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映画貧乏日記 https://cinemaking.hatenablog.com/

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。・・・というわけで、主に映画館で観た映画のレビュー(感想)を書いています。

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2022/07/21

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  • 「あまろっく」

    「あまろっく」2024年4月23日(火)新宿ピカデリーにて。午後1時55分より鑑賞(スクリーン8/D-9) ~定番の人情喜劇だが、江口のりこ、中条あやみ、笑福亭鶴瓶のキャスティングが絶妙 「あまろっく」。何だかヘンテコなタイトルの映画だなぁ~。と思ったら、実はこれは通称「尼ロック」と呼ばれる「尼崎閘門(こうもん)」のこと。水門を開け閉めすることで、兵庫県尼崎市を水害から守ってくれているのだ。 映画は謎のシーンから始まる。ウェディングドレス姿の2人の女性が並んで登場する。なぜに2人??? 続いて映るのは、小学生の近松優子(後野夏陽)が父の竜太郎(松尾諭)、母の愛子(中村ゆり)とともにスワンボート…

  • 「プリシラ」

    「プリシラ」2024年4月18日(木)シネ・リーブル池袋にて。午後2時30分より鑑賞(シアター2/D-5) ~エルヴィス・プレスリーの元妻の孤独と自立への道 昨日、大学病院の眼科に行ったら、左目に異常があるというので、目に注射をされて4万8210円も取られてしまった。先日15万円のパソコンを買ったばかりだというのに、どうするんだ、ワシ? 映画なんか観てる場合じゃないだろう。 しかし、まあ、それはそれとして(本当は、それはそれじゃないけど)、今日取り上げるのはソフィア・コッポラ監督の「プリシラ」。エルヴィス・プレスリーと結婚したプリシラ・プレスリーの回想録を映画化した伝記映画だ。 米軍関係者であ…

  • 「毒親<ドクチン>」

    「毒親<ドクチン>」2024年4月15日(月)ポレポレ東中野にて。午後3時より鑑賞(E-7) ~女子高生は自殺か、殺されたのか。ミステリーの中に母と娘のゆがんだ関係を織り込む ポレポレ東中野に行くのは久しぶりだ。ここはドキュメンタリーを中心に上映しているので、なかなかそこまで追いかける余裕がないのだ。しかし、この日に観たのは劇映画。韓国映画「毒親<ドクチン>」だ。ホラー映画「オクス駅お化け」(2022)の脚色や「覗き屋」(2022)の脚本を担当したキム・スインの長編映画監督デビュー作だ。 ドラマはある女子高生の死から始まる。河原のキャンプ場でユリ(カン・アンナ)が死体で発見される。車の中で複数…

  • 「ブルックリンでオペラを」

    「ブルックリンでオペラを」2024年4月10日(水)シネ・リーブル池袋にて。午後3時20分より鑑賞(スクリーン2/D-3) ~常識外れの人間たちが笑いを巻き起こす上質の夫婦コメディ 公開作品の案内が映画館になかったので近所の桜の写真を・・・。 「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズでブレイクし、「パーフェクト・ケア」「シラノ」などで個性的な演技を披露しているピーター・ディンクレイジ。彼がアン・ハサウェイ、マリサ・トメイと共演した映画が「ブルックリンでオペラを」だ。 ブルックリンに住むオペラの作曲家スティーブン(ピーター・ディンクレイジ)は、妻の精神科医パトリシア(アン・ハサウェイ)と幸せそうに暮…

  • 「パスト ライブス/再会」

    「パスト ライブス/再会」2024年4月6日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時30分より鑑賞(スクリーン9/E-10) ~幼なじみの2人の24年目の再会。繊細な感情描写で切なさ最高潮 激しいだけが恋じゃない。恋愛には様々な形があるのだ。ハリウッドのロマンス映画といえば、情熱的だったり、とびっきりおしゃれだったりする印象があるが、それとはだいぶ違う恋愛映画が公開されてヒットした。今年のアカデミー賞で作品賞と脚本賞にノミネートされた「パスト ライブス/再会」である。 映画の冒頭、3人の男女がバーで会話をしている。ノラとその夫アーサー、そしてヘソン。ノラとヘソンは韓国人。アーサーはア…

  • 「オッペンハイマー」

    「オッペンハイマー」2024年4月2日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時35分より鑑賞(スクリーン8/I-20) ~天才物理学者の苦悩と葛藤の日々。映像の力に圧倒される 第96回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞(キリアン・マーフィー)、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の7部門を受賞した映画「オッペンハイマー」。これは観ないわけにはいかないだろう。というので行ってきたのだ。 原爆を開発した科学者の伝記映画だ。舞台は1920年代から50年代。アメリカは第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに先駆けて原子爆弾を開発することを目標に極秘プロジェクト「…

  • 「12日の殺人」

    「12日の殺人」2024年3月29日(金)新宿武蔵野館にて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン2/C-8) ~迷走する殺人事件の犯人探し。刑事たちの人間ドラマに妙味アリ ドミニク・モル監督の「悪なき殺人」(2021年)は、ある失踪事件を軸にした5人の男女の物語でなかなか面白かった。そのモル監督の新作が「12日の殺人」だ。 2016年10月12日の夜。21歳の女性クララが、何者かにガソリンをかけられ、生きたまま焼き殺される。さっそく捜査が開始され、殺人課の班長に昇進したばかりのヨアン(バスティアン・ブイヨン)率いるチームが捜査を開始する。ヨアンとベテラン刑事マルソー(ブーリ・ランネール)は聞き込…

  • 「変な家」

    「変な家」2024年3月27日(水)TOHOシネマズ日本橋にて。午後6時50分より鑑賞(スクリーン9/D-10) ~変な家というよりは変な一族の話。怖くなくてむしろ笑っちゃいました 何だか知らんが、月に一度3~4人が集まって映画を観る会を開いている(本当はその後に飲むのが目的ではないかと疑っているのだが……)。基本的に映画選びは人に任せているので、私の趣味とは違う作品が選ばれることも多い。今月選ばれたのは「変な家」だ。 違和感だらけの変な間取りの家を追ったYouTube動画をもとに、動画制作者・雨穴が書いた小説「変な家」を映画化したらしい。 オカルト専門の動画クリエイター雨宮(間宮祥太朗)は、…

  • 「ペナルティループ」

    「ペナルティループ」2024年3月23日(土)シネマロサにて。午後2時20分より鑑賞(シネマロサ1/C-8) ~タイムループものの新機軸。復讐の意味を問う タイムループものの映画は数あれど、当たりハズレがけっこう激しい。最近では「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」はなかなか面白かったが、配信で観た「リバー、流れないでよ」は中盤ちょっと飽きてしまった。同じことの繰り返しだから、そこに何か工夫がないとね。 「ペナルティループ」もタイムループものの映画。はたして、そこに何か工夫はあるのか? 冒頭は幸せそうなカップルの朝が描かれる。岩森淳(若葉竜也)が目を覚ますと、砂原…

  • 「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」

    「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」2024年3月19日(火)テアトル新宿にて。午後3時30分より鑑賞(C-11) ~熱い熱量が伝わる。映画にとりつかれた若者たちの青春群像ドラマ デスクトップパソコンの起動が遅くなったので新しいのを買おうと思うのだが、そのままデスクトップにするか一体型にするかで迷っている。一体型は機能は劣るものの、省スペースで、内蔵カメラも備え、サウンドも良いとあって悩んでしまう。さて、どうしたものか。 そんなことには関係なく、今回観た映画は「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」。若松孝二監督率いる若松プロに出入りした人たちの青春群像劇「止められるか、俺たちを」(白…

  • 「ビニールハウス」

    「ビニールハウス」2024年3月15日(金)シネマート新宿にて。午後12時20分より鑑賞(スクリーン1/C-14) ~社会のひずみが招く負の連鎖。新人監督による一級品のサスペンス 今週もあまり映画館に行けなかった。病院通いが続いたもので……。 ようやく金曜日になって映画館に行けたので、韓国映画「ビニールハウス」を鑑賞。前日にライムスター宇多丸のラジオ番組で、次週の映画評で取り上げられることになったのでこの作品にしたのだ。面白いらしいという話は聞いていたが、それほど期待はしていなかった。しかし……。 映画の冒頭、いきなり黒いビニールハウスが映る。その中で1人の女が自分の顔を殴っている。これがこの…

  • 「DOGMAN ドッグマン」

    「DOGMAN ドッグマン」2024年3月9日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン1/C-5) ~帰ってきたリュック・ベッソン。孤独な男が犬たちとともに悪に染まる 今日は3月11日。東日本大震災が起きた日だ。あの日、私は家にいてものすごい揺れで外に飛び出した。そこには小学生ぐらいの女の子が、固まって動けずにいた。そこで私は「大丈夫だよ。きっと収まるから」と言ってあげたら、女の子はハッとしたように走り去っていった。知人にそれを話したら、「変質者だと思われたんだよ」と身も蓋もないことを言われたのだが、それに気づかせてやっただけでも立派なもんだろう。 それから…

