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【本】村上春樹『回転木馬のデッドヒート』~人生のエアポケットに現れる奇妙な物語の断片たち~
1、作品の概要 1985年10月に刊行された村上春樹の全9編からなる短編集。 講談社の文芸PR誌『IN☆POCKET』で隔月で連載された作品と、2編の書き下ろしを加えてた。 2、あらすじ ①はじめに・回転木馬のデッド・ヒート この短編集の前口上的序文。 今作の短編たちは、事実に即した文章であり、それらを小説の容れ物を用いたスケッチである。 ある種の無力感のように春樹の心中にたまっていったおりたち。 回転木馬のデッドヒートのようにどこにも行けない。 ②レーダーボーゼン 妻の友人とひょんことから2人きりになった筆者は、彼女から父親と母親が離婚したきっかけについて語られる。 とても唐突な離婚で、母は…
「タクシーに乗った男」感想-村上春樹著-回転木馬のデッドヒート-絵の中に息づいていたものとその終わり
筆者が以前画廊訪問記事を書いていたときに取材した「ある品の良い40歳前後の女性オーナー」との話を紹介している。 彼女がその絵を“自分のために”購入したのは、「タクシーに乗った男」の横顔に惹かれてシンパシーを受けたからだという。絵を燃やした後日本に戻り十数年たった昨年のこと、アテネのタクシーで絵に描かれていた「タクシーに乗った男」と隣り合わせになった。その後の彼女の感覚の揺れがとても気になった。
「回転木馬のデッドヒート」村上春樹著-「野球場」感想-拡大された世界から見えた現実とは
不思議な読後感が残る話だ。お話は主人公の小説家が『彼に小説を送ってきた銀行員から聞いた話』だ。この小説がなぜ不思議に思うのかというと、登場人物である「彼(銀行員)の話が自分の気持ちに素直である」のに、「話にイマジネーションが強く影響している」のが理由なのか「銀行員の心の中がはっきり見えない」ことだ。それを聞いている小説家もそれについてコメントしない。しかし彼の体験はとても興味深いものでした。