※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
沈黙が流れる中、シリウスが息を吐いた。「アーサーには改めて感謝する。 これで王妃と宰相の内情は分かった。 結婚前から愛情があったとしても、兄上が二人の子供だったとしても、それでも陛下を殺そうと画策した事は許される事ではない。 しかも兄上を出産後も宰相との関係を続け三人も妊娠し内密に堕胎している。 これは決してあってはならない事だ。 その上、兄上が愛してやまないビアンカにも危害を加えようとしている。...
食後、類は与えられた部屋でシャワーを浴びた。そこには小さなバスタブも有りお湯を張る事も出来る。(類:元の世界と何ら遜色も無い。 部屋もスイッチ一つで電気がつく。 便利な生活の裏ではドロドロとした王位争い。 しかも身内が暗躍している。 大変だな。 元の世界でもスパイが暗躍したりランサムウエアを仕込まれ情報を抜かれたりいろいろだけど、それでも親族間での暗殺行為はない。 シリウスもこの先心許せる相手とは...
類とつくしと侍女は薬師の元へ向かった。室内には乾燥中の薬草がぶら下げられている。それにパッと目を通すが毒を持っている物はなさそうだ。「これはマキノ様。」「どうですか? 傷薬は作れていますか?」「はい。 ご指摘いただいた通りの分量で作っています。 今までと粘り気が違うのに驚かされています。」つくしは製造途中の傷薬を見る。すぐに分量が目の前に表示され、それは自分が作っていた物と変わりない事にホッとする...
類はスッと歩を進め、「失礼します。」と言いながらつくしの頭上を手で払う。(つ:何? 何をやってるの?)「何をしているのです!」王妃の苛立つ声が室内に響き、類はサッと直立し告げる。「上から大きな埃が落ちてくるのが見えましたので払っておりました。」つくしはハッと手元のカップを見る。確かに大きな埃が浮かんでいる。(つ:いつの間に? どうやって入れたの?)つくしが驚きを見せる中、類は平然と告げる。「王妃様...
つくしの部屋では、いつの間にか類を中心に作戦会議が始まっている。「まず王妃の周辺を洗い出す必要がある。 既にやっていると思うけど手こずっているんじゃない?」「そうだ。 医師が毎日診察をし薬を手配しているが、医師、薬師、付き添いの侍女の誰が毒を手配しているのか分からない。 王妃は草花に詳しいが王宮内で自分で薬を作っているとは思えない。 薬師の素性を調べたが王妃の血縁者はいなかった。」「だろうな。 つ...
つくしの私室のテーブルに四人が着く。ブランシュ騎士団長はシリウスの背後で立っていたのだが、それだと話しを聞き漏らす可能性があるという事で席に着かせた。「まずシリウス殿下に改めてお礼を言わせてください。 類を王宮に、あたしの元に連れて来てくれてありがとうございます。」「お礼を言われるほどではないし、すぐに村へ帰すと約束したのを破ったのは私だからな。 これは折衷案という事にしておこう。」「それでも嬉し...
二人掛けの丸テーブルへ移動したつくしとビアンカ。そのビアンカの姿を見た時につくしの頭にピコンと情報が入る。(つ:ポリタギリス? 避妊に効くけど飲み続けると子供が出来ない体になる? どういう事?)つくしは困惑しながらもまずは会話を試みる事にする。侍女が紅茶とクッキーをテーブルの上に置き少し離れたところで待機したところでビアンカが話し始めた。「マキノ様を誤解していました。 殿下から側室の話を聞いた時、...
類の言葉にシリウスは納得するものがある。ずっと兄を支えようと思っていた。自分が王位を目指せば貴族は二手に分かれ国は混乱する。それを避けたかったが、既に父上は毒殺されかけ自分もドラゴン討伐という命の危険にさらされた。全て兄上の周囲の者達が起こしている。兄上が王位に就けばその人達が大手を振って更に好き勝手する事が目に見えている。シリウスはギュッと拳を握る。「確かにその通りだ。 今まで兄上が王位につき私...
シリウスとつくしは陛下の部屋を出た後、リチャードの側近に呼び止められた。「マキノ様。 ここにおられましたか。」「はい。 陛下の病状が少しでも改善できないかと薬草茶を作ったのですが、あまり召し上がられませんでした。 治癒魔法も効果が無く力不足を感じていたところです。」シリウスの手にはバスケットがある。不自然にならないよう答えたつもりだ。「そうですか。 あまりお気を落とされませぬように。 怪我を治癒す...
