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映画貧乏日記 https://cinemaking.hatenablog.com/

映画貧乏からの脱出は可能なのだろうか。おそらく無理であろう。ならばその日々を日記として綴るのみである。・・・というわけで、主に映画館で観た映画のレビュー(感想)を書いています。

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2022/07/21

  • 「枯れ葉」

    「枯れ葉」2023年12月18日(月)新宿シネマカリテにて。午後2時45分より鑑賞(スクリーン1/A-7) ~カウリスマキ監督が不穏な今の世界で「愛」に希望を託す ご存知フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督。「何だか最近は新作がないな」と思ったら引退宣言していたのね。でも、それを撤回して2017年の「希望のかなた」以来6年ぶりに映画を製作。それが新作の「枯れ葉」だ。 お話はシンプルなラブストーリー。主人公はスーパー勤務のアンサ(アルマ・ポウスティ)。孤独で貧しい暮らしをしていた彼女は、ある日、賞味期限切れの商品を持ち帰ろうとして、スーパーを解雇されてしまう。 一方、同じく孤独な労働者のホラ…

  • 「市子」

    「市子」2023年12月13日(水)TOHOシネマズ シャンテにて。午後7時より鑑賞(スクリーン1/D-12) ~恋人の前から失踪した「社会的に存在しない」女性の壮絶な生き様 年の暮れにまた重たく、複雑な余韻を残す映画を観てしまった。「市子」である。 映画は海の荒々しい風景から幕を開ける。それをバックに鼻歌が聞こえてくる。このドラマの主人公・川辺市子(杉咲花)が、鼻歌を歌いながらそぞろ歩いていく。 実はこの光景はラストシーンにも登場する。映画の幕開けと締めくくりが同じシーンなのだ。はたして、それはいつの出来事なのか。明確には提示されない。そう。この映画は余白が多く、観る者の想像力を刺激する映画…

  • 「リアリティ」

    「リアリティ」2023年12月8日(金)シネ・リーブル池袋にて。午後3時10分より鑑賞(シアター1/F-7) ~FBIの尋問の音声から再現したドラマ。その緊迫感に圧倒される 来年はアメリカ大統領選挙がある。もしかするとまた大統領になる可能性があるトランプ。彼が当選した2016年のアメリカ大統領選挙にロシアが介入し、それがトランプ当選の一因になったといわれる。それをめぐる事件を描いた映画が「リアリティ」だ。 映画の冒頭、トランプ大統領がロシア政府と自身の2016年大統領選挙キャンペーンとの共謀に関する捜査を妨害するために、ジェームズ・コミーFBI長官を解任したニュースが流れる。それを見ているのが…

  • 「父は憶えている」

    「父は憶えている」2023年12月4日(月)新宿武蔵野館にて。午後3時5分より鑑賞(スクリーン2/C-4) ~記憶を失い帰ってきた父。喜びと戸惑いの果てに人々が見たものは キルギスと言われてもピンとこない。正直、どこにあるのかもよくわからない。中央アジアの国で、旧ソ連に属していたことは何となく知っているが……。 そのキルギスのアクタン・アリム・クバト監督は、世界的に知られた監督らしい。私は未見だが、「あの娘と自転車に乗って」「明りを灯す人」「馬を放つ」などの代表作がある。 クバト監督が、自ら主演も務めた映画が「父は憶えている」だ。クバト(ミルラン・アブディカリコフ)という青年が、父のザールク(…

  • 「女優は泣かない」

    「女優は泣かない」2023年12月1日(金)池袋HUMAXシネマズにて。午後3時20分より鑑賞(シネマ2/E-9) ~がけっぷち女優とダメダメなディレクターの再起物語。ありがちな話なのにジンワリくる 伊藤万理華は不思議な俳優だ。童顔で年齢不詳という感じだが、どんな役をやってもサマになる。彼女の出演作にはハズレがない。「サマーフィルムにのって」「もっと超越した所へ。」「そばかす」「まなみ100%」など、いずれも面白い映画だった。だから、「女優は泣かない」も伊藤万理華に惹かれて観ることにした。 映画は熊本が舞台だ。空港でいきなり「くまモン」が映る。スキャンダルで落ち目の女優、梨枝(蓮佛美沙子)が故…

  • 「ほかげ」

    「ほかげ」2023年11月26日(日)ユーロスペースにて。午後2時55分より鑑賞(スクリーン2/C-8) ~戦争の闇を直視せよ! 塚本晋也監督の強い信念が伝わる 戦争は嫌だ。絶対に戦争をしてはならない。その思いを改めて抱かせてくれた映画が塚本晋也監督の「ほかげ」である。 塚本監督といえば「野火」で戦場の悲惨さを「これでもか!」とばかりに描いたことで知られている。続く「斬、」では人を殺すことの恐ろしさを描いた。そして「ほかげ」では戦争がもたらす闇をクローズアップした。 ドラマは2部構成になっている。前半は焼け残った居酒屋が舞台となる。そこで体を売って暮らす女(趣里)のところに、客として若い復員兵…

  • 「首」

    「首」2023年11月24日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン5/F-14) ~北野武流「本能寺の変」は「アウトレイジ戦国版」。みんなワルでクセモノだらけ 「世界のキタノ」こと北野武監督の新作映画「首」。2017年の「アウトレイジ 最終章」以来の監督作だ。 描くのは本能寺の変。天下統一を目指す織田信長(加瀬亮)。だが、家臣の荒木村重(遠藤憲一)が反乱を起こし、追い詰められて逃走する。信長は羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島秀俊)ら家臣を集めると、自らの跡目相続をエサにして村重の捜索を命じる。やがて村重は捕らえられ光秀に引き渡されるが、光秀はひそか…

  • 「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」

    「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」2023年11月19日(日)新宿シネマカリテにて。午後3時より鑑賞(スクリーン1/A-10) ~ひたすら自由を求めて逃亡するモナ・リザ。チョン・ジョンソの魅力が炸裂! 最近、アジア系の俳優がハリウッドで活躍するケースが目につく。「モナ・リザ アンド ザ ブラッドムーン」は、イ・チャンドン監督「バーニング 劇場版」で注目を集め、その後Netflix配信の「ザ・コール」「ペーパー・ハウス・コリア 統一通貨を奪え」「バレリーナ」などの作品に出演しているチョン・ジョンソのハリウッドデビュー作だ。 映画の冒頭、スタンダードナンバーの「モナリザ」が流れる。それはこ…

  • 「正欲」

    「正欲」2023年11月17日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン1/D-8) ~「普通」でない人たちの生きづらさを描き「普通」とは何かを問いかける 映画のタイトルを聞いてぶっ飛んだ。セイヨク? おいおい、そんなストレートなタイトルにしていいのかよ? いくら何でもマズイんじゃないの? その後、よく見たら「性欲」じゃなくて、「正欲」なのね。でも、まあ、性欲とも絡んでくる話です。 原作は朝井リョウの柴田錬三郎賞を受賞した小説。それを「二重生活」「あゝ、荒野」「前科者」の岸善幸監督が映画化した。脚本は今回は岸監督ではなく、「あゝ、荒野」で岸監督と組んだ港岳彦。…

  • 「さよなら ほやマン」

    「さよなら ほやマン」2023年11月15日(水)新宿ピカデリーにて。午後2時より鑑賞(スクリーン10/D-8) ~B級コメディー映画と思いきやパワフルで熱い真っ当な青春ドラマ 「さよなら ほやマン」。タイトルとそのPRビジュアルだけを見て、B級コメディー映画だとばかり思っていたのだが、何だか高評価の声が相次ぎ傑作と評する人まで現れたとなれば、これは観に行かないわけにはいかないだろう(時間がちょうどよい映画が、これぐらいしかなかったということもあるのだが)。 宮城県石巻市の離島を舞台にしたドラマだ。豊かな海に囲まれた美しい島で暮らす兄弟。兄のアキラ(アフロ)は一人前の漁師を目指して修業中。弟の…

  • 「私がやりました」

    「私がやりました」2023年11月8日(水)TOHOシネマズ シャンテにて。午後7時40分から鑑賞(スクリーン1/D-12) ~殺人事件を利用して成り上がる女たち。社会問題を取り込みつつ気楽に笑えるコメディー 「8人の女たち」「スイミング・プール」など次々に多彩な映画を送り出すフランソワ・オゾン監督の新作は、1930年代のパリを舞台にしたクライムミステリーだ。 同じ部屋に住む若手女優のマドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)と駆け出しの弁護士のポーリーヌ(レベッカ・マルデール)。どちらも仕事がなくお金に困っていた。今日も今日とて大家が家賃の催促に訪れるが、ポーリーヌは支払うことができない。 や…

  • 「理想郷」

    「理想郷」2023年11月4日(土)Bunkamura渋谷宮下にて。午後4時より鑑賞(7F/C列12番) ~移住者と地元民の激しい対立から母と娘のドラマへ。重層的で濃厚なドラマ まだ見ぬ世界の優れた映画に出会えるのが映画祭の醍醐味。東京国際映画祭でも数多くの世界の映画が上映される。以前は私も無料招待されて、たくさん映画を観たっけなぁ~。 などという話はどうでもよい。その「理想郷」は2022年の第35回東京国際映画祭で、東京グランプリ(最優秀作品賞)、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞を受賞した作品(その時のタイトルは「ザ・ビースト」)。その他にも、スペインのゴヤ賞で主要9部門を受賞するなど、世界の…

