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報道に因りますと、ロシア外務省のザハロワ情報局長は、米軍による日本国への核配備について言及し、‘地域の安定を崩壊させる’として強く牽制したそうです。ロシア側の威嚇とも言える発言の背景には、石破首相によるアジア版NATO創設、並びに、核シェアリング等の提唱があり、この動きを未然に抑える意図があったとも解説されています。石破首相の核シェアリング論は、‘核の傘’が閉じられる事態への対処をも含む踏み込んだ内容を特徴としています。現状にあって、日本国内では、仮に日本国がロシア、中国、北朝鮮等の核保有国から核攻撃を受けた場合、アメリカが、自国への報復核攻撃を覚悟してまで日本国のために相手国に核を使用するはずはない、とする懸念が、水面下にあって静かに広がっていました。そこには、同盟国に対する根強い不信感があります。平時...日本国の核の意思決定参加要求が問い詰める先は?
体制という言葉の語感には、良しにつけ悪しきにつけ、どこか安定性をイメージさせるものがあります。NPT体制につきましても、IAEAによる査察制度を伴う形で締約国に核兵器の不拡散を法的に義務付けているのですから、人々が、非人道的な兵器である核の脅威を取り除き、国際社会の安定に貢献していると信じ込むのも無理からぬことです。しかしながら、‘核なき世界’の理想を目指して発足したNPT体制は、現実にあって国際社会に安定と平和をもたらしているのでしょうか。平和的解決手段、即ち、合意や法的解決のための制度は別として、国際社会において、力による安定を求めるならば、大きくは(1)支配型と(2)従属型(3)均衡型の三者に分けることが出来ます(‘司法型’は警察組織とセットですので、ここでは扱わない・・・)。支配型は、力に勝る国が...NPT体制の不安定な構造-計画された不安定性?
力には破壊力と抑止力との二面性がありますので、常々、武器類の禁止をめぐっては議論が起きます。アメリカにあって、無辜の市民が犠牲となる痛ましい銃事件が度々発生しても、銃禁止一色に世論が傾かない背景には、銃なくして自らの身を守ることができない現実があります。銃を保持していれば、銃撃された時には応戦することができますし、銃を見せて‘動くな’と叫べば、相手に犯行を断念させることもできます。この場合、誰も、護身や犯罪の抑止のために銃を所持している人を、道徳的に批判したり、重大な罪として責めたりはしません。犯罪者側にも、自らが銃を使って犯罪を犯せば銃によって反撃されるリスクがありますので、犯罪を自制する強い抑止力ともなるのです。とりわけ、アメリカのように広大な土地に人々が離れ住み、凶悪な事件が起きても警察官が直ぐには...‘銃刀法’になれない核兵器禁止条約-成立要件の欠如
近年、ノーベル平和賞の受賞者には、バラク・オバマ元米大統領やICANなど、核兵器廃絶に尽力した人たちが目立つようになりました。日本国では、唯一の被爆国ですので、戦後、一貫して反核運動が盛んであったのですが、国際社会を見ましても、核兵器に対する反対運動は強い影響力を発揮してきました。核廃絶を求める同運動は、平和を求める人類の良心の声のようにも聞えます。しかしながら、その一方で、核兵器を特定国にのみ保有を許す現行のNPT体制が、その実、全世界を対象とした核の配分による支配体制の構築のための戦略であったとする視点からしますと、同運動は、平和に資するものとして無条件に賞賛されるべきものでもないように思えてきます。もちろん、核廃絶運動に取り組む人々の大多数は、平和を願う気持ちから同運動に参加しているのでしょう。組織...反戦より反核に熱心な奇妙な平和主義者たち
核兵器については、これまで、攻撃兵器にして大量破壊兵器という一面からしか議論されない状況が続いてきました。この延長線上にNPT体制の成立や核兵器廃絶運動があり、何れも、その前提として核兵器=非人道的兵器=絶対悪というイメージがすり込まれてきました。いわば疑うことの許されない‘絶対真理’の如くと化し、核の存在に拒絶反応を示す人も少なくありません。しかしながら、核兵器に限らず、軍事力には、攻撃力と抑止力という二面性がありますので、核兵器に対する視点の攻撃面への偏りは、核兵器の効果や作用の全体像を見失わせ、むしろ、悪用されるリスクを高めていると言えましょう。実際に、核兵器国による非核兵器国に対する傲慢な態度には、目に余るものがあります。そこで、先ずもって核兵器の抑止力についてもその効果を認めるべきであり(実際に...核兵器という世界支配の道具-核の配分権の問題
