信じていないわけじゃない。 鱗滝君は浮気なんてする男子じゃない。 そうは思うものの、自分と貞子を比べてみたら、女子力と言う意味では完全に負けているし、年齢だって男性は年下が好きだとよく聞くから、2歳下の彼女には負けている気がする。
ノマカプのオリジナルとAPH(ヘタリア)のギルアサ、アンアサの二次創作BL小説のサイトです。
5年間ほどPixivで書き続けていた小説を移行しつつ、毎日1P分くらいの更新を続けています。 ゆえに…記事の数だけは多いです(*゜―゜)b 今現在1000記事以上っ!
信じていないわけじゃない。 鱗滝君は浮気なんてする男子じゃない。 そうは思うものの、自分と貞子を比べてみたら、女子力と言う意味では完全に負けているし、年齢だって男性は年下が好きだとよく聞くから、2歳下の彼女には負けている気がする。
その日も朝に貞子と一緒にお菓子を食べながらお茶を飲んでいた。 色々おしゃべりをするその中で、義勇が中等部の入学式での錆兎との出会いの延長線上で、その時に借りたハンカチを今でも大切に持っているという話をしたら、いつもは笑顔の貞子が、少し戸惑ったような顔で、あっ…と小さくつぶやいた。
──鱗滝先輩って、本当に冨岡先輩のこと好きなんですね 義勇は今日も貞子と朝のお茶会中だ。 最近恒例となったそれは、誰にも内緒の秘密のお茶会。
──鱗滝先輩、報告と確認を少しだけ…。間違ってまたもめるの嫌なので。 貞子は今日も少しだけ報告と相談をしたい、本当に5分だけで良いから、と、剣道部の部活後の鱗滝先輩を直撃して、時間をとってもらう。
また失敗したっ!! 鱗滝先輩略奪計画があまりにうまくいかなくて、貞子は少し苛々してきた。
──あのさ…錆兎はあんま貞子ちゃんに近寄らない方がいいんじゃないかな… 貞子と炭治郎、カナヲを含む6人で貞子の今後の話し合いを終えて、小等部組を返したあと、今後の対応について中等部組で話し合っていた時、突然村田が言いにくそうに口を開いた。
──冨岡先輩、それ可愛いですね そう言ったのは偶然だった。 当たり障りのない…相手に不快感を与えない話題として新しい髪留めを褒めてみただけのことである。
鱗滝君の後輩達の介入で真相が明らかになり貞子への誤解は解けたわけなのだが、事情が事情だけに、じゃあそれで解決というわけではない。
──先輩、一緒に帰って良いですかっ? あれから何故か今度は不死川の妹の貞子に懐かれている。 いや、彼女の側にすれば懐くというより、色々事情があるというのが正しいのか…。
──先日は鱗滝先輩だけを呼び出してしまって申し訳ありませんでしたっ と頭を下げる貞子。
宇髄先輩に呼び出されたのは、あの日の翌々日だった。 今回は宇髄先輩と村田さんだけではなく、昨日から貞子とずっと一緒に居てくれた胡蝶カナヲさんと竈門炭治郎君、鱗滝先輩も一緒で、さらになぜか隣の席の舞が居る。
とりあえず事情を調べてもらうことと共に、亜優が自分を陥れるような女であるということを周りに認識させることは出来そうだ。
──わざとかどうかわからないけど…親友だと思ってた子が好きだった相手に私の悪口を… 本当は鱗滝先輩に話を聞いてもらいたかった。 だから泣きながらすがってみたのだけど、あっさり冨岡先輩とのデートを選ばれてしまった。
その日はそれからどう過ごしたのか覚えていない。 気づけば昼休みが終わり、いつのまにか午後の授業を受けて、機械的に帰り支度をして、そして学校を出て駅に向かっていた。
──亜優っ!こっちっ!! 昨日…城山君との悪夢のようなやりとりが交わされた場所で、貞子は親友の亜優を待っていた。
翌日…貞子が登校すると、同級生たちの半数くらいはすでに教室にいた。 その中には亜優もいる。 が、どことなく元気がないようで、貞子とは元々あまり交流のなかったあたりの子と何か込み入ったような話をしているようなので、待つ事にした。
──おはよう、貞ちゃん ──不死川、おはよ~! ──不死川さん、おはよう
──本当はね、少し心配だったの…不死川の妹さんがあんま鱗滝君に接触したら嫌だなって… 有無を言わさず現場を離れて向かったスタバでお目当てのフラペチーノを飲みながら義勇がそう切り出すと、鱗滝君は少し困ったように笑った。
