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――あの不思議に変化せしめた剣神・天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)発見から、さらに数日後。いまも姫子はあいかわず、ぐっすりと眠りこんでいる。もちろん寝息はある。よほど疲労をためこんでいるのだろう。抱きかかえられた仔犬もいっしょにおねんねタイム真っ最中なのだ。仔犬との再会を姫子はことのほか喜んでくれた。ふしぎなもので、この仔犬も餌を欲しがるふうでもなく、粗相をするわけでもない。物寂しい冷たげな板敷の月の社のなかで、やにわに家族が増えたみたいで、姫子も千歌音もあかるく口数が多くなった。まるで、学園の薔薇園にいたときの少女らしい華やぎをとりもどしたかのようだ。儀式は大事をとって休息をとりつつ行っているが、なんど試みても、その剣脚がうんともすんともしないことすらあった。それでも、千歌音も姫子も、あきらめてはいな...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(十)
その影は、陽炎のように、ゆらりゆらりと揺らめいた。まるで、孵化した蝶が蛹からもがき出るような、透きとおった美しい動きがあったので千歌音は固唾をのんで見まもっていた。それが人の形をなし、肉いろを帯びはじめて完全に姫子の身体から遊離する。吊られた糸が切り離されたがごとく、前のめりに倒れこむ姫子を、千歌音は慌てて受けとめる。姫子は千歌音のなかで、中の空気を抜いたエアブロウのごとくに、ぺたりと千歌音に張りつくようにしてのしかかった。そのからだは花束よりもはるかに軽い。魂ひとつぶんは抜けた軽さだ。「はじめまして。…いえ、あなたには、おひさしぶりが相応しいのかもね」しゃべったのは、姫子からはがれていった「影」のほうだった。千歌音の怪訝なまなざしを悠然と見おろす女性が、そこにいた。目元だけ緩ませた笑顔。聞き慣れてはいる...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(十一)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第十・十一話 更新★★★(2025/04/11)
(画像出典:アニメ神無月の巫女DVDBOX小冊子表紙より)********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第十話:諸刃をふたたび開かせぬために第十一話:月と誰そ彼の巫女そう、来栖川姫子はほんらい死んではならないはず──の巫女なのだ。あの青い星で生き残り、いのちを慈しんで次の時代へ伝えるはずの存在だった。(…)儀式が終わったら、そもそも姫子はどうなるのだろうか?消えてしまうのではないか?この仔犬とともに?********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神無月の巫女二次小説其の一◆(「花ざかりの社シリーズ」→「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第十・十一話更新★★★(2025/04/11)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第九話 更新★★★(2025/03/29)
********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第九話:月世界への迷い子神無月の巫女の封印が弱まって、地上にオロチがのさばってしまうわけではないのだ。いくらも、いくつも、そのときどきの巫女の選択があったにちがいない。悲しい分かれ道も、嬉しい一本道へのつながりも、曲がりくねった道も、行き詰まって引き返したことも。今生の姫子と千歌音は誤ったのかもしれない。けれど、たどりつけなかった正解は、ふたりの歩みを無意味にはしないのだ。********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神無月の巫女二次小説其の一◆(「花ざかりの社シリーズ」→「誰そ彼の...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第九話更新★★★(2025/03/29)
これは、なにかの足あと?ひとの手のひらよりは小さく、うえの四つの点には爪が伸びた形跡がある。その足あとをたどっていくと、雪が小さなかまくらよろしく、こんもり積もった場所がある。千歌音が駆け寄って雪をかき分けると――なんと眠っていた仔犬なのだった。しかも、その見目かたちには見覚えがある。黒ぶちの柴犬で、おでこに桜の花びらを押したような色がある。四つの足は靴下を履かせたように色が抜けて、しっぽときたらぷりんと丸まって。口もとは富士山のように凛々しく閉じているのに、瞳がつぶらなせいか、表情がじつに愛くるしい。たまらなく抱きしめたくなるような感情が湧いてくる。それを胸もとに抱えていた、あの陽だまりを浴びた少女のように――…。まちがいない、この子は、姫子とはじめての逢瀬をつないでくれた仔犬なのだ。上体を抱き起こそう...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(九)
雪が紅く染まっている。白と赤とが溶け合い、微妙な桃いろをなしている。これは剣神・天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)が流した血――そう、言ってもよいのかもしれない。これこそが応えぬ神があげた悲鳴なのだ。もし、いま、この神を失ったとしたら、私たちはどうなってしまうのだろう…。地球の酸化現象は20世紀にはいり、ますます進んでいる。産業革命にはじまって以来の化石燃料の大量消費は増えつづけ、たびかさなる戦争での火炎放射、核開発が重なった。ひとの憎悪と欲望とが、幾億年もかけて蓄積された膨大な地球のエネルギーを食いつぶしていく。みどり豊かな自然の破壊と人類の旺盛な増殖。酸性雨が問題視されたのは、地球の歴史上でごくごく最近のことにすぎない。46億年以上の時間をかけて地球が富みさかえるほど、知能をそなえた生きものが競い合い...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(八)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第八話 更新★★★(2025/03/22)
