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愛した猫の亡骸を引きずったままアザの消えなくなった足で 歩く戦う男たちは傷を 負う女たちは乳の 出なくなった乳房を赤子に しゃぶらせながらもう一人の 幼子を看る老婆は杖と オールマイティパスを持って笑う科学は 進歩し続けるそのうち 私のコピーが出来るかも知れないそれが 万物の霊長ということなのか私は まだ母の子宮の中にいてへその緒で 繋がっている忌まわしいへその緒なんか自分で 食いちぎって血まみれ...
【現代詩】「暖かい日の午後 書店で」 心豊かな暮らしの起点のイメージ 現代詩の試み
暖かい日の午後 書店で 買い物ついでに 立ち寄る書店 子供は 入り込まない 文庫本がぎっしりと並ぶ 好きな場所。 そこに あ、 赤いスカートの 少女 まだ 小学生 かな 並んだ背表紙を 目で追っている 本を 選んでいる その身体が 弾んでいる そして 一冊を引き抜き 読みだした と 次の一冊を 手にとった。 ふいに 僕の喉元から 胸にかけて 冷たい水が 流れた 気がした ああ 少女は 本の中にある なにか を つかんだのだ それは 心を厚く 深く する なにか。 小さな友人よ 僕は あなたを 歓迎する あなたは 心の求めるままに 時には 心を悲しみで溢れさせて これからなんども 本を 手に取る…
意識と無意識の間をさまよう快感・・・無意識に落ちたり意識に戻って来たりを繰り返すベッドに入ってまどろんだままの わたしはああ・・・余りの快感に魚になって 睡眠の浅瀬と 深みを行き来する狭い不眠海岸で泳げる時間は 限られてるどうかこのままでいさせて・・・!もう少しだけ 泳いでいさせて・・!そう懇願してもわたしの意識は容赦なく不眠海岸へ 打ち上げられいつものように 水を求める#ネガティブのままでいい#シ...
【現代詩】「雨に埋る空洞」 汽車に乗ってここから立ち去る子供たちのイメージ 現代詩の試み
雨に埋る空洞 冷たい風の吹く春の日 黒い皮袋 鉄の軌道を滑り 暗い穴 鉄の輪を握る白いひとがた の 枯れた枝に絡まる 蜘蛛の糸 空間の傷 一人暮しの春 窓硝子を歪ませる ぬるい雨に溶ける 空洞 次第に近寄ってくる音を怖れ 工場群の 遠く響く金属音に紛れこむ 真夜中の激しい腹痛 子供の頃 風が吹き去った後 木の下に不意に現れた 小さな猫 の死骸 立ち上がる鬼面の人影 暗い階段 温かく湿った布団 この 深い空洞から引きずり出す修学旅行 行きたくない 谷底 を滑る汽車の回転する座席 客が開け放たれた扉から 何人も 外に投げ出されそこに生まれたばかりの猫 の子が たくさん 捨てられて 獣の酸のような匂…
わたしは希望よりも絶望と 仲がいい光よりも闇と 仲がいいだって希望なんて持っていたってそんなもの簡単に絶望に覆ってしまうからだったら最初から絶望と 仲良くしておくほうが心が現実を 受け容れられる光の中にいると却って光は 見えない闇の中にいるから光の輝きが 見える絶望の中にあっても闇に棲んでいてもそういう自分と向き合えたらやがてあの空の下に出られると 信じてるそれはきっと希望 とは呼ばない楽 と呼ぶ...
