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ミステリー小説を愛するフリーライターが、自作の小説を投稿しています。
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ブログ村参加:2018/07/28

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contaさんの新着記事

1件〜30件

  • 重いと外に引っ張られる 5-4

    「と、言うわけです」のびた麺に琥珀のスープ。食べ急ぐ繁盛店ならではの後続への配慮もいらない。あんな狭い空間で早く食べろと急かさせて食べるのはどうも味を求めてまで並ぶ意味が無いように感じる。相田はとっくに食べ終わり、タバコを吸っていた。鈴木も最後の一口をすすり、グビッとスープを残り半分ほど飲んだ。 「答えに筋は通っている。捜索願は警察内で共有していないとそもそも意味が無い。怪しいが、これ以上踏み込むにはもっと明確な証拠が必要だ」 「彼女はやはり犯人ではないのでしょうか?」 「さあな。ただ、親子だから殺さないとは言い切れない」 「子供を殺すってどんな気持ちなんだろう……」 「感情移入は客観的な視点…

  • 重いと外に引っ張られる 5-3

    「娘さんの捜索願を出していますね、発見された日の翌日に」 「娘が帰ってこないことなんて今までなかったの。親が子供の心配をして当然でしょう、なにがいけないのよ」 「変ですよね」鈴木はわざと、間をとって先を急ごうとしない。相手がじれるのを待っている。本当はこんな駆け引きはしたくはない、もっと正攻法で仕事がしたい。一度、そんな自分に嫌気が差した。汚れていたけれどまともだと思っていた奥底まで、ひどく汚されたように仕事を続けていると感じていた。 純粋であると、傷だらけになる。疲れる、休む、傷つく、疲れる、休む。この繰り返しで覚えたのが仕事だからと割り切ることで毎日を凌いでいた。けれど、まだ完全に分けられ…

  • 重いと外に引っ張られる 5-2

    「お前、給料何に使ってる?」 「へ?なんだろう、そんなに高額な買い物はしませんから、それにカードもめったに使いませんし」 「貯金なんかしてないよな?」 「してますよ、そりゃあ、このご時世ですからね、公務員と言えども絶対はないですから」 「いつまたっても、お前は高額商品を買わないな」 「なんでです?車だって買いましたよ」 「ボーナスを貯めて一括で払ったんだろう?」 「えっ、なんでそれを、僕言いましたっけ……」 「言ってないが、それよりそっちの捜査は?」鈴木は口に運ぶ寸前で箸で掴んでいた麺をスープに沈める。 「あの質問をぶつけてみたんです」 鈴木は早手美咲の勤務先の事務所を早朝から訪れていた。前回…

  • 矢井田瞳のニューアルバム「Sharing」のレビュー!

    ヤイコこと矢井田瞳は2020年10月14日に発売された11枚目のアルバム「Sharing」を発売しました。収録曲にはアルバム前に発表していた「いつまでも続くブルー」と「ネオンの朝」に加えて、産経新聞が主導するプロジェクトの一環で作製された「あなたのSTORY」が含まれています。デビューから20周年を迎えた矢井田瞳。彼女の心情を正直に反映させたアルバムを3週間ほど聴いた感想は以下の通りです。矢井田瞳のニューアルバム「Sharing」を手に取る際の後押しになればと思い、個人の意見を書きました。ちなみに、私が購入したアルバムはDVDがつかない通常版です。Sharingアーティスト:矢井田瞳発売日: …

  • 重いと外に引っ張られる 5-1

    「そういえば相田さん、銀行強盗の捜査にも駆り出されていましたよね?」 「結局は人員が余って監視カメラを見直しだけ。まぁ、デスクで暇しているよりかはマシだったけどな」 「で、どうでした?なんか僕、見落としてたとこありました?」鈴木はラーメンをすする相田にそれとなく本題を尋ねるが、相田には鈴木の事などお見通しで、この質問のために並ばずに入れる店を選んで落ち合ったのだ。 「重田さち自体の情報が少ないから、これといってめぼしい情報はない。一人が好きだったんだろうな」 「そうですかねぇ?だって、子供がいたんですよ?」 「動物の本能だろう、それは。隠すことでもないし、かといってわざわざ見せるものでもない」…