********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第八話:月を血染めにするのは人類の吐息姫子が予定通り供物に選ばれていれば、こんなイレギュラーは起きなかった?では、この月面でもういちど、ありえたはずの儀式をおこなうべき…?すなわち、私が姫子を――…。――いいえ、そんなことはありえない!考えてはならない、そんな思いは!絶対に、それだけは許されない!********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神無月の巫女二次小説其の一◆(「花ざかりの社シリーズ」→「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(目次)へ)*************二次創作小説の目録です。...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第八話更新★★★(2025/03/22)
【画像№030】姫子をシュミる千歌音ちゃんの構図(2025/03/09)
【画像20250309】【姫子をシュミる千歌音ちゃんの構図】NHKの人気アニメ「チ。―地球の運動について」(原作:魚豊、講談社、全八巻)が佳境を迎えています。聖闘士星矢といい、美少女戦士セーラームーンといい、神無月の巫女といい。やはり天体を扱ったお話はすこぶるロマンがありますね。神無月は太陽と月だけだけども。空は神と結びついた、手の届かない世界。だからこそ、人類はそこに憧れる。見えなかった図形をそこに描く、創造力の源泉。画像は、原作漫画第二巻に収録された一場面。月の社にて待つ姫宮千歌音が、最愛の人をむかえる、実に印象的なワンカット。「シュミる」というのは、「チ。」の第三章から登場する異端解放戦線シュミット隊長の習慣から。腕を精いっぱいひろげて、朝日を浴びるのが日課。で、このポーズが面白かったのか、X(旧ツ...【画像№030】姫子をシュミる千歌音ちゃんの構図(2025/03/09)
剣神・天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)が、消えた――?!いや、なくなったのではなかった。あたりがうす暗いせいだけではなかった。長い睫毛が細雪に濡れるのを、しきりとしばたたかせる。目を凝らしてみると、紅ぐろくこわばった機体らしきものは認められる。周囲には麻で編んだしめ縄をめぐらしてあったはずだが、それも見あたらない。誰かに結界を壊された…?いや、そんなはずはない。ここには、神無月の巫女の私たち、ふたりだけしかいないはず。血染めになった機体――まさか、私がオロチ化させたあの武夜御鳴神(タケノヤミカヅチ)…?!いや、そんなことはありえない。そもそもこの巨体の影は、あの武神らしき角張った輪郭をもってはいない。色あいは似ているが…。ぎぃぃと金属がかしいで、雪の中にどすんと落ちた音。あわてて近寄ると、パリパリとかさ...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(七)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第七話 更新★★★(2025/03/03)
********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第七話:剣神におとずれた最悪剣神・天叢雲剣(アメノムラクモノツルギ)が、消えた――?!いや、なくなったのではなかった。あたりがうす暗いせいだけではなかった。長い睫毛が細雪に濡れるのを、しきりとしばたたかせる。目を凝らしてみると、紅ぐろくこわばった機体らしきものは認められる。周囲には麻で編んだしめ縄をめぐらしてあったはずだが、それも見あたらない。********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神無月の巫女二次小説其の一◆(「花ざかりの社シリーズ」→「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(目次)へ)*...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第七話更新★★★(2025/03/03)
武夜御鳴神(タケノヤミカヅチ)は、もともと蒼天や海を思わせる色合いをもつ、まさに地球そのものを化生せしめたかのような、爽やかな神機であった。光沢のある漆喰壁の白に、銅板葺きでほどよく緑青の取り合わせが美しく雄々しい、そんな城郭のような威厳さえ、あの神機には感じられる。若武者というにふさわしい。一の首機・嶽鑓御太刀神(タケノヤスクナズチ)はやや紺がかった闇いろをしていたから、最初から邪神として誕生していればもっと暗く陰った機体だったはずではないか。千歌音が搭乗したときは、アメリカザリガニのような暗褐色に変色したし、フェイス部分も凶暴な人相になってしまった。オロチの手先になった千歌音には、それがあるべきこの武神(いくさがみ)の、暴れん坊な姿であると考えていたのだ。血染めに紅く染まったあの姿こそが。しかしである...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(六)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第六話 更新★★★(2025/02/23)
********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第六話:万有を誇る武神(いくさがみ)の本性地獄のとば口から底を見通せないほどに分厚い闇がのぞくかのように押しひらかれ、その月の社の扉が閉じあわさんとするその直前――たしかにその美々しい女神の声を耳にしたはず、なのだが――なぜ、この月面ではだんまりを決めこんでいるのであろう。どうして、あれは巫女の意のままにならないのだ。********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神無月の巫女二次小説其の一◆(「花ざかりの社シリーズ」→「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(目次)へ)********【画像202...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第六話更新★★★(2025/02/23)
そもそも、いま、この月世界とは、合体神ヤマタノオロチを封印しようとしている場所なのである。その部分体である武夜御鳴神(タケノヤミカヅチ)をふたたび召喚――なんて、ありえない。ひと柱だけオロチ神をそばに置くなんぞ、巫女としてはあってはならない。それでは元の木阿弥なのだが…。あどけない姫子の提案を跳ねかえすこともはばかられて、千歌音は困惑をにじませた顔で。「…姫子。それは、私たちのアメノムラクモではだめなの?」「う~ん、どうだろう…」姫子がしばし口をつぐむ。目がくらみ、声が遠い。アメノムラクモは使えない。雪遊びを手伝ってくれるかって?こんなことには働かない。なぜって――…。――だって、アメノムラクモはわたしたち神無月の巫女を……するためにあるから――。――あなたたちは、アメノムラクモをふるう資格があるの…?神...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(五)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第五話 更新★★★(2025/02/17)