訓練場は静まり返っている。そんな中、騎士団長は威圧感タップリの声を発した。「行くぞ。」「はい。」類は初めて手にする木剣をギュッと握る。剣を模した木製の剣は滑りやすい。視線は騎士団長に向けたまま膝を曲げ何時でも飛び込める体勢を取る。互いに見合ったまま数分が立ったところで、二人は同時に飛び込んだ。ガキッ木と木が激しくぶつかった音が響く中、二人は一歩も引かず睨み合っている。(類:重い。 一瞬でも間合いが...
類は昼前に王都の門に到着した。そこには衛兵がおり、通行証と荷物をチェックしている。(類:隣国からの間者を王都に入れないというつもりだろうが、通行証などいくらでも偽造できる。 俺のように付き添いでも中に入れるんだからザルだ。 それよりも身分階級を意識づける意味合いが大きいような気がする。 農民と王都民との違いを分からせるような? それにここに来てやたら人の声が耳に入ってくる。 元々よく聞こえていたが...
シリウスはつくしと部屋に入る。部屋には侍女も待機しており二人っきりではない。「遅い時間になったな。 申し訳ない。」「とんでもないです。 思ったんですけどリチャード殿下は何も知らないようですね。」「あぁ、私もそう感じた。 その点はホッとしている。」(つ:そりゃぁ兄として信頼しているもんね。 陛下を亡き者にしようとしている人達に加担していたらやりきれないよ。)「明日の朝から薬草園へ行きたいので薬師の手...
陛下はクックッと笑った後、シリウスに視線を向ける。「振られたぞ?」「元々、恋愛感情はありません。」シリウスは即座に答える。「そう言う事にしておこう。 それで私に毒を盛ったであろう人物には一人だけ心当たりがある。 王妃であるカサンドラだ。」「えっ!」シリウスと近衛騎士達は驚く。(つ:何となくそんな気がした。 リチャード殿下を王様にしたいという理由なんだろうけど、それならシリウス殿下を殺害しない? な...
類は町と王都の中間付近にある街に到着し、商会が経営している宿に泊まった。一階には荷馬車を置く場所があり、馬も馬舎で休ませることができる。何より建物の門を閉ざしてくれる為、荷物の見張りをする事が無くゆっくり休める。類とヘンリーは宿屋の食堂で食事を済ませると部屋へ上がる。そこにはシャワーはもちろんタオルまで備わっていた。「これ、、、」「あぁ、タオルを見るのは初めてか? 凄く良いんだよ。 布とは違って水...
つくしが目覚めると、すぐに食事が運ばれた。スープにサンドイッチと果物だ。「どれぐらい寝ていましたか?」「3時間ほどでしょうか? 少しでもお召し上がりくださいませ。」「ありがとうございます。」つくしは遠慮なく頂く。とにかくお腹が空いている。そしてスープとサンドイッチを完食し、果物に手を伸ばした頃にシリウスが入ってきた。「体の調子はどうだ?」「だいぶマシです。」「それは良かった。 食べながらでいいから...
つくしはぐるりと周囲を見渡す。まだまだ怪我人が横たわっている。それを見て見ぬふりは出来ない。「あの。 他の方達の治療は?」「あぁ、もう良い。 薬を塗っておけばそのうち治るだろう。」「えっ? でも、、、」宰相の言葉につくしは戸惑う。(つ:確かに軽い怪我の人はそれで良いけど、明らかに深い傷を負った人もいる。 あたしは不思議な力が少し使えるだけだけど、それでもこの人たちを見て見ぬふりは出来ない。)つくし...
類は早朝からずっと走り続けた。それは同行しているハンターも同じだ。途中、小川で水を飲んだものの食事はしていない。とりあえず危険な森を抜ける事だけを考えていた。だが魔物とは一度も遭遇しなかった。「こんな事は今までで初めてだ。」「あぁ。 ハギ―の一匹も出なかったな。」そう告げるハンター達だがスムーズに森を抜ける事が出来て安堵していた。ただ町は至る所に魔物の爪痕があり建物が崩れている場所が多数あった。「...