第二次世界大戦末期、連合国側のみならず、枢軸国側でも核兵器の開発が急がれていました。現実には核兵器開発競争はアメリカが先んじることとなったのですが、可能性としては、日本国のみの開発成功、並びに、日米両国による同時開発のケースもあり得ないわけではありませんでした。昨日の記事では、前者について考えてみたのですが、本日は、後者の日米同時開発のケースについて論じたいと思います。原爆投下に関する違法阻却事由としては、アメリカにおきましては、核の抑止力による人類救済論が一般的です。悪しき行為でありながらも、そこに神の采配とも称されるべき正義を見出そうとする見解です。‘神は、悪からも善を引き出す’と申しますので、人類救済論は、原爆を投下した側となるアメリカ国民を強く惹きつけるのも理解に難くはありません。結果論からすれば...日米による核兵器同時開発のケースを考える
テロと正当防衛の難しい問題-撲滅には平和解決の制度構築が必要
イスラエルによるガザ地区への攻撃が激化するにつれ、ハマスから奇襲テロ攻撃を受けたイスラエルに対する同情論は萎み、今では、同国に対する批判の声のほうが高まっています。世論の変調に焦りを感じたのか、イスラエルのコーヘン外相は、イスラエルとハマスの両者を等しく批判した国連のグテーレス事務総長の資質を問うに及んでいます。テロ、とりわけ非戦闘員や民間人の無差別殺人は当然に許されるはずもなく、糾弾されて当然なのですが、その一方で、正当防衛権の文脈からしますと、なかなか難しい問題が含まれているように思えます。戦争とは、人類社会における集団、特に国家間の、他方に対する一方的な要求を含めた紛争や対立に際しての、力を手段とする解決方法の一つです。力に勝る側が、相手方を自らの意思を受け入れざるを得ない状況に至らしめることで、勝...テロと正当防衛の難しい問題-撲滅には平和解決の制度構築が必要
パレスチナガザ地区の完全制圧を企図しているイスラエルは、同地区に対する核兵器の使用をも視野に入れているのかもしれません。同地区の地下に張り巡らされているトンネルは最も深い箇所で地下80メートルともされ、通常の地中貫通爆弾では破壊できないからです。戦術核を使用すれば目的を達成できるのですから、少なくともイスラエル軍の核戦略上の選択肢の一つではあるのでしょう。何と申しましても、公表はされてはいないものの、イスラエルは、核兵器を保有しているのですから。先日、核兵器使用を‘選択肢の一つ’として仄めかしたアミハイ・エリヤフエルサレム問題・遺産相は、ネタニヤフ首相によって一時停職の処分を受けたのも、‘フェイク発信’が咎められたというよりも、迂闊にも極秘作戦を漏らしてしまったからなのかもしれません。しかも、同発言は、イ...イスラエルに見るNPT体制のパラドクス
極めて近い将来において、開発競争を経て指向性エネルギー兵器は実用化されることでしょう。そして、同兵器の登場は、核兵器をも越える脅威となり、人類を地獄に突き落とすかもしれません。しかしながらその一方で、使い方を間違えない、即ち、防衛兵器に特化、限定すれば、人類を戦争の恐怖から完全に解放する可能性をも秘めていると言えます。何れにしても、現在はまさに核兵器を主軸とするNPT体制から別の体制へと移る過渡期にあり、人類は重大な岐路に立たされていると言えましょう。そして、過去と現在と未来が混在する過渡期ほど、不安的な時期はありません。過去の延長線上において現在の事柄を決断することができない一方で、未定の未来のみを想定してこれを決めることもできないからです。言い換えますと、過去と未来との狭間にあって、過去に対応しつつ、...過渡期の安全保障政策とは-指向性エネルギー兵器の出現
指向性エネルギー兵器が備えている光子と並ぶ高速性、並びに、近距離ほど威力を発揮し得る性質は、同兵器が防衛兵器に適していることを示しています。仮に、ミサイル発射を監視する人工衛星と同兵器を組み合わせたミサイル迎撃システムが完成すれば、核の脅威を取り除くのみならず、人類に多大な犠牲を強いてきた戦争の歴史にようやく幕が下りるかもしれません。そして、その行方は、指向性エネルギー兵器の利用方法、即ち、平和目的に限定して利用し得るかどうか、にかかっていると言えましょう。当然に、同兵器は、逆の方向に悪用されるリスクが認められるからです。それでは、指向性エネルギー兵器の平和利用には、どのような妨害要因があるのでしょうか。中国のレーザ-兵器開発において顕著に見られるように、先ずもって、同技術は攻撃兵器として研究されているこ...指向性エネルギー兵器の平和利用の妨害要因