********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第五話:巫女が求めてはならぬ神機のはたらき「ちょっと気難しい神さまなのかなぁ、頼んだらやってくれるのかな…。あれ、千歌音ちゃん…?」これはまだ、この剣神の御柱を発見する前のことなのだ。姫子はこんなおふざけをこぼしていた。ふわふわした白い息を吐きながら、そんな冗談口もどこかこの命閉ざされた夜ばかりの世界ではあたたかい。姫子がこぼすのだから、あたたかい。********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神無月の巫女二次小説其の一◆(「花ざかりの社シリーズ」→「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(目次)...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第五話更新★★★(2025/02/17)
2月になると、植竹須美男先生のことを思い出します。(昨年2024年は、私がこの時期うっかり倒れていたので書けずじまいだったのですが…orz)この2月15日が命日とのこと。2023年御逝去、享年54歳、あまりに若すぎます。惜しまれる死です。寒波が押し寄せるこの時期、私の周囲でも訃報が相次ぎました。20数年前、私の実父が亡くなった年齢とほぼ同じ。なので、よけいに痛ましい出来事でした。訃報愛すべき門下生のひとり脚本家の植竹須美男が2月15日急逝いたしました。10日に緊急搬送され、奇跡の生還を祈りましたが、薬石効なく不帰の客となりました。残念至極です。彼が専門学校を出て私の元に来てからもはや30年以上の時が流れました。—小山高生(@koyamatakao194)February16,2023言わずもがな「神無月の...神無月の巫女の名脚本家・植竹須美男を悼む
なにか手立てはないものか、いまのうちに考えておかねばならない。姫子が休眠しているあいまに、私がひとりでがんばらねば――。絹のような手触りのよい掛け布を姫子の肩まであげると、こっそり額にキスを落とす。決意でひきしめた唇も、姫子の柔肌にふれると甘くなってしまう。そろりと足音をひそめ、千歌音は月の社を後にしたのだった。月面をなぞっていく影がやけに色濃くなっていた。闇がひときわ深まっている。なのに、夜目は利くので手燭もいらない。階段をおりる際に、突風に吹きつけられて長い横髪が激しくはためいた。袂からとりだしたのは、姫子がくれたリボンだった。ときに月面は砂をまきあげるほどの風が舞うことがある。儀式の際にも、この豊かな黒髪をひとつ括りにすることはよくあった。そういえば、はじめて会ったときも、姫子は四つ葉をかたどった愛...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(四)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第四話 更新★★★(2025/02/09)
********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第四話:ふたりが望んだ冬の戯れに「だから、ふたりでいっしょにね。私もたくさん転んでおく練習をしなくちゃ。姫子を支えられるように、ね?」――千歌音が片頬笑みしてほんのり景気づけて。ほうら、こうやって、手をつないで、いち、にぃ、さん。ふたりして、両手をのばしてくるくるとゆっくりした独楽のごとくに旋(まわ)る、まわる。********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神無月の巫女二次小説其の一◆(「花ざかりの社シリーズ」→「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(目次)へ)********【20250209...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第四話更新★★★(2025/02/09)
姫子は、すっかり疲れきって、気持ちのよい寝顔で寝入っていた。一日という感覚が月で暮らしていると鈍ってくるので正確にはいえまいが、千歌音の体内時計が覚えている感じでは、一時間ほど前まで、ふたりは精力を消耗するほどの大仕事をやってのけたのだった。それは、オロチ封印強化の儀式。社の中で、オロチの復活を阻止する祝詞を奏上する。詞章はアメノムラクモ復活の儀式とはことなるものだったが、彼女たちの口から自然とついて出てきた。地球で復活の儀式を執り行なったときよりも、姫子の詠唱ははるかに上手くなっていた。その祝詞は、オロチ神を砕いた剣神アメノムラクモを鞘まで、月の表面に深く沈める作業である。地球でオロチを破り、巫女が月の社に封印された直後、アメノムラクモはロボットの形態から剣に戻ったばかりで、月にかるく刺さっている程度だ...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(三)
【加筆修正】★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第三話 更新★★★(2025/01/26)