波乱の幕開けは突然だった。 水曜日の放課後のこと。 付き合うようになって毎週そうであるように、その日は鱗滝君の部活がないため、一緒に帰って途中で甘い物を食べたり飲んだりして帰る、そんな楽しい放課後になる予定だった。
あの不死川の妹との話し合い以来、鱗滝君は学校側や小等部の後輩たちに働きかけて、どうやら不死川の弟妹達への周りの待遇もほぼ元に戻ったらしい。
──ありえんなっ!被害者に加害者の窮状を救うように頼むなんて宇髄も頭がわいている。 翌日…学校で昼休みに不死川の妹に会ったこと、そして今鱗滝君と宇髄君がお互いに色々約束事をして動いていることを話したら、伊黒君が激怒した。
そしていつものマック。 義勇が鱗滝君と一緒に店に入ると、宇髄君はすでに来ていた。
鱗滝君が家に来てくれてからも、さらに彼との関係は良好でより距離が近くなって、そちらはとても順調だった。 …が、不死川の方は相変わらずだ。
「まずな、大前提として、義勇は小等部入学以来ずっと不死川と同じクラスだったんだが、不死川はいつも義勇に暴言を吐いたり軽い暴力を振るったりして来たんだ。 まあ所謂いじめっ子といじめられっ子の関係な?
そうして、宇髄先輩に『さあ、話そうぜ!』と言われた瞬間、貞子の頭の中は真っ白になった。 何を話せばいいのかとか、考えてなくはなかったが、何をどう切り出したらいいんだろう…
──今日は同席を許可してくれてありがとう。鱗滝錆兎だ。よろしくな。 放課後…某駅のマックでにこやかにそう言う先輩は正直言ってカッコよかった。 凛々しい感じがするのに、浮かべる笑みがすごく温かくてホッとする。
──姉ちゃん、これ…… と不死川家の3男にあたる弟就也が出して来たのは折れたシャーペン。
──貞ちゃん、ごめんね。でも…… と申し訳なさそうに言う亜優は貞子にとって最後の友達だった。
当日、実際に会った彼も素晴らしかった。 なまじずっと女子校育ちで周りに父親以外の男性がいなかったため、理想が高くなりすぎてしまった感のある蔦子でも、文句がつけようがない。
それからも義勇と鱗滝君の距離は順調に縮まって、それと同時に彼は不死川から義勇を守ってくれるようになった。
蔦子の自慢の妹義勇は大変成績がよろしかった。 あれだけイジメられて登校するのも辛かっただろうに、なんと学年1位だったのである。 なので新入生代表の挨拶をすることになった。
その他は義勇の小学校についてはあまり良い思い出はない。 それどころか小学校5年生のとある日、とうとう義勇が泣きながら学校に行きたくないと言い出したのだ。
冨岡蔦子は妹が大好きだ。 妹は本当に本当に本当に可愛い。
…ということで、その週の日曜日。 学校の帰りに鱗滝君が義勇の家に来てくれることになった。 嬉しいと言えば嬉しいが、心配と言えば心配だ。
まあどちらにしても、不死川が絡んできても鱗滝君はもちろん、伊黒君や甘露寺さん、煉獄君に村田君と班員みんなに囲まれていたら、今までと違って不安はない。
──返事はどうしたァ~! 鱗滝君から煉獄君の弟と不死川の弟の間に起った諸々を聞いた翌々日、義勇がいつものように伊黒君と甘露寺さんと共に登校していると、不死川が『おはよー』と挨拶してきた。
──こんな時間に本当に悪いんだが、急ぎの話なんで今電話いいか? 時は金なり、善は急げとばかりに、宇髄は前回の諸々で交換した錆兎の連絡先にまずLineを入れて許可を取る。
巻き込まれの電話が鳴ったのは、とある日の夜の事だった。 親は連絡はたいていメールかLineだったし、友人関係も通話したい場合はその前に今通話をできる状態かをLineで聞いてからかけてくる。 こちらの都合を聞くこともなくかけてくる人間は極々少数だ。
あのグダグダから数日。 不死川が途中で逃げたので、最終的に不死川が相談していたネットの民に対する尻拭いまでさせられた宇髄にも、ようやく束の間の平和が訪れていた。 そう、 ”束の間の” 。 恐ろしいことにあの時の話し合いの諸々は、なんと伊黒の口からクラスに広まっていた。 ここで何故...
