させた。『大丈夫です。 危険人物じゃありませんから。』それはロバートにも分かる。相手の女性もボディガードが付いてい...

  • イベントのお話が読めない方へ

    ただいま公開しているイベントですが一部の方で読めない状況となっております。iPhoneを使用している方が多いようなのですが取り急ぎ下記を参考をしてください。お手数をおかけいたします。類誕イベントサイトにお越しの皆様へイベントサイトにお越し下さり、ありがとうございます。今回読者の方より「サイトが見られない」というお話を伺いました。幾つかの原因が考えられますので、下記に方法を記載致します。ご対処いただいたう...

  • 218

    つくしとシンディが友達となったことで、口調は打ち解けた物に代わり、目の前の三段トレーのケーキやスコーンを摘まみながら話は弾む。年齢を聞くとつくしより三歳年上。つまり司より二歳年上だ。だが会話をしていても偉そうな口調は無く、フレンドリーで話しやすい。『つくしは司の友達と付き合ってて別れたと言ったけど何があったの? 浮気?』『浮気というか、、、シンディと同じような感じ?類や道明寺の幼馴染の女性が類と仲...

  • 217

    つくしはロバートと共に、サンフランシスコ、シアトル、ソルトレイクシティ、ミネアポリス、シカゴ、アトランタ、ワシントンと周りニューヨークに着いた。そしてニューヨークのメープルに入った時、司が出迎えた。「よぉ! 牧野! 卒業おめでとう!」手には花束を抱えており、それをスッと渡す。「ありがとう。 それよりどうしてここに?」「三日前に仕事でここに来てよぉ。 その時、お前が来ると知ってさ。何時もレオとアイラ...

  • 今年もこの季節になりました

    今年もこの季節になりましたね。是非楽しんでください。この企画が進行中はまさにWBCで日本が賑わっている頃でした。大谷選手を見ていると我が家のお話の空君を思い出しました。(『青い空』『空は青色』の空君です)まるで大谷選手=空君と言う感じに思え、準決勝、決勝とハラハラドキドキしながら見て拍手喝采を贈りました。久しぶりに明るいニュースで嬉しかったです。今年こそ明るい年になって欲しいですね。boîte à cadeautea...

  • 216

    7月。つくしは大学を無事卒業した。友達も大勢出来、その人達との別れを惜しむ。留学生が多い事から卒業後はそれぞれの国に帰りなかなか会えない。皆はハグしあい涙を流すものまでいる。それ位仲の良い学年だった。『つくし! 絶対ドイツに来たら連絡してね。』『インドに来たときもな!』つくしはウンウンと頷きながら三日後からの予定表を取り出す。そこには日付、国、場所、ホテル名が書かれている。今まではアメリカ国内だっ...

  • 215

    4月になり、類は正式に花沢の社員となった。肩書は取締役課長という物。取り締まりが付くことから会社登記にもしっかり類の名前が記載され、一般社員とは違い責任も伴う。もちろん管理職となる為労働基準法が適用されない。それは仕方ないと受け入れている。とにかくしっかり仕事を熟し、自分の結婚に誰からも何も言われないようにしたい。その為には仕事もしっかりやるのみ。何より優秀な田村という秘書が付いているのはありがた...

  • 214

    2月。椿が元気な女の子を出産した。その二日前から椿は入院しており、レオはつくしと留守番をしていた。夫は立ち合い出産の為、ずっと椿に付きっきりだ。こういう点もつくしは良いなと思う。日本でも増えてきたが、まだまだ立ち合い出産は少ない方だ。生むのは女性しかできないが、生まれたばかりの子供は夫と共に見て感動を味わいたい。ふと自分がベッドに横になり強く手を握り励まされている場面を想像する。その握られている手...

  • 213

    12月。つくしは大学の友達にクリスマスパーティーに誘われ向かった。思えばこうして友人とクリスマスを祝う事も、パーティーをすることも初めてだ。英徳時代は祖母が居た事も有りすべて断っていたからだ。だが日本のパーティーとアメリカのパーティーは違うと思っている。何故ならアメリカの方がフレンドリーというかボディタッチが激しいからだ。『つくし! 待ってたよぉ。』『呼んでくれてありがとう。』つくしはキャシーとハ...

  • 212

    つくしはレオとロサンゼルス動物園に来ていた。椿が悪阻で思うように外出できず、レオも家の中か庭で遊ぶ日々が続きストレスも溜まっているだろうとつくしが申し出た。もちろんボディガードも連れている。レオは動物園に到着した時からハイテンションだ。一歩中に入るとつくしの手を引っ張り動物の檻へと連れていく。そして名前を連呼し次の檻へ向かう。最近浮かない顔の多かったレオだが、今日は笑顔いっぱいでつくしも安堵する。...

  • 211

    フランスの家に着いた類は、真っ先に母親に問う。「牧野から連絡あった?」「来て早々つくしちゃんの話? まずは挨拶でしょう?その次に母親を労わる言葉じゃない?」類は小さく舌打ちをした後、、「ただいま。 今年の夏は暑いけど元気そうで何より。 それで牧野から連絡来てる?」早口でとりあえず挨拶をし、すぐ本題に入る類が面白く、麗はクスクス笑う。そんな麗に類は苛つく。「母さん! 連絡は? 牧野は元気にしてる?」...

  • 210

    「牧野? お前なんでここに?」「道明寺こそ、、。」『つくし! こいつ誰だ?』司はつくしの足元に居るレオを見る。『お前、レオか? 大きくなったなぁ。俺はお前の伯父だ! 司だ! 覚えてねぇのか? まあ小さかったからなぁ。』『伯父? 司? ママンの弟?』『あぁ、そうだ。』司はレオを抱き上げる。子供の成長は早いというが、以前会った時はまだ歩行器に乗せられていた。それがしっかりとした足取りで歩き、会話もでき...