  • 重いと外に引っ張られる 4-4

    「どこが論理的……」 「魔とは何でしょうか?心の隙間。あるいは、日頃の勤務態度がきちっとしてかつ警察という無性に近い奉仕も残業に含まれた。仕事だと理解しても定年までの全うが困難な職種です。私生活でイベントなり、付き合い、デート、趣味の時間、家族とのふれあいなどが全く存在しないとすると、通常の職種よりも鬱積したストレスは多いでしょう。特にデータをとって検証していません。ただし、正義感だけでは精神が持たないと想像がつくのです。私はテレビを見ないので知りませんけど、三件の事件にはそれなりに巷では騒がれていると考えると、その話題にちょっと手を加えるだけで、自分の行動が世の中に反映される。それもいとも簡…

  • 重いと外に引っ張られる 4-3

    美弥都はエプロンで手を拭く時間に考えをまとめたようだ。「……わかりました。これから10分で私に仕事が発生しないか、店長が戻ってこないかの両方が満たされれば、お話を聞きます。ですが、急な仕事ができたらそこでお話は終了とします。よろしいですか?」 「はい、それで結構です」 「どうぞ」手のひらを返して、彼女は熊田に差し出す。腕を組み、まくられた白いシャツからほっそりとした種田のそれとは種類の異なる白い腕が見えた。 「他殺と思われる死体が三体発見されました。どれも別の場所で発見の日時も異なります。他殺だと断定しないのは、死体に不審な点が見られたためです。どの死体も致命傷となる傷は頭部を鈍器のような固い…

  • 重いと外に引っ張られる 4-2

    三件の事件(ここでは銀行強盗は考えないこととする)はどれも女性が被害者である。それも独身の女性である。殺害場所と遺体の発見現場はおそらくは異なる場所であると推測された。第一の事件での被害者及び遺体周辺の血液量と致命傷となった際の致死量の血液に大きな開きがあることから犯行現場と発見現場は異なると断定された。第二、第三の事件も同様である。ただ、被害者の共通項は今挙げたような大まかな括りでしかないのだ。犯人は特定の人物を選んで犯行に及んでいるのではないのかもしれない。犯行現場は5キロ圏内に収まる。仮に犯人の行動範囲内での犯行とすれば大いに捜査の範囲が絞れ、地道な捜査によって何らかの証拠はつかめる。が…

  • 重いと外に引っ張られる 4-1

    駐車場はいつものごとく閑散として、囲いのブロック塀に猫が警戒の眼差しで数メートルの距離からこちらを伺っていた。石造りの建物に二人は足を踏み入れた。喫茶店の経営状態を図る指標は熊田は持ちあわせてはいないが、この店は繁盛しているのだとは理解できる。常連でないお客の姿がチラホラと見えるからである。カウンターの一番奥に座る。店主の姿はない、カウンターには日井田美弥都が陶器のような肌に乗っかる薄茶色の瞳で迎え入れた。テーブル席は埋まり、カウンターには誰も座っていない。冷たいに水が二人の前に置かれる。 「ご注文は?」種田の斜め後方から美弥都が注文を促す。 「コーヒーを2つ」熊田が種田の分も何も聞かずに注文…

  • 重いと外に引っ張られる 3-6

    佐田あさ美への容疑は今のところは黒からグレーへの変化具合で真っ白とまでは行かないのが現状。熊田は、じっと考え込んでいた。隣後方斜めを歩き、ついてくる種田が速度の一定で遅い熊田の歩きに文句も言わないで、はりついていた。エレベーターを待つ間も熊田は口を閉ざしていて、種田からは耳を塞いでいる姿がおぼろげに映る。駐車場に降りるときに、残したコーヒーの運命が気がかりとなる。失うと湧いてくる感情。駐車場の警備員とのやり取りも熊田はどこかおぼろげで、外面のいい愛想の良さ気な対応は鳴りを潜めて、ニコニコの警備員だけがどこか浮いて見えた。車の運転に多少不安を感じたが。思考と動作のバランス配分を変えたのか、信号や…

