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  • 日々の恐怖 3月29日 鍵

    日々の恐怖3月29日鍵ある男性とのおつき合いが始まった頃、彼がアメリカに2週間程出張するというので、当時、仕事もなかった私は、彼の三匹の猫の世話で、彼の家で2週間留守番することにしました。でも、彼の家では前の奥さんが亡くなっていて、(もっとも、亡くなって7年ほどになりますが)亡くなっているとはいえ、私が先妻の立場だったら、嫌なんじゃないかと思っていました。そして、アメリカに行く彼を見送った帰り、彼の家に戻ってほっと一息ついたとき、ふと飾ってある亡くなった奥さんの遺影に、「私がここにいてもいいのかしらん?」と尋ねました。次の日、買い物に行こうと玄関に置いてある鍵をみると、家の鍵だけがなくなっています。車の鍵と一緒にコイル状の金具できっちり付いていたはずなのに見つかりません。家中探しましたが、その日は結局見つ...日々の恐怖3月29日鍵

  • 日々の恐怖 3月20日 石の家(3)

    日々の恐怖3月20日石の家(3)会社に戻るといきなり社長に俺たちは怒られた。コウさんが激怒して会社辞めるって飛び出した。「お前たち何したんだ!」って怒られたけど、俺たちに分かるわけがない。だから社長に、「あの石のある蔵を壊そうとしたらコウさんは怒り出して、いきなり帰ったんでわかりません。」て言ったら、社長は俺たちを突き飛ばすようにダンプに積んだ石の所に行って、「早くこれを運ばんか!」って怒鳴り始めた。本当に訳がわからなかったけれど、社長の言う通りに応接間にその石を社員総出で運んだ。そして社長は、それを応接間のソファーの上に置かせた。それから暫くして、社長はその石にお茶を出したり話しかけたりするようになった。俺たちと社長の息子は気持ち悪いと思ってたけれど、何も言わなかった。1週間くらいしたら、社長が突然、「...日々の恐怖3月20日石の家(3)

  • 日々の恐怖 3月14日 石の家(2)

    日々の恐怖3月14日石の家(2)興味の出た俺は、その家に入って社長たちを探すことにした。門から入ると、母屋と荒れてはいるが広い庭。そしてその庭の片隅には蔵が三つ並んでた。ちょうどそこに社長の息子の姿があったから、俺は蔵の方に歩いて行った。社長と息子がいたのは、三つの蔵のうち真ん中の蔵。社長はその中にいたんだけど、その蔵の中が変わっていた。その真ん中の蔵だけ正方形で、その中央に土俵みたいに円の形で、白い石が埋め込まれてて、そのまた円の中央に、1m真っ角くらいの黒い石の板と、直径1mくらいの白い石の板が向かい合うように立っていて、社長はそれをずっと眺めていた。俺は、”モノリスみて~だなァ~、気色ワリィ~。”としか思わなかった。その日はその家を調査して帰ったが、数日後すぐにその家の解体を請けることが決まった。解...日々の恐怖3月14日石の家(2)

  • 日々の恐怖 3月7日 石の家(1)

    日々の恐怖3月7日石の家(1)昔、解体屋でバイトをしていた。家屋を解体してると、いろんな変わった家もあるし、中から変わったもんも出てくる。特に、山の方の古民家や古民家はアツい。押入れの中に骨がギュウギュウに入ってたり、漆喰っていうか塗り物の壁の中に、長い髪の毛が入ってたり、家の真ん中に入口のない部屋があって、そこに小さい鳥居が立ってたり。結局は、何でもかんでも壊してダンプに乗せて捨てちゃうんだけど。余りにも気味の悪いもんや縁起モンは酒と塩かけて、まあ結局は捨てる。そんな中でもある日、某渓谷のとある古くからの豪邸を壊す仕事を持ちかけられた。そして俺は社長と一緒に運転手として下見に行った。家の中の残置物とかの確認は、見積もりする社長とその息子が見るから、俺は車外でタバコ吸ってジャンプ読んでた。すると田舎に珍し...日々の恐怖3月7日石の家(1)

  • 日々の恐怖 2月26日 建物を間違えちゃったのかな?

    日々の恐怖2月26日建物を間違えちゃったのかな?不動産会社にいたときの話です。入居して1ヶ月もしない入居者から、『この部屋、以前何かありましたか?』とTEL。俺:「イイエ、特に何もありませんが。」数日後、また同じ入居者から『本当に何もありませんでしたか?』とTEL。一応、先輩社員から確認したが特に何もないので、俺:「調べましたが、特に何もありませんでした。」と返答。またまた数日後、入居者から、『一度きてください、絶対なにかあります。』俺:「では近くに行ったときか、時間ができたら伺います。」でも、どうせ池沼のクレーマーだと放置。またまた、数日後、『あんた来てくれるっていたじゃないか!』ってお怒りモード。少々お怒りなので詳しく話を聞くと、特に浴室、『暖かい風呂に入っていても寒気がする。』とのこと。まぁ、怒らせ...日々の恐怖2月26日建物を間違えちゃったのかな?

