メインカテゴリーを選択しなおす
No.7-005 肖像画の貴婦人 ―Next Christmas Time
12月、屋敷中がクリスマスの準備で慌ただしいなか、フレッドは邪魔だと追い払われるように、一人で屋敷内を宛てもなく歩いていた。すると、いつもは閉じられている部屋の扉が開いていたので、好奇心の赴くままに入ってみた。 家具には白布がかけられ、何年も使われていないのだろう、埃っぽさがある。部屋の色使いやドレッサーを見るに、女性が使用していた部屋だと推察できた。 換気のためか、小さく開けられていた窓から北風が強く入り込むと、ふわりと白布が舞い上がり、無造作に立てかけられていた肖像画に当たって滑り落ちた。 「きれいな女性ひとでしょう?」 声に驚いて振り向くと、いつも意地悪してくるイライザがいた。警戒するフ…
No.7-004 灰色の屋敷 ―Next Christmas Time
ステイシーと離婚したアランはフレッドを連れ、北イングランドの実家、グレーストン・ハウスに到着した。小ぶりだがマナーハウスである、その屋敷を目の当たりにしたフレッドは、幼いながらも父が由緒ある家柄の出だと知る。 車を降りて見上げた屋敷は、暗い灰色の影に覆われ、一層の威圧感を放っていた。フレッドは息を呑み不安に駆られながら、つないでいた父の手を頼るようにぎゅっと握り返した。 「二人とも、よく来てくれたわね」 そう温かく迎えてくれたのは、唯一見覚えのあるキャサリンだ。 「私のことはグラニー[お祖母ちゃん]って呼んで、甘えていいのよ? あちらにいらっしゃるのが、お祖父様ですよ」 案内されたライブラリー…
No.7-002 我が家が一番 ―Next Christmas Time
「君たちのピアノ・マンも、それでOK?」 ヨーコがキーボード担当のフレッドに声をかけたけど彼は皆んなの会話に耳を傾けず、黙々とアイディア・ノートにペンを走らせている。 ヨーコが僕に小声で耳打ちしてきた。 「フレッドって、普段もこんなに大人しいの?」 「そうでもないんだけど、今は〝心ここに非ず〟なんだ」 理由を知っているメンバー全員ニヤニヤしながら一斉にフレッドを見た。その視線に気付いたフレッドが、突然口を開いた。 「ねえ、今の時期にクリスマス・ソングをリクエストするのって、変かな?」 えっ、まだ10月なんだけど⁉︎ ★ ★ ★ 夏も終わりに近づく頃フレッドは無事に大学が決まり、僕は失恋の傷を忘…
「さて、マツドてん五師。新しいのヘッドが用意してくれますよ。元気だして下さい」「…全額負担はしないぞ」てん五師(コ)は、まだガラクタを擦り体を震わせ泣いていた「現ナマ見ねーと立ち直らねんじゃね?」 あの時を思い出す「それに見合った金額は大体50弱」話し合う二人の様子を退場しかけた統者が後ろから眺めて…
配架は続くよどこまでも 絵本と児童書の配架作業をすすめています 厚紙絵本を 数回にわたりご紹介しております 今回は 二冊の『つるのおんがえし』を ご覧いただきましょう 【昔話の定番 つるのおんがえし】 シニア世代なら 「鶴の恩返し」は 定番中の定番むかしばなしですね 伝承された地域や代々の語り手によって 内容に些少の違いはございます 例えば鶴を助けたのは? ・老夫婦 ・独り身の若者(男性) と言った様な違い これは結構大きな相違でしょうか でも 罠にかかって息も絶え絶えであった鶴が そのピンチを助けてもらった恩返しに 人間の娘と姿を変えて 命を懸けて 機を織り 出来上がった見事な反物のおかげで…
「先頭は一丁さん達と変化の方、並びましたね」課題を終え、部屋から飛び出す四人。一丁とひじおは顔が白く塗りたくられ、まだ食べきれてないパンを持つまいちに『まいち、少し分けてくれ』とせがむ一丁が画面に映っていた。パンが食べたかったらしい [課題二、飴探し&パン食い・制限時間五分]定番の棒に紐で吊るされたパンを口で掴むのと、粉に埋もれた飴を探…
ピー[開始] 衛兵の打ったボールが近衛の脇を通り、床に落ちた。すかさず打ち続け近衛の反撃が間に合わず連続ポイントをゲットする「おー、五点リード」感心するヘッド。表情の変化はあまりなく、常に眠そうだ こ・の・え こ・の・え 何処からか近衛コールが始まると皆後に続く こ・の・え こ・の・え 「勝っ…
No.6-033 Blue Dreaming (章末) 最後に残るのは?