  • 「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

    「ネクスト・ゴール・ウィンズ」2024年3月6日(水)グランドシネマサンシャインにて。午後1時40分より鑑賞(スクリーン8/e-6) ~定番のスポーツ物語だが、期待通りにきっちり笑わせて感動させてくれる 最初に、すでに取り上げた映画についての話題を2つ。 その1「落下の解剖学」で回想シーンは1つもないとジュスティーヌ・トリエ監督が言っているそうだ。ということは、あのクライマックスのシーンも、回想ではなく「もしかしたら」という誰かの思い込みかもしれず、だとすればなおさら怖い映画だと思った次第。 その2「ソウルメイト」をもう一度鑑賞した。前回観終わってそれほど時間が経たないうちにレビューを書いたつ…

  • 「52ヘルツのクジラたち」

    「52ヘルツのクジラたち」2024年3月5日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時40分より鑑賞(スクリーン2/E-9) ~原作の魅力を引き立てる熟練の演出とキャストたちの演技 先週はある本の校正仕事を頼まれ、さらにカーリングの日本ミックスダブルス選手権が開催中だったのでカーリング沼にズブズブとハマリ、映画館に行けずじまいだった。 というわけで、1週間と1日ぶりに映画館で観た映画は「52ヘルツのクジラたち」。2021年の本屋大賞を受賞した町田そのこの小説を成島出監督が映画化した。 あまり映画の原作本は読まない(特に観る前には)私だが、珍しくこの小説は読んでいた。何といっても、そのタ…

  • 「落下の解剖学」

    「落下の解剖学」2024年2月26日(月)Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下にて。午後1時より鑑賞(7F/D-11) ~雪の山荘で起きた転落事故。殺人の嫌疑をかけられた妻を巡るスリリングなサスペンス&人間ドラマ 2023年の第76回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いたのをはじめ、様々な映画祭で話題を集めた「落下の解剖学」。いよいよ日本公開された。日曜に観に行こうと思ったのだが、あんまり寒いから足が前に進みませんでしたよ~。なので、月曜日にGO! 人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見する。息子の悲鳴を聞いた母親のサンドラ(ザンドラ・ヒュ…

  • 「ソウルメイト」

    「ソウルメイト」2024年2月23日(金)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後3時25分より鑑賞(スクリーン2/D-4) ~2人の女性の絆を描いたシスターフッド映画。みずみずしさと切なさと 先日、「風よ あらしよ 劇場版」を観た時に予告編が流れてきて、とても気になった映画がある。予告編だけで感情が動いてしまった。韓国映画「ソウルメイト」だ。公開初日にさっそく観に行ってきた。 2人の女性の絆の物語だ。あるギャラリーに絵が展示されている。写実的で写真のような絵だ。その絵は公募展で大賞に選ばれた。作者の名前は「ハウン」とわかっているものの、連絡先はわからなかった。そこで、絵のモデルと思われるミソ…

  • 「瞳をとじて」

    「瞳をとじて」2024年2月21日(水)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時10分より鑑賞(スクリーン6/D-10) ~エリセ監督、31年ぶりの長編映画は記憶と映画をめぐる物語 「ミツバチのささやき」(1973年)という映画をどこで観たのだろう? だいたいのあらすじは知っているし、印象的なシーンも何となく覚えている。とはいえ、時代的に映画館で観たとは思えない。後年になってテレビで観たのだろうか。いや、それとも観ていないのか? 何にしても私が知っているぐらいだから、大ヒット作なのは間違いない。その「ミツバチのささやき」のビクトル・エリセ監督が、1992年の「マルメロの陽光」以来、実に31…

  • 「風よ あらしよ 劇場版」

    「風よ あらしよ 劇場版」2024年2月18日(日)新宿ピカデリーにて。午後1時50分より鑑賞(スクリーン7/E-11) ~自由を求める強い意志。女性解放運動家・伊藤野枝の生涯 書店で、村山由佳の「風よ あらしよ」という上下2巻の分厚い文庫本を最初に見かけたのは、ずいぶんの前のことだ。何度も買おうかと迷ったのだが、結局いまだに買っていない。 そんな中、大正時代に活躍した女性解放運動家・伊藤野枝の生涯を綴ったこの小説を、NHKがドラマ化し2022年にBS4K・8Kで放送したらしい。その劇場版が「風よ あらしよ 劇場版」である。 福岡の片田舎で育った伊藤野枝(吉高由里子)は、貧しい家を支えるため結…

  • 「一月の声に歓びを刻め」

    「一月の声に歓びを刻め」2024年2月11日(日)テアトル新宿にて。午後1時40分より鑑賞(B-10) ~“罪”をめぐる3つの物語。三島監督の覚悟と俳優たちの壮絶な演技 「繕い裁つ人」「幼な子われらに生まれ」「ビブリア古書堂の事件手帖」「Red」など様々な作品を撮ってきた三島有紀子監督。今度の新作「一月の声に歓びを刻め」は、過去作とは明らかに異質な作品だ。三島監督自身の幼い頃の性暴力の体験をもとにした映画だという。 物語は四章立てで描かれる。一章は北海道・洞爺湖が舞台。そこに1人で住むマキ(カルーセル麻紀)が一生懸命におせちを作っている。間もなく、娘の美砂子(片岡礼子)一家3人が正月を過ごすた…

  • 「夜明けのすべて」

    「夜明けのすべて」 2024年2月9日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン6/B-9)~弱い人たちへの共感と支え合いを絶妙の距離感で描く 上白石萌音と上白石萌歌の区別がつかない。いや、双子ではないから実際に見たらどっちがどっちかわかると思うのだが、名前を言われてもすぐに顔が思い浮かばない。そもそも私は人の顔を覚えるのが苦手なのだ。 そんなことはどうでもよい。姉の上白石萌音のほうが出演している映画が「夜明けのすべて」だ。瀬尾まいこの同名小説を三宅唱監督が映画化した。原作は未読だが、かなりアレンジされているらしい。 三宅監督の過去作「きみの鳥はうたえる」「ケ…

  • 「コット、はじまりの夏」

    「コット、はじまりの夏」2024年2月7日(水)新宿シネマカリテにて。午後1時45分より鑑賞(スクリーン1/A-10) ~生きる喜びを初めて知る少女。アイルランドから届いた珠玉の一作 仕事は終わらないし、日程を間違えていた仕事も新たに入ってきた。困った。忙しくて映画館に行く暇がない。いや、待て。どうにかなる。きっと、どうにかなる。数時間サボったところでどうということはない。この際、映画館へ行ってしまえ! とヤケクソ気味でやってきたのは新宿シネマカリテ。鑑賞するのは、第95回アカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされたアイルランド映画「コット、夏のはじまり」。さて、どんな映画なのでしょう? 1…

  • おわび?

    「哀れなるものたち」の後は映画館に行っていない。なので、ブログもアップできない。 仕事が忙しいのは事実。1万5000字のインタビュー原稿を書かねばなならない。これがなかなか骨が折れるのだ。ほぼ連日パソコンに向かっているのだが、なかなか終わらないのよ~。この後も別件のインタビュー原稿と、ある単行本の校正作業を依頼されている。たまらんぞなもし。 おまけに先日からカーリング沼にはまってしまった。来年のオリンピックにつながる日本選手権が開催されていて、NHK BSやYouTubeでの観戦で忙しいのだ。カーリングは面白いゾ~。仕事があってもつい見てしまう。あ! だから仕事が終わらないのか。残念ながら、私…

  • 「哀れなるものたち」

    「哀れなるものたち」2024年1月28日(日)ユナイテッドシネマ・としまえんにて。午後1時35分より鑑賞(スクリーン2/D-6) ~現代に通じるテーマを持った強烈な刺激のフランケンシュタイン的世界 ヨルゴス・ランティモス監督の「ロブスター」は、独身者がパートナーを見つけなければ動物に変えられるというお話。ストーリーもぶっ飛んでいたが、その内容もかなりぶっ飛んでいた。刺激的で、毒々しく、ある意味、露悪的な映画だった。 「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」「女王陛下のお気に入り」に続くランティモス監督の新作「哀れなるものたち」を観て、その「ロブスター」を思い出した。何しろラン…

  • 「サン・セバスチャンへ、ようこそ」

    「サン・セバスチャンへ、ようこそ」2024年1月25日(木)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時30分より鑑賞(スクリーン7/E-8) ~数々の映画のシーンが散りばめられたウディ・アレンの映画愛にあふれた作品 ご存知ウディ・アレン監督の2020年の作品「サン・セバスチャンへ、ようこそ」。スペインの映画祭を舞台にしたラブコメだ。 オープニングのオールドな雰囲気のクレジットから、早くもウディ・アレンの世界が全開。展開するのはいつも通りのラブコメだ。 ニューヨークで暮らす、かつて大学で映画を教えていたモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)。今は小説を書くべくもがくものの、世界の文豪に匹敵す…

  • 「緑の夜」

    「緑の夜」2024年1月19日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン1/E-12) ~男の支配から逃れて自由を得るための女たちの連帯と反乱 「X-MEN:フューチャー&パスト ローグ・エディション」などハリウッド作品でも活躍する中国を代表する俳優のファン・ビンビン。だが、中国共産党に脱税を追及されスキャンダルの渦中に叩き落された。今の中国で脱税なんぞ珍しくもないだろうに摘発されたのは、有名人をスケープゴートにすることで一罰百戒の効果を狙ったのではないか。 そのファン・ビンビン。一時は消息不明ともいわれた彼女の復帰第一作となったのが、香港映画「緑の夜」。香港…