  • 209

    類は夏休みの後半、フランスへ向かった。思えば去年は牧野と一緒で、いつもなら嫌でしかない海外出張も凄く楽しかった。長いフライト時間も、狭いながらも密着して眠ることが出来、あっという間に空港に着いた。でも今は、、、。類は隣を見る。そこはどこの誰だか分からない男性が座っている。自分が蒔いた種とはいえ、未だ連絡も取れずどこにいるか分からない状況は辛い。それはたぶん牧野の隣に自分の知らない男性が居たら?とい...

  • 208

    つくしはロバートと美術館へ来ている。アメリカ中のメープルとカメリア巡りをしているが、必ずと言っていいほどその地域の美術館や植物園などへ行っている。つくしはロバートが気を使い気分転換させるために連れてきていると思っているが実は楓の指示だ。想像力を膨らませる為に、色々な物を見せなさいと言われている。美術館を出た後、ロバートは近くのカフェにつくしと共に向かう。椿と違い令嬢ではないと聞いた時から、こうして...

  • 207

    つくしは講義を終えると、すぐにノートをしまい立ち上がる。『つくし! またね~!』『うん。 またね。』つくしの大学は比較的裕福な家庭の人達が通う大学で、世界中から留学に来ている。その為、セキュリティもしっかりしているし校内も全く荒れていない。いろんな人種が集まっているせいか講義もボイスレコーダーの持ち込みが許可され助かっている。帰宅後、もう一度聞き直す事ができるからだ。そして何より仲が良い。英徳と違...

  • 206

    四月になり、類は週に一度の登校となった。その時、大島の姿を見つけ急いで駆け寄る。もちろん、何時も隣に居たつくしの姿は無い。「ちょっと! あんた、牧野といつも一緒に居た子だよね?」突然類に呼び止められ周囲は「きゃ~」という黄色い声をあげる物もいるが、大島はギロリと類を睨む。何度か会っているのに名前も覚えていないからだ。「何ですか?」「あのさ。 牧野が今どこにいるか知らない? 大学名とかさ。」大学名は...

  • 205

    3月末。つくしは、椿、レオと共にメープルロサンゼルスへ向かう。東京と同じような厳かな雰囲気で高級感漂う内装だ。そこで椿に声をかける者がいる。スーツ姿でホテルスタッフではないと分かり、つくしもこの人が担当者だろうか?と思う。『椿様。 ご無沙汰しております。』『お久しぶりです。 ロバートさん。 こちらが牧野つくしさんです。』『初めまして。 ロバート・ブラウンです。 祖母が日本人でしたから少しなら日本語...

  • 204

    『つくし! 本読んで!』『良いよ。 どれにする?』『これとこれ』レオは手にしている絵本をつくしに渡すと膝の上に座る。『レオ! つくしちゃんは勉強中なの! 邪魔しない!』『これも勉強! 僕が発音を注意してあげてるの!』もうすぐ3歳になるレオはやんちゃで元気いっぱい。つくしにとっては癒しになっている。『椿お姉さん。 大丈夫です。レオ君の言う通り発音の確認になりますから。 じゃ読むよ?』『うん。』つくし...

  • 203

    やっとフランスへ来た類。これほどフランス出張を心待ちにした事は無い。あれからも三日と空けずにSNSを送っているが返事は一度もない。ただ送り続けないとそれだけの気持ちだったのかと思われるのが怖い。忘れて欲しくない。この気持ちは簡単に忘れられるものじゃないことを知って欲しい。家に着くとまっすぐ奥のリビング、そして以前牧野が使っていた部屋を覗く。だが姿が無いどころか使っている形跡すらない。そんな俺に母親の...

  • 202

    リムジンに乗り込んだつくしは、改めて椿に挨拶する。「迎えに来て頂きありがとうございます。あっ、タマさんから『まだ寒い日があるから風邪などひかないように。機会があれば日本に帰ってくれると嬉しい。』と伝言を頼まれました。」「まあ、タマともお知り合いなの?」「はい。 実はタマさんが骨折してリハビリ中に私の祖母も同じ病院に入院していて、、。」そこからタマと祖母が仲良くなり司とも知り合ったことを話す。「まあ...

  • 201

    類は深く反省する。「とりあえず牧野に謝る。 言い訳と捉えられても牧野が好きだし、大切な人という気持ちは変わらないから。」「牧野なら居ねぇぜ。」「居ない?」「昨日、旅行に行きやがった。 まあ春休みだし気分転換するには丁度良いだろうなぁ。」「どこへ行った?」「国際線だったからお前の母親んとこじゃねぇか?当分帰らないような口ぶりだったし、ダンスレッスンと茶道も休むと言ってたしなぁ。」母親の所?確かに俺の...

  • 200 第十章

    類が沖縄出張から戻ってきた。スマホを開くが未だつくしからの連絡はない。だったらこのまま葉山へ行こうかと考える。「田村。 お疲れ。」「お疲れ様でした。」類は田村と別れるとすぐ駐車場へ向かう。そして場所を確認しようとスマホをタップしたとき、総二郎からSNSが入った。そのSNSをすぐ開く。<沖縄から帰ったか? あきらと三人で飲もうぜ。>そんな暇はない!と思うが、沖縄出張の事は牧野にしか話していない。総二郎が知...

  • 199

    類は翌日仕事の為、沖縄へ向かった。つくしから未だ返信は無い。そして佳代を始め使用人は何も言わないが、自分を見る目が明らかに厳しいと感じていた。それでも仕事を投げ出すわけにもいかないし、この一泊二日の間にしっかり自分を見つめ直すつもりでいた。つくしは道明寺邸へ向かい、タマに会っていた。年末に仏壇にお供えして欲しいと代理の人がお菓子を持ってきたが、タマの姿は無かった。その時のお礼と仏壇を処分し墓じまい...

