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※「おまえとこうして対面するのは何年ぶりであろうかな」趙雲は答えず、ただ潘季鵬《はんきほう》をきびしく睨みつけた。孔明の言ったとおり、薬でくらまされた視力は、時間がかかったが、なんとか回復した。しかしその代わり、固い縄で後ろ手をぐるぐるに縛られ、まったく身動きのできない状態となってしまっている。そんななか、見上げる潘季鵬の顔は、薄気味わるいほど、優しい顔をしていた。この男は、袁紹の軍に最初に入って、古参兵から与える凄惨なしごきに、心身ともに磨耗していた俺のところへ、同じ顔をしてやってきた。俺だけではない、ほかの子供たちも、みんなみんな、この笑顔に光明を見て、その背後に崇高なあるものがあると信じ、ついていったのだ。その果てに、奈落があると知ったなら、だれも足を前へ進めなかっただろう。「いくつになった、子龍。...臥龍的陣太陽の章その51船倉の趙子龍
「む、たしかにな。非はわれらにあったかもしれぬ、罠にかけるような真似をしたのは悪かった、許せ」あっさり陳到が頭を下げたので、嫦娥《じょうが》をはじめ、女たちは目を丸くしている。役人というのはふつうは威張り腐ったもので、けっしておのれのあやまちは認めない。だが、陳到はちがうのだ。ことを順当に進ませるためならば、相手が夜の女だろうと頭を下げることに抵抗はない。そのほうが、早くもめ事が収まって、早く家に帰れる確率が高まるからである。「そこまでおっしゃるなら」嫦娥はそういうが、まだ女たちは興奮しているらしく、「でも」とか、「罠かも」と、疑っている。それを嫦娥のとなりにいた藍玉《らんぎょく》がとりなした。「みんな、静かになさい。嫦娥先生は、けが人を診るとおっしゃっているのよ」とたん、雀の大群のように大騒ぎしていた女...臥龍的陣太陽の章その49好々爺の帰還
陳到が答えると、麋竺の眼差しが、いまだかつて見たことがないほど暗いものに転じた。「わたしが『壷中』の仲間であることはまちがいない。それなのに、新野に残ったわが一族を牢に繋がなかったこと、感謝する」陳到は、さらに混乱し、『壷中』の仲間だと自ら語る麋竺と、『壷中』に敵対している様子の藍玉《らんぎょく》や嫦娥《じょうが》を見比べた。まったく立場がちがうはずの人間が、なぜ連帯しているのか?「子仲《しちゅう》殿は、壷中を裏切ったのですか?」「もとより、心は一片も壷中にない。わがこころは劉玄徳にあり。わたしはわが君が荊州に入った際、劉表と取引をし、新野の秘密を守る斐仁を、さらに監視する役目を与えられた。拒むことはできなかったのだ。『壷中』という組織がどれほどに濃い闇を引きずっているか、知れば知るほどに、脱け出せなくな...臥龍的陣太陽の章その50新野に眠るひみつ
※これは小説【2年久遠組!】のキャラクター紹介としてまとめた記事です。 中里 涼夜なかざと すずやこの物語『2年久遠組!』の一応主人公。中学に上がる前から…