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歌や踊りだけじゃない。静かにじわじわと感動が押し寄せるインド映画です。「エンドロールのつづき」(英語のタイトルはLast Film Show)は、インドの田舎町でチャイを売る少年、サマイ(バヴィン・ラバリ)が映画の面白さに目覚め、映画を学ぶために故郷を旅立つまでを描きます。パン・ナリン監督が子供の頃の実話を織り交ぜています。緑色のガラス瓶を通して見る世界。映写機の光の筋を舞う埃。そんなこと、私は意識したこともあ...
疎遠になってしまった父。その父が遺したものは、息子のピエトロ(ルカ・マリネッリ)には手に負えないものでした。子供時代の友達、ブルーノ(アレッサンドロ・ボルギ)の助けを借りて、遺された山小屋の建て直しを始めます。失われた父と息子の時間だけでなく、ブルーノとの時間をピエトロが取り戻していく様子が、抒情的でもあり切なくもあり。静かで、心に染入る作品です。ピエトロの父親の登山の軌跡を、ピエトロが地図で追い...
「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」2024年7月24日(水)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後7時より鑑賞(シアター2/C-5) ~アルモドバル監督流の西部劇はサンローランとのコラボで上映時間31分! お盆で帰省したり(両親はすでに他界しているが)、台風が来たりで、ここのところ映画館に行けなかったので、このへんで以前観たもののまだアップしていなかった短編映画の感想を……。 月に一度、映画の会を催している。といっても、ただ映画を観てそのあとに飲むだけなのだが、平日夜の上映後に飲みに行くので、どうしても帰りが遅くなる。家に着くのは11時半過ぎということも珍しくない。若者ならまだしも、おっさ…
「ロイヤルホテル」2024年8月8日(木)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時55分より鑑賞(スクリーン1/E-10) ~バーでバイトする2人が受けるセクハラ、パワハラ攻撃。男性優位社会の現実をリアルに反映 「#MeToo運動」をきっかけに、女性の地位もだいぶ向上したとはいえ、まだまだ男性優位社会の色は濃い。そんな現状を告発する映画がたくさん作られている。 去年日本で公開されたキティ・グリーン監督の「アシスタント」は、憧れの映画業界に飛び込んだものの、その闇に気づいて苦悶する女性を描いた社会派ドラマ。そのグリーン監督が「アシスタント」の主演ジュリア・ガーナーと再びタッグを組んで、男性優…
「ツイスターズ」2024年8月5日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時55分より鑑賞(スクリーン6/C-7) ~竜巻の恐怖をリアルに体験。スリリングな冒険活劇 久しぶりに超メジャーなエンターティメント映画でも観に行くか。というので、「ツイスターズ」を鑑賞。 この映画、1996年にスティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務め大ヒットした「ツイスター」の続編。そんな昔のことはよく覚えておらず、はたして鑑賞したのやら記憶が曖昧。しかし、心配はご無用。前作を観ていなくても、まったく問題ないのであった。 竜巻をネタにしたアクション・アドベンチャー超大作だ。冒頭は、主人公のケイト(デイジー・…
バルマク・アクラム監督の作品は、Kabuli Kid(2009年)以来、久しぶり。未婚で妊娠した女子大生、ワジュマ(Wajma Bahar)の顛末を描く映画「Wajma」。サブタイトルがアフガニスタンのラブ・ストーリーとあるので、最初は「なんか、今さら恋愛モノを見ても、ねぇ・・・」と、乾いた61歳の私は乗り気ではなかったのですよ、実は。それが、全然、ラブ・ストーリーなどという甘い話ではありませんでした。映画は、重たそうな雪がみっ...
次々と家族を失ったアリ。泣きたいはずなのに、泣けません。幸い、叔母(Hanieh Tavassoli)、親友、同僚たち、交際中の彼女、別居中の妻(Baran Kowsari)など、周りの人たちはアリを支えようとします。アリが思い切り涙を流すことができる日が、果たして訪れるのか。「今のあなたは、まるで一滴の水をかけられて溺れそうな蟻よ。自分が溺れそうだから、世界中が溺死していると勘違いしている。周りを見ていないのよ。」と、アリの現...
Hossein Darabi監督の最新作、「ヘナス」は、イランの核科学者、ダリウス・レザイネジャド(Dariush Rezainejad)が暗殺されるまでの日々を、妻、ショーレの視点から描いた、2022年の作品です。家庭的ではあるけれど、仕事のことを一切話さないダリウシュ(Behrouz Shoaybi)。ショーレは、徐々に夫の周辺でおかしなことが起きているらしいことに気づきます。自宅を監視する謎めいた隣人、ショーレの車に細工をしようとした男、パソ...
