ほとんどホラーだった。 綺麗で可愛く優し気なだけに、余計にこの状況での満面の笑みが恐ろしい。 怯えるアンを前にフェリシアーノはしばらくニコニコしていたが、 ──話すこと…ないみたいだね? と言うと、華奢な手で銀の呼び鈴をチリンチリンと鳴らした。 それで開いたドアから入ってきた人物...
ノマカプのオリジナルとAPH(ヘタリア)のギルアサ、アンアサの二次創作BL小説のサイトです。
5年間ほどPixivで書き続けていた小説を移行しつつ、毎日1P分くらいの更新を続けています。 ゆえに…記事の数だけは多いです(*゜―゜)b 今現在1000記事以上っ!
──俺と錆兎の関係?う~ん…少なくとも将来を固く誓いあった仲ではあるな。 隊士生活も始まって水柱邸に住み始めた炭治郎にどうしてもと頼まれて義勇を館に招待。 炭治郎はその時に直接例の質問をして、義勇にそう答えられて玉砕したらしい。
──義勇さんて綺麗な方ですねっ!! 炭治郎が最終選別を超えて無事隊士になり初任務に就くのに狭霧山から街に降りてきた。 通常は新米隊士達は任務の時以外は藤の家と呼ばれる協力者の宿に泊まりながら日々を過ごすのだが、鬼である禰豆子付きの炭治郎にはそれも難しいだろうと、村田は彼を水柱屋敷...
村田が連れてきた少年少女を預かってもらうということなので、当然錆兎にはいよろしくというわけにはいかない。 そこで、元水柱の鱗滝左近次の元には村田も同行することになった。
アンボイナのシェアを独占してから数か月。 ミナモト商会は猛スピードでマカッサル、スラバヤのシェアも独占。 もちろんその間にはクーンの側もこちらが独占している街に攻撃を仕掛けたりもしてきたが、それを見越しての防壁強化だ。
「ムラタ、アスワングってなんだ?」 その日、いつもよりはやや早い時間に帰船した錆兎の第一声がそれだった。
あれからアンボイナに寄港。 この街のシェアはほぼほぼクーンの物だったが、そこは計略はお家芸のようなものでお手の物のマリアが街に部下を潜ませて秘やかに…そして実に見事にクーンの悪評を流して、度を超えた不信感にクーンとの契約を打ち切ったシェアを買収。 着々とシェアの独占を完了させるま...
──それで…引き受けてきてしまったわけね…… 船に戻って例によって船長室で報告会。 そこで小箱を見せつつ、クーンについての話をすると、マリアは片手を額にあてて、はぁ~…と、小さく息を吐き出した。
「…ってぇことで、対等になったとこで、まあ本題なんだが…」 握手の手を離したところで、ペレイラはもう一度、錆兎に座を勧めて、自身もソファに座りなおした。 こちら側に本題があったように、ペレイラの側にも会見を受け入れるだけの理由、本題があったらしい。
こうして馬車が停まった先、ペレイラ商会の本拠であるマラッカの商館。 とうとう、来てしまった…と、再度緊張するムラタに ──大丈夫。責任者は俺で、すべての責は俺が負う。お前は何も気にしなくていい。 と、錆兎が笑顔で言ってくれる。
バナナ、スイカ、スターフルーツ、マンゴー、グァバ、パパイヤ、パイナップル、ジャックフルーツ、ポメロゥ、ドクゥ、マンゴスチン。 初めて降り立つマラッカの街の市場はとても賑やかで、そこでは驚くほどの種類のカットフルーツが所狭しと並んでいる。
──あ~…それ檮杌じゃないかしら。よく生きて帰って来たわね。 ──ひっ…マジ?!いや、でもさ、あれって伝説上の生き物じゃないの?!
──う~ん…まあ、俺は信じる。 ──ええぇっ?!信じちゃうのっ?!!