  • 日々の恐怖 2月22日 佐藤さん

    日々の恐怖2月22日佐藤さん親父から聞いた話です。親父が大学3~4年の間、男3人で小さくて古い一軒家を借りて住んでいた。といっても、家賃をちゃんと払ってるのは親父と鈴木さんだけ。もう一人の佐藤さんはあまりにも貧乏なので、居候させる代わりに家の掃除、ゴミ出しなどをやってもらうことにしていた。親父と鈴木さんは、佐藤さんの困窮ぶりを助けてやろうということだったようだ。間取りは3LDKで、LDK6畳・6畳・6畳に4畳半。佐藤さんが4畳半。この佐藤さんの4畳半に出た。親父も鈴木さんも何度も見たのが、恨めしそうに正座する白髪の老婆。出るタイミングも朝昼晩関係なし。多い時には一日に三回くらい見る。4畳半の襖が開いている時、何気なく目をやると、中に白髪の老婆が恐ろしい形相で正座している。来客の中にも見た人が5人ほどいたら...日々の恐怖2月22日佐藤さん

  • 日々の恐怖 2月11日 町内会長

    日々の恐怖2月11日町内会長23区内私鉄沿線住宅地での話。10年ぐらい前に爺さん地主が死んで、50代の息子夫婦が越してきた。越してきて1年ぐらい経ってから、奥さんの姿が見えなくなり、一人残された旦那の奇行が始まった。・一日中、隣近所に聞こえるような大音量でクラシック音楽(主にベートーベン)を鳴らし続ける。・庭に裸のマネキン人形を運んできて並べる。そして、金色に塗りたくってライトアップ。・昼間は冬でも海パン一丁でベランダに出て、不思議な体操を何時間も踊り続ける。・隣近所に対して罵声を浴びせまくり、洗濯物にホースで放水。うちの家からこの地主の家は良く見える位置にあったんだが、しょっちゅう隣近所からの通報でパトカーが来ていた。そんな日々が3~4年続いて、ある日、迷惑行為がプツリと止んで、息子の姿が見えなくなった...日々の恐怖2月11日町内会長

  • 日々の恐怖 2月1日 服

    日々の恐怖2月1日服知人の祖母・Nさんが若い頃体験した話だ。Nさんにはお気に入りの服があった。生成り地に小花が少し刺繍された、可愛らしいデザインのワンピース。Nさんはその日も、お気に入りのワンピースを着て買い物に出かけた。そして帰宅後はすぐに着替え、ワンピースをハンガーに通して鴨居にかける。湿気を飛ばしてからしまう為だ。そうしている内に、外出の疲れからか、ついうたた寝をしてしまったのだそうだ。しばらくして目が覚めたNさんは、ぼんやりとあたりを見回した。すると、鴨居にかけたワンピースが、風もないのに揺れているではないか。不思議に思い目をこらすと、裾から見え隠れする物がある。生成りのワンピースより、もっと白い何か。それは音もなく降りて来た。人の爪先であった。凍りつくNさんをよそに、白い脚はゆっくりと降りて来て...日々の恐怖2月1日服

  • 日々の恐怖 1月25日 足(2)

    日々の恐怖1月25日足(2)同じ先輩がやはり小学4年生晩秋の頃に体験した話です。その日は風邪気味で学校を休んでおり、自宅の2階にある自室で布団にくるまっていた。ぼんやりとベッド横の窓から外を眺めていると、家の前にある道に、喪服のような黒い服と帽子をまとった髪の長い女性が、俯いて立っていることに気がついた。何故かその女性のことが気になり、彼女はベランダに出ていった。なぜそのようなことを考えたのか、後になって振り返ってみてもよくわからないという。すると彼女がベランダに出ると同時に、その女性がふっと顔をあげた。その顔は雪のように白かった。比喩ではなく本当に肌が真っ白だったのだ。そしてつぶやいた。そのつぶやきは離れているはずの彼女にもはっきり聞こえたという。「足が欲しい。」気がつくと彼女は部屋で倒れていた。時計を...日々の恐怖1月25日足(2)

  • 日々の恐怖 1月21日 足(1)

    日々の恐怖1月21日足(1)大学時代、一つ上の先輩(女性)から聞いた話です。小学4年生の夏頃、学校から帰るときいつもある脇道からでてくる中年の男性がいた。しかも常に彼女がその脇道を通りかかる時に出てきてぼんやりと立っていたという。幼心ながら不気味に思っていた先輩はそのことを母親に相談した所、しばらく車で送り迎えをすることになった。1ヶ月ほど車で送り迎えを行った後、もうそろそろいいだろうと言いことになり再び徒歩での登下校になった。そして実際、それからしばらくは何も無かった。しかし、その男は再び現れた。彼女がいつものように帰り道を歩き例の脇道にさしかかったときだった。ヌッと誰かが脇道から出てきた。あの中年の男だった。そしていつも黙って立っているだけだった男は、彼女の方をみてこう言った。「足が欲しい。」気がつく...日々の恐怖1月21日足(1)

  • 日々の恐怖 1月14日 輸入雑貨(3)

