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第86話 花残 act.32 side story「陽はまた昇る」
その温もりに祝福を、英二24歳4月第86話花残act.32sidestory「陽はまた昇る」月が昇る、雪のない夜に。『おまえさんが山ヤとして鍛えられて育ったのは、この奥多摩だからなあ、』声まだ新しい、燻し銀みたいな深い声。あの声に育まれた自分は今、奥多摩から遠く屋上の夜だ。「でも月はある、」微笑んだ唇に煙があまい。指先くゆらす紫煙が月へ昇る、仰ぐ風の底に扉が軋んだ。「宮田?帰ってたのか、」こつり、こつん、靴音が夜に響く。その声に英二は振り向いた。「黒木さんこそ、今帰りですか?」「ああ、蒔田部長に呼ばれてな、」聞きなれた低い声こつり、レザーソールが傍にくる。月明かりスーツ姿あらわれて、すこし疲れ顔の先輩が笑った。「宮田の昇進と警察大学校が決まったぞ、良かったな?」ぽん、大きな掌が肩を敲く。堅いくせ温かな感触...第86話花残act.32sidestory「陽はまた昇る」
お誘いにより両神山夢見平へ・・・ 今回、元埼玉県警山岳救助隊第九代隊長の荒(あら)史郎さんの観音像を建立し開眼式を8月24日にとり行うとの事で仲間と参加して…
YouTube動画はたまに見ますが、ほとんどがダンス動画です。バレエから流行りのダンスまでいろいろと見ます。ダ
「山岳救助隊」 テレビで山岳救助隊を取材した特集がやっていた。 最初は東京の奥多摩エリアを管轄する消防署と警察の連携プレーが紹介されていた。 続いて一般登山道…
8月11日、日本は「山の日」で、昨日は登山に出かけられた方々もいらっしゃったことでしょう。富士山の登山道では、混雑を避けるため初めて規制導入とのニュース。(日本の)ワイドショーで富士山の登山客の様子を目にしましたが、リュックも背負わず、必要な装備もせず、半袖
第86話 花残 act.28 side story「陽はまた昇る」
ある日、境界線に英二24歳4月第86話花残act.28sidestory「陽はまた昇る」意識の底つんと刺す、薬品たち匂う。渋いような酸いような独特、けれど懐かしい匂い。こととっ、傾けるケトルきらめく湯飛沫、コーヒーの粒子さらさら崩す。見つめるフィルター湧きあがる湯気、ほろ苦く甘く昇らせる。「…ほんとひさしぶりだ、」声こぼれて自覚する、こんな時間どれくらいぶりだろう?ことこと滴る音こだまするマグカップ、白なめらかに深い黒茶が満ちてゆく。この香、この音、半年前まで日常だった。ただ慕わしさ英二は笑いかけた。「吉村先生、ブラックでよろしかったですか?」「はい、ブラックでお願いします、」答えてくれる声おだやかに響く。朝陽やわらかな雪の窓、白銀かぶるパトカーたちは四輪駆動の小型も多い。帰ってきているんだな、そんな実感...第86話花残act.28sidestory「陽はまた昇る」
第86話 花残 act.27 side story「陽はまた昇る」
秘匿、その信義を英二24歳4月第86話花残act.27sidestory「陽はまた昇る」フロントガラス、朝あわい陽ざし白くなる。また雪が降りだした車窓、懐かしい道に英二は微笑んだ。「吉村先生、署に着いても時間ありますよね。コーヒー淹れさせて頂けませんか、」警察医の勤務開始まで余裕あるだろう。謝礼の想いとひさしぶりの時間感覚に、奥多摩の医師が笑ってくれた。「宮田くんのコーヒーはひさしぶりですね、ぜひお願いします、」「はい、俺こそぜひ、」肯いて握るハンドル、右腕いつもより安定する。巻かれたサポーターと固定感に医師が尋ねた。「腕の動きはどうですか、いつもとは感覚すこし違うでしょう?」「はい、思ったより動きやすいです。痛みもありません、」応える車窓を流れる雪、ワイパー白く描きだす。もう4月、それでも銀色くるむ稜線...第86話花残act.27sidestory「陽はまた昇る」