  • 「葬送のカーネーション」

    「葬送のカーネーション」2024年1月17日(水)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後6時40分(シアター2/D-6) ~妻の棺を運ぶ老人と孫娘のロードムービー。淡々とした中に深遠なテーマも横たわる ロードムービーといえば主人公たちが旅をするドラマ。その旅の形は様々だ。トルコの新鋭ベキル・ビュルビュル監督の長編2作目「葬送のカーネーション」は、かなり変わったロードムーピー。おじいさんと孫娘が棺桶を引いて旅をするのである。 荒涼とした冬のトルコ南東部。年老いた男性ムサ(デミル・パルスジャン)は、亡き妻との約束を果たすべく、孫娘ハリメ(シャム・セリフ・ゼイダン)とともに妻の棺を運んでいた。彼女…

  • 「カラオケ行こ!」

    「カラオケ行こ!」2024年1月16日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時25分より鑑賞(スクリーン7/E-8) ~ヘンなヤクザと合唱部長の中学生。爆笑のカラオケレッスン 山下敦弘監督の作品は、「バカの箱舟」「リアリズムの宿」など初期のダメ人間映画(と、私が名づけている)からずっと観ている。2005年の「リンダ リンダ リンダ」は青春映画の大傑作だと思っている。2007年の「天然コケッコー」も素晴らしい青春映画だった。今では多彩な作品を送り出している山下監督だが、どこかに初期のオフビートな笑いやダメ人間を温かく見つめる視線が残っていて、ファンにとってはうれしいところ。 「1秒先の…

  • 「燈火(ネオン)は消えず」

    「燈火(ネオン)は消えず」2024年1月12日(金)Bunkamuraル・シネマにて。午後1時40分より鑑賞(E-12) ~消えゆく香港のネオンと夫婦愛のドラマ 香港といえば「100万ドルの夜景」が有名。ずいぶん昔に私も香港を訪れて、夜景の美しさに感嘆したものだ。 その夜景が美しく輝くのも、繁華街のビルを極彩色に彩るネオンサインの看板のおかげ。だが、近年はLEDに取って代わられ、ガラス管を使ったネオンは減っているという。いや、それ以上に深刻なのは、2010年の建築法等改正だ。それによってネオンは次々に撤去され、何と2020年までに9割が消えたという。 そんな事情を知ると、よりいっそう胸に響いて…

  • 「ファースト・カウ」

    「ファースト・カウ」2024年1月8日(月・祝)新宿武蔵野館にて。午後3時50分より鑑賞(スクリーン2/C-4) ~2人の男の友情物語とアメリカの原風景を映し出す。ライカート監督の日本初公開作 ケリー・ライカート監督はアメリカのインディーズ映画界では有名な監督。私もその名前は聞いたことがある。しかし、作品を観るのは初めて。それもそのはず、日本では企画上映を除けば、本作「ファースト・カウ」が初の劇場公開作。ライカート監督の長編7作目にあたる2019年の作品だ。 西部開拓時代のオレゴンを舞台にしたドラマ。これまでライカート監督作の脚本を多く手がけてきたジョナサン・レイモンドが2004年に発表した小…

  • 「彼方のうた」

    「彼方のうた」2024年1月7日(日)シネマ・ロサにて。午前11時50分より鑑賞(シネマ・ロサ1にて/C-5) ~余計なものは何もない。ミニマムで想像力と好奇心を刺激する映画 杉田協士監督は独特の作風で知られる監督だ。いわゆるエンタメ映画のようなわかりやすさとは対極の映画を撮る。過去作では2019年公開の「ひかりの歌」を鑑賞したが、派手さはないもののジンワリとくる映画だった。 前作の「春原さんのうた」も国内外で高く評価されたようだが、残念ながら見逃してしまった。公開から1年以上経つのに、ソフト化も配信もされていないのはなぜ? それはともかくとして、「春原さんのうた」に続く長編4作目で、12年ぶ…

  • 「笑いのカイブツ」

    「笑いのカイブツ」2024年1月6日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時35分より鑑賞(スクリーン7/D-9) ~岡山天音の怪演が光る。凄まじいエネルギーを放つ強烈な自伝映画 新年最初のレビューです。 大晦日は紅白歌合戦で、伊藤蘭のファンと一体になったパフォーマンスに大感激したと思ったら、新年早々能登地方で震災が発生し、飛行機事故まで起きるという恐ろしい事態。せめて新年最初の映画ぐらいは明るく行きたいもの。そこで観たのは、その名も「笑いのカイブツ」という映画。こりゃあ、どう考えても喜劇でしょう。 「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの自伝的小説の映画化だ。主人公のツチ…

  • 今年もよろしくお願いいたします。

    遅ればせながら、あけましておめでとうございます。 さっそく新年第1回目の映画レビュー・・・といきたいところですが、残念ながら今年はまだ映画館に行っていません。昨日大学病院にて眼科の診察の帰りに、映画館に寄ろうと思ったものの、瞳孔を開く目薬を差されて(いつものことなんですが)4~5時間は視界がぼやけて映画どころではなかった次第。 そして本日は風邪気味だったため、出かけるのは自重しました。 まあ2~3日中には映画館に行きたいとは思っているのですが、とりあえず今回は昨年私が観た映画のベスト5でも発表してみましょう。 いやいや、ライムスター宇多丸氏も言っているように、映画に順位をつけるなんて、そんな不…

  • 「PERFECT DAYS」

    「PERFECT DAYS」2023年12月26日(火)kino cinema新宿にて。午後2時25分より鑑賞(THEATER1/D12) ~変わらない日常の中で起きる細やかな出来事と心の揺れ動き ちょっと体調が悪くて病院に行ったりなんだりで、1週間以上映画館に行けませんでした。皆さんのブログにもあまり伺えず。今後も体調に配慮しつつ、更新できる時に更新する感じになりますが、よろしくお願いいたします。 というわけで、この日行ったのは新宿に新しくできた映画館「kino cinema新宿」。以前はEJアニメシアター新宿(旧 角川シネマ新宿)があったところ。なかなかおしゃれな雰囲気で良い感じに仕上がっ…

  • 「枯れ葉」

    「枯れ葉」2023年12月18日(月)新宿シネマカリテにて。午後2時45分より鑑賞(スクリーン1/A-7) ~カウリスマキ監督が不穏な今の世界で「愛」に希望を託す ご存知フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督。「何だか最近は新作がないな」と思ったら引退宣言していたのね。でも、それを撤回して2017年の「希望のかなた」以来6年ぶりに映画を製作。それが新作の「枯れ葉」だ。 お話はシンプルなラブストーリー。主人公はスーパー勤務のアンサ(アルマ・ポウスティ)。孤独で貧しい暮らしをしていた彼女は、ある日、賞味期限切れの商品を持ち帰ろうとして、スーパーを解雇されてしまう。 一方、同じく孤独な労働者のホラ…

  • 「市子」

    「市子」2023年12月13日(水)TOHOシネマズ シャンテにて。午後7時より鑑賞(スクリーン1/D-12) ~恋人の前から失踪した「社会的に存在しない」女性の壮絶な生き様 年の暮れにまた重たく、複雑な余韻を残す映画を観てしまった。「市子」である。 映画は海の荒々しい風景から幕を開ける。それをバックに鼻歌が聞こえてくる。このドラマの主人公・川辺市子(杉咲花)が、鼻歌を歌いながらそぞろ歩いていく。 実はこの光景はラストシーンにも登場する。映画の幕開けと締めくくりが同じシーンなのだ。はたして、それはいつの出来事なのか。明確には提示されない。そう。この映画は余白が多く、観る者の想像力を刺激する映画…

  • 「リアリティ」

    「リアリティ」2023年12月8日(金)シネ・リーブル池袋にて。午後3時10分より鑑賞(シアター1/F-7) ~FBIの尋問の音声から再現したドラマ。その緊迫感に圧倒される 来年はアメリカ大統領選挙がある。もしかするとまた大統領になる可能性があるトランプ。彼が当選した2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが介入し、それがトランプ当選の一因になったといわれる。それをめぐる事件を描いた映画が「リアリティ」だ。 映画の冒頭、トランプ大統領がロシア政府と自身の2016年大統領選挙キャンペーンとの共謀に関する捜査を妨害するために、ジェームズ・コミーFBI長官を解任したニュースが流れる。それを見ているのが…

  • 「父は憶えている」

    「父は憶えている」2023年12月4日(月)新宿武蔵野館にて。午後3時5分より鑑賞(スクリーン2/C-4) ~記憶を失い帰ってきた父。喜びと戸惑いの果てに人々が見たものは キルギスと言われてもピンとこない。正直、どこにあるのかもよくわからない。中央アジアの国で、旧ソ連に属していたことは何となく知っているが……。 そのキルギスのアクタン・アリム・クバト監督は、世界的に知られた監督らしい。私は未見だが、「あの娘と自転車に乗って」「明りを灯す人」「馬を放つ」などの代表作がある。 クバト監督が、自ら主演も務めた映画が「父は憶えている」だ。クバト(ミルラン・アブディカリコフ)という青年が、父のザールク(…