  • 「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」

    「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」2023年11月3日(金・祝)TOHOシネマズ 池袋にて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン4/D-7) ~元アイドルのアラサー女子を癒すおっさん。温かで心地よい映画 しかし、まあ、井浦新の出演作が次々に公開になるなぁ。いまや日本映画の屋台骨を背負う存在と言っても、過言ではないだろう。テレビドラマにもけっこう出ているようだし。まったくもってスゴイ俳優だ。 その井浦新が出演しているのが「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」。原作は元「SDN48」のメンバーで作家として活躍する大木亜希子が、自身の体験を基に描…

  • 「ドミノ」

    「ドミノ」2023年10月29日(日)TOHOシネマズ 池袋にて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン7/D-12) ~え? まさか? ロバート・ロドリゲス監督が仕掛ける大どんでん返し ロバート・ロドリゲスは、ド派手なアクション映画のイメージが強い監督だ。「デスペラード」「マチェーテ」「プラネット・テラー in グラインドハウス」「シン・シティ」「スパイキッズ」「アリータ バトル・エンジェル」など様々な作品を撮っているが、いずれの映画もケレン味にあふれたアクションが見られる。 そのロドリゲス監督の新作「ドミノ」は派手なアクションシーンもあるものの、今までの作品にはなかった新機軸を打ち出してきてい…

  • 「愛にイナズマ」

    「愛にイナズマ」2023年10月27日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン2/E-9) ~コミカルな家族の再生の物語と「なかったことにしたくない」という思い 先日、相模原の障害者施設殺傷事件をモデルにした「月」が公開されたばかりの石井裕也監督(当ブログでも取り上げた)。相変わらず快調なペースで監督作を送り出している。というわけで、早くも次回作「愛にイナズマ」が公開された。こちらはシリアスだった「月」とは一転してコメディードラマだ。 26歳の折村花子(松岡茉優)は映画監督。ただし、ウィキペディアにそう書いてあるだけで、これまでは自主映画しか撮っていない。彼…

  • 「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」

    「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」2023年10月25日(水)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時50分より鑑賞(スクリーン3/E-15) ~スコセッシ監督が先住民搾取の歴史を告発しつつ重厚なドラマを展開 数年前まではこの時期、東京国際映画祭の関係者向け上映で1日3~4本の映画を観ていたっけ。日比谷に会場が移ったのを機に、ご招待もなくなって、いまやすっかり足が遠のいてしまった。 だが、映画祭に行かずとも素晴らしい映画が公開されている。「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」。あのマーティン・スコセッシ監督の最新作だ。ジャーナリストのデイビッド・グランが先住民連続殺人事件について描いた…

  • 「宇宙探索編集部」

    「宇宙探索編集部」2023年10月19日(木)シネマカリテにて。午後3時より鑑賞(スクリーン1/A-8) ~アホアホなコメディーが最後には感動のドラマに。宇宙オジサンの生き様に拍手! UFOや宇宙人への興味は、昔から尽きないようだ。中国でも、1990年代に「飛碟探索」というUFO雑誌が人気を集めたという。それをモデルに制作されたのが「宇宙探索編集部」である。 主人公はUFO雑誌「宇宙探索」の編集長のタン(ヤン・ハオユー)。映画の冒頭は、若き日の彼が宇宙人やUFOについて語るインタビュー映像が流れる。希望に燃えて若々しさにあふれている。 続いて、現在のタンが映る。それは年を取り疲れはてて見る影も…

  • 「春画先生」

    「春画先生」2023年10月18日(水)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後3時35分より鑑賞(シアター2/d-9) ~禁断の春画映画。エロでおおらかでハチャメチャなラブコメ 10月21日(土)に日比谷野外大音楽堂に出かけてきた。国際反戦デーの集会ではない。伊藤蘭のコンサートだ。今年のツアー最終日にふさわしい素晴らしいコンサートだった。観客の熱気もすごかった。私も思いっきりペンライトを振って声を上げた。終演後の夜風が心地よかった。 それとは関係なく、今日取り上げる映画は「春画先生」。春画といえばエロな浮世絵、と思っていると大間違い。近年は、その芸術的価値が見直されて注目を浴びているらしい。…

  • 「月」

    「月」2023年10月16日(月)ユーロスペースにて。午後2時50分より鑑賞(ユーロスペース2/B-9) ~実在の障害者施設殺傷事件を映画化。もう見て見ぬふりはできない 実在の事件を描く映画は無数にあるが、これほど物議を呼びそうな映画はないのではないか。2016年の相模原障害者施設殺傷事件を映画化した「月」である。 原作は辺見庸の小説「月」。スターサンズの設立者で名物プロデューサーの故・河村光庸氏が、生前に映画化を熱望。「舟を編む」「茜色に焼かれる」など多数の作品で知られる石井裕也監督に映画化の話を持ちかけた。内容が内容だけに石井監督も悩んだらしいが、辺見庸の熱烈な愛読者であることから引き受け…

  • 「シック・オブ・マイセルフ」

    「シック・オブ・マイセルフ」2023年10月13日(金)新宿武蔵野館にて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン3/C-8) ~強烈な承認欲求で暴走するヒロインがひたすら笑える 自己顕示欲の強い人はどこにでもいる。というか、誰だってある程度は持っているはずだ。他人から認めてもらいたいという承認欲求もまた然り。SNSなどを通じて簡単に自己アピールができる現在は、なおさらその傾向が強いだろう。 ノルウェーのオスロを舞台にしたドラマ「シック・オブ・マイセルフ」は、その自己顕示欲と承認欲求が異常に強いヒロインの話。そのあまりの暴走ぶりがグロテスクで、ホラー的な側面も垣間見せるが、どちらかというとシニカルな…

  • 「アナログ」

    「アナログ」2023年10月9日(月・祝)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン3/E-16) ~アナログでベタベタな恋愛ドラマだが、脚本&演出の妙で見せる 一昨日、赤坂RED/THEATERという劇場で「フラガール‘23」という芝居を観てきた。そう、名作映画「フラガール」の舞台版である。これまでにも何度も舞台化されているが、今回は映画版の脚本を担当した羽原大介の脚本・演出で、自身の劇団「羽原組」での公演。映画で蒼井優が演じた役は、つい最近取り上げた「まなみ100%」のヒロイン・中村守里が演じている。舞台版は映画とはまた違った面白さがあり、特に終盤の中村はじめフ…

  • 「アンダーカレント」

    「アンダーカレント」2023年10月6日(土)シネマサンシャイン池袋にて。午後3時10分より鑑賞(シアター10/f-13) ~人間の心の底流に流れるものを抑制的で繊細な語り口で描く 人間は一筋縄ではいかない。わかったようでいてわからない。曖昧模糊。不可思議極まりない存在だ。 そんな人間存在の曖昧さ、不可思議さを追求した映画が「アンダーカレント」だ。「愛がなんだ」「街の上で」などの恋愛映画で知られる今泉力哉監督が、今から20年近く前に発表された豊田徹也のコミックを実写映画化した。 映画の冒頭に、「Undercurrent」の意味が記される。それは「(水や空気などの)底流」のこと。少し範囲を広げて…

  • 「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」

    「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」2023年10月2日(月)新宿ピカデリーにて。午後3時35分より鑑賞(シアター4/D-9) ~安定のケネス・ブラナー版ポアロ、今回は亡霊相手に名推理? *写真撮ってくるのを忘れました。トホホホ・・・。 アガサ・クリスティーの「名探偵ポアロ」を、ケネス・ブラナーの監督・主演で映画化したシリーズの第3弾「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」。1作目の「オリエント急行殺人事件」は観たのだが、「ナイル殺人事件」は見逃してしまった。でも、まあ、それぞれ独立した話なので、過去2作を観ていなくても大丈夫です。 タイトル通りにベネチアが舞台の物語、名探偵ポアロは引退して隠遁生活を送っ…

  • 「BAD LANDS バッド・ランズ」

    「BAD LANDS バッド・ランズ」2023年10月1日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時35分より鑑賞(スクリーン1/B-5) ~ワルが大活躍のピカレスク映画。充実の娯楽作だが大阪弁が聞き取りにくいのが難点 ピカレスクは「悪者」「悪党」「ならず者」の意味。有名なのはピカレスク小説だが、映画にもピカレスク映画がある。 悪党の姉と弟が大活躍する「BAD LANDS バッド・ランズ」は、さしずめそのピカレスク映画だろう。直木賞作家・黒川博行の小説「勁草」を「クライマーズ・ハイ」「ラスト・サムライ」「ヘルドッグス」「関ヶ原」「燃えよ剣」などのベテラン・原田眞人監督が映画化した。 舞…

  • 「まなみ100%」

    「まなみ100%」2023年9月30日(土)池袋HUMAXシネマズにて。午後3時30分より鑑賞(シネマ2/F-9) ~片思いの女性にフラれ続けた男。瑞々しい青春ドラマとして捨てがたい味わい 取るに足らないありきたりの話も、描きようによっては魅力的な映画になる。少し前に取り上げた「ほつれる」などはその好例だろう。 今回取り上げる「まなみ100%」も、話自体は特筆すべきものは何もない。片思いの女性に10年間フラれ続け、相手が別の男と結婚してしまう。それだけの話だ。だが、そんな陳腐にも思える話が、描き方によって別の色合いを持ち始める。 主人公はボク(青木柚)。2010年、高校生のボクは、入部した体操…

