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神戸・三宮鉄道フェスティバル2026 へ行ってきました...
おはようございます。先日は神戸阪急デパートで開催中の「神戸・三宮鉄道フェスティバル2026」を見てきました。 以下の会場の画像について、私が気になったモノ…
◆ 白樺並木の向こうに 音更(おとふけ)―― その響きは、遠い大地の匂いとともに、それぞれが十勝の記憶を呼び起こした。 堀内は小さく息をつき、懐かしむように口を開いた。 「そうか、実家は音更だったんだね。 ということは……音更高校かな? 近くに十勝牧場の白樺並木があってね。 そこから見える大雪の山並みを眺めに、よく足を運んだものだよ」 その言葉を耳にした瞬間、奈葉の胸の奥で、かすかな震えが広がった。 白樺並木。 一直線に伸びる白い幹。夏は乾いた土埃、冬は雪煙。 その向こうに、変わることなく連なる大雪の稜線。季節によって色を変えるだけで、そこから動くことはない。 風の強い日は、山が離れて行くので…
◆静かな定例会 6月の定例会を迎えた。 今日は車両競作展のため、いつもの公開運転会は行われない。 奈葉は、どこかほっとしていた。 5月の3連休、ショッピングモールで開かれた公開運転会―― 視線を集め、言葉を選び、気を張りつめていたあの日とは違う。 どこか肩の力を抜いて楽しめる―― そんな一日になることが、素直に嬉しかった。 早めに昼食を済ませ、奈葉は家を出た。向かったのは、定例会が開かれるコミュニティセンターの隣にある小さな図書館だった。 仕事で使うパワーポイントの資料作りに、どうしても一冊、借りておきたい本があった。定例会が始まれば、また人の気配と声に包まれるだろう。 その前に、自分だけの時…
">◆余韻と問いかけ "> ショッピングモールでの公開運転会は、静かな余韻を残して幕を閉じた。 小さなレイアウトを作ったことはあったが、モジュール規格に合わせた製作は勝手が違い、思いのほか難しかった。 開催中はレイアウトの解説役を任され、観客の前で説明する大役も務めた。 そのモジュールレイアウトは、部屋の片隅でどこか所在なさげに見えた。 ただの複線レールが真っ直ぐに伸びるだけの素朴なモジュールは、単体では何も語らない。 だから、仲間のモジュールと繋がったとき、初めて一つの風景となり、物語を紡ぎ始める。 その姿が、奈葉にはどこか自分と重なって見えた。 一人では完結しない―― 。 誰かと繋がること…
◆静かな店、静かな時間 レストラン街の賑わいから少し離れた階上に、その店はひっそりと佇んでいた。 ガラス張りの扉を開けると、外の明るさとは別世界のように、店内は落ち着いた照明に包まれている。壁際には整然とワインボトルが並び、カウンターの上では小さなキャンドルが静かに揺れていた。 白木が微笑んで話す。「ここね、静かで落ち着くから好きなの。 ゆっくり話せるお店だし……」 どこか意味ありげな言葉に、奈葉はそっとうなずいた。店内には控えめなジャズピアノが流れ、気品ある女性客が静かにグラスを傾けていた。 二人はカウンターに並んで腰を下ろす。 グラスに注がれた白ワインが、柔らかな光を受けてゆらめく。 「3…
◆最終日のざわめき 5月の3連休最終日、午前中から続く人の流れは、どこか名残惜しさをにじませながら、穏やかに進んでいた。 ショッピングモールで開催されていた公開運転会も、いよいよ最終日を迎えた。 今日もレイアウトの前では、子どもたちが輪になって集まっている。 列車がカーブを抜けて駅に滑り込み、レールの継ぎ目を渡る軽やかな音が、会場の賑わいのなかに自然と溶けて行く。 中央では、亮太がマイクを握って説明を続けていた。「この駅は、ある地方都市をイメージして作られ——」言葉は滑らかだったが、胸の奥には最終日ならではの緊張感がほのかに漂っていた。 ◆思いがけない質問 そのとき、前列に座っていた男の子が勢…