  • 重いと外に引っ張られる 3-5

    「会社に知れたら自分が取材の対象者になりかねないし、再び妹にもつらい思いをさせるかもしれない、だからまたま現場を訪れたと嘘をついた。そうですね?」佐田あさ美は静かに首を縦に振る。「あなたの会社ではゴシップ誌のような雑誌も扱っているのですか?」種田は世間に疎い、まして芸能や巷のニュースには一切関心がない、否持てないのだ。 「雑誌に載せるのだけは避けたかった……。もちろん事実を伝えることが使命ではありますよ、私達の仕事は。でも、こと自分に降りかかるとなると簡単に切って捨てたりはできないのです。それに、家族にも被害が及ぶ」 「記事を書くとはそれ自体に人を傷つける道具となっている。まあ、その感覚も麻痺…

  • 重いと外に引っ張られる 3-4

    「確かめたい?」 「残ったのは、私、ここにいる種田、最初に駆けつけた警官と次に来た鈴木という刑事の4人です。私が乗ってきた車の運転席にカメラを仕掛けました。鑑識から借りたものです。運転席のハンドルとフロントガラスの間です、前方が映る場所に設置し、制服警官を除く3人はトンネルに入りました。警官は見張り役ですから、入り口そでで立っているのが通常の業務です。しかし、署に帰り撮った映像を見てみると、警官が怪しい動きをしていたのです」 熊田たちが現場から立ち去った後、見張り警官の交代時間を過ぎてから現場に戻ってきた鑑識の一人がトンネル脇で遺体の体表面から検出されたエンジンオイルと同質の液体を発見、採取し…

  • 重いと外に引っ張られる 3-3

    「お前は礼儀正しいのか行儀が悪いのかわからん」 「まずお前ではなくて、種田です。それに、礼儀とは形によって心が伴うのだとすれば、礼儀の学び始めにはただ教えられたように体を動かしているに過ぎない。だとしたら、相手を敬うなどの感情は持ち合わせていないと言えます。つまり……」 「ああ、いい、悪かった」言葉を途中でさえ切ると、佐田あさ美がトレーにコーヒーを載せて入ってきた。 「手短にお願いします、これから取材の予定がありますので」 「まず、証言では休憩のために国道から道を逸れてトンネルに繋がる道に入ったと、そうおっしゃった思うのですが」 「ええ、そうです」 「あの道は過去に通った経験がありますか?」 …

  • 重いと外に引っ張られる 3-2

    「そんなぁ、……でも重田さちの周辺には特に親しく付き合っている人物はいなかったと思いますけどね」 「お腹の子供の父親は特定できなったのか?」熊田が聞いた。 「携帯の電話帳、通話履歴にも職場の人間と両親の番号しか最近の通話記録は残っていません。電話会社に通話記録の閲覧を要請して確かめてみましたけど、履歴を消去した形跡はありませんでした。普通、友達とかに夜な夜な電話したりすると思うんですよ、女性なら」種田をチラッと見て鈴木が言った。 「それはお前の女性像だ。全てがそうとは限らない」どちらにも偏らない熊田の振れない解答。 「そういうもんですかねー」あくびとともに力なく声を出した鈴木である。 「さあ、…

  • 重いと外に引っ張られる 3-1

    捜査会議は翌日早朝からも行われて、主に鑑識からの追加報告の伝達だけでその他には捜査員からの報告は上がって来なかった。会議の終わりが、今日の捜査の始まり合図といったほうが正確だろう。会議は埋め合わせのお飾りであってもなくても良かったのである。 出勤時間の10分前に種田はデスクに座っている。通勤の電車の到着時刻が出勤時間と重なり合うのがこの時間しかないのだ。前後の時刻は早すぎるか遅すぎるかだから、ゆっくりと駅から署までの歩行でやっと10分前なのだ。雨が降りそうで降らないぐずついた薄曇り。薄手のコートが必要かもしれないと思い、今日は羽織ってきた。真っ黒のコート。いつものように顔に化粧っ気はない。 部…