  • 「熊は、いない」

    「熊は、いない」2023年9月25日(月)新宿武蔵野館にて。午後2時15分より鑑賞(スクリーン3/B-5) ~イラン社会の息苦しさと監督の受難が伝わるメタファーに満ちた映画 イランは独裁国家というわけではないが、政府当局の締め付けはかなり厳しい。芸術文化に対しても容赦がない。ジャファル・パナヒ監督は、海外の映画祭でも受賞経験を持つ著名な監督だが、「オフサイド・ガールズ」などが反体制的だとして2010年に逮捕されて以来、政府から映画製作を禁じられ、国外に出ることも禁止されている。 となれば、もはや映画とは無縁の生活を送っているのかと思えばさにあらず。2011年の「これは映画ではない」以降は、自身…

  • 「バーナデット ママは行方不明」

    「バーナデット ママは行方不明」2023年9月23日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時25分より鑑賞(スクリーン1/C-7) ~リチャード・リンクレイター監督とケイト・ブランシェットが、ある女性の人生のやり直しを魅力的に描く ケイト・ブランシェットといえば、ユニークな女性指揮者を演じた「TAR ター」が今年公開になったが、これまでにも「エリザベス」「アビエイター」「あるスキャンダルの覚え書き」「オーシャンズ8」「ブルージャスミン」「キャロル」などで様々な女性を演じてきた。その演技力は誰からも一目置かれる存在だ。 そんな彼女が自ら出演を希望したという映画が「バーナデット ママは行…

  • 「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」

    「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」2023年9月18日(月・祝)新宿シネマカリテにて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン1/B-10) ~黒人男性を射殺した白人警官。実在の事件をリアルタイムで再現 実在の事件を基に描いた「福田村事件」を先日取り上げたが、今度はアメリカの実在の事件を基にした映画「キリング・オブ・ケネス・チェンバレン」を観た。いや、「実在の事件を基にした」というよりは、「実在の事件をそのまま再現した」という表現がぴったりの作品だ。ちなみに、本作の製作総指揮はモーガン・フリーマンが務めている。 主人公は、ニューヨーク州ホワイトプレーンズに住む退役軍人のケネス・チェンバレン(フ…

  • 「アステロイド・シティ」

    「アステロイド・シティ」2023年9月14日(木)池袋HUMAXシネマズにて。午後4時から鑑賞(スクリーン3/E-13) ~笑いと視覚的な魅力や驚きに満ちたウェス・アンダーソン印の映画 ウェス・アンダーソン監督といえば独特の作風を持つ映画監督。もはや映画作家と言ったほうがいいかもしれない。「グランド・ブダペスト・ホテル」や近作「フレンチ・ディスパッチ」など、とにかくその世界観はユニークだ。 最新作「アステロイド・シティ」も彼の持ち味を十二分に発揮した作品。時代は1955年。舞台は、人口わずか87人のアメリカ南西部の砂漠の町アステロイド・シティ。隕石でできた巨大なクレーターが観光名所のこの町で、…

  • 「ほつれる」

    「ほつれる」2023年9月9日(土)シネクイントにて。午後2時25分より鑑賞(スクリーン2/D-7) ~演劇畑の監督が別れる男女の複雑な心理を繊細に描く 映画と演劇で大きく違うのは、映画が繊細な描写ができるのに対して、演劇ではそれがなかなか難しいことではないだろうか。映画はアップの映像で人物をとらえられるが、演劇はそれができない。 そんな演劇畑出身にもかかわらず、繊細過ぎる描写を得意とする映画監督がいる。木竜麻生と藤原季節が共演した前作「わたし達はおとな」で、大学生カップルの間に生じた溝を描いた加藤拓也監督である。加藤監督は自身で劇団を率いて舞台で活躍している。演劇と映画では別のスイッチが入る…

  • 「福田村事件」

    「福田村事件」2023年9月7日(木)テアトル新宿にて。午後3時20分より鑑賞(A-11) ~関東大震災後の惨劇をもとに森達也監督が集団心理の恐ろしさを劇映画で描く 「A」「A2」「i 新聞記者ドキュメント」など、数々のドキュメンタリー作品を手がけてきた森達也監督が、初めて手がけた劇映画「福田村事件」。関東大震災直後の混乱の中で、千葉県東葛飾郡福田村で香川からやって来た行商団15人の内、幼児や妊婦を含む9人が殺害された虐殺事件をもとに描いた。 森監督は、初めはドキュメンタリーとしてテレビ局に持ち込んだものの断られ、それなら劇映画にと思ったもののなかなか実現の見通しは立たなかった。だが、名脚本家…

  • 「兎たちの暴走」

    「兎たちの暴走」2023年8月30日(水)シネマロサにて。午後1時25分より鑑賞(シネマロサ1/D-8) ~ごく普通の少女の母への想いが招く大きな悲劇 中国映画「兎たちの暴走」。家で飼っていたペットのウサギちゃんが、突然凶暴な本性をむき出しにして人間を襲うパニック・ホラー映画……みたいなタイトルだが、そうではない。2020年の東京国際映画祭で上映され、ようやくこの度一般公開となった、新人シェン・ユー監督の作品。実在の事件をモチーフにしたノワール・サスペンス映画だ。 主人公は、四川省の寂れかけた工業都市に暮らす17歳の高校生のシュイ・チン(リー・ゲンシー)。父と継母、弟と暮らす彼女は、今の継母と…

  • PANTAライブ葬&伊藤蘭50周年記念コンサート

    9月1日(金)に去る7月7日に逝去した頭脳警察・PANTAの献花式・ライブ葬が渋谷のduo MUSIC EXCHANGEで行われた。ミュージシャンはもちろん各界の著名人もたくさん詰めかける中、「パーティー形式のようなお別れ会はやってくれるな」という本人の生前の希望に沿って、PANTAの歌唱映像に合わせて頭脳警察のメンバー、石塚俊明(TOSHI)、澤竜次、宮田岳、樋口素之助、おおくぼけい、竹内理恵が演奏するという催し。上手くいくのかちょっと心配だったが、そんな杞憂を吹っ飛ばすような素晴らしい演奏だった。まるでPANTAがその場にいるかのように思えた。これまで見てきた中でも最高のライブだった。これ…

  • 「春に散る」

    「春に散る」2023年8月28日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時50分より鑑賞(スクリーン7/D-8) ~リアルなボクシングシーンの迫力で最後まで見せ切る 沢木耕太郎と言えば、「深夜特急」などでおなじみのノンフィクション作家。そして小説家でもある。小説「春に散る」も彼の作品。それを「ヘヴンズストーリー」「菊とギロチン」「64-ロクヨン-」「ラーゲリより愛を込めて」「護られなかった者たちへ」など数々の秀作で知られる瀬々敬久監督が映画化した。脚本は瀬々監督と星航。 ボクシング映画だ。アメリカから40年ぶりに帰国した広岡仁一(佐藤浩市)は、世界チャンピオンを目指していた元ボクサー。…

  • 「あしたの少女」

    「あしたの少女」2023年8月25日(金)シネマート新宿にて。午後12時15分より鑑賞(スクリーン1/D-14) ~実習生という名のもとに若者を食い物にする社会を告発する 何やら青春のキラキラ感にあふれたタイトルの「あしたの少女」という映画。このタイトルは、我がミューズ、ペ・ドゥナとキム・セロンが共演したチョン・ジュリ監督の前作「私の少女」を意識してつけたものではないだろうか。 というわけで、「あしたの少女」はチョン・ジュリ監督8年ぶりの新作。今回もペ・ドゥナが出演している。 主人公の高校生、ソヒ(キム・シウン)がダンスの練習をしているシーンから映画は始まる。彼女はダンス好きな、ごく普通の高校…

  • 「高野豆腐店の春」

    「高野豆腐店の春」2023年8月22日(火)シネ・リーブル池袋にて。午後3時5分より鑑賞(シアター2/F-5) ~藤竜也、麻生久美子、中村久美。キャストで魅せる人情喜劇にホッコリ 取材が延期になってしまった。しょうがないので、空いた時間に池袋のユニクロに行ってジーンズを購入。裾上げができるまで約1時間ある。さて何するか? というわけで、時間がちょうどよかったので「高野豆腐店の春」を観に行ったのである。 広島県尾道を舞台にした人情喜劇だ。尾道に店を構える高野豆腐店(こうやどうふてん、ではない)では、父の高野辰雄(藤竜也)と娘の春(麻生久美子)が、毎朝二人三脚で豆腐作りに励んでいた。そんなある日、…

  • 「バービー」

    「バービー」2023年8月21日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後12時45分より鑑賞(スクリーン1/C-7) ~グレタ・ガーウィッグ監督がヒネッた笑いで男性優位社会を痛烈に批判 いやぁ~、暑い。お盆過ぎてこの暑さは何だ? 土曜は横浜の伊藤蘭コンサートに行ったのだが、日曜は午前中に両親のお墓参りをしたら、その後何もやる気がしなくなって映画館に行きそびれてしまった。 とはいえ、今日は観に行くぞ! 話題の「バービー」を。 グレタ・ガーウィグという俳優の存在は、彼女の主演作であり、ノア・バームバックが監督した「フランシス・ハ」(2012年)で初めて知った。素晴らしい青春コメディだった。ち…