翌朝、つくしは白いストンとした足首までの長さのワンピースが用意され、それを着た。(つ:なんだかんだで第二王子はきちんと話を聞いてくれる人のようで良かった。 でもこれって小説で言う所の聖女様が着る服なんじゃない? まあ昨日のドレスよりはマシかな? それよりも類は眠れただろうか? 今日には帰れると良いんだけど。)侍女に促され朝食会場へ行くと、そこにはリチャード第一王子とシリウス第二王子が着席していた。...
第一王子の近衛騎士と魔法師はデイジー村に転移魔法で訪れた。そしてギルド商会へ向かう。「こちらにマキノの夫がいるはずだが、家はどこだ?」「マキノの夫ですか? 彼なら私たちの制止を無視してマキノを追いかけるように森へ入りました。」「森へ?」「えぇ。 マキノとの同行を拒まれましたが、どうしても心配だと言ってね。 私たちが止めるのも聞かず直ぐに森へ入りました。 ご存知の通りこの村から王都へ向かうには森を抜...
つくしの元にシリウス第二王子がやってきた。「待たせたな。 先ほどまで兄上と魔法師、騎士達との話し合いが行われていたんだが、マキノの提案した魔石の再利用に関しては魔法師に委ねた。 もちろんこれに関しては魔法師と魔道具師に頑張ってもらわなければならないからな。」つくしはホッとする。(つ:良かった。 あたしの意見に耳を傾けて貰った。)「ただ魔石についてはまだまだ必要だ。 あなたの住んでいる村まで魔道具が...
類がハンター達と共に村を出た後、商会長が村人に告げる。「あの状況でマキノをこの村に留めておくのは無理だった。 それにきっとマキノは帰してくれないだろう。 あれほど効能の高い薬を作れる人物だし、ドラゴンの傷すらも治せたんだからな。 そしてマキノの伴侶であるルイを殺しに来るだろう。 マキノがこの村に帰りたい理由は愛する夫がいるからだ。 その夫を殺せば後は好きに出来る。 それこそ王子の側室とかな。」「あ...
つくしは侍女に連れられて大きな扉の前まで歩く。侍女がドアをノックし開くと同時に、中の人達の視線が一斉につくしに集まった。「「「ほう、、、」」」何とも言えない声がした後、侍女に促されつくしは中に入った。両側には沢山の男性が並び立っている。その中にはドラゴン退治に来ていた騎士や魔法師の姿もある。そして前方には5段ほど登った先に立派な椅子に座った若い男性がいる。その隣には年配の男性が立っている。(つ:若...
魔法陣を抜けると、そこは綺麗な庭が見えた。その先に大きく綺麗な建物がある。背後は高い壁になっている。「どこ?」「王宮だ。」王子がそれだけ告げると直ぐに庭を抜け王宮内へ入り侍女を呼び指示を出す。つくしはボーと王宮内を見る。天井にはシャンデリアがありエントランスもものすごく広い。(つ:電気がある?)「マキノ。 この侍女について行け。」「えっ? 説明は?」「先に着替えてからだ。 その姿では謁見できない。...
ドラゴンが飛び立ち魔物が森へ帰り、村には騎士達や魔法師達と村人だけが残った。もちろんほとんどの人がつくしの行動を目にしている。騎士達の前に立っていた若い男性の姿に我に返った商会長がポツリと呟く。「第二王子殿下?」その一言で、若者がこの国の王子だと分かった。(類:王子? そんな人物に対し、牧野は普通の言葉で異論を唱えたが、これって不敬に当たらないか?)(つ:王子? そんな凄い人物がドラゴン退治に参加...
つくしはギルド商会の屋上から下を見ていた。数匹の中型の魔物と対峙しているハンターとカルロと類。その類の剣裁きは圧巻だ。スパッと硬い皮膚を切り裂いている。そして手こずっているハンターの元へ行くと、再び剣を振るっていた。そんな中、怪我を負うハンターもいる。「手当に向かいます。」つくしは黙ってみていられず屋上から一階へ降りる。そして傷薬や包帯等を持ち外に出た。腕や足に深手を負ったハンターは立ち上がる事が...