  • 重いと外に引っ張られる 2-7

    窮屈な充満する人間同士の圧力のぶつかり合いが、まばらとなった会議室でもまだ残留の粒子が浮遊。会議の意義は果たしてあったのかとは誰も口が裂けても言わないは、管理監がただ一手に情報を握りあくまでも指示はこちらが出しているのだと知らしてめているその威厳を壊さいないためなのだ。奥底では、無駄、無意味、時間が惜しい、不条理、などの心情が渦巻いているだろう。意味のないことに、前代からの遺産でさえも受け継いで疑わずにこくんと首を縦に振る。あぐらをかいて当然の顔は、いつ崩壊の瞬間を迎えるのかは、知らされない。崩壊は突然やってくる。 我に返る熊田はタバコを咥えていて種田の射抜くような視線が教えてくれたのだと知っ…

  • 重いと外に引っ張られる 2-6

    「はい」種田が手を上げた。ペンで今度は種田が指されるとすっと音もなく立ちがある。「重田さちは、発見の前日の午後9時に勤め先の塾で授業を終えた後、午後10前後に同僚と共に学習塾を出ています。自宅は、S市で通勤は電車です。被害者の駅まで歩く姿を同僚が確認しています。また、鑑識からの解剖の結果、彼女は妊娠していたようですが、自宅からは産婦人科への通院形跡はなし。おそらくは彼女自身妊娠に気がついてはいなかったと推察されます。以上です」 「ふーん」管理監が息を大きく吐く、そして、微かに吸い込む。目をぐるりと回す。「で、また別の事件だって?」 「銀行強盗です」お偉いさんの一人が応える。 「それは後だ、次の…

  • 重いと外に引っ張られる 2-5

    一件目の事件、早手亜矢子の母親、早手美咲が遺体の発見時刻近辺で最寄りのインターの通過したのは果たして事件との関連を促す事実かどうかの是非を威嚇をもった視線で捜査本部のお偉いさんが一同、捜査員を見回す。しかし、確実な解答なしにむやみにその視線に目を合わせることは、執拗な破綻のない解答でしか切り抜けられないのを知っているから誰も顔を上げたりはしない。暫くすれば、ムスッとして座るのだ。 咳払いをしたお偉いさんが諦めたように言う。「では、現状で判明した情報はなにかないのか?熊田、お前たちが捜査にあたっているんだろう?」熊田は鈴木にこれまでの報告をするように二本の指を二回上向きに、軽く振り、立つように促…

  • 重いと外に引っ張られる 2-4

    熊田が早々と退出した。そういえば、タバコを吸わずじまいであった。 相田はブース内でまた一人となる。しばらく、時間にして数分。今度は鈴木が姿を見せた。こっちは本当に疲れている様子で頬は少しコケた感じが見える。「おつかれ」 「ああ、どうも、お疲れ様です」はあと、ため息のあとに連動してタバコを吸い始める。 「何だ、お前。もうちょっとしゃきっとしろよ」 「車から降りたら突然体がだるくなって、色々と原因を考えてみると空腹が妥当な線じゃあないかと思いましてね」 「だったら買いに行けよ。それぐらいの時間ならまだある。どうせ会議は6時ぐらいからだろう?」 「そうなんですけど、お腹が空きすぎて買い行く体力がない…

  • 重いと外に引っ張られる 2-3

    「さあて、そろそろ行くかな。じゃあ、今のうちにゆっくりと寝ておけ。どうせ直ぐに仕事が舞い込んでくるから」ポンポンと鈴木の肩を叩いて部長はそそくさと消えてしまった。 嵐のように去った部長である。寝ぼけがまだ残っている相田である。肘をついてぼんやりと窓をみようとすると、自分のデスクに灰皿が置かれていた。これでは自分がここでタバコを吸ったことになるので、仕方なく灰皿を喫煙ルームに持って行こうとした時にばったりと女性事務員に出くわして、持っていた灰皿を目ざとく指摘され、キャンキャン、ギャンギャンと小言を言われた。私じゃないんです、と言っても室内には相田の他に誰も居ないのだから、その言い訳は通るはずもな…

