※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
翌日、類は会社へ向かった。ブラックソープの商品は既に完成している。それをどう販売するかの最終確認だ。一部は桜子の会社のパッケージで作り、それは既に日本へ送っている。販売方法はそれぞれ好きな方法で売り込む事になったが、発売日だけは合わせる事にした。『販売日は今日から二週間後。日本に送ったSAKURAKOと発売日は同じ。中の商品も全く同じ。パッケージだけが違う事は承知の通り。つまり、、負けるわけにはいかない。...
フランスに着き、救急車に乗って病院へ運ぶ。スムーズに移動が出来るのは両親が根回しをしてくれたおかげだ。その最中も、つくしはしきりに申し訳ないと謝っていた。だがどこかホッとした表情にも見える。それは類も同じだ。病院内の個室に運ばれ、簡単な検査が行われた後やっと二人っきりになった。「痛い所はない?」「大丈夫。痛み止めが点滴に入っているから。」「あんたの事だから中途半端で仕事を放りだしたとか思うなよ?あ...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございます。以前少し連載しました『あんた、誰?』という作品ですが、似たような作品があると指摘を受け取り下げました。そこから指摘部分を修正していたのですが、このまま公開するのもどうかと悩んでいました。ですがこの作品に費やした時間があまりにも長く(修正も含め)、このまま埋もれさせるのもどうかと思い期間限定で公開させていただきます。全部で182話あります。期間は3...
オヨ州に着いた類は、その足で作業場へ向かう。そこには一生懸命働いているサニ達がいた。『あっ、類!恋人はどうなった?』『昨日は突然キャンセルしてごめん。牧野が勤務していた診療所が窃盗団に襲われ左肩と右脇腹を銃で撃たれたけどなんとか命は取り留めた。』『良かった。』サニ達はホッと安堵し喜び合う。『それで本当は後三日はここに居る予定だったんだけど、病院についていたんだ。だから俺は今日までとなる。何か聞いて...
類とアドが待つ廊下に、以前つくしの診療所で見た男性がやってきた。医薬品などを運び、ラゴスやアブジャの病院へ行くときには連れて行ってもらっていると言っていた男性だ。『牧野先生が撃たれたと聞いたんですが?』『はい。診療所が襲われ、この子供は腕を切られ、牧野は撃たれて手術中です。』男性は心配そうに手術中のドアを見る。『もしかして薬が原因ですか?』『そのようです。診療所はもぬけの殻でした。それとパソコンも...
アドはつくしと共に木の陰に隠れた。すると診療所から警報音の合間に声が聞こえた。「牧野!! 牧野、どこだ? 牧野!! 牧野!!」類!!類の声だ!!『先生。類が来た。助けを呼んでくる。』つくしにそう呼びかけるが反応がない。アドは半泣きだ。つくしをこんなにしたのは自分に責任があるからだ。アドはソッとつくしの背を木にもたれかからせると、急いで扉へ近づく。すると知らない男性と共に類の顔が見えた。間違いなく類...
つくしは急いで窓に足をかける。そして体が半分ほど出たところで犯人が戻ってきて銃を構えた。その銃に向けスマホを投げつける。少しでも逃げる時間を稼ぐためだ。案の定、男は一旦銃口から顔を離した。その隙に窓から外に出て、一目散に扉へ向かう。扉は全開になっている。扉を超えれば銃口を向けられても当たる事はないはず。そう思いながら必死に走るつくしだったが、熱い物が左肩と右腹に感じた。と同時にズキュン、ズキュンと...
つくしは門を閉めた後すぐ診療所のドアも閉める。そして控室へ向かうと、パソコンを起動させ他の病院へ移動させる品と数を表示させる。それを見ながら積まれた段ボールを一つずつ診療所内へ運ぶ。明日の診療前には取りに来ると言っていた為、診療所内で仕分けしても問題ないと判断した。するとキッチンの上にチンチンというドーナツが置かれている。類が持ってきた物だと分かるが、今日はお茶休憩をする時間も無かった。しかも類ま...
アドは水を汲むために診療所へ向かって歩いていた。トロの姉の子供がもうすぐ生まれるという事で水が必要になったためだ。先に汲みに行っていた村の子供達と手を振りながら診療所へ向かう。アドは薬のお礼を言いたくて気もそぞろだった。時刻は夕方になっており、早く行かないと診療所が閉まってしまうと気持ちは焦っていた。『どっちが生まれるかな。それに先生にお礼を言わないと。ちょっと酸っぱい薬を皆に分けたよって。』ブツ...