  • 「ソウルに帰る」

    「ソウルに帰る」2023年8月14日(月)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下にて。午後1時35分より鑑賞(9F/C-9) ~自分のアイデンティティはどこにあるのか。一人の女性の心の軌跡を鮮烈に いやぁ~、久しぶりに映画館に行ったな。いつ以来だろう。2週間以上ぶりかな。 というわけで、この日行ったのはBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下。本家Bunkamuraの休館中にオープンした新しい映画館だ。渋谷東映が撤退したあとに入ったわけだが、旧館の良さは残しつつも、ロビーなどはかなりおしゃれな雰囲気。2つあるスクリーンのうち9階しか行かなかったが、さすが東急グループという感じだった。いろんな意味…

  • 近況報告&福田村事件

    お久しぶりですぅ~。(^▽^)/ などとはしゃいでいる場合ではない。 「658km、陽子の旅」を観て以来、映画館に行っていない。別に暑いからというわけではなく(それも少しはあるが)、忙しくて行けないのだ。 取材に加え、原稿書き、その合間に脚本のデータ入力のバイト、そしてあっちこっちの病院通い。それらが集中して身動きが取れないのだ。 それでもこの間の週末は珍しく暇だったので、空いている映画館(混んでるところはやっぱりコロナが怖い・・・)を見つけて行くぞ! と気合を入れていたのだが、その前に区のがん検診で胃のX線検査があり、バリウムを飲んでしまったのだ。バリウムなんて初めて飲んだが、検査後できるだ…

  • 「658km、陽子の旅」

    「658km、陽子の旅」2023年7月28日(金)テアトル新宿にて。午後2時30分より鑑賞(A-10) ~北へ向かう旅で溶けだしていく氷の心。菊地凛子の名演に拍手! 菊地凛子がアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「バベル」で女子高生を演じて、アカデミー助演女優賞の候補になったのは2006年。もう17年も前のことなのか~。時間の流れるのは早いなぁ~。 その菊地凛子を主演に迎えて、「海炭市叙景」「私の男」の熊切和嘉監督が撮ったのが「658km、陽子の旅」である。原案は「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM 2019」の脚本部門で審査員特別賞を受賞した室井孝介の脚本。 ちなみに…

  • 「CLOSE/クロース」

    「CLOSE/クロース」2023年7月17日(月・祝)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後1時15分より鑑賞(スクリーン10/D-12) ~2人の幼なじみの少年の友情と葛藤と悲劇。思春期の心理を繊細に 暑い。だるい。やってられない。それでも時間があるから映画館に行くのだ。 この日観たのは「CLOSE/クロース」。トランスジェンダーの主人公がバレリーナを目指す姿を描いた「Girl ガール」(残念ながら私はまだ観ていないのだが)で、カンヌ国際映画祭のカメラドール(新人監督賞)を受賞したルーカス・ドン監督の新作だ。この作品も第75回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した。 どんな映画かというと1…

  • 「星くずの片隅で」

    「星くずの片隅で」2023年7月16日(日)TOHOシネマズ シャンテにて。午後3時50分より鑑賞(スクリーン1/D-12) ~都会の片隅で必死に生きる男女。香港人の気概を感じさせる秀作 中国の締め付けが厳しくなるなど、香港をめぐる情勢は大きく変化している。そんな中でも、香港の今をスクリーンに刻み付けようとする新世代の映画作家がいる。 ラム・サム監督もその一人。日本でも評判になった「少年たちの時代革命」の共同監督をレックス・レンとともに務め、「星くずの片隅で」で単独監督デビューを果たした。 「星くずの片隅で」は、コロナ禍の香港を舞台に、数々の困難にもめげず必死に生きる男女を描いたヒューマンドラ…

  • 「山女」

    「山女」2023年7月14日(金)ユーロスペースにて。午後1時15分より鑑賞(ユーロスペース2/C-9) ~村の抑圧から解放され大自然の中で自立していく女性 2020年公開の映画「アイヌモシリ」を先日配信で観た。北海道を舞台に、今の時代と伝統の狭間で葛藤するアイヌの人々をリアルに描いたドラマで、十分に見応えがあった。 その「アイヌモシリ」の福永壮志監督の新作が「山女」だ。前作ではアイヌ伝統の祭りイヨマンテを取り上げていたが、今回は『遠野物語』の民話に着想を得たドラマだという。脚本は福永監督と長田育恵が担当。また、日米合作で製作されており、撮影は前作同様に外国人カメラマンが務めている。 18世紀…

  • 「1秒先の彼」

    「1秒先の彼」2023年7月13日(木)TOHOシネマズ池袋にて。午後1時30分より鑑賞(スクリーン4/D-8) ~奇想天外な台湾映画を山下敦弘監督とクドカンがリメイク チェン・ユーシュン監督の台湾映画「1秒先の彼女」(2020年)は、何事も1秒早いヒロインと1秒遅い青年の恋をユニークな切り口で描いたラブストーリー。日本でも話題になった。それを山下敦弘監督と宮藤官九郎脚本のコンビでリメイクしたのが「1秒先の彼」だ。 この映画、オリジナルとの最も大きな違いは男女の設定を逆転していること。つまり、何事も1秒早い男と1秒遅い女のドラマにしているのだ。 京都に暮らす郵便局員のハジメ(岡田将生)は、人よ…

  • 「遠いところ」

    「遠いところ」2023年7月7日(金)シネ・リーブル池袋にて。午後2時30分より鑑賞(シアター2/E-5) ~17歳の母親の転落。ここには沖縄の若者の過酷な現実がある 夏休みになると給食がなくなって、まともに食事をとれない子供の存在が問題になっている。だが、沖縄の現状はもっと深刻だ。若者の貧困が大きな社会問題になっている。それが子供にも影響している。 「遠いところ」は、その貧困問題をはじめ沖縄の様々な問題を視野に入れたドラマだ。 主人公は、沖縄県のコザで幼い息子を抱えて暮らす17歳の女性アオイ(花瀬琴音)。生活のために祖母に幼い息子を預け、友達の海音(石田夢実)と朝までキャバクラで働き生活費を…

  • PANTAよ、永遠に

    6月4日渋谷ラ・ママ「P-FES3」の集合写真 ロックミュージシャンのPANTA(頭脳警察)が7月7日の七夕の日に亡くなった。ここ数年の闘病生活、そして肺がんという発表があり、覚悟はしていたもののやっぱり残念というか、悲しいというか、どうにも言い表せない気持だ。せめて、現在製作中の頭脳警察のニューアルバムと、鈴木慶一とのユニットPKOのアルバムの完成を見届けてから旅立って欲しかった。 私とPANTAの音楽との出会いは20代に遡る。当時私はバンドがやりたくて、音楽雑誌のメンバー募集に応募しまくっていた。その中の一人に、錦糸町かどこかのキャバレーの照明係をやっているという男がいた。名前も忘れてしま…

  • 「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」

    「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」2023年7月4日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時15分より鑑賞(スクリーン3/E-16) ~ハリソン・フォードが年齢を感じさせない大活躍。集大成にふさわしい映画 ハリソン・フォード扮する考古学者インディ・ジョーンズの冒険を描くアドベンチャー映画「インディ・ジョーンズ」シリーズの第5作「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」。15年ぶりの最新作にして、ハリソンが主演を務めるのはこれが最後となる。 もちろん私も過去4作はすべて観ている(全部劇場で観たわけじゃないけど)。それだけにワクワクする気持ちで映画館に出かけた。 考古学者で冒険家のイ…

  • 「小説家の映画」

    「小説家の映画」2023年7月3日(月)新宿シネマカリテにて。午後2時45分より鑑賞(スクリーン1/A-8) ~葛藤を抱えた2人の女性の連帯。どこからどう見てもホン・サンス印の映画 独特の作風で知られる監督は何人もいる。韓国のホン・サンス監督もその一人だ。彼の映画では、これと言って大きな事件は起こらず、登場人物がたわいないおしゃべりをするだけ。その様子を長回しの映像で描く。どこが面白いのかと思う人もいるだろうが、これがハマると抜けられなくなるのだ。 かくいう私もその1人。ホン・サンス沼にハマって、ここ10年ぐらいの作品はほとんど観ている。 今回の映画「小説家の映画」はモノクロ映画だ(過去にもモ…

  • 「To Leslie トゥ・レスリー」

    「To Leslie トゥ・レスリー」2023年6月29日(木)渋谷シネクイントにて。午後2時より鑑賞(スクリーン1/F-7) ~アンドレア・ライズボローの迫真の演技で描く人生やり直しのドラマ 3年前に亡くなった母と去年亡くなった父は、生前いずれも宝くじに当たった経験がある。金額はともに100万円程度だったので、特に生活に変化があったわけではない。しかし、これがさらに高額な賞金ならどうだったろう。それを機に生活が激変する人も多いのではないか。 「To Leslie トゥ・レスリー」は、宝くじで高額当選したことが原因で人生につまずいた女性のドラマ。最初は単館公開のインディーズ映画だったものの、主…

  • 「aftersun/アフターサン」

    「aftersun/アフターサン」2023年6月27日(火)新宿ピカデリーにて。午後1時より鑑賞(スクリーン7/D-8) ~父と過ごした思い出の日々を振り返る娘。ノスタルジーと切なさと 劇場で観たかったのに、観ないうちに公開が終了してしまう。そんな映画がたくさんあるわけだが、ギリギリのところで何とか間に合ったのが「aftersun/アフターサン」。5月26日の公開から1ヶ月経ってようやく鑑賞した。 父と娘のドラマだ。11歳の少女ソフィ(フランキー・コリオ)は、夏休みに31歳の父親カラム(ポール・メスカル)とともにトルコのリゾート地にやってきた。カラムは離婚して普段はソフィとは離れて暮らしていた…