  • 重いと外に引っ張られる 2-2

    「部長がいないのは当たり前ですから、もう慣れました。けれど一応はこの班の長なのですから何もしなくても姿くらいは見せないと……」仕事に対して自分の考えがやけに優等生のそのものであると相田自身は思っていた。口に出し、言葉として選んでみると意外と自分の考えは思っていたよりも別の側面をみせることがある。 「そうだな、尤もな意見である。しかし、私も仕事をしていないわけではないのだよ。見えないところでコソコソと動き回っていたりもするんだ」灰皿に送られた部長の視線からぐっと相田に急角度で移る。相田はビクリと体が反応。威圧でもなく、色気の類でもない。なんだろうか、暖かさと冷たさの当時攻撃のような言い表せない視…

  • 重いと外に引っ張られる 2-1

    銀行内を監視する映像のチェックが終わり次第、通常業務に戻れとのお達しが下り、銀行内の証拠採取の終了とともに相田も署に帰ることにした。抱えている事件もなく、現在は要するに暇である。車の運転も事件を抱えている時はずっと頭の隅から仕事が離れずにいるが、久しぶりの快適なドライブでなんとも優雅な午後のひとときを過ごしていた。 O署内、二階の一室。デスクには誰もいない、もちろん例の事件の捜査ためだろう。熊田と種田、それに鈴木が捜査担当者である。相田といえば、非常時のための出動要員としてフリーの状態を維持させられていた。事件なら事件用の緊張感を維持可能なのであるが、何度も切れてしまう緊張下では仕事にもやる気…

  • 重いと外に引っ張られる 1-14

    「なにか、わかりましたか?」彼女に雑談のための余裕はないらしい。常に仕事を絡めた発言しかないのだ。 「車に乗っていないのは確かだ」鈴木は二重玄関の引き戸を閉めて熊田のもとに駆け寄る。「この車も今日は使っていません。それに、残り五軒の家の車もトンネルを抜けたりはしないと言っていました」 「あの古ぼけた建物はなんだ?」熊田は顎をしゃくって女性が応対した家の斜向かい、灰色の建物をさす。 「誰も住んでいないって話ですよ。ちょっと待って下さいね」道路を横断して建物の敷地に足を踏み入れ、ベニヤ板で封された玄関に小走りで駆けよる。「アパートです。ええっと、海凪荘と書いてあります」剥がれたタイルに微かに残る文…

  • 重いと外に引っ張られる 1-13

    「……」熊田はタバコを取るだけなのに嫌に手間取っている。ドアを開けて腰をかがめていた時間が長すぎた。怪しい行動は続き、ドアを閉めると車のロックもかけた。鈴木は捜査の途中で駐車された警察の車両を盗んだ事例など聞いたことがない。まして、この人気のない道路である。通行人も歩いてはいないのだから、それほど慎重にならなくてもと思う。 3人は遺体が寝かされていた場所を避けて先へ進んだ。トンネル出口は、入り口と特に変化、違いは見られない。ざっと周囲を見回して、やはり伸びた草と民家と空だけは多少赤みを帯びてきたようにも見える。こちら側から国道へ続く道に民家が五軒と市営住宅のような年季の入ったマンションとは言い…

  • 重いと外に引っ張られる 1-12

    「……そうですか。この場に残ってたのは別のアプローチから現場と事件を確認するためです」細めた目を熊田にぶつける。解凍直後は一段と機械的な話し方である。 「事件じゃないっていうのかい?」 「いいえ。事件ですがすでに私達が接見した事象はもしかした見せられた景色であった可能性が示唆されます」 「そうだ。我々が現場に到着するまでには約30分の時間が存在していた。まずは遺体を発見した彼女が通報、続いて制服警官の到着、次に鈴木と我々、最後に本部からの鑑識」 「いつもと変わりないですよ。むしろいつもよりは私達の到着が早かったくらいですから」 「……遺体はいつ放置されたのでしょうか。現場には争った形跡も見当た…