「僕が君を忘れるわけないじゃない⁉︎ 君のほうこそ僕を忘れてたでしょ? いや、忘れたかったよね、あんな追い詰めるようなことをしたんだもの……」 フレッドの言葉にパティは首を静かに横に振り、大きな丸い瞳を潤ませた。 「あの時は、ごめんなさい。黙って行ってしまって、ごめんなさい。ずっと後悔してて、私――」 そこへヤマグチさんがやって来た。 「おーい、早く車に乗ってくれ!」 急かされたメンバーは次々と楽屋を後にしていく。僕はオロオロしているフレッドの肩を軽く叩いて促した。 「一緒に来てもらったら?」 「あ、うん! サム、パティ、まだ時間ある?」 兄妹は顔を見合わせ頷くと、フレッドはホッとした様子で二…
――幻獣の森 陽の光を浴び照らされる葉の下では、レオ達が無数の暖かい光を受けのんびりと動き回っていた「こんにちはー〓」『きゅーん』来訪者に気付いたレオが挨拶を返し寄って行く「前に会ったね。覚えてる?」『きゅーん』ディックの周りに集まり嬉しそうに相槌を打つ「いざないさん、ありがとうございます。再びこの森に…
好きな本の挿絵 ーメアリー・ポピンズとメアリー・シェパードー
子供の頃、岩波少年文庫の本が自分の本棚の何割かを占めていました。母が買ったのだと思うのですが、小学校に上がるときに、本棚と机をもらった時点で入っていた(と思います)ので、岩波少年文庫シリーズが、しれっと本棚を占領していることに疑問を持ったことはありませんでした。 一度も読みなさい、と親に言われたことはなく、小学校2年生くらいまでは、全く触りもしなかったと思います。それが、何かの拍子に一冊手に取り、読みだしたらはまってしまって、本棚の岩波少年文庫を読みつくし、図書館に月に2回通っては、本を借りまくる子供になりました。中学生の受験生になるくらいまで、ずっと毎月、図書館に通っていました。 岩波少年文…
「ずっと、そう考えていて……だけど夢を諦めてしまうようで、なかなか君に言い出せなかった」 照れながらはにかむアシュリーにケイトは何度も頷きながら、彼の頬を両手で優しく包んだ。 「やっぱり私の好きな青は、この瞳とブライトンの海ね」 そう囁き、彼の唇に優しくキスをしたケイトは、もう無理に明るく振る舞う必要もなさそうだ。 二人が抱き合う姿を背に静かにドアを開けると、レイチェルの瞳から涙がこぼれた。僕は彼女の肩を支えて、そっと声をかけた。 「3度目のチャンスを待つ?」 レイチェルは肩を竦め、お互い小さく微笑みながら部屋を後にした。 ◆ ◆ ◆ アシュリーがレイチェルを送りに行っている間、僕とケイトは彼…
「え?」パチクリ顔のれいり。れいりが入って来られたのは同じ派だったのでまりもが許可していた為だ「かんこさんの所にれいりさんがいます」「ウオルシルクリ…!」気付いたまいちがいざないに伝える 〈まりもさん、ソルムも入っていい?〉〈はいですぅ〉 すんなり二人が最上部の観客室へ進入 『レオ!! そこの…
「今は僕の思いのほうが強いかもしれない。でも、絶対にケイトからアシュリーを忘れさせてみせる」 そう自分に言い聞かせるように答えると、レイチェルは目を見開き小さく吹き出した。 「ふふ、ごめんなさい。じゃあ安心して話せるかしら? 私たち、同志になれるかも」 彼女の瞳が鋭く光り女の表情に変わった―― ◆ ◆ ◆ 「時々、カフェのこの席で本を読みながら、ケイトを待つアシュリーを見かけたわ」 窓から見える書店を眺めながら眩しそうに話すレイチェル。 「アシュリーはカフェに入る前、書店に立ち寄る常連さんでね。本の話を通じてお互いを知っていくうちに、彼は私にとって特別な存在になっていたの……」 彼女は紅茶を一…
