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「もちろんほんものではないし、わたしはほんものなど見たこともないが、しかしこれがほんものだと言われたらあっさり信じてしまうだろう。それほどのものだ」 (p.12 「Hunters And Collectors」より) 阿部和重さんの小説を読んでいると、私はいつも、ディズニーランドを連想する。 ひとたび園内に足を踏み入れると、外界のいっさいの風景は遮断されてしまうということに代表される、ディズニーランドの現実(を見えないようにする)へのこだわりと、 何年何月何時何分の何処そこにて、と実在する日時と場所を特定し、さらにその時の天候や実際にその近辺で起きていた出来事までもを小説内に取り組むという阿部…
「それとあの――」 小首をかしげて「なんですか?」と訊いてきたハナコに対し、横口健二はこう伝えた。 「いつかまた、かならず会いましょう」 するとハナコは一拍おいてから、このように応じた。 「はい、かならずまた会いましょう」 この約束を果たせる見こみは今のところは無にひとしい。が、そうであっても言っておくべきなのだと、横口健二は認識をあらためていた。それを言葉にして、何度でも言いつのることこそが長大な壁に風穴を開け、世界を変える唯一の方法になるのかもしれない。そんなふうに悟ったからだった。 (p.311-312) 2019年2月24日の夜、主人公の横口健二は、知人のヤクザ・沢田龍介から、奇妙な仕…