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(本話の分量は、文庫本換算3ページ程です。)大学の同窓会の帰りのこと、俺(葦笛明・32歳・精神神経科医)は友人の小田と二人で、府中駅南口の暗い路地に有る喫茶店にてきつめのウイスキーをゆっくりと飲んでいた。小田は「留年していた葦笛も、ちゃんと医者になっていて安心したけど、精神神経科医だなんて何かの縁だ」と言ってグラスを口に付けてから、またしゃべり出す「相談じゃなくて他愛無い話だから診察料は取らないでくれ」...
(他ページは5-1|5-2|5-3|5-4|5-5)―「奇妙だろう?壁の向こうの声かこっち声か分からなくなるなんて」小田は下手くそな講談師のようなしゃべりを止めて、俺に同意を求めるようにしゃべりかけてくる。俺が適当に頷くと、「精神科医の先生としてはどう思う?」と言ってくる。俺は「疲れていて休もうとする神経と慣れない高級旅館に高ぶっている神経と混在していること等が原因で、ウトウトしつつ隣の部屋の話し声を過敏に感受した...
5-4笑い声に疑問-大学時代の旅行|夢と現の間にて【怪談・短編】
(他ページは5-1|5-2|5-3|5-4|5-5)再び身体を横にして、目を閉じた。やがてまた、うとうとしてきた。おそらくは眠りに落ちた。だがその時。男の低い声が耳元で響いて、びっくりして上半身が起きた。だがやはり、先程と同じだった。暗く静かな部屋に俺が一人いるだけである。スマホを見ると、深夜の4時である1時間程経っている。相変わらず隣の部屋では、笑い声や話し声は続いている。その後も、少し寝ては耳元で声が響いたよう...
5-3賑やかなお隣-大学時代の旅行|夢と現の間にて【怪談・短編】
(他ページは5-1|5-2|5-3|5-4|5-5)目を瞑っていると、壁を隔てて「キャハハハ」と女の人の高い笑い声が聞こえてきた。俺は反射的にふと目を開けた。笑い声の後に男の人の低い話し声も続いた。隣の部屋の客たちだろう。そう納得して枕元のスマホを手に取って深夜の2時だと確認後、スマホを戻して目を閉じた。隣の部屋の声は、クレームを入れる程ではない。むしろ、幽霊を意識してしまう静けさに比べたら、良いかもしれない。目を...
5-2静まった深夜-大学時代の旅行|夢と現の間にて【怪談・短編】
(他ページは5-1|5-2|5-3|5-4|5-5)俺(小田)は、冬休みを利用して、東北の田舎へと一人旅に来ていた。昼間は自然溢れる観光スポットを歩いて、夕方にこの高級旅館へ。部屋の時計は、深夜の1時半。重たい目をシパシパしつつ、歯を磨く。TVの音も耳に入るだけであって意味を得ない。ちょっとした憧れから奮発してこの高級旅館に宿泊したのだが、改めて部屋を見回すに、やはりビジネスホテルとは違う。落ち着いた色合いの畳、有名作...
(本話の分量は、文庫本換算3ページ程です。)大学の同窓会の帰りのこと、俺(葦笛明・32歳・精神神経科医)は友人の小田と二人で、府中駅南口の暗い路地に有る喫茶店にてきつめのウイスキーをゆっくりと飲んでいた。小田は「留年していた葦笛も、ちゃんと医者になっていて安心したけど、精神神経科医だなんて何かの縁だ」と言ってグラスを口に付けてから、またしゃべり出す「相談じゃなくて他愛無い話だから診察料は取らないでくれ」...