  • 198

    つくしは自宅に入ると窓を開け空気の入れ替えをする。その後、花沢から持ち帰った教科書を整理しながら今後の事を考える。大学は卒業したい。祖母が自分の為に既に払った授業料を無駄にしたくない。ただ英徳には類が居る。四年になる為ほとんど来ないだろうが偶然会う可能性はある。その時、どんな顔をして会えば良いのか。それに他の学生の目がある。別れたと知れたら皆が高笑いをするだろう。それに幸子さんが辛辣な言葉を投げか...

  • 197

    類は指輪をハンカチに包むと、ゆっくり立ち上がり静に向き合う。「病院に戻ろう。」「えぇ。 そうね。」駐車場に向かいながらも、総二郎の指摘、牧野の言葉、そして自分の行動を思い返す。何が牧野を傷つけたのか?どうして別れを切り出されたのか?そして静はどうして余計な事をつくしに吹き込んだのか?「静の夢はフランスで弁護士になる事だよな?」「えぇ。 そうよ。」「何時なれる? 大学を卒業してもうすぐ2年か? いつ...

  • 196

    つくしに追いついた総二郎は、つくしの肩を抱く。親友として接すると決めてからずっと我慢してきたが押さえられなかった。類のあの行動を見れば、親友の俺でさえ怒りが沸点を超えた。それが牧野なら尚更耐え難いはずだ。慰めたかった。力になりたかった。もう類の事は忘れて前を向けと言いたかった。「牧野。 どこ行く?」「花沢邸に寄って欲しい。 テスト期間中、ずっとお世話になってたから荷物があるのよ。明日葉山に帰る予定...

  • 195

    類は殴られた頬の痛みよりも、総二郎の言葉が頭にガツンとくる。そして総二郎の後ろに居るつくしに目がいく。悲しそうな寂しそうな表情でジッと自分を見つめている。「ま、、きの。 何でここに? それになんで総二郎と?」「お前が牧野との約束を反故にして静を優先したんだろうが!ポツンと一人佇んでいる牧野を元気づけようと俺が誘ったんだよ。」「でも牧野は友達と、、。」「お前と静の事を考えてだろ! それも分からねぇの...

  • 194

    類は自由の女神に向かって走ると、台座辺りに静の姿を見つけ駆け寄る。「静!」「類。 どうしたの?」「おばさんから静が飛び出して行方不明になったと連絡があって。病院でおばさんから経緯を聞いたんだけど、日本に戻る事を反対されたんだって?」「そうなの。 夢を追いかけ家を捨てた事が、こんなにシコリとして残っているとは思わなかったわ。一人娘ですもの喜んでくれるとばかり。 私も駄目ね。両親が元気でいるからこそ、...

  • 193

    総二郎はつくしと共に車に乗りこむと、行先を告げる。「お台場へ行ってくれ。」「お台場?」「あぁ。 あそこに美味しいアイスクリーム屋があるんだよ。」「アイス? この寒いのに?」今は一月末。とてもアイスの時期とは言えない。「屋内は暖房が効いて暖かいだろ?それに冬に食べるアイスは美味しいと思わねぇか?」総二郎が少しでも気分を上げようと気を遣っていると分かり、今はその優しさがすさんだ心に響き嬉しい。「確かに...

  • 192

    類の携帯が振動し急いで見る。するとつくしからのメールで、もうそんな時間になっているのかと気づく。だがメールの内容にホッとする。確かに映画や食事は別の日にゆっくり出来る。それに友達と楽しんでくれるなら助かる。とりあえず早く静を見つけ家に帰ろう。と思ったところで、まだ自分から静に連絡を入れていないことに気が付いた。類は急いで静に電話をかける。コール音は鳴るものの、なかなか電話に出ない静に心配が増すが辛...

  • 191

    車に乗り込んだ類は病院へ向かう。その道すがら、つくしへメールを送る。<遅れるかもしれない。 静が行方不明になったらしくて、ちょっと病院へ行ってみる。また連絡する。>病院へ着いた類は、庭や駐車場、受付、売店など静を探すがそれらしい人影はない。仕方なく藤堂社長の病室へ向かうと、近くのベンチに項垂れた母親が座っていた。「おばさん!」「あっ、類君。 忙しいところごめんなさいね。」「いや、それより見つかりま...

  • 190

    テスト最終日。つくしは1~3限でテストが行われ、類はテストがない。その為つくしが終わる頃類が迎えに行き、そのまま映画に行き外でご飯を食べようと昨夜話が纏まった。その日の昼休み。つくしは大島とご飯を食べていた。「残りは一教科。何とか単位が欲しいよね。」「うん。 とりあえず必修科目さえ取れていれば進級できるから。後一教科頑張ろう!」「だね。 ところで花沢さんは確認した? 写真の事。」大島は、あれからも...

  • 189

    翌日。つくしが大学に行くと、いつもより視線を感じる。もちろん理由は分かっている。静さんが来ていたからだろう。そこからいろいろ想像を膨らませ、ある事ないこと言っているのだろうがいい加減疲れた。でもあと数日で春休みに入るし4月からは心機一転、また心強く頑張れば良い。類も4年になり大学に来ることも減るし、あたしも早々に必要単位を取得し、出来るだけ大学に足を運ばないようにすればいい!と思う。「つくし! お...

  • 188

    総二郎が4限のテストを終え教室を出る。類とあきらは経済学部、総二郎は国際文学部。色々な国の言語、歴史、芸術、社会制度などを学ぶ学部だ。その為、取っている授業が違う。その総二郎が駐車場へ向かっていると、前方に類とつくしの姿を見つける。すぐに声をかけようと片手を上げたが、ゆっくりその手を引っ込める。目の前にある光景が全て。テストは3限のみだった類がこうしてここに居るという事は、牧野が終わるのを待ってい...