──…あなたがいなければ俺は何もできませんでした。ありがとうございます… しばらくして禰豆子を家に置いて炭治郎が穴掘りを手伝いに来た。
──最初にね…一刻も早く弟君を楽にしてあげたほうがいい。 そう、鬼のこととか鬼殺隊のこととか今後のこととか話すことはたくさんあるが、まずは可哀そうな子どもを苦痛から解放してやるのが先だと村田は思う。
村田を早く自宅で休ませてあげたい…そんな炭治郎の優しい気持ちがアダになった気がする。
寒い…。 前世では義勇はこんな寒い中を竈門家を目指して山を登ったんだなぁ…と村田は低地とは段違いに違う標高の高い山の寒さに震えながら漠然と思った。
「さすが村田だっ! 誠実で努力家なお前なら絶対に不死川の心を解きほぐせると思っていたっ!! お館様も大絶賛してたぞっ!!」
「…不死川…大丈夫?体調悪い?」 …が、再会した村田の第一声だった。
不死川実弥は自分が柱とは認めていなかった。 風柱の座を拝命した時、断固として拒絶した。
「俺ははっきり言ってずっと弱いよ。 強かった時期はないと言い切れる。 まず誤解を解いておくと、俺が強いと思われたのはめちゃくちゃ強い錆兎がそう思われるような発言をしたから。 それだけだからねっ」
不死川に会うのは本当に久々だったが、そのあまりの変わり様に驚いた。 まず今までなら村田を見かけると木刀を振りかざしてくるのが常だったが、振りかざすどころか木刀を持参すらしていない。
──ひぃい~、きっつっ! 村田が水柱になって早3か月が過ぎようとしていた。
──錆兎と義勇はこっち。村田はこっち。煉獄のぼっちゃんはここなっ! 個室の座敷に通されてから宇髄が仕切って席を決めて誘導する。 一応村田の歓迎会も兼ねているらしく、村田の席はお誕生日席で、その左側の隣に義勇、右側の隣がカナエと、きれいどころ?に囲まれている。
──せっかくだし時間があるなら皆で飯食おうぜっ! と言い出したのは賑やかな事の好きな宇髄だ。
本当に本当に切実に逃げたいっ!! 錆兎の離れでお茶を飲んで錆兎に連れられていざ出陣! 初めての柱合会議はとんでもなかった。
「よく来たね、大志。これからは水柱としてよろしく頼むよ。 水の呼吸は使う子も多いから手本になってあげてね」 そう、お館様がにこやかにお声がけされる。 ありえないことに凡人の自分に、だ。
もうなんだか鬼に遭遇する前にすでに色々ダメージが大きい村田と不死川。 仲良しを連呼する16歳男子にすっかり振り回されている気がする。
──あ~、おキツネ様がいらっしゃるっ!! ──素敵っ!素敵っ!カッコいいっ!! ──今日は鬼殺の任務に就かれるのかしら?! ──姫様とサラサラさんもご一緒なんだな。 ──なんだかすごく豪華な組み合わせだなっ! ──あと一人は…誰? ──わかんない。ちょっと人相悪い奴だな。 ──特...
確認するまでもなく宍色の髪の赤子が男で、黒髪が女。 ──鱗滝さんの左近次にちなんで、男なら右近と名付けたいと思っていたのだが、どうだ? と、心の底から嬉しそうな笑みを浮かべて言う錆兎に、義勇が異論などあるはずもない。 それが尊敬すべき師匠にちなんだ名なのだから、なおさらだ。
次に意識が戻ったのは、頬を撫でる優しい手の感触を感じたときだった。 その手の感触を義勇はとても良く知っている。
「さ~びと、林檎すりおろしておいたよ。義勇は?」 「…ああ、真菰。ありがとう、助かる。だが今寝てる」
──義勇…少しでも良いから食え。なんでも良いから… と、錆兎が言うのに、義勇は力なく首を横にふる。
──さ…錆兎……や…やだ… 義勇は泣きながら首を横に振った。
最後の甘みの食器は翌朝片付けに来ると言っていたからそのままにして、義勇の手をとって隣の部屋のふすまを開けた。 行灯だけの薄暗い部屋に敷かれた2組の布団。 余裕なく荷物を漁って真菰に持たされた小瓶を取り出す。
錆兎が待っていても、義勇は飽くまでちまちまと美味しそうに甘みを頬張っている。 それでもいずれはなくなるもので、最後の一切れをごくんと飲み込んで、食後の煎茶を飲み干すと、義勇は改めて隣の錆兎の方を向き直った。
料理は色々な意味で素晴らしかった。 まず最初に思ったのは …素晴らしく綺麗で…素晴らしく美味く…そして素晴らしく少ない。
町中はそうやって2人並んでゆっくり歩いたが、なにぶん取れる休みには限りがある。 だから人の目のない街道などでは、錆兎は義勇を抱えて走った。
