※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
「将来花沢物産を継いで社長になる予定。」「社長、、、嘘でしょ~~~!!!」(つ:社長?花沢物産って大会社だよ?そこの社長になる人?)つくしは驚きすぎて口をパクパクする。声が出ない為だ。「ちなみに俺は道明寺司だ。道明寺ホールディングスの後継者。」「俺は美作あきら。美作商事の後継者。よろしく!」次々紹介され、つくしは目を丸くするばかりだ。(つ:嘘でしょ?なんで御曹司ばかりがここに居るの?おかしいでしょ...
類の部屋に、司、あきら、総二郎、類が揃い、その前でつくしは呆けている。(つ:何?この人たち。イケメン揃いじゃない?しかもみんな高身長。これだけ見ればホストクラブじゃない?あっ、本物のホストが一人いるけど。それにあの人はメープルで見た人じゃない?つまりあの人も親友なんでしょ?一体何がどうなっているの?)あれから司があきらと総二郎に電話をかけ集合させた。司としては自分を暴力団系と思われた事は腹立たしい...
それからつくしがひたすら誤解していた事を謝った。もちろん類としては笑い転げる事に。ただきちんと『女性が苦手だったのは事実だけどゲイではない』と告げた。そして食事も終わり、車でマンションへ向かった。その間も楽しい時間が過ぎる。車窓から見るイルミネーションは綺麗だし、ツリーが見えたりもする。「あっ!あのツリーはごちゃごちゃ系ですね。」「ほんとだ。今度改めて他のツリーを見に行こうか?」「そうですね。是非...
喉を潤し料理を口に入れながら類は考える。(類:牧野が総二郎を好きじゃないことは分かった。じゃあなんで前回外食した時、総二郎と女性を見てショックを受けていたんだ? あれを見て牧野は総二郎の事が好きだと確信したんだけど?)「あのさ。前回、総二郎達と遭遇した時に、牧野は辛そうな表情をしているように見えたんだけど。」「それは、、、」(つ:デリケートな部分だけど話していいのかな?でもここは個室だし他人に聞か...
創作料理店の個室に案内されると、つくしはメニューに目を通す。比較的安価で美味しそうな料理が並んでいる。「色々な物を頼んでシェアしようか?」「はい。」二人で料理を決めるとタッチパネルで注文する。そしてビールとウーロン茶が到着したところで、類が尋ねた。「今日、総二郎と出かけたんだろ?」「はい。とても美味しい信玄餅とお団子のお店に連れて行ってもらいました。」(類:総二郎らしい店のチョイスだな。)(つ:店...
ポツンと店に残された総二郎。とりあえず類に報告を、、とメールを送った。《牧野さんと会って話をしたんだが、どうも噛み合わねぇ。しかも俺の事は好きでもなんでもねぇと言われたんだが? それと俺は探偵じゃねぇと話したら何故かホストをやっていると思われた。 否定する前にサッと帰って行ったんだが少なくとも俺はホストじゃねぇと否定しといてくれよな。》(総:何をどうとらえたら俺がホストに見えるんだ?まあ女遊びが激...
2024年 類くんお誕生日チャット会のお知らせ本年の類誕イベントは、都合により開催することが難しくなりました。楽しみにしていて下さった皆様、大変申し訳ございません。その代わりと致しまして、team Rui主催のお誕生日チャット会を開催したいと思います。開催期間:3月29日 21時~ 3月30日 23時59分開催場所:LINE オープンチャット(開催時間まではパスワードがかかっております)メンバーと一緒に、ワイ...
総二郎が口を開いた時、その総二郎に声をかける人がいた。「あらっ?若じゃないですか?」「「えっ?」」(総:げっ!なんでここに師範代夫人がいるんだよ。かったりぃけど挨拶だけはしておかねぇとな。)(つ:今、、若って言った?)「ご無沙汰しています。」「えぇ、ご無沙汰です。それにしても若がこんな可愛らしい方とご一緒だなんて、、もしかして。」夫人はチラリとつくしを見る。(総:誤解すんじゃねぇ。全く関係ねぇから...
甘味処に入ると奥の席へと案内される。カウンターや小さなテーブルなどが並ぶ中、一番大きな席だ。店内は既に満席で、あらかじめ予約を入れていたと分かる。(つ:やる事が凄くスマート。話術も上手い。もしかしてホストって事は無いよね?)「ここの信玄餅は有名なんだ。それとお団子もな。それで良いか?」「はい。」総二郎はサッと注文をする。するとすぐに運ばれてきた。お団子は目の前で焼くようで小さな七輪のような物が置か...