【現代詩】「横断する楔」 層間を高速で滑り落ちる硬い楔のイメージ 現代詩の試み
横断する楔 楔。 水晶の楔。 回転する水晶の楔。 遠い分光器。白色の空間から色彩を削り出し、撒き散らす。中世都市設計図の裏面。深い空隙。不意に照らし出される、底の獣。黒く、強くしなる尾。硬く、張りつめた肌。冷たく、湿って… 狂い。 色調の狂い。 滑落する色調の狂い。 明るい隣室。ふと、薄く、重なる。祖母の死んだ暗い夜、何が聞こえた。台風の荒れる夜、部屋の隅で、何を見つめていた。この、目、か、この、目、かこ、の目。そんなもの、はじめから、なかった… 旋律。 反復する旋律。 重く湿った反復する旋律。 身体の層間に沈む、律動。なぜそれは、暗闇に低く響くのか。逃げたものが押しのけた空間。横断する楔が削…
【現代詩】「関門海峡」 すぐそこにあるとても遠い場所のイメージ 現代詩の試み
関門海峡 水面が、早朝の陽の光を映して輝いている。 穏やかな海面のすぐ先に、対岸が見えた。 近いのだ。海底の隧道を使えば歩いて渡れる。 その、ほんの少し先に渡ることを拒まれた一族がいた。 権門を誇った人たちだった。 その多くが、この海に消えたという。 それからいくつもの時代が過ぎた。 海峡は変わらずに光を照り返している。 雪の処方箋 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 Amazon 腐朽船群 (暖淡堂書房) 作者:暖淡堂 暖淡堂書房 Amazon 【現代詩】「よく晴れた朝に」 次の季節は常にすでにすぐそばにきているイメージ 現代詩の試み またお立ち寄りください。 どうぞご贔屓に。 dantandho…
今週の詩は「海」という詩です。海の日が過ぎました。夏本番ですね。ぜひ、以下のリンクより動画をご覧下さい。詩「海」https://youtu.be/VS_zh3…
どんよりとした頭なのに常にどこかクリアでは眠ることさえ赦されない重たい体を引きずるように不眠鬱々通りを歩き続ける何の標識もない街灯もない道しるべすらない暗闇だけの不眠鬱々通り闇の中で目にするコンビニの灯かりはまるで私の救世主この苦しみの中微かに灯る煙草の火種はまるで遭難者のSOSだからこうしてまた、闇に埋もれ不眠鬱々通りを歩き身悶える孤独の路地裏でいつも迷い忌まわしいだけの記憶ならもういらないと自...
【現代詩】「よく晴れた朝に」 次の季節は常にすでにすぐそばにきているイメージ 現代詩の試み
よく晴れた朝に つるつるした 秋の 青い 空 切り出された 先端で いびつな円が 身をよじっている 待ちわびた 秋なのに もう 夏を 思い出している 肌の下が さわさわと ざわめいている 小さな冬の塊 家の陰で 震える それを 身体に抱えて 凍える よく晴れた 朝に 波の頭を 一つ 乗り越える 安定軌道をふと飛び越えた 円 が 滑り落ちる 不愉快な面を 逃れた円は 苦しく笑い くるくると するすると 螺旋を描き 加速し 地面に 突き刺さる と 冷たい風 命を断った 彼の言葉に 震えたのは ここ に 溜まった 小さな 水銀の 滴だけ ほら 震えている きぃん と 響いている 雪の処方箋 (暖淡堂…
夏の未明の優しい風に 吹かれて静寂 という名曲を聴きながらわたしはまだ薬のまわった頭でアイスコーヒーのグラスを傾けぼんやりと煙草のけむりの行方を追うクリアな頭だと不安に支配されて動けなくなるというのに薬のまわった頭は不安にベールをかけるようにどこかが麻痺してとても楽静寂 は無音とは違う耳を澄ますと静寂の奏でる音が聞こえて来るしんしんと悲しいしらべが五線譜に乗って名曲になる信号は誰もいないのに規則正...
【現代詩】「発 熱」 深い地中で動き続けるマシンのイメージ 現代詩の試み
発 熱 それが動き始めた時のことを もう誰も覚えていない それが動いていることさえ もう誰も知らない 緻密に重なった 歯車と 腕と 細かな螺子と その中心で 静かに熱を吐いている 水晶の響きに 小さな螺子が震える とても滑らかに 触手を延ばす 複雑な器官 精密な機械 いつもその外側にあり 熱を送り続ける 黒体 発熱体 それはじっと すべての器官から 機械から 切り離され 落ちて/ずれて いく時を 待っている それを失って 機械は 速やかに 停止のための 変化を始める その変化のみが 法則となる 腐朽船群 (暖淡堂書房) 新品価格¥1,200から(2023/6/3 08:00時点) 【現代詩】「…
毎晩目覚める度窒息しそうな気がして窓を 開ける人々の賑わう音タイヤが路面を滑る音隣りが蛇口をひねる音あらゆるノイズがわたしの頭痛を酷くさせる古い廊下がきしむ音とおんなじに自分の骨が きしむ音が聞こえて来る右膝の関節が外れそうになるのが癖になったコキッ・・という音と一緒に猛烈な痛みが 走る自分の拍動の音さえ耳に障る全てのノイズを消して静寂の中にこの身を投げ出したいけれど季節の足音と時を刻む 音だけは...