  • 「告白、あるいは完璧な弁護」

    「告白、あるいは完璧な弁護」2023年6月23日(金)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後12時より鑑賞(スクリーン8/d-6) ~「予測不能」な容疑者と弁護士の対話。二転三転する展開に目が離せず 「予測不能」というフレーズが、これほどピッタリくる映画はないだろう。韓国製サスペンス・スリラー「告白、あるいは完璧な弁護」である。 IT企業の社長ユ・ミンホ(ソ・ジソブ)は、不倫相手であるキム・セヒ(ナナ)がホテルの密室で殺された殺人事件の容疑者となってしまう。無実を訴える彼は、100%無罪を勝ち取るといわれる敏腕弁護士のヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、自分の潔白を証明してほしいと依頼する。…

  • 「あつい胸さわぎ」

    「あつい胸さわぎ」2023年6月21日(水)google playにて鑑賞。 ~若年性乳がんの娘と母の絆と葛藤を軽やかに描く 本日は珍しく劇場ではなく、配信で観た映画をお届けです。 映画館に行くにはちょっと体調が悪い。とはいえ、横になるほどでもない。さて、どうしようかと思ってチラチラと配信映画を覗いていて目についたのが「あつい胸さわぎ」。今年の1月に公開され、一部で高評価を得たものの、つい見逃してしまった映画だ。 もともとは、劇作家・横山拓也による演劇ユニット「iaku」の舞台劇とのこと。それを「恋とさよならとハワイ」のまつむらしんご監督が映画化した。 港町の古い一軒家で、母・昭子(常盤貴子)…

  • 「アシスタント」

    「アシスタント」2023年6月18日(日)シネマート新宿にて。午後2時45分(スクリーン1/A-8) ~映画業界で働く女性の1日を通してハラスメントの実態をリアルに見せる ハリウッドの大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる性加害事件が明るみに出たのが2017年。その2年後の2019年に製作された映画「アシスタント」は、映画業界におけるハラスメントの実態をリアルに見せた社会派ドラマだ。 主人公は、名門大学を卒業し、映画プロデューサーを夢見て映画製作会社に就職したジェーン(ジュリア・ガーナー)。彼女の1日の出来事を描く。 ジェーンの朝は早い。まだ暗いうちに誰よりも早く出勤して、オフィ…

  • 「カード・カウンター」

    「カード・カウンター」2023年6月16日(金)シネマート新宿にて。午後2時30分より鑑賞(スクリーン1/D-14)~ポール・シュレイダー監督らしいサスペンス・スリラー。オスカー・アイザックが好演 「タクシードライバー」はロバート・デ・ニーロ主演の名作映画。監督はマーティン・スコセッシ、脚本はポール・シュレイダー。そのシュレイダーはやがて監督もするようになり、「アメリカン・ジゴロ」「白い刻印」「魂のゆくえ」などの作品を送り出している。 「カード・カウンター」はマーティン・スコセッシが製作総指揮を務め、ポール・シュレイダーが監督、脚本を担当している。役柄は違えど「タクシードライバー」のコンビ。そ…

  • 「水は海に向かって流れる」

    「水は海に向かって流れる」2023年6月11日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン2/F-9) ~やや不完全燃焼の感はあるものの影のある広瀬すずが魅力的 ハリー・ポッターの館(正式名称は「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京」というらしい)がオープン間近のとしまえん跡地。そこからほど近いユナイテッド・シネマとしまえんも、それを記念してハリポタの特集上映をやるらしい。 そんなことには関係なく、この日、そのユナイテッド・シネマとしまえんで観たのは田島列島のマンガの実写映画化「水は海に向かって流れる」。監督は、「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「そし…

  • 「逃げきれた夢」

    「逃げきれた夢」2023年6月9日(金)新宿武蔵野館にて。午後12時30分より鑑賞(スクリーン3/C-4) ~おっさんはつらいよ。人生の節目を迎えた男の「あがき」をリアルに 私もデモや集会に参加して反対した入管法改正(改悪だろう)法案が成立してしまった。賛成したやつらの顔と名前をよーく覚えておいて、きっとしっぺ返しを食らわすぞ! と誓ったのである。 とまあ、世の中はうまくいかないことが多いわけだが、そんな人生をやり直そうとする男のドラマが「逃げきれた夢」である。 「枝葉のこと」「お嬢ちゃん」などが高く評価された二ノ宮隆太郎監督の第4作。ちなみに、二ノ宮監督は、俳優としてもあっちこっちの作品に顔…

  • 「ウーマン・トーキング 私たちの選択」

    「ウーマン・トーキング 私たちの選択」2023年6月3日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時10分より鑑賞(スクリーン2/D-11) ~虐げられた女たちの選択は? 濃密で息詰まる会話劇 不当な圧力にさらされてきた女性たちが、声を上げ始めたのは最近のことだ。それに呼応するような映画が「ウーマン・トーキング 私たちの選択」。第95回アカデミー賞で作品賞と脚色賞にノミネートされ、脚色賞を受賞した。 舞台となるのは自給自足で暮らしてきたキリスト教一派の村。この村では、女たちがたびたびレイプされていた。薬を使われ眠らされていた女たちは、男たちから「悪魔の仕業」「作り話」だと言われてレイプを…

  • 「怪物」

    「怪物」2023年6月2日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時より鑑賞(スクリーン9/B-11) ~怪物はどこにでもいる。3つの視点で綴られる異形の者のドラマ 「怪物だ~れだ」という子供の声が印象的な予告編でおなじみの是枝裕和監督の新作映画「怪物」。あれはゲームのかけ声だったのね。 この映画、これまでの是枝作品とは大きく違う。脚本を是枝監督ではなく、映画「花束みたいな恋をした」やテレビドラマの脚本で知られる坂元裕二が担当しているのだ。そのせいか、扱うテーマは共通しているものの、これまでの是枝作品とは明らかに違う雰囲気を持つ。 オープニングからサスペンスの魅力が全開だ。妖しい雰囲気…

  • 「私のプリンス・エドワード」

    「私のプリンス・エドワード」2023年5月28日(日)新宿武蔵野館にて。午後3時より鑑賞(スクリーン1/B-11) ~お気楽ラブコメかと思いきや、女性の自立を描いた骨のあるドラマ 日曜の昼下がり。中途半端な時間の中、他に観る映画もなく選んだのが香港映画「私のプリンス・エドワード」。なに? 香港のラブコメ? どうせ大した映画じゃないんだろ? まあ、いいや、単なる時間つぶしだし。 というような、なめくさった態度で見始めたのだが……。 香港のプリンス・エドワード地区にあるショッピングモール・金都商場(ゴールデンプラザ)では、結婚式に必要なドレスや小物、写真撮影などを格安で揃えることができる。そこのウ…

  • 「波紋」

    「波紋」2023年5月26日(金)池袋HUMAXシネマズにて。午後12時30分より鑑賞(シネマ4/G-9) ~社会問題にブラックな笑いも盛り込んだ女性の自己解放のドラマ かつては「かもめ食堂」「めがね」など癒やし系映画の監督のように思われていた(私が思っていただけか?)荻上直子監督。ここのところの充実ぶりはハンパではない。「川っペリムコリッタ」に続く新作「波紋」も、実に面白い映画だ。 主人公の女性、須藤依子の人間ドラマであると同時に、クスクス笑えるブラックコメディーでもある。 冒頭はその依子(筒井真理子)が朝起きるシーン。隣には夫の修(光石研)がイビキをかいて眠っている。だが、なぜか夫婦は頭と…

  • 「あの子の夢を水に流して」

    「あの子の夢を水に流して」2023年5月24日(水)ユーロスペースにて。午後7時より鑑賞(スクリーン1/C-9) ~我が子を亡くした女性と生と死が循環する川の物語 本当は映画を作りたい。だが、そんなお金もコネもない。だから、クラウドファンディングを実施している映画に少額のお金を出して応援している。 遠山昇司監督の「あの子の夢を水に流して」も、クラファンで応援した映画だ。2020年の熊本の水害で被害を出した球磨川を舞台にしたドラマで、内田慈が主演を務めると聞いてクラファンに参加した。内田は昔から好きな俳優だ。 生まれて間もない息子を亡くして失意の底にいる37歳の瑞波(内田慈)は、故郷の熊本県八代…

  • 「最後まで行く」

    「最後まで行く」2023年5月20日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン7/D-9) ~刑事VS監察官の迫力のバトル。息をもつかせぬ韓国映画のリメイク この前の日曜の21日。渋谷の入管法改悪反対デモに参加してきた。参加者なんと7000人。それがサウンドカーのノリのいい音楽とパーカッションに乗せて、シュプレヒコールを叫びながら渋谷・表参道を行進する。道行く通行人や外国人観光客はカメラを向け、私はすっかりスター気分! いや、そんなことを言っている場合ではなかった。とにかく反対の声は急激に広がっているゾ。 その前日には藤井道人監督の「最後まで行く」を鑑賞。「ヴ…