    日々の恐怖1月14日輸入雑貨(3)しかし、俺の主張に彼女は難色を示した。「あれが原因とは限らないじゃん。違ってたらもったいないもん。」どうしても捨てるのは嫌だと言う彼女と折衝を重ねた結果、とりあえず何日か俺が預かってみることで話が付いた。俺はネックレスを持ち帰り、彼女がしていたようにベッドの脇に置いて眠ってみたが、特に悪夢は見なかった。だが、彼女の方は効果覿面だった。ネックレスを手元に置かなくなってから、悪夢を見る事がなくなったのだ。明らかな変化に、今度は彼女の方から処分を頼んできた。彼女は俺が鈍感だから影響を受けないのだと茶化したが、「だからって普通に捨てたりしないで、ちゃんとした人にやってもらってね。」と俺の身を案じてくれた。俺は彼女の言葉に従い、神社で禰宜をやっている知人に処分をお願いした。そのネッ...日々の恐怖1月14日輸入雑貨(3)

  • 日々の恐怖 1月6日 輸入雑貨(2)

    日々の恐怖1月6日輸入雑貨(2)結果的に上手く騙されたような気がしないでもなかったが、彼女はああいう妙な小技を瞬時に繰り出せるほど器用なタイプではない。あの時の嫌な感じはただの気のせいだと自分に言い聞かせ、「今後、記念日は月一回だけな。それ以上は認めん!」と彼女を小突いた。夕食を摂ろうと入ったレストランで、注文の品が来るまでの暇つぶしに、彼女はさっきのネックレスを取り出し、さっそく首に掛けた。「どう?似合う?」と笑ってみせる彼女は実に嬉しげだったのだが、胸元にかかったそのネックレスをまじまじと見直してから、「あれ・・・・?」と首をかしげた。「なんか思ったより地味。こんなだったっけ?」そのネックレスはバッファローの角を楕円に削った黒と白の大きなビーズの間に、緑と黄色の小さなガラスビーズが交互に挟まれているだ...日々の恐怖1月6日輸入雑貨(2)

  • 日々の恐怖 12月31日 輸入雑貨(1)

    日々の恐怖12月31日輸入雑貨(1)今の彼女と付き合い始めたばかりの頃の話です。とある駅前で彼女と待ち合わせをしていたのだが、その日は時間より早く着いてしまった。近くに喫煙所があったのでそこで煙草を吸っていると、すぐ近くで黒人男性が露店の準備をし始めた。並べているのは、カラフルなビーズで作られたネックレスやブレスレット。どれも鮮やかな原色が多用されており、大ぶりなビーズが多く使われた派手なものばかりだ。退屈なので横目で品物を見ていると、その黒人が視線に気付いて声をかけてきた。「オニイサン、見テッテヨ。コレ、アフリカ本物ネ。ケニア、コンゴ、スーダン、イロンナ国ノヨ。安イ安イヨ。」いや俺そんなの付けないし、と断ろうとした時、運悪く彼女が来てしまった。「お待たせ~、あ、カワイイ!」俺の顔もろくに見ないうちから、...日々の恐怖12月31日輸入雑貨(1)

  • 日々の恐怖 12月24日 病院の夜の巡回

    日々の恐怖12月24日病院の夜の巡回前勤めてた病院での話です。夜中に巡回してたら、二人部屋からうなり声がした。二人部屋の一人は入院したてで症状が重く、全然意識のないおじさんA。もう一人も時々弱くうなるだけで、1ヶ月ずっと夢の中にいる寝たきりのおじいちゃんB。”Bさんがうなったのかな?”と思い訪室すると、寝たきりのはずのBさんのベッドが空だった。”えっ?”と思って部屋を見回し、巡らせた目が真後ろの開いたドアをとらえた時、廊下の光を背にして立つガリガリのBさんがいた。点滴抜いて左半身血まみれだ。あごが外れるくらい口を開いて、目は前方斜め上を見ている。”えっ、えっ、なにこれ?”と混乱していたらBさん、「ぅうぅうううおおおーー!」と雄叫びとともに、両手を横に広げて倒れ込んできた。突然のことに私は悲鳴を上げてしりも...日々の恐怖12月24日病院の夜の巡回

  • 日々の恐怖 12月17日 モニター

    日々の恐怖12月17日モニター俺が警備員やってたのは、テナントがいくつか入ってるビルだった。常駐警備員ってのは途中に待機時間あるくらいで、基本的に交代制の24時間勤務だ。故に深夜ビル内の巡回や駐車場の巡回なんかもやるんだけど、必ず決まった時間に発報するパッシブセンサー(人影とかで反応する)箇所がある。先輩や隊長からは、「あのパッシブはオカルト発報だから。」って聞いていたから、あまり気にしていなかった。でも、発報あれば一応行かなきゃいけないのが警備員だから、一応行く、6階に。でもって毎度のことながら発報したんだが、俺は駐車場の巡回をしていた。無線で、「また発報したよ、外から何か見える?」って言われたから、「見て来ます。」って言って、ビルの表に回って6階を見上げた。外から見て初めて気付づいたんだけど、6階のパ...日々の恐怖12月17日モニター