【現代詩】「黒 点」 虚空に浮かぶ黒ずみのイメージ 現代詩の試み
黒 点 垂直の 夜の平面が 長い影を引きずりながら 通り過ぎた 露点計 草の葉に 痕跡 境界線で 湿度が 振り落とされる 鴉は どこにいるのだ 鳴き声が 聞こえない 夜の影が静かに去ると いつも どこかで 忍び笑う鴉は どこにいるのか 朝なのか 本当に 目覚めているのだろうか 始めたら どこかへ 行けるのだろうか 企まれた 表面 企みに満ちた 表面 そこが平らだとわかるのは そこには いないからだ 時間は 流れない その上/下の なにか の群が ずれ続けるのだ だから 鴉は動かない 流れるのは 重畳する いくつもの平面 鴉は横断する 黒い 無限大の質量をもつ 点となって 落下する 通過する面を…
梅雨の大雨よりももっと 沢山溜まっている 涙今日から死ぬ日まで号泣しつづけてもあり余る 涙唇を噛んで泣けなかった幼い日母が死んでも父が死んでも泣けなかった あの日幼い自分を 自分で抱きしめ「泣いていいんだよ」と言ってあげたい喪服姿の自分の背を自分でさすって「冷静でいなくていいんだよ」と言ってあげたいこれまで自分を粗末に扱って来た分を取り戻すように自分に優しくするために自分で自分を いたわるためにわ...
【現代詩】「旋 回」 人造人間の見る夢のイメージ 現代詩の試み
旋 回 しかし 朝目覚めたときには 確かにそれは重たかった それが 背中から ずるりとはがれ そのまま ずるずると落ちていった あるいは 自分の身体が ふるふると震えながら 浮かび上がったのかもしれない その鉄と石の塊が 柔らかいのは とても 滑らかに動く 精密機械だから 骨のしなやかさに 肉が追いつけないのは それが 温かいから しかし 今 それも 脱ぎ捨てた それが かりに 事故であったとしても 静寂の空間をめぐる軌道 螺旋 細くしなやかな線は 差し出した指先から こぼれる 吹き出す それは 点を 呑み 平面を 穴だらけにする 螺旋 冷たい その線に あるべき 表が こぼした点を 囲む 腐…
不安の種を部屋中にばらまいて芽を吹かせて大きく伸びた枝葉に全身を絡めとられてはわざわざ 不安の森を作る自分の半身を失った 現実自分は影でしかなかった 現実はわたしにとって余りに 過酷過ぎてどうしても受け容れられなかったの不安中毒になることでしか自分の身を守れなかったの人間って悲しいの心に負った傷が深過ぎるとどんな形をとってでも傷に 触れないように触れないように何とかして自分の身を守ろうとする生きも...
どんなにビルが建とうとも 心の支えになりはせぬ ただ一棟の城郭が われらの誇り 拠り所 遠い昔の建築が われらをしかと支えたる 宗教もなき建築の 威容を眺め 思い見る これぞ建築 権威そのもの この権威 ただに心のかたちなりけり 短歌 どれほどのビルも城には敵はぬはこれぞわ...
野菜くずや丸めたチラシと一緒にあなたへの思いを束ねて燃えるゴミに 出すあなたを思っているままでは苦しくて胸が痛い優しいはずのあなたの冷たい顔しか思い出せなくなって古傷から血が滲むだからもう忘れたいあの頃をなかったことにしたいでもこの記憶があの頃を呼び覚ますだからあなたへの思いは丁寧に紐で括って燃えるゴミに出して忘れようもう 忘れようさようならあなたとの過去あなたはとうにわたしのことなど忘れているだ...
生きている一瞬一瞬の わたしの 隣りにいつも 居るのは死死と向き合い死と語らい死を謳うこの世界が時を刻む限り皆 平等に死に向かって歩いてる猫の体温あなたの背中悲しくて泣き明かしたあの夜も珈琲をふたりで飲んだあの朝もみんな みんな生きた軌跡死という鏡に映し出すからこそ人生は輝く生きた足跡を残すことができる誰もが死と隣り合わせ死 という鏡に映し出されたいのちはひときわ 輝くだからわたしは死を 見つめつ...