トルコ・クルド映画「別れ」の静かなBGMが忘れられなくて、「別れ」の予告編を何度も観てしまいます。「別れ」ではいくつも印象的な場面がありましたが、今日はアリ(Serbest Kalkan)がセサミストリートを見る場面のことを少し書いておきます。映画「別れ」では、画質が悪い上に、見ているうちに映らなくなります。勝手な思い込みですが、クルド人居住地区が他の世界から隔絶されていることを思わせるようでもあり、私の記憶にあ...
住み慣れた故郷を離れるか、それとも政府軍の味方となり、クルド労働者党(PKK)掃討作戦に加担するかを、マルディンの村人たちは迫られます。映画「別れ」の主人公は年老いたハミット(メフメト・アリ・イゾル)。妻の墓参りが日課で、赤いラジカセで音楽を聞かせてやったり、妻の肖像画を描いたりして、静かに過ごします。弔うとは、どういうことか。家族の死を悼むとは、どういうことか。いろいろと考えさせられます。時代は1990...
「メイ・ディセンバー ゆれる真実」2024年7月18日(木)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時40分より鑑賞(スクリーン6/C-7) ~36歳の女性と13歳の少年。23年後の2人の関係を追う主演女優 前回取り上げた「お母さんが一緒」に続いて自粛明け2作目に選んだのは「メイ・ディセンバー ゆれる真実」。「エデンより彼方に」「キャロル」のトッド・ヘインズ監督の新作だ。 本作はメイ・ディセンバー事件を描いた作品だ。メイ・ディセンバーというのは、年齢差のあるカップルを指す慣用句。1996年、教師だったメアリー・ケイ・ルトーノーが、当時生徒で12歳だった少年ヴィリ・フアラアウと不倫し、それが発…
映画「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」を観て、悪い意味で意表を突かれてしまいました
イギリスNo.1の大ヒット映画 こんにちは、本ブログ記載主のトーターです。 先日、久しぶりに映画館で映画を観て来ました。 予告編を見てちょっとだけ気になっていたのですが、「ハロル...
めちゃくちゃ怖いです。苦手な人やお子様は、鑑賞注意です。ある理由から、いわくつきの映画でもありますので。『女神の継承』と同じ監督です。
素敵な映画を、また見つけてしまいました。好きな人と一緒になるのが幸せなのか、親が勧める男性と結婚するのがいいのか。世界共通の悩みを、当事者それぞれの立場から描く Inner City 。2016年、イルガル・サファト監督の作品。予告編(英語字幕)本編(わかりやすい英語字幕付き)アルズ(ターミナ・ラファエラTahmina Rafaella)は、外科医の母のお陰で恵まれた学生生活を謳歌していますが、母親から結婚をほのめかされています...
『クワイエット・プレイス DAY 1』ただのパニックホラーじゃない!泣けるホラーだ!
こんなに感動できるホラーは、なかなかあるものではありませんよ。ハンカチを用意して観た方がいいかも。
2024年1月1日から、6月30日までに劇場で鑑賞した98本の作品から、印象に残った、感動した作品をランキング形式で紹介します。1月に15本、2月に11本、3月に19本、4月に26本、5月に24本、6月に3本という内訳です。管理人月平均16
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」2024年6月25日(火)イオンシネマ板橋にて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン4/D-7) ~居残り3人組の変化と成長。アレクサンダー・ペイン監督の熟練の語り口が光る 東京都知事選挙は、結局、蓮舫に投票することに決定。最初にゼロベースで考えて、小池と田母神はあり得なかったし、やや新鮮に映った石丸にはあの維新と(極右で知られる)アパホテル会長がついているうえ、なんと統一教会とも深い関係にあることが判明。なんだ、ちっとも新らしくないじゃん。 というわけで勇んで期日前投票に行ったら、うちの区の近くの投票所ははまだやってなかった。やれやれ(笑)。 政治…
本物の村人たちが出演しています。自然の雄大さに幸せを感じるか。それともテクノロジーや便利さに幸せを感じるか。心にとっては、生物としては、どちらが豊かなんでしょうね。
ユダヤ人やホロコーストをテーマにした作品は多いですが、クロアチア映画「レアとダリア」は、これまでとは異なった視点からユダヤ人虐殺の問題を扱っています。舞台は1939年のザグレブ。クロアチアのシャーリー・テンプルとあだ名された、13歳のレアは、同じく天才子役のダリアと大親友になります。しかし、時代はユダヤ系住民のレアたちに容赦しません。ユダヤ人を乗せた貨車の小さな窓からは、月明かりが静かに差し込みます。...