リバーズ地方での爆発事故から二日経った。つくしは今日も忙しく仕事をしていると、突然入り口が騒がしくなった。『すみません。こちらに牧野先生はいらっしゃるでしょうか?』『はい。牧野は私ですが、、』つくしは自分の名前を呼ばれ、診療の手を止め入り口へ向かう。明らかに住民とは違う人たち。仕事か何かで急病でも出たのだろうかと思いながら入り口へ行くと用紙を手渡される。『道明寺様から牧野様に医薬品を届けるように頼...
司が帰宅すると使用人が慌てて出てきた。もちろん突然の帰宅だしお腹が大きくなっているキャサリンが出迎えなくても何の問題もない。『お帰りなさいませ。』『変わりねぇか?』『はい。』『妻の調子はどうだ?食事は済ませたか?』『はい。既に済まされお部屋でゆっくりされております。』『じゃあちょっと顔を見てくるわ。』時間はまだ21時前。まだ寝ていないだろうがお腹が大きく動くのも大変で横になっているんじゃねぇか?と...
司は点滴が終わると西田と共に病院を後にする。そしてまっすぐアブジャ空港へ。その間、司は何一つ話をしない。それが却って西田を不安にさせる。記憶を取り戻した今、司様はどうされるのか?牧野様はキッパリと断られ親友という言葉で丸く収まったように思いますが司様の気持ちまでは分かりません。もうすぐお子様も生まれますし波風は立てて欲しくないところです。司は記憶を失くしてからの事を色々考えていた。なぜ牧野を見ると...
縫合が終わると今度は下半身を見る。太ももが赤青く腫れている。「折れてるかな?レントゲンを撮ってみよう。頭は打った?」「あぁ。体ごと吹き飛ばされたからな。」「じゃあMRIも撮るね。」つくしは看護師に伝え、どちらが空いているか確認をしてもらう事に。そして司のストレッチャーを押しながらそこへ向かう。先にMRI、そして次にレントゲンを撮りそれを見ながら説明をする。「頭は今の所大丈夫みたいだけど、24時間は要注意。...
ドカーーン、、バーーン、、ババーーン、、、まばゆい閃光に司は目を閉じ腕で顔を隠すと同時に体が大きく跳ね飛ばされた。そして地面に強く体を叩きつけられる。一瞬の出来事で何が何だかわからない。ただ腕と腹が熱く背中と足が痛い。遠くで西田らしき声が聞こえるがどうなっているのか全く分からない。息をするのが精一杯だ。「司様。大丈夫ですか?司様~~~。」司は動かせる腕を上にあげた。つくしは病院で引継ぎと挨拶を行っ...
つくしは早朝、ラゴスの病院へ行く。それに合わせナイラは村へ帰り、明日トロが来てくれることになっている。『じゃあ先生、お気をつけて。』『ナイラも気を付けてね。』『はい。』ナイラはバケツに水を入れるとそれを頭に乗せ村へと歩き始めた。ナイラとトロはこちらに仕事に来る時は必ず空のバケツを持ってくる。そして交代する時に水を汲んでそれを持ち帰っている。本当に働き者だと感心するほどだ。『ではつくし、行きましょう...
司はオンド州知事庁舎で天然ゴムの業者と交渉を行っていた。『初めまして。道明寺ホールディングスの道明寺司です。今回は天然ゴムの調達の為に来ました。実は我が社は天然ゴムを他の業者から買っており、それでは安価な商品が出来ません。ですから業者を通さず直接現地から購入したいと思い、天然ゴムを採取している業者を紹介してもらいました。昨日のうちに話はあったと思うのですが、それぞれの産出量と販売価格を教えてくださ...
類は診療所へ入ると直ぐにつくしと目が合う。「こんにちは。」「ちょっと待ってて。」「ゆっくりで良いよ。」つくしは診療中だ。その為、類は隣の控室へ入ろうとしたところ、アドから声をかけられた。『類!』『久しぶり。アド。』『なあ類。先生が帰るのほんと?』『ん。』類はここではなんだからと診療所の外へ出る。そして日蔭にアドを連れていくと並んで座る。『先生にはずっといて欲しいんだ。』『そう思ってくれるのは嬉しい...