  • 「同じ下着を着るふたりの女」

    「同じ下着を着るふたりの女」2023年5月19日(金)シアター・イメージフォーラムにて。午後1時30分より鑑賞(シアター2/G-6) ~愛せないし、憎みきれない。母娘の抜き差しならない関係 母と娘の関係には微妙なものがあるようだ。最近の日本映画では、井上真央と石田えりが共演した「わたしのお母さん」が、そうした母と娘の微妙な関係を繊細に描き出していた。表面的には凪いでいるように見えても、ちょっとしたきっかけで嵐が吹き荒れる。 韓国映画「同じ下着を着るふたりの女」も母と娘のドラマだ。ただし、こちらはかなり強烈。ふだんから、2人の間には嵐が吹き荒れている。 若くしてシングルマザーとなった母スギョン(…

  • 「あの子の夢を水に流して」&「福田村事件」

    アップする映画のストックがなくなってしまった。 だからというわけでもないが、これから公開になる2本の映画の紹介を。 1本目は明日5月20日(土)からユーロスペースで公開になる「あの子の夢を水に流して」。豪雨で被災した熊本県の球磨川を舞台に描いた生命をめぐる物語。クラウドファンディングに私も協力していて、エンドクレジットにスペシャルサンクスとして名前が掲載されているはず(もちろん本名ですが)。 なぜ協力したかというと、クラウドファンディングのサイトを見て何となく気になってしまったのだ。熊本には一度しか言ったことがないけど。おまけに主演の内田慈もけっこう好きな俳優だったりするので。 私も来週あたり…

  • 「TAR/ター」

    「TAR/ター」2023年5月13日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時20分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~天才指揮者の栄光と転落。ケイト・ブランシェットのなりきりぶりがスゴイ 中学生の頃に熱心にクラシック音楽を聴いていた時期があるのだが、あれは何だったのだろう。その後はあまり聴かなくなってしまったのだが、そんな私でもベルリンフィルの名前は知っている。ドイツの世界有数のオーケストラで、名だたる指揮者がタクトを振るっている。 そのベルリンフィルを舞台にした恐ろしいドラマが「TAR/ター」である。ターとは主人公の名前。女性として初めてベルリンフィルの首席指揮者に就任したリデ…

  • 「銀河鉄道の父」

    「銀河鉄道の父」2023年5月8日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~放蕩息子の宮沢賢治を見放さない父の愛は偉大なり 父母の愛はとてつもなく大きい。そんな当たり前のことを再確認させてくれる映画が「銀河鉄道の父」である。直木賞を受賞した門井慶喜の小説を「八日目の蝉」「いのちの停車場」「ファミリア」などの成島出監督が映画化した。 タイトルからもわかるように宮沢賢治の父・政次郎を主人公に据えて、彼と賢治、妹のトシ、賢治の母・イチなどとの家族愛を描いたドラマである。 映画の冒頭、岩手県で質屋を営む宮沢政次郎(役所広司)が列車に乗って自宅に戻ろう…

  • 「EO イーオー」

    「EO イーオー」2023年5月6日(土)新宿シネマカリテにて。午後2時より鑑賞(スクリーン1/A-11) ~こんな映像観たことない!? ロバを主人公にした驚きの映画 カンヌ、ヴェネチア、ベルリンなどの国際映画祭で受賞歴を持つポーランドのイエジー・スコリモフスキ監督。今年85歳のこのベテラン監督の7年ぶりとなる作品は、なんと人間ではなくロバを主人公にした映画。その名も「EO イーオー」。 しかし、まあロバと言ったら私なんかは『おはよう! こどもショー』のロバくんを思い出しますなぁ。愛川欽也が演じておりました。まさに名演でした。て、いつの時代の話だよ! 若い人はわかんないだろ! そんな余談はさて…

  • 「セールス・ガールの考現学」

    「セールス・ガールの考現学」2023年5月5日(金)新宿シネマカリテにて。午後12時45分より鑑賞(スクリーン2/A-7) ~モンゴル映画の常識を覆すポップでオシャレな青春成長ドラマ モンゴル映画と言ったら大草原! そして遊牧民! そんな通り一遍の固定概念を覆す映画が登場した。「セールス・ガールの考現学」である。数々の受賞歴を持つ(らしい)モンゴルの俊英センゲドルジ・ジャンチブドルジ監督の作品だ。 映画の冒頭からビックリさせられる。女子大生がバナナの皮に滑って骨折をするシーンなのだが、それがとびっきりポップなタッチで描かれるのだ。まるで最新のミュージックビデオのよう。こんなふうに、ポップで、オ…

  • 「アダマン号に乗って」

    「アダマン号に乗って」2023年5月2日(火)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後2時15分より鑑賞(シアター1/d-9) ~人間性あふれる船の中で患者たちを見つめる優しい目。 ふだんはあまり観ないドキュメンタリー映画。しかし、ベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受賞したとあれば、観ない手はないだろう。「ぼくの好きな先生」「人生、ただいま修行中」などのフランスのドキュメンタリー監督ニコラ・フィリベールの作品「アダマン号に乗って」である。フィリベール作品を日本で配給してきたロングライドが製作に参加した日仏合作映画となっている。 セーヌ川に浮かぶ木造建築の船「アダマン号」。ここは病院に付属する…

  • 「せかいのおきく」

    「せかいのおきく」2023年4月29日(土)テアトル新宿にて。午後4時30分より鑑賞(A-9) ~江戸庶民の日常と若者の恋を美しいモノクロ映像で綴る 「どついたるねん」「顔」「北のカナリアたち」など代表作を挙げればきりがないベテランの阪本順治監督。当たりはずれはあるものの、精力的に映画を撮り続けている。その新作はモノクロ映画の時代劇「せかいのおきく」。江戸末期を舞台に、徹底した庶民目線に立ち庶民生活の悲喜こもごもを描き出している。 寺子屋で子供たちに読み書きを教える22歳のおきく(黒木華)は、武家育ちでありながら今は貧乏長屋で父と二人暮らしだった。ある日、彼女は厠のひさしの下で雨宿りをしていた…

  • 「午前4時にパリの夜は明ける」

    「午前4時にパリの夜は明ける」2023年4月27日(木)新宿武蔵野館にて。午後2時50分より鑑賞(スクリーン3/C-6) ~シャルロット・ゲンズブール主演。家族の何気ない日常と成長を温かな視線で描く シャルロット・ゲンズブールといえば、ご存知セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの娘。初の主演映画「なまいきシャルロット」(1985年)は今でも強烈に印象に残っている。可愛かったよなぁ~。 そんな可愛い面影を今も残しているシャルロットの最新主演映画が「午前4時にパリの夜は明ける」。監督は無差別テロで大切な姉を失い、遺された7歳の姪を引き取ることになった青年の戸惑いと2人の絆を描いた「アマンダと…

  • 「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

    「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」2023年4月25日(火)新宿武蔵野館にて。午後2時35分より鑑賞(スクリーン1/C-5) ~クソッたれな世の中で、迷える若者たちはぬいぐるみと話す 「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」というユニークなタイトルの映画。原作は大前粟生の小説(スイマセン。よく知りませんでした)。それを、これが長編商業デビューとなる金子由里奈監督が映画化した。 青春群像劇である。冒頭は主人公の七森(細田佳央太)が女の子から告白されているシーン。だが七森は恋愛というものがわからない。だから、告白されても戸惑うばかりで相手を怒らせてしまう。 そんな七森が京都にある大学に入学する。まも…

  • 「ヴィレッジ」

    「ヴィレッジ」2023年4月24日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時10分より鑑賞(スクリーン6/D-8) ~名プロデューサー河村光庸氏最後の作品は、日本の暗部に焦点を当てた娯楽作 映画製作会社スターサンズを率いる河村光庸氏が亡くなったのは2022年6月11日。その河村氏にとって最後のプロデュース作品となった映画が藤井道人監督の「ヴィレッジ」だ。 河村氏のプロデュース作品といえば、「あゝ、荒野」「愛しのアイリーン」「宮本から君へ」「MOTHER マザー」「ヤクザと家族 The Family」「パンケーキを毒見する」「空白」など、どれも現実の社会を見据えた刺激的な作品になっている…

  • 「高速道路家族」

    「高速道路家族」2023年4月21日(金)シネマ・ロサにて。午後4時10分より鑑賞(シネマ・ロサ2/D-10) ~ホームレス一家の波乱の運命。前半のコメディータッチから衝撃のラストへ 相続税の申告を税理士に頼まずに一人でやるという暴挙に出た結果、とんでもない事態になったもののようやく終了(まだ何かありそうだけど・・・)。さて、映画でも観るべえかと思った金曜日の夕刻。しかし、ちょうどよい時間の映画がない(涙)。それでもやっと探し当てたのが韓国映画「高速道路家族」。はたして、どんな映画なんでしょう。 高速道路のサービスエリアを転々としながら家族4人でテント生活を送るホームレス一家。父親のギウ(チョ…

  • 「聖地には蜘蛛が巣を張る」

    「聖地には蜘蛛が巣を張る」2023年4月16日(日)新宿シネマカリテにて。午後2時50分より鑑賞(スクリーン1/A-6) ~娼婦連続殺人事件を通して描くイラン社会の暗部 「ボーダー 二つの世界」(2018年)を鑑賞した方はいるだろうか。醜い容貌ゆえに孤独な人生を送りながらも、特殊な嗅覚を活かして税関業務で働くヒロインがたどる運命を描いたファンタジー調のスリラーで、異様な緊張感と不気味さに包まれた出色の映画だった。 その映画を監督したアリ・アッバシの新作が「聖地には蜘蛛が巣を張る」である。イラン系デンマーク人のアッバシ監督が、イランで実際に起きた娼婦連続殺人事件を基に描いたドラマだ。 2000年…