ヴォン 「部屋の一角か」「まずはどしやを探さねばならん」着いた先は明かりの無い薄暗い部屋。客間の様で高級家具がふんだんに置かれていた「いざない、どうだ?」「この部屋にいた事は確かだ」周りを観察するいざないはどしやがいた事を確信する 「お待ちしておりました」 「!!」「四名様ですね。…
キウド邸からほど近い高原に設置されたロケット型バンガローに到着すると、取りあえず休憩となった「中々良い所だの」 景色も良い!「私達はこのままのんびりしてて良いのでしょうか…」「どしやが出て来ない限り仕方ない」各々寛ぎ、一丁は目の前の景色に満足している。一人いざないはその場にいないジンホウを探しに違う…
次の日、僕は郊外まで車を走らせた。助手席には愛しのケイトではなく弟を乗せてね! 「今日はヘレンとの予定がキャンセルになったから、久しぶりにお墓参りに行きたいな。ちょうどこの前、命日だったし」 僕はケイトのことばかり考えていたから少し恥ずかしい気持ちでフレッドの提案にOKした。 そんなわけで、墓地まで1時間ほどのドライブ。道すがら、音楽談義に花を咲かせた僕等兄弟は、「絶対デビューするから」とダッドに誓いを立てた。 それからフレッドのリクエストでホームセンターやスーパーに寄って、ロンドンに戻ってきたら16時を過ぎていた。 思ったより時間かかっちゃったけど(フレッドの買い物が長い!)まあ確かに、くす…
ロンドンに帰って来た僕等を見てフレッドは少し驚いた様子で、こっそり僕の部屋にやって来た。 「ケイトが戻って来たってことは、彼氏とうまくいかなかったの?」 僕はカバンを開けて、中身を片付けながら答えた。 「そういうことに、なるかな」 「ふーん……じゃあ、このまま一緒に住むことになるの?」 「そういうことに、なるかな。あっ、コレお土産――どうした?」 レコードを渡そうとしたらフレッドがニンマリしているのに気が付いた。 「別に、サンキュー!」 彼はレコードを受け取りドアノブに手を掛けると、 「あんまり見せつけないでよね⁉︎」 とウィンク一つ、部屋を後にした。 途端に顔が熱くなる。弟の勘の良さには、感…
「酷い、酷いアシュリー!」 「そうだ、あいつは酷い奴だ!」 「浮気してたなんて、許せない!」 「そうだ、ケイトを泣かすなんて許さない!」 「私じゃなくレイチェルをって、どういうことなの⁉︎」 「そうだ、ケイトのほうがグラマーなのに!」 〈ペチッ!〉 ケイトは軽く僕の頬を叩いて、まだ涙が残る笑顔を見せた。 「あースッキリした! こんな大声出したのって、初めてかも⁉︎」 彼女は背中を向けて海の方へゆっくり歩きながら、恥ずかしそうに口にした。 「不思議だな……私、ジェムにはこんな風に甘えて、不安な気持ちまでさらけ出せるなんて。きっと頼りがいがあるって、あなたのような男性ひとのことを言うのね?」 僕は…
黙ったまま俯いているアシュリーの腕にそっと手を添えて、レイチェルは静かに語りかけた。 「でもあなた、本当はずっとケイトを待っていたのよね? 彼女が戻ってきたなら、私なんて邪魔者で――」 「そんな! いや、その……僕が今こうしていられるのは君のおかげだし、だからこそ――」 「よく分かったわ!」 苛ついた様子でケイトが話を遮ると、なぜか極上の笑みを見せた。 「さようならアシュリー。今まで、どうもありがとう。私の荷物は、また後日あらためるから」 そして、ドアを勢いよく開け僕を手招く。 「行きましょう、ジェム?」 僕は違和感を抱くも何も言えないまま、ただケイトの後を付いて行った。 家を出て少し坂を登り…