  • 187

    4限目のテストを終えると、つくしはすぐに席を立つ。「また明日ね。」「うん。 またね。」つくしは大島に挨拶をするとダッシュでラウンジへ向かう。今日は3限のみのテストと聞いている。という事はかなり待たせている。早くいかないと!と気持ちばかりが焦り、メールを打つことも忘れ走って向かった。「ごめん。 だいぶ待ったよね?」「いや、じゃ帰ろっか。」類は読んでいた本を閉じる。「何読んでたの?」「あぁ。 これ。」...

  • 186

    つくしは大島と中庭の隅で弁当を食べていた。会話はテストの事と豪華な弁当の事だ。何時も友人と一緒に食べていると話したところ、シェフが大島の分も作ってくれた。「美味しいね。 当たり前だけどね。」「うん。 美味しいね。」「これからも花沢さん家で過ごすの?」「どうしようか悩んでる。 とりあえずテストが終わるまでと思ってるんだけどね。」「まあテストが終われば春休みになるし、お世話になる理由がなくなるかなぁ?...

  • 185

    花沢邸のリビングでつくしはテスト勉強をしている。その隣で類はテスト範囲のチェックと共に、ペラペラと教科書を捲っている。そうしながらチラリと視線を麗に向ける。そう。この部屋には三人が居る。類としては麗の存在が鬱陶しくて仕方ない。見張られているように感じるからだ。だが言葉の一つも発することなく、壁の花のように黙って本を読んでいる為、出て行けとも言えない。「ねぇ類。 この場合は?」「ん? どれ?」二人は...

  • 184

    類は少しイライラしながら二人が出て来るのを待った。既に入ってから一時間以上が経つ。だがまだ出てこない。類自身、気持ち良いお湯で少々長湯をしすぎたと思い焦って出てきたというのに、それから15分過ぎてもまだ出てこない。髪を乾かしたり化粧をしたりと時間はかかるのだろうがそれでも長い!とチラチラ女湯の暖簾を見ながら思っていると、やっと二人が出てきた。しかも楽しそうに何やら会話しながらだ。「あっ、ごめんね。 ...

  • 183

    墓じまいと共に仏壇も処分し、その部分がガランとなった。それはそれで少し寂しい気持ちになる。物心ついた時からその場所に仏壇があり、手を合わせていたからだ。「つくしちゃん。 お風呂屋さんに行かない?」「スーパー銭湯ですか?」「スーパー銭湯? どこでも良いんだけど温泉に入りたいのよ。出来れば露店もあるところが良いわね。」「じゃホテルのお風呂ですね。 日帰り入浴ができるホテルか旅館がありますから。」「じゃ...

  • 182

    年が明けた1月3日。麗が葉山へ来た。「あけましておめでとう。」「あけましておめでとうございます。 お久しぶりです。」「つくしちゃん。 元気そうでよかったわ。 類が邪魔してない? ちゃんと手伝ってる?」「はい。 色々手伝って貰っています。 それより何時もシェフをはじめ花沢の皆さんにはお世話になっています。誕生日から年末年始とずっと食事を持ってきてもらって。おかげで大掃除を済ませのんびりと正月を過ごせ...

  • 181

    クリスマスが終わり、二人は葉山へ向かった。そこで類は大掃除を手伝う。去年に続きという事も有り、率先して行う。「牧野。 パタパタするやつどこ?」「あっ、今はこれ。」つくしは柄の長いモップを渡す。「パタパタするのはホコリが舞うでしょ?おばあちゃんはあれが好きだったから使ってたけどね。」「確かにホコリまくってたし、パタパタする時は隣の部屋に避難していたっけ。」「そうそう。 床を掃除する時も車いすであっち...

  • 180

    クリスマス。つくしは昼前に目を覚ます。隣には類の胸。自分の手は類の腰辺りに置かれている。一人で寝ている時は目覚めるといつも上を向いていたが、類と一緒に寝るときは必ず類の方を向き額を胸に手を腰に添えている事に気が付いた。安心するのか温もりが心地良いのか分からないが、今はこの存在を自分だけのものとして鍵をかけ閉じ込めたい気持ちになる。つくしは指で、類の鳩尾に『つくしのモノ』と書く。そのこそばゆさから類...

  • 179

    クリスマスイブ。つくしは花沢邸にいた。類の部屋にはクリスマスツリーが置かれている。類が幼い頃に出していた物だが、ここ数年はずっと納戸にしまわれていた。それを佳代が出し、つくしが今飾りつけをしている。「牧野もツリーある?」類は飾りを一つ一つつくしに渡す。つくしはそれを受け取り、もみの木に飾っている。「部屋に小さなものを飾ってたよ。 アニメのキャラクターの物なんだけどね。さすがに今は出してない。」「大...

  • 178

    つくしは寒空の夜の庭に佇み、月を眺める。類からの電話をどういう言葉で終わらせたか記憶にないくらい心が乱れていた。その気持ちを落ち着けようと庭に出た。何時も空から見ていると言っていた祖母は、今もこの時も見てくれているだろう。どういう結果になっても、あたしの気持ちを尊重すると言ってくれた祖母。つまりはよく考え後悔の無い選択をしろという事、、、だよね?焦る必要はない。じっくり考えれば良い。今は自分に自信...

  • 177

    類は静を送るとすぐ自宅へと戻る。だが玄関につくしの靴がない。「お帰りなさいませ。」「牧野! 牧野は?」「牧野様ですか? 来られておりませんが?」来ていない、、、。類は携帯を取り出すと急いでつくしに電話をかけた。葉山に戻ったつくしは、荷物をリビングの机の上に置く。買い物に出かけた時はウキウキしていたが、今はすっかり気持ちが沈んでいる。すると携帯が振動を始めた。見なくても分かるが類からだろう。今までは...

  • 176

    「類? どうしたの? こんなところで。」「花沢さん。 こんにちは。」突然、つくしと大島の声が聞こえ類は驚く。「えっ! 何で? どうしてここに?」「大学の講義が3限で終わったから、敦子と買い物に来てご飯を食べてたの。それで帰ろうと思ったら、類が居たから。静さん、お久しぶりです。」つくしは明るく告げる。静に対してもニコリと笑みを見せながら。「お久しぶり。 牧野さん。」静も笑顔で挨拶する。だが内心はかな...