********※本日21時ごろ更新分に重大な誤記がみつかったため、加筆修正しております。申し訳ございませんでした…orz神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第三話:オロチ封印固めの儀彼女たちの魂が、この社でいつまで維持できるのかはわからない。次に封印が解かれてしまうのは、おそらくまだまだ先だろうが、巫女が社にとどまる限りは、地球にオロチをのさばらせてはならない。そして、完全にアメノムラクモの剣を月に打ち込んでおかねばならぬ。それが、巫女とさだめた生まれの、いまの彼女たちにできることだ。********神無月の巫女二次創作小説長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。お読みになりたい方は◆神...【加筆修正】★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第三話更新★★★(2025/01/26)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 第二話 更新★★★(2025/01/19)
カルト的人気を誇る伝説の百合作品「神無月の巫女」!アニメ版とは異なった最終回を迎えた原作漫画の完結は、2025年で20年め。アフターで、アナザーで、アウェィな、姫子と千歌音のあれからを妄想した月の社編サイドストーリー。更新は不定期です。上記の公式画像はコミックス第一巻の目次頁にあるのですが、ラストを暗示しているようで趣深い絵ですね。雪明りに包まれているはかなげな感じがとても好みなのです。********神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第二話:しばし眠りについた神機──私たちの逢瀬を阻むものは、もはや何もない。そう。太陽と月のあいだに割りこんでくる存在など、もはやあるわけがない。その想いを噛んで自分の胸の奥に擦り込ませるように、千歌音はつぶやかずにはいられなかった。********神無月の...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」第二話更新★★★(2025/01/19)
いま、千歌音の手元には姫子と二人で写した一枚の写真がある。おそらく、これは現実界にある写真ではない──のだろう。1980年代の写真機らしいネガフィルムもなく、感光液に浸すでもなく、ぽわんと一枚かってに出てきたのだった。まやかしのカメラに技巧などいらない。なんども念じればいいだけだった。好きなだけやり直すことができる。衣装だって舞台だって変えることができる。しかし、姫子が望んだのは、いまこの二人があるがままの姿を捉えた一枚だけだった。その一枚をさも大事そうに握りしめ、姫子は感慨深げに、こうこぼすのだった。「千歌音ちゃん、知ってる?月ってね、やっぱりふたりの場所だったんだ」「そうね。ここは姫子と私だけの場所…」その言葉をまるで歴史上はじめて月面に降り立った宇宙飛行士のように、誇らしいものとして千歌音は感じてい...神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(二)
★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」 掲載開始★★★(2025/01/12)
*****神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」をお届けします。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。2009年4月27日より不定期連載している長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章となります。2024年10月の20周年記念の短編「君の瞳に生まれたエフェメラ」の更新中に目次再構成し、この章は第三章の扱いとなります。今回もひめちか尽くしッ(笑)!!前章が雪の日で終わったので、この章も冬を想定してこの時期にスタートさせました。甘めでなく、ややひんやりするお話ですが、長く寒くなった夜の手すさびにお楽しみくださいますと嬉しいです。姫千歌があるときとないときでは、ご家庭の幸せが段違いなのです!(大げさ)お読みになりたい方は[神無月の巫女二...★★★神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」掲載開始★★★(2025/01/12)
【目次】神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(〇)
神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」をお届けします。月面にそびえたつ巨大な剣の柱を前に、姫子とともにオロチ封印の儀に挑む千歌音。そこで異常が発生し──…。2009年4月27日より不定期連載している長編シリーズ「花ざかりの社」、その第三章となります。前章が雪の日で終わったので、この章も冬を想定してこの時期にスタートさせました。甘めでなく、ややひんやりするお話ですが、長く寒くなった夜の手すさびにお楽しみくださいますと嬉しいです。第一話;かりそめの写し絵(構想執筆;2005年11月某日より、第三章掲載;2025年1月12日~)【神無月の巫女二次創作小説「花ざかりの社」シリーズ(目次)】【目次】神無月の巫女二次創作小説「誰そ彼の枢(くるるぎ)」(〇)
【画像№024】2025年も神無月語りを(^^♪(2025/01/03)
【画像20250103】【2025年も神無月語りを(^^♪】新年あけましておめでとうございます!今年も懲りずに、こだわりつづける、ひめちか廃人っぷりを発揮して、気ままに、気楽に、記事を書きつづけていたりしますので、よろしくお願いいたします。このブログ、二次創作やオタ活以外の日常記事は深く考えずに予約投稿にしていますので、管理人の運営ミスでたまに同じ日の記事の食い合わせがすこぶる悪いことがあります。現世に疲れた神無月の巫女ファンの皆さまは適度に見ざる、読まざる、開かざるにしていただきますと助かります。どーもすみません、ほんとに(苦笑)。この画像、初出は2010年代のお正月でしょうか。大晦日の御挨拶にリリカルなのは、新年の慶賀には神無月の巫女関連、という加工画像を載せるのを習慣にしていた時期がありました。最初...【画像№024】2025年も神無月語りを(^^♪(2025/01/03)
【画像№023】「ひめこ」と「ちかね」の歴史はまだまだ続く…?(2024/12/31)
【画像20241231】【「ひめこ」と「ちかね」の歴史はまだまだ続く…?】2024年は神無月の巫女20周年記念!その一年がもうすぐ終わろうとしています。月日の流れは早いもの。今年は個人的な事情でメモリアルイヤーなのに、あまりそれらしい記事を出せずじまい。最後にこんな話題を駆け込みで!介錯は原作と作画に分かれているわけではなく、ずっと2人で内容を考え、2人で作画してます。コンテをは1人なのでもう片方が最初の読者に。そんな2人で描いた新連載をよろしくお願いします。マイとヒメ、2人のビートが世界を変える――。異世界"踊ってみた"ストーリー!https://t.co/DddyEdRqAK—介錯(セブン)(@Kai_Seven_)July20,2024電子書籍漫画サイトで今年7月に掲載開始されたもの。9月に第二話が...【画像№023】「ひめこ」と「ちかね」の歴史はまだまだ続く…?(2024/12/31)