掴まれた手を振り払うケイトを必死で止めるレイチェル。 「なんで今さら帰ってきたの⁉︎」 「あなたに、そんなこと言われる筋合いはないわ」 「ケイト落ち着いて!」 咄嗟にケイトを押さえた僕にレイチェルは目をやると、ケイトを睨み付けた。 「もう他の男性ひとがいるクセに……あなたはアシュリーを捨てたんでしょう⁉︎」 「捨てたって、なに言って――!」 そこへドアが開きアシュリーが入って来た。 彼は一瞬、驚きの表情を見せたもののすぐ視線を逸らし、買い物袋をテーブルに置いた。 アシュリーは、小柄で貧相な男だったけど、スッキリと整えた黒髪にブラック・スクエアの眼鏡から覗く伏し目がちな深みのある灰色の瞳は、確か…
まさか今でもその子を思っていたなんて! 項垂れる彼の肩を叩き、励ますように言ってみた。 「残念だけど、その彼女のことをいつまでも思い続けるのは、建設的じゃないと思うよ? ヘレンと付き合ってみなよ。今、君の側にいてくれる女性ひとを大切にしたほうがいい」 フレッドは納得いかない様子だったけれど、構わず続けた。 「それに女の子と付き合ったら、何か素晴らしい詩や曲ができるヒントになるんじゃないかな? やっぱりラブソングって王道だし」 するとフレッドの表情がパッと明るくなった。 「うん……そうだね、そうかもしれないね⁉︎ 僕、ヘレンと付き合ってみるよ!」 こうして彼は前向きになり部屋を後にした。 いいよ…
「写真撮ってくれてる。ほら、ジェムも入って⁉︎」 「えっ、僕はいいよ」 ロンドンに20年も住んでいる身としては、さすがにライオンと一緒の記念撮影は恥ずかしすぎる! 「照れちゃって。ダメ、逃がさない!」 ケイトがクスクス笑いながら腕を絡めて、引き寄せてきた。 僕の腕は、彼女の胸の感触を捉えもう力なんて入らないよ⁉︎勘弁してくれー! って苦笑しつつピースしながら写ってしまった…… 子供たちの母親に礼を言われて、撮ったばかりのポラロイド写真を貰いニコニコしているケイト。 そんな明るく気さくで愛らしい彼女にどんどん惹かれていくのを、もう止められそうになかった。 こんな気持ちは初めてで、自分で自分の感情…
――続目洞 ヴォン 「くそぅ…また洞の中か」法陣に入るも出た先は仄かに明るさがある洞窟の中だった「小若、この洞窟は何なんだ?」「続目洞と言うて、十になったら跡継ぎを決める為に入らねばならん所だ」歩く度足音が奥に吸い込まれ、先の見えない道のりを延々と歩いていく。よ小若は子象へと変化し、その背にはハナエンが座っていた
僕はいつもと違い(!)きちんと身なりを整えてから下に降りると、ケイトが満面の笑みで迎えてくれた。 「焼きたてのトースト、カリカリのベーコンエッグ。フライド・トマトにキュウリ、マッシュルーム、ベイクド・ビーンズ。デザートには蜂蜜ヨーグルト。これぞ、フル・イングリッシュ・ブレックファースト! どうぞ召し上がれ♩」 朝食はいつもコーヒーやシリアルの僕には、眩しいぐらいの豪華メニュー!昨日のパスタもそうだけど女の子が料理を作ると、こんなにも華やかになるんだ⁉︎テーブルに、庭の花まで飾ってあるよ。 ケイトが手渡してくれた新聞を見ながら、チラッとエプロン姿の彼女に目をやり結婚したら、こんな感じか……って思…
溜め息混じりでムクれたと思ったら 「つい、うるさく言っちゃうけど、彼に夢を諦めてほしくなくて……だって私の一番の夢は、彼の小説の挿し絵を描くことなの」 そう照れて、はにかむ彼女のクルクル変わる表情に、僕は目を離せずにいた。 ケイトは勢いで家を飛び出したもののずっと友達の家にはいられず、祖父母の元に戻ればアシュリーとの同居に理解を示してくれた二人に心配をかけてしまう―― そう駅のベンチで悩んでいたら、偶然、ステイシーに会ったそうだ。 「事情を話したら『ギルは今NYでいないから、家にいらっしゃい』って言ってくれて」 ステイシー の奴、自分も家にいないくせに相変わらず勝手だよな! 「ステイシーって素…
