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しゃがまないと、中がのぞけないのではないか…と思っていたのだが、思ったよりも、中が広い。にじるように中に入ると、真ん中に帽子屋が立っている。「大丈夫よ、安心…
「ご名答!」 パチパチと楽しそうに、オジサンが手を叩く。この人たちは、やっぱりイビツだ…と、清子はそう思う。「ご託はいいから、早く見せてくれ」先生は、神林君の…
「だからぁ、なんだよ」 先生も、オジサンに向かって聞く。だが、当のオジサンの耳には、まったく素通りしているようだ。「じいさん…大丈夫かぁ? これって、犯罪なん…
「おい、何をした?」 オジサンが血相を変えて、宗太郎に詰め寄る。宗太郎が無言で、そのすき間に手を突っ込む。すると…大きな穴が姿を見せた。「あれは、なんだ?」さ…
「へぇ~ずいぶんスゴイこと、言うんだなぁ」 神林くんに向かって、先生は初めて、うっすらと笑みを浮かべる。「私は…じいさんを止めようとしたんだ。 いくら好きでも…
「あの人形は…あの人にソックリなんだ。 そして、あの女の子も…」 先生はチラリと、ベッドの上を見つめる。「あの」清子は先ほどから、気になっていることを口にする…
それにしても、不思議な隠し部屋だ。六畳くらいの大きさの部屋に、ベッドと肘掛椅子と、丸椅子が一つ。大きな人形と、飾り棚があるだけの部屋だ。人形の部屋か、という…
「おや、おやぁ~ 口で勝てなかったら、暴力ですかぁ? さすが…じいさんの可愛がる孫だけ、あるなぁ」 神林くんにつかまれたまま、オジサンはゲラゲラと笑う。「何だ…
「SFかよ」 いつの間にか、オジサンものぞき込んで、そうつぶやく。「まさか…死体?」カプセルに入っている女の人を見ると…みるみる清子が、顔色を失う。宗太郎が、…
「あっ」 一瞬の出来事に、一同は唖然としている。「そうだ! 中に、何があるんだ?」あわててオジサンが、のぞき込む。窓際に、天蓋のついたベッドがあり、その側にド…
「へぇ~ボクはてっきり、オジサンがここから、追い出そうとしている、 と思っていたよ」 鋭い目付きで、オジサンを見ると…神林君はピシャリと言い放つ。「何を言って…
その男は、ひょろっとした体形の、鉛筆のように背の高い男だ。オジサンとは、どこで知り合ったのかは、わからない。近所の人でも、この町の人でもなさそうだ。互いに目…
なんで自分に聞くんだ?宗太郎は短く「さぁ?」と答える。「まぁ、いい」オジサンは、咳払いを1つすると…「元々あそこで、何をしているのか、と噂になっていたんだ」…
ガランとしたその部屋には…人のいた気配は、どこにもない。空気も、どんよりとよどんでいる。時もそのまま、止まっているような…そんな感じがしていた。何もない部屋…
「えっ…」 清子は思わず、口を閉じる。「だって、リョウ…」あなた、それでいいの?くやしそうに、オジサンを振り返る。「それは…」言い淀んでいると「あなたらしくな…
「へぇ~そうなのかぁ?」 ふーん…相変わらず、オジサンのニヤニヤ笑いが止まらない。「ま、いいかあ」そう言うと、台の上にトンと腰を下ろす。「町の人たちの噂を聞い…
(なんだ?思わせぶりだなぁ) 宗太郎は、神林くんのことも気になるけれど…オジサンの様子が、どうしても気にかかる。なぜそんなに、余裕の表情でいられるのか、どうし…
「あなたたちって、ホント…仲が悪いのねぇ」 まるで犬猿の仲じゃないのよ、と清子はため息をつく。オジサンは、清子に向かって意味あり気にウィンクすると「そんなこと…
「あのジイサンは…親戚の中でも、鼻つまみ者だったんだ。 道楽者と言っている人もいたくらいだ。 正直、法律スレスレのこともしていた、という噂だし、 じいちゃんの…
神林君が、ウソをつくとは思えないが…あのおじいさんが、そんなことを言ったとは、到底思えない。自分が知っているはずのおじいさんが…どんな人だったのか、残念なが…
「まぁ、百聞は一見にしかずだ」 オジサンは扉に近付くと、取っ手に手を触れる。ガタガタと音を立てるだけで、開く気配がしない。「やっぱり、そうなるよなぁ」そうつぶ…
放っとけばいいのに…と宗太郎は思うのだが、清子には、そんな頭がないのだろう。「ね、ソータロー」さらに話しかけてくるので、「ま、そうだな」答えないわけにはいか…
全面的に、信用したわけでもない。それでも…そこまで言い切るのなら、信じるしかない。しぶしぶ宗太郎は「わかった」とうなづく。 だがオジサンの表情に、わずかに変…
思わず目をつむっていたのだろう。まぶたに、明るさを感じる。「おめでとう!どうやら、正解だったようだ」神林君の声が、聞こえてきた。「ソータロー、なに、寝ている…