  • 175

    つくしは静と視線が合った気がして、サッと目を伏せる。そしてドキドキが止まらない。「ねぇ。 やっぱり声をかけようか?」「ううん。 あの人は類の幼馴染の人だから。」「幼馴染? 知ってる人なら尚更声をかけても。」「いい! いいから、、。」つくしは今にも席を立とうとする大島の袖を掴む。その表情は今にも泣きだしそうだ。大島もその表情を見れば、何かあると分かる。「幼馴染だけじゃないんだね?」「うん。 簡単に言...

  • 174

    レストランに着き、ボーイに案内されながら席へ向かうが、静の足が重い。その為、背中に手を添え促すように向かった。何時もは良くしゃべる静も、今は口数が少なくトーンも低い。その事からもかなり落ち込んでいるのが分かる。それは数日前の牧野を見ているようだった。「コーヒーで良い?」「えぇ。」類はブレンドコーヒーを二つ頼んだ後、静が話し始めるのを待つ。いつもこういうスタイルだ。それに今回ばかりは聞き役に徹しよう...

  • 173

    類は本社で田村から今週の予定を聞いていた。クリスマス以降、正月明けまでは仕事を入れないよう伝えている。そのしわ寄せが今来ている。平日に東京の卸店や小売店を中心に状況把握巡り。どの店もクリスマス装飾を施しワインの売り上げも上々だ。それに今週は比較的早く終われそうだ。これなら十分、牧野の迎えに行けると思っていると携帯が振動した。チラリと見ると静からだ。静から電話がかかってきたのはフランスで弁護士になる...

  • あけましておめでとうございます 2023

    あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。年明けは二人のラブラブしたお話になれば良かったのですが、ちょっと重たい物へ。気を引き締めてご覧ください。えぇ、、年明けには見たくない人物が出てきます。何故このタイミング!!って感じですがお許しを。たまたまなんですよ。1月3日までは毎日更新、その後は隔日更新になりますが是非お楽しみくださいませ。そんな私はポケモンGOでウォーキングを数年前から日...

  • 172

    12月に入り急に寒くなってきた。つくしは祖母に貰ったマフラーを首に巻き大学へ向かった。類は九州出張へ行ってから本社へ顔を出すことが増えた。丁度ワイン商戦に入り、一通りの流れを見る目的だ。もちろん学業優先だが、それでも2限や3限で終わる時は、その後会社へ向かう事も多い。その為、類は花沢に泊まって欲しいというのだが、つくしは仕事で疲れる類の邪魔はしたくないという思いから断っている。なぜなら泊まると必ず...

  • 171

    花沢邸に戻った二人は、すぐに夕食を取る。「牧野。 今度の金曜日から二泊三日で九州に出張なんだけど、茶道の稽古が終わったらここに泊まらない?土曜日にゆっくり帰るとかさ。」「大丈夫だよ。 翌日休みだから多少夜更かししても大丈夫だし。それよりいつもありがとう。 こうして泊まらせてもらって食事までごちそうになって。」「いや。 でも頑張りすぎるなよ。 先は長いんだしたまには休んだって良いんだから。それにチー...

  • 170

    後期授業が始まり、一か月が過ぎた10月中旬、学園内は学園祭の準備が進められていた。そんな中、どうしても去年の学園祭の話題がチラホラ聞こえてくる。『F4が来られたのは牧野さんを見る為?』『あんな悪条件でも牧野さんが棄権しなかったのは、審査員を買収していたからじゃない?』『その割に優勝じゃなかったでしょう?』『でも特別賞を貰っていたじゃない?』『じゃあ今年も牧野さんが出場すればF4が来る?』チラチラとつく...

  • 169

    4人は個室レストランへ向かった。そこで食事をしながらフランスの話に花が咲く。「凄い家でね。 お城だよ! お城!」「確かに城だな。 日本の家は純和風なのにな。」「うん。 ギャップが凄いよね。 でね、そこで毎日お花を生けてね。使用人さんも初めて見る生け花を喜んでくださって、毎回ちょっとした講習会のような感じだった。」「講習会って、お前フランス語話せるのか?」「一応、一年半ほど大学で習っているし、後は身...

  • 168 第九章

    もうすぐ夏休みも終わりという頃、類とつくしは美作邸へ向かった。あきら経由で社交ダンスのレッスンを頼み了承してもらった。今回はそのお礼とレッスン日などの打ち合わせの為だ。「こんにちは。」「いらっしゃい。 類君。 牧野さん。 どうぞあがって。」「お邪魔します。」二人はリビングに行くと、あきらはまだしも総二郎までいた。「よっ!」「久しぶり。 お二人さん。」「総二郎まで、、、。」「俺も先週は忙しくてな。 ...

  • 167

    明るい光が差し込み、つくしは目元を手で覆う。と同時に全身がかなりだるい事が分かる。目元に置いた手も二の腕が筋肉痛のように痛い。「眩しい? カーテン閉めようか?」「ううん。 もう何時だろう?」「9時頃かな?」「9時、、、。」つくしは昨夜の事を思い出す。つい彼女に負けたくないという気持ちから大胆になっていた。それが自然に類との勝負のような形になって、、、。最後どうなったのか覚えていないという事は、あた...

  • 166

    シャワールームに入った二人。一人用シャワールームだから当然狭い。電気はつけていないが外の明かりが入り込み、それなりに互いの体が見える。「やっぱり狭い。」「まあ、体を洗うだけだから。 あっ、シャンプーもする?」「うん。」つくしは振り返ることが出来ずシャワー方面を向いたままだ。その後ろに類がいる。「シャワーかけるよ?」「うん。」つくしの体、そして頭にシャワーをかける。「シャンプーしてあげるよ。」「あり...