肌寒い6月の朝。冬物をマンションへ持って帰った後だったので、とりあえず手元にあるものを組み合わせて工夫します。コトリワークスの腹巻をネックウォーマーにして仕事に行きました。さて。後味のよいギリシャ映画を観ました。主人公はアテネで父親と仕立て屋を営むニコス(ディミトリス・イメロス)。映画「テーラー 人生の仕立て屋」は、宣伝がカラフルでしたが、意外にも真面目で現実的な展開。セリフが少なく、内向的なニコ...
1984年。ロサンゼルスでオリンピックが開催された年、何をしていましたか?私は幸せな大学生で、マンハッタンにあるInternational Student House(現在はありません)で世界中の学生たちといっしょに、古ぼけたテレビでオリンピックを観戦していましたが、チェコスロバキアの選手のことは何も覚えていませんでした。映画「線上のフェアプレー」(EUフィルムデイズでは「フェアプレー」)は、1980年代、共産圏だったチェコスロバキ...
久しぶりのイスラエル映画、「旅立つ息子へ」。息子を心配する父親という雰囲気が感じられる邦題ですが、息子から旅立つ父親の葛藤を描いた作品だと私は思いました。自閉症のウリのために、キャリアを棒に振る父親。別居中の母親はウリの世話を焼ききれなくて、ウリが入れる施設を見つけました。ところが、施設へ連れて行く途中、駅のホームでウリがパニックに。父親は施設には入れないと決め、ふたりで逃避行の旅に出るのですが。...
「ありふれた教室」2024年5月27日(月)シネ・リーブル池袋にて。午後2時5分より鑑賞(スクリーン1/D-7) ~ある事件をきっかけに追い詰められる中学教師。スリリングな社会派ドラマ 学校現場は問題だらけと言われる。それは日本もドイツも変わらないようだ。ドイツ映画「ありふれた教室」は、学校で起きた一つの事件をきっかけに、ある教師が追い詰められていく姿を描いたサスペンス・スリラー。であると同時に、教育現場の実態を問う社会派映画でもある。 ドラマの主人公は中学校の新任教師カーラ(レオニー・ベネシュ)。校内で盗難事件が多発していて、カーラのクラスの生徒も疑われてしまう。校長らの強引な調査に反発した…
教育現場の悩みをギュッと詰め込んでずぶずぶと沼にハマっていく恐ろしい作品でした。不寛容方式、人格権の侵害、そして人種問題、教育現場の悩みは尽きませんね。
「関心領域」2024年5月24日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時10分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~強制収容所の隣で平穏に暮らす所長一家。常に鳴り続ける音が心をかき乱す ナチスによるホロコーストを描いた映画は数々あるが、近年の映画は工夫を凝らしたものが多い。80年以上も前の出来事を説得力を持って伝えるには、正攻法だけでは難しい。 カンヌ国際映画祭でパルムドールに次ぐグランプリに輝き、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞した「関心領域」も、実にユニークな工夫を施した映画だ。マ…
伝説のマラソンランナー、パウル(ディーター・ハラーフォルデン)は最愛の妻(ターチャ・サイブト)とともに老人ホームに入居しますが、どうしても馴染めません。ベルリン・マラソンに出場すると決めるものの、ホームの管理者たちと衝突。パウルが批判した栗の人形作り、そんなにダメかなぁ。私はやってみたいんだけど、なんてパウルに少し反感を覚えながら見ていました。彼がオリンピックのメダリストであることを知ったホームの...
可笑しなスパイ映画「83歳のやさしいスパイ」をDVDで視聴しました。原題は、The Mole Agent (潜入捜査官)ですが、邦題にある「83歳」がなければ、あらすじを確認しようともしなかったでしょう。南米チリにある老人ホームに入所している母、ソニアが虐待や盗難の被害に遭っているようだ。私立探偵、ロムロのところに調査依頼が入ります。潜入捜査をするのは、83歳のセルヒオ。新聞の求人広告に応募した、まったくの素人。ホームの...