現在、指向性エネルギー兵器の開発は、世界軍事力ランキングにあって上位を占めるような軍事大国を中心に進められています。日本国もその一国であり、先日、日米両国政府が共同プロジェクトとして開発に合意した極超音速ミサイル迎撃システムでも、同技術の導入が予測されます。中国やロシア等によるミサイル発射を瞬時に把握するためには、これらの諸国の領空を越える宇宙空間からの監視が必要ですので、衛星ネットワークと指向性エネルギー兵器を組み合わせは、グローバルな視点からは極めて合理的な発想と言えましょう。計画されている「衛星コンステレーション」は、地球全体のカバーを目的としているのですが、一国の防衛並びに安全保障の観点からしますと、必ずしもこれほどに大規模なシステムを要しないのかもしれません。監視対象が地球全体でなければ、単体の...非核兵器国による指向性エネルギー兵器の開発
先日、訪米した日本国の岸田首相とアメリカのバイデン大統領との間で、日米首脳会談が開かれました。両国首脳会談は、水面下で進められてきた各種分野における日米協力のビジュアル化に過ぎず、周到な根回しや調整によって合意内容は事前に決まっていたようです。同会談の合意事項の一つが、中国やロシアが開発において先行しているとされる極超音速ミサイルを迎撃する宇宙空間システムの共同開発です。10年以内、即ち、2033年までの完成を目指しているのですが、同システムの出現によって、人類は重大な局面を迎えるのではないかと思うのです。先ずもって指摘されるのは、同システムによる核兵器の無力化です。報道に依りますと、同共同開発プロジェクトが狙いを定めるターゲットは、音速よりも高速で飛来する極超音速ミサイルです。とは申しますものの、同ミサ...宇宙空間ミサイル迎撃システムによる核の無力化問題
‘ウクライナに対して核兵器を供与すべき’とでも主張しようものなら、平和主義者のみならず、‘世界’というものから強い反発を受けそうです。大手メディアをはじめ、各国政府もからもウクライナの核武装はあり得ない、として即座に却下することでしょう。しかしながら、軍事大国に対しても抑止力を発揮する核の効果を考慮しますと、ウクライナの核武装は、最初から選択肢から外すのは早計であるように思えます。それでは、ウクライナの核武装は論理的に正当化できるのでしょうか。第1に、NPTのように戦争当事国の一方に対してのみ兵器に関する制約を課すことは、ナンセンスの極みです。かつて、チンギス・ハーンが世界帝国を建設し得たのはモンゴルの機動力に優れた騎馬部隊に追うところが大きく、銃火器の発明とその使用が世界史を大きく変えたことはよく知られ...ウクライナの核武装は正当化できるのか?
昨年の2022年6月、民間の人権団体であるアムネスティ・インターナショナルが、ロシア軍がハルキウでクラスター爆弾を使用したとする調査報告書を発表しました。クラスター爆弾とは、多数の小型弾や地雷を搭載した大型爆弾であり、これを使用しますと、広範囲に亘って殺傷・破壊効果が及びます。建物に対する破壊力は低いものの、絨毯爆撃と同様の殺傷力を有するため、投下された場合には多数の民間人の被害も予測されるのです。このため、国際社会は非人道的兵器かつ復興の阻害要因として同兵器の規制・禁止の方向へと向かい、2010年8月には「クラスター爆弾禁止条約(オスロ条約)」も発効しました。オスロ条約では、クラスター爆弾について、その使用、開発、製造、取得、貯蔵、保持、並びに移譲の何れの行為が禁止されています。日本国も発効に先立って加...ウクライナの米提供クラスター爆弾使用の行方
今月の6月15日、ロシアとウクライナとの間で戦術核配備に関する協定書が調印されました。ベラルーシは、地理的にはロシアともウクライナとも国境を接してはいるものの、紛争当事国ではありません。ロシア側の言い分とは、NATO側が反転攻勢を狙ってウクライナへの軍事支援を強化している以上、自らの陣営も攻守両面において軍備増強を図らねばならず、NATOの最前線となるポーランドとも国境を接しているベラルーシへの核配備もその一環である、ということなのでしょう。言い換えますと、ロシアによる同盟国への核兵器配備の原因を造ったのはNATO側であり、最悪の場合、今後、紛争がエスカレーションして第三次世界大戦並びに核戦争にまで発展したとしても、その責任を負うべきはNATOであると主張しているのです。かくして、ウクライナ紛争は、遂に当...ベラルーシ核配備がウクライナ核武装を実現する?