  • 165

    つくしと類は向かい合って夕食を食べている。ブドウ畑では長い長いキスの後、類の手がつくしの服の下に伸びそうになったところでハタと我に返った。このままではソフィアの想像通りになる。ここにはレジャーシートが無いし、芝生の上に寝かせる事も躊躇われるため我慢した。そしてしばらくブドウ畑を眺めた後、別荘に戻りこうして夕食となった。「ブドウジュースもあって助かった。 ワインは飲めないけどあのブドウの味は楽しみた...

  • 164

    別荘に着いた二人。すると別荘からピエトロの妻のソフィアが出てきた。『いらっしゃいませ。 あらっ、その方が類様の彼女ですか?凄く可愛らしい方ですねぇ。』『ありがとう。 名前は牧野つくし。 これからもよろしくお願いする。』『もちろんです。』ソフィアはつくしと握手しながら挨拶をする。もちろんイタリア語の為、つくしは分からないのだが手は離さないし言葉も止まらない為、リアクションに困る。それを止めたのはピエ...

  • 163

    終末になり、類とつくしはイタリアへ向かう。高速鉄道での移動も考えたが、片道7時間半ほどかかる事から断念し、飛行機にした。空港から別荘を管理しているピエトロの車で、トスカーナへ向かう。『類様にそのような可愛い彼女がいたとは全く知りませんでしたよ。イタリアは良いところですよぉ。トスカーナに直行するのは止めて、どこか観光地を案内しましょうか?』車に乗った途端、ウキウキと話し始めるピエトロに類は苦笑いだ。...

  • 162

    「確かに類は優しいです。それに凄く気が利くし、あたしには勿体ない人です。会社もかなり大きいですし頑張って類を支えていけたらと思っています。」「その意気込みは大切よ。 その為に何か習い事はしているのかしら?」「いえ。 特には。」すると静は口角を上げる。どこかバカにしたような見下したような視線を送りながら。「花沢物産はここフランスでも有名な会社なの。こうした軽い集まりではなく、政治家が出席するような重...

  • 161

    類はスーツ、つくしはワンピースでパーティーへ向かった。初めての事につくしはドキドキだ。麗からは笑顔で類にくっついていればいいと言われ、会場へ向かう車中でも笑顔を貼り付けた。それを見た類はプッと吹き出す。「あんた、なんでニヤニヤしてんのさ。」「いや、ニヤニヤじゃなくて微笑みよ! スマイル!」「どう見てもニタニタ顔! それ不気味がられる! いつも通りで良いから。」「うん。 でも緊張して顔が強張りそう。...

  • 160

    つくしは類と共に庭に出てエントランスに飾る花を選ぶ。広い庭の周囲は木で覆われ、花壇には色とりどりの花が咲いている。その中から数種類選ぶと階段下の台の上に置かれた花器に生ける。昔、麗が使っていたらしいが、ここ何年も花瓶に飾るぐらいで生け花をしていない。その為、使用人達が珍しそうにつくしが生ける姿を見る。出来上がった物は気品が感じられ、花瓶とは違った姿を見せる。『凄いですね。 まるで絵のような。』『こ...

  • 159

    いつの間にかガッツリ眠っていたつくしは、キャビンアテンダントの遠慮がちな声で起きた。隣には類がまだ寝ている。「あっ///。 すみません。 類! 起きて! もうすぐ着くから。」「ん? ご飯じゃない?」食事が二回も出ることにつくしは喜ぶ。「顔洗ってくるから、類も自分の席へ行って?」「ん。」類がのろのろと自分の席に戻るのを見て、つくしは顔を洗いに行った。そして二回目の食事も思った通りとても美味しい。その上...

  • 158 第八章

    8月末。つくしは麗と類と共にフランスへ旅立った。麗と夜遅くまで話していた時に、フランスの街並みに魅力を感じた。それに海外旅行のノウハウを教えてもらえること。麗自身がその期間は比較的時間に余裕があり、日中一緒に居られる事。丁度、慈善事業の集まりがあり、顔を出すだけの簡単な物だから類とどうか?と初心者向きのパーティーがある事。そして何より、祖母の気持ちを尊重したかった。自由に自分の道を進みなさい!私た...

  • 157

    突然、麗の口から『ヨーロッパに行ってみない?』という言葉が出て二人は驚く。「もう知ってると思うけど花沢はヨーロッパと日本で仕事をしているわ。類君との結婚を視野に入れているなら、そこがどんなところか見ておくことも大切だと思うの。現に私はずっとフランスかイタリアに住んでいるわ。仕事は主人任せだけどパーティーは夫婦同伴が決まりなのよ。パーティーと言ってもピンキリでちょっと顔を出し主催者に挨拶するだけ物も...

  • 156

    その日、麗は初めて葉山に泊まる事にした。まだまだ話し足りないという理由だが、着替えを持参していた事から初めから泊まるつもりだったと分かる。もちろん、つくしに異論はない。既にここは麗の持ち物だ。だが類はいい気はしない。ハッキリ言って邪魔だ。もちろん葬儀後、家ではイチャ着いていないし、キスすらしていない。でも手を繋いで寝る時間は嬉しいし、布団に入ってからたわいもない会話も楽しい。何より少しずつ明るくな...

  • 155

    麗は机の上に細長い小箱を置いた。見るからにアクセサリーが入っているようなビロード生地の箱だ。類とつくしは高級アクセサリーを預けたのだろうと瞬時に思う。「これよ。 開けてみて。」つくしは箱を手に取るとそっと開ける。中からは四葉のクローバーのペンダントトップが付いたネックレス。その四つ葉には色の違う石が填め込まれている。「その石に見覚えはないかしら?」「記憶にないですけど、おばあちゃんの宝石ですか?」...