入り口が騒がしくなり、つくしはそちらを見る。すると信じられない人物が現れた。「よくこんなところで診療してんな。衛生面が最悪じゃねぇか。」つくしはすぐに声が出ない。ただその声色は蔑んだもので自分を見る目も厳しい。つまりまだ記憶が戻っていないと分かる。「何の用ですか?」「おいっ、そいつの顔はどうしたんだ?まさか伝染病じゃねぇよな?」司の視線は水癌に侵され顔が変形した男の子に向けられている。つくしは診療...
つくしと両想いになった類は仕事も今まで以上に張り切っていた。扱う道具に少しでも慣れてもらいながら作業効率を改善し、なんとか安定した製品が作れるようになった。そして出来た製品を箱詰めし、フランスへ送る段階になった。依頼していた運送業者に頼み、アブジャの空港へ運びそこからフランスへ送ってみる事に。フランスに到着した時点でどれだけの石鹸が破損しているかも確かめる予定だ。ナイジェリアでの活動は残り一か月と...
更に一か月が経った。花沢物産ブラックソープ担当者が何度か類のいる現地に足を運ぶようになった。ネットでやり取りも行っているが、どうしても現地を視察した方が早いためだ。作業場で製造をしている過程を見て、火にかけた鍋を混ぜるときには下に台座のようなものがあったほうが楽なのではないか。型に入れたブラックソープがしっかり固まるまでの置き場所を平面ではなく立体にした方が場所を取らないのではないか。原材料を砕く...
ナイジェリアに着いた類は、すぐにオヨ州へ向かう。サニには新しい場所で必要な物などを考えておいてほしいと伝えている。それを確認するためだ。サニに連絡を入れ作業場として選んでいた場所で落ち合う。『無事了解を得られたから本格的に製造を始める。これからも頼りにしてる。』『ありがとうございます。頑張ります。』『それで作業場をここにしたいんだけどどうだろう?』『広いし良い場所だと思います。』『石鹸は衛生品だか...
あきらは出張でシンガポールへ来ていた。その日、司もシンガポールに居る事が分かり、早々に連絡を取り夕食を共にする事になった。シンガポールのメープルレストランで二人は久しぶりの再会を喜ぶ。二人はシャンパンで乾杯をした後食事をしながら会話を続ける。「よぉ。結婚式以来だな。元気にしてたか?」「まあな。司は相変わらず忙しそうだな。新婚なのに大変だな。」「仕方ねぇよ。」「キャサリンさんは順調か?」「あぁ。だい...
久しぶりにフランスに戻ってきた類を麗は出迎える。「お帰りなさい。」「ただいま。」「どうだった?大丈夫だった?」「ん。なんとか形になりそう。」「それは良かったわ。じゃあ当分ここで暮らすのよね?」「いや。社内会議をした後すぐに戻る。向こうで作業場を作り実際に製造を初めるから。」麗も無理は言えない。これは類が主導し製造する初めての商品で失敗する訳にはいかないと分かっている。「あっ、母さんにも感想を聞きた...
その夜、類が持ってきたブラックソープで早速顔と頭を洗う。「あっ、前回のよりも良い香りがする。泡も滑らか?」つくしは頭をタオルで巻いてトロの元へ行く。『トロ。石鹸はどうだった?』『凄く良いです。香りも良いし泡立ちも良いと思います。』『だよね。』『類は優しいですね。』『ん?確かに優しいね。』突然トロが類の話を始め、つくしは耳を傾ける。『類が初めて私たちの村に来た時に、村長は単に話を聞いてすぐに追い払う...
類と田村はラゴスへ向かった。そこはかなり近代化されており高層ビルもいくつも立っている。電線もあり至って普通の街が存在している。つくしが住んでいる村と同じ国とはとても思えないほどだ。そんな中、メモしていた物を買っていく。そして米と缶詰も買ったが、そのどれも海外産。つまり輸入品だ。この国は食料自給率が低く輸入に頼っている。その割に人口増加が顕著で食糧難に見舞われ多くの子供達が栄養失調で命を落としている...
その夜も類は診療所に泊まる。「牧野。ナイラとトロを雇ったんだけど、問題が一つある。」「何?」「字が読めない。この辺の女性は学校に行かないんだな。アドが行っていたからてっきり皆行っているものとばかり思ってた。」「へぇ。知らなかった。街の人なら通っているのかな?」「たぶんね。オヨ州の女性は文字が読めたから。」「だから類が苦労していた訳だ。」つくしは昼間の事を思い出しクスクス笑う。「紙に書いて壁に貼ろう...