  • 「女優は泣かない」

    「女優は泣かない」2023年12月1日(金)池袋HUMAXシネマズにて。午後3時20分より鑑賞(シネマ2/E-9) ~がけっぷち女優とダメダメなディレクターの再起物語。ありがちな話なのにジンワリくる 伊藤万理華は不思議な俳優だ。童顔で年齢不詳という感じだが、どんな役をやってもサマになる。彼女の出演作にはハズレがない。「サマーフィルムにのって」「もっと超越した所へ。」「そばかす」「まなみ100%」など、いずれも面白い映画だった。だから、「女優は泣かない」も伊藤万理華に惹かれて観ることにした。 映画は熊本が舞台だ。空港でいきなり「くまモン」が映る。スキャンダルで落ち目の女優、梨枝(蓮佛美沙子)が故…

  • 「ほかげ」

    「ほかげ」2023年11月26日(日)ユーロスペースにて。午後2時55分より鑑賞(スクリーン2/C-8) ~戦争の闇を直視せよ! 塚本晋也監督の強い信念が伝わる 戦争は嫌だ。絶対に戦争をしてはならない。その思いを改めて抱かせてくれた映画が塚本晋也監督の「ほかげ」である。 塚本監督といえば「野火」で戦場の悲惨さを「これでもか!」とばかりに描いたことで知られている。続く「斬、」では人を殺すことの恐ろしさを描いた。そして「ほかげ」では戦争がもたらす闇をクローズアップした。 ドラマは2部構成になっている。前半は焼け残った居酒屋が舞台となる。そこで体を売って暮らす女(趣里)のところに、客として若い復員兵…

  • 「首」

    「首」2023年11月24日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン5/F-14) ~北野武流「本能寺の変」は「アウトレイジ戦国版」。みんなワルでクセモノだらけ 「世界のキタノ」こと北野武監督の新作映画「首」。2017年の「アウトレイジ 最終章」以来の監督作だ。 描くのは本能寺の変。天下統一を目指す織田信長(加瀬亮)。だが、家臣の荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こし、追い詰められて逃走する。信長は羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島秀俊)ら家臣を集めると、自らの跡目相続をエサにして村重の捜索を命じる。やがて村重は捕らえられ光秀に引き渡されるが、光秀はひそか…

  • 「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」

    「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」2023年11月19日(日)新宿シネマカリテにて。午後3時より鑑賞(スクリーン1/A-10) ~ひたすら自由を求めて逃亡するモナ・リザ。チョン・ジョンソの魅力が炸裂! 最近、アジア系の俳優がハリウッドで活躍するケースが目につく。「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」は、イ・チャンドン監督「バーニング 劇場版」で注目を集め、その後Netflix配信の「ザ・コール」「ペーパー・ハウス・コリア 統一通貨を奪え」「バレリーナ」などの作品に出演しているチョン・ジョンソのハリウッドデビュー作だ。 映画の冒頭、スタンダードナンバーの「モナリザ」が流れる。それはこ…

  • 「正欲」

    「正欲」2023年11月17日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン1/D-8) ~「普通」でない人たちの生きづらさを描き「普通」とは何かを問いかける 映画のタイトルを聞いてぶっ飛んだ。セイヨク? おいおい、そんなストレートなタイトルにしていいのかよ? いくら何でもマズイんじゃないの? その後、よく見たら「性欲」じゃなくて、「正欲」なのね。でも、まあ、性欲とも絡んでくる話です。 原作は朝井リョウの柴田錬三郎賞を受賞した小説。それを「二重生活」「あゝ、荒野」「前科者」の岸善幸監督が映画化した。脚本は今回は岸監督ではなく、「あゝ、荒野」で岸監督と組んだ港岳彦。…

  • 「さよなら ほやマン」

    「さよなら ほやマン」2023年11月15日(水)新宿ピカデリーにて。午後2時より鑑賞(スクリーン10/D-8) ~B級コメディー映画と思いきやパワフルで熱い真っ当な青春ドラマ 「さよなら ほやマン」。タイトルとそのPRビジュアルだけを見て、B級コメディー映画だとばかり思っていたのだが、何だか高評価の声が相次ぎ傑作と評する人まで現れたとなれば、これは観に行かないわけにはいかないだろう(時間がちょうどよい映画が、これぐらいしかなかったということもあるのだが)。 宮城県石巻市の離島を舞台にしたドラマだ。豊かな海に囲まれた美しい島で暮らす兄弟。兄のアキラ(アフロ)は一人前の漁師を目指して修業中。弟の…

  • 「私がやりました」

    「私がやりました」2023年11月8日(水)TOHOシネマズ シャンテにて。午後7時40分から鑑賞(スクリーン1/D-12) ~殺人事件を利用して成り上がる女たち。社会問題を取り込みつつ気楽に笑えるコメディー 「8人の女たち」「スイミング・プール」など次々に多彩な映画を送り出すフランソワ・オゾン監督の新作は、1930年代のパリを舞台にしたクライムミステリーだ。 同じ部屋に住む若手女優のマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)と駆け出しの弁護士のポーリーヌ(レベッカ・マルデール)。どちらも仕事がなくお金に困っていた。今日も今日とて大家が家賃の催促に訪れるが、ポーリーヌは支払うことができない。 や…

  • 「理想郷」

    「理想郷」2023年11月4日(土)Bunkamura渋谷宮下にて。午後4時より鑑賞(7F/C列12番) ~移住者と地元民の激しい対立から母と娘のドラマへ。重層的で濃厚なドラマ まだ見ぬ世界の優れた映画に出会えるのが映画祭の醍醐味。東京国際映画祭でも数多くの世界の映画が上映される。以前は私も無料招待されて、たくさん映画を観たっけなぁ~。 などという話はどうでもよい。その「理想郷」は2022年の第35回東京国際映画祭で、東京グランプリ(最優秀作品賞)、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を受賞した作品(その時のタイトルは「ザ・ビースト」)。その他にも、スペインのゴヤ賞で主要9部門を受賞するなど、世界の…

  • 「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」

    「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」2023年11月3日(金・祝)TOHOシネマズ 池袋にて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン4/D-7) ~元アイドルのアラサー女子を癒すおっさん。温かで心地よい映画 しかし、まあ、井浦新の出演作が次々に公開になるなぁ。いまや日本映画の屋台骨を背負う存在と言っても、過言ではないだろう。テレビドラマにもけっこう出ているようだし。まったくもってスゴイ俳優だ。 その井浦新が出演しているのが「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」。原作は元「SDN48」のメンバーで作家として活躍する大木亜希子が、自身の体験を基に描…

  • 「ドミノ」

    「ドミノ」2023年10月29日(日)TOHOシネマズ 池袋にて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン7/D-12) ~え? まさか? ロバート・ロドリゲス監督が仕掛ける大どんでん返し ロバート・ロドリゲスは、ド派手なアクション映画のイメージが強い監督だ。「デスペラード」「マチェーテ」「プラネット・テラー in グラインドハウス」「シン・シティ」「スパイキッズ」「アリータ バトル・エンジェル」など様々な作品を撮っているが、いずれの映画もケレン味にあふれたアクションが見られる。 そのロドリゲス監督の新作「ドミノ」は派手なアクションシーンもあるものの、今までの作品にはなかった新機軸を打ち出してきてい…

  • 「愛にイナズマ」

    「愛にイナズマ」2023年10月27日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン2/E-9) ~コミカルな家族の再生の物語と「なかったことにしたくない」という思い 先日、相模原の障害者施設殺傷事件をモデルにした「月」が公開されたばかりの石井裕也監督(当ブログでも取り上げた)。相変わらず快調なペースで監督作を送り出している。というわけで、早くも次回作「愛にイナズマ」が公開された。こちらはシリアスだった「月」とは一転してコメディードラマだ。 26歳の折村花子(松岡茉優)は映画監督。ただし、ウィキペディアにそう書いてあるだけで、これまでは自主映画しか撮っていない。彼…

  • 「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

    「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」2023年10月25日(水)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時50分より鑑賞(スクリーン3/E-15) ~スコセッシ監督が先住民搾取の歴史を告発しつつ重厚なドラマを展開 数年前まではこの時期、東京国際映画祭の関係者向け上映で1日3~4本の映画を観ていたっけ。日比谷に会場が移ったのを機に、ご招待もなくなって、いまやすっかり足が遠のいてしまった。 だが、映画祭に行かずとも素晴らしい映画が公開されている。「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」。あのマーティン・スコセッシ監督の最新作だ。ジャーナリストのデイビッド・グランが先住民連続殺人事件について描いた…

  • 「宇宙探索編集部」

    「宇宙探索編集部」2023年10月19日(木)シネマカリテにて。午後3時より鑑賞(スクリーン1/A-8) ~アホアホなコメディーが最後には感動のドラマに。宇宙オジサンの生き様に拍手! UFOや宇宙人への興味は、昔から尽きないようだ。中国でも、1990年代に「飛碟探索」というUFO雑誌が人気を集めたという。それをモデルに制作されたのが「宇宙探索編集部」である。 主人公はUFO雑誌「宇宙探索」の編集長のタン(ヤン・ハオユー)。映画の冒頭は、若き日の彼が宇宙人やUFOについて語るインタビュー映像が流れる。希望に燃えて若々しさにあふれている。 続いて、現在のタンが映る。それは年を取り疲れはてて見る影も…