◆余韻と達成感 ショッピングモールでの公開運転会、初回の運転が無事に終了した。 奈葉は折りたたみ椅子に腰を下ろし、ペットボトルのお茶をひと口だけ含んだ。静かにふっと息を吐き、キャップを閉める。胸の奥には、先ほどまでの歓声の余韻がまだほんのりと残っていた。 その様子を見た相原が近づき、労をねぎらった。「佐橋くん、お疲れさま。 解説がとても上手で、お客さんはみんな喜んでくれたよ。 次の13時は亮太が説明するから、佐橋くんは観客の立場で気になる点をチェックしてほしいんだ」 奈葉が答える。 「ありがとうございます。 ……正直、ちょっと緊張しました」 相原が穏やかに笑う。 「それでちょうど良かったんじゃ…
◆音が会場を満たすまで ショッピングモールでの公開運転会に向け、モジュールレイアウトの設営が始まった。 奈葉と亮太は、白木や音響担当者と一緒に、マイクやスピーカーのチェックを始めた。 音響担当者は、ミキサーのつまみを回しながら、低い声でいった。 「じゃあ、一度マイクを入れます。軽く声を出してもらえますか」奈葉は少し背筋を伸ばし、マイクを口元へ近づけた。「……こんにちは。えーと、聞こえていますか?」スピーカーから、ほんの少し遅れて自分の声が返って来る。 奈葉は一瞬耳を澄まし、反響を確かめるように軽くうなずいた。「ちょっと高音が強めに感じました。 でも、後ろまでしっかり届くのなら、このくらいがちょ…
◆笑い声を断つ連絡 ショッピングモールでの公開運転会を翌日に控え、LINEグループにはいつも通りの軽い冗談が飛び交っていた。そのとき、相原のスマホに、和やかな空気を一変させるショッピングモール管理事務所からの連絡が入った。 その重要さに、彼は慌ててLINEグループを開いた。 《相原です。モールから連絡がありました。 催事コーナーの天井付近で漏水が発生し、現在緊急補修中とのことです。 安全確認が取れるのは、開館時刻の9時を過ぎる可能性があります。 その場合、設営時間がかなりタイトになるかも知れません》 既読が一斉に付く。 つい先ほどまで繰り広げられていた「前夜祭」のようなコントの空気は、一瞬で消…
◆それぞれの前夜 レイルフレンズは、5月の3連休に開催されるショッピングモールでの公開運転会に向け、着々と準備を進めていた。 その前夜――メンバーはそれぞれの場所で、静かな戦いの時間を過ごしていた。 奈葉は、明日の運転会で列車の解説を担当することになっている。 自宅マンションの一室で、一人原稿を読み上げては、練習に打ち込んでいた。 テーブルの上には、印刷した原稿の束。横にはマーカーと、湯気の立つマグカップ。 「みなさん、いまジオラマの駅を出発した新幹線、見たことがありますか?」 声に出して読む。 「これは『N700系』を改良した『N700A』といいます」 窓の外は、もうすっかり夜だ。部屋の明か…
◆打ち合わせの終わり レイルフレンズと、ショッピングモール担当者白木の打ち合わせは、そろそろ終わりに近づいていた。 書類を閉じた白木が、ゆっくりと視線を巡らせる。 「簡単ではありますが、私からの説明は以上になります。 お気づきの点やご質問がございましたら、どうぞ遠慮なくお聞かせください」 その落ち着いた声に、空気がわずかに緩んだ。 山城が、控えめに手を挙げる。 「私は、小さな模型店を営んでおりまして……」 言葉を選びながら、続ける。 「ブース内に当店のリーフレットを置き、鉄道模型に興味を持たれた方へご案内したいのですが、問題ありませんでしょうか?」 すかさず、森下が横から口を挟んだ。 「店長、…
◆視線を集める覚悟 ショッピングモールの催事コーナーでは、レイルフレンズのメンバーと、モール側で担当を務める白木との打ち合わせが行われていた。 白木はメンバーを見渡し、少しだけ声を張った。 「それでは、みなさんお揃いのようですので、ご案内を始めさせていただきます。 まず、こちらの催事コーナーですが、1階エスカレーター横―― こちらは、当モールでもっとも人目につく場所になります。 現在は、ご覧の通り新生活や新入学関連の商品を中心に展開していますが、レイルフレンズさんのイベントは5月の3連休です。 今日よりも、さらに多くのお客様がいらっしゃると見込んでおります」 エスカレーターを上り下りする人の流…