  • 日々の恐怖 12月9日 二つ目の玄関(2)

    日々の恐怖12月9日二つ目の玄関(2)どうやら彼女の生まれた集落では、死者が彼女の家を訪ねることは、死者を送る一連の手順に含まれているようだ。いや、送られるための手順といったほうが正確か。死んでから四十九日を終えるまでの間に、彼女の家を訪れることで、迷わず向こうへ旅立てる。そんな風習というか、思想のようなものを集落全体で共有している。なにがどうなってそんな話になったのかは、誰も知らない。知らないが、そういう考えがある以上、軽々に玄関を変えるのも気が引ける。古い玄関を残したのは、そういう理由らしい。「ドアのほうには来ないんだ?」「そう。なんでか知らないけど、古いほうだけ。」昔は普通の客も死者もそちらに来たから、区別はできなかった。今は、普通の客はドアのほうに来るのでわかりやすいらしい。「昔は嫌だったな~、お...日々の恐怖12月9日二つ目の玄関(2)

  • 日々の恐怖 12月3日 二つ目の玄関(1)

    日々の恐怖12月3日二つ目の玄関(1)彼女の家には玄関が二つある。ひとつは、ドア。ご家庭にある玄関ドアをイメージして貰えばおおむね合っているだろう、普通のドアだ。もうひとつは引き戸。星のような放射状の模様がある型板ガラスを使った、古い引き戸だ。開け閉めするたびガラガラうるさいという。ドアが二つあるというと二世帯住宅を想像するが、そうではない。彼女の家は普通の一軒家だ。玄関が二つあるということと、それに付随して変則的な間取りになっている以外、特筆するところはない。なんでも古い家を壊すとき、祖父母の希望でわざわざ残したらしい。つまり、引き戸のある場所が元々は玄関だったわけだ。それを残して新しい家を建てた。そしてわざわざ新しい玄関も作った。そういうことらしい。「なんだってまた、そんなことを?」「死んだ人が訪ねて...日々の恐怖12月3日二つ目の玄関(1)

  • 日々の恐怖 11月24日 Reserved seats(2)

    日々の恐怖11月24日Reservedseats(2)私が頷くのを見届けてから、彼は話しはじめた。「いや、大した話ではないんですけどね。親父が定食屋を改装してこの喫茶店をはじめてから、なぜだかあんなことになったんです。あの予約席のプレート、いくら片付けても、朝になったら勝手にあそこに置かれてるんですよ。もちろん、誰も触ったりしてませんよ。プレートを捨てても、いつの間にかあそこに戻ってきてるんです。それにあの席、妙にひんやりとして寒気がすると思ったら、別の時は、今しがたまで誰かが座ってたような温もりが残っていることもあって。正直、気味が悪いんです。一度椅子ごと撤去したこともあったんですがね。次の日私が来たら、店の窓ガラスが全部割れていて、それも内側から。その後も雨漏りやら空調の不調が続いて、結局椅子を戻した...日々の恐怖11月24日Reservedseats(2)

  • 日々の恐怖 11月20日 Reserved seats(1)

    日々の恐怖11月20日Reservedseats(1)雰囲気の良いジャズ喫茶だった。中に入るとコーヒーのかぐわしい香りが漂い、音楽は耳に心地よい。何時間でも居座れるような空間で、実際店内にはいつも、長居の常連客の姿があった。現在切り盛りしている店主は二代目で、初代は戦後の混乱期、小さな定食屋からこの店を始めたそうだ。そして晩年、念願だったジャズ喫茶へ趣旨変更したらしい。この店のカウンターの一番奥の席には、いつでも予約席のプレートが置かれている。しかし、実際に誰かが座っていることはない。その席は、先代店主の戦友専用のものらしい。先代店主は戦時中、出征先で戦友たちと夢を語らった。そして、いつか自分が大好きなコーヒーとジャズの店を開くから、その時はお前たち必ず来いよと約束したそうだ。先代店主はなんとか生きて帰る...日々の恐怖11月20日Reservedseats(1)

  • 日々の恐怖 11月11日 校庭を通る人達

    日々の恐怖11月11日校庭を通る人達生前小学校の教員をしていた祖父が大学生だった頃の話です。ちなみに場所は宮城県です。先に学校を卒業して県内の小学校に勤めていた先輩に、「年末年始の宿直を代わってほしい。」と頼まれた祖父は、先輩の頼みをバイト感覚で引き受けました。その小学校は村外れに建っていて、学校の西の方には村の人たちの作業場(木を切ったりとか何かしていたそうです)があり、学校を挟んで、東の方には村の人たちの家がありました。学校の北側に作業場と村の人たちの家をつなぐ道があって、校舎はその道の南側に建っていました。ところが、日が暮れると村の人たちは、西の作業場から東の自宅まで、校舎の北の道ではなく、校舎の南側、つまり校庭の中を通って帰っていたそうです。宿直係の祖父としては校庭に勝手に入られると困るんですが、...日々の恐怖11月11日校庭を通る人達