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(八)
「私は、姫子の笑顔だけ護っていたい訳じゃない。本当の貴女を、素顔の姫子を受け取りたいの。私は貴女だけのハンカチになると決めたのだから」ああ、それを言われちゃった。だめだよ、千歌音ちゃん、それは。それはね、あなたを抱き寄せるわたしの、とっておきの贈り言葉だったのだから。「わたしは…もうぐちゃぐちゃで、千歌音ちゃんの顔がまともに見られないよ」「貴女の瞳に生まれた私のすがたは、陽炎のように、はかなくてもろい。きっといま、姫子の苦しみを押し流してくれているの。だから、もう泣いてもいいのよ、思う存分にね」胸に顔を埋めてしまったから、もう完敗だった。ああそうなんだ。これが来栖川姫子の涙なのだ。千歌音ちゃんの前ではいつも甘えちゃう。生まれ変わったら、強くなったわたしが手を引いてあげたいと思っていたのに。あなたはやっぱり...神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(八)
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(了)
御読了ありがとうございました。こちらは恒例の後書きになります。以下、お時間のある方はどうぞ。短編だったにもかかわらずなかなか仕上がらなかったのは、タイトルが当初は「本当はもう一枚」という、しっくりこないものでダブついていたからです。それから各話のサブタイトルがどうもしっくりこなくて。何作か書き散らしたものがあったのですが、どれもおなじみのカップル話らしく、めそめそしたあとに「ラストにやること」が同じなので!(爆)、自分で飽きてしまったというのもあります。同人話といえば、オチはこればかりですね、ハイ(笑)通常、アフターものの神無月の巫女現世編二次小説では、姫子をやや攻め気味なタイプにしてしまうことが多いのですが。本作は珍しく大人姫子だけども、千歌音のほうが積極的な性格付けにしてみました。カップリング表記でい...神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(了)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第八話 更新(了)★★★(2024/12/14)
神無月の巫女20周年の今年はもうすぐ終わりますが、ひめちか愛は永遠です!!********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第八話:来栖川姫子の落涙「お待たせしてごめんなさいね。私、貴女を幸せにするわ。前世も、前前世も、いままでの何人もの姫子の分まで貴女を愛していたいの」きっと、この言葉を待っていたいがために、私たちは百年も、千年も、いやそれ以上ものあいだ、生まれ変わって傷つけあって、そして愛しあってきたのだろう。********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。お読みになりたい方は[神無月の巫女二次小説其の一]→「君の瞳に生まれたエフェ...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第八話更新(了)★★★(2024/12/14)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第七話 更新★★★(2024/11/30)
********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第七話:来栖川姫子の改悛わたしはわざととりつくろった笑顔を見せた。でも、どうしようもなく瞳からはあふれるものがあった。どうしてだろうか、嬉しいのか、悲しいのか、苦しいのか、楽しいのか。もうわからない。泣き虫なわたしは、胸のなかのざわめきを抑えられなかった。このひとのまえで泣いたらいけないのだ。自分だけがかわいそうで流す涙は卑怯だってわかっているのだ。********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。お読みになりたい方は★創作小説ご案内★へ([神無月の巫女二次小説其の一]→「君の瞳に生まれた...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第七話更新★★★(2024/11/30)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第六話 更新★★★(2024/11/16)
********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第六話:来栖川姫子の真言千歌音ちゃんの両手を握ってひきあげるようにして。やっと、同じ目線の高さのふたりになった。千歌音ちゃんに懇願されるようなまなざしで、仰ぎ見られるのは、なんだか甘酸っぱい感じがして。とてもくすぐったくて、そして、もったいない気がするから。「ごめんなさいは、こちらこそ。私も姫子と同罪だから」********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。https://blog.goo.ne.jp/yorozu-hakiお読みになりたい方は★創作小説ご案内★へ([神無月の巫女二次小説其...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第六話更新★★★(2024/11/16)
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(六)
「それで、姫子はどうしたいの?」「千歌音ちゃんに笑って許してほしい」「そうするわ」千歌音ちゃんの両手を握ってひきあげるようにして。やっと、同じ目線の高さのふたりになった。千歌音ちゃんに懇願されるようなまなざしで、仰ぎ見られるのは、なんだか甘酸っぱい感じがして。とてもくすぐったくて、そして、もったいない気がするから。「ごめんなさいは、こちらこそ。私も姫子と同罪だから」え、とわたしの目がまん丸くなる。千歌音ちゃんが取り出した一枚は、わたしの泣きそぼったあとの寝顔の写真。感動する映画を観に行って、帰りのリムジンのなかで眠りこけてしまったらしい。しかも口の端からよだれが…。なんという、うかつな。でも、千歌音ちゃんに比べたら、けっして寝相も寝顔も整っているとは言いがたいのだから、証拠写真を挙げられても驚きはしない。...神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(六)
