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左に進路をとった、何気なく、なんとなく、喧騒から離れたい心境に下半身が従ったんだ。 何をしよう、着手するべき、試す、こうして探究心を探し求める心境は久しぶりの感覚に思う。引退時、かもしれないな。呟く。空っぽ。空虚。けれど、空洞に砂を埋めたのは僕であるし、まみれたお宝を掘り出すのだって、埋もれた場所を忘れてしまったからだ。元々は僕の中に存在しなかった無形物を掘り当てて、形に見えるように狭い間口に悪戦苦闘を強いられ、脱出に成功したのが、これまでの生き方。 ガラス越しの店、じっと座って視線を落すお客と髪を切る美容師、それを見つめる私。 切られる、切る、見入る。 埋める、掘り出す、扱う。 前者は自ずか…
黙っていなくては。 橋が見えてきた。川幅が広がったように思う、川上に振り返った。 南下を始めた地点から現在地を比べると広さは目に見えて明らかだが、数メートル下流だと、違いを見出すのは難しい。変化率は低い。 プロモーションも無事に終えた。一号店の状況は売り上げの数字、メディアの取り上げ、サイト上の個人評価等々、大よそ想定の範囲を上回る満足度だった。もう、これからは私の手の及ばない領域だ、見守る、……ただそれだけ。 私は何も見てない。飛行船を飛ばしていた。理由はおいおい聞かれるまで、時間は残されてる。 ただし、避けられない警察の追及に陥る状況を捉えなおすと、対策を講じるべきが、やはり収束には必須の…
佐伯の港や魚市場を一通り見学した海野と荻野は、漁を終えた西さん達親子の『大宝丸』の甲板清掃などを手伝った。海野ら2人はまだ、『大宝丸』の機関の手入れや、細かい用事や報告のために、漁業
その報らせは突如として海野達3人に届いた。 それは宮崎へ向かう途路だった。3人を乗せたワゴン車のラジオが、西さんの経験とそっくりの、恐ろしい体験をしたと言う人達のニュースを伝えていた。 事件
川沿い。 自転車とランナー、歩行者が順々に通り過ぎる。赤いトラックロード上は健康志向の強い人種が集まる居場所。 確かに休暇は必要だった。目的にはないにしろ、開発の際に溜まった休暇はちょうど残り数ヶ月で丸々五年分、会社の方針は期間内に私に幾度となく消費を義務づけていた。それをあの女はかぎつけた……。 飛行の事実を警察に話すわけにはいかない、私が作り上げた商品の披露の場が台無しになる。だから、黙っていた。とはいえだ、男は歩調を緩める。くしゃみが出た。川沿いに強めの風が吹き付ける。 このまま真相に行き着いた場合、私の身の潔白を証明することになるあの女の所在を警察に明かす必要性に迫られるんだ、そうなれ…
ベンチに戻ろうか迷った。帰路の数歩はそのまま散歩に移り変わった。腹ごなしの散歩といえる。それほどの私にしては食事の量が多かったのだ。 川を目指すことに決めた。東に流れてるらしい、こっちへ移り住んだ初日にS駅で手に入れた周辺の地図を男は思い出した。交通量の多い、人通り。二ブロック先に行き着くと、四斜線の通りの二つ、上りと下りの計八車線に挟まれた川を発見した。北は駅に向う方角、南を歩くか、男は川の土手を南に下る。 あの女、というのはかなり風変わりな要請をロビーの席で手短な用件でという私の制限に、的確に反応を示し、まるで予想していたかのごとく端的で驚きに満ちた、滑稽なプランを述べた。私はつい、笑った…
書三代ガクト様に感想とともに作品をご紹介いただきました。ありがとうございます。 ちょっと恥ずかしいですが、動画を貼っちゃいます。 ちなみに「在郷っぺ」は「ざいごっぺ」と読みます。「在郷」とは「いなか」のことですから「いなか者」、「いなかっぺ」と言った意味で、侮蔑的ニュアンスを含んだ方言になります。 なろうの題名やあらすじにはルビがふれないのがつらいところですね。そこは改善していただけると嬉しいです。
男であれ女であれ異性に告白するのはハードルが高いもの。でも、心に秘めているだけで相手からの告白を待つだけというのは、それこそ夢か妄想の類になってしまいます。www.the-uranai.jp では、どうやって? 例えばこんなのはどうでしょう? ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「あなたかわいいから、特別に簡単な恋愛成就のおまじないを教えてあげるわ」 「本当ですか!?」 コスタは期待で目をキラキラさせている。 「じゃあ言うわね。あなたの好きな人と目が合ったら、逸らさずに3秒間見つめ続けるの。それだけよ」 「ええっ。たったそれだけ…」 考えてみるとちょ…
素敵な感想をいただきました。皆様もぜひお読みいただけると嬉しいです。 最初は「女性向けだから合わないかな?」と心配だったのですが、三話からかなり夢中で読んでしまいました笑 彼は優しいし博識だし面倒見もいい完璧イケメンなだけかと思ったら、15話あたりからの意地悪ギャップがたまらんかったです。脳ミソが女の子になって悶えてましたw 面白かったです! — 戸岐@読み専 (@Yrf1Piy) September 29, 2022
【イチオシレビュー】ニヤニヤしっぱなしです! ~気鬱の皇女と大賢者の孫~