翌々日の朝…不死川が学校を休んだ。 まあ普通に一日くらい学校を休むことはあると言いたいところだが、彼の場合は元来丈夫な体質らしく体調不良で休むこともなければ、勉学が身につくかどうかは別にして、意外に真面目な性格なのか、さぼりもない。
それは突然だった。 鱗滝君の部活のない…というか、職員会議のために全部活が禁止されている水曜日は、義勇はいつも鱗滝君と一緒に帰って、時折り帰り道にコンビニで流行りのスイーツを買って公園でかじりながらおしゃべりしたり、学生でも入りやすいカフェやファストフードに寄ったりするようになっ...
結局、宇髄君に呼び出された鱗滝君が戻ってきたのは、10分ほど経ったあとだった。 彼は戻って来て誰一人として欠けてない班員の皆を見て第一声。 「すまない。俺は帰ってくれて大丈夫だと言い忘れてたか?」 と謝ってきたが、そもそもが今回の諸々は彼だって巻き込まれだ。 謝るのは違う…と、義...
彼女が彼に恋した時_7_幕間_不死川実弥が他人を頼った結果後編
【誰か助けて】助けを必要とする迷える人間スレ【お悩み相談】 478:以下、名無しに変わりまして悩み人がお送りします オッケー。カブトムシと眼鏡っ子、それに殿の関係性についてはなんとなく理解した。 けどさ、結局のところ、最初の相談だった眼鏡っ子がカブトムシに激怒して無視してたっての...
彼女が彼に恋した時_7_幕間_不死川実弥が他人を頼った結果中編
【誰か助けて】助けを必要とする迷える人間スレ【お悩み相談】 380:以下、名無しに変わりまして悩み人がお送りします …カブトムシ大丈夫かな…
彼女が彼に恋した時_7_幕間_不死川実弥が他人を頼った結果前編
【誰か助けて】助けを必要とする迷える人間スレ【お悩み相談】 325:カブトムシ 誰かいるかァ? こんな時間だから誰もいねえかもしんねえけど、報告させてくれェ
もう義勇にも何がなんだかよくわからない。 不死川はキレているし、前日の甘露寺さんへの諸々で今不死川への評価が駄々下がり中の伊黒君もキレ気味だ。
教室につくと義勇はまず伊黒君に礼を言いに行ったのだが、伊黒君は照れ屋なのだろう。 「確かに俺は甘露寺の願いを叶えるために冨岡に恋人が出来れば良いと思っていたし、その恋人に相応しいのは錆兎を置いて他にないと思っていた。 だから二人がつきあうように勧めようと思っていたのは確かだが、俺...