  • 154

    お墓参りの後、そのまま寺で初盆の法要をしてもらう。その全てを麗が準備していた事に類は驚く。もちろん参列者は三人のみ。お布施も牧野つくし名で用意しており、麗が僧侶にお礼と共に手渡した。そして家に戻ると運転手から仕出し弁当を受け取る。「これも用意していたんだ。」「えぇ。 昼は過ぎたけど法要の時はどこかで食事をするか仕出し弁当を食べるものでしょ?三人だし家でゆっくりの方がいいかな?と思って。」「法要とか...

  • 153

    類は田村と別れた後、その足で葉山へ向かった。今日は日帰りで都内の主要取引先へ向かった。それでも数社をはしごして帰宅したのは19時を回っている。祖母の葬儀後、つくしを一人にするのは初めてで心配していたが、明るく出迎えてくれホッとする。「お帰り。 お疲れ様。 ご飯食べるよね?」「ただいま。 食べる。」類はジャケットを脱ぎネクタイを外す。そこにつくしが夕食の冷麺と餃子を置いた。「今日も暑かったけど、ジャ...

  • 152

    「ホントに一緒に行かない?」「うん。 だっておばあちゃんを一人にしたくないから。」類は困った表情だ。テストが行われている時から、一緒にヨーロッパに行こうと誘っているのだが、ずっと拒否されている。その理由が、祖母を一人にしたくないという物。四十九日もまだ済んでいないのに長期間家を空けられないという。分からないでもないが約二週間も一人にさせたくないという気持ちがあり、類もなかなか引き下がれない。「それ...

  • 151

    総二郎のお茶をいただいた二人は会場を出る。すると総二郎の付き人が二人に声をかけた。「花沢様。 牧野様。 お越しいただきありがとうございます。」「いや、こちらこそ招待ありがとう。」「この後のご予定はありますか? もしお時間があるようでしたら助けていただけませんか?」類とつくしは顔を見合わせる。この後、とくに予定はない。横浜の街をぶらぶらしようにも着物では歩きにくいし暑い。どこかで食事してさっさと帰ろ...

  • 150

    テストが終わるまで二人は仲良く登校し、終われば一緒に葉山に帰った。類はつくしのテストに合わせ大学に来ることになり、空き時間はラウンジで過ごす。つくしも類のテストが終わるまで図書館で過ごす。初めは妬み僻みで見ていた人たちも、二人の様子に応援する人も見られるようになった。日本を代表する御曹司であっても、こうして普通の人に目を向け恋愛できるという良い見本と捉えられた形だ。そしてテストが無事終了し夏休みに...

  • 149

    月曜日。つくしと類は共に花沢の車で大学へ向かった。一週間後には前期テストがある。その範囲などが今週発表されるからだ。もちろん忌引き休暇は終わっている。大学卒業は祖母の願いでもある為、留年することなく卒業したい。大学に着き、車から降りる類。「きゃ~」と言う奇声が上がる中、次につくしが姿を現すと奇声はピタリと止まりひそひそ話に代わる。もちろんこういう反応になる事は想定済み。類はつくしの手を取ると歩き始...

  • 148

    一週間大学を休み、部屋の片づけを行っている。祖母の箪笥の隠し扉には類もビックリした。そして中には宝石が残されており、それはつくしが譲り受けることにした。箪笥の中の衣類は手つかずで、着物だけが無くなっていた。祖母の言葉通りになっている事に、類はやるせない気持ちだ。変に財産があると揉めると聞くが、それを目の当たりにした。自分は一人っ子だが、司やあきら、総二郎の所が少々心配になる。「仏壇と墓は希望通り一...

  • 147

    佳代が葉山に夕食と朝食を持ってきた。そして運転手と共に仏壇に手を合わせる。「牧野様。 暫く食事はお届けしますのでゆっくりされて下さい。寝られていないでしょう?」「ありがとうございます。 急な事でバタバタしてて。」「一人じゃありませんから。 私も付いております。 いつでもご連絡くださいませ。」「ありがとうございます。」つくしは、こうして心配してくれる人が沢山出来たのも祖母のおかげだと思う。一人になら...

  • 146

    信夫が鍵を置き、家族そろって帰って行った。弁護士は鞄の中から一通の封書を取り出す。「こちらは初江様から預かっておりました。」封書には<つくしへ>と書かれている。「二年前、奥さまがこちらを訪れた時、この家と土地だけは牧野様に残したいとおっしゃられたそうです。ですがこの土地と家屋にかかる固定資産税が高く、それを牧野様に背負わせることに悩んでおられました。そこで奥さまが買い取りました。そのお金で50年間...

  • 145

    「俺と牧野は許嫁で恋人同士だよ!」「「「「えっ!!」」」」類の爆弾発言に篠田家の四人は驚き固まる。そして今度は弁護士が話を引き継ぐ形で話し始めた。「それでは篠田初江さんの遺言を開けさせていただきます。」「遺言? そんな物まで用意していたのか。」「こちらは正式な物ですのでいかなる抗議もお受け出来ません。」そう言いながら弁護士は封を開ける。「<1,篠田初江の葬儀にかかった費用はすべて初江本人の預金から...

  • 144

    祖母の弁護士と聞き、つくしは玄関で出迎える。すると初めて見る男性が現れた。「初めまして。 牧野です。 あのっ、おばあちゃんの弁護士の方ですか?」「はい。 初めまして。 北村と申します。」北村は名刺を取り出すとつくしに渡す。それを見ると肩書に目がいった。<花沢物産顧問弁護士>と書いているからだ。はっ!と顔をあげると、弁護士の後ろに類が立っている。「るい、、、。」「ん。 ただいま。 大事な時に傍に居ら...

  • 143

    お通夜、葬儀、共につくしは親族末席に居た。会社関係が多くを占める弔問客の中で、杖を突き他の使用人と共に来たタマ、華道の西園寺流山岸師範、そして佳代の姿が分かり、つくしは頭を下げた。もちろんその人たちも、つくしの憔悴した姿を見て、手を取り励ましの言葉をかけた。皆が涙を流す中、つくしは気丈にも泣く事はなくお礼の言葉を告げた。荼毘に付される間、信夫たちは食事をしていたが、つくしはとても食べる気にはなれず...

