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日々の恐怖 11月24日 Reserved seats(2)
日々の恐怖11月24日Reservedseats(2)私が頷くのを見届けてから、彼は話しはじめた。「いや、大した話ではないんですけどね。親父が定食屋を改装してこの喫茶店をはじめてから、なぜだかあんなことになったんです。あの予約席のプレート、いくら片付けても、朝になったら勝手にあそこに置かれてるんですよ。もちろん、誰も触ったりしてませんよ。プレートを捨てても、いつの間にかあそこに戻ってきてるんです。それにあの席、妙にひんやりとして寒気がすると思ったら、別の時は、今しがたまで誰かが座ってたような温もりが残っていることもあって。正直、気味が悪いんです。一度椅子ごと撤去したこともあったんですがね。次の日私が来たら、店の窓ガラスが全部割れていて、それも内側から。その後も雨漏りやら空調の不調が続いて、結局椅子を戻した...日々の恐怖11月24日Reservedseats(2)
日々の恐怖 11月20日 Reserved seats(1)
日々の恐怖11月20日Reservedseats(1)雰囲気の良いジャズ喫茶だった。中に入るとコーヒーのかぐわしい香りが漂い、音楽は耳に心地よい。何時間でも居座れるような空間で、実際店内にはいつも、長居の常連客の姿があった。現在切り盛りしている店主は二代目で、初代は戦後の混乱期、小さな定食屋からこの店を始めたそうだ。そして晩年、念願だったジャズ喫茶へ趣旨変更したらしい。この店のカウンターの一番奥の席には、いつでも予約席のプレートが置かれている。しかし、実際に誰かが座っていることはない。その席は、先代店主の戦友専用のものらしい。先代店主は戦時中、出征先で戦友たちと夢を語らった。そして、いつか自分が大好きなコーヒーとジャズの店を開くから、その時はお前たち必ず来いよと約束したそうだ。先代店主はなんとか生きて帰る...日々の恐怖11月20日Reservedseats(1)