翌朝、早朝にもかかわらず門の前には数人の患者が集まっていた。つくしは類から貰ったカップ麺を食べると診療所内のソファーで寝ている類を起こす。「ごめん。患者さんが来ているから門を開けたいの。寝るならあたしのベッドで寝て?」「ん?」類は体を起こすと大きなあくびを一つする。こんなところでぐっすり寝れるはずがないと思いながらソファーに横になった。だがここ数日あまり寝ていなかったせいかぐっすり眠れた自分に笑い...
「あたしが決めるの?」「俺はもう決めてるから。牧野と一緒にこの先の未来を歩むってね。だから後は牧野の気持ち次第かな?もちろんすぐに結論は出せないと思う。10年と言う月日があるし、俺とはほんの半年ほどの付き合いだからね。だから俺がここに通うよ。俺をしっかり見てそれから決めれば良い。」つくしは言葉にならない。嫌なわけがない。半年ほどの付き合いだけど、凄く助けられた。もちろんそれは今もだ。花沢類の言葉はい...
つくしは類がコーヒーを飲んでいる間にヤム芋を茹でてすりつぶしマッシュポテトのようにする。そして缶詰を開けてテーブルの上に置く。「はい。あたしがいつも食べている夕食。花沢類も食べるでしょ?」「ん。いただきます。マッシュポテトの量が多すぎない?」「昼食を抜くからこれぐらい平気で食べられるのよ。」つくしは笑いながら告げる。変わらぬつくしの笑顔に、類はホッとし嬉しくなる。医師になっても牧野は牧野だ!と思え...
「今夜はここに泊まっても良いかな?」「えっ?」「もっといろいろ話がしたい。この10年の事、何も知らないから。」「でも花沢類は仕事でしょ?」「そうなんだけど石鹸の乾燥に二週間かかるらしいから、その間は暇なんだ。とりあえずその様子は秘書に録画させてるから後で早送りで見れば大丈夫。それにそろそろ仕事再開だろ?終わるのは夜になるんじゃない?」「うん。そうなんだけど。」「俺は診療所のソファーにでも寝るから心...
つくしの居るナイジャー州の診療所に着いた類は、お土産の袋を手に車から降りる。ボディガードは診療所の入り口に待機させ、類一人で入る。つくしはすぐに類の姿に気が付いた。「あっ、花沢類。ごめんね。ちょっと待ってて。」「ん。ゆっくりでいい。」つくしは断りを入れた後、再び患者を診る。前回と同じように大勢の人で溢れている。類は邪魔にならないよう隅に立ち、つくしを観察するようにジッと見る。つくしは母親の話を聞き...
「実はこの前ナイジェリアに行ってきた。その理由は三条からブラックソープとジャングルハニーが手に入らないかと聞かれた事がきっかけ。牧野の居場所が知りたければその二つを何とかしろと言われて現地へ行ってみた。」「それがナイジェリアだったわけだ。」「そう。とりあえずジャングルハニーが取れる場所を調べ、そこで契約してもらえないか交渉していた時にかすり傷を負って診療所と言う流れ。この前三条にお礼を言ってきたん...
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※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
「牧野は愛されて生まれて来たと俺は思う。少なくとも牧野を生んだ母親は父親の事を愛していた。でなければ母親が牧野を生むはずがないだろ?好きな人の子供だから生みたかったんだよ。片親になろうとも生まれてくる子供に苦労を掛けるけど、それでも愛する人との子供だから生みたかったんだと思う。だから生まれてこなければ良かったと考えるのは止めたほうが良い。」「ありがとうございます。」「もちろん本妻からすれば疎ましい...
食事をとりながら、つくしはキッチンの上に置いていた物をテーブルに持ってくる。「これ、、類さんへお土産です。」「お土産?どこに行ったの?」類は紙袋を覗くと、日本酒の箱が見える。「茶会です。」「茶会に行ってお土産、、、」類はプッと吹き出すがすぐに「ありがと。」とお礼を述べる。「茶会が開催されたホテルの売店で買いました。本当はデパートで何か買おうと思ったんですけど偶然マナー教室の先生に出会って、GWの特別...