類が帰宅すると、いつものようにつくしの明るい声が聞こえる。「ただいま。」「お帰りなさい。」類はリビングへ入るとジャンバーを脱ぐ。(つ:出かけて行った時の服装と同じ。どこかで着替えているんだよね?)「寒かったですよね?今日はチーズフォンヂュにしてみました。」「へぇ。」類はテーブルを見る。そこにはホットプレートがある。「ホットプレートで?」「はい。ホットプレートの真ん中に耐熱容器に入ったチーズを置くん...
つくしは仕事へ行こうと身支度をしていると店長から電話があった。「はい、牧野です。」『牧野さん。悪いんだけど今日は臨時休業することになったから休みで。』「えっ?」『コンロの故障で修理に時間がかかるらしい。だから今日は店を開けられないから。』「分かりました。」『今日中に修理をしてもらい明日はオープンできるようにするから。突然ですまない。』「いえ。まだ自宅なので大丈夫です。では明日伺います。」『本当にす...
※類君の発言を分かりやすくするため少し太字にしています。それぞれの心の葛藤をお楽しみくださいませ。類は寝る前に総二郎へ電話をかけた。もちろんアレの最中なら電話に出ないと思うが、何度でもかけるつもりでいた。すると数コールで総二郎が電話に出た。『はい。』「総二郎。お前、案外早いんだな。」(類:もう終わった?あれからホテルへ行ってシャワーを浴びて、、と考えると1時間も経っていないんじゃない?)つくしはなか...
レストランを出ると類はサッとつくしの手を握る。途端つくしは動揺する。「えっ?」「今だけで良いから握らせて?」(つ:類さんがあたしの手を握った?それだけ総二郎さんの行動にショックを受け、誰でも良いから縋りたいんだ。あたしで良ければ何時でも幾らでも遠慮なくどうぞ。)(類:かなりショックを受けているだろうな。総二郎の代りになるとは思えないけど、震えを止めるぐらいはできないかな?俺なら何時でも幾らでも繋い...
総二郎の声に類とつくしはサッと入り口を見る。(類:えっ!!)(つ:何でここに総二郎さんが?)つくしはサッと視線を類に戻す。そこには驚きの表情で総二郎を見つめている類がいる。(つ:かなりショックを受けてる。それに類さんがこんなに驚いているという事は相手の女性は知らない人という事。つまり会社のスタッフではない。)つくしはサッと顔を下げる。(つ:以前あたしが見た女性も浮気相手かもしれない。類さん、、、大...
「じゃあ今夜19時に。」「はい。」「遅くなるようならメール入れるから。」「はい。」こうして類は仕事へ向かった。つくしは急いで家事を熟し仕事へ向かう。オフホワイトのハーフコートの下は明るいグレーのセーターに紺のズボンだ。昨夜、何度も服を体に合わせ悩みに悩んで決めた物だ。元々服はかなり少ないがそれ以前にスカートが無い。動きやすい服=ズボンというイメージだし、そのズボンも冬物は一着しかない。後はジーパン...
「ただいま」「お帰りなさい。すぐ夕食にしますね。」「ありがとう。」類はジャケットを脱ぐと手を洗いつくしの手伝いをする。そして二人向かい合って食卓に着いた。「今日は白菜が安かったのでお鍋にしました。色んな食材が食べられるしお酒にも合うと思うので。」「だから日本酒なんだ。」机には日本酒が置かれている。(類:わざわざ日本酒を買ってくれたんだ。だから昨日日本酒は飲めるか確認されたのか。確かにこの料理には日...
更に一か月が経った。類は総二郎に何も言えず悩んでいた。(類:総二郎に牧野の恋心を告げるべきか?だが総二郎が牧野の事を好きとは到底思えない。現に面白がって同棲生活を聞くことはあっても牧野の事を聞くことはない。しかも今も女性と遊び歩いている。気になるなら女性関係には気を付けるはずだ。それに牧野の気持ちを俺が話すのはおかしい。頼まれたわけでもないんだから。何より俺自身が二人の橋渡しをする事を躊躇っている...
「類さんの探偵社には女性の探偵さんもいますか?」(類:初めて俺の仕事について聞いてきた。そろそろ怪しいと思い始めたかな? ここはどう返事する? 本当の職業を話す良いキッカケなんじゃない?)(つ:あっ、類さんが訝しがってる。 これってあたしが類さんに興味があるように思われてるんじゃ? もちろん興味はあるけどそれは契約違反だよね? って事は総二郎さんの事を確認するのは大丈夫かな? でももし女性の探偵さ...