◆春まだ浅いモールの夜 3月の第4月曜日。桜の便りが届き始めたというのに、北風が吹き抜ける肌寒い一日だった。 奈葉は仕事を終えると、コートの前を軽く押さえ、ショッピングモールへ足早に向かった。今日は、プロジェクトチームで現地を下見する日だ。週初めということもあり、業務が押してしまい、会社からそのまま直行する形になった。 平日の夜、7時近く。それでもモールの中には、仕事帰りに立ち寄った人や、夕食の買い物を楽しむ家族連れの姿が少なくない。 天井の高い通路には、明るい照明と春物セールを告げるポスターが並び、どこからか甘い焼き菓子の匂いが漂って来る。人の流れに混じって歩くと、靴底が床に軽く吸い付くよう…
◆山城模型の夜 山城模型では、ショッピングモールでの公開運転会に向けてミーティングが続いていた。 進行役の相原が、レジュメのページをめくる。 「次は『運転について』です」 運転は、見学者の視界を妨げないよう、モジュールレイアウトの内側から行います。 各日とも、午前11時、午後1時、3時、5時の計4回。 1回あたり20分ほどを予定しています。 多くの皆さんに見てもらうため、開始5分前にモール側から館内放送が流れます」 ◆亮太の高揚 その説明に、亮太の表情がぱっと明るくなった。 「それ、かなり人が集まりそうですね。俺、なんだか一気に燃えて来ましたよ」 「亮太は、その情熱を仕事にも向けたら、会社でも…
◆冬の扉が開く音 山城模型では、ショッピングモールでの公開運転会に向けて、ミーティングが始まろうとしていた。 亮太の到着で笑いの余韻が残る中、再びガラス戸の鈴の音が鳴った。 「こんばんは」 澄んだ声とともに姿を見せたのは奈葉だった。 アイボリーのロングコートに、淡いラベンダー色のストールをふんわりと巻き、足元は細身のブーツ。肩にかけた小さめのレザーバッグと、控えめに揺れるピアスが、冬の夜の店内にやわらかな彩りを添える。 冷たい外気をまとったまま、奈葉が扉を閉める。頬がほんのりと赤く、吐く息はまだ白い。 それだけで、工具とパーツの匂いが満ちていた店の空気が、ふっと華やいだ。 ◆奈葉との距離 その…
◆定休日の店内 ショッピングモールでの公開運転会に向けて、クラブ内にプロジェクトチームが立ち上がった。 メンバーは、代表の森下、副代表の相原、山城模型の店長・山城、そして堀内、奈葉、亮太の6人だ。 開催は5月の3連休。 それまでのあいだ、第4月曜日の夜に山城模型へ集まり、細かな打ち合わせと準備を進めていくことになった。 月曜日が選ばれたのは、山城模型の定休日に合わせて、営業に支障が出ないようにするためだった。 開始時間も、仕事帰りの人が参加しやすいようにと、少し遅めの午後7時に設定された。 2月の第4月曜日。 シャッターの半分が閉まり、店内の照明は少し落とされ、物静かな雰囲気に包まれていた。 …
◆レイルフレンズの一員 奈葉は、山の陰へ列車が吸い込まれて行くのを、静かに追っていた。レールの継ぎ目を刻む音が次第に遠ざかり、やがて次のモジュールへと消えて行く。 その余韻に浸っていると、背後から肩を軽く叩かれた。 「どう?自分のモジュールが組み込まれた感想は」 振り向くと、相原が優しい笑みを浮かべて立っていた。その穏やかな表情が、入会を勧めてくれた日の顔と重なって見える。 「はい……」 奈葉は、もう一度レイアウトへ視線を戻した。 「まだ入会してから数か月しか経っていませんけど……なんだか、いろいろなことがあったなって考えていました」 相原は、ゆっくりとうなずいた。 「あれは、入会初日だったね…