【完結】「気鬱の皇女と大賢者の孫 ~聖女と呼ばれた皇女は魔導士に救われる~」を読んでみませんか!出だしが暗いので、なかなか読んでいただけていない作品なのですが、イチオシレビューをいただきました。ありがとうございます。https://t.co/G5XlT5QNwz — 普門院ひかる@小説家になろう etc (@HikaruFmonin) September 29, 2022 イチオシレビュー
小説家になろうへ投稿した「双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~」が完結してから、もう2ヵ月がたとうかとしております。 Webへの投稿は、1月末の完結前に、とっくに終わっていました。それから、次回作の構想を考え始め、かなりの時間が経過していますが、順調に進捗しでおりません。6月締め切りの公募に出してみようという算段ですが、間に合うのかな? それはともかく、ブログの投稿が滞っているので、「双剣のルード」にまつわる裏話を一つ。 主人公ルードヴィヒの祖父が、ローゼンクランツ「翁」と呼ばれ、尊敬されているということを、小説中で書きました。ちなみに、ルードヴィヒは、もち…
手が空いた、箸に持ち替える、サツマイモのてんぷらを口へ。外側の衣の触感と皮をつけたままのサツマイモが絶妙に舌に届く。少々の塩味、男は裏側を確認、手首を四十五度回転させた。表面が味の決め手、過度な味付けを嫌ったのだろう、男はしきりに関心、頭を上下に揺らす。 そうそう、社内がファーストコンタクトであった。考えてみれば、あの女は会社との何らかのつながりを持つ提携や協力関係の企業に借りの所属の席をおく、ということだろうな。厳重で強固なセキュリティを通過しなくては、私がたまたま顔を出すロビーに足を踏み入られない。これが通常の想定である。 そうえいば、彼女が声をかけた初対面の印象はこの間とはまるで別人を思…
写真のテーマの決め方は? 四季をモチーフにする~春夏秋冬を写真で楽しもう~
はじめに 写真を撮って楽しみたいけど何を撮れば良いのだろう?と悩むことはありませんか。 おすすめのテーマは「自分が心を動かされるもの」。 日本には四季がある。そして、春夏秋冬を表現する文化がある。 朝夕すっかり涼しくなった秋を表現するのはいかがですか? 写真のモチーフ(テーマ)について考えたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。 はじめに 春夏秋冬を表現する 身の回りの春夏秋冬を探してみる 季節を写真に撮ってみる―夏から秋への風景 夏の雲 夏のひまわり 初秋のきのこ 中秋の名月 ドングリが降る おわりに―四季を愛でる 春夏秋冬を表現する 日本の文化には、春夏秋冬を表したものが多くある。 絵巻物、…
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男は一口頬張って中の具を確かめる。柔らかくなめらか、火を通した具材は冷えることでまとまりやすく、食べやすさも考慮に入れているのか、納得。 私は料理は作らない、ほぼ外食で済ませるが、食材の元の形との違いによって、工程を想像でき、そこから作業の意味が知れる。何事も共通項がある、ということを私は言いたいのだ。ただし、だからといって、私が料理を作れるかは疑問であるし、十中八九、想像の八割を超える味にはお目にかかれないだろう。弁解をするのは、私が何でもできるような、言い方をするから、そう同僚に言われたからだ。特段気にも留めていない、改善は無為だとさえ思う。なぜか、私は予測を述べているつもり。 多くの人は…
ふと思いついて、新作の設定など深掘りしていました。ランナーBL。いつも同じコースを走っていると、全然知り合いじゃないけど、なんとなくあの人だな・・・認識してる人いるんですよね。 顔だったり、走り方、背格好だったり、ウェアだったりで、、私もだ
YouTubeにミュージックビデオをアップ! アドレスは↓ ※AIを使っています。 秋っぽくならないかな、と思っています! 夏が長かったので、 急に寒くなっ…
開発には多大な、それこそ専門外の分野にまで責任者は最低限の知識と技術のあらましを備えて、三日に一度訪れる進捗状況と方針転換の再確認と計画自体の廃止を問う会議に挑まなくてはならない。 私は全体と開発チームの指揮を二つ抱えていた。片方に疲れると、もう片方の処理に移る。時に二つが重なり合う場面にも遭遇した。そこでは、取り掛かった仕事を終えると、特別に無駄な時間を過ごす。何もしない、しかし自由にしてよい時間を作る。無駄にはカウントしない。効率を高める上では必要な休息であると、学んだからだ。他人の作業効率はどうだか知らない。ただ、何事にも興味の対象は開発作業なのだ。誰が身につけるのか、誰に見せるのか、い…
気がつけばもうこんなシーズンに…。今年は持病の副作用に合併症まで加わって、通院ばかりの年になりました。症状がいつ悪化するかわからない不安の日々が続いています。おかげでメンタルが完全にやられて、3Dやイラストを手掛ける気力が萎えています。とはいえ、何もしないと落ち込むばかりなので、今は精神安定の為にボチボチやってます。てことで、今年もハロウィン画像作りました。いつもは楽しいイメージばかりでしたが、今回...