  • 重いと外に引っ張られる 1-11

    「あの、ちょっと?」警官が機能停止した種田に心配の声をかけるが熊田がそれを制する。 「構うな、いつものことだ。すぐに帰ってくる」種田はたまにこうして充電が切れたように彼女の時が止まる。過剰放出によるエネルギーの消費を遮断し外部との接続を断絶。結果、音も聞こえず視界も真っ暗闇。急に3次元の異空間に誘われて闇と自分が同化する。これで論理展開に集中。 鈴木の見解によると種田は必要以上に周囲に対して気をばらまいている。中にはいられないように厳重な門を各所に括りつけ子供の侵入すら許さない強固な外部との隔たりを絶えず構築している。種田は100か0なのだ。空気と燃料の混合比を変えるためのツマミはついていない…

  • 重いと外に引っ張られる 1-10

    熊田と種田がサイドミラーに映る。熊田のシビックで待機していた二人が鈴木の車に接近。 「出てこい、仕事だ」窓をこんこんと叩いて鈴木が窓を下げると熊田が低い声で言った。怒っていると初めて会った者は思うがこれが熊田の普通の状態である。 「鑑識のからの報告を待つんじゃないんですか?」鈴木は窓から首を出して、先ほどの発言との矛盾を指摘する。 「あの死体は女性だそうだ」首を立てにくんくんと振り、熊田は言う。 「……すると、三件目の事件ってことですか?」頷きと死体は女性の言葉で鈴木は飲み込んだ言葉を反芻、閉じていた口が自然とひらく。 「現場も前の二件とそれほど離れていない。被害者は女性だからな。まぁ、模倣犯…

  • 重いと外に引っ張られる 1-9

    「かなり、粘性は高いです。顔や頭、肩に付着していたとすれば歩行時に地面に落下しているはずですが、トンネル内の両側で入り口にはそれらしき痕はみあたりません」早足で奥の出口まで走り、前かがみで下を観察し、入り口の方もまじまじと地面を見ると種田は熊田たちに近づきながら言ったのだった。 応援の捜査員(ほとんどが鑑識であったが)のが捜査に加わると熊田たちは現場から引いた場所で作業を見守るしかなった。鑑識の神が白髪頭をポリポリとかいてダルそうにワゴン車から降り立つのが見える。周辺の住民がわらわらと制限された区域を覗くように引かれたテープいっぱいまで押し寄せて非日常を生きていた。 午後3時、鑑識たちが帰って…

  • 重いと外に引っ張られる 1-8

    「そっちの肩を持て。上に上げるぞ」黒い液体が薄れた箇所を持ち仰向けになった死体の肩を鈴木が腰あたりを熊田が持ち、ぐっと地面との空間を開ける。 死体の背中も体の前面同様に黒く汚れていた。覗きこんで背面からお尻を観察すると、目配せでゆっくりと死体はまた地面に接着。人の体は力が抜けるとこれほど重かったのかと思うのである。 「全体が黒いですね、油のような粘りもある。樹脂にも似ている。でもやはり色は黒ですね。染色や色が移ったとは思えまえせん」 「調べればわかるさ」熊田は呟くように言う。「車の中でPCをいじっているのは誰だ?」鈴木を見ないでいった。 「通報された方です。たまたまここを通りかかって見つけたそ…

  • 重いと外に引っ張られる 1-7

    それから、20分後に熊田のシビックが鈴木の車の後ろに停車。熊田たちが到着するまでに車は一台もこの道を通過していない。 「お疲れ様です」駆け寄る鈴木。熊田は日差しを暑そうに遮るように額に手のひらを当てて、苦い顔をした。 「現状は?」 「おそらくは人だと思いますが、倒れています。呼吸、脈ともにありません」 「おそらく?」ポケットから出した白い手袋をはめながらトンネルを目指す。現場は黄色いテープが目印となっている。種田も二人の後ろから足音を立てずに追従する。暑さにも寒さにも一言の文句も言わない後輩を鈴木は本当に人だろうかと思ったことがある。しかし、今ではそれも当たり前となり特に種田に対しての批判的な…

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