「もう。 寝坊したじゃない。」「ごめん。 ちょっと張り切り過ぎた。」つくしは起きてびっくりだ。既に太陽が高くなっていた。もちろん理由は分かっている。昨夜の甘いひと時が思いのほか長時間だったからだ。(つ:そりゃぁね、あたしだって嬉しかったよ? 二日目って事も有り最初っから痛みは無かったし、充分類を感じられたし、翻弄されたし、、、気持ち良かったし///。 でもちょっと張り切りすぎって違うでしょ? かなり...
朝食後、二人は傷薬と魔物除けのお香づくりを始める。「牧野。 こっちの薬草はこれくらいの乾燥で粉にしても良い?」「あっ/// うん///」「これはこのくらいで良い? もっと細かくする?」「もう少し細かくして?」「了解。」つくしはずっと椅子に座ったままで、類が薬草や道具を持ってきたりと動いている。というのも目覚めた時につくしの足に力が入らなかったからだ。「ごめん。 張り切り過ぎた。」と申し訳なさそうに、それ...
アレッタの店へ向かった二人。二人は照れた表情でアレッタに揃いの指輪を見せる。「もっと早く指輪を買うべきだったんですが。」「良かったねぇ。 良く似合ってるよ。」アレッタは魔物が襲ってくるかもしれないという情報に恐々した気持ちでいたが、類とつくしからお揃いの指輪を見せられホッコリした気分になる。「ドラゴン討伐が終わればどこかで結婚式をあげたいんですが。」「この村には教会の代りに十字架の塔が立っているだ...
商会から連絡があり、二人は急いでギルド商会へ向かった。「どうやら隣国は魔物一掃作戦に出たようだ。 というのも隣国では高ランクの魔物が村を襲ったらしい。 つまり魔物の数が増えた、或いはドラゴンが襲わせたと考えている。 当然、住処を失った魔物はこの国へ移動することになり、この国も討伐作戦に踏み切る事にしたそうだ。 ドラゴンが飛来した事で王都を攻撃する意思があると思われたみたいだな。」「という事はまだこ...
商会長が指で叩いた山は森の中心にある。当然山の麓は高ランクの魔物が住んでいるだろう。類は商会長に問う。「ドラゴンは普通どの辺を飛行しているんですか?」「山周辺だ。 森から出たことは無い。」「王宮付近からの情報は手に入りますか?」「あぁ、王宮付近の商会に確認できるがどうしてだ?」「これはあくまでも仮説ですが、この山は隣国と接しています。 ドラゴンを退治するために隣国が派兵し、それに怒ったドラゴンがこ...
「牧野の夢は叶った?」「えっ?」つくしはパッと顔をあげる。(つ:あたしの夢は半分叶ってると思う。 イケメンじゃなくても良いから優しくて頼りがいがあり自分だけを好きになってくれる人と田舎のような緑豊かな場所でのんびりと、、、だったから。 最初はイケメンすぎる類は単なる同士という考えだったけど、一緒に過ごすうちに類の良さをたくさん知った。 容姿だけじゃなく気遣ってくれるし優しいし物知りだし怪我をしても...
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※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
自宅に着いた二人。つくしはすぐに物干し竿を庭に置く。そして買い物袋を手に家の中へ入った。「すみません。予定していた時間をかなりオーバーしていますね。」「そう。だから心配になってさ。」類はそう告げながら、自分の行動がおかしい事に気づく。何で心配になった?単に使用人として一緒に住むだけの間柄。きちんとメモを残しているしスマホがあれば道に迷う事も無い。それなのに、、予定時間を30分過ぎたからと言って探しに...
昼食の後片付けをした後、つくしは掃除道具をチェックする。納戸がありその中に仕舞われていた。既に食事を終えた類はソファーで惰眠をむさぼっている為、掃除機は明日にすることにし風呂掃除へ取り掛かる。一人暮らしをしているにしてはかなり綺麗だ。しかもお風呂の掃除道具は納戸に仕舞われていた。つまりかなり几帳面な性格だと分かる。つくしが過ごしていた祖父母の家では、お風呂の掃除道具はお風呂の隅に置いていたからだ。...
スーパーで買い物を終えた後、つくしは自転車に乗り家へと向かって漕いでいたのだが途中から登り坂となり、自転車を降り押して歩く。「良い運動になりそう。」口から出るのはポジティブな言葉だ。無事自宅を出て一人暮らしではないが住む場所が見つかった。これで義母は文句を言わないだろうし、この先一人暮らしをする時もスムーズにいくだろう。それに兄が結婚し子供が生まれたら父や兄達もあたしに構うことはなくなるはず。やっ...