  • 142

    類の元に連絡があったのは、昼を過ぎた頃だった。しかも連絡をしたのは麗だ。その時点で類は嫌な予感がした。『類君。 つくしちゃんのお婆さんが今朝亡くなられたの。』やっぱり、、、と言う思いと同時に、牧野の事が心配になる。だが今は動けない。『お通夜は明日土曜日の18時。 葬儀告別式は日曜日の11時からよ。喪主は長男の信夫。 篠田産業社長の母親の葬儀となるからそれなりに大きなものになるんじゃないかしら?それ...

  • 16

    類とつくしは、両親と牧野家の三人との式を挙げた。それは愛が爆発して二週間後の事だ。そしてその翌日、大学で三人に報告する。それには三人も驚いた。「はあ? 入籍した? しかも結婚式も挙げた?」「ん。 だってお腹が大きくなるまでにやっておきたかったし。」「だったら子供が生まれてから式を挙げても良かったんじゃね?」「それも良いんだけど他の人につくしのウエディングドレスを見られたくないから。 俺だけの目に焼...

  • 141

    金曜日。類は早朝に葉山を出る。そのまま空港へ向かい北海道へ行く為だ。もちろんスーツ姿。今日はオープン日。本当なら昨日のうちに現地入りしたいところだったが、まだ学生の身でどうしても外せない講義があると主張し、当日の朝一の便で行く事にした。多少遅れるがまだ本格的に仕事に携わっていないし許容範囲だと思っている。もちろんオープンに合わせ主要関係者が揃う為、顔を売り込むチャンスだし、その後の慰労会にも参加す...

  • 15

    類とつくしと共に聡と麗も日本へ一時帰国し、その足で牧野家へ向かった。そして晴男と千恵子、進を前に両手を着き謝罪した。「この度は、うちの愚息が大変な事をしてしまい申し訳ありません。 きちんと責任を取らせていただきます。 出来ればすぐにでも入籍、結婚を御了承ください。」思いもよらぬ申し出に、牧野家は暫し固まる。てっきり楓のようにお金で肩を付けられると思っていたからだ。「頭を上げてください。 本当にうち...

  • 140

    食後、病室へ戻る二人だが、つくしが立ち止まりスマホを見始めた。類も画面を覗くと、葉山の家の防犯カメラ映像だ。今まさに伯父が物色している。金目のものは現金に替えておくと言っていたが、その言葉通り次々と玄関へ運んでいる。「今から止めてこようか?」「ううん。 何時かはこうなると思っていたし、おばあちゃんも物がなくなったことに気づかないと思うから。」今は祖母のタンスを漁っている。その上部にある宝石箱のよう...

  • 14

  • 139

    日曜日。類は北海道から戻るとその足で鎌倉病院へ向かう。総二郎から電話があったのは金曜日の夜の事。『牧野のお婆さんが入院した。偶然大学を出たところで見つけ、病院まで連れて行った。とりあえず容態は安定してる。最近食事が少ししかとれなかったらしくて、脱水症状もありしばらく様子を見るらしい。俺も土日は茶会でついてやれねぇし、あきらも四国に行ってるんだ。牧野は気丈に振る舞ってるけど、東京に戻ったらすぐ行って...

  • 13

    「「「司、、、」」」司はまっすぐ類を射抜くように見つめている。「お前、どうしてここに?」「そりゃぁ牧野に別れを告げられたからに決まってんだろ! 電話じゃ埒が明かねぇから直接話をしようと思ったんだよ。」「でも仕事だろ?」「あぁ。 急遽日本行きを入れたから時間としては30分しかねぇ。 それで牧野。 俺と別れる理由は何だ?」「類の事が好きだと気づいたから。」つくしはキッパリと告げる。回りくどい事は一切言...

  • 138

    6月末。類は北海道に居た。オープン間近になり商業施設には商品の搬入作業が始まっている。以前来たときはまだ土がむき出しだったが、今は綺麗に舗装されオープンを待つばかりとなった。その施設を一つ一つチェックする。北海道初出展の店もかなりあり目玉となっているが、それが道民に受け入れられるのかは分からない。だがとりあえず全てのテナントが埋まりホッとした。そして花壇にはハーブや花が植えられている。オープン時は...

  • 12

    翌日、類が大学に来た。それを見つけたあきらと総二郎は、拉致するようにラウンジへ連れて行った。「何?」「お前、一昨日の夜から牧野と一緒だったらしいな。」「まあね。」「牧野と付き合うことになったのか?」「情報が早いね。」やっぱり、、と二人は思う。「昨日、司から電話があったんだよ。 牧野が別れて欲しいと電話があったってな。」「そっか。」至って普通に答える類に、二人の気持ちはゆるぎない物と感じる。「何があ...

  • 137

    翌日、類は初江の様子を注意深く見ていた。以前と違うのは動作がゆっくりになった事と会話が極端に減った事だろうか?だが身だしなみはきちんとし化粧もしている。「つくし? そろそろご飯の時間? この人が待ってるよ。」つくしは一瞬困った表情をしたものの、すぐ笑顔で告げる。「さっき食べたでしょ? それにこの人は類! 類さんだよ?あっ、お饅頭があるから食べる?」「あるんだったらこの人に出してあげて?」「牧野! ...

  • 11

    18時ごろまで交わった二人。ゴロンと横になると、つくしは自然に類の胸に頭を摺り寄せ腕を腰に回す。類はつくしの頭を優しく撫でる。「これから牧野の両親にきちんと挨拶する。」「うん。 夜には類と一緒に行くと伝えてるから。」「ん。 その後、司に会いに行こう。」「うん。 電話で別れは告げたけど、きちんと面と向かって話さないとね。」「ん。 その足でフランスへ行こう。 俺の両親にもきちんと挨拶する必要があるから...

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