◆断ち切れない想い 亮太は、自分の気持ちと向かい合っていた。奈葉への想いは、どうしても断ち切れない。 けれど、もし彼女に想いを寄せる相手がいるのなら――それがはっきりするまで、自分の気持ちに結論を出すべきではない、そう思った。 エド・シーランの「Photograph」が持つ歌詞の意味を知った以上、それはなおさらだった。あの歌が奈葉の過去と結びついているのなら、自分の想いを伝えることは、彼女の傷口に触れることにもなりかねない。 たとえ伝えたとしても、受け入れてもらえるとは思えなかった。それどころか、新たな悩みを抱えさせてしまう可能性の方が高い。 それは、亮太の望むことではない。 愛する奈葉に、自…
◆ 一から作る世界 堀内は、山肌を指で撫でながら続ける。「山は、スタイロフォームを使っていない。尾根をベニヤから切り出し、金網を張って、石膏で固めたものなんだよ。樹木も既製品なんてなかったから、針金で幹と枝を作り、スポンジを刻んで付け、色を加えて葉を表現した。手前に伸びる畑の畝は、段ボールを割いて表現する、古くからのやり方さ」話を聞きながら、奈葉は胸の奥が少し熱くなるのを感じた。自分は、既製品に手を加えただけじゃないかと。だけど、堀内が語る「一から作る世界」の深さには、どこか別の重みがあった。そこには、あの日に森下が真鍮板から車体を切り出す姿とも重なる、クラフツマンとしての矜持が窺えた。模型を…
本屋さんでTMS(鉄道模型趣味)3月号の表紙を見て、家でも似たようような景色が出来ないかと思い、帰宅して撮影してみました。 機関車は天賞堂の真鍮製C57-180号機(2023年製)、駅舎は梅桜堂のキットを加工、乗客
◆冬の例会 コミュニティセンターの2階にある会議室では、2月の例会が始まろうとしていた。 窓の外は、冷たい冬の曇り空。 室内には暖房の乾いた空気と、運び込まれたモジュールレイアウトから漂う木の匂いが混じっている。 メンバーたちが、長テーブルを口の字に並べながら、慌ただしく設営を進めていた。 その一角で、森下が腕時計をちらりと見て、相原に小声で眉をひそめていう。 「副代表、どこに行っていたんだ」 「すみません、ちょっと亮太と雑談をしていまして……」 相原は、苦笑いを浮かべながら答える。 「まぁいい、始めてくれ」 森下は小さくうなずいた。 相原は会議室を見渡し、作業を続けているメンバーたちの様子を…
◆チークネイル レイルフレンズの例会は、いつも2階にある会議室で開かれている。 エントランス脇のエレベーター前で、奈葉と亮太はモジュールを載せた台車を止めた。奈葉がごく自然な仕草で手を伸ばし、「2」のボタンを押す。 その指先を見た瞬間、亮太の胸が小さく跳ねた。 ――淡いチーク色のネイル。 ほんのり艶を帯びた指先は、それまでの奈葉とは、どこか別人のように思えた。 《「あ、レイアウト作るときって、紙粘土とかボンドとか使うじゃないですか。ネイルしてると、すぐダメになっちゃうので……」》 少し照れながら、ネイルをしない理由を話してくれた日のことを思い出す。 (あの頃の奈葉さん……どこへ行ってしまったん…
◆ 静かな部屋に響く通知音 作業机の上には、組みかけのモジュールが置かれている。窓の外は冬の夜、部屋には静けさが戻っていた。 奈葉は椅子の背にもたれ、小さく息をつき、そっと目を閉じる。 頭の中にあるのは、モジュールレイアウトにある高台の仕上げと、照明の配線処理だった。 そのとき、スマホが短く鳴った。LINEの通知音だ。 画面には、グループ「テツモとお寿司」の表示。 奈葉が開くと、相原からの連絡だった。 『相原です、寒い毎日が続きますね。2月の例会は、以前お話したとおり非公開の運転会になります。当日は、5月のショッピングモールでの公開運転会に向けて、打ち合わせや準備を行う予定です。 佐橋くんのモ…
◆午後の店内 午後の店内は、どこか音が少ない。聞こえるのは、壁に掛けられた時計の秒針と、遠くで鳴る踏切の音だけだった。 亮太が店を出てしばらくして、山城はガラスケースの前で手を止めた。拭いたはずの角に、うっすらと指紋が残っている。 (昔は、こういうところが見えなかった) 若い頃、店に立ってはいても、心はいつも別の場所にあった。 完成しなかった模型。最後まで読み終えなかった小説。そして、名前を呼ぶ前に、いなくなった人まで。 山城は、壁の時計を見上げる。秒針が、静かに円を描いていくのを、ただ眺めていた。 ◆回想 ― 奈葉の部屋 その動きを追ううちに、ふと、あの日のことを思い出す。奈葉の部屋で、棚に…