ケイトが鼻歌を歌いながら手慣れた様子で料理をしてる間に、僕は身なりを整えてダイニングに降りた。すると、まるでレストランのように色鮮やかなパスタとサラダが用意されていた。 そして美味しくランチをしながら、ケイトの話に耳を傾けた。 サラサラのブラウンのロングヘア。瞳はミスターと同じグレーだけど彼には、さほど似ていないと思う。(良かった!)声の感じが少しだけ、メアリーに似てるかな…… ◆ ◆ ◆ 「私ね、ブライトンに程近い、祖父母の家に預けられてたの」 祖父母はミスターの両親ではなく、母方のほうだという。 「小さい頃から絵を描くのが好きで、勉強はそっちのけだったから、16歳になるとギルがチューター[…
暗世界。轟々と唸り空高く昇る風を数キロ離れた邸で冷ややかに見つめる女性の姿があった。床に付く程の長い髪をした女性の側には、法で書かれた紙に囲まれて咲いている萎れかけの花が花瓶に生けられている 「女帝、いさい殿がお見えです」 「……十日と九時間二十二分三十七秒の遅刻だ!!」「!!」そそくさと部屋を出て行くも、いさいを見る目は怒りを含み厳し…
「実は、パティを連れて来てるんだ。後で会ってやってくれないか……?」 躊躇うようなサムの言葉に、フレッドは明らかに動揺していた。 「も、もちろんOKだよ!」 真っ赤になっているフレッドの背中を皆んなでバンバン叩きながら、スタジオに向かった。 「おいおい、隅に置けないなぁ?」「あの人の妹とは、どういう関係?」「パティってどんな子? 可愛い?」 矢継ぎ早に飛んでくる皆んなの攻撃を、必死で交わすフレッド。 「わ、わかんないよ! もう何年も会ってないもの」 こんな突然に、しかも外国で初恋の相手と再会だなんて、奇跡じゃないか!? 僕は感動のあまり、可愛い弟に勢いよく飛び付いた。 「やめて、ジェム! テレ…
大阪公演の後、バンドは再び東京に戻ってきた。今はテレビ局の控え室にいて出番を待っているところ。 この番組は海外からのアーティストも多数出演していて、ありがたいことに僕等にもオファーが来たんだ。まあ、演奏は当て振りで、僕の歌も口パクなんだけどね。 ヘアメイクも整い出番を待つ間、皆んなそれぞれの形でくつろいでいた。 そこへ、スティーブンがやって来て 「フレッド、プロデューサーの知人が君に面会したいそうだが、心当たりはあるかい?」 と訝しげな顔で、後ろにいた男を手招きした。彼を一目見るなり、フレッドは驚いたように叫んだ。 「サミュエル・ヒューストン!」 「覚えていてくれたか、フレデリック・スチュアー…
コンビ派メンバー、りん(姉)とらん(妹)が人気の無い裏通路を見回っていた「こっちには誰もいないかなー」「うん。せんぱいに伝えよー」預かった連絡機を操作するりん。らんはその間少し離れて何か無いか探索している〈えーと〉手こずるりんの背後から人影が現れそっと近づいた〈初めてで使い方わかんなーい〉人影の右手には穴が二つ開い…
「もう終わりだなんて思うなよ?」ヤスが真剣な表情を向けた。 僕は、いつまでも歌っているトニィを遠目に見ながら 『例え目の前に壁が立ちはだかっても、僕等は決して負けはしない』 そんな歌の意味を噛みしめた―― ★ ★ ★ 清水の舞台から京都の街を一望していると、マークがサングラスを外し眩しそうに呟いた。 「ウォルターに見せたかったな……」 あれからカナダの更生施設に入ったウォルターは身体はすっかり回復したものの、依存を断ち切るための治療は続いているそうだ。 でも、その施設で出会った10歳も年下の看護師さんとステディな仲になり、ボランティア活動に力を入れて充実した日々を過ごしているという。 「そのほ…
