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映画貧乏日記 https://cinemaking.hatenablog.com/

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。・・・というわけで、主に映画館で観た映画のレビュー(感想)を書いています。

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2022/07/21

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  • 「お坊さまと鉄砲」

    「お坊さまと鉄砲」2024年12月17日(火)シネ・リーブル池袋にて。午後2時55分より鑑賞(シアター1/C-7) ~突然の民主化に揺れる人々をユーモラスに描いたコメディ。民主主義や選挙についても考えさせられる ブータンには行ったことがないのだが(というより外国にはあまり行ったことがないのだが)、映画では何度か目にしたことがある。特に2021年に公開された「ブータン 山の教室」は、ブータンの地方の村の学校を舞台にしたドラマで、本当の幸せとは何かを問いかけるとても良い映画だった。 その「ブータン 山の教室」のパオ・チョニン・ドルジ監督が監督・脚本を務めた新作が「お坊さまと鉄砲」。変わったタイトル…

  • フォルティウス優勝!

    今回は久々に映画以外の話題です。 12月13~15日に開催された「軽井沢国際カーリング」で、私が応援しているフォルティウスが優勝した。 予選を2勝1敗で1位通過し、準決勝はスイスのチーム・ティリンゾーニを8対3で下し、決勝はスウェーデンのハッセルボリに5対4で劇的な逆転勝利。見事に優勝を成し遂げた。 この大会は、世界ランク上位の海外チームも参加した大会。そこで優勝したのだから価値がある。 私がカーリングを本格的に見るようになったのは、今から10年以上前のソチオリンピックでの日本代表フォルティウスの試合から。当時は北海道銀行のチームだった。 その後、平昌、北京の出場は逃し、北海道銀行から独立した…

  • 「クラブゼロ」

    「クラブゼロ」2024年12月10日(水)新宿武蔵野館にて。午後2時40分より鑑賞(スクリーン2/B-6) ~教師による洗脳。不気味で不快だが最後まで目を離せないスリラー ミヒャエル・ハネケ監督といえば、刺激的でアクの強い作品が多いことで知られる。そのハネケ監督に師事したというのがオーストリア出身のジェシカ・ハウスナー監督。こちらも「リトル・ジョー」「ルルドの泉で」などの刺激の強い作品を手がけてきた。 ハウスナー監督の新作「クラブゼロ」も、まさに怪作というにふさわしいドラマだ。 名門エリート校に招かれた新任の栄養学の教師ノヴァク(ミア・ワシコウスカ)は、生徒たちに「意識的な食事」の重要性を説く…

  • 「正体」

    「正体」2024年12月6日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時15分より鑑賞(スクリーン7/D-9) ~様々な人物に成りすまし逃走を続ける殺人犯。難役を演じる横浜流星の演技力に脱帽 「横浜流星のファンは映画館に来ないんだよねぇ」と彼を起用した某映画監督が嘆いていたが、その真偽はともかく彼が良い俳優なのは間違いがない。映画「正体」を観て改めてそう思った。 「正体」は染井為人の同名ベストセラー小説が原作。それを「新聞記者」「余命10年」「ヴィレッジ」の藤井道人監督が映画化した。 高校3年生で一家3人を惨殺して死刑判決を受けていた鏑木慶一(横浜流星)が脱走する。事件を担当していた警視…

  • 「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」

    「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」2024年12月4日(水)シネ・リーブル池袋にて。午後4時50分から鑑賞(シアター2/D-4) ~1987年製作のウサギたちの旅を描いたアニメ。現代にも通じるテーマを持つ アート・ガーファンクルの歌が好きだ。サイモン&ガーファンクル以降、どちらかというとポール・サイモンに注目が集まりがちだったが、アートの歌声はこの世のものとは思えないほど美しく心に染み入ってきた。 そんなアート・ガーファンクルに「ブライト・アイズ」という曲がある。これもまた美しいバラードだが、アニメに使用された曲だと聞いて、いつかそのアニメを観たいものだと昔から思っていた。 だが、実はそ…

  • 「地獄でも大丈夫」

    「地獄でも大丈夫」2024年11月27日(水)ユーロスペースにて。午後2時25分より鑑賞(ユーロスペース1/C-8) ~2人の女子高生の復讐の旅。社会問題を盛り込んだ青春ドラマ 韓国の映画界に一時の勢いはないという話を聞いた。だが、そうだとしても新しい監督が次々に出てくる。けっして韓国映画界の未来は暗くないのではないか。改めてそう思わされた映画が、イム・オジョンが長編初監督と脚本を手がけた「地獄でも大丈夫」である。 ちなみに、オジョン監督は、ポン・ジュノ監督などを輩出した韓国の名門映画学校・韓国映画アカデミー(KAFA)の出身で、2020年の「今年の顔」に選出されたという。 2人の女子高生のガ…

  • 「ドリーム・シナリオ」

    「ドリーム・シナリオ」2024年11月23日(土)イオンシネマ板橋にて。午後2時より鑑賞(スクリーン3/D-6) ~SNS社会を痛烈に皮肉った不条理スリラー。ニコラス・ケイジの演技がすごい 前作「シック・オブ・マイセルフ」でSNS時代の闇を描いたノルウェーのクリストファー・ボルグリ監督の北米進出作「ドリーム・シナリオ」。製作はあのA24。「ミッドサマー」のアリ・アスターも製作に名を連ねている。 とくれば、これは期待してしまうわけだ。 「夢」をモチーフにした不条理スリラー映画だ。平凡な大学教授ポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)は、何百万人もの見知らぬ人々の夢の中に出没するようになる。一躍有名…

  • 「海の沈黙」

    「海の沈黙」2024年11月22日(金)キノシネマ新宿にて。午後3時15分の回(シアター1/E-12) ~骨太で重厚な人間&恋愛ドラマ。これぞ倉本聰ワールド! 倉本聰と言えば、「前略おふくろ様」「北の国から」など数々の名作テレビドラマの脚本家として知られている。その倉本が長年温めていた物語を「沈まぬ太陽」「Fukushima 50」などの若松節朗監督が映画化した。もちろん脚本は倉本聰。映画の脚本としては「海へ See you」(1988)以来、実に36年ぶりの作品となるらしい。 売れっ子脚本家になり損ねた私としても、これはぜひ観なければなるまい。 世界的な画家・田村修三(石坂浩二)の展覧会で、…

  • 「ロボット・ドリームズ」

    「ロボット・ドリームズ」2024年11月21日(水)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後6時45分より鑑賞(シアター1/E-12) ~セリフもナレーションもないアニメだが、感情の揺れ動きを繊細に伝える アニメはあまり観ない。別に嫌いなわけではなく、実写を追いかけるだけで大変だからだ。それでもかなり高評価のアニメ映画があると聞いたので、観に行ってみた。 2013年に「ブランカニエベス」という映画が公開されて話題になった。グリム童話「白雪姫」と闘牛を織り交ぜたダークファンタジーで、モノクロ&サイレントで描いたユニークな作品だ。私も鑑賞したがなかなか面白かった。 その監督であるスペインのパブロ・…

  • 「アット・ザ・ベンチ」

    「アット・ザ・ベンチ」2024年11月18日(月)テアトル新宿にて。午後2時20分より鑑賞(A-11) ~川べりのベンチを舞台に繰り広げられる5編の物語。笑って、ほっこりして、じんわりして 兵庫県知事選挙はとんでもない結果になったが、昨今の選挙状況を考えればさもありなん。政策などよりわかりやすい物語を求める大衆を、どうにかして振り向かせないと、今後もこうしたことが起きるだろう。 などと偉そうなことを言ってみたが、そんなことには関係なく今回も新作映画のレビューをお届け。東京・二子玉川の川沿いにある古ぼけたベンチを舞台にしたオムニバス映画「アット・ザ・ベンチ」だ。 映像監督・写真家の奥山由之による…

  • 「動物界」

    「動物界」2024年11月16日(土)シネ・リーブル池袋にて。午後2時50分より鑑賞(シアター2/C-4) ~モンスター映画の異色作。父と子のドラマに加えて現代的テーマも包含 土日の池袋ルミネはかなりの混雑ぶりだ。特に8階のレストランフロアには、私なんぞ入ったこともないおしゃれな飲食店がたくさんあって、入店待ちの人でごった返している。 その人波を抜けて同じフロアにあるシネ・リーブル池袋へ。この日観たのは「動物界」。フランスで大ヒットしたSFスリラーだ。 映画の冒頭、料理人のフランソワ(ロマン・デュリス)と高校生の息子エミール(ポール・キルシェ)が車の中でケンカをしている。その挙句にエミールは車…

  • 「本心」

    「本心」2024年11月13日(水)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後3時10分より鑑賞(シアター10/e-13) ~仮想空間に現出させた母。石井裕也が近未来の社会を描く コンスタントに映画を撮り続けている監督の一人に石井裕也がいる。ここ数年でも「茜色に焼かれる」「アジアの天使」「月」「愛にイナズマ」と監督作は枚挙に暇がない。 その石井裕也監督が監督・脚本を担当して、平野啓一郎の小説「本心」を映画化した。珍しく私は原作を読んでいたので、それをどう映像化したのか興味津々だった。 近未来の日本が舞台の物語だ。石川朔也(池松壮亮)は、母親(田中裕子)から「大事な話があるの」という電話を受ける。…

