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横道誠『なぜスナフキンは旅をし、ミイは他人を気にせず、ムーミン一家は水辺を好むのか』
たったひとつの正解、というものは用意されておらず、読者の数だけの答えがある。というのが、時代を越えて読み継がれる名作、と称されるような作品の多くに当てはまる要素のひとつだと私は思う。 「これだ!」と正解を突き付けてくるような作品も私は好きだけれども、実際のところこれってどういうことなんですかねーという読者の問いに「さあね」とはぐらかすような作品が、私は大好きだ。 すでに時代を越えて読み継がれているムーミン小説はこの「さあね系小説」に分類されると思う。 大切なことを描かずに描き、重要なことをさらりと語る。想像力を働かせるために用意されているような余白が、ムーミン小説には溢れている。 思い込みの激…
新型コロナウイルスが蔓延するよりも数年前の年明け、高校時代の友人らとコーヒー店で話をしている時に、生きづらさ、の話題になった。 我々も、今はこうやっていい歳したおじさんとしてなんとかぶざまに存在しているけれども、なんか色々と、本当に色々と、困難だったよねー特に思春期。みたいな会話をしていたと思う。 そんな流れで、私が、「でもさ、そうでもない人はそうでもないらしいんだよ。というか大多数の人が、そうでもないらしいんだよ、どうも」と言うと、友人の一人が驚いて叫んだ。 「死にたいって思わないで大人になった人なんているの!?」 彼の常識外れにでかい声で、新年で賑わうほぼ満席のコメダ珈琲店が、一瞬だけ静ま…