  • 日々の恐怖 11月6日 子供の幽霊

    日々の恐怖11月6日子供の幽霊友人Kの家には子供の幽霊がいた。右の頬に赤アザのある、小さい女の子だった。歳は小学校低学年か、もしかしたら未就学児だったかもしれないというから、幼いと言っていい。ごく普通のシャツとスカート姿だったけれど、季節を問わず、あかね色のはんてんを着ていたという。その子はKが中学生の頃に現れるようになったそうだ。最初に見つけたのは中廊下だった。L字の廊下を曲がっていく背中を見たのだという。驚いて追いかけたが、女の子は煙のように消えていた。廊下の先の部屋も調べたが、見つけることはできなかった。その日以降、Kの家の中では女の子がたびたび目撃されるようになった。最初はKだけが見ていたが、そのうち家族も見るようになった。女の子は、家の敷地の中ならどこにでも現れた。母親の家庭菜園を眺めていること...日々の恐怖11月6日子供の幽霊

  • 日々の恐怖 10月30日 石鹸

    日々の恐怖10月30日石鹸小学校の教員をしていた友人から聞いた話である。当時友人が勤務していた小学校は、都市部と田園部が半々といった場所だった。ある初夏の頃、学校の校庭にある手洗い場の石鹸が盗まれるという小さな事件が続いた。水道の蛇口の根元に縛り付けられた、赤いビニールネットに入ったレモン石鹸である。新しいものに付け替えても、すぐに何者かがカッターのようなものでネットを切り裂いて、中の石鹸を持ち去ってしまうのである。始めのうちは、「物好きもいるものだ。」と職員室の軽い話題でしかなかったが、事件が頻発し目撃者がだれもいないという事で、やがて校舎の内外を管理する教頭が乗り出してきた。教頭は、「いたずら者を捕まえて、しっかりと指導しなくては!」と意気込んで、付近の見回りを強化したのだが、犯人の目星もつけられない...日々の恐怖10月30日石鹸

  • 日々の恐怖 10月22日 不動産屋(6)

    日々の恐怖10月22日不動産屋(6)一昨日、男の姉がKさんに謝罪に来てくれたのだという。そして男の奇怪な行動について話してくれた。姉が男から聞いた話によると、男は彼女が自殺をした後、部屋に篭りがちになっていた。しかし夜になると誰からか見られているような不安な気持ちになる。気になって窓から外をそっと覗いてみると、近くの道路に死んだはずの彼女がこちらを見て立っていた。女性はしばらくそのままでその後、どこかに去っていく。毎日それが続き、我慢できなくなった男は彼女の後を追うことにした。彼女に気づかれないよう静かに後を追うと、Kさんの住んでいるアパートに行き着いた。しかし彼女は部屋の前まで来ると姿は消えてしまう。彼女が部屋に入ったのだと思って、部屋の前まで忍び寄り、様子を伺うのだがどうにもならない。どうにもならない...日々の恐怖10月22日不動産屋(6)

  • 日々の恐怖 10月14日 不動産屋(5)

    日々の恐怖10月14日不動産屋(5)俺は警察官から男の素性について聞いて驚いた。男はKさんの部屋で自殺した女性と知り合いだった。以前、男は女性と付き合っていたがしばらくして別れたとの事だった。しかし女性の方が未練があり、ストーカーになってしまったのだという。女性はその後自殺、男も女性からの激しいストーカー行為に心を病んでしまい、病院の精神科に通院していたようだ。Kさんの部屋に行った動機に関しては、あいまいな事を言っていて良く分らないとのことだった。結局、男は家族に向かいに来てもらい、そのまま実家で療養することになった。事件はとりあえず解決し、Kさんも一安心した様子で別れた。翌日、仕事に行きMさんに昨日の出来事を話した。「幽霊の正体見たり、ですよ。」俺は得意そうに言い、「いわくつきの物件は出る出るというけど...日々の恐怖10月14日不動産屋(5)

  • 日々の恐怖 10月7日 不動産屋(4)

    日々の恐怖10月7日不動産屋(4)Kさんの住むアパートまでは俺の自宅から自転車で十分位の所にあり、急いで現場に向かった。アパートの隣接する道路まで来て遠目に部屋を見ると、アパートの電灯の中に人影が見える。自転車を降り、静かに歩いてアパートの入り口まで来ると、そこには黒い薄手のジャンパーに青色のジーパン姿の男が、Kさんの部屋の前で何か怒鳴っているのが見えた。警察はまだ来ていなく、どうしようか迷って立ち尽くしていると、男が不意にこちらに顔を向けた。男は人がいる事に気づいて驚いたが直ぐに顔を隠すように俯き、こちらに向かってくる。そして入り口で立ち止まっている俺の脇をすり抜けるように男は立ち去ろうとしていたので、逃げられると思い咄嗟に男の腕をつかんだ。男は俺の手を振り払い逃げ出そうとしたので、今度は男の腰にしがみ...日々の恐怖10月7日不動産屋(4)

  • 日々の恐怖 9月29日 不動産屋(3)