◆独身男の休日 休日の昼前。亮太はベッドに寝転がり、スマホを眺めていた。 独身男の気楽さからか、休日の午前中は朝食も摂らず、だらだらと過ごすのがすっかり習慣になっている。 空腹を覚え、ふと時計を見ると、もう11時を過ぎていた。視線をずらすと、部屋の隅に置かれたランドリーバスケットが目に入る。 脱ぎ捨てたままの一週間分の衣類が、無言で自分を見返している。 (あぁ、今日こそはコインランドリーに行かないとな……) 腹も減った。洗濯機を回している間に、いつものラーメンでも食べればいい。 そう考えて、亮太は着替えて部屋を出た。 ◆ 回らない洗濯機と、残る写真 コインランドリーに行くと、休日の午前中らしく…
◆配線の確認 山城が今までの工程を確認し、アクセサリー電源の作業に入った。 「じゃあ、モジュールの背面にKATOの『分岐コネクター』を付けて、そこから給電する形でいいかな?」 「はい。それでお願いします」 山城は、手際よく電動ドリルで穴を開けた。 そして、ベースの脇からKATOの「ユニトラックアクセサリーアダプター延長コード」を引き出しておく。 一方、「高台ブロック」の背面に「分岐コネクター」を付け、必要に応じて接続できるように整えた。 最後に予備のコードをベース下へと這わせ、配線作業は一通り完了した。 「これで問題ないと思うけど……念のため、私のモジュールと繋いで確認しよう」 山城の言葉に、…
◆「何もない」風景 奈葉のモジュールは、クラブの規格に合わせた構成だ。中央を貫くのは、一直線に伸びる複線だけ。 その手前には、水を張ったばかりの田んぼ。冬の淡い光を受けて、静かに水面を反射している。 奥には、畝が整然と続く畑。 余計な建物はなく、あくまで“何もない”ことを大切にした風景だった。 山城の視線を感じたのか、奈葉が少し照れたようにいう。 「……模型店の方に、じっと見られると、さすがに恥ずかしいです」 「いやいや」 山城はすぐに首を振る。 「これは、よく考えて作られてるよ」 ◆水田の工作 そう前置きしてから、水田の方を指さした。 「水田は、KATOの『リアリスティックウォーター』だね」…
◆ 成人の日の午後 奈葉は、少し早めの昼食を済ませ、ひとり静かな時間を過ごしていた。 ダイニングテーブルの脇には、ほぼ完成したモジュールレイアウトが置いてある。 そして、膝の上には、先ほど取り外した「高台ブロック」が載っていた。 指先で、「高台ブロック」の底に付けたプラ角棒を撫でると、やさしい感触が返ってきた。 (……これは、ちゃんと取り外しできる) 奈葉は、心の中でそう確認する。そこは、頭の中で何度も考えては迷い、やり直した部分だった。風景としての見映えと、安定性。その両立に、もっとも時間を費やした部分でもあった。 ◆ インターホン ダイニングから差し込む冬の光の中で、奈葉はふと壁時計に目を…
◆ 元旦の遅い目覚め 奈葉は、目覚まし時計を見て、小さく息をついた。 もう、こんな時間か。 元旦――それを思い出して、慌てて起きる必要もなかった。 カーテンの隙間から射し込む光はやわらかく、外はすでに昼前の気配を帯びている。 ゆっくりとベッドから起き上がり、スリッパを引きずるようにしてリビングへと向かう。コーヒーメーカーのスイッチを入れると、低い唸り音が聞こえ、やがて香ばしい匂いが静かな部屋に満ちていった。 普段なら、もうデスクで仕事をしている時間だ。だが今日は、何かに追われるわけでもない。 淹れたてのコーヒーを手に、奈葉は窓際に立った。 郊外のマンションだけに、元旦の昼前は人影もまばらだ。車…
【連続乗車券で旅しよう ⑩】横浜「京急ミュージアム」を見学しました...