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(五)
「やはり、私たちはこの恰好からはじめないといけなかったのかもしれない」千歌音ちゃんはにこやかに微笑んで、カップの底をソーサーに置いた。かちゃり、と白磁が触れあう、そつのない響き。柄だけでなく、音や光沢までも高級感がある。千歌音ちゃんが口をつけたカップはいつも同じ角度に取っ手が向いていて、テーブル上の置き場所も迷いがなく、狂いがない。弓道やピアノと同じ、的の真ん中を射るために動作を限りなく抑えていたら、自然とそうなってしまうの。と、千歌音ちゃんは付け加える。わたしがなにを不思議に見ているか、じっくり観察して、頭の中身を言い当てられてしまたったみたいで気恥ずかしい。紅茶を飲み干すしぐさは様になっているけれど、着物姿で、というのはちょっとアンバランス。そういうわたしも長い袖口の下についた玉飾りの房が引っかかりそ...神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(五)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第五話 更新★★★(2024/11/09)
********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第五話:【五】来栖川姫子の変身千歌音ちゃんはなぜか楽しそうにウインクまで寄越してくる。生まれ変わる前の、千歌音ちゃんもこんなに目を瞠るぐらいのまばゆい美人さんだったけれど、でも、きっとこんなに割り切ってはいなかった…はず。それはわたしも同じで、いつも臆病で怯えてて、甘えられる人には泣きべそで、泣けない相手には薄ら笑いで黙って耐えるだけ。そこから、ちょっとは成長できたのかな。********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。お読みになりたい方は★創作小説ご案内★へ([神無月の巫女二次小説其の...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第五話更新★★★(2024/11/09)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第四話 更新★★★(2024/11/03)
********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第四話:来栖川姫子の逡巡そうだ、わたしは…千歌音ちゃんを、愛する千歌音ちゃんを信じていないんだ。心から、信頼しきっていない。どこか怖がってもいる。許してもらえないような気がして怖い。融けかけた綿菓子みたいに、甘くておいしいのに喉に引っかかるような、得体のしれないモヤモヤがある。********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。お読みになりたい方は★創作小説ご案内★へ([神無月の巫女二次小説其の一]→「君の瞳に生まれたエフェメラ」(目次)********【画像20241103】【神無月キャラ...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第四話更新★★★(2024/11/03)
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(四)
「はァ~?姫子がひとを殺したかもしれない──だって?面白いこというねえ。いま、それ、日本で流行ってんの?マジ受けるんだけど、アハハっ」受話器の向こうから聞こえてきたのは、大親友マコちゃんこと早乙女真琴の呆れ声。からからとした声だけど、歯に衣に着せぬ言いかた。昔から、変わってない。遠く離れても友だちじみた声で、嬉しくなる。短距離走者からマラソンランナーに転向して実業団に所属する彼女はいま、海外で強化合宿中だった。空気の薄い高山の坂道で走りを鍛えているという。「冗談も休み休みに言いなさいよ、あんたは~。というか、休み過ぎておかしくなってんじゃないの。寝相の悪い姫子さんは夢見も悪いんだぞっと」「そうかなぁ」「そうだろ、そうだろ。だいたいなぁ、あたしの知ってる姫子が、んな物騒なことしないっての。あたし、やだかんね...神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(四)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第三話 更新★★★(2024/10/26)
********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第三話:来栖川姫子の供述たとえ、いま、千歌音ちゃんのほんとうが分かっていても、わたしは大神くんの前ではそうしたに違いない。だって、わたしが幸せにしてあげられなかったひとのまえで、幸せは口にしてはいけないような気がしたから。わたしの一番のひとがやってきたんだもの、幸福すぎてもったいないよ、でも…。どうして、こんなに虚しいのかな…。********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。お読みになりたい方は★創作小説ご案内★へ([神無月の巫女二次小説其の一]→「君の瞳に生まれたエフェメラ」(目次)*...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第三話更新★★★(2024/10/26)
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(三)
大神くんは何も知らなかった。わたしがぼちぼち思い出した記憶のかけら――命懸けでオロチ衆と戦ってくれたことも。この穏やかな暮らしが再生されたのちの地球においてであることも。そして、わたしたちは他愛のない子ども時代のことをふたつ、みっつ、覚えているだけだった。わたしの大好きなもの、甘くし過ぎた卵焼きのことも忘れていない…わたしたちをつなげるものはそれだけ、それだけなんだ。示し合わせたわけでもないのに、高校時代のこと──乙橘学園でのことを話題にするのを避けていた。だって、あの日の放課後の告白のことを思い出させたくはなかったから。しゃべっているのは大神くん。息継ぎ代わりに、缶コーヒーをぐいぐい二杯も空けた。わたしの缶はなかなか減らなかった。帰りがけにふと、大神くんがこんなことを訊ねた。「姫子、お前はいま、幸せなん...神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(三)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第二話 更新★★★(2024/10/19)