翌日、二番目の兄の徹が軽トラを手配し迎えに来た。そこに自転車と少量の荷物を乗せる。「これだけ?」「うん。断捨離していたらこれだけになって。」「お前なぁ。相手は花沢物産の御曹司だろ?服とか大丈夫か?」「うん。」「お金は持ってるか?何か必要なものがあれば花沢さんが買ってくれるとは思うけど万が一の為にも必要だろ?」徹は自分の財布を取り出し現金を手渡そうとする。それをつくしが止める。「大丈夫。あたしだって...
類は仕事を終え急いで指定された店に向かった。店内に入ると既に二人は始めており、ニヤリと笑みを浮かべた。「それで見合いはどうなった?」類は辟易とした表情で空いている席に座る。「どうもこうも、かなり心配された。」あきらと総二郎は大笑いを始める。嘘とはいえEDの御曹司は悲壮漂う哀れな男性として見合い相手に映ったと分かったからだ。「そう言うしかねぇよな。」「言葉では心配を口にし、心の中では驚きと躊躇いがせめ...
つくしは類の家から自宅に戻った後、すぐ父親に報告した。『花沢類さんの家に一緒に住む事になったので土曜日にこの家を出ます。』その報告に父親は一瞬間があった後、、『そうか。良かったな。』と突然の同棲宣言に戸惑いつつもホッとした返事があった。だが土曜日には用事があり引っ越しの手伝いが出来ないと言われ、代わりに二番目の兄の徹を寄越すと言われた。だったら自転車を持っていきたいのでトラックで来て貰えば助かると...
その夜、あきらと総二郎から電話があり報告は1月5日の初出の後でとなった。初出は忙しいと拒んだが二人が納得するはずもなく、類はこの経緯をどこまで話すべきか悩み数日を過ごした。まずは父親に牧野つくしという人物の事を確認してからだと思いながら。そして1月5日を迎えた。類は少し早めに出社し社長室へ向かった。すると父親に満面の笑みで迎えられた。「さっそく報告に来てくれたのか?」「そんなに良い報告ではないのです...
運転手は類が女性を伴い乗り込んだことに内心ビックリした。だが表情には出さずそのまま類の自宅へと車を発進させる。そうしながらも後ろの二人の会話を漏らさぬよう聞いていた。「一応東京都だけど周囲を山に囲まれてる場所だけど。」「はい。」揺るがないな。「駅まで徒歩30分だけど。」「自転車に乗れるので大丈夫です。」お嬢様が自転車で駅まで?「車は?」「免許はあるんですけど車は持ってないです。」免許は持っているんだ...
類は過去の失恋により恋愛が恐くなり、それを見かねた父親が見合いの席を用意したと判断する。「恋愛に否定的って事?失恋したとか?」「いいえ。恋愛をした事がありません。ただ家庭を持ちたくないだけです。」「なんでそこまで?でも恋愛ではなく政略結婚させられるかもしれないけどそれで良いの?」「いえ。きっと政略結婚も無いと思います。今回は父の気まぐれだと思っていますから。」きまぐれ?俺との見合いが?そんなにハー...
つくしは診断書を手に取る。そこにはED(勃起障害)と書かれている。「大学を出てからこの状態。だから誰とも付き合っていないし付き合おうとも思わない。何も知らない父親は色んな女性との会食の場を設けてくれるけど、そもそもこんな体では結婚は出来ない。相手にも失礼だからね。だからこの話は、、、」「ずっと一人で悩まれていたんですか?」つくしは類の続く言葉を遮り尋ねる。これはすごく大変なことだ。確か御曹司はまだ2...
1月3日。つくしは11時20分にメープルへ到着した。そしてフランス料理店へと向かうと入り口のボーイに告げた。「花沢様で予約している者ですが。」「伺っております。こちらへどうぞ。」つくしは緊張しながら歩く。メープルは父親の仕事の関係で何度か訪れた事はあるがそのどれも会議室だった。その為、高級レストランに緊張している。というのもドレスコードがあるからだ。そこまで厳しい物ではないが女性はワンピースやスー...