「急に連絡よこしてスタジオ貸せって、お陰で予約してたバンドに『機械の調子が悪い』とか何とか誤魔化して、キャンセルさせる羽目になったんだぞ⁉︎」 「サンキュー、ライリー! 分かってんじゃん」 「このクソガキが! 変わらず元気そうじゃねぇか」 スタジオ・オーナーのライリーとマークが、お互い叩き合いながら抱擁を交わしているのをバイトを無断欠勤となってしまった僕は、バツの悪い思いで眺めていた。 するとライリーが 「おめーはよく、警官ボビーの言いなりにならなかったな? 思いのほか気骨があるじゃねーか! 見直しだぞ、頑張ったな」 そう笑いながら大きな手で僕の頭を揺らした。 恥ずかしさと嬉しさで目頭が熱くな…
オリジナル絵本『かなしみさん、君と素敵な絵を描こう』の作画過程を記しています オリジナル絵本『かなしみさん、君と素敵な絵を描こう』の作画過程を記しています
ご依頼者様が自然環境や幼児教育の専門員であることから、忠実な描写も残しつつ、愛着のあるキャラクターとなるよう心がけました。 ハンコで手押ししたときのような、温かく懐かしい、優しい表現も大切にしました。 Illustratorのみで描いているベクター画像のため、拡大縮小や色彩変更等も可能となっています。
「博士は冒険家と言ってるけど、本当は発明が専門なんだ」「そうなんですか」いざない達が見えるくらいの距離を進むジンホウとれいり「自分に必要な物しか作らないから、今みたいに欲しいと意思表示しないと協力してくれないけどね♪」 〈いざない、ペース落とすし!〉〈これくらいついてこい!〉 「へえ~」「いざない君の眼鏡作ったのも…
1月中の仕事 チベットビールラベルと「しかばねの物語」絵画展
■1月中の仕事 2024年明けまして、遅くなりましたが、 皆さま今年もどうぞよろしくお願いいたします。 今年は元旦から悲しい衝撃の出来事が立て続けに起こり…どうか、少しずつ皆さんが平穏な日常を取り戻されますように…。 いつもお世話になっている、 東京・曙橋のチベットレストラン&カフェ タシデレさんの オリジナルクラフトビールのラベルを描かせて頂きました。 絵は私蔵西、デザインは辰砂です。 ビールのお披露目がまだなので、ラベルが公開できないので、 ラベル作成途中のラフと、クリスタでの作成途中の画像を貼ります。 タシデレ オリジナルチベットビール ラベルラフ4点。ここから選んで頂き、本描きをしてい…
「誰かサポートに入ってもらうとか?」トニィはそう言ってフレッドの顔色をうかがった。 曲はともかく、詩の大半を書いているフレッドには気を使ってしまうみたいだ。 「……僕達の曲を、メンバーじゃない人に弄られるのは嫌だよ。アイディアを盗まれたくないしね」 案の定、ムスッとするフレッド。Aレベル[大学入学資格試験]が近いせいか、イラついてるな。 僕は彼の肩を軽くさすってご機嫌を取った。 「オリジナル曲じゃなければ、サポートしてもらってもいいんじゃない? たまには息抜きも必要だよ」 しょんぼりとしていたトニィがパッと顔を輝かせた。 「だったら久々に、セント・ブライアンズで演らないか? ウォルターに頼んで…
菩提樹から「光明」という小冊子が送られ、この中に「仏教童話」があります。「仏教童話」とは、仏教の教えを子どもでも理解しやすいように物語にしたものです。仏教中心の問題が書かれているのですが、平明に書かれており、とても読みやすいです。挿絵もあるので、私は好
清水寺、金閣寺、平安神宮 etc.――一日中オフをもらった僕等は待ちに待った二度目の京都見物にテンションを上げていた。 前回プロモーションで来日した時は番組収録を兼ねていたから観光らしい観光はできなかったけど、今日は自由に回れるってことで皆んな凄く楽しみにしてたんだ! 東京のハイテクな街並みも面白いけどやっぱり京都の、このエキゾチックな雰囲気には魅了されてしまう…… 僕は買ったばかりの日本製カメラでフィルム代のことも忘れあちこちシャッターを切って回った。 好奇心一杯のマークが 「うぉー! すげぇエキサイティング! ヤス、あれは何だ!?」 と、そこら中を駆け回り同行のカメラマンが困ってるよ。マー…