********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第二話:来栖川姫子の残夢過去をなぞれば、何かが見えてくるかもしれない。もし、千歌音ちゃんがそれで、わたしのことを嫌いになったとしても構わなかった。わたしが千歌音ちゃんを好きという、この気持ちだけで生きていける。再会できるまでが、ずっとそうだったのだから。********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。お読みになりたい方は★創作小説ご案内★へ([神無月の巫女二次小説其の一]→「君の瞳に生まれたエフェメラ」(目次)********【画像20241019】神無月の夜は月が美しい秋、とりわけ十月...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第二話更新★★★(2024/10/19)
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(二)
その晩、わたしは恐ろしい夢を見た。千歌音ちゃんがお腹を抱えてうずくまっている。板縁の床には、桜貝のペンダントが転がっていて、千歌音ちゃんはそれに必死に手を伸ばす。指先がかすかに震えていた。その指は爪の中まで赤ぐろく染まっていた。わたしの血ではない。自分の掌が、生温い刀を握っていることに気づくのに、わたしは数秒を要した。刃を放り投げ、放心したまま両膝を床に着いた。重力ではなくて、碇のように重い感情が身体を地へと沈めようとする。──わたしはそこで目が醒めた。それから幾度も似たような悪夢を見た。冷や汗がふきでて、金縛りにあったように動けないまま、起きてしまう。あれはただの夢なんだろうか?血が指のあいだを流れて、刀の柄の紋様をくっきりさせる生々しさまでもがはっきりと思い出せる。その生命の途切れがわたしに刀を滑らせ...神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」(二)
★神無月の巫女二次創作小説「花ざかりの社」シリーズの目次再構成(2024.10.18)★
神無月の巫女二次創作小説の第八弾にして長編ものの「花ざかりの社」シリーズの目次を再構成し、あらたに各章ごとに全話リンクを張りました。神無月の巫女20周年記念にちなんで、ぷちリフォーム作業なんです。月の社に幽閉され、孤独にオロチ封印の儀に臨むはずだった千歌音。そこに姫子が現れて巫女の運命に変化が訪れる。ひめちかアフターストーリーの月の社編。原作漫画のラストの続きがこうだったら、という妄想がふくらんで2005年あたりから書き綴っていたもの。この作品は「夜顔」シリーズよりも先に構想したものなのですが。一部、内容が重複する部分があって、そのために更新をためらった時期もありました。けっきょく二次小説は何作書き連ねようが、自分の書きたいことの根っこはどれも変わらないのだな、と。公開は2009年4月27日からはじまって...★神無月の巫女二次創作小説「花ざかりの社」シリーズの目次再構成(2024.10.18)★
神無月の巫女二次創作小説「花とむらい」をお届けします。別れの儀式にのぞんだ前世の姫子と千歌音。ふたりはある約束を交わす…。神無月の巫女二次創作小説「花ざかりの社」シリーズの序章。全三話の目次頁です。このシリーズは神無月の巫女20周年記念にあたり、2024年10月18日に全体の目次を再編成することにし、それにあわせて序章の本作独自の目次をもうけることにしました。第一話:別れのさだめ第二話:巫女の約定第三話:花葬の巫女(2009年4月27日より更新開始、2011年11月13日にタイトル変更およびシリーズ化に再構成)【神無月の巫女二次創作小説「花ざかりの社」シリーズ(目次)】【目次】神無月の巫女二次創作小説「花とむらい」(〇)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」 第一話 更新★★★(2024/10/14)
********神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第一話:来栖川姫子の写真千歌音ちゃんに再会したときから、わたしのアルバムの空虚な隙間は埋められていった。まるで裏側から炙り出したように、彼女の姿はみるみる浮かび上がってきた。そうすると、わたしの瞳を覆っていた膜が溶け出すように流れて、写真の上に滴り落ちた。写されたのは高校生なのに、出逢ったわたしたちは、もう二十歳を超えてしまっていたからだった。********神無月の巫女二次創作小説第十六弾にして、二〇周年記念の新作をお届けいたします。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。お読みになりたい方は★創作小説ご案内★へ([神無月の巫女二次小説其の一]→「君の瞳に生まれたエフェ...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」第一話更新★★★(2024/10/14)
写真というのは、とても不思議な機械のからくりだ。人はそれを向けられると十中八九、取りつくろった笑顔を向ける。鏡みたいにごまかしが利かないから、真剣にもなる。そういうもんじゃないかな。だって、一生残る顔だもの、とっておきの一瞬にしたい。美しく、清く、正しい自分を残したい、永遠に。他人の目にそんな自分を焼きつけたい。愛おしい人のために自分を飾りたい。幸か不幸か、そこで自分と違う、自分と似たものが生まれることもある。わたしは、もしかしたら千歌音ちゃんの都合のいい部分だけ切り取って、自分勝手なアルバムに再構成しているだけだったのかもしれない。わたしの眼に収められた彼女は、本当の彼女なのかな。どれも自然な千歌音ちゃんのように思えるけれど。千歌音ちゃんに再会したときから、わたしのアルバムの空虚な隙間は埋められていった...「君の瞳に生まれたエフェメラ」(一)
★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」掲載開始★★★(2024/10/13)