G7サミットの広島開催が決定して以来、日本国の岸田首相は、同サミットが歴史的なイベントとして記憶されるよう、演出には余念がなかったようです。広島が被爆地と言うこともあり、「広島宣言」によって「核なき世界」に向けた力強いメッセージを発すると共に、ウクライナのゼレンスキー大統領まで参加したのですから。主役のはずの岸田首相の影も薄くなってしまったのですが、もちろん、同イベントの脚本家は、アメリカ、あるいは、その背後にG7を操る世界権力であったのでしょう。日本国政府が、独自の判断で紛争当事国のトップを招けるはずもなく、フランス政府専用機での到着も既にお膳立てができていた証しとも言えます。ゼレンスキー大統領の突然のサプライズ訪日は、内外に一定のインパクトを与えたのですが、この訪問、改めて国際社会の欺瞞を見せつけてし...広島サミットが明かす国際社会の欺瞞
次期アメリカ大統領選挙にあって台風の目となるのは、良きにつけ、悪しきにつけ民主党のロバート・ケネディJr氏であるのかもしれません。その理由は、民主党員でありながら、最有力とされる共和党のトランプ前大統領と足並みを揃えるかのように、全世界からの米軍撤退を主張しているからです。ロバート・ケネディJr氏が民主党の統一候補に選出されるかどうかは定かではありませんが、共和党と民主党の両候補が共に同方向を目指すとしますと、どちらが当選したとしても、第二次世界大戦後に成立した戦後体制は、大きな転換期を迎えることとなります。それでは、全世界の諸国から米軍が撤退するとしますと、その後の国際社会は、どのような方向に変化を遂げてゆくのでしょうか。理想とすべきは、国際社会にあって法の支配の原則が確立し、主権平等、民族自決(国民に...米軍撤回後の安全保障とは?
今日の国民国家体系では、国家間の対等性を意味する主権平等が基本原則として確立しています。しかしながら、この原則はあくまでも‘建前’であって、実際には、国力の差により国家間関係が対等ではなくなるケースも少なくありません。軍事力を基準として国際社会全体と構造的に理解しようとする現実主義の立場からも、世界は、パワーを有する大国を‘極’とする、超大国による二極構造や三極構造、あるいは、幾つかの大国によって構成される多極構造として説明されます。軍事ではなくマネーをパワーの主要な源泉と見なすならば、もしかしますと、世界は、既に金融・経済財閥が牛耳る一極支配に近づいているのかもしれません。何れにしましても、その源泉が何であれ、パワーというものは個々の関係性に多大な影響を与えますので、平等原則を損なう作用があります。否、...核保有は主権平等を実現する-核は多面的に評価を
核兵器につきましては、その破壊力の凄まじさ、並びに、都市攻撃を前提とした民間人殺戮の非人道性から、この世から亡くなるべき存在として広く認識されています。このため、国際社会では核技術の拡散を防ぐために核拡散防止条約が成立し、1970年代からNPT体制が構築されると共に、昨今では、核兵器の全面廃絶を目指す核兵器禁止条約まで出現しています。核拡散防止条約であれ、核兵器禁止条約であれ、少数かゼロかの違いがあっても、何れの条約も、核兵器=絶対悪の構図からのアプローチです。しかしながら、両条約とも、一つの重大な側面を見落としているように思えます。それは、既に核を保有する核兵器国が‘善’である保障はどこにもない、という点です。NPT体制の成立に際して、アメリカをはじめ核保有国が他の諸国に核保有の道を断念させるために使っ...‘悪党’のみが核を保有する世界
中国の習近平国家主席が台湾の武力併合をも辞さない構えを見せている今日、台湾有事が、日本国の安全を直接的に脅かす事態であることは、誰もが認めるところです。アメリカのバイデン政権はウクライナ紛争への介入の度を強めており、同政権の介入主義的な方針からすれば、台湾有事に際して同様の対応を採ることが予測されます。台湾有事につきましては、あらゆる手を尽くしてこれを未然に防ぐのが最善の策です。平和的な解決手段としては、台湾の国際法上の独立的地位を確認訴訟を通して確立するという方策もあるのですが、各国の政治家の怠慢や中国、あるいは、世界権力の妨害により、阻止されてしまう可能性があります。このため、多方面からのアプローチを同時に進める必要があるのですが、軍事的手段としては、抑止力に期待する同国の核保有があります。そして、核...核保有が日本国の戦場化を防ぐ-台湾有事への対応