  • 「春画先生」

    「春画先生」2023年10月18日(水)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後3時35分より鑑賞(シアター2/d-9) ~禁断の春画映画。エロでおおらかでハチャメチャなラブコメ 10月21日(土)に日比谷野外大音楽堂に出かけてきた。国際反戦デーの集会ではない。伊藤蘭のコンサートだ。今年のツアー最終日にふさわしい素晴らしいコンサートだった。観客の熱気もすごかった。私も思いっきりペンライトを振って声を上げた。終演後の夜風が心地よかった。 それとは関係なく、今日取り上げる映画は「春画先生」。春画といえばエロな浮世絵、と思っていると大間違い。近年は、その芸術的価値が見直されて注目を浴びているらしい。…

  • 「月」

    「月」2023年10月16日(月)ユーロスペースにて。午後2時50分より鑑賞(ユーロスペース2/B-9) ~実在の障害者施設殺傷事件を映画化。もう見て見ぬふりはできない 実在の事件を描く映画は無数にあるが、これほど物議を呼びそうな映画はないのではないか。2016年の相模原障害者施設殺傷事件を映画化した「月」である。 原作は辺見庸の小説「月」。スターサンズの設立者で名物プロデューサーの故・河村光庸氏が、生前に映画化を熱望。「舟を編む」「茜色に焼かれる」など多数の作品で知られる石井裕也監督に映画化の話を持ちかけた。内容が内容だけに石井監督も悩んだらしいが、辺見庸の熱烈な愛読者であることから引き受け…

  • 「シック・オブ・マイセルフ」

    「シック・オブ・マイセルフ」2023年10月13日(金)新宿武蔵野館にて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン3/C-8) ~強烈な承認欲求で暴走するヒロインがひたすら笑える 自己顕示欲の強い人はどこにでもいる。というか、誰だってある程度は持っているはずだ。他人から認めてもらいたいという承認欲求もまた然り。SNSなどを通じて簡単に自己アピールができる現在は、なおさらその傾向が強いだろう。 ノルウェーのオスロを舞台にしたドラマ「シック・オブ・マイセルフ」は、その自己顕示欲と承認欲求が異常に強いヒロインの話。そのあまりの暴走ぶりがグロテスクで、ホラー的な側面も垣間見せるが、どちらかというとシニカルな…

  • 「アナログ」

    「アナログ」2023年10月9日(月・祝)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン3/E-16) ~アナログでベタベタな恋愛ドラマだが、脚本&演出の妙で見せる 一昨日、赤坂RED/THEATERという劇場で「フラガール‘23」という芝居を観てきた。そう、名作映画「フラガール」の舞台版である。これまでにも何度も舞台化されているが、今回は映画版の脚本を担当した羽原大介の脚本・演出で、自身の劇団「羽原組」での公演。映画で蒼井優が演じた役は、つい最近取り上げた「まなみ100%」のヒロイン・中村守里が演じている。舞台版は映画とはまた違った面白さがあり、特に終盤の中村はじめフ…

  • 「アンダーカレント」

    「アンダーカレント」2023年10月6日(土)シネマサンシャイン池袋にて。午後3時10分より鑑賞(シアター10/f-13) ~人間の心の底流に流れるものを抑制的で繊細な語り口で描く 人間は一筋縄ではいかない。わかったようでいてわからない。曖昧模糊。不可思議極まりない存在だ。 そんな人間存在の曖昧さ、不可思議さを追求した映画が「アンダーカレント」だ。「愛がなんだ」「街の上で」などの恋愛映画で知られる今泉力哉監督が、今から20年近く前に発表された豊田徹也のコミックを実写映画化した。 映画の冒頭に、「Undercurrent」の意味が記される。それは「(水や空気などの)底流」のこと。少し範囲を広げて…

  • 「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」

    「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」2023年10月2日(月)新宿ピカデリーにて。午後3時35分より鑑賞(シアター4/D-9) ~安定のケネス・ブラナー版ポアロ、今回は亡霊相手に名推理? *写真撮ってくるのを忘れました。トホホホ・・・。 アガサ・クリスティーの「名探偵ポアロ」を、ケネス・ブラナーの監督・主演で映画化したシリーズの第3弾「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」。1作目の「オリエント急行殺人事件」は観たのだが、「ナイル殺人事件」は見逃してしまった。でも、まあ、それぞれ独立した話なので、過去2作を観ていなくても大丈夫です。 タイトル通りにベネチアが舞台の物語、名探偵ポアロは引退して隠遁生活を送っ…

  • 「BAD LANDS バッド・ランズ」

    「BAD LANDS バッド・ランズ」2023年10月1日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時35分より鑑賞(スクリーン1/B-5) ~ワルが大活躍のピカレスク映画。充実の娯楽作だが大阪弁が聞き取りにくいのが難点 ピカレスクは「悪者」「悪党」「ならず者」の意味。有名なのはピカレスク小説だが、映画にもピカレスク映画がある。 悪党の姉と弟が大活躍する「BAD LANDS バッド・ランズ」は、さしずめそのピカレスク映画だろう。直木賞作家・黒川博行の小説「勁草」を「クライマーズ・ハイ」「ラスト・サムライ」「ヘルドッグス」「関ヶ原」「燃えよ剣」などのベテラン・原田眞人監督が映画化した。 舞…

  • 「まなみ100%」

    「まなみ100%」2023年9月30日(土)池袋HUMAXシネマズにて。午後3時30分より鑑賞(シネマ2/F-9) ~片思いの女性にフラれ続けた男。瑞々しい青春ドラマとして捨てがたい味わい 取るに足らないありきたりの話も、描きようによっては魅力的な映画になる。少し前に取り上げた「ほつれる」などはその好例だろう。 今回取り上げる「まなみ100%」も、話自体は特筆すべきものは何もない。片思いの女性に10年間フラれ続け、相手が別の男と結婚してしまう。それだけの話だ。だが、そんな陳腐にも思える話が、描き方によって別の色合いを持ち始める。 主人公はボク(青木柚)。2010年、高校生のボクは、入部した体操…

  • 「熊は、いない」

    「熊は、いない」2023年9月25日(月)新宿武蔵野館にて。午後2時15分より鑑賞(スクリーン3/B-5) ~イラン社会の息苦しさと監督の受難が伝わるメタファーに満ちた映画 イランは独裁国家というわけではないが、政府当局の締め付けはかなり厳しい。芸術文化に対しても容赦がない。ジャファル・パナヒ監督は、海外の映画祭でも受賞経験を持つ著名な監督だが、「オフサイド・ガールズ」などが反体制的だとして2010年に逮捕されて以来、政府から映画製作を禁じられ、国外に出ることも禁止されている。 となれば、もはや映画とは無縁の生活を送っているのかと思えばさにあらず。2011年の「これは映画ではない」以降は、自身…

  • 「バーナデット ママは行方不明」

    「バーナデット ママは行方不明」2023年9月23日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時25分より鑑賞(スクリーン1/C-7) ~リチャード・リンクレイター監督とケイト・ブランシェットが、ある女性の人生のやり直しを魅力的に描く ケイト・ブランシェットといえば、ユニークな女性指揮者を演じた「TAR ター」が今年公開になったが、これまでにも「エリザベス」「アビエイター」「あるスキャンダルの覚え書き」「オーシャンズ8」「ブルージャスミン」「キャロル」などで様々な女性を演じてきた。その演技力は誰からも一目置かれる存在だ。 そんな彼女が自ら出演を希望したという映画が「バーナデット ママは行…

  • 「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」

    「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」2023年9月18日(月・祝)新宿シネマカリテにて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン1/B-10) ~黒人男性を射殺した白人警官。実在の事件をリアルタイムで再現 実在の事件を基に描いた「福田村事件」を先日取り上げたが、今度はアメリカの実在の事件を基にした映画「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」を観た。いや、「実在の事件を基にした」というよりは、「実在の事件をそのまま再現した」という表現がぴったりの作品だ。ちなみに、本作の製作総指揮はモーガン・フリーマンが務めている。 主人公は、ニューヨーク州ホワイトプレーンズに住む退役軍人のケネス・チェンバレン(フ…

  • 「アステロイド・シティ」

    「アステロイド・シティ」2023年9月14日(木)池袋HUMAXシネマズにて。午後4時から鑑賞(スクリーン3/E-13) ~笑いと視覚的な魅力や驚きに満ちたウェス・アンダーソン印の映画 ウェス・アンダーソン監督といえば独特の作風を持つ映画監督。もはや映画作家と言ったほうがいいかもしれない。「グランド・ブダペスト・ホテル」や近作「フレンチ・ディスパッチ」など、とにかくその世界観はユニークだ。 最新作「アステロイド・シティ」も彼の持ち味を十二分に発揮した作品。時代は1955年。舞台は、人口わずか87人のアメリカ南西部の砂漠の町アステロイド・シティ。隕石でできた巨大なクレーターが観光名所のこの町で、…

  • 「ほつれる」

    「ほつれる」2023年9月9日(土)シネクイントにて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン2/D-7) ~演劇畑の監督が別れる男女の複雑な心理を繊細に描く 映画と演劇で大きく違うのは、映画が繊細な描写ができるのに対して、演劇ではそれがなかなか難しいことではないだろうか。映画はアップの映像で人物をとらえられるが、演劇はそれができない。 そんな演劇畑出身にもかかわらず、繊細過ぎる描写を得意とする映画監督がいる。木竜麻生と藤原季節が共演した前作「わたし達はおとな」で、大学生カップルの間に生じた溝を描いた加藤拓也監督である。加藤監督は自身で劇団を率いて舞台で活躍している。演劇と映画では別のスイッチが入る…