今年は20周年!!姫子と千歌音の愛は永遠!月と地球と太陽とあなたの元気があればそれでイイ!!神無月の巫女二次創作小説第十六弾「君の瞳に生まれたエフェメラ」をお届けします。2022年秋ごろに完成させてはいた完全新作。今年の20周年記念にあわせて発表することにしました。転生後に同棲しはじめたものの、ある一枚の写真をめぐる姫子と千歌音のさざなみを描いた短編アフターストーリー。全七話予定。更新は随時おこなっています。お楽しみいただけましたら幸いです。「神無月の巫女二次小説其の一」→「君の瞳に生まれたエフェメラ(目次)」がアクセス経路になります。今年はプラモデルやアクスタなどの発売ニュースで話題になりましたが。姫神の巫女の同人誌についてきた姫子と千歌音の歴史解説みたいに、なにがしか20周年記念本が発売されたりしない...★★★神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」掲載開始★★★(2024/10/13)
【序】神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」
「本当を、もう一枚」よくある、アニメ最終回後のアフターストーリー。すこし大人になった姫子と千歌音のお話。秘かに隠し撮りした千歌音ちゃんの写真に、違和感をいだく姫子視点です。過去のデータから拾った走り書き。書いたのは2008年ぐらい。ある長編に含めようと思って合わずに、そのまま放置の作を手直したもの。一応、健全めです。骨のある構成とか萌えとかなくて、すみません…orz転生しても、お姉さんぽくっても、どこかちょっと泣き虫な姫子が好きです。このふたりは、もちろん公式設定どおり、同い年として転生しています。なお、神無月世界は平成どころか昭和末期らしいので。アイテムとかがそのあたりの時代を感じさせるものにしています。今の若い方にわかるかな(汗)(2008年3月25日構想執筆、2022年9月19日擱筆、2024年10...【序】神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」
【目次】神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」
神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」の目次頁です。2022年秋に完成させていたもの。いわゆる短編の現代編アフターストーリー。2024年の20周年記念にあわせて発表することにしました。転生後に同棲しはじめたふたり。しかし、ある一枚の写真をめぐって姫子には千歌音に言えない秘密が…。百合度はやや高め、おなじみのキャラも一部登場します。2021年発表の現代編短編「想いの後先」よりはかなり前に構想していたものですので、前書きなどは当時のままに残してあります。神無月の巫女二次創作小説としては、再構成の「禁色の圃(ほ)」、さらに姫神の巫女ほかシリーズ作オールスター共演作の「召しませ、絶愛!」を含むと、通算して第十六作目になります。全七話と短いですが、◆神無月の巫女二次小説其の一◆にリンクさせています。...【目次】神無月の巫女二次創作小説「君の瞳に生まれたエフェメラ」
Happy October, Happy Kannazuki 2024
酷暑をのりこえて、苦しかった9月も終わって、今年もこの神無月を迎えることができました。遅ればせながらの神無月の巫女生誕祭!今年はいよいよ20周年、おめでとうございます!この20年、がんばって生き抜いてきた甲斐がありました。いいことも、悪いことも、この世の中では流れていく。月の中にある誰も知らない社を見上げるようにして、独り言ちて、やり過ごし、ときには虚しくあらがい、たまに逃げるようにしてこの物語に触れては、癒されてきた。そんな20年だったのかもしれません、私にとっては。年々不甲斐なく、オロチの闇に囚われたかのような呪いの言葉を吐くことも増え、ブログを閉じようかと思ったこともありました。20年で成長できたのかは疑わしい限りではありますが、それでも、この作品とともに生きたこの20年を無駄だったのだとは思いたく...HappyOctober,HappyKannazuki2024
【画像№014】早乙女真琴、戦えなかったアスリートの勇気(2024/09/01)
2024年夏、パリ五輪開催中にて(この記事掲載時点ではパラ五輪)。よくも悪くもさまざまな話題をまきつつ、連日、日本勢の活躍の報に私はおおいに勇気をもらっています。今回もそれにちなんだ話題を。学園物で必ず一人はいがちな体育会系キャラとしての早乙女真琴。画像はOP映像の一場面。真琴は主人公・来栖川姫子の女子寮ルームメイトにして親友。アニメの冒頭から登場するものの不幸な事故によって途中で退場を余儀なくされる。しかれども、後半から復活して輝きだすキャラです。そして、最終話でも、何気なく、姫子の失った想い人の悲しさを演出するために欠かせない存在。第一話、正体不明の巨大ロボットが学園を襲い、逃げ惑う学生たち。しかし、姫子は千歌音ちゃん宛のプレゼントを探しに、あえて群れに逆行。追いかけた真琴は足を負傷し入院、試合に出ら...【画像№014】早乙女真琴、戦えなかったアスリートの勇気(2024/09/01)
★★★神無月の巫女二次創作小説「アンサング・ヒロイン」 第三〇話 更新(了)★★★(2024/08/12)
********あと2箇月で神無月!20周年までもうすぐ!!神無月の巫女二次創作小説「アンサング・ヒロイン」第三〇話:アンサング・ヒロイン「またタバコが吸いたくなったら、ベランダの柵を超えたくなったら、私のつくる世界においで」「あんたのつくる世界ってなによ?」「絶望の沼底へダイブする人がいても、巨大なロボットの掌ですくわれる世界。それが私の描きたい究極の愛、最高の夢想。歌えなければ土台になればいい、愛する友を背中に乗せて高みに押し上げる、君といっしょに吠える舞台――それがあたしのブレーメンラブ」********売れないアイドルのコロナと売れっ子漫画家のレーコ。喧嘩するほど仲がいいコンビの馴れ初めは雨の日だった。(「ミス・レイン・レイン」シリーズ第三章)二次創作小説の目録です。「●●二次創作小説」の色文字を...★★★神無月の巫女二次創作小説「アンサング・ヒロイン」第三〇話更新(了)★★★(2024/08/12)
ご読了ありがとうございました。面と向かって甘いことは言わないのに、気持ちの根っこでは繋がってる女の子どうしっていいですよね。公式ではダウナー系の漫画家レーコ先生、アッパー系のアイドル歌手コロナ。むっつりなんとやらで攻めなのは、レーコ先生。ただし、興味の欠片もない人(たとえば来栖川姫子)にはとんでもなく塩対応。アグレッシブで野心的だけども、セレブ(姫宮千歌音みたいな)には届かなくて、あんがい傷つきやすかったりもする歌姫。ボケツッコミで夫婦漫才のように仲良くケンカして。みたいな、ふたりの関係を妄想してみました。漫画家やら歌手やらの生態はわからないので、想像の範囲です。ファンレターなんて自宅に直接届かないのでは、と思うのですが。担当の編集さんが集めてまとめ渡しされてますよね、たぶん。同人作家さんなら、昔は住所を...神無月の巫女二次創作小説「アンサング・ヒロイン」(了)