  • 「ザ・ホエール」

    「ザ・ホエール」2023年4月10日(月)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時20分より鑑賞(スクリーン2/D-9) ~死にゆく巨体の男の愛と悲しみとこの世でやり残したこと 「レスラー」でミッキー・ロークを、「ブラック・スワン」でナタリー・ポートマンを輝かせた実績を持つダーレン・アロノフスキー監督。今度の新作「ザ・ホエール」ではブレンダン・フレイザーを輝かせた。 心に傷を抱えた巨体の男が自らの死期を悟り、疎遠だった娘との絆を取り戻そうする5日間を描いたドラマだ。 恋人のアランを亡くした悲しみから立ち直れずに、過食症に陥ってしまったチャーリー(ブレンダン・フレイザー)。272キロの巨体で…

  • 「AIR/エア」

    「AIR/エア」2023年4月9日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時より鑑賞(スクリーン5/A-15) ~ノリノリの雰囲気の中で小気味よく描かれるエア・ジョーダンの誕生秘話 スポーツシューズには全く詳しくないのだが、そんな私でも知っているのがナイキの「エア・ジョーダン」。ご存じマイケル・ジョーダンの名を冠したシューズで、スポーツの枠を超えてカルチャーにまで影響を及ぼした。 そのエア・ジョーダンの誕生秘話を描いた映画が「AIR/エア」である。監督は「アルゴ」でアカデミー作品賞を受賞したベン・アフレック。そして主演は彼の盟友マット・デイモン。それにしても、このコンビ、本当に仲がいい…

  • 「生きる LIVING」

    「生きる LIVING」2023年4月6日(木)TOHOシネマズ 池袋にて。午後1時20分より鑑賞(スクリーン5/D-9) ~黒澤明の名作のリメイクは上質で品格あるイギリス映画 黒澤明の名作「生きる」を観たのはいつ頃だろうか。記憶が定かではない。いや、まさか観ていない? あまりにも有名な映画なので観た気になっていた? うーむ、そんなことはないはずなのだが……。 まあとにかく、その「生きる」がイギリスを舞台にしたドラマにリメイクされた。脚本はノーベル賞作家のカズオ・イシグロ。監督は日本ではあまり知られていないが、国際映画祭では常連の南アフリカ出身のオリヴァー・ハーマナス。 1953年のイギリス、…

  • 「GOLDFISH」

    「GOLDFISH」2023年4月1日(土)シネマ・ロサにて。午後1時20分より鑑賞(シネマ・ロサ1/C-4) ~あのキラキラした青春は帰ってくるのか!?パンクロックバンドの再結成をめぐるドラマ 昔、ロックバンドでベースを弾いていた。ライブハウスにも出演していた。そのせいか、ロックバンドを扱った映画にはどうしても興味を引かれてしまう。 「GOLDFISH」はパンクロックバンド「アナーキー(亜無亜危異)」のギタリスト、藤沼伸一が初めて監督を務めた映画だ。 1980年代に人気を博したパンクバンド「ガンズ」の元メンバーでギタリストのイチ(永瀬正敏)のもとに、リーダーだったアニマル(渋川清彦)から電話…

  • 「トリとロキタ」

    「トリとロキタ」2023年3月31日(金)新宿武蔵野館にて。午後2時より鑑賞(スクリーン1/D-9) ~アフリカから来た偽の姉弟の受難。ダルデンヌ兄弟の職人技が冴えわたる ケン・ローチなどとともに、社会問題に焦点を当てた作品を監督することで知られるベルギーのダルデンヌ兄弟(ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ)。その作品は社会のひずみをあぶり出すとともに、徹底して弱者に寄り添う姿勢が貫かれている。 今回の作品「トリとロキタ」でもその姿勢は不変だ。取り上げたのは移民問題。ダルデンヌ兄弟は、過去作でも「イゴールの約束」「ロルナの祈り」「午後8時の訪問者」などで移民問題に焦点を当ててい…

  • 「赦し」

    「赦し」2023年3月29日(水)ユーロスペースにて。午後12時45分より鑑賞(ユーロスペース2/D-9) ~被害者遺族は加害者を赦せるのか。重いテーマを投げかける法廷劇 「赦し」のポスタービジュアルは強烈だ。心がざわついてしまう。1人の女性がこちらを振り向いているだけなのだが……。 「赦し」はアンシュル・チョウハン監督の映画。と言っても外国映画ではない。チョウハン監督は日本在住のインド人。2011年に来日しアニメーターをしていたが、実写映画に興味を持ち長編映画を監督。今作は「東京不穏詩」「コントラ」に続く長編第3作となる。 殺人事件の加害者と被害者遺族の葛藤を描いた作品だ。同級生の樋口恵未を…

  • 「ロストケア」

    「ロストケア」2023年3月27日(月)シネ・リーブル池袋にて。午前11時25分(シアター2/F-4) ~穴の開いた高齢化社会に鋭い問題提起。松山ケンイチと長澤まさみの対決が見もの エンタメ映画に社会派の要素を盛り込むと言えば、韓国映画お得意のパターンだが、日本映画にもそうした作品はある。葉真中顕の原作を松山ケンイチと長澤まさみの主演で映画化した「ロストケア」はまさにそういう作品だ。 監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」「そして、バトンは渡された」「老後の資金がありません!」などの前田哲。これまでに監督した作品にも、社会派の要素を持った作品がいくつかある。 映画の冒頭、聖書の一節が映…

  • 「コンペティション」

    「コンペティション」2023年3月23日(木)新宿シネマカリテにて。午後3時15分より鑑賞(スクリーン1/A-9) ~暴走しまくりの監督と2人の俳優。皮肉のきいたシュールな笑いがたっぷり 映画界の内幕を描いた映画はたくさんある。だが、ここまで強烈な映画はそうそうないだろう。2021年の第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品作品の「コンペティション」である。監督は、日本でも「ル・コルビュジエの家」「笑う故郷」が公開になったアルゼンチンのガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン。 大富豪の起業家が自らの名声を残そうと映画の製作に乗り出す。一流の監督と俳優を起用し傑作映画を目指すという。…

  • 「メグレと若い女の死」

    「メグレと若い女の死」2023年3月22日(水)新宿武蔵野館にて。午後12時より鑑賞(スクリーン1/C-7) ~ドパルデューが演じる老境のメグレ警視。人間ドラマに見応えあり 日本でもおなじみのメグレ警視。ベルギーの小説家ジョルジュ・シムノンの推理小説の登場人物で、過去に映画やテレビでジャン・ギャバン、マイケル・ガンボン、ローワン・アトキンソンなどが演じている。 そして今回、メグレ警視を演じるのはフランスの名優ジェラール・ドパルデュー。そして、監督は「仕立て屋の恋」でおなじみの名匠パトリス・ルコント。とくれば、これは味わい深い映画になること請け合いである。 ちなみに、「仕立て屋の恋」もジョルジュ…

  • 「零落」

    「零落」2023年3月21日(火)テアトル新宿にて。午後1時20分より鑑賞(A-11) ~次回作が描けない漫画家。クズ男の苦悩と苛立ちに何となく共感も…… 俳優としておなじみの竹中直人だが、映画監督としても「無能の人」「東京日和」などの作品がある。「零落」は、「ソラニン」「おやすみプンプン」などで知られる漫画家・浅野いにおの漫画を映画化した。10作目の監督作品とのこと。 一人の漫画家の苦悩と苛立ちを描いた作品だ。 8年間連載してきた漫画が終了を迎えた漫画家の深澤薫(斎藤工)。当初は人気作家としてもてはやされたが、今は見る影もない“元”売れっ子漫画家。次回作のアイデアを考えるが何も思い浮かばず、…

  • 「オットーという男」

    「オットーという男」2023年3月19日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時40分より鑑賞(スクリーン6/B-7) ~ヘンクツな老人が隣人一家との交流で変わっていく姿を絶妙のブレンドで 「オットーという男」の予告編を観た時に、「はて? どこかで聞いたような話だな」と思ったのだが、何のことはないスウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」のリメイクだったのか。とはいえ、さすがハリウッド。なかなか味わいある小品に仕立てている。 町の嫌われ者でいつも不機嫌なオットー(トム・ハンクス)。曲がったことが許せない彼は毎日近所をパトロールして、ゴミの出し方や駐車の仕方などルールを守らない人を説教して…

  • 「フェイブルマンズ」

    「フェイブルマンズ」2023年3月16日(木)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時40分より鑑賞(スクリーン5/G-13) ~複雑怪奇な両親との関係を描くスピルバーグの自伝的映画 スピルバーグも人生を振り返る年になったのかぁ~。 というわけで、スティーヴン・スピルバーグ監督の自伝的映画「フェイブルマンズ」だ。自身の幼少期から映画界への扉を開くところまでを描いている。 1952年、両親に連れられ初めて映画館を訪れたサミー・フェイブルマン少年は、大きな衝撃を受ける。母親のミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)は彼に8mmカメラをプレゼントし、それをきっかけにサミー(ガブリエル・ラベル)はカメラ…