一体自分のおかれた状況をいつ抜け出せるのか、彼は食べ進める箸の運びを止める。代わりにコーヒーを傾けた。 ここまで歩いた短時間に、新商品を身につける流行好きの姿を確かめられた。開発の準備期間は三年、現物化の許可にこぎつけて二年、計五年の歳月を注ぎ込んだ商品がまさに今人の手に、いいや腕に渡って、もうそれは満足といってもいい。商業目的とはいえ、開発者の根本は純粋に未知の領域に思えた私の突飛な発想の具現化、それだけが望み。ブルー・ウィステリアという世界規模の看板はそのためにこちらが利用しているようなものだ、会社自体への貢献度によって報酬の増減があろうとも、私は金銭を天秤に掛ける、ほとんどの開発者には当…
昼下がりの市内、テイクアウトのランチを片手に男はコーヒースタンドのちょうど切れた列の最後尾に並んだ。洋風建築を思わせる飲食店の行列に並んだ時はそちらもずらりと人が並んでいたのだった。目の錯覚に思えたが、よく考えれば、コーヒーの出来上がりは数分程度、対してランチのテイクアウトは注文を受け取り、品物を運び、手渡し、料金を徴収するんだ、比べること自体が間違いというもの。 仕事は休み。週末が稼ぎ時なので、平日に休みが回る。 警察の質問に、答えた。男は思い返す。 当日の飛行が法律に抵触するとは思えない。私は飛行船のパイロットで、停電のあの日は飛行船のフライト予約が埋まらなかったので、飛行船は格納庫に納ま…
「ないとは言い切れないね」 「そうですか、それはそれは」次の仕事を彼女は探す。「先輩、先輩って」 「……なに?」 「休憩ですよ。それ私が代わります」 「うん、そうね。もう休憩の時間か、あっという間だ、びっくり。じゃあ、お先に休憩いただきます」 「店長、気に触ることでも言ったんじゃないんですか?」厨房を出る館山を見送って、小川がこっそりと僕に真相を確かめた。 「意見の変更は受け付ける、これはいったかな」 「店を離れる、これは結構堪えますよ、店長とは違うんですから」しんみりと小川が呟いた。国見の位置に彼女は陣取る。ステンレスの壁面を物悲し気に見つめる小ぶりな瞳、片目がみえた。 引き続き店が明日も存…
今日はきれいなピアノ曲をホームページにアップしておきました。 ピアノ曲「紅葉していく秋」を公開! - 独学ピアノブログ「ゼーレンフォルノーツ」今日はきれいな…
「安佐、あんた、どうしちゃったの。えらく優等生な答えじゃない」ホールから国見が言った。姿が見えないのは、カウンター席に座っているためだ。 「馬鹿にしてもらっちゃあ、こまりますんで。私は実はこう見えて、スマートに物事を考えられる才能に溢れているわけなのです、はい」 「溢れすぎて、こぼれちゃうから、普段のあなたは抜けているのね」国見が的確に矛盾点を強打する。 「騙されましたね。それは相手に油断させるためですよ。ようしようし、蘭さんもひっかかりましたね、くふふふふ」 「今日は何曜日?」国見が訊く。 「火曜日ですよ」 そがれた勢い、流れに水を差された小川は、会話の内容をすっかり脇に置き去る。 「あれれ…
「お店の改装を遅らせて、できればこの通りの空き店舗を探して移るのなら、お客さんの誘導だって可能です」作業とは裏腹に彼女の口調が勢いを帯びる。しかし、行動に反比例、首を傾けてサルサソースのガラス瓶を見つめる一定の角度は保たれている。 ドアが閉まって、小川の大げさため息が聞こえる。事実、大変だったのだろう。ただし、僕は感謝の弁は述べないつもり。当然のことであり、だけれど褒めて欲しいという提供側の労わりはあえて取り除くべきだ、そう店主は考える。気にかけているが、本筋はそこではないことを感じ取れてくれたら幸い。もしも、見過ごしこちらの配慮のなさに嫌気がし、窮状を訴えてこようものなら、時と場合、頻度によ…
