神無月の巫女二次創作小説「アンサング・ヒロイン」(一)
私は今でも思い出す――小学生の時の家庭科室で。青いキュウリを持った痩せぎすな私を、クラスのみんなが冷ややかに見つめていたことを。その日の調理メニューは甘ったるいフルーツポンチ。私の手にあるべきは、キウイでなければならなかったのだ。そのときの私はなにをとち狂っていたのだろう。いつも、私の耳のなかでは、ざあざあ振りの雨が止まない。なぜだろう。耳の中はいつも湿っていて、沼地のようにじとじとで気持ちが悪い。他人の声は途切れて、ずたずたになっていくのだ。日本語のはずなのに外国語みたいに聞こえたりもする。会話はいつも虫食いだらけだった。だから、私もワンフレーズしか喋られなくなった。親にはいつも、話を聞かない頭の悪い子だと呆れられていた。グループ学習や昼の給食は恐怖の時間だった。私だけがいつも会話から置き去りにされたの...神無月の巫女二次創作小説「アンサング・ヒロイン」(一)
2023/10/09 07:12