NPT体制とは、「オセロゲーム(リバーシ)」に喩えれば、初期設定において核兵器国によってゲーム板の四隅に既に石が置かれているようなものです。同ゲームでは、四隅に自らの石を置いたプレーヤーが圧倒的に有利となり、最終局面で勝敗を逆転させることができます。これをNPT体制に当てはめますと、核兵器国は、既に四隅を確保しているため、対戦相手となる非核兵器国が如何に通常兵器で善戦しても、最後の局面では一気に勝敗がひっくり返されてしまうのです。NPT体制における核兵器国の絶対的な非核兵器国に対する優位性は、核兵器国による軍事行動を引き起こす要因ともなり得ます。今般のウクライナ危機についても、ウクライナが「ブダベスト覚書」に基づいて核放棄に応じていなければ、ロシアは軍事介入を控えたであろうとする憶測があります。非核兵器国...ウクライナ紛争が示唆する台湾有事未然防止策
ウクライナ紛争については、抑止面においても強力な手段となる核武装が、新たな局面を開く可能性があります。不法に核を保有するに至ったかの北朝鮮でさえ、軍事大国アメリカとの直接交渉を実現しており、核保有には、攻撃に対する抑止効果のみならず、当事国双方に対等の立場を与えるという意味において、交渉促進効果も期待されるからです。ところが、不思議なことに、ウクライナのゼレンスキー大統領は、NATO諸国に対して主力戦車では物足りず、戦闘機や長距離ミサイルの供与を求めながら、決して核兵器の供与を言い出しません。ウクライナ側も核兵器を保有すれば、ロシアとの間に‘核の平和’が実現する道も開ける可能性があるにも拘わらず・・・。その一方で、ウクライナを支援するNATO側も、同国に対する核の提供については口をつぐんでいます。各国政府...歴史の転換点を迎えた人類-ウクライナ紛争への懐疑
今般のウクライナ紛争に関しては、ロシアのプーチン大統領のメンタリティーがその主要な要因として指摘されることも少なくありません。‘プーチン大統領は、もとより理性を失った狂人である’、あるいは、‘プーチン大統領は進行がんあるいはパーキンソン病の治療が影響して精神に異常をきたしている’といった説も報じられています。同大統領に限らず、過去にあっても第二次世界大戦時のアドルフ・ヒトラーなども、狂人の一人としてしばしば名が上がります。しかしながら、戦争、とりわけ、世界大戦の原因を時の指導者個人に帰すのには無理があるように思えます。過去の二度の凄惨を極めた二度の世界大戦の経験にも拘わらず、今日、人類は、第三次世界大戦の危機に直面しています。指導者主因説では、プーチン大統領の戦争責任が問われることとなるのですが、現在のウ...第三次世界大戦の危機は国際社会の構造に由来する?
ウクライナ紛争をめぐっては、ロシアによる核兵器使用の如何が常々議論の的となってきました。アメリカ政府並びに軍部では、ロシアが戦術核のみを使用するケース、戦略核の使用に及ぶケース、両者を併用するケースなど、様々な事態を想定した対応が既に協議されているそうです。バイデン政権は明言を避けつつも、メディアや識者等の大方の見解では、何れにせよ、人類滅亡を意味しかねない核戦争への発展を怖れ、たとえロシアが核を使用したとしても、通常兵器によって対抗するものと予測されています。こうした核使用をめぐる一連の動きを見ますと、ウクライナのゼレンスキー大統領の判断は、‘悪しき前例’となりかねないと思うのです。それでは、何に対する‘悪しき前例’であるのか、と申しますと、核兵器国と非核兵器国との間で‘戦争’が起きたときの対応です。ウ...ウクライナは‘悪しき前例’?-コントロールされた戦争?