朝…義勇はいつもの通り少しだけ早めの登校で、学校の最寄り駅から甘露寺さんと伊黒君と合流して、そのまま学校まで一緒に行った。
【誰か助けて】助けを必要とする迷える人間スレ【お悩み相談】 102:以下、名無しに変わりまして悩み人がお送りします 誰かいるかァ? 話を聞いてくれェ。 アドバイスくれるとなお嬉しい。
わざとではない。 わざとではないのは小等部からの付き合いだからよくわかる。 でも義勇はいちいち不死川のイラつくポイントを突いてきすぎだ…と、宇髄は内心ため息をついた。
昼休み…鱗滝君は本当に卒が無くて、先生に揉め事の仲裁をするのでと許可を取って会議室を借りてくれて、そこに朝の8名がそれぞれ弁当を持って集合した。
義勇が甘露寺さんと体育館に行くと、そこには当たり前だが剣道着を着た鱗滝君と煉獄君がいる。
月曜日…途中で甘露寺さんに呼び出されて宇髄君の話を聞いて時間をとられたが、その後のクレープ屋さんでは楽しかったどころか、なんと鱗滝君と付き合うことになってしまって、夢見心地の義勇。
翌日、宇髄は関わったこと、自分の対応など、全てを後悔をする。 宇髄が朝に登校してみれば、なんだか隣のクラスが騒々しい。 宇髄のクラスの多くの同級生達も隣のクラスを見に行っているようだ。
──不死川~、とりあえず許す条件は聞いてきたぜ? そう連絡を取ったのが電話でもなければ直接でもない、Lineだったのは理由がある。
「なあ…もしかして、あいつらつきあってたりすんの?」 義勇を呼び出したら何故か鱗滝錆兎までついてきた時点で、宇髄はかなり動揺したが、二人がこれからクレープを食べに行くというのを見送った頃にはだいぶ落ち着いてきた。
そうして二人でクレープを頬張りながら、おしゃべりをする。 甘露寺さんならとにかく、鱗滝君とこんなことできるとは思ってもみなかったが、すごく楽しい。 鱗滝君自身は恥ずかしいというが、今どきスイーツ男子なんて別に特に変な事じゃないと義勇は思う。
マックから5分ほど駅の方に戻ったクレープ店。 ちょうど学校帰りの学生が多い時間帯で、義勇達が着いた時には数人並んでいた。 そこで鱗滝君はメニューの写真を撮ると、義勇を連れて座席の方へ。
その日は待ちに待った鱗滝君と放課後にクレープを食べに行く日。 やっぱり好きな男の子と出かけるのだから、少しでも可愛くしたい。 なので姉に頼んで普段は下ろしっぱなしの髪を可愛く編み込みにしてもらった。
甘露寺に呼び出してもらって待つ事10分弱。 3人の前に姿を現した義勇は一人ではなかった。 それを甘露寺は知っていたらしく、甘露寺以外のこの世の全てがどうでもいい伊黒は義勇が一人で来ようと二人で来ようと興味はないらしい。 しかし宇髄にしてみたらそれは大問題だった。 義勇が一人じゃな...
…俺って馬鹿みてえに人が良いんじゃね? と、宇髄は今、目の前に山盛りのマック商品を積まれて目を輝かせている甘露寺を前に自分自身に対して呆れ返っている。
──やっぱ、あれかぁ?マジうめえって言ってやるべきだったかァ? 土曜の帰りの時間。 私立産屋敷学園は土曜は半日授業である。 中等部生はほとんど自宅に帰って昼食を摂るが、宇髄の家は両親とも仕事で海外で実質一人暮らしなので、土曜の昼は途中で学生でも入りやすいファストフードで食べること...
──最低だなっ!! と、まず煉獄君が言う。 彼的には普通の声で言っているつもりなのだろうが、彼の声はとにかく大きくてよく通るので、部屋中のクラスメートたちの注目がこちらに集まった。
義勇達の班は全員仲良しで、いつも班ごとの行事ではなくても班員が一緒に行動していた。 だが、クッキー希望者とカップケーキ希望者に分かれることになった調理実習で、カップケーキを作るという男子達に甘露寺さんが自分達は今回はクッキーを焼くからと宣言してくれた。
最初の席替えは名前順。 その時は前方の席の鱗滝君を後ろの方の席から眺めるのが義勇の楽しみだった。
最初の席替えの次の席替えは生徒が好きな相手同士で班を作って、その班の位置だけを先生が決めるというものだった。
庭である…そんな認識も吹き飛んでしまうくらいに、義勇の目にはそこはまるで外のように木々が生い茂る広い空間だった。 もちろんその木は綺麗に秩序を持って植えられていたものではあったのだが、生まれてこの方部屋から出た事がほぼない義勇にそんな違いが分かるわけはない。
…寒い…喉も痛い…ついでに身体の節々が痛む… 目を覚ました時に感じたのはそんな不快感だった。
細い…小さい…脆い…… ………… ………… ………… 怖い…怖くて、怖くて……… 壊しそうなのが怖くて仕方がない…… 岸にたどり着いた時に止まっていた呼吸はなんとか再開した。 弱々しい呼吸と鼓動。 ちょっとした刺激で壊れてしまいそうな脆さ…… 守りたいのだ。 守ろうと思うのに、ま...