    日々の恐怖9月29日不動産屋(3)しかし、それから二週間ぐらいが経って、またKさんから以前と同じような事が起きたと言う連絡を受けた。俺はただ事ではないと思い、彼に直接会って話を聞きくことにした。それによるとKさんはその日の夜、二時ぐらいまでゲームをしていた。すると突然、どこからか革靴のコツコツと鳴る足音が聞こえてきた。足音はだんだんと近づいてきて部屋の前まで来ると止まり、その後ドアを激しく叩く音が聞こえ、それと同時に男の怒鳴り声が聞こえてきたという。男は、「いい加減にしろ!」「もう俺に付きまとうな!」などと言っていて、十分ぐらいそれが続いた後、静かになったということだった。霊とかオカルトが平気なKさんもこれには参ったらしく、青ざめた表情を浮かべていた。警察に通報しようかどうか考えたが、またその男が来るかも...日々の恐怖9月29日不動産屋(3)

  • 日々の恐怖 9月19日 不動産屋(2)

    日々の恐怖9月19日不動産屋(2)興味を持った俺は、Kさんに紹介する部屋の事について聞いてみた。その部屋は一人暮らしの二十代の女性が半年くらい前に自殺した部屋で、事件後は誰も借り手がついていない物件だった。実際に部屋を見てみたくなった俺はKさんの担当を代わってもらい、二日後にKさんと共に部屋を見に行った。部屋に行く途中、Kさんと話をしたのだが、彼は霊などのオカルトは全く信じていないようで、以前にもいわくつきの部屋に住んでいたという。その時も特に霊体験をしたことはなかったそう。アパートは築八年ほどの二階建てのごく平凡な建物だった。以前は近くにある機械の部品組み立て工場で働く、一人暮らしの派遣労働者がほとんど入居者だったようだが、不況の煽りを受け派遣切りがあったので、今ではアパートの入居率は2割ほどしかいない...日々の恐怖9月19日不動産屋(2)

  • 日々の恐怖 9月12日 不動産屋(1)

    日々の恐怖9月12日不動産屋(1)俺は一年前から不動産の仕事をしている。主な仕事は部屋の紹介など。そこの不動産会社は高校の部活の先輩、Mさんが勤務していて、そのつてで紹介してもらった。ある時、二十代ぐらいの男性が部屋を探しに来た。その男性、Kさんからいわくつきの物件を紹介して欲しいと言われたのだ。突然の事に要領の得ない俺の様子をみて、先輩のMさんが間に入ってくれた。「お客さん、そうゆうものをお探しならこちらへ。」「後は俺がやるから大丈夫だ。」と代わってくれた。Kさんが帰った後、Mさんが事情を話してくれた。Mさんによると時々、Kさんの様にいわくつき部屋を狙ってやってくる客がいるのだそう。目的は大体二つに別れていて、一つは怖いもの見たさや興味本位で、もう一つは家賃が安いからとの事。Kさんは後者だった。この仕事...日々の恐怖9月12日不動産屋(1)

  • 日々の恐怖 9月5日 オッサンの家(6)

    日々の恐怖9月5日オッサンの家(6)それからは見知らぬ人達が家を出入りするようになった。たぶん霊媒師だと思った。その頃から家の中は変なお香の匂いと、訳の分からない念仏みたいのが聞こえ続け、近所から苦情が来る毎日だった。俺の高校の入学式にも両親は顔も見せず、家族バラバラで部屋で過ごす日々が続いた。夏頃に異音と泣き声は無くなった。どっかの霊媒師が成功したみたいだと俺は思ったが、誰も居間に寄り付かなかった。その後、俺は高校3年になり東京の大学に進学が決まり、母とオッサンと縁を切りたかったので新聞奨学生の手続きをしてた2月の終わりに、また異音が鳴り始めた。しかも今度は家中で聞こえるようになった。俺は話すタイミングはここしかないと思って、卒業式の次の日に弟と妹に兄から聞いた話をした。当然、その夜に母とオッサンに呼ば...日々の恐怖9月5日オッサンの家(6)

  • 日々の恐怖 9月1日 オッサンの家(5)

    日々の恐怖9月1日オッサンの家(5)ある日、オッサンが納骨も終わって落ち着いたぐらいに、「今夜は帰らん。」と言ってどっかに行った。兄が夜1時過ぎにトイレに行ったら、オッサンが血相変えて帰ってきて、仏間に飛び込んで念仏みたいのを唱えてた。それで、また母親が出たんだなと理解したそうだ。さらに、兄が中学に上がる頃から異音が鳴るようになり、赤ちゃんの鳴き声がするようになった。家の中でしか寝れないし、原因不明の物音と赤ちゃんの泣き声にいたたまれなくなったオッサンは、霊能者にすがりまくったらしい。兄は、「ガキだったから分からないけど、親父は凄い大金使ったと思う。効果が無ければ霊能者に電話でがなりたて、また新しい霊能者を探す。そんなのが1年間ぐらい続いたよ。」と言った。ちなみに、兄はその頃から非行に走って家にあんまり帰...日々の恐怖9月1日オッサンの家(5)

  • 日々の恐怖 8月29日 オッサンの家(4)