  • 「ゴンドラ」

    「ゴンドラ」2024年11月11日(月)新宿シネマカリテにて。午後2時15分より鑑賞(スクリーン2/A-5) ~セリフなしですべてを物語る。コミカルでキュートなラブストーリー ドラマにはセリフがつきものだが、セリフのない映画もある。ドイツとジョージアの合作映画「ゴンドラ」にはセリフがない。別に無声映画というわけではなく、普通に音は聞こえるし、笑い声などの人間の声も聞こえる。だが、登場人物によるセリフは存在しないのだ。 この映画はコロナの時期に撮影されたが、セリフなしになったのはそのせいばかりではないようだ。監督・脚本を担当したドイツのファイト・ヘルマー監督(「ツバル TUVALU」「ブラ!ブラ…

  • 「ルート29」

    「ルート29」2024年11月9日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時25分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~孤独な女性と風変わりな女の子の超個性的なロードムービー 森井勇佑監督の長編デビュー作「こちらあみ子」は、少し風変わりな少女を描いたドラマで鮮烈な映画だった。その映画で主人公を演じて強烈な個性を放っていた大沢一菜が、再び主演を務めたのが「ルート29」。綾瀬はるかとのダブル主演で、監督は同じく森井勇佑。中尾太一の詩集「ルート29、解放」にインスピレーションを受けて作られたロードムービーだ。 他者と必要以上に関りを持とうとしない孤独な女性のり子(綾瀬はるか)は、鳥取の街で清…

  • 「ノーヴィス」

    「ノーヴィス」2024年11月5日(火)シネ・リーブル池袋にて。午後2時より鑑賞(シアター2/D-4) ~ボート部の新入部員の狂気。緊張感にあふれた重量級の映画 スポーツを本格的にやったことはない。せいぜい大学で軟式野球のサークルに入っていたぐらいだ。それも代打専門でバント要員だったから大したことはない。 そんな私が、ボート部に入って極限までトレーニングに励んだような疑似体験をしてしまったのが、「ノーヴィス」という映画だ。ノーヴィスとは、スポーツの初心者のこと。つまり新人である。 主人公は大学1年生のアレックス(イザベル・ファーマン)。女子ボート部に入部し、過酷なトレーニングにのめり込む。一方…

  • 「アイミタガイ」

    「アイミタガイ」2024年11月1日(金)グランドシネマサンシャイン 池袋にて。午後1時25分より鑑賞(シアター11/e-10) ~様々な人たちの思いが受け継がれて、すべてがつながっていく奇跡のようなドラマ 2020年に急死した佐々部清監督。「陽はまた昇る」「半落ち」「チルソクの夏」「夕凪の街 桜の国」「ツレがうつになりまして。」などたくさんの作品を残している。個人的にけっこう好きな監督だったな。 その佐々部監督の名前を新作の脚本に見つけてしまった。中條ていの連作短編集を映画化した群像劇「アイミタガイ」である。 どうやら佐々部監督は生前、この映画の企画を温めていたらしい。「台風家族」などの監督…

  • 「最後の乗客」

    「最後の乗客」2024年10月26日(土)シネマ・ロサにて。午後3時30分より鑑賞(シネマ・ロサ1/C-8) ~タクシー運転手と3人の謎の乗客。「震災を風化させない」という強い思い 東日本大震災から13年が過ぎ、報道等も少なくなってきたと感じる。震災が風化しつつあるのは事実だろう。そんな中で「震災を風化させない!」という強い思いを持つ映画が「最後の乗客」だ。 ニューヨーク在住でMVなどを手掛けてきた堀江貴監督が、震災で被害を受けた故郷・仙台への思いを映画にすべくクラウドファンディングを実施して製作した。 映画は海の風景から始まる。そこに震災から10年が経過したことを告げるテロップが入る。さらに…

  • 「侍タイムスリッパー」

    「侍タイムスリッパー」2024年10月23日(水)TOHOシネマズ日比谷にて。午後6時40分より鑑賞(スクリーン12/F-16) ~侍がタイムスリップして斬られ役に。時代劇への愛がタップリ詰まったインディーズ映画 池袋シネマ・ロサで単館上映されていたインディーズ映画が、瞬く間に評判を呼び、ついにギャガが配給について全国で拡大上映されるに至った「侍タイムスリッパー」。遅ればせながらついに観てきた。TOHOシネマズ日比谷の大スクリーンで上映だもの凄いな。 タイムスリップもののSFだ。舞台は幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也)は、長州藩士を討つよう密命を受ける。だが、標的の男と刃を交えた…

  • 「徒花-ADABANA-」

    「徒花-ADABANA-」2024年10月21日(月)テアトル新宿にて。午後2時30分より鑑賞(A-11) ~クローンを巡る近未来SF。アートのような独特の映像世界 午前中で仕事が終わった。時間が空いたので映画を観よう。でも、明日は朝早くバイトの予定があるから、あんまり遅くはなりたくない。 というので選んだのは「徒花-ADABANA-」。1時間34分というコンパクトな上映時間だ。これならちょうどよい。 長編デビュー作「赤い雪 Red Snow」(2019年)で注目された甲斐さやか監督による長編第2作。前作はサスペンスだったが、今回は一転して近未来SFだ。 裕福な家庭に育った新次(井浦新)は妻と…

  • 「国境ナイトクルージング」

    「国境ナイトクルージング」2024年10月19日(土)新宿ピカデリーにて。午後1時40分より鑑賞(シアター5/B-11) ~若い男女3人が一緒に過ごした数日間。繊細な描写が光る青春映画 とっくの昔に青春時代など終了してしまったが(いくつになっても青春!なんてことはこの際置いといて)、それでも青春映画には心動かされるものがある。 「国境ナイトクルージング」は、シンガポール人監督アンソニー・チェンが、北朝鮮と国境を接する中国の辺境の街を舞台に描いた青春映画だ。 ちなみにチェン監督は2013年の長編デビュー作「イロイロ ぬくもりの記憶」で第66回カンヌ国際映画祭カメラドールを受賞している。シンガポー…

  • 「本を綴る」

    「本を綴る」2024年10月16日(水)K's cinemaにて。午後2時20分より鑑賞(B-7) ~本と書店への愛が詰まった温かなロードムービー 近所の書店2店が相次いで閉店した。これで近隣の書店はゼロである。本は手に取って見てから買う主義の私は(つまりネットでは購入しない)、とても不便で仕方がない。わざわざ池袋や新宿の大型書店に行かねばならなくなった。困ったものだ。 そんな中、本や書店をテーマにした映画が公開された。「本を綴る」。東京都書店商業組合のYouTubeチャンネル「東京の本屋さん 街に本屋があるということ」で配信されたドラマ「本を贈る」の新たな企画として製作された。ドラマと同じく…

  • 若松孝二 十三回忌イベント「いきもののきろく」「燃えろ青春の一年」

    若松孝二 十三回忌イベント「いきもののきろく」「燃えろ青春の一年」 2024年10月15日(火)テアトル新宿にて。午後5時50分より鑑賞(D-11) 昨夜はテアトル新宿での若松孝二十三回忌イベントにて、「いきもののきろく」「燃えろ青春の一年」を鑑賞。どちらも若松プロにいた井上淳一監督の作品。 「いきもののきろく」は2014年の47分の作品。原案は永瀬正敏。廃墟のような街で男が運河に流れ着いたゴミを拾い集める。それでイカダを作り始める。そこに女が現れる。2人はそれぞれにトラウマがあるらしい。女の出現で男の日常に微かにひびが入り始める……。 モノクロで数少ないセリフはテロップで表示される。前年に起…

  • 「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」

    「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」2024年10月11日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時50分より鑑賞(スクリーン8/H-19)(IMAX) ~ジョーカーの内面の精神世界を描く。予想を覆す斬新な続編 「バットマン」に悪役として登場するジョーカーの誕生秘話を描いた2019年の「ジョーカー」。ホアキン・フェニックスの壮絶な演技もあって、単なるエンタメ映画の枠を超えた奥行きある映画になり、第76回ベネチア国際映画祭で金獅子賞、第92回アカデミー賞で主演男優賞を受賞するなど高い評価を得た。 それから5年。満を持して続編の登場だ。題して「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」。監督は前作同様にト…

  • 「Cloud クラウド」

    「Cloud クラウド」2024年10月9日(水)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時より鑑賞(スクリーン2/D-8) ~不穏な空気の中、得体の知れない人間たちがうごめき憎悪が連鎖する 黒沢清監督の映画はかなりの本数を観ているが、そのほとんどは不穏な空気がスクリーンに流れている。ホラーだけでなくホームドラマ、サスペンス、歴史ドラマまで様々なタイプの作品を手がけているが、いずれもゾクゾクするような不気味さが伝わってくる。 最新作「Cloud クラウド」も同様だ。主人公は吉井良介(菅田将暉)。クリーニング工場で働きながら副業で転売屋をしている。転売について教わった高専の先輩・村岡(窪田正孝…

  • 「憐れみの3章」

    「憐れみの3章」2024年10月1日(火)新宿ピカデリーにて。午後1時20分より鑑賞(シアター7/C-6) ~ランティモス節全開の中編映画3本。毒気の向こうに何かが見える……かも アカデミー賞はじめ各賞を総なめにした「哀れなるものたち」や「女王陛下のお気に入り」を観てヨルゴス・ランティモス監督の映画を知った人は、新作「憐みの3章」を見てビックリするかもしれない。何しろ奇妙奇天烈でアクの強い作品なのだ。 といっても、「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」といった彼の初期作品は、いずれも奇妙奇天烈な映画。そういう意味で、原点回帰ともいうべき作品だろう。脚本も「ロブ…