中国による台湾侵攻が現実味を帯びる中、日本国政府も、同国による軍事的脅威を根拠として防衛費増額に踏み切る方針を固めたようです。敵基地攻撃能力の保持や反撃力が議論されてはおりますが、政府やメディアの説明を聞いておりますと、最も重要な観点が抜け落ちているように思えます。それは、中国の核戦略です。泥沼化も懸念されているウクライナ紛争では、ロシアによる核兵器の先制使用の可能性が取り沙汰されることとなりました。その理由は、2020年6月にプーチン大統領が署名した「核抑止の分野におけるロシア連邦国家政策の基礎について(核抑止力の国家政策指針)」において示した核使用条件の一つに、「通常兵器によるロシアへの侵略により存立危機に瀕したとき」というものがあったからです。ロシア軍の劣勢を受けて、プーチン大統領も、核の先制使用に...中国の核戦略抜きの防衛議論は空論に
警察の主要な任務の一つは、現行犯への対応です。一般社会にありましても、殺傷事件が発生した場合、一〇〇当番による通報により警察がいち早く駆けつけ、一悶着の末に犯人逮捕で終わるのが一連の流れしてイメージされています。皆が事件の無事解決に安堵するのですが、よく考えてみますと、これで一件落着なのか、と申しますと、そうではないように思えます。殺人事件であれば、失われた尊い命は決して戻ってはこないからです。戦争におきましても同様であり、被害の不可逆性は否定のしようもありません。「核兵器使用禁止条約」における執行機能を考えるに際しましても、核兵器の先制使用が取り返しの付かない民間人虐殺をもたらす点には慎重な配慮を要しましょう。競争や競技の開始時点については必ずそれを同一にしなければならないように、勝負事にありましては、...核の先制問題-‘現行犯’への対応の限界
核兵器使用禁止条約は、ある特定の他害行為を全てのメンバーに禁じるための仕組みとはどのようなものなのか、という人類社会の基本的な問題を問いかけています。国内レベルであればこの答えは比較的簡単であり、大多数の人々が、先ずもって同行為を禁じる禁止法を根拠として活動する警察並びに司法機関の必要性を指摘することでしょう。しかしながら、国際レベルとなりますと、この国家モデルを採用することは極めて困難となります。治安維持機能のための制度設計という側面からしましても、今日の国際組織には、同機能を任せ得る機関は存在していません。国家モデルでは、中立的であり、かつ、独立的な警察機関がそれに付与された物理的な強制力をもって違反者の取り締まりを担いますが、国際社会にあっては、国連という組織はあっても、必ずしもそれが警察機能を提供...核兵器使用禁止条約における核使用の未然防止について
核兵器の廃絶は、一国でも核兵器を保有する国が出現した時点で、殆ど不可能な目的となります。言い換えますと、核兵器の保有を禁止したいならば、誰もがそれを手にしていない段階、即ち、全ての諸国の立場や条件が同一である状態で行なうべきであったと言えましょう。しかしながら、核兵器は、戦時下にあって双方による勝利を決定づけるための‘絶対兵器’の開発競争の過程で登場していますので、全面的な核兵器の禁止が可能な状態まで時計の針を逆回りに戻すことはできないのです。核兵器の廃絶が絶望的であるとしますと、核戦争を回避するには、どのようなシステムを造ればよいのでしょうか。先ずもって、NPTは、適用の一般性に欠けた不平等条約であるために一般国際法の要件を欠いています。NPT、否、核に関する行動規範を定める国際法を定めるならば、その選...NPT体制に代わる核戦争回避システムとは?