  • 「福田村事件」

    「福田村事件」2023年9月7日(木)テアトル新宿にて。午後3時20分より鑑賞(A-11) ~関東大震災後の惨劇をもとに森達也監督が集団心理の恐ろしさを劇映画で描く 「A」「A2」「i 新聞記者ドキュメント」など、数々のドキュメンタリー作品を手がけてきた森達也監督が、初めて手がけた劇映画「福田村事件」。関東大震災直後の混乱の中で、千葉県東葛飾郡福田村で香川からやって来た行商団15人の内、幼児や妊婦を含む9人が殺害された虐殺事件をもとに描いた。 森監督は、初めはドキュメンタリーとしてテレビ局に持ち込んだものの断られ、それなら劇映画にと思ったもののなかなか実現の見通しは立たなかった。だが、名脚本家…

  • 「兎たちの暴走」

    「兎たちの暴走」2023年8月30日(水)シネマロサにて。午後1時25分より鑑賞(シネマロサ1/D-8) ~ごく普通の少女の母への想いが招く大きな悲劇 中国映画「兎たちの暴走」。家で飼っていたペットのウサギちゃんが、突然凶暴な本性をむき出しにして人間を襲うパニック・ホラー映画……みたいなタイトルだが、そうではない。2020年の東京国際映画祭で上映され、ようやくこの度一般公開となった、新人シェン・ユー監督の作品。実在の事件をモチーフにしたノワール・サスペンス映画だ。 主人公は、四川省の寂れかけた工業都市に暮らす17歳の高校生のシュイ・チン(リー・ゲンシー)。父と継母、弟と暮らす彼女は、今の継母と…

  • PANTAライブ葬&伊藤蘭50周年記念コンサート

    9月1日(金)に去る7月7日に逝去した頭脳警察・PANTAの献花式・ライブ葬が渋谷のduo MUSIC EXCHANGEで行われた。ミュージシャンはもちろん各界の著名人もたくさん詰めかける中、「パーティー形式のようなお別れ会はやってくれるな」という本人の生前の希望に沿って、PANTAの歌唱映像に合わせて頭脳警察のメンバー、石塚俊明(TOSHI)、澤竜次、宮田岳、樋口素之助、おおくぼけい、竹内理恵が演奏するという催し。上手くいくのかちょっと心配だったが、そんな杞憂を吹っ飛ばすような素晴らしい演奏だった。まるでPANTAがその場にいるかのように思えた。これまで見てきた中でも最高のライブだった。これ…

  • 「春に散る」

    「春に散る」2023年8月28日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時50分より鑑賞(スクリーン7/D-8) ~リアルなボクシングシーンの迫力で最後まで見せ切る 沢木耕太郎と言えば、「深夜特急」などでおなじみのノンフィクション作家。そして小説家でもある。小説「春に散る」も彼の作品。それを「ヘヴンズストーリー」「菊とギロチン」「64-ロクヨン-」「ラーゲリより愛を込めて」「護られなかった者たちへ」など数々の秀作で知られる瀬々敬久監督が映画化した。脚本は瀬々監督と星航。 ボクシング映画だ。アメリカから40年ぶりに帰国した広岡仁一(佐藤浩市)は、世界チャンピオンを目指していた元ボクサー。…

  • 「あしたの少女」

    「あしたの少女」2023年8月25日(金)シネマート新宿にて。午後12時15分より鑑賞(スクリーン1/D-14) ~実習生という名のもとに若者を食い物にする社会を告発する 何やら青春のキラキラ感にあふれたタイトルの「あしたの少女」という映画。このタイトルは、我がミューズ、ペ・ドゥナとキム・セロンが共演したチョン・ジュリ監督の前作「私の少女」を意識してつけたものではないだろうか。 というわけで、「あしたの少女」はチョン・ジュリ監督8年ぶりの新作。今回もペ・ドゥナが出演している。 主人公の高校生、ソヒ(キム・シウン)がダンスの練習をしているシーンから映画は始まる。彼女はダンス好きな、ごく普通の高校…

  • 「高野豆腐店の春」

    「高野豆腐店の春」2023年8月22日(火)シネ・リーブル池袋にて。午後3時5分より鑑賞(シアター2/F-5) ~藤竜也、麻生久美子、中村久美。キャストで魅せる人情喜劇にホッコリ 取材が延期になってしまった。しょうがないので、空いた時間に池袋のユニクロに行ってジーンズを購入。裾上げができるまで約1時間ある。さて何するか? というわけで、時間がちょうどよかったので「高野豆腐店の春」を観に行ったのである。 広島県尾道を舞台にした人情喜劇だ。尾道に店を構える高野豆腐店(こうやどうふてん、ではない)では、父の高野辰雄(藤竜也)と娘の春(麻生久美子)が、毎朝二人三脚で豆腐作りに励んでいた。そんなある日、…

  • 「バービー」

    「バービー」2023年8月21日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時45分より鑑賞(スクリーン1/C-7) ~グレタ・ガーウィッグ監督がヒネッた笑いで男性優位社会を痛烈に批判 いやぁ~、暑い。お盆過ぎてこの暑さは何だ? 土曜は横浜の伊藤蘭コンサートに行ったのだが、日曜は午前中に両親のお墓参りをしたら、その後何もやる気がしなくなって映画館に行きそびれてしまった。 とはいえ、今日は観に行くぞ! 話題の「バービー」を。 グレタ・ガーウィグという俳優の存在は、彼女の主演作であり、ノア・バームバックが監督した「フランシス・ハ」(2012年)で初めて知った。素晴らしい青春コメディだった。ち…

  • 「ソウルに帰る」

    「ソウルに帰る」2023年8月14日(月)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて。午後1時35分より鑑賞(9F/C-9) ~自分のアイデンティティはどこにあるのか。一人の女性の心の軌跡を鮮烈に いやぁ~、久しぶりに映画館に行ったな。いつ以来だろう。2週間以上ぶりかな。 というわけで、この日行ったのはBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下。本家Bunkamuraの休館中にオープンした新しい映画館だ。渋谷東映が撤退したあとに入ったわけだが、旧館の良さは残しつつも、ロビーなどはかなりおしゃれな雰囲気。2つあるスクリーンのうち9階しか行かなかったが、さすが東急グループという感じだった。いろんな意味…

  • 近況報告&福田村事件

    お久しぶりですぅ~。(^▽^)/ などとはしゃいでいる場合ではない。 「658km、陽子の旅」を観て以来、映画館に行っていない。別に暑いからというわけではなく(それも少しはあるが)、忙しくて行けないのだ。 取材に加え、原稿書き、その合間に脚本のデータ入力のバイト、そしてあっちこっちの病院通い。それらが集中して身動きが取れないのだ。 それでもこの間の週末は珍しく暇だったので、空いている映画館(混んでるところはやっぱりコロナが怖い・・・)を見つけて行くぞ! と気合を入れていたのだが、その前に区のがん検診で胃のX線検査があり、バリウムを飲んでしまったのだ。バリウムなんて初めて飲んだが、検査後できるだ…

  • 「658km、陽子の旅」

    「658km、陽子の旅」2023年7月28日(金)テアトル新宿にて。午後2時30分より鑑賞(A-10) ~北へ向かう旅で溶けだしていく氷の心。菊地凛子の名演に拍手! 菊地凛子がアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「バベル」で女子高生を演じて、アカデミー助演女優賞の候補になったのは2006年。もう17年も前のことなのか~。時間の流れるのは早いなぁ~。 その菊地凛子を主演に迎えて、「海炭市叙景」「私の男」の熊切和嘉監督が撮ったのが「658km、陽子の旅」である。原案は「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM 2019」の脚本部門で審査員特別賞を受賞した室井孝介の脚本。 ちなみに…

  • 「CLOSE/クロース」

    「CLOSE/クロース」2023年7月17日(月・祝)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後1時15分より鑑賞(スクリーン10/D-12) ~2人の幼なじみの少年の友情と葛藤と悲劇。思春期の心理を繊細に 暑い。だるい。やってられない。それでも時間があるから映画館に行くのだ。 この日観たのは「CLOSE/クロース」。トランスジェンダーの主人公がバレリーナを目指す姿を描いた「Girl ガール」(残念ながら私はまだ観ていないのだが)で、カンヌ国際映画祭のカメラドール(新人監督賞)を受賞したルーカス・ドン監督の新作だ。この作品も第75回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した。 どんな映画かというと1…

  • 「星くずの片隅で」

    「星くずの片隅で」2023年7月16日(日)TOHOシネマズ シャンテにて。午後3時50分より鑑賞(スクリーン1/D-12) ~都会の片隅で必死に生きる男女。香港人の気概を感じさせる秀作 中国の締め付けが厳しくなるなど、香港をめぐる情勢は大きく変化している。そんな中でも、香港の今をスクリーンに刻み付けようとする新世代の映画作家がいる。 ラム・サム監督もその一人。日本でも評判になった「少年たちの時代革命」の共同監督をレックス・レンとともに務め、「星くずの片隅で」で単独監督デビューを果たした。 「星くずの片隅で」は、コロナ禍の香港を舞台に、数々の困難にもめげず必死に生きる男女を描いたヒューマンドラ…