  • 「コンパートメントNo.6」

    「コンパートメントNo.6」2023年3月12日(日)新宿シネマカリテにて。午後3時より鑑賞(スクリーン1/A-8) ~極北に向かう列車の中で変化し始める最悪の仲の女と男 先日のアカデミー賞は「エブエブ」の圧勝。まあ、いろいろ見方はあるだろうが、ハリウッドで影が薄かったアジア系俳優にスポットライトが当たったことは、とても良かったと思う。 その前日の日曜日、近所の映画館に「オットーという男」を観に行こうと思ったら、かなりの混雑。隣りの席にも人が座りそうな勢いだったのでやめたのだ。コロナはやっぱり怖いのだ。 というわけで、方針転換して前から観たかった「コンパートメントNo.6」を観に、新宿シネマカ…

  • 「オマージュ」

    「オマージュ」2023年3月11日(日)新宿武蔵野館にて。午後3時15分より鑑賞(スクリーン2/B-3) ~受難の時代をしなやかに描き出し映画への愛を綴る 女性の置かれた環境は厳しい。特に映画界は長らく圧倒的な男世界だった。最近は女性の進出も目覚ましいが、それでも依然として男性優位の世界だ。 韓国の映画界でも、女性は長い間不遇の時代が続いていたようである。それを告発する映画が「オマージュ」だ。 主人公は中年の女性監督ジワン(イ・ジョンウン)。3作目の監督作が不入りで、新作を撮る目途が立たない。夫と大学生の息子と暮らすが、息子からは「母さんの映画はつまらない」と言われ、夫に「生活費を入れてくれ」…

  • 「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

    「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」2023年3月3日(金)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後4時30分より鑑賞(スクリーン5/F-10) ~マルチバース+カンフー。笑いも満載でやりたい放題の怪映画 いくらSFでマルチバースが流行っているからと言って、誰がカンフーと融合させようと思うだろうか。 それをやってしまっているのがダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート監督)。何しろ、腐りかけの死体がガスを放出しながら海を進むという奇想天外な映画「スイス・アーミー・マン」を作ったコンビだもの。 とはいえ、さすがに今回は「スイス・アーミー・マン」のような一発ネタの映画…

  • 「少女は卒業しない」

    「少女は卒業しない」2023年3月1日(水)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後12時50分より鑑賞(シアター2/e-8) ~高校最後の2日間の少女たちの揺れる心が美しく切ない 今回取り上げるのは、直木賞作家・朝井リョウの連作短編小説を、これが商業長編映画デビューとなる中川駿監督が映画化した青春群像劇「少女は卒業しない」。中川監督は、「カランコエの花」という短編映画が高く評価されたとのこと。 舞台となるのは地方のある高校。そこは今年度で校舎の取り壊しが決まっている。その学校の生徒である4人の少女の揺れ動く心が描かれる。卒業式前日と当日の2日間だけのドラマだ。 その4人とは料理部の部長・山城…

  • 「ちひろさん」

    「ちひろさん」2023年2月26日(日)シネマロサにて。午後1時40分より鑑賞(シネマ・ロサ1/C-10) ~孤独を抱えつつ、自由に、ひょうひょうと生きる、ちひろさんに癒やされる Netflixで配信される作品の中には、一部の劇場で公開されるものも多い。「ちひろさん」もNetflixで2月23日から配信されると同時に一部劇場で公開になっている。 というわけでNetflix未加入の私は、劇場で鑑賞。 原作は安田弘之の漫画。監督は恋愛映画の名手の今泉力哉。主演は有村架純。それにしても最近の有村架純は向かうところ敵なしといった感じ。彼女の出演作にはハズレがない。今泉監督と組んだ本作でも素晴らしい演技…

  • 「エンパイア・オブ・ライト」

    「エンパイア・オブ・ライト」2023年2月23日(木・祝)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時40分より鑑賞(スクリーン5/F-13) ~サム・メンデス監督の映画愛にあふれた映画。オリヴィア・コールマンの演技が光る 帯状疱疹は相変わらずです。何でも完治までに数か月かかる場合もあるそうで、だとすればまだ相当かかりそう。まったく笑っちゃうぜ。 皮膚科に行った帰りに、時間が余ったから「別れる決心」をもう1回鑑賞。エンタメとして文句なしに面白かった。笑いどころとシリアスのバランスが絶妙。ラストにかかる「霧」がいい味を出していますなぁ~。タン・ウェイは何度観ても美しい。 さて、今日取り上げるのは…

  • 「小さき麦の花」

    「小さき麦の花」2023年2月19日(日)YEBISU GARDEN CINEMAにて。午後3時15分より鑑賞(スクリーン2/D-6) ~ある農村の貧しい夫婦の日常。忘れていた大切なものを思い起こさせてくれる映画。 YEBISU GARDEN CINEMAに行くのは、いつ以来だろうか。けっこうな期間、閉館していたから、ずいぶん久しぶりになると思う。相変わらずいい雰囲気の映画館だ。 鑑賞したのは中国映画「小さき麦の花」。驚くべきは舞台となる中国の農村地帯。いまだにこんなところがあるのかと思うような光景が広がる。そして映画も今どきの映画とは趣が違う。初期のチャン・イーモウ作品を思わせる土着的な雰囲…

  • 「別れる決心」

    「別れる決心」2023年2月17日(金)グランドシネマサンシャイン池袋にて。午後4時5分より鑑賞(シアター9/d-7) 刑事と被害者の妻の危険で謎めいた関係。パク・チャヌク監督の新たな代表作 祝!映画館通い復活……と言いたいところだが、まだ症状が回復していない。マスクとメガネをすると変な痛みが襲ってくる。しかし、何とか2時間ちょっとは我慢できるのではないか。そうさ、きっと大丈夫! と無理やり楽天的な気持ちになって、映画館に行ってきたのだ。なぜなら、そこにパク・チャヌク監督の新作「別れる決心」があったからだ。ポン・ジュノ監督とともに韓国映画で大好きな監督。「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」…

  • 帯状疱疹のその後

    一時は回復しかけた帯状疱疹ですが、またぶり返してきたようです。いや、正確に言えば帯状疱疹自体は良くなったものの、損傷した神経の回復が遅れているとのこと。顔の左半分がややマヒした感じで、感覚が鈍い。ときどきピリッと来る。そんな感じです。 一番の問題はマスク。マスクをすると鼻のあたりが変な感じで、我慢できなくなるのです。痛いというのとも違う、なんとも言葉にはしにくい不快感です。 なので映画館には行けません。2時間マスクをつけたままというのは、まさしく針の上のむしろ状態。映画どころではありません。おまけに目が悪いので、そこにメガネをしなければならないという二重苦です。やれやれ。 ついでに言えば、家で…

  • 「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」

    「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」2023年12月2日(木)グランドシネマシネマサンシャインにて。午後3時55分より鑑賞(シアター2/e-5) ~天才ドライバーによる迫力のカーアクション。童顔のパク・ソダムにギャップ萌え! 何で映画を観ている最中はほとんど痛みを感じないのに、そうでない時は痛くなるのだろう?不思議でしょうがない。それならずっと映画を観ていればいいではないかと思うものの、まさかそういうわけにもいかないから困ったものだ。 この日観たのは「パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女」。韓国のカーアクション満載のエンタメ映画である。 天才的なドライビング・テクニック…

  • 「イニシェリン島の精霊」

    「イニシェリン島の精霊」2023年1月31日(火)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午前11時50分より鑑賞(スクリーン9/D-11) ~孤島で起きる2人の男のすれ違いに人間や戦争の本質が見える 顔の症状はまだ治まらないけれど、痛みはだいぶ治まったので思い切って映画館へ行ってみました。結論から言うと、上映中はまったく痛みも感じず映画に集中できました。その後ドトールで感想をメモしている間も問題なし。しかし、家に帰ると痛みがぶり返し……。まだ万全には程遠いですね。調子を見ながらぼちぼちという感じです。 さて、観た映画は「インシェリン島の精霊」。前作「スリー・ビルボード」が高く評価されたマーティン…

  • 帯状疱疹は恐ろしい!!

    ご無沙汰しております。 1月19日に帯状疱疹の診断を受けました。 その2~3日前からひどい頭痛がして、「これは血栓ができたのか?」「それとも脳腫瘍か?」と心配になり、脳外科に行ったところ、CT検査で脳に異常がないことがわかりました。 では、何なのだ? そのあたりから目が痛くなり、「これは眼科系の病気?」と考えて眼科に行こうと思っているうちに、顔に水疱ができ始めました。むむ?これは噂に聞く帯状疱疹ではあるまいか。そこでさっそく皮膚科に行き、やはり帯状疱疹の診断を受けた次第です。 帯状疱疹は子供の頃になった水ぼうそうのウイルスが、その後も体の中に潜伏し、ふだんは何でもないものの、ストレスや過労など…

  • しばらくお休みします。

    帯状疱疹になってしまいました。 以前から頭が痛く、脳神経外科で見てもらったら異状がないとのことでしたが、その後顔にぽつぽつと水泡ができはじめ、昨日皮膚科に行ったら帯状疱疹とのこと。 痛みがひどく(痛み止めはもらいましたが)、目もよく見えないため映画館にも行けないし、原稿も書けません。この原稿もやっと書いています。 1週間で治るとも、2週間ぐらいかかるとも、いろいろ言われていますが、とりあえずその間お休みしますので、よろしくお願いします。

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