彼女ならば、と店主の確証は割合で言えば、五割以下だろう。見守る、成長を促す、チャンスを与える、どれも店主の考えには当てはまらない。すべてはお客に還る。それこそが店の存在理由、と店主は考える。彼女たちが僕の仕事の意味を理解し、体現、料理を作り、提供し、お客に与え、お客は次に足を運ぶ流れを生むことが店の理想だ。 小川が店をバタバタ出入り、蒸し器に次の一団を送り込むと、出来上がった料理を持って店外に運ぶ。レジは外に作っていた。肌寒さを出来上がりの湯気でお客の待機時間を紛らわす作戦を取ったのだ。到着時刻どおりに姿を見せるバスよりも、次の駅を出た地下鉄のアナウンスの方が苛立ちと焦りを取り去ってくれる。 …
シンプルに手を加えたサツマイモの人気は予想をはるかに上回った。当初サツマイモの素揚げを作る予定を、今日の今さっき、変更を加えた。お客さんが食事場所まで戻る時間を想定したら、三十分の時間経過では味が極端に落ちてしまう。油を吸いきってしまし、酸化が早急に進行するだろう、想像が支配した。よって、薄いてんぷら粉を衣につけて、サツマイモのてんぷらはサツマイモまんと共に、サツマイモを生地に練りこむパスタのセットメニューとして形態を変えた。この程度の変更を従業員たちは毎日にさらされる。たぶん、彼女たちにとっては変化率の低い僕の要求と、感じているだろう。 調理台を覆い隠すステンレスのバット、濡れ布巾をひらりと…
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「前を」 「ああ、ごめん。まったく僕に興味がないのは、うーん男としては悲しいね」 「すべての人にちやほやされたいのでしょうか?」種田は仕方なく話をあわせた。普段は確実に無言でやり過ごす、問いかけ。 「そう、言われると口ごもっちゃうな。どうかな、ああんと、やっぱり好みのタイプに言い寄られて欲しいよね、心理としてはそうでしょう?」 「では、大勢の好みのタイプに言い寄られるのは?」 「うっ、なんだか僕の意見を踏み潰そうとしてない?」 「しています」 「はっきりと、まあ」車列の先頭から徐々に停止の波が打ち寄せる、車がひとつ前の車両の数十センチ後方へ速度を落とす。「だけど、大勢の中から選別するのって、い…
日井田美弥都の指摘は主に二点。身元不明の死体と死亡当夜の現場の状況は何らかの意図を含む。もう一点は、私たちのアプローチが捜査の手詰まりの要因である。 また、頼ってしまった。種田は顔をしかめる。まったく、情けない。一般市民を頼る警察に信頼などを置けるものか。仕方ないと言い訳を立てたのは、しかし私自身だ。種田は、何気ない視線をフロントガラスの向こうで煙草を吸う鈴木を見つめる。彼は雨よけに張り出した庇の裏側を覗く、鳥の巣が見えた。ツバメの巣のようだ。 鈴木が車に戻る。 「手紙に隠された暗号とやらは見つけられた?」エンジンをかけて鈴木がきいた。お尻に入れた財布を取り出す動作で、助手席側に顔が迫る。が、…
ええ、そうですね、そろそろ時間が気になるのでしょう、約一分で、それでは事件の説明に移りましょう。ああ、ただし、いっておきますが、あくまでこれは予測であり、不確かな要素がたぶんに含まれた想像であることを、お忘れなく。はい、急いでますか、ええ、私もあなたたちとのおしゃべりで大幅な作業の遅れが発生してます。明らかに喫茶店の店員の業務を逸脱している、と訴えることも可能でしょう。そうですね、黙っている方が利口ですよ。私に喋るな、とは口が裂けても言えません、本当に黙りますし、それが私の標準の機能ともいえますので。さて、事件についてはどこから話しましょうか。端的に、ですね。まず、死体の移送が警察によって迅速…
なんか暗いよ!今日の2曲はホームページの方に置いておきました。 ピアノ曲「僕に足りないもの」「愛せぬ対象」を公開! - 独学ピアノブログ「ゼーレンフォルノーツ…