  • 「山女」

    「山女」2023年7月14日(金)ユーロスペースにて。午後1時15分より鑑賞(ユーロスペース2/C-9) ~村の抑圧から解放され大自然の中で自立していく女性 2020年公開の映画「アイヌモシリ」を先日配信で観た。北海道を舞台に、今の時代と伝統の狭間で葛藤するアイヌの人々をリアルに描いたドラマで、十分に見応えがあった。 その「アイヌモシリ」の福永壮志監督の新作が「山女」だ。前作ではアイヌ伝統の祭りイヨマンテを取り上げていたが、今回は『遠野物語』の民話に着想を得たドラマだという。脚本は福永監督と長田育恵が担当。また、日米合作で製作されており、撮影は前作同様に外国人カメラマンが務めている。 18世紀…

  • 「1秒先の彼」

    「1秒先の彼」2023年7月13日(木)TOHOシネマズ池袋にて。午後1時30分より鑑賞(スクリーン4/D-8) ~奇想天外な台湾映画を山下敦弘監督とクドカンがリメイク チェン・ユーシュン監督の台湾映画「1秒先の彼女」(2020年)は、何事も1秒早いヒロインと1秒遅い青年の恋をユニークな切り口で描いたラブストーリー。日本でも話題になった。それを山下敦弘監督と宮藤官九郎脚本のコンビでリメイクしたのが「1秒先の彼」だ。 この映画、オリジナルとの最も大きな違いは男女の設定を逆転していること。つまり、何事も1秒早い男と1秒遅い女のドラマにしているのだ。 京都に暮らす郵便局員のハジメ(岡田将生)は、人よ…

  • 「遠いところ」

    「遠いところ」2023年7月7日(金)シネ・リーブル池袋にて。午後2時30分より鑑賞(シアター2/E-5) ~17歳の母親の転落。ここには沖縄の若者の過酷な現実がある 夏休みになると給食がなくなって、まともに食事をとれない子供の存在が問題になっている。だが、沖縄の現状はもっと深刻だ。若者の貧困が大きな社会問題になっている。それが子供にも影響している。 「遠いところ」は、その貧困問題をはじめ沖縄の様々な問題を視野に入れたドラマだ。 主人公は、沖縄県のコザで幼い息子を抱えて暮らす17歳の女性アオイ(花瀬琴音)。生活のために祖母に幼い息子を預け、友達の海音(石田夢実)と朝までキャバクラで働き生活費を…

  • PANTAよ、永遠に

    6月4日渋谷ラ・ママ「P-FES3」の集合写真 ロックミュージシャンのPANTA(頭脳警察)が7月7日の七夕の日に亡くなった。ここ数年の闘病生活、そして肺がんという発表があり、覚悟はしていたもののやっぱり残念というか、悲しいというか、どうにも言い表せない気持だ。せめて、現在製作中の頭脳警察のニューアルバムと、鈴木慶一とのユニットPKOのアルバムの完成を見届けてから旅立って欲しかった。 私とPANTAの音楽との出会いは20代に遡る。当時私はバンドがやりたくて、音楽雑誌のメンバー募集に応募しまくっていた。その中の一人に、錦糸町かどこかのキャバレーの照明係をやっているという男がいた。名前も忘れてしま…

  • 「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」

    「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」2023年7月4日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時15分より鑑賞(スクリーン3/E-16) ~ハリソン・フォードが年齢を感じさせない大活躍。集大成にふさわしい映画 ハリソン・フォード扮する考古学者インディ・ジョーンズの冒険を描くアドベンチャー映画「インディ・ジョーンズ」シリーズの第5作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」。15年ぶりの最新作にして、ハリソンが主演を務めるのはこれが最後となる。 もちろん私も過去4作はすべて観ている(全部劇場で観たわけじゃないけど)。それだけにワクワクする気持ちで映画館に出かけた。 考古学者で冒険家のイ…

  • 「小説家の映画」

    「小説家の映画」2023年7月3日(月)新宿シネマカリテにて。午後2時45分より鑑賞(スクリーン1/A-8) ~葛藤を抱えた2人の女性の連帯。どこからどう見てもホン・サンス印の映画 独特の作風で知られる監督は何人もいる。韓国のホン・サンス監督もその一人だ。彼の映画では、これと言って大きな事件は起こらず、登場人物がたわいないおしゃべりをするだけ。その様子を長回しの映像で描く。どこが面白いのかと思う人もいるだろうが、これがハマると抜けられなくなるのだ。 かくいう私もその1人。ホン・サンス沼にハマって、ここ10年ぐらいの作品はほとんど観ている。 今回の映画「小説家の映画」はモノクロ映画だ(過去にもモ…

  • 「To Leslie トゥ・レスリー」

    「To Leslie トゥ・レスリー」2023年6月29日(木)渋谷シネクイントにて。午後2時より鑑賞(スクリーン1/F-7) ~アンドレア・ライズボローの迫真の演技で描く人生やり直しのドラマ 3年前に亡くなった母と去年亡くなった父は、生前いずれも宝くじに当たった経験がある。金額はともに100万円程度だったので、特に生活に変化があったわけではない。しかし、これがさらに高額な賞金ならどうだったろう。それを機に生活が激変する人も多いのではないか。 「To Leslie トゥ・レスリー」は、宝くじで高額当選したことが原因で人生につまずいた女性のドラマ。最初は単館公開のインディーズ映画だったものの、主…

  • 「aftersun/アフターサン」

    「aftersun/アフターサン」2023年6月27日(火)新宿ピカデリーにて。午後1時より鑑賞(スクリーン7/D-8) ~父と過ごした思い出の日々を振り返る娘。ノスタルジーと切なさと 劇場で観たかったのに、観ないうちに公開が終了してしまう。そんな映画がたくさんあるわけだが、ギリギリのところで何とか間に合ったのが「aftersun/アフターサン」。5月26日の公開から1ヶ月経ってようやく鑑賞した。 父と娘のドラマだ。11歳の少女ソフィ(フランキー・コリオ)は、夏休みに31歳の父親カラム(ポール・メスカル)とともにトルコのリゾート地にやってきた。カラムは離婚して普段はソフィとは離れて暮らしていた…

  • 「告白、あるいは完璧な弁護」

    「告白、あるいは完璧な弁護」2023年6月23日(金)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後12時より鑑賞(スクリーン8/d-6) ~「予測不能」な容疑者と弁護士の対話。二転三転する展開に目が離せず 「予測不能」というフレーズが、これほどピッタリくる映画はないだろう。韓国製サスペンス・スリラー「告白、あるいは完璧な弁護」である。 IT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)は、不倫相手であるキム・セヒ(ナナ)がホテルの密室で殺された殺人事件の容疑者となってしまう。無実を訴える彼は、100%無罪を勝ち取るといわれる敏腕弁護士のヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自分の潔白を証明してほしいと依頼する。…

  • 「あつい胸さわぎ」

    「あつい胸さわぎ」2023年6月21日(水)google playにて鑑賞。 ~若年性乳がんの娘と母の絆と葛藤を軽やかに描く 本日は珍しく劇場ではなく、配信で観た映画をお届けです。 映画館に行くにはちょっと体調が悪い。とはいえ、横になるほどでもない。さて、どうしようかと思ってチラチラと配信映画を覗いていて目についたのが「あつい胸さわぎ」。今年の1月に公開され、一部で高評価を得たものの、つい見逃してしまった映画だ。 もともとは、劇作家・横山拓也による演劇ユニット「iaku」の舞台劇とのこと。それを「恋とさよならとハワイ」のまつむらしんご監督が映画化した。 港町の古い一軒家で、母・昭子(常盤貴子)…

  • 「アシスタント」

    「アシスタント」2023年6月18日(日)シネマート新宿にて。午後2時45分(スクリーン1/A-8) ~映画業界で働く女性の1日を通してハラスメントの実態をリアルに見せる ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる性加害事件が明るみに出たのが2017年。その2年後の2019年に製作された映画「アシスタント」は、映画業界におけるハラスメントの実態をリアルに見せた社会派ドラマだ。 主人公は、名門大学を卒業し、映画プロデューサーを夢見て映画製作会社に就職したジェーン(ジュリア・ガーナー)。彼女の1日の出来事を描く。 ジェーンの朝は早い。まだ暗いうちに誰よりも早く出勤して、オフィ…

  • 「カード・カウンター」

    「カード・カウンター」2023年6月16日(金)シネマート新宿にて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン1/D-14)~ポール・シュレイダー監督らしいサスペンス・スリラー。オスカー・アイザックが好演 「タクシードライバー」はロバート・デ・ニーロ主演の名作映画。監督はマーティン・スコセッシ、脚本はポール・シュレイダー。そのシュレイダーはやがて監督もするようになり、「アメリカン・ジゴロ」「白い刻印」「魂のゆくえ」などの作品を送り出している。 「カード・カウンター」はマーティン・スコセッシが製作総指揮を務め、ポール・シュレイダーが監督、脚本を担当している。役柄は違えど「タクシードライバー」のコンビ。そ…

  • 「水は海に向かって流れる」

    「水は海に向かって流れる」2023年6月11日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン2/F-9) ~やや不完全燃焼の感はあるものの影のある広瀬すずが魅力的 ハリー・ポッターの館(正式名称は「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」というらしい)がオープン間近のとしまえん跡地。そこからほど近いユナイテッド・シネマとしまえんも、それを記念してハリポタの特集上映をやるらしい。 そんなことには関係なく、この日、そのユナイテッド・シネマとしまえんで観たのは田島列島のマンガの実写映画化「水は海に向かって流れる」。監督は、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「そし…