  • 「西湖畔(せいこはん)に生きる」

    「西湖畔(せいこはん)に生きる」2024年9月29日(日)新宿シネマカリテにて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン2/A-3) ~山水画のように美しい大自然の映像とマルチ商法の激烈な映像 中国の若手監督グー・シャオガンの「春江水暖~しゅんこうすいだん」は鮮烈な映画だった。変わりゆく中国社会に翻弄される家族を描いたドラマなのだが、その背景に使われる風景をとらえたカメラワークが流麗でまるで山水画のようだった。特に10分近い長回しの水泳シーンは圧巻だった。 そのシャオガン監督の長編第2作が「西湖畔(せいこはん)に生きる」だ。本作は釈迦の十大弟子の1人・目連が地獄に堕ちた母を救う仏教故事「目連救母」に…

  • 「本日公休」

    「本日公休」2024年9月26日(木)新宿武蔵野館にて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン1/C-9) ~昔ながらの理髪店を営む母と今の時代を生きる子供たち。一服の清涼剤のような映画 台湾映画を取り上げるのは久々かな? 台中の理髪店を舞台にしたドラマ「本日公休」。作家やミュージックビデオの監督としても活躍する台湾のフー・ティエンユー監督が、自身の母親をモデルに脚本を書き映画にした。撮影も実家の理髪店で行ったという。 台中にある昔ながらの理髪店。ところが「本日公休」の札がかかり、店主のアールイ(ルー・シャオフェン)が行方不明。どうやら車でどこかに出かけたらしい。スマホも置いていったため連絡も取れ…

  • 「あの人が消えた」

    「あの人が消えた」2024年9月24日(火)イオンシネマ板橋にて。午後1時30分より鑑賞(スクリーン1/F-9) ~あなたも絶対騙される!? 不可思議なミステリーが爆笑のコメディーに転化。そしてさらに…… 前回取り上げた「ぼくが生きてる、ふたつの世界」を9月25日(水)に新宿ピカデリーで、もう一度鑑賞した。前回はちょっと手話の字幕が見にくかったのだが、今回はそれもすべてクリアになり、より親子の情愛がくっきりと浮かび上がってきた。そして出演している聾者の演技の達者なこと。大がパチンコ店で知り合った女性など、存在感十分の演技だった。本当に良い映画だと思う。 閑話休題。9月24日、皮膚科のクリニック…

  • 「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

    「ぼくが生きてる、ふたつの世界」2024年9月20日(金)シネ・リーブル池袋にて。午後2時5分より鑑賞(シアター2/F-4) ~聾者の両親を持つ息子の葛藤と成長。これは私の物語 9月19日、大宮ソニックシティ大ホールへ伊藤蘭のコンサートを観に行ってきた。相変わらず若々しくてエネルギッシュなステージだった。約2時間、歌って踊り続けるのだから大したものだ。それに刺激されて観客も大盛り上がりで、私もずっとスタンディングでペンライトを振り、踊りまくってしまった。こんなにはしゃいだのはいつ以来だろう? さて、そんなことには関係なく、「そこのみにて光り輝く」「きみはいい子」の呉美保監督が、9年ぶりに長編映…

  • 「ぼくのお日さま」

    「ぼくのお日さま」2024年9月16日(月・祝)イオンシネマ板橋にて。午後2時35分の回(スクリーン2/C-10) ~フィギュアスケートを学ぶ少年と少女、コーチの温かで美しすぎる物語 しまった! こんなに前だったのか……。予約したC-10。行き慣れない映画館だからなぁ。前すぎて観にくいなぁ。けど仕方ないか。 などと上映前はあれこれ思ったものの、映画が始まったらそんなことは全く気にならなくなってしまった。 「僕はイエス様が嫌い」で第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を受賞した奥山大史監督の商業映画デビュー作「ぼくのお日さま」だ。奥山監督は脚本のほか撮影、編集も手掛けている。本作は…

  • 「幻の光」(デジタルリマスター版)

    「幻の光」(デジタルリマスター版)2024年9月4日(水)シネ・リーブル池袋にて。午後2時55分より鑑賞(シアター1/D-8) ~是枝裕和監督のデビュー作がデジタルリマスターに。一人の女性の喪失と再生のドラマ 「ナミビアの砂漠」の衝撃は大きく、もう一度観て色々と再確認しようと思ったものの、結局今週はまた映画館に行けず。もともと大学病院の定期通院の予定が2件もあったのに加え、それとは別の症状が出たため別の病院に行って検査することに。私は病気のデパートか? まあ、幸い大きな異常はなかったので良かったが……。 というわけで、10日ほど前に観た映画の感想をお届けします。 家のそばのTSUTAYAで以前…

  • 「ナミビアの砂漠」

    「ナミビアの砂漠」2024年9月6日(金)Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下7Fにて。午後1時15分より鑑賞(D-14) ~21歳の女性をひたすら追う予測不能なドラマ。今の時代が見えてくる 「ナミビアの砂漠」という面白い映画を観た。それより前に観た映画もあるのだが、こちらを先に取り上げよう。 舞台はナミビアの砂漠……ではない。今の日本だ。 主人公は21歳の女性カナ(河合優実)。冒頭、街の遠景から次第に彼女に焦点が当たる。カナは友人の待つ喫茶店へ行く。友人は彼女たちの同級生が自殺したことを告げる。しかし、まもなく隣席の下世話な会話の音が大きくなる。明らかにそちらの音量を大きくしている。これは何…

  • 「ボストン1947」

    「ボストン1947」2024年9月3日(火)池袋シネマ・ロサにて。午後2時より鑑賞(シネマ・ロサ2/C-8) ~祖国への思いを胸にボストンマラソンに挑む男たち。エンターティメントを通していろいろと考えさせられる 韓国の歴史映画には面白いものが多い。エンターティメントとしてきちんと成立していて、そのうえで歴史を伝える作品が多いからだ。 「ボストン1947」も歴史が素材。1947年のボストンマラソンに参加した韓国チームの奮闘ぶりを描いた実話ドラマである。 ただし、それには伏線がある。1936年のベルリンオリンピックのマラソンで韓国(当時は朝鮮)の選手ソン・ギジョンとナム・スンニョンが金メダルと銅メ…

  • 「愛に乱暴」

    「愛に乱暴」2024年9月2日(月)シネ・リーブル池袋にて。午後1時25分より鑑賞(シアター2/D-4) ~平凡な主婦が次第に壊れていく。江口のりこの圧巻の演技 ようやく映画館に行けた。2週間ぶりだ。久々だったのでけっこう疲れてしまった。ただし、作品はめちゃくちゃに面白かった。吉田修一の小説を映画化した「愛に乱暴」だ。 主人公は専業主婦の初瀬桃子(江口のりこ)。結婚して8年。夫・真守(小泉孝太郎)とともに真守の実家の敷地内に建つ離れに住んでいる。義母の照子(風吹ジュン)とはつかず離れずの関係で、家のリフォームも計画していた。昔の勤め先が運営する石鹸教室の講師も務め、充実した日々を送っているよう…

  • 【番外編】「震える舌」

    「震える舌」2024年7月14日(日)YouTube(松竹シネマPLUS)にて鑑賞。 ~ホラー映画のように恐ろしい。死に至る病にかかった娘 熱を出して寝込んだり(夏風邪?)、何やかやで10日以上も映画館に行けない日々。あんまり間が空くのも何なので、番外編として7月に配信で観た映画の感想をアップします。松竹シネマPLUSで2週間限定無料公開されていた松竹映画「震える舌」です。 原作は芥川賞作家、三木卓の小説。東京のベッド・タウンである千葉郊外の団地に三好昭(渡瀬恒彦)と妻の邦江(十朱幸代)、娘の昌子(若命真裕子)の三人家族は住んでいた。その付近には、まだ葦の繁みがあり、昌子は湿地の泥の中を蝶を追…

  • 「#スージー・サーチ」

    「#スージー・サーチ」2024年8月19日(月)新宿シネマカリテにて。午後2時15分より鑑賞(スクリーン2/A-5) ~SNS社会の恐ろしさをポップでシニカルなタッチで伝える 夏風邪を引いたらしく体調が最悪で、ここ数日何もできなかった。ようやく回復しつつある感じだが、まだ本調子ではない。このブログをアップしたら、また少し休もう。 SNS社会の恐ろしさを伝える映画は数あれど、とりわけユニークなのが現在公開中の「#スージー・サーチ」である。「なるほどこういうスタイルもあるのか」と唸らされたのだった。 ミステリー仕立てのドラマである。主人公は大学生のスージー(カーシー・クレモンズ)。幼いころから謎解…

  • 「ニューノーマル」

    「ニューノーマル」2024年8月17日(土)シネ・リーブル池袋にて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン1/C-7) ~現代社会の日常に潜む恐怖を6話のオムニバスで描いたホラー映画 夏だもの。1本ぐらいはホラー映画を観ておきたいわよねぇ~。 というので、観たのは韓国映画「ニューノーマル」。ソウルを舞台に6つの話で構成されたオムニバス形式のホラー映画だ。監督・脚本は、韓国で大ヒットを記録したホラー映画「コンジアム」のチョン・ボムシク。 映画の冒頭、世間で続発する凶悪事件のニュースが流れる。その最後に、一人暮らしの女性ばかりが狙われる連続殺人事件がソウルで発生していることが告げられる。 そんな中、第…