出発はその3日後であった。 何故それだけ時間を置いたかと言えば…女性用の着物の着付けの仕方、化粧法、髪の結い方などを錆兎が蝶屋敷に通ってマスターしていたからにほかならない。
こうしてお館様の午前を辞すると、拝謁するまでは貼り付けたようだった胡蝶の笑顔が、実に楽しそうなそれに変わった。
「話は聞いたよ。今…義勇が単体で動くのは目立ちすぎるかもね」 よく来たねとあいも変わらず優しい笑顔で言うお館様からの次の言葉は、まあ錆兎としては予想の範囲と言えば予想の範囲内であったものの、すっかり錆兎と一緒に行くつもりでいた義勇は、その言葉に目をうるませる。
そんなこんなで鴉で連絡をいれたあと、産屋敷邸を訪れた4人。 だが、通されたいつもの待合室には、何故か先客がいる。
それは昨日のことであった。 煉獄達がお館様に打診していた、鬼舞辻の企みが判明するまでは、胡蝶、甘露寺、そして義勇は極力出動させないという提案にお館様からの許可がでたことが、直接のきっかけである。
「…なんでこの格好なんだ?……」 濃い紺色の地に白の花の模様が散った総柄小紋。 それに体型を隠すためにやや大きめの薄紫の羽織をはおって、目をぱちくりする冨岡義勇。
柱合会議後の産屋敷邸の一室。 そこには【柱】全員が悠々囲めるくらいの、大きな円卓がある。 普段、時間に寄ってはそこで食事が出たりするのだが、今日は午後からということで、目の前に並ぶのは菓子とお茶。
言葉が足りなくて誤解されやすいのが冨岡義勇だとしたら、言葉選びで誤解されるのが不死川実弥だ。
宇髄が言った通り、部屋を出るまで2分。 石庭についてきちんと並ぶまで3分。 5分前には全員膝をついてお館様をお待ちしている。 さすが【柱】。 見事なまでの切り替えの速さだ。 こうして全員が揃って5分後に、左右に瓜二つの娘たちを従えて、お館様こと産屋敷耀哉が奥から姿を現した。
あまりに幸せな当たり前の日常に、まるで夢の中にいるように心がふわふわする。 柱合会議を行う産屋敷の館の門を通り過ぎてもなお、全く現実感が湧いてこない。 しかし、そんな義勇の幸せにはすぐ影がさすことになる。
朝…そろそろ町に人がちらほらと姿を現す頃…錆兎は義勇の手をしっかり握って町外れの屋敷を目指していた。 【影柱】となった5年前。 館を用意してもらえると聞いて、多少不便でも良い。特に立派でなくても良い。 ただ、大勢人が住める大きな屋敷が欲しいと希望して用意してもらった家だ。 理由は...
そして眠れぬ夜が明けて迎えた翌朝のことである。 「え?知られたらいけないの? 良いんじゃないかなぁ…。 ほら、強い子ならたくさんいるってわかったほうが、皆安心しない?」 恐ろしいことに…早朝に会ったお館様は、不始末を土下座する錆兎とそれに付き合って同じく土下座してくれる義勇と煉獄...
そして眠れぬ夜が明けて迎えた翌朝のことである。 「え?知られたらいけないの? 良いんじゃないかなぁ…。 ほら、強い子ならたくさんいるってわかったほうが、皆安心しない?」 恐ろしいことに…早朝に会ったお館様は、不始末を土下座する錆兎とそれに付き合って同じく土下座してくれる義勇と煉獄...
その夜は義勇が不安がるので昔のようにくっついて布団に横たわりながら、ひたすら話をした。
その後すぐに、煉獄の方から念の為に…と、お館様に錆兎のことを問い合わせると、なんと身元を保証する返答が返ってきただけではなく、翌朝時間をとって頂けるとのことだった。 それにはさすがに皆驚いたが、考えてみればその日の午後に柱合会議があるため、それに間に合うよう報告を聞いた上で相談し...
炎は前方の氷像を一気に蹴散らし、上弦まで寸でのところまで伸びたが、さすがに鬼の方もそれをぼ~っと見ているわけではなく、ふわりと建物のぎりぎりに大きな氷像を出現させて、その手に乗ることで炎を避けた。 が、その氷像も技のあとにまだ残る熱で溶け、鬼はストンと地面に着地する。
夏だと言うのに寒気がした。 街に入って半刻ほど過ぎた頃、ゾッとするような空気を感じて錆兎は後ろに付き従う真菰に小声で警告する。 (…真菰……これは…やばいかも知れない……) (…だね……) と、意思確認をしながら、2人の視線は人目を避けるように屋根伝いに進む自分達の斜め前方、1人...