美弥都が発した言葉は息継ぎを忘れる。とめどなく、制限時間を設けなければ、永久に彼女の透明な声を聞いていられただろう。コーヒー豆の容器が並ぶ背後の棚に置いてあったタイマーつきの時計が、午後一時を知らせる合図を奏でたので、事件の回答はそこで途切れた。 種田は出力した文面を車内で読みふける、現場に向う海道沿いのコンビニの駐車場に現在、車を止めていた。 文面は以下のようであった。 「お互いに面倒なことに巻き込まれましたね。あまり、警察の方々への協力は控えるよう、忠告をしておきます。一度や二度が、三度四度と回を重ねるのが、この方たちの手法ですから。事件についての、見解でした。はい、応えますよ。時間は平等…
またの割れた大根「またわれ」が、自我を持ち旅に出る冒険ストーリー。おおまたわれに会いたくなったまたわれは、かつて貰った笛を吹いてみることにした。しかしこの笛、不思議な点があるようだ。
「そちらの刑事さんが、理解されてると思います」美弥都が送った茶色の瞳を種田はがっしりと受け止め、弾き返してやろうと願ったつもりが、すぐにそらされてしまった。読まれていたか……まったく、抜け目がない。 「まず、私の本意でここへ、あなたを目的に、話を窺いに、わざわざやってきたのではありません、という弁解が必要です」鈴木は種田を睨みつけた、黙っていろ、彼は口を塞ぐジェスチャー。 「あの、こいつじゃなかった、種田のことは気にしないでください。僕が事件についてのレクチャーを受けに来た張本人ですから」とん、と鈴木の胸が叩かれた。折れそうなほどの厚み。内部に響くどころか、破壊の不安を煽ってしまう。 「何度目…
喫茶店では何者かが監視カメラで見張っているかのように、こちらが動きやすく店内の配役がこぞってどこかへ誘導されるみたいな場面の転換が訪れた。トイレに立つ種田を合図に、カウンターの光景は鈴木を残し、体温を残す素のスツールがトイレを出た彼女を出迎えた。そういえば、ここの店主の姿は見えない。種田にとっては好都合、といえる。ここの主人は警察に対する警戒心が人一倍強い、もちろん警察が店内において殺人や死体、拳銃などのワードを発するのだから、弁解の余地はないものと受け止めている私だ。 「日井田さん、少しお時間、よろしいですか?」鈴木は大胆にも片付けに奔走する彼女に問いかけた。シンクに流れる水流が聞こえる、種…
↓大きいサイズはこちらをクリックイラストのTシャツやトートバッグなど販売中ですhttps://www.ttrinity.jp/shop/mumyo/一枚絵・『コーニ』
店主が語った内容を鈴木が打ち込み、印刷した用紙をカウンターの衝立に店員に見えるよう鈴木が置いたのが、数分前。美弥都は作業の片手間に紙を覗き込む仕草を一度だけ行った。一度で覚えたのだろう。そうではないか、画像として記憶にとどめた、速度だったと思う。お客が帰らないと、事件の話は聞けない、これは鈴木も承知していて、喫茶店には付き合うが、三十分以内に返答が聞かれなければ、即座に店を出て現場に向う、と種田は車内、喫茶店の駐車場で約束を交わしていた。現場に戻ったとして現場周辺の捜査は限られているのだから、と鈴木は反論したが、ネットに溢れた目撃情報の変容が気にかかったのだ。昨夜自宅に戻り、珍しく種田はネット…
店主が語った内容を鈴木が打ち込み、印刷した用紙をカウンターの衝立に店員に見えるよう鈴木が置いたのが、数分前。美弥都は作業の片手間に紙を覗き込む仕草を一度だけ行った。一度で覚えたのだろう。そうではないか、画像として記憶にとどめた、速度だったと思う。お客が帰らないと、事件の話は聞けない、これは鈴木も承知していて、喫茶店には付き合うが、三十分以内に返答が聞かれなければ、即座に店を出て現場に向う、と種田は車内、喫茶店の駐車場で約束を交わしていた。現場に戻ったとして現場周辺の捜査は限られているのだから、と鈴木は反論したが、ネットに溢れた目撃情報の変容が気にかかったのだ。昨夜自宅に戻り、珍しく種田はネット…