バシャーン!!と派手な水しぶきをあげて海へと落ちた錆兎は、その衝撃に一瞬顔をしかめるが、すぐに目を見開いて必死に白い姿を追い求めた。
…え? 驚くべき速さで走り去る少年。 ついさっきまで打ち解けていたように思ったのに何故?? と、炭治郎は唖然とそれを見送って、次の瞬間ハッとする。 まずい!逃げられたっ!!つかまえなくてはっ!!! そう気づいた時には少年は遥か遠くまで逃げてしまっている。 弱々しい感じなのに逃げ脚...
「気遣いが足りなくてすみませんでした…」 2人して目と鼻の頭が真っ赤になるほど泣いた後、先に泣き止んだ炭治郎はそう謝罪した。 そして手にしたハンカチで義勇の目元を拭いてやる。
びっくり眼。 小さな悲鳴。 自分の姿を見て身をすくめて狭い場所なのでギリギリ後ずさられる。
それはまるでお伽噺のような光景だった。 小さな薔薇の家。 周りには不思議な事にキラキラとした光が舞っている。
「寒いな…早く見つけないと……」 まだ午前中で陽はあるものの、大陸の中でも北のほうに位置する水の国は春先や秋口でも冷える。 高熱ではなくなったものの微熱もある少年の体調が悪化しないよう、早急に保護しなければならない。
「錆兎っ!!逃げたっ!!逃げちゃったのっ!!捕まえてっ!!!」 いきなり部屋のドアが開いて焦った顔の真菰が飛び込んできた。 「「逃げたって、何がっ?!!」」 と、驚いた錆兎と炭治郎の声がはもる。
熱がなかなか引かず、早1週間。 体調が回復するまではなるべく側についているつもりだったのだが、錆兎も一国の王なので、さすがにそれにも限界が来る。 朝食を一緒に取って薬を飲ませてウトウトと眠ったところでソッとその側を離れて執務室へと急いだ。
錆兎の大切な被保護者が目を覚ましたのは、翌日の明け方だった。 発見したのが前日の午後で錆兎はそれから傍らに付き添って、日が落ちてまた登るのを横目に濡れタオルをかえてやりながら、汗を拭いてやっている。 王と言っても割合と自分で動きたい性質の錆兎だが、あいにくというか幸いと言うか、周...
冷え切った体…青い顔…… ベッドに寝かせてやった方が体勢的には楽なのかもしれないが、冷え切っているので体温を少しでも分け与えてやりたい。 結果、ベッドで半身起こす形で抱きしめる。
幻の国に使いを送ったところで、もう打てる手は打ったことになる。 今までの経験上、返答が来るまで1週間から10日ほど。 協力を依頼したからには、それまでは動くわけにはいかない。
元々嵐の国がかなり攻撃的な国であること、使者の件、炭治郎の件で杏寿郎はかなり戦う方に傾いてきている。
「おかえり! 余裕で間に合ったようだな。 まあ君のことだから心配はしていなかったが…」
やがてドアがノックされ、どうやらリビングの方からメイドらしき声に昼食の用意が出来た事を告げられるが、とてもではないが寒くてベッドから出る事が出来ない。 なのであとで食べるので置いておいて欲しいとベッドの中から告げると、あとで食器を取りにくる旨を告げて下がって行く。 その気配を感じ...