おはようございます。引き続き連続乗車券の旅、10話目です。この日は京急ミュージアムさんを初見学しております。横浜高速鉄道の新高島駅から歩いてすぐ。なんと素晴ら…
◆ 燗酒の作法 森下は、丸ストーブの前に腰を下ろし、ライターで火を点けた。赤い炎が筒の中でゆらゆらと揺れ、陽炎のように揺らめきながら、少しずつ部屋の空気を温めていく。 「私はね……エアコンより、やっぱり火を使った暖房の方が好きなんだ」 そういいながら森下は、徳利に入った純米酒を手に取り、それをそっと丸ストーブの上に置かれたやかんの中へ沈めた。 「情緒がありますからね」 向かいに腰を下ろした山城が、赤く燃える炎から目を離さずに応じる。 「無機質な温風より、こうして火を眺めている方が……どこか、しんみりします」 ◆ 雪夜の肴 「まだ船盛には、ずいぶん刺身が残ってるな」 森下は笑いながら、卓の端に置…
◆夜の静けさ 奈葉たちの若い面々を見送ったあと、森下の家には、夜の静けさが戻っていた。 玄関先の冷たい空気がようやく落ち着いたころ、弥生が、ふっと息をつく。 「……若い人たちが帰ると、家の中が急に広く感じますね」 しんみりとした声だった。 それを聞いて、山城が肩をすくめるように笑う。 「それ、私も“若い人”の側に入れてもらえませんかね。奥さんから見て」 わざとらしく首をかしげる仕草に、弥生は一瞬考え込む素振りを見せた。 「店長さんが、ですか?」 そして、含み笑いを浮かべる。 「……微妙、ですねぇ」 山城は苦笑しながら頭をかく。 「自分では、まだ若いつもりなんですけどね」 ◆玄関から居間へ その…
◆初雪の夜 相原が玄関のドアを開けると、ひんやりとした空気が流れ込んだ。外では、白いものが静かに舞っている。 「初雪だよ」 亮太が、思わず声を上げた。 「どうりで、急に冷え込んだわけですね」 その言葉とは対照的に、奈葉は、庭先に降る雪をじっと見つめた。 (——見てはいけないものを、見てしまった) 胸の奥が、きゅっと縮む。視界に入ってくる白さが、過去の記憶を呼び覚ますようだった。 はっとしたように視線を逸らす。だが、足は前へ動かない。 いや——動けなかった。 ◆弥生の傘 その様子に気づき、弥生がそっと奈葉の前にしゃがみ込む。 「お嬢さん……大丈夫?」 優しい声が、奈葉の耳に届く。 「傘、持ってい…
◆ 地面派の真打ち登場 「――そうだ、いい機会だな」 レイアウトの端に腰を下ろしていた森下が、ふと顔を上げた。何かを思いついたとき特有の、あの穏やかな笑みだった。 「ここに一本、留置線があるだろう」 そういって指さしたのは、まだ地面処理の施されていない一角だった。コルク道床の上に敷かれたフレキシブルレールは、バラストも撒かれておらず、いかにも“これから”という表情をしている。 「佐橋くん。ここに、バラストを撒いてごらん」 あまりに唐突な指名に、奈葉は一瞬、言葉を失った。 「え……わ、私が、ですか?」 「うん。君のモジュールレイアウトは、フレキを使うんだろう。なら、避けては通れない作業だ」 森下…
◆ D51、峠へ 森下がパワーパックのツマミを回すと、D51の牽く混合列車は汽笛を鳴らし、ドラフト音を響かせて動き出した。 ゆっくりとホームから離れ、出発信号機を赤く変えて進んで行く。 重量感があるのだろう、列車からは「カタン、カタン」とポイントを渡る音が響き、カンタムサウンドと良く溶け合う。 列車は、右にカーブしながら勾配をゆっくりと登り、トンネルの中へ吸い込まれるように消えていく。 トンネルの中からは、D51のブラスト音がこもって聞こえ、より実感的になる。 レイアウトの中ほどからD51が姿を現すと、正面にあるスイッチバックへと入っていく。 ◆ スイッチバックという見せ場 森下がレイアウトの…
◆時を告げる柱時計 森下は、壁に掛かった柱時計にちらりと目をやった。秒針が一周し、静かな音を立てて次の時間を刻む。 「もう、こんな時間か」 そういってから、卓を囲む4人の顔を見渡した。 「みんな、寿司もひととおり食べ終えたようだな。――では、お待ちかねだ。レイアウトの紹介をしよう」 その言葉に、空気が少し引き締まる。 「はい」 奈葉は背筋を伸ばし、座り直した。 「お寿司も本当に美味しかったですが……代表のHOゲージレイアウトのお話、ずっと楽しみにしていました」 目を輝かせる奈葉に、森下は穏やかに笑う。 「そういってもらえると、今晩は招いた甲斐もあるよ」 ◆和室から始まった風景 森下は中腰になり…