空が紅く燃えている。 本当に綺麗な夕焼けだ。 町中で見ても十分綺麗だが、狭霧山で見た夕焼けはもっと綺麗だった…と、錆兎は幼く幸せな日々を思い出す。
ということで、最初にフォロワーさんの会話で鬼滅に興味を持って、二次創作でキャラを知って錆義がいいなと思い、そこから原作を読んで錆兎の出番の少なさに涙しつつ、それを妄想で乗り切ろうと思ってこうなりました。 義勇モンペの錆兎と、ぼ~っとした義勇。 それを半分呆れつつも生暖かい目で見守...
そして翌日に義勇が目を覚ました時…当たり前に錆兎の姿は影も形もなかった。 あれは…自分の願望た見せた夢だったのだろうか…
義勇がそんな決意したその時の少しあと…
そうしてその3日後のことである。 無事と言うにはあまりにもひどい傷を義勇に負わせた状態で、最終選抜が終わった。
──錆兎…起きてるか? ちょうど元兄弟子の”影”が去った直後、錆兎の部屋のふすまが静かに開いた。
さて、ここで出てきたあと二人の人物、義勇と鱗滝、そして鬼殺隊や現在の状況について、いくらかの説明をさせてもらわねばならないだろう。
狭霧山と呼ばれる山がある。 そこには修行を続ける少年の姿。 その少年炭治郎は、師匠から鬼殺隊…と呼ばれる、その名の通り鬼を滅するための隊に入隊するための最終選抜を受ける許可を得るため、日々大きな岩に向かっている。
1 2 3 4 5 6 解説
勝てば官軍桃太郎_40_そしておとぎ話は終わりを告げ…る?【完】
「頼光~!あっち行って遊ぼ!」 「頼光様、それより笛を吹いて下さいませ。ひなきが琴をひきますので」 「右近様、にちか、美味しいお菓子を持参いたしましたのよ。ご一緒に…」 「あら、ありがとう!右近にい、花火と一緒に食べようよ!」 「お待ちなさい!わたくしは右近様と二人で頂こうと思っ...
総勢9名。 しかし夜明けまではまだ遠い。 いくら鍛え上げた柱とて、一晩全力で戦い続けるのはあまりにきついし動きも鈍くなってくる。
「…なんだか…ほどよく緊張がほぐれるね…」 ずず~っと茶をすすって言う産屋敷に、
そうして歩きながらも九郎はよくしゃべるしゃべる。 雑魚相手に本気を出さない村田がいかに格好良かったかなど、不死川の地雷の上で足踏みをしまくった挙げ句、口した話題は
6月21日…世にいう夏至の日の夕方のことである。 もう隠すこともないということで、ゆるゆると徒歩で産屋敷邸に向かう錆兎、宇髄、不死川…の後ろをついて歩く一人の少年隊士。
…ぎ殿……内儀殿…… 少し子どもたちと昼寝でも…と思っていたら、おもいのほかぐっすりと眠ってしまっていたようだ。 声に目を覚ませばもう日が落ちたらしく部屋が薄暗くなっている。
意外というか案の定というか、継子柱の中では不死川が一番赤ん坊の世話が上手く、また好きだった。 錆兎がやると思い切り肩に乳を吐かれるゲップを出させる作業も、不死川がやると上手に出来る。 まあ父親としては若干情けなさも感じるところではあるが、それでも嫌な気はしなかったのは、ひとえに赤...
「うわぁ…小さい…」 「お前も昔はこんなんだったぞ」 と、錆兎が渡されておっかなびっくり抱いているというよりは手に乗せられた状態の赤子の一人を覗き込む千寿郎と杏寿郎。 一人は鱗滝が抱いてうんうんと頷きながら涙をこぼしている。 最後の一人は雛鶴が抱いて宇髄に見せに来た。 「天元様ぁ...
──錆兎殿、邪魔です!あちらでおとなしく待っていて下さい! かつて桃太郎相手にここまではっきりきっぱり言い放った人間がいただろうか… 錆兎の尊敬する師範や、上司であり彼女の夫であるお館様ですら、錆兎相手にここまでの言い方をしたことはない。 だが、天下無敵の桃太郎も、お産の支度に入...