あきらは初めて他人に自分の気持ちを打ち明け、照れた表情を見せながら話す。「母親のマナー教室へ通っている女性なんだけど、いつの間にか妹達と仲良くなっててさ。俺に色々聞かせるから一度見てみようかと教室を覗いた時に妹に紹介されたんだけど、俺に取り入ろうとはしないし自分をアピールもしねぇ。単なるお兄さんという扱いでさ。マナー教室は美作の名前は一切出していねぇし、そこのオーナーが美作商事の社長夫人とも書いて...
類とつくしの会食の日取りが決まった。それは年明けの1月3日だ。聡はすぐに類に社内電話をかける。『類。1月3日にメープルで会食をするように。』「この前、話していた人?」『そうだ。』やっぱり、、と類は思う。あの時は相手が断る可能性があると示唆していたが、やはり断る事は無かった。つまり相手の女性も会食の相手が俺だと聞いて乗り気になったんだろう。「食事をするだけで良いんだよな?」『もちろんその後に気が合うな...
聡は本村と別れた後、すぐに類の執務室へ向かった。「何?」「まだ日程は決まっていないが会食へ行ってもらうことになるからそのつもりで。」「また?」類はあからさまに嫌そうな顔を見せる。「もちろん会食の場すら断られる可能性もあるがな。」「断られる?」類にしてみれば考えられない事だ。花沢物産御曹司との会食を断る女性がいるとは思えない。何時も俺が嫌がっているからそう言えば乗り気になると考えているとしたらお粗末...
12月末。花沢物産本社ビルに政治家の本村が秘書二人を引き連れやってきた。そして会議室で社長の聡と面会した。「こんにちは。いつもお世話になっています。」「こちらこそお世話になっています。」二人は固い握手を交わす。「今回の選挙も無事当選できました。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」「いえ、こちらは大したことはしておりません。」二人はどっしりとソファーに腰を下ろす。「かねてより伺っていました道路拡張工事...
結婚式類は緊張の面持ちでつくしが入ってくるのを待っていた。参列席には類とつくしの家族その後ろにあきら、総二郎、桜子夫妻、滋が座っている。するとドアがバンッと開き、司が入ってきた。皆はつくしが入ってくると思っていた為、驚く。「お前なぁ。来るならもう少し早く来いよ。」「悪りぃ。さっき着いたばかりで、これでも車を飛ばしてきたんだぜ。」「こっち来いよ。」あきらと総二郎は司を自分たちの真ん中に座らせると、類...
類とつくしは結婚式の為、東京へ向かった。そして挙式前日には、花沢家の好意でつくしは家族水入らずでホテルで一泊することになった。久しぶりの再会に、つくしは晴男、千恵子、そして進と順にハグをする。「つくし、おめでとう。」「元気そうで良かったわ。」「まさか姉ちゃんが花沢さんと結婚するとは思わなかった。」「それはあたし自身が思ってること。人生何があるか分からないね。」三人はつくしが一段と綺麗になり笑顔でい...
夕食は楽しい物となった。久しぶりの豪華なディナーにつくしは舌鼓を打つ。「美味しい。それにやっと生野菜が食べられます。」「そういえば向こうでの食事はどういう物だったの?」「ヤム芋を蒸した物を潰してマッシュポテトにしたり、おかずは缶詰が多かったです。でも類さんがカップ麺を持ってきてくれてそれはそれは凄く美味しくて。」「日本では塩分が高いとか良いイメージを持たれないカップ麺も、ナイジェリアでは貴重な物だ...
『今、幸せ?』の作品に沢山のコメントありがとうございました。期間が短く最後まで読めなかった方からもう一度公開を望む声がありました。また最後まで読まれた方からも、もう一度読み返したいというお声も多数ありました。一度きりの公開と決めていましたが少し考えますね。今日も石川県で大きな地震があり、何時どこで起きるか分からない状況。物価が上がり、食材も信じられない価格になり、今月から電気代も上がるとか。「やっ...
司と楓の会談から一週間後、キャサリンの陣痛が始まった。司は仕事中だったが急いで病院へ駆けつける。そこにはキャサリンの母親もいた。『そろそろですね。』『司さんも待ち遠しいでしょう?』『はい。どちらが生まれるか楽しみです。』司はドキドキしていた。子供が生まれる事でやっと白黒つけられると思っているからだ。《どちらが生まれるか楽しみ》というのは、自分の子供かそうでないかという意味で言っている。もちろん母親...