  • 「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」

    「ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ」2024年7月24日(水)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後7時より鑑賞(シアター2/C-5) ~アルモドバル監督流の西部劇はサンローランとのコラボで上映時間31分! お盆で帰省したり(両親はすでに他界しているが)、台風が来たりで、ここのところ映画館に行けなかったので、このへんで以前観たもののまだアップしていなかった短編映画の感想を……。 月に一度、映画の会を催している。といっても、ただ映画を観てそのあとに飲むだけなのだが、平日夜の上映後に飲みに行くので、どうしても帰りが遅くなる。家に着くのは11時半過ぎということも珍しくない。若者ならまだしも、おっさ…

  • 「ロイヤルホテル」

    「ロイヤルホテル」2024年8月8日(木)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時55分より鑑賞(スクリーン1/E-10) ~バーでバイトする2人が受けるセクハラ、パワハラ攻撃。男性優位社会の現実をリアルに反映 「#MeToo運動」をきっかけに、女性の地位もだいぶ向上したとはいえ、まだまだ男性優位社会の色は濃い。そんな現状を告発する映画がたくさん作られている。 去年日本で公開されたキティ・グリーン監督の「アシスタント」は、憧れの映画業界に飛び込んだものの、その闇に気づいて苦悶する女性を描いた社会派ドラマ。そのグリーン監督が「アシスタント」の主演ジュリア・ガーナーと再びタッグを組んで、男性優…

  • 「ツイスターズ」

    「ツイスターズ」2024年8月5日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時55分より鑑賞(スクリーン6/C-7) ~竜巻の恐怖をリアルに体験。スリリングな冒険活劇 久しぶりに超メジャーなエンターティメント映画でも観に行くか。というので、「ツイスターズ」を鑑賞。 この映画、1996年にスティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務め大ヒットした「ツイスター」の続編。そんな昔のことはよく覚えておらず、はたして鑑賞したのやら記憶が曖昧。しかし、心配はご無用。前作を観ていなくても、まったく問題ないのであった。 竜巻をネタにしたアクション・アドベンチャー超大作だ。冒頭は、主人公のケイト(デイジー・…

  • 「時々、私は考える」

    「時々、私は考える」2024年8月2日(金)新宿シネマカリテにて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン2/A-4) ~孤独で空想好きな女性の変化を独特な筆致で描く。一風変わった人間ドラマ 先週は、ほぼ1日おきに病院通い。その費用もバカにならない。おまけに、その間はほとんど仕事もできない。今は多少の貯蓄があるから何とかなっているが、若い頃だったらホームレスになっていたのではあるまいか・・・。 さて、そんな病院通いも小休止の金曜日に、新宿シネマカリテにて「時々、私は考える」を観てきた。 この映画の舞台は、映画「グーニーズ」の舞台としても知られるオレゴン州アストリア。小さな港町だ。冒頭は、ノスタルジッ…

  • 「このろくでもない世界で」

    「このろくでもない世界で」2024年7月31日(水)TOHOシネマズ シャンテにて。午後1時35分より鑑賞(スクリーン1/C-10) ~貧困と暴力を逃れ裏社会に足を踏み入れた少年。異様な緊張感とリアリズムの世界 「ジョーカー」の新作の予告編が、おっそろしくカッコよくて、しびれている私です。 さて、今回は前回に続いて韓国映画です。本当はその間に、ペドロ・アルモドバル監督の短編映画を観たのですが、そちらはちょっと後回しで後日掲載、かな。 前回取り上げた「密輸 1970」は究極のエンタメ映画でしたが、今回はノワールタッチの作品。第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品された「このろくでもない世…

  • 「密輸 1970」

    「密輸 1970」2024年7月23日(火)グランドシネマサンシャインにて。午後1時35分より鑑賞(シアター7/d-8) ~海女さんたちが男どもをぶちのめす。娯楽映画の快作! 韓国映画にハズレはない。まあ、ハズレの映画は日本に入ってこないともいえるが。 昨夏、韓国で500万人以上を動員。2023年・第44回青龍映画賞で最優秀作品賞など4冠に輝いた「密輸 1970」も、とびっきり面白いクライム・アクションだった。男性の活躍が目立つ韓国の活劇で、珍しく女性たちが主人公で、男たちをぶちのめしてしまうのだから痛快極まりない。 1970年代半ばのお話。韓国の漁村クンチョン(架空の村らしい)。地元の海女さ…

  • 「大いなる不在」

    「大いなる不在」2024年7月20日(土)テアトル新宿にて。午後3時より鑑賞(A-11) ~息子が知らなかった父と義母の人生。俳優たちの圧倒的な存在感 テアトル新宿の最前列の中央で映画を鑑賞するのが好きだ。目が悪いので、ほかの映画館でも前のほうに座ることが多いのだが、さすがに最前列は前すぎるような気もする。しかし、足は延ばせるし、ちょっと沈み込んで座ればスクリーンも観にくくはない。だから、できるだけこの席を確保することにしている。 というわけで、この日も最前列の中央で鑑賞。観たのは「大いなる不在」。前作「コンプリシティ/優しい共犯」が、トロント、ベルリン、釜山などの国際映画祭に招待され高い評価…

  • 「メイ・ディセンバー ゆれる真実」

    「メイ・ディセンバー ゆれる真実」2024年7月18日(木)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時40分より鑑賞(スクリーン6/C-7) ~36歳の女性と13歳の少年。23年後の2人の関係を追う主演女優 前回取り上げた「お母さんが一緒」に続いて自粛明け2作目に選んだのは「メイ・ディセンバー ゆれる真実」。「エデンより彼方に」「キャロル」のトッド・ヘインズ監督の新作だ。 本作はメイ・ディセンバー事件を描いた作品だ。メイ・ディセンバーというのは、年齢差のあるカップルを指す慣用句。1996年、教師だったメアリー・ケイ・ルトーノーが、当時生徒で12歳だった少年ヴィリ・フアラアウと不倫し、それが発…

  • 「お母さんが一緒」

    「お母さんが一緒」2024年7月17日(水)新宿ピカデリーにて。午後1時35分より鑑賞(スクリーン3/D-11) ~温泉旅館で激しいバトルを展開する三姉妹。けらけら笑って、しんみりして、温かになれるホームドラマの秀作 や~れやれ。関東は梅雨も明けてまた暑くなってきましたなぁ。 政治の世界では、石丸伸二は政治タレントとしてはともかく政治家としては今のままでは中身が空っぽだということが明白になり、その一方で蓮舫バッシングの苛烈さには暗澹たる気分にさせられる日々。朝日新聞の記者までそれに乗っかるのだから、まったくどうなっているのやら。 エンタメの世界では、名バイプレーヤー中村靖日が51歳の若さで亡く…

  • 七夕忌 PANTA一周忌&頭脳警察55周年記念ライブ

    またまた映画館に行けなくなってしまった。 今週水曜日(10日)。腸のポリープを切除する手術を受けたので、5日間ほどは遠出を禁じられてしまった。映画館に行くのが遠出かどうかは微妙なところだが、水道橋博士のように救急車で運ばれる事態になってはまずいので(彼は飲酒したらしいが)、しばらく自重することにした。それにしても、その間、消化の良いもの(お粥など)しか食べられないのはきつい。うーむ、何たることだ。というわけで、映画レビューは書けないので、手術前の8日に参加した音楽イベントの感想などを・・・。 2023年7月7日の七夕に、私がずっと追いかけてきた大好きなロック・ミュージシャン、頭脳警察のPANT…

  • 「スリープ」

    「スリープ」2024年7月5日(金)シネマート新宿にて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン1/C-13) ~睡眠中の奇怪な出来事に悩まされる夫婦。シリアスにユーモアをまぶした韓国製スリラー 今日は東京都知事選挙の投票日。私は期日前投票で完了。誰に入れたかは言わずもがな。しかしまあ権力は腐敗しますなぁ。 投票日の前々日は凄まじい暑さで、皮膚科医院からまっすぐ帰る気にならず、シネマート新宿へ避難。観たのは「スリープ」。韓国製スリラー映画だ。 物語は3章立てで描かれる。出産を控えた会社員のスジン(チョン・ユミ)は、売れない俳優の夫ヒョンス(イ・ソンギュン)と幸せな結婚生活を送っていた。ところがある晩…

  • 「かくしごと」

    「かくしごと」2024年6月30日(日)テアトル新宿にて。午後2時35分より鑑賞(A-13) ~少年を守るため嘘をつく女性。内面からにじみ出る杏の演技が素晴らしい NHKの朝ドラ「ブギウギ」でブレイクした趣里だが、私が最初にその存在感に注目したのは2018年の映画「生きてるだけで、愛。」だ。自意識過剰でエキセントリックな言動を繰り返すヒロインを全身で演じていた。この子はすごいと素直に思った。ちなみに、彼女が水谷豊と伊藤蘭の娘だとは、当時はちっーとも知らなかった。 その「生きてるだけで、愛。」の関根光才監督が、作家・北國浩二の小説「嘘」をみずからの脚本で映画化したのが「かくしごと」だ。もともとは…