そんな会話が水柱邸で交わされている頃、産屋敷邸ではまさに無惨戦について話し合われていた。
そんな中で義勇はと言うと、大きくなってきたお腹を抱えてせっせせっせと赤子の着物やオムツを縫っている。
「あ~、おじいちゃん、また作っちゃったの? まだ生まれてもいないのに、気が早いなぁ…」 「お~ま~え~はぁぁ~~!!! 元水柱様になんて口のききかたしてやがる!!!」
そして夜…そこは昼より夜の方が賑わう遊郭街吉原。 「そこの素敵なお兄さん、寄っていかない?」 宇髄と二人で歩けば左右の見世から遊女たちがひらひらと真っ白い腕を伸ばす。 甘いおしろいの匂いや酒の匂い。 継子柱達は場所柄に慣れず戦いにくいだろうとお館様には言ったわけだが、考えてみれば...
全て打ち明けてしまった事によって、まどろっこしいことは何もなく、順調に終わる打ち合わせ。 鬼との戦いは夜と決まっているため、夕方までは藤の家で待機がてらの打ち合わせだったのだが、こうなると時間が余り手持ち無沙汰になって、話は自然と互いに嫁のいる身ということで嫁の話題へ。
全て打ち明けてしまった事によって、まどろっこしいことは何もなく、順調に終わる打ち合わせ。 鬼との戦いは夜と決まっているため、夕方までは藤の家で待機がてらの打ち合わせだったのだが、こうなると時間が余り手持ち無沙汰になって、話は自然と互いに嫁のいる身ということで嫁の話題へ。
──お前さぁ、この分担で本当にいいわけ?俺が兄貴を受け持たねえ? 普段は水柱邸にいる同期や継子柱達と一緒のことが多かったため、本当に久々の宇髄との任務。 もしかしたら最初の任務以来かもしれない。
そうしてまずは報告に産屋敷邸を尋ねる。 明け方だというのに産屋敷は病身をおして待っていてくれたらしい。 すぐに部屋に通されて、錆兎は上弦の弐と参が倒れたという報告を済ませた。
…あれを…試すか。 相手は氷を操る鬼。 こいつが作り出す霧を吸い込めば肺が壊死する。 だから気を込めるのはなるべく呼吸が思い切りできる少し離れた場所で。 炎の奥義、煉獄あたりでも良さそうだが、あれは打つ前の溜めが少し長いのでかわされる可能性がある。
水柱屋敷を出たのはまだ夕方にもならないうちだったが、気づけば太陽は西に沈み、空には綺麗な満月が浮かんでいた。
「だ~か~ら~、本当に偶然なんだってっ! 上弦の肆の本体だなんて知らなかったんだってばっ!!」
──ひぃっ!!ツヤツヤがいるなんて聞いてない!!! ──あ~はいはい。俺だってさっき命令受けて来たところだからね そんなことを言いながら、すでにびびって逃げかけている鬼をサクっと斬る。
──そう言えば…なんで3日のうちに…ということだったんだろうな… 起きるのが遅かったため、二郎が用意してくれた昼を少し遅めの時間に食いながら、義勇が唐突につぶやいた。
翌朝…錆兎が目覚めると、まだ義勇は眠っていた。 身を起こそうとすると、ぎゅうっと腰に手を回して、いやいやというように頭を振るので、本人は眠っていて気づいていないのだろうが、錆兎の腰に頭を擦り付けている状況になっている。
「よし!涙も止まったな。そろそろ始めていいか? …というか、お前、本当に湯冷めして体が冷え切ってるぞ。 とにかく布団にはいれ」 と、笑顔の錆兎に布団の中に引き込まれる。 そこでまだ温かい錆兎の体に触れて、義勇は自分の体が冷え切っていることに初めて気づいた。 「さきほどの話だが……...
上弦に遭遇した翌日…煉獄と錆兎と共にお館様に呼び出されて、義勇は産屋敷邸に来ていた。 初めて行くお館様の邸宅。
その日はそのまま報告だけして帰宅。 しかし翌日は詳しい話をとお館様に呼び出されて産屋敷邸に。 そして錆兎と義勇、それに煉獄が付いた時には、なんと柱がすでに勢揃いしていた。
勝てば官軍桃太郎_15_それはお嬢様達に人気の敵キャラのよう
こうして前世よりいくらか早く、前世での炎蛇風の柱が出揃って、空席だった水を錆兎が埋め、岩と音はそれより早くにすでにいる。 蟲はその前任である彼女の姉、胡蝶カナエが花柱をしていて、無惨との決戦に参加した残り二名、恋と霞は年齢も年齢ということもあり、柱就任を早めるのは無理だろうとのお...