真菰さんに言わせると、錆兎さんは【昭和の親父】みたいなところのある人なのだという。 真菰さんと共に大叔父さんに引き取られて現代っ子も少なくはないお弟子さん達と接するうちにアップグレードされて今では表にだすことはないらしいが、幼い頃はよく『男なら、』とか『男として生まれたなら、』み...
もしかして義勇には好きな奴が出来たのかもしれない。 俺がそう気づいたのは、例のキス事件の少しあとだった。
──えっ?!!バレてたっ?!!! 俺が錆兎さんにキスをしたのが錆兎さんにバレてしまっていた。 それを真菰さんから聞いた時、俺は人生が終わったかと思うくらい衝撃を受けた。
午前中は特に重要な案件もないので、一応村田に隣の自宅に居ることを伝えた上で、リビングで真菰に話を聞いてもらった。
思春期になって距離が出来てしまったように思っていた息子との距離がまた近くなってきた。 義勇が俺の部屋を訪ねて来た時、そう喜んでいた俺は翌朝、何もなかったように義勇を中学に送り出すと、深い悩みを抱えつつ不本意ながら真菰を呼ぶことにした。
──錆兎さん、今日一緒に寝ていい? とある夜のことである。
それを実行するかどうか、俺はぎりぎりまで迷っていた。 いけないことだって自覚はすごくある。
その話をしたのはいつだったのかな…。 1月2日だったのは確かだった。
錆兎さんの事で本人に言えない事は真菰さんへ…そういう認識だったからついつい真菰さんがいいって言っちゃったけど、落ち着いて考えてみたら異性の真菰さんに話すことじゃないのかもしれない…
中学1年生くらいでああいう漫画とかを見たら、女の人の裸とかで頭がいっぱいになるものなんだろうけど、その日に俺の頭をいっぱいに占めていたのは、登場人物の身体じゃなくて、表情だった。
小学生時代…学校側とも町会とも仲良しだった錆兎さんの数々の個性的な提案で、俺達の小学校は随分と変わったらしい。
不死川君と言い争っていた大垣君はいわゆるいじめっ子らしい。 1年生の時に不死川君が俺にそうだったみたいに、クラスメート全体に対して乱暴で、なかでも3年生から同じクラスになった秋山君に特に意地悪をしているそうだ。
錆兎さんの教育方針の一つに、俺と錆兎さんで情報を共有しようというのがある。 それは小学校入学式の時に錆兎さんが自分は何でも知りたがりだから…と言った言葉にも表れているように、すごく好奇心旺盛な人で、普通の大人なら聞き流してしまうような些細な話もすごく楽しそうに聞いてくれるから、続...
──なんだ…いわゆる試し行動というやつか… 俺が嘘をついたと打ち明けても錆兎さんは怒らなかった。
錆兎さんが嘘をついた俺の両肩に手を置いて ──義勇、正直に話して欲しい… と真剣な顔で言った時、俺は錆兎さんを試すような嘘をついたことを心の底から後悔した。
その日…俺は出会ってから始めて錆兎さんに嘘をついた。
俺が小学校5年生になった頃、真菰さんが30歳になった。 もちろん独身で、俺はその理由を知っている。 錆兎さんも知っていて、さらに村田さんも知っているらしい。
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信じていないわけじゃない。 鱗滝君は浮気なんてする男子じゃない。 そうは思うものの、自分と貞子を比べてみたら、女子力と言う意味では完全に負けているし、年齢だって男性は年下が好きだとよく聞くから、2歳下の彼女には負けている気がする。
その日も朝に貞子と一緒にお菓子を食べながらお茶を飲んでいた。 色々おしゃべりをするその中で、義勇が中等部の入学式での錆兎との出会いの延長線上で、その時に借りたハンカチを今でも大切に持っているという話をしたら、いつもは笑顔の貞子が、少し戸惑ったような顔で、あっ…と小さくつぶやいた。
──鱗滝先輩って、本当に冨岡先輩のこと好きなんですね 義勇は今日も貞子と朝のお茶会中だ。 最近恒例となったそれは、誰にも内緒の秘密のお茶会。
──鱗滝先輩、報告と確認を少しだけ…。間違ってまたもめるの嫌なので。 貞子は今日も少しだけ報告と相談をしたい、本当に5分だけで良いから、と、剣道部の部活後の鱗滝先輩を直撃して、時間をとってもらう。