【現代詩】「律 動」 存在しないものを際立たせる境界のイメージ 現代詩の試み
律 動 すべてはすべてのものになりうる、それはたんに可能性の問題ではなく、すべてのものがすでにそうであるという意味である。個体を分かつものは「境界」という想定された変化域であり、それで仕切られた領域の周囲には強度のグラデーションがみられ、その変化は急激である。それはだから連続的なものだ、男は石と中空の缶と機械に、女は子供と犬のような獣と根と機械に、子供は母親と柔かな機械になりうる、それらはすべてリズムを持った方向であり太さを有するベクトルであり、またその場で跳躍を続ける点である、すべてのものはそのリズムで呼吸する。 鴉を見よ、鴉は暗い闇の中で規則正しく鳴きながら、その場で跳躍しているのだ。鴉は…
今週の詩は「ラストバッター」という詩です。高校野球がテーマの詩となっています。ぜひ、以下のアドレスよりご覧下さい。詩「ラストバッター」https://yout…
はしゃぐ白猫やまぬ いたずら小さき春白猫という小さき春の 体温が死んだ心を暖める小さき春が走る 走る死んだ心に息を 吹き込む無邪気で無垢なばかりの目で小さき春がじっと私を 見上げてる忘れたはずのいのちの温もり思い出すそれはまるで春の 奇跡小さき者の花のようにきらめく いのち#ネガティブのままでいい#シニア女性#現代詩#詩#猫#ねこ#白猫#猫との暮らし...
【現代詩】「網 状」 薄い膜で隔てられた力とエネルギーの差異と勾配のイメージ 現代詩の試み
網 状 成長/展開 似ている何か 外にある何かから それは来たものだ 尾を振る線虫 不安な目は 外の何かの 断片を持って 侵入した そして温かな体内で 断片は成長する 身体を取り込んで それは静かに 展開する 流れ/力 流れは 力をその裏に持ち 流れ続ける 滑り続ける 力と流れは 同じもの ではないが 常に共存する 伝播するのは 流れでも力でもなく 漏れた うめき その断片 伸びる力を 内臓/内蔵 した 増幅/跳躍 適者生存では 進化の木では その巧みな機械は 取りこぼされる どこに置けばいいのか 豚と 人間が 共有する はびこる病原菌が 最も薄い膜を突き破り 特異点で 増幅された可能性が 跳…
死に装束を身にまとい終わり に向かって歩いてる間違えないで死に装束の着物の襟は 左前着物の帯は 縦結び果てしなく遠い道のりに終わり はまだ見えなくて未来も夢も花も 捨てたこの夏空の下でひとり残ったものは何枚かのコインと愛した者の 遺影だけ季節の風から置き去りにされてひとり 迷うわたしを置いて行かないで と幾度 この手を伸ばしても何もこの手に 触れなくてそれが たまらなく哀しくて間違えないで死に装束...
【現代詩】「方 形」 自ら発熱し着火し爆発するものが詰まった意識の底のイメージ 現代詩の試み
方 形 ぎっしりと詰まっていることだけが条件なのだ、それが許されるために満たしているべき条件、それ以外にはどのような状態も許されない、猫を詰めろ、あの柔らかな毛の、温かな毛の、犬を詰めろ、あの怯えた目の、尾をやたらと振る、すき間にはあの歪んだ椅子、座ることを拒絶する椅子だ、それでもまだ空間が余るのなら赤と黄色の絵の具を流し込めばいい、あの重金属を大量に含んだ、その息苦しいほどの箱から左手を突き出して中空をつかむその震えが言葉のナトリウム立方体 喰われる 金属表面 腐朽船群 (暖淡堂書房) 新品価格¥1,200から(2023/6/3 08:00時点) 【現代詩】「方 形」 自ら発熱し着火し爆発す…
食器洗いをする生きる意味など蛇口からザーザーと流れるばかりで掴めない料理をするいのちなどガスコンロの火が僅かな時間燃え盛るばかりで見えやしないごはんを食べる人生など白飯を口に押し込むばかりで味気ないそんな毎日の繰り返しに辟易とするけれど止めちゃいけないと言われるから繰り返すしかない生きることを強要されるのはもう たくさん#ネガティブのままでいい#シニア女性#現代詩#詩#ポエム#心...
恋をして動物園デートとかしてエレベーターの中で 初めてのキス高校生時代バイトを始めて帰りにみんなで飲みに行くのが楽しくてそんな ありきたりな思い出さえもう他人の思い出みたいで全ては 虚構のようで若いあの頃は嘘だったの?わたしが勝手に創った物語だったの?もうあの頃が現実だったという自信がなくてそうわたし自身さえ虚像でしかないようでこの世界も虚構でしかないようで確実に生きているという実感が持てなくて自...