「あ~…別にここに居たから柱になれるわけじゃないぞ。 俺は単にお館様から言われた人間を預かっただけだから、どちらかというと俺が育てたからではなく、お館様が預けると決めた人間が柱になったというのが正しい。 だから、ここに住んでどうなるもんでもない」
ともあれ、義勇と村田、そして太郎二郎兄弟は、なぜかお館様が錆兎が自由に使える人材という形に取り扱わせているので、良くも悪くも村田に選択権はないし、先日の鬼のように極々軽い一人きりの任務の時に出くわすのはそう強い鬼ではないので、強い鬼を滅する任務の時には常に錆兎がいる。 だから今の...
あれは数ヶ月前のこと。 任務で向かった鬼の館はまるでからくり屋敷のようだった。
こうして急いで向かった道場でのこと。 「ああ、お前が杏寿郎か。 お館様から話は聞いてる。よく来たなっ! 俺が水柱の錆兎だ。 よろしくなっ」 とにこりと笑みを浮かべながら言う水柱は、本当に桃色の髪だった。 まあ、正確には宍色というのだそうだが…
鬼殺隊の柱は各々大きなお屋敷に住んでいるが、その屋敷に比例した人数で住んでいるかはまた別物である。
「ってことでね、鬼殺隊では柱になると邸宅を用意することになっているんだけど、何か希望はあるかい?」 方針が決まったところでいきなりトップ直々に聞かれるそれ。
「うああぁ~~!色が変わったっ!」 半月後、2人に日輪刀が届けられた。 義勇はまず自分の刀を手にとって鞘から抜いてみる。 すると刃の色が見る見る間に深い蒼に変わっていった。
地元の人間はあまり居ないので、みんな駅までは同じ道だ。 それぞれにはしゃぎながら道を走っていた。
それから4ヶ月はあっという間だった。 2月の義勇の13歳の誕生日が過ぎて、4月の錆兎の誕生日がまだこない3月の初旬。 前世と同じ時期の最終選別である。
──おかえり!今日のご飯は鮭大根だよ! 錆兎が日が暮れるぎりぎりに小屋へ帰ると、割烹着をきた義勇がパタパタと台所から走り出してくる。 そうしてぎゅうっと錆兎に抱きついてくるので、錆兎もそれを抱きしめ返した。 少し大きめの割烹着にまだ着られている感があるが、それがなんとも可愛らしい。
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ほとんどホラーだった。 綺麗で可愛く優し気なだけに、余計にこの状況での満面の笑みが恐ろしい。 怯えるアンを前にフェリシアーノはしばらくニコニコしていたが、 ──話すこと…ないみたいだね? と言うと、華奢な手で銀の呼び鈴をチリンチリンと鳴らした。 それで開いたドアから入ってきた人物...
「お待たせ。 ごめんね、ギルベルト兄ちゃんとの約束でアーサーは部外者に会わせられないから、お話はよければ俺が聞くよ?」 待たされたのはほんの5分ほどだったが、ギルベルトが金竜から戻ってくるまでという時間が区切られているアンにとっては非常に長く感じた時間。 しかもそれだけ待たされて...
アン・マクレガーは正直後悔していた。 教職員宿舎から銀狼寮までは遠い。 もちろん道は伸びているのだから迷子になることはないのだが、それでも暗い道を一人で移動するのはやや怖い。
悔しいがその時の金虎の寮長は実に凛々しくカッコよかった。 金色の虎の刺繍のマントをたなびかせ、剣を掲げて寮生達に号令を下している姿はギルベルトの目から見ても本当にカッコいい。
そんな風に一瞬ギルベルトが考え込んだのを勘違いしたのか、 「馬鹿が~! 俺が孤立したかとでも思ったかっ!! 操られるだけ操られた挙句にシャルルのガキに寝返った馬鹿どもと違って俺は組織に買われているからなっ! ピンチになればちゃんと援軍が来るんだよっ!!」 と急に元気になったロディ...