つくしが仕事を始めて一か月が経った。仕事にもだいぶ慣れ疲れもそれほどなくなってきた。そして昨日、初給料がもらえた。もちろん満額ではないが自分が自由に使えるお金だ。しかも今日は仕事が休みの為、早速買い物へ行こうと思っている。「類さん。今日は買い物へ行ってきますね。ジャンバーかコートを見てきます。」「ん。もっと早く買えばいいのに。朝晩は寒いだろ?」(類:頑なに買おうとしなかったんだよな。電車の中は温か...
「類さん。明日から仕事へ行きますね。」「えっ?」類は箸で摘まんでいたジャガイモをポロリと落とす。それぐらい突然だった。(類:仕事?確かに看病が無くなったんだから全然構わないんだけどあまりにも突然すぎる。それにもう少しゆっくりしていいんじゃない?まだ母親が亡くなって二週間しか経っていないだろ?)「見舞いに行かなくなったので時間があるんです。それにここに住まわせてもらっているのに何もお返し出来ません。...
マンションに戻った二人。類はすぐに後飾り祭壇を組み立てる。「ここで良いよな?」「すみません。」つくしはその中央に骨壺を置き、ロウソクと線香を立てる。そして二人は手を合わす。「いろいろありがとうございました。あのっ、葬儀代とか病院の清算とかいくらでしたか?」「あぁ。それは俺が出すから良いよ。」(つ:えっ! かなりの金額になったはず。 お坊さんの手配もしてもらったし棺に入れるお花も大量にあった。)「そ...
同棲生活は順調に進む。類は車の中でスーツに着替え、帰宅する時も車の中で私服に着替える。つくしは家事を熟しながら毎日病院へ見舞いに行く。そして二か月ほど経った頃、突然その日が訪れた。夜中につくしのスマホが鳴り始めた。つくしは腕を伸ばしサッとスマホを取り相手を見る。そこには千恵子が入院している病院が表示されている。「はい。牧野です。」『千恵子さんの娘さんの携帯でしょうか?』「はい。」『実は千恵子さんが...
日曜日類が目を覚ますと既につくしは病院へ行っていた。そして机の上にはメモが置かれていた。《おはようございます。病院へ行ってきます。17時ごろ帰宅予定です。》綺麗に片づけられたキッチン。ベランダには洗濯物が見える。(類:洗濯も終わってる。いつの間に?牧野もいないし今のうちに仕事の続きをやっておこうか。)類はコーヒーを煎れるとパソコンをリビングへ持ってきて仕事を始める。そして昼を過ぎた頃、ふと手を止めベ...
病院からの帰りに二人は少し遅いランチを取るためにうどん店へ入った。セルフサービスのうどん店の為、出来上がりが早い。その割にもちもちしていて美味しい。しかも安い。「安いけど美味しい。」「類さんはこういう店は初めてですか?」「セルフは初めて。気にはなっていたんだけどね。」(類:田村と出かけた時に気にはなっていたんだけど、スルーしてしまっていたんだよな。)「注文の仕方とか分からなくてさ。」「分かります!...
週末、類はマンションへ向かった。「ごめん。母親が変な事を言い出して。」「とんでもないです。あたしの方こそ上手く伝えられたかどうか不安で。でもあたしと類さんの関係を疑ってはいないという事ですよね?」「そうなる。」(つ:あっ、はしゃいだ言い方になったかな?類さんとしては総二郎さんに誤解を与える事になるから同棲は断固として嫌だったはずなのに。)(類:確かに俺達が恋人同士だと疑ってはいないけど、牧野が俺と...
麗はニコッと笑った後、再び質問する。「探偵業という事に関してはどう思われてる?」「不確かな収入だと思いますし、体が資本だと思います。私も今は類さんに甘えていますが、母親の事が終わりましたら働きます。決して類さんだけに負担を負わせません。もちろん家事は好きで苦ではありません。贅沢な料理は作れませんが仕事に邁進してもらえるよう頑張ります。突然の事でお母様にはご心配をおかけしていますが、どうぞ温かく見守...
「あらっ?」(つ:しまった~~~!写真を立てかけたままだった!結婚していると思われたよね?結婚したことにする?いや、それは逆効果。勝手な行動は親子の信頼関係を失うはず。じゃあどうする?どうする?どうする~~?)(麗:そうそう。この写真の事も確認したかったのよ。 ちょうどよかったわ。)「結婚? したのかしら?」(つ:怒ってる!確実に怒ってるよね。かなり低い声になってる!そりゃぁ母親に報告することなく...
麗につくしをマンションに住まわせていると話をしてから既に3週間が経った。その間も類は週末にはマンションで過ごしていた。「まだ母さんは来ていない?」「うん。まだ来られていない。」(類:忙しいと言っていたけど本当に忙しかったんだ。でなければすぐにでも顔を見に来るはず。それだけ関心が高いと思ったんだけど違ったか?)「もしかしたらあたしが病院に行っている時に来られたのかも?」「かもしれないな。まっ、考えて...