  • 「WALK UP」

    「WALK UP」2024年6月28日(金)新宿シネマカリテにて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン1/A-8) ~映画監督と4人の女。小さなアパートを舞台にしたホン・サンスの世界 ホン・サンスの映画をなぜ観に行くのか? そこにホン・サンスの映画があるからだ。 などとワケのわからないことを言っている場合ではない。10年ほど前から韓国のホン・サンス監督の新作が公開になると、必ずと言っていいほど映画館に足を運ぶようになってしまった。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を5度受賞している名匠だが、その作品はかなり変わっている。それでも一度観るとクセになってしまうのだ。 そんなホン・サンス監督の長編第28作目「…

  • 「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」

    「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」2024年6月25日(火)イオンシネマ板橋にて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン4/D-7) ~居残り3人組の変化と成長。アレクサンダー・ペイン監督の熟練の語り口が光る 東京都知事選挙は、結局、蓮舫に投票することに決定。最初にゼロベースで考えて、小池と田母神はあり得なかったし、やや新鮮に映った石丸にはあの維新と(極右で知られる)アパホテル会長がついているうえ、なんと統一教会とも深い関係にあることが判明。なんだ、ちっとも新らしくないじゃん。 というわけで勇んで期日前投票に行ったら、うちの区の近くの投票所ははまだやってなかった。やれやれ(笑)。 政治…

  • 【番外編】「レッド・ライト」

    【番外編】「レッド・ライト」2024年6月24日(月)YouTube配信にて鑑賞(プレシディオチャンネル) お久しぶりです。 先週1週間、体調が悪くて映画館に行くどころの話ではありませんでした。ほとんど家から出ずに、横になっている状態。なので、自分のブログを書くことも皆さんのブログを訪問することもできませんでした。ゴメンナサイ。 ようやく昨日あたりから少し良くなったものの、まだ完調とはいかないため映画館には行けず。その代わり、自宅でYouTube配信(プレシディオチャンネル)で1本映画を観たので、簡単にその感想など。 観たのは「レッド・ライト」。2011年製作のアメリカ・スペイン合作映画。日本…

  • 「違国日記」

    「違国日記」2024年6月11日(火)イオンシネマ板橋にて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン9/F-11) ~叔母と姪の奇妙な同居生活。わかり合えなくても寄り添うことはできる 2回続けてイオンシネマ板橋。今回もサブウェイのサンドイッチを食す。取材のインタビュー後に急いで駆け付けたので時間がなかったのだ。 そして駆け込んだスクリーン9。観たのは「違国日記」。ヤマシタトモコの漫画を「PARKS パークス」「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」「ジオラマボーイ・パノラマガール」の瀬田なつき監督が映画化した。 人見知りで不愛想な小説家と、彼女が勢いで引き取った亡き姉の娘(つまり姪)の共同生活を描いたド…

  • 「あんのこと」

    「あんのこと」2024年6月7日(金)イオンシネマ板橋にて。午後1時25分より鑑賞(スクリーン2/E-11) ~弱者の再生と挫折。一人の少女の壮絶な人生を通して「社会」を問う イオンシネマ板橋に行ったのはいつ以来だろう。ずいぶん久しぶりだ。イオン板橋ショッピングセンターの中にあるこの映画館。同じフロアには飲食店もあり、この日は上映前に生まれて初めてサブウェイのサンドイッチを食したのだ。美味しかったです。 そして観たのは「あんのこと」。入江悠監督が一人の少女の壮絶な人生を、実話をもとに描いたドラマである。入江監督は「SR サイタマノラッパー」でブレイクし、「22年目の告白-私が殺人犯です-」など…

  • 「帰ってきた あぶない刑事」

    「帰ってきた あぶない刑事」2024年6月6日(木)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後1時55分より鑑賞(スクリーン2/D-11) ~かつての雰囲気そのままに70代のタカ&ユージが大暴れ 昔はTVドラマが好きで、刑事ドラマや探偵ドラマをたくさん見ていた。舘ひろしと柴田恭兵が型破りな刑事タカ&ユージを演じて人気を博した「あぶない刑事」シリーズも、おそらく見ていたはずなのだが明確な記憶はない。なぜだろう。 1986年にTVドラマが放映開始されて以来連続ドラマ2本、スペシャルドラマ1本が製作され高視聴率を記録。さらに映画も7本製作され、いずれも大ヒットを記録しているこのシリーズ。最後の映画は2…

  • 「からかい上手の高木さん」

    「からかい上手の高木さん」2024年6月5日(水)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン5/G-12) ~原作の10年後の2人。「好き」になるのは面倒くさいけど素晴らしい 今泉力哉監督を見出したのは私である。 というのは真っ赤な嘘だが、今ほど知名度のなかった時代の「サッドティー」(2014年)から注目しているから、けっこう早いうちに目を付けたほうだろう。それ以降、ほとんどの映画は観ている。 その今泉監督の「窓辺にて」「ちひろさん」「アンダーカレント」に続く新作が「からかい上手の高木さん」。原作は山本崇一朗の人気コミックで、過去にTVドラマ(同じく今泉監督が演出)…

  • 「告白 コンフェッション」

    「告白 コンフェッション」2024年5月31日(金)TOHOシネマズ池袋にて。午後2時より鑑賞(スクリーン8/D-8) ~親友同士だったはずの2人の激しいバトル。スリルと恐怖に満ちた山小屋の密室劇 体調が悪い。ブログのタイトルを「映画貧乏日記」から「映画闘病日記」に変更しようかしらん。まあ、それは冗談だが、自然に短い尺の映画を選択してしまうのは事実。この日観たのはなんと74分の映画。山下敦弘監督の「告白 コンフェッション」である。これなら体調が悪くても大丈夫?! 山下監督は好きな映画監督の一人。初期の「ばかのハコ船」「リアリズムの宿」ではダメ人間の生きざまをユーモラスに描いて注目を集めたが、そ…

  • 「ありふれた教室」

    「ありふれた教室」2024年5月27日(月)シネ・リーブル池袋にて。午後2時5分より鑑賞(スクリーン1/D-7) ~ある事件をきっかけに追い詰められる中学教師。スリリングな社会派ドラマ 学校現場は問題だらけと言われる。それは日本もドイツも変わらないようだ。ドイツ映画「ありふれた教室」は、学校で起きた一つの事件をきっかけに、ある教師が追い詰められていく姿を描いたサスペンス・スリラー。であると同時に、教育現場の実態を問う社会派映画でもある。 ドラマの主人公は中学校の新任教師カーラ(レオニー・ベネシュ)。校内で盗難事件が多発していて、カーラのクラスの生徒も疑われてしまう。校長らの強引な調査に反発した…

  • 「関心領域」

    「関心領域」2024年5月24日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時10分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~強制収容所の隣で平穏に暮らす所長一家。常に鳴り続ける音が心をかき乱す ナチスによるホロコーストを描いた映画は数々あるが、近年の映画は工夫を凝らしたものが多い。80年以上も前の出来事を説得力を持って伝えるには、正攻法だけでは難しい。 カンヌ国際映画祭でパルムドールに次ぐグランプリに輝き、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の5部門にノミネートされ、国際長編映画賞と音響賞の2部門を受賞した「関心領域」も、実にユニークな工夫を施した映画だ。マ…

  • 「ミッシング」

    「ミッシング」2024年5月22日(水)TOHOシネマズ日本橋にて。午後6時45分より鑑賞(スクリーン3/D-11) ~石原さとみの圧巻の演技。失踪した娘を探す母親のリアル 石原さとみが人気俳優であることは間違いないが、これまで私にとってそれほど存在感のある俳優ではなかった。だが、そんなイメージを一新させるような映画が登場した。「ヒメアノ~ル」「愛しのアイリーン」「空白」などの吉田恵輔監督のオリジナル脚本による作品「ミッシング」である。 ある街で幼女の失踪事件が発生し、懸命の捜索にもかかわらず発見できないまま3ヵ月が過ぎる。失踪した美羽の母親・沙織里(石原さとみ)は、世間の関心が薄れていくこと…

  • 「胸騒ぎ」

    「胸騒ぎ」2024年5月15日(水)池袋HUMAXシネマズにて。午後4時より鑑賞(シネマ3/D-10) ~あんまりよく知らない人の家に泊まるのはやめましょう。北欧発の衝撃のホラー 子供の頃は怖がりで、お化け屋敷から10秒で飛び出したほどの私だが、なぜかホラー映画はそんなに怖いと思ったことがない。面白いホラー映画は、怖いというより、脚本や演出が巧みだなぁ~、と感心してしまうのだろう。 「胸騒ぎ」もそんな映画だ。「ミッドサマー」(2019年)、「LAMB/ラム」(21年)などに続く北欧発のホラーである。 デンマーク人夫婦ビャアン(モルテン・ブリアン)とルイーセ(スィセル・シーム・コク)が娘のアウネ…

  • 「またヴィンセントは襲われる」

    「またヴィンセントは襲われる」2024年5月12日(日)シネマ・ロサにて。14時35分より鑑賞(シネマ・ロサ1/D-6) ~ゾンビ映画のような不条理スリラーの背景にある社会の現状 池袋で最も古い映画館(たぶん)シネマ・ロサ。ここも長年続けていた劇場窓口のみでの鑑賞券の販売をやめ、ネットでの予約が可能になった。とはいえ、この日は事前に予約する時間がなく直接窓口へ。渡されたのはQRコード付きのレシートのような鑑賞券。味気ないが、これも時代の流れだろう。 というわけで、鑑賞したのは「またヴィンセントは襲われる」という変わったタイトルのフランス映画。 主人公はデザイナーのヴィンセント(カリム・ルクルー…