──申し訳ありませんっ!いかなる処罰も受け入れますっ!! それはなかなか壮観だった。
おそらくシャマシュークの他の寮長や高等部生達が見たら感動のあまり目を潤ませるであろうこの光景は、そのスピリットを根底から否定したロディには不快なものとしか映らなかった様である。 口の端を歪めて嫌な笑みを浮かべてシャルルを見た。
──おや、うちのを連れ帰ってくれたのか、軍曹。 慌てた寮生とは対照的に、少し経って出てきたロディは随分と落ち着いていて、にこやかに言う。
ユーシスがそんな風に暗躍している頃、ギルベルトは寮生達を率いて金竜寮へと向かっていた。 ギルベルトの次に戦力があるであろうバッシュとルートは銀竜の寮生全員と寮長のルークとプリンセスのフェリ、そして金狼の寮長の香とプリンセスとは名ばかりの怪力アルと共に自寮のプリンセスの護衛に残し、...
アンが自分の携帯を取り出すと、ユーシスは ──これ、借りていいかな?直接話したい。 と上から手を伸ばしてそれを取り上げた。
──こんな遅くにごめんなさい… 動揺している様子をより鮮明にするため、上着も着ずにエントランスまで出てきたアン。 さすがに肌寒いがそれもか弱さを強調するためだ。 自分で自分を両腕で抱きしめるようにすれば、紳士なユーシスはきっと ──大丈夫だよ。それより寒いだろう?これを着て? と...
『銀狼寮には手を出すな』といきなり言われた理由は、傭兵派遣や警備を担っている業界一の大企業ツヴィングリ社の社長であるバッシュ・ツヴィングリが銀狼寮の寮生として在籍していて、すでにアンがJSコーポレーションの意志で動いていることを察知されているから、ということである。
打倒、銀狼寮プリンセス!! …を当面の目標にすることを決意したアン。 明日からは本格的に落とすターゲットをギルベルトに絞って、彼と一緒にあの女…もとい、あの女に似た銀狼寮のプリンセスを追い詰めて行こう。 なんならすべてが寮対抗のこの学園でライバルにあたる他の寮のプリンセスをやっぱ...
…ふふ~ん、明日こそは彼の笑顔は私のもの~♪ シャマシューク学園の教職員宿舎の一室で、アン・マクレガーは鼻歌を歌いながらドレッサーを前に髪を梳かしている。
ギルベルトが寮内の大広間についた時には、すでに寮生達は皆、前回の寮対抗戦略大会…通称プリンセス戦争時に着用していた銀狼寮のトレーニングウェアを着用の上、モブ三銃士の一人のマイクの指示で運び込まれたソレ用の防具を身に着けた状態でカイザーを待っていた。
「おぉっ?!すげえっ!!」 立派な刺繍のマントを手に驚くギルベルトにアーサーはフフッと嬉しそうに笑う。 「誰かがプリンセス戦争で金虎のカイザーが金の虎の刺繍のマント着てたって言ってたから…うちも着たらカッコいいかなと思って、こっそり刺繍してたんだ」 と言うプリンセスは最高に可愛い...
──あ~、仕方ねえっ!三銃士、誰かお姫さんとルッツを呼んで来てくれ。 結局ギルベルトは決断せざるを得なかった。 少なくとも知らなければもう少し放置できたものでも、こうして知ってしまえば学園の伝統と誇りを踏みにじろうとする輩を放置するのは、ギルベルトの心情うんぬんは置いておいても寮...
「…軍曹、あの……」 案内の寮生に先導されて寮長室のリビングに入ってきた金竜のプリンセス、シャルルは、少し落ち着かなげにそこにいるバッシュにチラリと視線を向けつつ口を開いた。
「銀狼寮、恐ろしいな。 勝てる気がしてこない…」 モブース達の説明を受けたあと、ユーシスは驚きを隠せないように小さく首を横に振りながら言った。 「統率取れすぎだろ。 他の寮でも優秀な寮生は居るが、これだけ優秀なのに自己主張がほぼなくて、カイザーファーストな寮生なんて見たことがない...