    日々の恐怖8月29日オッサンの家(4)そんな状況がしばらく続き、兄が小学生高学年になった年に奥さんはその部屋で死んでいた。自殺した形跡もなく、ただ動かなくなってたと兄は言った。(実際に警察も来たが心筋梗塞と言われたらしい)その時点で自分も正直、母親のバカさ加減が原因とはいえなんでこんな家で暮らさなきゃいけないのか分からなくなったし、それとオッサンがこの家を離れないのも疑問に思った。で、兄に聞いた。「なんでそれでもこの家に住んでるの?」すると兄は、「ここ離れたらお袋が出るんだってよ、鬼の形相で。」と言った。俺の疑問を感じ取ったのか、兄は話を続けた。葬儀を終わらせて、オッサンの実家に休養を兼ねて行ったらしいんだが、オッサンは毎夜、亡くなった奥さんが動かない赤ちゃんを抱いてオッサンに縋りつく夢を見たらしい。夜中...日々の恐怖8月29日オッサンの家(4)

  • 日々の恐怖 8月25日 オッサンの家(3)

    日々の恐怖8月25日オッサンの家(3)そんな状況でもなんとか第二志望の高校に合格できて、中学最後の春休みになった。たまたま自分一人が家にいた時に兄が帰ってきた。「探し物しにきただけだから。」と言う兄に、半年ほど起こってる異音と泣き声について話してみた。兄はまじめに聞いてくれて、「ちょっと待ってろ。」と言って居間の棚から知らない鍵を持ってきた。そして、「誰にも言うなよ。」と言って、2階の入ってはいけない部屋の前に連れてきてくれた。そして鍵を開けて入った。俺はてっきり御札だらけとかの怖い部屋を想像してたんだが、いたって普通の和室だった。ただ、襖の後ろに張られた1枚ずつの御札と、仏壇と異様なほどに供えられた人形を除いては。人形の数は30~50ぐらいだったと思う。兄に、「誰の仏壇?」と聞くと、「俺の姉らしい。」と...日々の恐怖8月25日オッサンの家(3)

  • 日々の恐怖 8月22日 オッサンの家(2)

    日々の恐怖8月22日オッサンの家(2)オレ達が家に入ると、入れ替わるようにオッサンの息子(義理の兄)が家を出て行った。兄は俺達兄妹に優しかったから、”自分達のせいで出て行ったのかな?”と思うと兄に凄く申し訳なかった。その後もオッサンに虐待されるでもなく無事に過ごしていたのだが、俺が中3の夏に奇妙な事が起こり始めた。それは、家族で居間にいると2階から異音が鳴り始めた。今で言うと壁ドンみたいな音が。居間の真上の2階の部屋は、”仕事道具があるから。”という理由で立ち入りを禁じられ、鍵がかかってて入る事は出来なかったから、最初は”荷物が崩れたんだろう。”ぐらいにしか思ってなかった。オッサンもネズミかなんかだと言ってたので気にしないようにしてたが、だんだん異音が鳴る頻度が増え、仕舞いには赤ちゃんの鳴き声が聞こえ始め...日々の恐怖8月22日オッサンの家(2)

  • 日々の恐怖 8月20日 オッサンの家(1)

    日々の恐怖8月20日オッサンの家(1)お嬢様育ちで世間知らずな母が、俺と弟と妹を連れて父と離婚したのは俺が小学校低学年の時だった。母の実家が地方都市のそこそこの名家っだったんで、自由で裕福な暮らしが出来ると思ったらしい。しかし祖父母は激怒し1年足らずで絶縁状態となり家を追い出され、地元でも評判の悪い土建屋のオッサンと再婚した。オッサンはいかにも成金で趣味の悪い男だったが、両親に絶縁され頼る者が無かった母からすれば最高の男だったんだと思う。しばらくのホテル暮らしのあと、オッサンの家に引っ越す事になった。オッサンの家は無理に増改築をしたのか、大きいのだが和風の家にプレハブ小屋みたいのを足した感じで、歪な感じだった。しかしガキで何も知らないオレ達は、無邪気にデカイ家を見て喜んでいた。童話・恐怖小説・写真絵画MA...日々の恐怖8月20日オッサンの家(1)

  • 日々の恐怖 8月13日 故郷

    日々の恐怖8月13日故郷小学2年の夏休みだった。8月の始めに一人でおじいちゃんの家に行った。1週間くらい遊んで、お盆に母と弟が合流して帰るという方法だった。夏休みなので朝はラジオ体操があるわけだが、地元の子たちに混じってやるのがなんか恥ずかしい。知らないやつらだし、スタンプだって違うだろうし。でも、いざ行ってみると、別に普通に受け入れられた。「スタンプカード違う!」とかって最初に話しかけてくれたのが、5年生のお兄ちゃん。そのお兄ちゃんとは帰るまでの間、ラジオ体操をやる家に集合してから開始までに結構話した。最後の日は、「来年もくる?」って言ってくれた。結局その年以降は、おじいちゃんの家にお盆に行っても日帰りという方法になり会えなかったんだけど、この間おじいちゃんの家に行ったときに、従兄弟と犬の散歩をしてたら...日々の恐怖8月13日故郷