類が自宅に帰ると、待ってましたとばかり麗が話しかけた。「デートしてきたんでしょ?」「ん。まあ。」(類:関心が高いな。まあ相手が気になって仕方ないんだろうけど。)「どこでデートしたの?映画?」(麗:まさか一日中マンションに籠っていた訳じゃないわよね?)「いや?買い物、、、」(麗:何かをプレゼントしたのかしら?それって物で彼女の心を繋ぎとめている事にならない?)(類:夕食の材料を買っただけだけどね。で...
日曜日。つくしは類を起こさないようソッと部屋を出る。するとマンションの入り口で総二郎とバッタリ会った。「あっ、牧野さん。今から病院?」「はい。」総二郎は和装だ。その姿につくしは思わず魅入ってしまう。「総二郎さん。その格好は?」(総:あっ、やべぇ。探偵だったな。)「潜入の為にちょっとな。」「そうなんですか。」(総:俺もまだまだだな。この姿を見ても茶道に結びつかないし西門流が認知されてねぇ証拠だ。)(...
土曜日になり類はマンションへ向かった。《明日は9時には病院へ向かいます。買い物をして16時頃に帰宅予定です。》昨夜のメール通り、マンション内につくしの姿はない。室内は綺麗に掃除されベランダには洗濯物が干されている。(類:几帳面な女性なんだろうな。それに俺の睡眠を邪魔しないため早々に見舞いに行ったんだろう。帰宅時間を書いたのは、音を立てるかもしれないからだろう。探偵という偽りの職業を言ったせいで寝不足...
水曜日の夜。あきらから電話があった。『類。今大丈夫か?』「ん。家だから。」『じゃあ大丈夫だな。山尾拓海の件なんだが、名前も偽名だ。本名は萩原信二。33歳。現在の仕事はコンビニアルバイト。既に別の女性と付き合っている。その全てがマッチングアプリだ。付き合っている間に女性に貢がせて結婚話が出始める頃に一方的に別れてるみてぇだ。電話も女性が変わる度に替えているみてぇで、別れると同時に音信不通になる。もち...
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※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
5月2日類とつくしは予定通り埼玉県秩父の羊山公園へ向かった。GW期間中で多少混んでいるが、それでもまだマシなようでスイスイと進むことが出来た。そして目的地に到着した二人は唖然とした。「芝桜が、、、ほとんど散ってる?」「みたいだな。でも少しは残っているんじゃない?」昨日の大雨により花が散ったようだ。「すみません。まさかこんな事になっているとは、、、」「自然が相手だから仕方ないと思う。でもほらっ、入園料...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...
季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...
月曜日類は6時に起きる。何時もは6時半に起きるところを朝食をとるために30分も早く起きた自分に苦笑する。一階に降りると既に朝食が食卓に用意されていた。それは昨夜の事。『明日は何時に仕事に行かれますか?」』『7時過ぎ。』『では6時頃に起きられますよね?朝食は洋食で良いですか?いつもはコーヒーだけと言っていたので。』起きられますよね?と疑問形ながら決定事項だった。三食食べさせるという義務を背負っているか...
スーパーに到着した二人。つくしはすぐにカートを手に取る。「俺が押すから。」「ありがとうございます。」つくしはカートを類に託すと店中に入った。入ると直ぐに野菜コーナーだ。その中で本日のお買い得品をチェックする。「ジャガイモが安い。肉じゃがにしようかな。」肉コーナーへ行ってもお買い得品をチェックする。「スペアリブが安い。買っておこう。」魚コーナーも同じように本日の目玉を注目している。類にしてみればそれ...
日曜日つくしはスッキリと目覚めることが出来た。外はまだ薄暗い。急いで布団を畳むと部屋の隅に置く。そして静かに階段を降り顔を洗うと洗濯機のスイッチを押す。洗濯機が回っている間に朝食の準備に取り掛かる。と言ってもサラダとスクランブルエッグとパンにヨーグルトという簡単な物だ。準備を終えると時計を見る。時刻はまだ7時前。勝手口から外に出ると明るくなり始め周囲の様子が伺える。東京都内だというのにシーンとし物...
「夕食が出来ましたよ~。」その声にリビングからダイニングテーブルへ移動する。そこには魚料理を中心にした和食が用意されていた。「お口に合うか分からないですけど、EDを治すには食事も大切らしいんです。特に高脂肪、高塩分はダメなんです。今まで外食で済まされていたようですが、まさにダメダメ食事だったみたいです。」「そうなんだ。」確かに外食は高カロリー、高塩分にまちがいないだろうけど、そもそもEDじゃないんだよ...