翌日、つくしは午前中に祖母の施設へ向かった。するとそこに義母と誠とその婚約者の緒方真理子がいた。「つくし!元気だったか?」「うん。」つくしは入り口で立ち止まり頭を下げる。誠はすぐに婚約者を伴いつくしの元へ向かう。「つくしさん。突然引っ越しさせてごめんなさいね。」「とんでもないです。リフォームはどうなりましたか?」「順調よ。後一か月程で終わると思うわ。それも含めておばあさまに報告しに来たの。」真理子...
20時を少し回ったころ、つくしは帰宅した。駅から自転車を押して自宅まで帰ったのだが、確かに人通りは少なく外灯も少なく暗い。しかもこんなに遅くなるとは思っておらず、自宅の外灯もつけておらず真っ暗だ。その為、スマホの明かりを頼りに自宅の鍵を開けた。自宅に荷物を置くと直ぐに外に出て洗濯物を取り込む。そして急いで雨戸を閉めた。ここに来てこうして夜中に外に出るのは初めてだ。周囲が山に囲まれのどかな場所だが、...
総二郎は上手い言葉が見つからず、とりあえず料理を食べ終えた事から茶を点てる事にする。「じゃあお茶を点てようか。」「はい。ありがとうございます。」総二郎はスタッフに声をかけると、すぐに弟子が茶道具を持ってきた。お湯は電気ポットの物を持ってきている。「流石にお湯は電気ポットの物だけど、是非飲んでほしい。」「ありがとうございます。」総二郎は畳に座ると茶道具を開き準備をする。つくしもその前に正座するとじっ...
ホテル内の和食レストランの前で待っていると、総二郎が弟子を連れてやってきた。その格好は和装だ。時間はまだ16時30分にも満たない。「ごめん。待たせたか?」「いいえ。私もさっき来たところです。」「じゃあ入ろうか?」「はい。」弟子とは入り口で別れ、総二郎がつくしを伴い中に入った。総二郎の姿に店員がすぐに個室へと案内する。広々とした畳の個室で、テーブルの下は掘り炬燵になっている。「本村さん。ちょっと時間...
先ほどまで総二郎が座っていた席に家元夫人が座り、つくしは背筋を伸ばす。「本村さん。お久しぶりです。おばあさまはお元気?」「はい。今日はお招きいただきありがとうございます。祖母は元気です。」「そう。突然辞められたから驚いたのよ?」「申し訳ありません。引っ越すことになり教室に通えないので辞めさせていただきました。」「そうなんですってね。この後、総二郎と話をされるんですよね?」「はい。何か壁にぶち当たっ...
つくしが茶会の開かれるホテルに到着するとかなりの人がロビーにいた。そのほとんどが着物姿だ。既に13時を回っており受付は長者の列だ。つくしは少し時間を潰すためにトイレへ向かった。そこで身だしなみをチェックしていると茶会に招待されていると思われる女性が入ってきた。つくしはワンピースの為、茶会に出席すると思われていないのか会話は続けられている。「流石西門流のお茶会だけあって凄い人ですね。14時からの部の受...
こうしてつくしと偶然再会した今がチャンスだ!色々聞き出そうと夢子は思う。「つくしちゃんから見てあきら君はどういう人に見えるかしら?」「優しいお兄ちゃんという感じです。いつも微笑みながら話を聞いてくださり、さり気なくアドバイスをしていただいたこともあります。」つくしの答えに夢子はガッカリする。『優しい』はまだしも『お兄ちゃん』という単語は頂けない。出来れば『優しい男性』と言って欲しかった。でも『優し...
4月29日類は早朝から福岡出張へ向かう。つくしも早く起きおにぎりとペットボトルのお茶を持たせる。「車の中ででも食べてください。」「ありがと。」「気をつけて。」「ん。牧野も早朝からご苦労様。この後、もう少し寝ると良い。」「はい。」つくしは類を見送るために玄関先へ出る。そこには花沢の車が既に待機していた。一泊以上の出張の場合、本宅から車を手配している。運転手もつくしの姿を見るとぺこりと頭を下げた。その...
その日、類が帰宅してからつくしは話を切り出した。「花沢さんはGWの予定はどうなっていますか?」「あぁ。ちょうど5月の予定を控えてきたところ。GWから国内出張が始まり時には一泊することもある。」類は胸ポケットから予定表を取り出しテーブルの上に置く。「見ても良いですか?」「どうぞ。その為に持って帰ってきたんだから。」つくしはマジマジと予定表を見る。そこにはびっしりと予定が記入され、遠い所は一泊二日の予定で...