  • 「青春18×2 君へと続く道」

    「青春18×2 君へと続く道」2024年5月7日(火)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後1時15分より鑑賞(スクリーン2/e-8) ~18年前の思い出を胸に日本を旅する台湾人男性。旅の先に見たものは…… 2019年の「新聞記者」で日本アカデミー賞を受賞した藤井道人監督。それを見て社会派の監督だと思った人もいるようだが、そういうわけではない。「全員、片想い」「青の帰り道」「デイアンドナイト」「ヤクザと家族 The Family」「余命10年」「ヴィレッジ」「最後まで行く」といった過去作を見れば、いかにジャンルを超えた幅広い作品を送り出しているかがわかる。 「青春18×2 君へと続く道」は、…

  • 「辰巳」

    「辰巳」2024年5月1日(水)ユーロスペースにて。午後2時55分より鑑賞(ユーロスペース1/C-5) ~裏社会に生きる孤独な男と無鉄砲な少女によるバイオレンスな復讐劇 自分と全く関係のない世界を体感できるのも映画の魅力の1つ。暴力にまみれた裏の世界など現実の私には全く関係がないが、映画ならその世界に入り込むことができる。 2016年公開の長編デビュー作「ケンとカズ」で注目を集めた小路紘史監督が自主制作で完成させた長編第2作「辰巳」もそういう映画だ。 主人公は裏稼業で生計を立てる孤独な男・辰巳(遠藤雄弥)。冒頭は彼が弟を殴るシーン。彼の弟は麻薬に手を出し、自らも売人をやっているらしい。結局、弟…

  • 「悪は存在しない」

    「悪は存在しない」2024年4月26日(金)Bunkamuraル・シネマにて。午後4時より鑑賞(C-14) ~森を舞台にした濱口竜介監督の新作。シンプルなストーリーの向こうに深いテーマがある 濱口竜介監督といえば、一般にはアカデミー国際長編映画賞、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」や、ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した「偶然と想像」、あるいは商業映画デビュー作の「寝ても覚めても」あたりが知られているところだろう。 だが、個人的にはそれ以前に撮った「ハッピーアワー」が印象深い。30代後半の女性たちが抱える不安や悩みを描いたドラマで、実に総時間317分の長尺だが、少しも長く感…

  • 「異人たち」

    「異人たち」2024年4月25日(木)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時55分(スクリーン8/D-5) ~山田太一の原作を映画化。現世と来世の境界線上で孤独な男の心が癒されていく 昨年11月に亡くなった山田太一氏は、脚本家として知られているが小説も書いている。その中でも、第1回山本周五郎賞を受賞した「異人たちの夏」は、1988年に大林宣彦監督によって映画化されたこともあり、よく知られている。 その「異人たちの夏」をイギリスを舞台に移して再映画化したのが、アンドリュー・ヘイ監督の「異人たち」だ。ヘイ監督は、「さざなみ」「荒野にて」などの作品で知られている。 ロンドンのタワーマンション…

  • 「あまろっく」

    「あまろっく」2024年4月23日(火)新宿ピカデリーにて。午後1時55分より鑑賞(スクリーン8/D-9) ~定番の人情喜劇だが、江口のりこ、中条あやみ、笑福亭鶴瓶のキャスティングが絶妙 「あまろっく」。何だかヘンテコなタイトルの映画だなぁ~。と思ったら、実はこれは通称「尼ロック」と呼ばれる「尼崎閘門(こうもん)」のこと。水門を開け閉めすることで、兵庫県尼崎市を水害から守ってくれているのだ。 映画は謎のシーンから始まる。ウェディングドレス姿の2人の女性が並んで登場する。なぜに2人??? 続いて映るのは、小学生の近松優子(後野夏陽)が父の竜太郎(松尾諭)、母の愛子(中村ゆり)とともにスワンボート…

  • 「プリシラ」

    「プリシラ」2024年4月18日(木)シネ・リーブル池袋にて。午後2時30分より鑑賞(シアター2/D-5) ~エルヴィス・プレスリーの元妻の孤独と自立への道 昨日、大学病院の眼科に行ったら、左目に異常があるというので、目に注射をされて4万8210円も取られてしまった。先日15万円のパソコンを買ったばかりだというのに、どうするんだ、ワシ? 映画なんか観てる場合じゃないだろう。 しかし、まあ、それはそれとして(本当は、それはそれじゃないけど)、今日取り上げるのはソフィア・コッポラ監督の「プリシラ」。エルヴィス・プレスリーと結婚したプリシラ・プレスリーの回想録を映画化した伝記映画だ。 米軍関係者であ…

  • 「毒親<ドクチン>」

    「毒親<ドクチン>」2024年4月15日(月)ポレポレ東中野にて。午後3時より鑑賞(E-7) ~女子高生は自殺か、殺されたのか。ミステリーの中に母と娘のゆがんだ関係を織り込む ポレポレ東中野に行くのは久しぶりだ。ここはドキュメンタリーを中心に上映しているので、なかなかそこまで追いかける余裕がないのだ。しかし、この日に観たのは劇映画。韓国映画「毒親<ドクチン>」だ。ホラー映画「オクス駅お化け」(2022)の脚色や「覗き屋」(2022)の脚本を担当したキム・スインの長編映画監督デビュー作だ。 ドラマはある女子高生の死から始まる。河原のキャンプ場でユリ(カン・アンナ)が死体で発見される。車の中で複数…

  • 「ブルックリンでオペラを」

    「ブルックリンでオペラを」2024年4月10日(水)シネ・リーブル池袋にて。午後3時20分より鑑賞(スクリーン2/D-3) ~常識外れの人間たちが笑いを巻き起こす上質の夫婦コメディ 公開作品の案内が映画館になかったので近所の桜の写真を・・・。 「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズでブレイクし、「パーフェクト・ケア」「シラノ」などで個性的な演技を披露しているピーター・ディンクレイジ。彼がアン・ハサウェイ、マリサ・トメイと共演した映画が「ブルックリンでオペラを」だ。 ブルックリンに住むオペラの作曲家スティーブン(ピーター・ディンクレイジ)は、妻の精神科医パトリシア(アン・ハサウェイ)と幸せそうに暮…

  • 「パスト ライブス/再会」

    「パスト ライブス/再会」2024年4月6日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時30分より鑑賞(スクリーン9/E-10) ~幼なじみの2人の24年目の再会。繊細な感情描写で切なさ最高潮 激しいだけが恋じゃない。恋愛には様々な形があるのだ。ハリウッドのロマンス映画といえば、情熱的だったり、とびっきりおしゃれだったりする印象があるが、それとはだいぶ違う恋愛映画が公開されてヒットした。今年のアカデミー賞で作品賞と脚本賞にノミネートされた「パスト ライブス/再会」である。 映画の冒頭、3人の男女がバーで会話をしている。ノラとその夫アーサー、そしてヘソン。ノラとヘソンは韓国人。アーサーはア…

  • 「オッペンハイマー」

    「オッペンハイマー」2024年4月2日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時35分より鑑賞(スクリーン8/I-20) ~天才物理学者の苦悩と葛藤の日々。映像の力に圧倒される 第96回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞(キリアン・マーフィー)、助演男優賞(ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の7部門を受賞した映画「オッペンハイマー」。これは観ないわけにはいかないだろう。というので行ってきたのだ。 原爆を開発した科学者の伝記映画だ。舞台は1920年代から50年代。アメリカは第二次世界大戦中、ナチス・ドイツに先駆けて原子爆弾を開発することを目標に極秘プロジェクト「…

  • 「12日の殺人」

    「12日の殺人」2024年3月29日(金)新宿武蔵野館にて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン2/C-8) ~迷走する殺人事件の犯人探し。刑事たちの人間ドラマに妙味アリ ドミニク・モル監督の「悪なき殺人」(2021年)は、ある失踪事件を軸にした5人の男女の物語でなかなか面白かった。そのモル監督の新作が「12日の殺人」だ。 2016年10月12日の夜。21歳の女性クララが、何者かにガソリンをかけられ、生きたまま焼き殺される。さっそく捜査が開始され、殺人課の班長に昇進したばかりのヨアン(バスティアン・ブイヨン)率いるチームが捜査を開始する。ヨアンとベテラン刑事マルソー(ブーリ・ランネール)は聞き込…

  • 「変な家」

    「変な家」2024年3月27日(水)TOHOシネマズ日本橋にて。午後6時50分より鑑賞(スクリーン9/D-10) ~変な家というよりは変な一族の話。怖くなくてむしろ笑っちゃいました 何だか知らんが、月に一度3~4人が集まって映画を観る会を開いている(本当はその後に飲むのが目的ではないかと疑っているのだが……)。基本的に映画選びは人に任せているので、私の趣味とは違う作品が選ばれることも多い。今月選ばれたのは「変な家」だ。 違和感だらけの変な間取りの家を追ったYouTube動画をもとに、動画制作者・雨穴が書いた小説「変な家」を映画化したらしい。 オカルト専門の動画クリエイター雨宮(間宮祥太朗)は、…

  • 「ペナルティループ」

    「ペナルティループ」2024年3月23日(土)シネマロサにて。午後2時20分より鑑賞(シネマロサ1/C-8) ~タイムループものの新機軸。復讐の意味を問う タイムループものの映画は数あれど、当たりハズレがけっこう激しい。最近では「MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」はなかなか面白かったが、配信で観た「リバー、流れないでよ」は中盤ちょっと飽きてしまった。同じことの繰り返しだから、そこに何か工夫がないとね。 「ペナルティループ」もタイムループものの映画。はたして、そこに何か工夫はあるのか? 冒頭は幸せそうなカップルの朝が描かれる。岩森淳(若葉竜也)が目を覚ますと、砂原…