何なんだ、一体? あの少年は、何者? あの男は…一体、だれ?考えれば考えるほど…宗太郎は、わからなくなってくる。こめかみの血管が、ドクンドクンと激しく脈打つ…
何だか微妙な顔をして、宗太郎には清子の表情を読み取れない。「えっ、でも…そんなの…wからないよ」ムチャを言うなよぉ。大いに迷って、ズラリと並ぶスイッチを見つ…
(やっぱり、知っていたのか?) まさか…神林くんが、そこまでおぜん立てをしていたのか、と宗太郎は疑う。 開ける? フタは、どこ?上部を触ったり、横にしてみたり…
(何だか…取ってつけたような感じだなぁ) 宗太郎には、やはり、神林くんの狙いがわからない。言われるままに、開けたけれど…本当にそれで、いいのだろうか?ふと、…
「そんなの! また、購買部で買うさ!」そう言うと…「これでもダメなら、また考えるさ!」と言い、「よし!」声を張り上げて、わずかにあいたすき間に、指を突っ込んだ…
これ、なのか?確かに、不自然なほどに、ピシリとひび割れが起きている。「でも…どうやって、開ければいいんだ?」まるで寄木細工のようだ。もちろんこれは、木ではな…
人差し指を口にくわえると、わずかに湿らせる。そうしてピッと顔の前に立てると、わずかな空気の流れを、宗太郎は感じ取ろうとする。(これが、大人なら…タバコの煙で…
コンクリートむき出しの無機質な何もない部屋…ここのどこに、そんな仕掛けが、隠されているのだろう?何かが頭の奥で、モヤモヤとするけれど、その正体をつかむことが…
「そんなに…知りたいのか?」 なぜか重々しい口調で、神林くんは宗太郎を見る。ゴクリ…と唾を呑み込むと、「もちろん!」宗太郎は力を込めて、答えた。清子と神林くん…
おそらくその場で、宗太郎が固まっていたのだろう。「ソータロー、大丈夫?」清子の声が聞こえる。「えっ?大丈夫…」そう答えると、後ろを振り向く。どうやら自分は……
(開いたぁ) 思わず宗太郎は、ため息をもらす。中はコンクリートの壁で、ガランとしていて、特に何もない部屋だ。ひそかに想像していたような、幽霊が出るわけでもない…
「ソータロー」 清子が話しかける。「なに?」何を言うつもりなのか?宗太郎の顏が、ピリリとこわばらせる。清子は少し考えると「いいよ、こうなったら、行こう」なぜだ…
まるで植物人間のように、身動き1つしていなかった老人のその目が…いきなりかぁ~っと、大きく見開いている。「うそっ!」驚いて、清子も宗太郎も、ベッドから飛びの…
「だって、あの時…忘れられないくらいの出来事があったんだもの」「えっ?」 清子は、何を言おうとしているんだ?何だかイヤな予感がして…宗太郎の心臓は、早鐘のよう…
だが…宗太郎の真剣なまなざしを受けると、「うーん」と腕組みをしながら考える。「だいぶ昔のことだからねぇ~あんまり覚えていないけど… 鏡は別の場所にあったよう…
「ダメかぁ~ この扉…中からは、開かないのか?」 宗太郎は、再度ダメ出しのように、神林くんに聞く。だが神林くんは、冷ややかな目付きを、宗太郎に向ける。「それが…
「残念だったな」 ボソリと神林くんが言う。(本当に、そう思っているのか?)宗太郎の中では、反発心が生まれる。「ここの見取り図とか、設計図とか…ないのか?」もち…
「はぁ?」 何を言っているんだ? 宗太郎は、神林君に聞き返す。「だから、酸素の残り時間のことだよ」一体、何を聞いているんだ、と冷ややかな目で、宗太郎に向き直る…
「あのボタンを押さえても…ロックはかかるんだ。 ここをしっかりと、ふさがないとね!」 と言うと…扉のてっぺんをさわってみせる。「なんだって?」だってさっきは……
だが…その様子を、神林君は冷ややかな目で見守る。「そんなことをいても、ムダだと思うなぁ」妙に悠々とした態度で言うので…「やってみないと、わからないじゃないか…
得意気に、宗太郎が清子に言うのを、「だから、それはたぶん、出来ていないんだ」見てもいないのに…神林くんは、強い口調でそう言う。「だから、なんで!」何でケチを…
「えっ…」 からかっているんじゃあないのか?戸惑う宗太郎に、視線を向けると、あーあとため息をつき、「やっぱり刺激がないと、ダメかぁ」神林君がつぶやく。「なんだ…
「自分にも、危険が及ぶ可能性がある場合… 例外なく、必ず、保険をかけるタイプのはずだ」 絶対に、見逃さないぞ…と、宗太郎はまなざしに力をこめる。「ふぅーん」口…
「あなたねぇ~さっきから、考えがないのよ。 大体、おじいさんはどうするのよ。 もしも、何かあったら? あなた…責任は取れるの?」 いつもは、寡黙な清子が、さっ…
「えっ?」「なんだって?」 清子と宗太郎は、思わず声をもらす。「この仕掛け、全部おじいさんが?」「何のために?」にわかには、信じられない。何しろ…元気な姿を目…