GWを10日後に控え、類は自分のスケジュールを調べた。出張などはあらかじめ決められている。近場なら突然の変更はあり得るが泊りとなると宿の手配なども有り、早々スケジュールの変更はない。もちろん今までたいして気にも留めなかったが、今は同居人がいる。毎日食事を作ってくれているし、泊りがけの出張の場合は出来るだけ早く伝えておきたい。それを見るとGWの前半は一泊二日で福岡出張がある。それ以降も5月は泊まりの出張...
つくしの元へ長男の誠がやってきた。庭で苗の様子を見ていたつくしは、急いで玄関へ向かう。「誠兄ちゃん!」「元気か?」「うん。元気!突然どうしたの?」誠はつくしの様子を窺いながら家や周囲を見渡す。こうしてつくしが暮らしている家を目の当たりにしたのは初めてだ。引っ越しは弟の徹が手伝い、かなり小さな家だと話を聞いていた。まさにその通りで、花沢の御曹司は少し変わっていると思わざるを得ない。「花沢さんとは仲良...
類とつくしはホームセンターへ向かった。その入り口には沢山の花の苗が置いている。それを順に見て回る。「へぇ。沢山の花があるな。」「花の形が似ていても大きさが違うし値段もいろいろですね。」「だな。品種改良して名前が増えたのかも?分からないけど。」「初めてですから失敗しても気兼ねが無い安い物にしましょうか?」それを聞き類は笑いが漏れる。「失敗って。花を植えて水をあげるだけだろ?」「あたしもそう思うんです...
季節は冬から春へと変わっていた。類とつくしは穏やかな日々を過ごしていた。それは類が想像していたよりも穏やかだ。朝は起きると朝食が用意され、帰宅すると夕食が用意されている。3月頃までは22時から23時という遅い時間に帰宅していたが、必ず待ってくれていて一緒に食事をとる。それが今は20時までに帰れるようになりホッとする。食事をしながら今日あった一日の出来事を話すのだが、それは牧野が主になって話す。俺の...
月曜日類は6時に起きる。何時もは6時半に起きるところを朝食をとるために30分も早く起きた自分に苦笑する。一階に降りると既に朝食が食卓に用意されていた。それは昨夜の事。『明日は何時に仕事に行かれますか?」』『7時過ぎ。』『では6時頃に起きられますよね?朝食は洋食で良いですか?いつもはコーヒーだけと言っていたので。』起きられますよね?と疑問形ながら決定事項だった。三食食べさせるという義務を背負っているか...
スーパーに到着した二人。つくしはすぐにカートを手に取る。「俺が押すから。」「ありがとうございます。」つくしはカートを類に託すと店中に入った。入ると直ぐに野菜コーナーだ。その中で本日のお買い得品をチェックする。「ジャガイモが安い。肉じゃがにしようかな。」肉コーナーへ行ってもお買い得品をチェックする。「スペアリブが安い。買っておこう。」魚コーナーも同じように本日の目玉を注目している。類にしてみればそれ...
日曜日つくしはスッキリと目覚めることが出来た。外はまだ薄暗い。急いで布団を畳むと部屋の隅に置く。そして静かに階段を降り顔を洗うと洗濯機のスイッチを押す。洗濯機が回っている間に朝食の準備に取り掛かる。と言ってもサラダとスクランブルエッグとパンにヨーグルトという簡単な物だ。準備を終えると時計を見る。時刻はまだ7時前。勝手口から外に出ると明るくなり始め周囲の様子が伺える。東京都内だというのにシーンとし物...
「夕食が出来ましたよ~。」その声にリビングからダイニングテーブルへ移動する。そこには魚料理を中心にした和食が用意されていた。「お口に合うか分からないですけど、EDを治すには食事も大切らしいんです。特に高脂肪、高塩分はダメなんです。今まで外食で済まされていたようですが、まさにダメダメ食事だったみたいです。」「そうなんだ。」確かに外食は高カロリー、高塩分にまちがいないだろうけど、そもそもEDじゃないんだよ...
自宅に着いた二人。つくしはすぐに物干し竿を庭に置く。そして買い物袋を手に家の中へ入った。「すみません。予定していた時間をかなりオーバーしていますね。」「そう。だから心配になってさ。」類はそう告げながら、自分の行動がおかしい事に気づく。何で心配になった?単に使用人として一緒に住むだけの間柄。きちんとメモを残しているしスマホがあれば道に迷う事も無い。それなのに、、予定時間を30分過ぎたからと言って探しに...