また失敗したっ!! 鱗滝先輩略奪計画があまりにうまくいかなくて、貞子は少し苛々してきた。
──あのさ…錆兎はあんま貞子ちゃんに近寄らない方がいいんじゃないかな… 貞子と炭治郎、カナヲを含む6人で貞子の今後の話し合いを終えて、小等部組を返したあと、今後の対応について中等部組で話し合っていた時、突然村田が言いにくそうに口を開いた。
──冨岡先輩、それ可愛いですね そう言ったのは偶然だった。 当たり障りのない…相手に不快感を与えない話題として新しい髪留めを褒めてみただけのことである。
鱗滝君の後輩達の介入で真相が明らかになり貞子への誤解は解けたわけなのだが、事情が事情だけに、じゃあそれで解決というわけではない。
──先輩、一緒に帰って良いですかっ? あれから何故か今度は不死川の妹の貞子に懐かれている。 いや、彼女の側にすれば懐くというより、色々事情があるというのが正しいのか…。
──先日は鱗滝先輩だけを呼び出してしまって申し訳ありませんでしたっ と頭を下げる貞子。
宇髄先輩に呼び出されたのは、あの日の翌々日だった。 今回は宇髄先輩と村田さんだけではなく、昨日から貞子とずっと一緒に居てくれた胡蝶カナヲさんと竈門炭治郎君、鱗滝先輩も一緒で、さらになぜか隣の席の舞が居る。
とりあえず事情を調べてもらうことと共に、亜優が自分を陥れるような女であるということを周りに認識させることは出来そうだ。
──わざとかどうかわからないけど…親友だと思ってた子が好きだった相手に私の悪口を… 本当は鱗滝先輩に話を聞いてもらいたかった。 だから泣きながらすがってみたのだけど、あっさり冨岡先輩とのデートを選ばれてしまった。
その日はそれからどう過ごしたのか覚えていない。 気づけば昼休みが終わり、いつのまにか午後の授業を受けて、機械的に帰り支度をして、そして学校を出て駅に向かっていた。
──亜優っ!こっちっ!! 昨日…城山君との悪夢のようなやりとりが交わされた場所で、貞子は親友の亜優を待っていた。
翌日…貞子が登校すると、同級生たちの半数くらいはすでに教室にいた。 その中には亜優もいる。 が、どことなく元気がないようで、貞子とは元々あまり交流のなかったあたりの子と何か込み入ったような話をしているようなので、待つ事にした。
──おはよう、貞ちゃん ──不死川、おはよ~! ──不死川さん、おはよう
──本当はね、少し心配だったの…不死川の妹さんがあんま鱗滝君に接触したら嫌だなって… 有無を言わさず現場を離れて向かったスタバでお目当てのフラペチーノを飲みながら義勇がそう切り出すと、鱗滝君は少し困ったように笑った。
波乱の幕開けは突然だった。 水曜日の放課後のこと。 付き合うようになって毎週そうであるように、その日は鱗滝君の部活がないため、一緒に帰って途中で甘い物を食べたり飲んだりして帰る、そんな楽しい放課後になる予定だった。
あの不死川の妹との話し合い以来、鱗滝君は学校側や小等部の後輩たちに働きかけて、どうやら不死川の弟妹達への周りの待遇もほぼ元に戻ったらしい。
想像とは微妙に違う… 亜子は戸惑っていた。
新任教師らしき女性の腕をつかむ不死川と怒った顔の炭治郎。 双方が義勇の顔を見て、しまった!という顔をするのとは対照的に、女性の方はなんだかホッとしたような嬉しそうな表情だ。
──え?な、なにっ?!! いきなり聞こえて来た悲鳴の声は高くて、しかし声変わり前の少年のそれとは明らかに違う。 つまり、この学園にいるたった一人の女性、新任の女性教師のものと思われる。
こうして無一郎が抜けて、義勇と善逸、そして炭治郎の4人でお茶会を再開する。 そうして20分ほど経った頃だろうか…。 「こんな時間に何の用事だったんだろうね?」 と、不安を隠せない様子の善逸。
その夜、義勇は炭治郎の部屋で過ごしていた。 いつもなら当然自室にいる時間だが、今日は錆兎が金竜の姫君に助力を頼まれて金竜を混乱に陥れている金竜の寮長小郎の征伐に行っているので、一人は危ないと錆兎から炭治郎に預けられているのである。
たとえ逆ハーどころか攻略対象者全員に逃げられようと、このままでは終われないっ! 絶対に…絶対に一矢は報いるっ!!