◆レイアウトのある部屋へ 森下の真鍮工作がひと段落し、作業台に載った工具を片付け始めたころだった。 和やかな雑談が続く中、ドアを控えめにノックする音が響いた。 森下が顔を上げる。 「おう、どうした」 ドアを開けて顔を覗かせたのは、夫人の弥生だった。 穏やかな笑みを浮かべ、部屋の中を見渡してから口を開く。 「みなさん、お待ちかねのお寿司が届きましたよ。 隣の……電車が走るジオラマの部屋に用意してあります」 森下は眉をひそめる。 「だから、その『電車が走るジオラマ』っていうの、何とかならんのかね」 「でも、そのとおりでしょう?」 弥生は悪びれもせず肩をすくめる。 「本当なら、せっかく『鮨匠』さんの…
◆工作机に灯る白い光 森下はゆっくりと椅子に腰を下ろし、工作机の脇にあるLEDスタンドに手を伸ばした。スイッチを入れると、白い光が机の上を一気に照らし出す。 刃先の異なるヤスリ、使い込まれた大小のドライバー、並べられた工具たちが、きらりと輝くように見えた。 奈葉は思わず息を呑む。 (……きれいだ) それは「整っている」という意味ではなかった。机の上に並ぶ工具は、どれも新品ではない。角は丸く、柄には微かな傷があり、触れられてきた時間だけが、確かにそこに残っていた。 ◆一枚の真鍮板 森下は、脇の収納ケースから、深みのある飴色の真鍮板を一枚取り出した。 「これが、オハ51のボディーになる」 そういっ…
◆ 森下のHOゲージ工作室 森下がドアを開けると、洋間6畳ほどの部屋が広がっていた。窓際には、かつて長男が使っていたであろう木製の学習机が据えられ、今はすっかり工作台として姿を変えている。 天板の上には、拡大鏡付きのLEDスタンド。その端には、濃い緑色の万力がしっかりと固定されていた。机の奥には、ドライバーやピンセット、それにヤスリが用途別に分けられ、アルミ缶に収められている。 壁際にはスチールキャビネット。その横のメッシュパネルには、糸ノコやペンチが整然と吊るされ、無機質になりがちな工作室に、どこか生活の匂いを与えている。 ◆ 機械の前に立つ男 森下が一歩中へ入り、窓の反対側を見る。 そこに…
◆ 冬色の住宅街へ 奈葉たちを乗せた森下の車は、やがて幹線道路を離れ、住宅街へと入っていった。時刻はまだ夕方4時だというのに、冬の空は早くも色を失い、街全体が薄い灰色に包まれている。 森下はウインカーを出し、細い路地へとハンドルを切る。 「この辺りは静かだろ」 バックミラー越しにそういって、森下は軽く笑った。 奈葉は、雨に濡れた生け垣や、整えられた玄関先の鉢植えに、どこか“住まい手の性格”を感じ取っていた。 車はやがて、一軒の家の前でゆっくりと減速した。 周囲の家よりも一回り大きく、落ち着いた色合いの外壁。派手さはないが、きちんと手入れされた庭木が、雨に濡れて静かに佇んでいる。 ◆ 歓迎の空気…
◆拍手のあとで 奈葉が、モジュールレイアウトの説明を終えると、会議室からは思いもしなかった大きな拍手が広がる。 彼女が軽く一礼して座ると、相原はそれを確認してから、卓上のマイクを手にする。 「佐橋さん、ご説明ありがとうございました。 完成したモジュールを拝見できるのを、皆さんと同じく楽しみにしています」 ◆次の例会と、ひとつ先の未来 一拍置き、事務的な口調に戻る。 「では最後に、来年の公開運転会の予定についてお知らせします。 毎年1月に行ってきた新春公開運転会ですが、コミュニティセンターが改修工事に入るため、来年は休会とします」 会議室の空気が、わずかに動いた。 「次の例会は、2月の第2日曜日…
ランキング参加中鉄道模型 ランキング参加中Nゲージ愛好会 ◆例会前の会議室 奈葉が会議室へ入ると、長テーブルが口の字に配置されていた。 その一角では、森下代表と相原副代表が資料を広げて打ち合わせをしている。 少し迷ってから、奈葉は遠慮がちに声をかける。 「こんにちは……」 相原が顔を上げ、眼鏡の奥でにこりと笑った。 「あぁ、佐橋くん、いらっしゃい」 森下も顔を上げ、 「よぉっ!」 と、短く手を挙げて会釈する。 その仕草はぞんざいなのに、どこか親しみのある優しさがにじんでいた。 「あの……私、どこに座れば……」 いいかけると、相原が肩をすくめる。 「どこでも自由だよ。クラブの集まりだから、上座も…
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