【現代詩】「不 断/自 同 律」 いつも同じであり続ける自分からの逃避のイメージ 現代詩の試み
不 断/自 同 律 …それは 皮膜の 最も薄い場所を 探している ほら 走っている …しかし、目にみえないこと、経験を欠くことを根拠に結論したくない。そこで、我々は、比較的理解され易いと考えられるものを取り扱うことにしたい。これまでの議論から、ここで取り上げるのが適当と考えられるからだ。それは次のような問いである。 「君は我々なのか。」 …今 気を抜くと 落ちる ずるり と 落ちて 木の 床を 流れる その 血の匂いに それが むくりと頭を上げる のが… …気をつけろ、先手でいくしかない、徹底しろ、始めたからには… …であれば「私は君か」ないしは「君は私なのか」という問いには、容易に答えうると…
眠った街を起こさぬように小さな声で星と語らういつもの日課心だけ何万光年 遡ってアンドロメダに自分の悩みを 打ち明ける広い宇宙のその中でけしつぶのわたしを星はちゃんと 見つけてくれる誰もいない真夜中だけの存在感朝が来て星が見えなくなるまでの束の間の存在感わたしもここに いたんだね果てしなく 広がる宇宙に 抱かれてわたしは自分の存在を 知る東の空に宵の明星もうすぐ夜が明けるそしてわたしはいなくなる#ネ...
【現代詩】「響 砂 島」 古代の魚と石英の砂の海のイメージ 現代詩の試み
響 砂 島 遠く とおく きぃん きぃん と響く 静かな寝息をたてる 幻の白い女に似た 生まれたばかりの 光る深海魚 月からこぼれる光る砂に 赤犬は肩まで埋まって 頭に降りかかる砂を 耐えている 赤犬は 生まれる前の 意識がまだ 器官をかたちづくることを知らない 吃り 怯える目の先に なにかある 破断面の拡がる波の下で 無数の古代魚が ざわざわとしぶきをあげる くる 赤犬は 振り返る そこに 軋みながら 砂浜に乗り上げようともがく 黒い 巨大な 魚 果たされない 海の意図 叫びとともに 巨大な魚の影は 砂浜に沈む 裂け目の下の 古代魚が ゆっくりと口を開ける 崩れはじめた死体を脱ぎ捨て それは…
嗚咽の波に 呑み込まれて涙の豪雨に 叩かれてそれでも またひとつ限られた生の前に ひとり立つことを 余儀なくされるこれで何度目だろう限られた生の前に立つのはこの生が 限られた時しか持たぬことを知るには余りにも 無垢で余りにも 邪気がなくて堪え難いなぜこんな仕打ちを?なぜこんな残忍なことを?そう思わずにはいられない嗚咽の波に 涙の豪雨に溺れて 沈んで行くばかり#ネガティブのままでいい#シニア女性#現...
【現代詩】「剥 落」 身に合わないものを装うことを強制された状況のイメージ 現代詩の試み
剥 落 寸法の違うものを 無理にはりあわせていた ので 耐えられない 蒸し暑い日 顎の先から落ちた汗が染み込んで 剥がれてしまう 呆然とする表面に ふと 嫌だ くるくると丸まった 裏面が 肌寒そうに 身を よじった しかし それは 脱離の 不安 決して 表面には 与えられないもの 速度を もっと速く 真空を 縦横に 前後に 古代に 未来に 落下する 絹の紐帯 回転する柔らかな座標軸に 滑り続ける交点は 歓喜の悲鳴をあげる 逃げろ もっと速く 腐朽船群 (暖淡堂書房) 新品価格¥1,200から(2023/6/3 08:00時点) 【現代詩】「剥 落」 身に合わないものを装うことを強制された状況の…
街が眠る 静寂の中では月を相手にわたしは とても多弁になるでも街が目覚めるとわたしは 途端に無口になるだってわたしの言葉など声音など街の喧騒にかき消されてしまうことをよく 知っているからどんなに真実を叫んだとしてもどんなにこの世の矛盾を訴えたとしても聞こえない誰の耳にも聞こえない塵みたいな 言葉など紙くずみたいな 声音などどんなに拾いたくてもいつも どこにも見つからないそうわたし自身にさえ見つけら...