ほとんどホラーだった。 綺麗で可愛く可憐な容姿なだけに、余計にこの状況での満面の笑みが恐ろしい。
「お待たせ。 ごめんね、錆兎との約束で義勇は部外者に会わせられないから、話はよければ俺が聞くよ?」
柏木亜子は正直後悔していた。 教職員宿舎から銀狼寮までは遠い。 もちろん道は伸びているのだから迷子になることはないのだが、それでも暗い道を一人で移動するのはやや怖い。
悔しいがその時の銀虎の寮長は実に凛々しくカッコよかった。 そもそもが宇髄は寮長の中でも屈指の顔の良さで体格も良い。 そのうえ洒落者だ。
そんな風に一瞬錆兎が考え込んだのを勘違いしたのか、 「馬鹿が~! 俺が孤立したかとでも思ったかっ!! 操られるだけ操られた挙句に美和のガキに寝返った馬鹿どもと違って俺は組織に買われているからなっ! ピンチになればちゃんと援軍が来るんだよっ!!」 と急に元気になった小郎が隙をついて...
──申し訳ありませんっ!いかなる処罰も受け入れますっ!! それはなかなか壮観だった。
おそらく藤襲の他の寮長や高等部生達が見たら感動のあまり目を潤ませるであろうこの光景は、そのスピリットを根底から否定した小郎には不快なものとしか映らなかった様である。 口の端を歪めて嫌な笑みを浮かべて美和を見た。
──おや、うちのを連れ帰ってくれたのか、将軍。 慌てた寮生とは対照的に、少し経って出てきた小郎は随分と落ち着いていて、にこやかに言う。
宇髄がそんな風に暗躍している頃、錆兎は寮生達を率いて金竜寮へと向かっていた。 錆兎の次に戦力があるであろう炭治郎は銀竜の寮生全員と寮長の村田と姫君の無一郎、そして金狼の寮長の不死川と姫君の善逸と共に自寮の姫君の護衛に残し、モブ三銃士も一人は姫君と残り、一人は銀虎の宇髄と行動を共に...
亜子が自分の携帯を取り出すと、宇髄は ──これ、借りていいか?直接話したい。 と上から手を伸ばしてそれを取り上げた。
──こんな遅くにごめんなさい… 動揺している様子をより鮮明にするため、上着も着ずにエントランスまで出てきた亜子。 さすがに肌寒いがそれもか弱さを強調するためだ。 自分で自分を両腕で抱きしめるようにすれば、いつでも気が利く宇髄はきっと ──大丈夫だぜ。それより寒いだろう?これを着ろ...
『銀狼寮には手を出すな』 といきなり言われた理由は、寮長の錆兎の実家、渡辺家の恐ろしく影響力のある広い人脈ゆえだ。
打倒、銀狼寮姫君!! …を当面の目標にすることを決意した亜子。 明日からは本格的に落とすターゲットを錆兎に絞って、彼と一緒にあの女…もとい、あの女に似た銀狼寮の姫君を追い詰めて行こう。 なんならすべてが寮対抗のこの学園でライバルにあたる他の寮の姫君をやっぱり味方につけてもいい。
…ふふ~ん、明日こそは彼の笑顔は私のもの~♪ 藤襲学園の教職員宿舎の一室で、柏木亜子は鼻歌を歌いながらドレッサーを前に髪を梳かしている。