「全員の確認終了。 結論から言うとロディの排除は了承。 ただし…それに関しての責任は銀虎で取ること。 つまり、俺らはお前に協力を求める見返りとして、ロディの排除というお前の側の条件を受け入れたという形を崩さないこと」
──俺と錆兎の関係?う~ん…少なくとも将来を固く誓いあった仲ではあるな。 隊士生活も始まって水柱邸に住み始めた炭治郎にどうしてもと頼まれて義勇を館に招待。 炭治郎はその時に直接例の質問をして、義勇にそう答えられて玉砕したらしい。
──義勇さんて綺麗な方ですねっ!! 炭治郎が最終選別を超えて無事隊士になり初任務に就くのに狭霧山から街に降りてきた。 通常は新米隊士達は任務の時以外は藤の家と呼ばれる協力者の宿に泊まりながら日々を過ごすのだが、鬼である禰豆子付きの炭治郎にはそれも難しいだろうと、村田は彼を水柱屋敷...
村田が連れてきた少年少女を預かってもらうということなので、当然錆兎にはいよろしくというわけにはいかない。 そこで、元水柱の鱗滝左近次の元には村田も同行することになった。
アンボイナのシェアを独占してから数か月。 ミナモト商会は猛スピードでマカッサル、スラバヤのシェアも独占。 もちろんその間にはクーンの側もこちらが独占している街に攻撃を仕掛けたりもしてきたが、それを見越しての防壁強化だ。
「ムラタ、アスワングってなんだ?」 その日、いつもよりはやや早い時間に帰船した錆兎の第一声がそれだった。
あれからアンボイナに寄港。 この街のシェアはほぼほぼクーンの物だったが、そこは計略はお家芸のようなものでお手の物のマリアが街に部下を潜ませて秘やかに…そして実に見事にクーンの悪評を流して、度を超えた不信感にクーンとの契約を打ち切ったシェアを買収。 着々とシェアの独占を完了させるま...
──それで…引き受けてきてしまったわけね…… 船に戻って例によって船長室で報告会。 そこで小箱を見せつつ、クーンについての話をすると、マリアは片手を額にあてて、はぁ~…と、小さく息を吐き出した。
「…ってぇことで、対等になったとこで、まあ本題なんだが…」 握手の手を離したところで、ペレイラはもう一度、錆兎に座を勧めて、自身もソファに座りなおした。 こちら側に本題があったように、ペレイラの側にも会見を受け入れるだけの理由、本題があったらしい。
こうして馬車が停まった先、ペレイラ商会の本拠であるマラッカの商館。 とうとう、来てしまった…と、再度緊張するムラタに ──大丈夫。責任者は俺で、すべての責は俺が負う。お前は何も気にしなくていい。 と、錆兎が笑顔で言ってくれる。
バナナ、スイカ、スターフルーツ、マンゴー、グァバ、パパイヤ、パイナップル、ジャックフルーツ、ポメロゥ、ドクゥ、マンゴスチン。 初めて降り立つマラッカの街の市場はとても賑やかで、そこでは驚くほどの種類のカットフルーツが所狭しと並んでいる。
──あ~…それ檮杌じゃないかしら。よく生きて帰って来たわね。 ──ひっ…マジ?!いや、でもさ、あれって伝説上の生き物じゃないの?!
──う~ん…まあ、俺は信じる。 ──ええぇっ?!信じちゃうのっ?!!
──…あなたがいなければ俺は何もできませんでした。ありがとうございます… しばらくして禰豆子を家に置いて炭治郎が穴掘りを手伝いに来た。
──最初にね…一刻も早く弟君を楽にしてあげたほうがいい。 そう、鬼のこととか鬼殺隊のこととか今後のこととか話すことはたくさんあるが、まずは可哀そうな子どもを苦痛から解放してやるのが先だと村田は思う。
村田を早く自宅で休ませてあげたい…そんな炭治郎の優しい気持ちがアダになった気がする。
寒い…。 前世では義勇はこんな寒い中を竈門家を目指して山を登ったんだなぁ…と村田は低地とは段違いに違う標高の高い山の寒さに震えながら漠然と思った。
「さすが村田だっ! 誠実で努力家なお前なら絶対に不死川の心を解きほぐせると思っていたっ!! お館様も大絶賛してたぞっ!!」
「…不死川…大丈夫?体調悪い?」 …が、再会した村田の第一声だった。
不死川実弥は自分が柱とは認めていなかった。 風柱の座を拝命した時、断固として拒絶した。
「俺ははっきり言ってずっと弱いよ。 強かった時期はないと言い切れる。 まず誤解を解いておくと、俺が強いと思われたのはめちゃくちゃ強い錆兎がそう思われるような発言をしたから。 それだけだからねっ」