考えてもみますと、「非核兵器国」にとりましてNPT体制ほど不条理なものはないかもしれません。何故ならば、大航海時代来、軍事大国が競うように勢力圏を広げる傍ら、金融財閥を中心とした世界権力によるコントロールが浸透した結果こそ、今日の国際社会におけるNPT体制であるからです。核兵器を生み出したのはこれらの勢力であるにも拘わらず、その危険性を理由に中小国が核を保有することを‘国際犯罪化’し、自らはそれを寡占してしまったのです。これは、いわゆる自ら仕掛けて自らを利する‘マッチポンプ’であり、大多数の中小諸国は、核の抑止力を得ることも、核兵器国に対して正当防衛権を発動することも、事実上、封じられてしまいました。しかも、核技術は、原子力発電にも利用されますので、NPTは、「非核兵器国」のエネルギー供給手段をもコントロ...NPT体制の不条理ー核廃絶は不可能では?
NPT体制が内包する構造的欠陥は、今や誰の目にも明らかです。否、‘核なき世界’という理想郷へ誘う幻想が隠してきた実像が、核兵器国による核使用の可能性の高まりと共に、明確に姿を見せてきたと言っても過言ではありません。核戦争を未然に防止することを目的として成立したNPT体制は、制御システムとしてはあまりにも強度も耐性も不足しており、制度設計における決定的な誤りがあります。国内における法制度に照らしますと、先ずもって制度設計に際して必要となるのは、最低でも中立公平な立場が保障されている立法、執行、司法の三つの機能が必要とされます。そして、各々の機能を担う中立・公平な機関、あるいは、仕組みを設けなければ、法の実効性は殆ど期待できないのです。ところが、NPT体制を見ますと、立法段階である条約制定過程を見ますと、核兵...脆弱にして強固というNPT体制のパラドックス
NPT体制の致命的欠陥-何故ロシアの核使用問題が発生したのか
NPT体制とは、人類史上にあって最も破壊的で非人道的兵器とされる核兵器による戦争、即ち、核戦争を未然に防ぐための国際システムとして一般的には理解されています。同目的を実現するために、NPTでは、核兵器の保有のみならず、使用の前段階となるテクノロジーの開発並びに核ミサイルの運搬手段(ミサイル等・・・)をも規制の対象としております。核戦争の回避という目的は正しいのですが、今日の状況は理想からほど遠いばかりか、逆に安全保障上のリスクを高める方向に作用しているかのようです。それでは、同体制の逆機能の原因は、一体、どこにあるのでしょうか。第一に、NPTには、違反国を取り締まる仕組みが設けられていない点を挙げることができます。刑法がそうあるように、法律だけが存在していても、違反者がいなくなるわけではありません。警察と...NPT体制の致命的欠陥-何故ロシアの核使用問題が発生したのか
今日の国際社会ではNPT体制が成立しております。このため、現在、核を保有している国は、国連安保理の常任理事国をはじめとしたごく少数に過ぎません。このNPT体制下における核兵器保有国と非保有国との間の非対称性が、今日、国際の平和と安全を脅かす様々なリスクをもたらしているのですが、核保有国による同兵器の使用はあり得るだけに事態は深刻です。ところが、昨日の11月30日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアの核兵器使用について否定的な見解を示しています。同大統領の楽観的な発言は、一体、何を意味しているのでしょうか。ロシアの核戦略を見ますと、2020年6月2日にプーチン大統領は「核抑止の分野におけるロシア連邦国家政策の基礎について」を公表し、核使用条件を明らかにしています。回使用の条件とは、(1)ロシア及びその...ゼレンスキー大統領のロシア核不使用発言を考える
日本国政府は、NATO諸国の基準に合わせて防衛費をGDPの2%に当たる額まで増額する方針を示しています。財源は増税と言うことなのですが、防衛の分野では、予算の配分に際して合理性に徹しませんと、全くの無駄になってしまうことも稀ではありません。昨日、11月29日に米国防総省が発表した中国の軍事活動に関する年次報告書によりますと、中国は、1935年を目処に核兵器の保有数を現在の4倍強となる1500発まで増強する方針なそうです。‘持てる国’と‘持たざる国’との格差は広がるばかりなのですが、NPT体制の致命的な欠陥を考慮しますと、日本国政府の軍備増強は、無駄などころか日本国を滅亡させかねないリスクがあります。それでは、何故、軍備を増強すると日本国が消滅するのでしょうか。力には攻撃力と抑止力の両面がありますので、今般...防衛には合理性の徹底が必要では-勝てない戦争の問題