  • 「逃げきれた夢」

    「逃げきれた夢」2023年6月9日(金)新宿武蔵野館にて。午後12時30分より鑑賞(スクリーン3/C-4) ~おっさんはつらいよ。人生の節目を迎えた男の「あがき」をリアルに 私もデモや集会に参加して反対した入管法改正(改悪だろう)法案が成立してしまった。賛成したやつらの顔と名前をよーく覚えておいて、きっとしっぺ返しを食らわすぞ! と誓ったのである。 とまあ、世の中はうまくいかないことが多いわけだが、そんな人生をやり直そうとする男のドラマが「逃げきれた夢」である。 「枝葉のこと」「お嬢ちゃん」などが高く評価された二ノ宮隆太郎監督の第4作。ちなみに、二ノ宮監督は、俳優としてもあっちこっちの作品に顔…

  • 「ウーマン・トーキング 私たちの選択」

    「ウーマン・トーキング 私たちの選択」2023年6月3日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン2/D-11) ~虐げられた女たちの選択は? 濃密で息詰まる会話劇 不当な圧力にさらされてきた女性たちが、声を上げ始めたのは最近のことだ。それに呼応するような映画が「ウーマン・トーキング 私たちの選択」。第95回アカデミー賞で作品賞と脚色賞にノミネートされ、脚色賞を受賞した。 舞台となるのは自給自足で暮らしてきたキリスト教一派の村。この村では、女たちがたびたびレイプされていた。薬を使われ眠らされていた女たちは、男たちから「悪魔の仕業」「作り話」だと言われてレイプを…

  • 「怪物」

    「怪物」2023年6月2日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時より鑑賞(スクリーン9/B-11) ~怪物はどこにでもいる。3つの視点で綴られる異形の者のドラマ 「怪物だ~れだ」という子供の声が印象的な予告編でおなじみの是枝裕和監督の新作映画「怪物」。あれはゲームのかけ声だったのね。 この映画、これまでの是枝作品とは大きく違う。脚本を是枝監督ではなく、映画「花束みたいな恋をした」やテレビドラマの脚本で知られる坂元裕二が担当しているのだ。そのせいか、扱うテーマは共通しているものの、これまでの是枝作品とは明らかに違う雰囲気を持つ。 オープニングからサスペンスの魅力が全開だ。妖しい雰囲気…

  • 「私のプリンス・エドワード」

    「私のプリンス・エドワード」2023年5月28日(日)新宿武蔵野館にて。午後3時より鑑賞(スクリーン1/B-11) ~お気楽ラブコメかと思いきや、女性の自立を描いた骨のあるドラマ 日曜の昼下がり。中途半端な時間の中、他に観る映画もなく選んだのが香港映画「私のプリンス・エドワード」。なに? 香港のラブコメ? どうせ大した映画じゃないんだろ? まあ、いいや、単なる時間つぶしだし。 というような、なめくさった態度で見始めたのだが……。 香港のプリンス・エドワード地区にあるショッピングモール・金都商場(ゴールデンプラザ)では、結婚式に必要なドレスや小物、写真撮影などを格安で揃えることができる。そこのウ…

  • 「波紋」

    「波紋」2023年5月26日(金)池袋HUMAXシネマズにて。午後12時30分より鑑賞(シネマ4/G-9) ~社会問題にブラックな笑いも盛り込んだ女性の自己解放のドラマ かつては「かもめ食堂」「めがね」など癒やし系映画の監督のように思われていた(私が思っていただけか?)荻上直子監督。ここのところの充実ぶりはハンパではない。「川っペリムコリッタ」に続く新作「波紋」も、実に面白い映画だ。 主人公の女性、須藤依子の人間ドラマであると同時に、クスクス笑えるブラックコメディーでもある。 冒頭はその依子(筒井真理子)が朝起きるシーン。隣には夫の修(光石研)がイビキをかいて眠っている。だが、なぜか夫婦は頭と…

  • 「あの子の夢を水に流して」

    「あの子の夢を水に流して」2023年5月24日(水)ユーロスペースにて。午後7時より鑑賞(スクリーン1/C-9) ~我が子を亡くした女性と生と死が循環する川の物語 本当は映画を作りたい。だが、そんなお金もコネもない。だから、クラウドファンディングを実施している映画に少額のお金を出して応援している。 遠山昇司監督の「あの子の夢を水に流して」も、クラファンで応援した映画だ。2020年の熊本の水害で被害を出した球磨川を舞台にしたドラマで、内田慈が主演を務めると聞いてクラファンに参加した。内田は昔から好きな俳優だ。 生まれて間もない息子を亡くして失意の底にいる37歳の瑞波(内田慈)は、故郷の熊本県八代…

  • 「最後まで行く」

    「最後まで行く」2023年5月20日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン7/D-9) ~刑事VS監察官の迫力のバトル。息をもつかせぬ韓国映画のリメイク この前の日曜の21日。渋谷の入管法改悪反対デモに参加してきた。参加者なんと7000人。それがサウンドカーのノリのいい音楽とパーカッションに乗せて、シュプレヒコールを叫びながら渋谷・表参道を行進する。道行く通行人や外国人観光客はカメラを向け、私はすっかりスター気分! いや、そんなことを言っている場合ではなかった。とにかく反対の声は急激に広がっているゾ。 その前日には藤井道人監督の「最後まで行く」を鑑賞。「ヴ…

  • 「同じ下着を着るふたりの女」

    「同じ下着を着るふたりの女」2023年5月19日(金)シアター・イメージフォーラムにて。午後1時30分より鑑賞(シアター2/G-6) ~愛せないし、憎みきれない。母娘の抜き差しならない関係 母と娘の関係には微妙なものがあるようだ。最近の日本映画では、井上真央と石田えりが共演した「わたしのお母さん」が、そうした母と娘の微妙な関係を繊細に描き出していた。表面的には凪いでいるように見えても、ちょっとしたきっかけで嵐が吹き荒れる。 韓国映画「同じ下着を着るふたりの女」も母と娘のドラマだ。ただし、こちらはかなり強烈。ふだんから、2人の間には嵐が吹き荒れている。 若くしてシングルマザーとなった母スギョン(…

  • 「あの子の夢を水に流して」&「福田村事件」

    アップする映画のストックがなくなってしまった。 だからというわけでもないが、これから公開になる2本の映画の紹介を。 1本目は明日5月20日(土)からユーロスペースで公開になる「あの子の夢を水に流して」。豪雨で被災した熊本県の球磨川を舞台に描いた生命をめぐる物語。クラウドファンディングに私も協力していて、エンドクレジットにスペシャルサンクスとして名前が掲載されているはず(もちろん本名ですが)。 なぜ協力したかというと、クラウドファンディングのサイトを見て何となく気になってしまったのだ。熊本には一度しか言ったことがないけど。おまけに主演の内田慈もけっこう好きな俳優だったりするので。 私も来週あたり…

  • 「TAR/ター」

    「TAR/ター」2023年5月13日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時20分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~天才指揮者の栄光と転落。ケイト・ブランシェットのなりきりぶりがスゴイ 中学生の頃に熱心にクラシック音楽を聴いていた時期があるのだが、あれは何だったのだろう。その後はあまり聴かなくなってしまったのだが、そんな私でもベルリンフィルの名前は知っている。ドイツの世界有数のオーケストラで、名だたる指揮者がタクトを振るっている。 そのベルリンフィルを舞台にした恐ろしいドラマが「TAR/ター」である。ターとは主人公の名前。女性として初めてベルリンフィルの首席指揮者に就任したリデ…

  • 「銀河鉄道の父」

    「銀河鉄道の父」2023年5月8日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~放蕩息子の宮沢賢治を見放さない父の愛は偉大なり 父母の愛はとてつもなく大きい。そんな当たり前のことを再確認させてくれる映画が「銀河鉄道の父」である。直木賞を受賞した門井慶喜の小説を「八日目の蝉」「いのちの停車場」「ファミリア」などの成島出監督が映画化した。 タイトルからもわかるように宮沢賢治の父・政次郎を主人公に据えて、彼と賢治、妹のトシ、賢治の母・イチなどとの家族愛を描いたドラマである。 映画の冒頭、岩手県で質屋を営む宮沢政次郎(役所広司)が列車に乗って自宅に戻ろう…

  • 「EO イーオー」

    「EO イーオー」2023年5月6日(土)新宿シネマカリテにて。午後2時より鑑賞(スクリーン1/A-11) ~こんな映像観たことない!? ロバを主人公にした驚きの映画 カンヌ、ヴェネチア、ベルリンなどの国際映画祭で受賞歴を持つポーランドのイエジー・スコリモフスキ監督。今年85歳のこのベテラン監督の7年ぶりとなる作品は、なんと人間ではなくロバを主人公にした映画。その名も「EO イーオー」。 しかし、まあロバと言ったら私なんかは『おはよう! こどもショー』のロバくんを思い出しますなぁ。愛川欽也が演じておりました。まさに名演でした。て、いつの時代の話だよ! 若い人はわかんないだろ! そんな余談はさて…

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