  • 「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」

    「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」2024年3月19日(火)テアトル新宿にて。午後3時30分より鑑賞(C-11) ~熱い熱量が伝わる。映画にとりつかれた若者たちの青春群像ドラマ デスクトップパソコンの起動が遅くなったので新しいのを買おうと思うのだが、そのままデスクトップにするか一体型にするかで迷っている。一体型は機能は劣るものの、省スペースで、内蔵カメラも備え、サウンドも良いとあって悩んでしまう。さて、どうしたものか。 そんなことには関係なく、今回観た映画は「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」。若松孝二監督率いる若松プロに出入りした人たちの青春群像劇「止められるか、俺たちを」(白…

  • 「ビニールハウス」

    「ビニールハウス」2024年3月15日(金)シネマート新宿にて。午後12時20分より鑑賞(スクリーン1/C-14) ~社会のひずみが招く負の連鎖。新人監督による一級品のサスペンス 今週もあまり映画館に行けなかった。病院通いが続いたもので……。 ようやく金曜日になって映画館に行けたので、韓国映画「ビニールハウス」を鑑賞。前日にライムスター宇多丸のラジオ番組で、次週の映画評で取り上げられることになったのでこの作品にしたのだ。面白いらしいという話は聞いていたが、それほど期待はしていなかった。しかし……。 映画の冒頭、いきなり黒いビニールハウスが映る。その中で1人の女が自分の顔を殴っている。これがこの…

  • 「DOGMAN ドッグマン」

    「DOGMAN ドッグマン」2024年3月9日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン1/C-5) ~帰ってきたリュック・ベッソン。孤独な男が犬たちとともに悪に染まる 今日は3月11日。東日本大震災が起きた日だ。あの日、私は家にいてものすごい揺れで外に飛び出した。そこには小学生ぐらいの女の子が、固まって動けずにいた。そこで私は「大丈夫だよ。きっと収まるから」と言ってあげたら、女の子はハッとしたように走り去っていった。知人にそれを話したら、「変質者だと思われたんだよ」と身も蓋もないことを言われたのだが、それに気づかせてやっただけでも立派なもんだろう。 それから…

  • 「ネクスト・ゴール・ウィンズ」

    「ネクスト・ゴール・ウィンズ」2024年3月6日(水)グランドシネマサンシャインにて。午後1時40分より鑑賞(スクリーン8/e-6) ~定番のスポーツ物語だが、期待通りにきっちり笑わせて感動させてくれる 最初に、すでに取り上げた映画についての話題を2つ。 その1「落下の解剖学」で回想シーンは1つもないとジュスティーヌ・トリエ監督が言っているそうだ。ということは、あのクライマックスのシーンも、回想ではなく「もしかしたら」という誰かの思い込みかもしれず、だとすればなおさら怖い映画だと思った次第。 その2「ソウルメイト」をもう一度鑑賞した。前回観終わってそれほど時間が経たないうちにレビューを書いたつ…

  • 「52ヘルツのクジラたち」

    「52ヘルツのクジラたち」2024年3月5日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時40分より鑑賞(スクリーン2/E-9) ~原作の魅力を引き立てる熟練の演出とキャストたちの演技 先週はある本の校正仕事を頼まれ、さらにカーリングの日本ミックスダブルス選手権が開催中だったのでカーリング沼にズブズブとハマリ、映画館に行けずじまいだった。 というわけで、1週間と1日ぶりに映画館で観た映画は「52ヘルツのクジラたち」。2021年の本屋大賞を受賞した町田そのこの小説を成島出監督が映画化した。 あまり映画の原作本は読まない(特に観る前には)私だが、珍しくこの小説は読んでいた。何といっても、そのタ…

  • 「落下の解剖学」

    「落下の解剖学」2024年2月26日(月)Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下にて。午後1時より鑑賞(7F/D-11) ~雪の山荘で起きた転落事故。殺人の嫌疑をかけられた妻を巡るスリリングなサスペンス&人間ドラマ 2023年の第76回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いたのをはじめ、様々な映画祭で話題を集めた「落下の解剖学」。いよいよ日本公開された。日曜に観に行こうと思ったのだが、あんまり寒いから足が前に進みませんでしたよ~。なので、月曜日にGO! 人里離れた雪山の山荘で、視覚障がいをもつ11歳の少年が血を流して倒れていた父親を発見する。息子の悲鳴を聞いた母親のサンドラ(ザンドラ・ヒュ…

  • 「ソウルメイト」

    「ソウルメイト」2024年2月23日(金)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後3時25分より鑑賞(スクリーン2/D-4) ~2人の女性の絆を描いたシスターフッド映画。みずみずしさと切なさと 先日、「風よ あらしよ 劇場版」を観た時に予告編が流れてきて、とても気になった映画がある。予告編だけで感情が動いてしまった。韓国映画「ソウルメイト」だ。公開初日にさっそく観に行ってきた。 2人の女性の絆の物語だ。あるギャラリーに絵が展示されている。写実的で写真のような絵だ。その絵は公募展で大賞に選ばれた。作者の名前は「ハウン」とわかっているものの、連絡先はわからなかった。そこで、絵のモデルと思われるミソ…

  • 「瞳をとじて」

    「瞳をとじて」2024年2月21日(水)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時10分より鑑賞(スクリーン6/D-10) ~エリセ監督、31年ぶりの長編映画は記憶と映画をめぐる物語 「ミツバチのささやき」(1973年)という映画をどこで観たのだろう? だいたいのあらすじは知っているし、印象的なシーンも何となく覚えている。とはいえ、時代的に映画館で観たとは思えない。後年になってテレビで観たのだろうか。いや、それとも観ていないのか? 何にしても私が知っているぐらいだから、大ヒット作なのは間違いない。その「ミツバチのささやき」のビクトル・エリセ監督が、1992年の「マルメロの陽光」以来、実に31…

  • 「風よ あらしよ 劇場版」

    「風よ あらしよ 劇場版」2024年2月18日(日)新宿ピカデリーにて。午後1時50分より鑑賞(スクリーン7/E-11) ~自由を求める強い意志。女性解放運動家・伊藤野枝の生涯 書店で、村山由佳の「風よ あらしよ」という上下2巻の分厚い文庫本を最初に見かけたのは、ずいぶんの前のことだ。何度も買おうかと迷ったのだが、結局いまだに買っていない。 そんな中、大正時代に活躍した女性解放運動家・伊藤野枝の生涯を綴ったこの小説を、NHKがドラマ化し2022年にBS4K・8Kで放送したらしい。その劇場版が「風よ あらしよ 劇場版」である。 福岡の片田舎で育った伊藤野枝(吉高由里子)は、貧しい家を支えるため結…

  • 「一月の声に歓びを刻め」

    「一月の声に歓びを刻め」2024年2月11日(日)テアトル新宿にて。午後1時40分より鑑賞(B-10) ~“罪”をめぐる3つの物語。三島監督の覚悟と俳優たちの壮絶な演技 「繕い裁つ人」「幼な子われらに生まれ」「ビブリア古書堂の事件手帖」「Red」など様々な作品を撮ってきた三島有紀子監督。今度の新作「一月の声に歓びを刻め」は、過去作とは明らかに異質な作品だ。三島監督自身の幼い頃の性暴力の体験をもとにした映画だという。 物語は四章立てで描かれる。一章は北海道・洞爺湖が舞台。そこに1人で住むマキ(カルーセル麻紀)が一生懸命におせちを作っている。間もなく、娘の美砂子(片岡礼子)一家3人が正月を過ごすた…

  • 「夜明けのすべて」

    「夜明けのすべて」 2024年2月9日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン6/B-9)~弱い人たちへの共感と支え合いを絶妙の距離感で描く 上白石萌音と上白石萌歌の区別がつかない。いや、双子ではないから実際に見たらどっちがどっちかわかると思うのだが、名前を言われてもすぐに顔が思い浮かばない。そもそも私は人の顔を覚えるのが苦手なのだ。 そんなことはどうでもよい。姉の上白石萌音のほうが出演している映画が「夜明けのすべて」だ。瀬尾まいこの同名小説を三宅唱監督が映画化した。原作は未読だが、かなりアレンジされているらしい。 三宅監督の過去作「きみの鳥はうたえる」「ケ…

  • 「コット、はじまりの夏」

    「コット、はじまりの夏」2024年2月7日(水)新宿シネマカリテにて。午後1時45分より鑑賞(スクリーン1/A-10) ~生きる喜びを初めて知る少女。アイルランドから届いた珠玉の一作 仕事は終わらないし、日程を間違えていた仕事も新たに入ってきた。困った。忙しくて映画館に行く暇がない。いや、待て。どうにかなる。きっと、どうにかなる。数時間サボったところでどうということはない。この際、映画館へ行ってしまえ! とヤケクソ気味でやってきたのは新宿シネマカリテ。鑑賞するのは、第95回アカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされたアイルランド映画「コット、夏のはじまり」。さて、どんな映画なのでしょう? 1…

  • おわび?