――五日後「うれしいですねぇ」幻獣の森入口では明るく陽気な声が響いていた「まさかこんな早くに又ビイス君達に会えるとは」「…頼むから邪魔だけはすんなよ」「分かってますって〓」いざないは面倒くさそうにジンホウを見ている「…大丈夫かなぁ。十人くらいいるんでしょ…捕まえられるかな私……」マルーの仕事と聞いていた…
■12月中の仕事 東京の出版社で打ち合わせがあり、その準備をしたり、 鶴見大学での講演イベント「内陸アジアの高地文化に触れてみる」に 物販売り子としても参加したり、 その他来年のイベントの打ち合わせをしたり。 師走らしい、来年への準備をした月でした。 そして、3か月かかったリフォーム工事が終わりました。 長かった…。 12月は最後の追い上げで、塗装やクロス工事や新しい畳、襖、障子が入り… と、工事が目に見えてぐいぐい進み、 決めることも多くて、慌ただしかったです。 3か月の工事が進んでいくうちに、 様子が見えるのでアイデアが次々浮かんでしまい、 追加で間接照明を設置して頂いたり、 給湯器やエア…
「そんな時間あんのか⁉︎ また強引にプロモ入るんじゃねーの?」 「縁起でもないこと言うなよ!」 〈バサッ!〉 マークを小突いたトニィの振動で僕がシートに置いていた手紙の束が落ちてしまった。それをフレッドが拾いつつ 「まだファンレター読んでんの? 車の中で、よく読めるね……僕は気持ち悪くなっちゃうよ」 と呆れながら手渡してくれた。Thank you ! 「だって溜まっちゃってさぁ、昨日読めなかったから」 手紙の山を軽く叩くとマークが覗き込んできた。 「これってファン・レターってよりも、ラブ・レターだよなぁ?」 「オレなんか凄いの貰ったよ!『トニィ、第二夫人でいいから結婚して♡』って、もうルイスの…
本日の体重は、51.9㎏。ポカポカ陽気の中を7.5㎞走ってきました~ 暑いのなんのって、冬じゃなくて秋のような気候ですね~ このまま暖冬で終わってくれるといいのですが…。 今日は、朝から洗濯槽と換気扇のお掃除もしました。そして、息子からのリクエストに応えて大学芋をつくっ...
「泊めるならジェムん家ちの方が、広くて余ってる部屋あんだろ⁉︎」 そう、ルイスはヤスの家で世話になることになったんだ。 「だって僕の家は基本フレッドと僕の男2人だけだから、いつ始まっちゃってもおかしくな――痛っ!」 僕の下品な冗談にトニィの鉄拳が飛んだ。彼は僕を押し退けヤスの両手をガッシリ握ると大きく上下に振り出した。 「すまないなぁ、ヤス。君の家なら超〜安心さ!」 「あ〜らヤスアキ、私が居たら迷惑かしら?」ルイスが横目でヤスを見る。 「恭章、何してるの⁉︎ 寒いんだから、早くリビングに上がってもらって?」奥からユミコの声がして仕方なくルイスを手招きするヤス。 そんな2人を見て、ほくそ笑んでい…
feat. Samantha Fox カクカク揺れる僕を尻目にフレッドがクスッと笑う。 「大丈夫だと思うよ? ルイスの方も〝その気〟なんじゃないかな!? あのスーツケースの中の高級そうなランジェリー、セクシーなドレスにブランド物の化粧品なんて、気合い十分――」 「見ないでよ⁉︎」 振り向くと、真っ赤な顔したルイスが立っていた。 「化粧品は、お姉ちゃんの会社のサンプル品だから」 別に気張ってるわけじゃないと憤慨するルイスの後ろに棒立ち状態のヤスもいたのは驚いた。 安堵のトニィが立ち上がり「良かった、心配したよ」とルイスを抱き締める。 そんな2人にフレッドは 「だって、スーツケースをあんな風におっ…