病み疲れて 夏の空また今日が始まるなんて何と 残酷な仕打ちだろうほぼ 無意識のままで朝の支度をしている自分をスプリッティングした 夜の自分が 忌々し気に 見つめてる買い物に行って近所の人に出会ってこんにちはなんて言いながら心の中では死ぬことだけを考えている暴れることも泣き叫ぶことも出来なくてただ普通の人を 装うこの理性が邪魔で邪魔で内心ケモノのように吠えているのにスプリッティングした冷静な自分がケ...
漣 碑 あの日 午後の明るい湖面に浮かんでいた 金色の 女の像を 崩すことを想像した 手に重く 歯に硬く 沈黙した古代の機械 なんども なんども 繰り返し 身をそらして 湖は 界面を 泡立たせる ここは、 おれは、 どうしてこんな、 なぜあれが、 おれのほんとうは、 ほんとうのおれは、 こうふくはどこだ、 ふこうだ、 おれはふこうだ 漣のうめきを その重さと硬さで じっと抑えつけている 一つひとつの漣は すぐに消える が 次からつぎと だから 僕は あの日 午後の明るい湖面に浮かんでいた 金色の 女の像を 崩すことを想像した 息苦しかったのだ 平面を かえしてほしかったのだ 腐朽船群 (暖淡堂…
【現代詩】「雨 界」 雨の中で形を失うバスのイメージ 現代詩の試み
雨 界 激しく叩く 雨に歪むガラス窓から 立ち現れては崩れる 外の光景をみていると バスのエンジンは 悪い病のように咳こみ きつい山道の 小石を弾き飛ばしはじめる 腰から力を奪うのは きまって 悪い熱だ 逃げるのは 悪い手段ではない 平面を 縦断 できるのなら 夜は谷底の村を飲み込むと じわじわと界面を盛り上げ それに追いつかれないようにと 陽に焼けた赤い顔の運転手は ギヤを鳴らす その跳躍点を 逃さないこと それだけが この目を「目」から解放する 最後の たった一つの 技術 薄暗い停留所で バスは重い息を吐く と 運転手は 慌てるように 黄色い帽子 赤いランドセルの 女の子を一人 おろした …
割り切れない 悲しみをどう割り切ればいい?一日でも長く愛する者と 一緒にいたいだけど医学の進歩に乗って自然の流れに逆らって苦しませてまで生きることを強いたくはないだけど愛する者と一緒にいたいこの矛盾をどう解決すればいい?どんな難しい方程式でも解けることのない悲しみが部屋中に 満ちていた魂のなくなったその亡骸さえ 愛しくて冷たくなった我が子の顔に何度も何度もキスをした#ネガティブのままでいい#シニア女...
【現代詩】「孤群/セル」 細切れにされた孤独のイメージ 現代詩の試み
孤群/セル 駅は 厚い 人の流れ いつのまにか 前を歩く人の背中を透かして 自分の進路をみている と 僕のなかに 後ろを歩く誰かの視線が 紛れこむ あれは… そうか… 立ち尽くす人を避けて 流れは分かれ となりの流れに 飲み込まれる その手前で 小さな渦が生まれる その渦に 立ち止まる と 次からつぎと 肩にあたりながら 青黒い視線が 流れ込み とてもまぶしく そして 空をみていた 中学生の頃 田んぼのずっと先にみえた 山脈越しに あれは 晴れた 秋の日 ああ しかし あそこに残ることは できなかった こんなに悲しくても 駅は 重畳する流れ 柱の陰に渦を巻き ほんの数人だが そのなかへ 身を投…
一本一本 折れた心を火に くべる自虐の炎が 燃えるように一滴一滴古傷から滴る血をうっとりと 眺める部屋中自虐の海に なるように自虐がすっかり癖になる体をいじめると心が少し楽になるから夢なんてただの誇大妄想さ愛なんてそんな言葉は知らないね明日なんてカーテンを引いたままでは見えないねそんなふうに自分の心をいじめては現実から逃げようと必死になる自虐がすっかり癖になる自虐がすっかり癖になる#ネガティブのま...
この手を這わせたあなたの熱い背中を忘れぬようにと時の経つのを忘れて語りあかしたあの夜を忘れぬようにといくら思ってみても目の前にあるのは冷めきった珈琲カップ折れた口紅ひとりの静寂不眠の夜の狂気すっかり変わり果てた 死人のように成り下がったわたしが いつまで あなたを語ってもそれは 余りにも 遠い過去の 産物でもう 誰の耳にもくだらないお伽話にしか 聞こえないお伽話ほど退屈なものはないだけどわたしに語...