    「哀れなるものたち」の後は映画館に行っていない。なので、ブログもアップできない。 仕事が忙しいのは事実。1万5000字のインタビュー原稿を書かねばなならない。これがなかなか骨が折れるのだ。ほぼ連日パソコンに向かっているのだが、なかなか終わらないのよ~。この後も別件のインタビュー原稿と、ある単行本の校正作業を依頼されている。たまらんぞなもし。 おまけに先日からカーリング沼にはまってしまった。来年のオリンピックにつながる日本選手権が開催されていて、NHK BSやYouTubeでの観戦で忙しいのだ。カーリングは面白いゾ~。仕事があってもつい見てしまう。あ! だから仕事が終わらないのか。残念ながら、私…

  • 「哀れなるものたち」

    「哀れなるものたち」2024年1月28日(日)ユナイテッドシネマ・としまえんにて。午後1時35分より鑑賞(スクリーン2/D-6) ~現代に通じるテーマを持った強烈な刺激のフランケンシュタイン的世界 ヨルゴス・ランティモス監督の「ロブスター」は、独身者がパートナーを見つけなければ動物に変えられるというお話。ストーリーもぶっ飛んでいたが、その内容もかなりぶっ飛んでいた。刺激的で、毒々しく、ある意味、露悪的な映画だった。 「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」「女王陛下のお気に入り」に続くランティモス監督の新作「哀れなるものたち」を観て、その「ロブスター」を思い出した。何しろラン…

  • 「サン・セバスチャンへ、ようこそ」

    「サン・セバスチャンへ、ようこそ」2024年1月25日(木)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時30分より鑑賞(スクリーン7/E-8) ~数々の映画のシーンが散りばめられたウディ・アレンの映画愛にあふれた作品 ご存知ウディ・アレン監督の2020年の作品「サン・セバスチャンへ、ようこそ」。スペインの映画祭を舞台にしたラブコメだ。 オープニングのオールドな雰囲気のクレジットから、早くもウディ・アレンの世界が全開。展開するのはいつも通りのラブコメだ。 ニューヨークで暮らす、かつて大学で映画を教えていたモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)。今は小説を書くべくもがくものの、世界の文豪に匹敵す…

  • 「緑の夜」

    「緑の夜」2024年1月19日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン1/E-12) ~男の支配から逃れて自由を得るための女たちの連帯と反乱 「X-MEN:フューチャー&パスト ローグ・エディション」などハリウッド作品でも活躍する中国を代表する俳優のファン・ビンビン。だが、中国共産党に脱税を追及されスキャンダルの渦中に叩き落された。今の中国で脱税なんぞ珍しくもないだろうに摘発されたのは、有名人をスケープゴートにすることで一罰百戒の効果を狙ったのではないか。 そのファン・ビンビン。一時は消息不明ともいわれた彼女の復帰第一作となったのが、香港映画「緑の夜」。香港…

  • 「葬送のカーネーション」

    「葬送のカーネーション」2024年1月17日(水)ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後6時40分(シアター2/D-6) ~妻の棺を運ぶ老人と孫娘のロードムービー。淡々とした中に深遠なテーマも横たわる ロードムービーといえば主人公たちが旅をするドラマ。その旅の形は様々だ。トルコの新鋭ベキル・ビュルビュル監督の長編2作目「葬送のカーネーション」は、かなり変わったロードムーピー。おじいさんと孫娘が棺桶を引いて旅をするのである。 荒涼とした冬のトルコ南東部。年老いた男性ムサ(デミル・パルスジャン)は、亡き妻との約束を果たすべく、孫娘ハリメ(シャム・セリフ・ゼイダン)とともに妻の棺を運んでいた。彼女…

  • 「カラオケ行こ!」

    「カラオケ行こ!」2024年1月16日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時25分より鑑賞(スクリーン7/E-8) ~ヘンなヤクザと合唱部長の中学生。爆笑のカラオケレッスン 山下敦弘監督の作品は、「バカの箱舟」「リアリズムの宿」など初期のダメ人間映画(と、私が名づけている)からずっと観ている。2005年の「リンダ リンダ リンダ」は青春映画の大傑作だと思っている。2007年の「天然コケッコー」も素晴らしい青春映画だった。今では多彩な作品を送り出している山下監督だが、どこかに初期のオフビートな笑いやダメ人間を温かく見つめる視線が残っていて、ファンにとってはうれしいところ。 「1秒先の…

  • 「燈火(ネオン)は消えず」

    「燈火(ネオン)は消えず」2024年1月12日(金)Bunkamuraル・シネマにて。午後1時40分より鑑賞(E-12) ~消えゆく香港のネオンと夫婦愛のドラマ 香港といえば「100万ドルの夜景」が有名。ずいぶん昔に私も香港を訪れて、夜景の美しさに感嘆したものだ。 その夜景が美しく輝くのも、繁華街のビルを極彩色に彩るネオンサインの看板のおかげ。だが、近年はLEDに取って代わられ、ガラス管を使ったネオンは減っているという。いや、それ以上に深刻なのは、2010年の建築法等改正だ。それによってネオンは次々に撤去され、何と2020年までに9割が消えたという。 そんな事情を知ると、よりいっそう胸に響いて…

  • 「ファースト・カウ」

    「ファースト・カウ」2024年1月8日(月・祝)新宿武蔵野館にて。午後3時50分より鑑賞(スクリーン2/C-4) ~2人の男の友情物語とアメリカの原風景を映し出す。ライカート監督の日本初公開作 ケリー・ライカート監督はアメリカのインディーズ映画界では有名な監督。私もその名前は聞いたことがある。しかし、作品を観るのは初めて。それもそのはず、日本では企画上映を除けば、本作「ファースト・カウ」が初の劇場公開作。ライカート監督の長編7作目にあたる2019年の作品だ。 西部開拓時代のオレゴンを舞台にしたドラマ。これまでライカート監督作の脚本を多く手がけてきたジョナサン・レイモンドが2004年に発表した小…

  • 「彼方のうた」

    「彼方のうた」2024年1月7日(日)シネマ・ロサにて。午前11時50分より鑑賞(シネマ・ロサ1にて/C-5) ~余計なものは何もない。ミニマムで想像力と好奇心を刺激する映画 杉田協士監督は独特の作風で知られる監督だ。いわゆるエンタメ映画のようなわかりやすさとは対極の映画を撮る。過去作では2019年公開の「ひかりの歌」を鑑賞したが、派手さはないもののジンワリとくる映画だった。 前作の「春原さんのうた」も国内外で高く評価されたようだが、残念ながら見逃してしまった。公開から1年以上経つのに、ソフト化も配信もされていないのはなぜ? それはともかくとして、「春原さんのうた」に続く長編4作目で、12年ぶ…

  • 「笑いのカイブツ」

    「笑いのカイブツ」2024年1月6日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時35分より鑑賞(スクリーン7/D-9) ~岡山天音の怪演が光る。凄まじいエネルギーを放つ強烈な自伝映画 新年最初のレビューです。 大晦日は紅白歌合戦で、伊藤蘭のファンと一体になったパフォーマンスに大感激したと思ったら、新年早々能登地方で震災が発生し、飛行機事故まで起きるという恐ろしい事態。せめて新年最初の映画ぐらいは明るく行きたいもの。そこで観たのは、その名も「笑いのカイブツ」という映画。こりゃあ、どう考えても喜劇でしょう。 「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの自伝的小説の映画化だ。主人公のツチ…

  • 今年もよろしくお願いいたします。

    遅ればせながら、あけましておめでとうございます。 さっそく新年第1回目の映画レビュー・・・といきたいところですが、残念ながら今年はまだ映画館に行っていません。昨日大学病院にて眼科の診察の帰りに、映画館に寄ろうと思ったものの、瞳孔を開く目薬を差されて(いつものことなんですが)4~5時間は視界がぼやけて映画どころではなかった次第。 そして本日は風邪気味だったため、出かけるのは自重しました。 まあ2~3日中には映画館に行きたいとは思っているのですが、とりあえず今回は昨年私が観た映画のベスト5でも発表してみましょう。 いやいや、ライムスター宇多丸氏も言っているように、映画に順位をつけるなんて、そんな不…

  • 「PERFECT DAYS」

    「PERFECT DAYS」2023年12月26日(火)kino cinema新宿にて。午後2時25分より鑑賞(THEATER1/D12) ~変わらない日常の中で起きる細やかな出来事と心の揺れ動き ちょっと体調が悪くて病院に行ったりなんだりで、1週間以上映画館に行けませんでした。皆さんのブログにもあまり伺えず。今後も体調に配慮しつつ、更新できる時に更新する感じになりますが、よろしくお願いいたします。 というわけで、この日行ったのは新宿に新しくできた映画館「kino cinema新宿」。以前はEJアニメシアター新宿(旧 角川シネマ新宿)があったところ。なかなかおしゃれな雰囲気で良い感じに仕上がっ…

  • 「枯れ葉」

    「枯れ葉」2023年12月18日(月)新宿シネマカリテにて。午後2時45分より鑑賞(スクリーン1/A-7) ~カウリスマキ監督が不穏な今の世界で「愛」に希望を託す ご存知フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督。「何だか最近は新作がないな」と思ったら引退宣言していたのね。でも、それを撤回して2017年の「希望のかなた」以来6年ぶりに映画を製作。それが新作の「枯れ葉」だ。 お話はシンプルなラブストーリー。主人公はスーパー勤務のアンサ(アルマ・ポウスティ)。孤独で貧しい暮らしをしていた彼女は、ある日、賞味期限切れの商品を持ち帰ろうとして、スーパーを解雇されてしまう。 一方、同じく孤独な労働者のホラ…

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