「胸騒ぎ」2024年5月15日(水)池袋HUMAXシネマズにて。午後4時より鑑賞(シネマ3/D-10) ~あんまりよく知らない人の家に泊まるのはやめましょう。北欧発の衝撃のホラー 子供の頃は怖がりで、お化け屋敷から10秒で飛び出したほどの私だが、なぜかホラー映画はそんなに怖いと思ったことがない。面白いホラー映画は、怖いというより、脚本や演出が巧みだなぁ~、と感心してしまうのだろう。 「胸騒ぎ」もそんな映画だ。「ミッドサマー」(2019年)、「LAMB/ラム」(21年)などに続く北欧発のホラーである。 デンマーク人夫婦ビャアン(モルテン・ブリアン)とルイーセ(スィセル・シーム・コク)が娘のアウネ…
またひとつ、心に深く残るお勧め映画と出会いました。「”ツウ”が語る映画この一本」で、大好きな料理研究家、ウー・ウェンさんが「とても静かな映画で、中国人のイメージが少し違ってくるかもしれません」と勧めていた映画「千年の祈り」をYoutubeで視聴しました。米国に住むバツイチの娘、イーラン(フェイ・ユー)を心配した父親(ヘンリー・O)が、中国からやってきますが、やがて父と娘、それぞれの秘密が明らかになってきます...
「青春18×2 君へと続く道」2024年5月7日(火)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後1時15分より鑑賞(スクリーン2/e-8) ~18年前の思い出を胸に日本を旅する台湾人男性。旅の先に見たものは…… 2019年の「新聞記者」で日本アカデミー賞を受賞した藤井道人監督。それを見て社会派の監督だと思った人もいるようだが、そういうわけではない。「全員、片想い」「青の帰り道」「デイアンドナイト」「ヤクザと家族 The Family」「余命10年」「ヴィレッジ」「最後まで行く」といった過去作を見れば、いかにジャンルを超えた幅広い作品を送り出しているかがわかる。 「青春18×2 君へと続く道」は、…
複数の外国語を学習する人なら、きっと興味をそそられる映画、それが「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」。邦題、長すぎ。原題は「翻訳者たち」。文京区の図書館でDVDを借りて視聴しました。ベストセラーのミステリー小説を、世界同時に一斉発売したいと目論んだ出版社の社長(ランベール・ウィルソンなんだけど、マッツ・ミケルセンで演じて欲しかった)。翻訳者たちを豪華な屋敷に隔離して、スマホもパソコンも翻訳者たちから...
【戦争映画】チェチェンのことも忘れないで とても美しい映画でした
連休が終わり、今朝の通勤電車にはおみやげらしき紙袋を抱えた会社員の姿が。退職代行会社「モームリ」は、連休明けの相談件数が爆発的に増えたとか。モームリを頼ることの是非はさておき、一か月でそっぽを向かれる会社って、何なんだろう。私が定年退職した企業は表向きはホワイトですが、部署による色の差が大きくて。私の後任として来た派遣社員、7月で辞めたって・・・(笑)。結局のところ、長居をしている一部の人が ...
(監督・脚本:ギャスパー・ノエ 2021 フランス)連休前に観た最後の映画です。「老夫婦(というか「人間」)の老いと死に至る人生最後の時期を、感傷抜きに冷徹な視線で描いた」作品…といったような説明をどこかで見ました。わたしが興味を引かれたのは「その「冷徹な視
「プリシラ」2024年4月18日(木)シネ・リーブル池袋にて。午後2時30分より鑑賞(シアター2/D-5) ~エルヴィス・プレスリーの元妻の孤独と自立への道 昨日、大学病院の眼科に行ったら、左目に異常があるというので、目に注射をされて4万8210円も取られてしまった。先日15万円のパソコンを買ったばかりだというのに、どうするんだ、ワシ? 映画なんか観てる場合じゃないだろう。 しかし、まあ、それはそれとして(本当は、それはそれじゃないけど)、今日取り上げるのはソフィア・コッポラ監督の「プリシラ」。エルヴィス・プレスリーと結婚したプリシラ・プレスリーの回想録を映画化した伝記映画だ。 米軍関係者であ…
(監督・共同脚本:ベルナルド・ベルトルッチ 1987 イタリア=イギリス=中国)映画館で観たことは、もしかしたらないのかもしれません。つい先日、昭和の映画館で上映されたときも元気が足りなくて観にいけなくて。TV画面で観るのも…何年振りかなあ。ストーリーは大体覚
『枯れ葉』を観にいって、そのまま次の『理想郷』も観ちゃった~♪ という(^^)『枯れ葉』(監督・脚本:アキ・カウリスマキ 2023 フィンランド=ドイツ)『理想郷』(監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン 2022 スペイン=フランス)テーマも雰囲気も、当然物語も