言葉を紡ぐ言葉を紡ぐわたしはいつも哀しい言葉ばかりを紡いでいる春の日のように極彩色の言葉ではなく水道の蛇口からぽつり ぽつりと滴り落ちる水音のような窓ガラスを叩く風のような哀しい言葉ばかりを一片また一片と紡いでるこの目から滴り落ちた涙の雫を織り込んで夕焼けの茜を一滴染み込ませたらやがて またわたしの人生 という一編の哀しいばかりの詩が できる#ネガティブのままでいい#シニア女性#現代詩#詩#ポエム#心...
【現代詩】「過 飽 和」 転げ落ちる一歩手前のイメージ 現代詩の試み
過 飽 和 張りつめた 満ちた空間を 無数のセルで区切り 揺すると滴になる その滴が 落ちる瞬間 身構える 時間 という 一つの ありかた に 身を投げるのだから しかしその滴は どこにもいかない その場所で 落ちるのだ 下へ、でも 上へ、でも 前へ、でも 後ろへ、でも 当然 横へ、でもない それは 今 ここ ではない ところ へ。 腐朽船群 (暖淡堂書房) 新品価格¥1,200から(2023/6/3 08:00時点) 【現代詩】「過 飽 和」 転げ落ちる一歩手前のイメージ 現代詩の試み またお立ち寄りください。 どうぞご贔屓に。 dantandho にほんブログ村 ランキング参加中詩
堪えるだけの いのちを言葉に 変えて苦しむだけの いのちを夕焼け空に 染めて悲しむだけの いのちを海の底に返してひたすらひとりきりに堕ちたこのいのちを何とかして 癒す溢れる感情はあの空に 預けてひとしきり泣いて 泣いて心を 洗ってわたしに生きる勇気をくれたあなたの宝石の言葉を思い出して果てもなく つづく わたし という苦しみを何とかして 生きるどんなに苦しくてもわたしは知っているでしょう?世界はわ...
母上あなたのいた世界をわたしはまだ生きていますあなたがこの世から消えてもう20年以上も経ったのに母上わたしの心にはまだ生々しくあなたが生きているのですわたしはまだあなたのいた過去に生きているのですあなたが死んだ事実さえまだ 受け止められずに目を覚ます度あなたが死んだと初めて知るのです母上あなたはもう死にました遺された者はその事実を受け容れてあなたのいない世界を生きるしかないのです沢山悲しんで号泣して...
帰 る もう何度目だろうか また帰りはじめる 何本も電車を乗り換え 冷たいバスターミナルのベンチで待ち 信号が黄色く点滅する交差点を過ぎ 暗く長い坂を下り、上り 風のさわさわとやまない沢の水音に怯え やがて懐かしい家の前に立つ 玄関に入ると家の中は誰もいなく 明るく、ただ静かで …ああ、ここ、でもないのか… もう何度目だろうか また、帰りはじめる 腐朽船群 (暖淡堂書房) 新品価格¥1,200から(2023/6/3 08:00時点) 【現代詩】「帰 る」 反復するノスタルジー 現代詩の試み 何度も繰り返し「そこ」に帰り続けるイメージです。 またお立ち寄りください。 どうぞご贔屓に。 danta…
不安の北風が余りにも 冷たくてひとりぼっちの季節が余りにも 非道でわたしの目から幾つも零れ落ちた涙さえ冷たい夏の未明に白猫の無邪気さが唯一の 救いだった白猫は何も知らないけれどわたしの悲しみをちゃんと感じてたこのいのちそれだけがわたしの財産だったそんな無垢ないのちがある日を境にふっつりと 消えたあの子は 風になったあの子は 木々の緑を照らす 光になったそれでもやっぱりわたしは主を失ったあの子の部屋...
人の数だけ正義 がある皆自分が正しいと思ってるけれど正義ほど人を傷つけるものはないそれは悪意ではなく善意から来ているからタチが悪い傷つけていると気づかないから悪意より深く心に突き刺さる血が 噴き出る自分の価値観を人に押し付け求めてもいない見当違いのアドバイスで人を縛るからあなたの正しさ はわたしの害悪 だったりするのだからわたしは正義を捨てた正義を人に押し付けるよりこの初夏の梅雨空のように悲しい人...