  • 日々の恐怖 8月7日 異国の悪魔(2)

    日々の恐怖8月7日異国の悪魔(2)親父は、”これは身ぐるみはがされるかな・・・・・。”と思ってたらしいんだが、(インドネシアに限らず、日本製の物とか日本人が不用意に持ち歩く多額の現金目当ての奴らなんかはいっぱいいる)仲間の大事には変えられないんで了承した。別室に連れて行かれ、ポケットの中身を全部出させられた。あ、この時点で親父は雨と泥でめちゃくちゃになったスーツは既に脱いで手に持ってる状態、本人は下着だけだったらしく、オマケで掘られるかもとかビクビクしてた。結局そんなことはなかったんだが、シャーマンの目にとまったのが定期入れ。日本で通勤してる時に使ってる定期しか入ってないんで、おかしいなと思ったそうだが、中身を見せろと言われたので見せた。そしたら、シャーマンは定期の後ろに入ってた俺の写真を持って、これのお...日々の恐怖8月7日異国の悪魔(2)

  • 日々の恐怖 7月30日 異国の悪魔(1)

    日々の恐怖7月30日異国の悪魔(1)十数年くらい前、俺の親父がインドネシアに出張した時の話。親父は語学堪能な人だから、現地のガイド、中国支社の人、日本の同僚の三者通訳みたいな感じで行っていた。郊外の工場行った帰り、夜になってきた頃にスコールにあって、街灯もガードレールもなく舗装もされてない山路を車で走ってたらしい。二台に分乗してて、親父は後続の方に乗っていた。すると前の車がスリップ、親父の乗ってた車もそれ避けようとして横転した。前の車は山肌を回転しながらズルズル落ちて、みんな骨折してたり手足ザックリ切ってたり、死人はいないけどかなり酷い状態だった。後続の方もガラスはめちゃくちゃで、負傷っぷりはおんなじ感じの中、親父だけが奇跡的に右手の側面を削っただけで済んで、血もそんなに出てなかった。ガイドが言うには歩い...日々の恐怖7月30日異国の悪魔(1)

  • 日々の恐怖 7月24日 空き地

    日々の恐怖7月24日空き地俺のうちは親父が地元企業に勤めていたから、生まれてから一度も引っ越しをしたことがなく、生まれた時から高校を卒業するまで18年間、同じ所に住んでいた。(大学は東京の私大だったのでそれ以降一人暮らし)家と同じ並びで4軒ほど離れた家に、おじいさんが一人暮らしをしていた。俺が地元を離れる時もぴんぴんしてたから、実際はそれほど年じゃない初老の人で、子ども目線だから年寄りに見えたのかも知れない。近所づきあいはあまりしない人だけど偏屈ということもなくて、普通だった。おじいさんの家は敷地の奥まった所に建ってて、前は小さな空き地みたいになっていた。駐車スペースみたいな感じだが、車はなかった。あとコンクリートやアスファルトで固めてもないから、夏は雑草が伸びて、たまにおじいさんが草刈りしてた。親からは...日々の恐怖7月24日空き地

  • 日々の恐怖 7月17日 左手(5)

    日々の恐怖7月17日左手(5)「それ以来さ、寝る時はずっと左手吊ってんのよ。もう30年だぜ。」Kさんは力なく笑うとリストバンドを捲って左手首を見せてくれた。「だからさ、手首が擦れすぎてこんななっちゃった。」同じ場所で擦り傷を何度も繰り返すと、こんななんとも言えない跡になるのか。「左手ちょっと長いのもそのせいですか?」と、ぶっちゃけついでに聞いてみた。「多分そうだと思う。こうなると右手と両足も吊しとけば良かったなって今は思うよ。」そう言うとKさんは普段のようにからっと笑った。「お祓いとかは行ったんですか?」「行った行った。何回もお祓いしてもらった。あの祠にも行って何回も謝ったけどダメ。許してくんない。」「投げた石は?」「探したけど結局分かんない。まあただの石だからね。あの時投げなきゃって、今でも後悔してるよ...日々の恐怖7月17日左手(5)

  • 日々の恐怖 7月10日 左手(4)

    日々の恐怖7月10日左手(4)異変が起きたのは彼女が亡くなって7日目の夜だった。ベッドで寝ていたKさんは、激しい息苦しさで目を覚ました。「ハッ、ハッ、ハッ・・・・。」呼吸を整えながら周囲を見るが、おかしな所は何もない。再び横になって眠りにつくが、また息苦しさで目を覚ます。まるで誰かに首を絞められているようだった。たまらなくなったKさんはもう眠るのはやめようと思い、顔を洗おうと洗面所に行き鏡を見てギョッとした。首に手で絞めた赤い跡がくっきりと残っている。「なんだよ、これ・・・・。」そこで初めて心霊現象が頭を過ったKさんは、部屋に戻ると電気をつけたまま布団をかぶってガタガタと震えた。が、それでも睡魔がやって来る。ウトウトするKさんを再び息苦しさが襲う。布団を跳ね上げたKさんは、そこで初めて自分の首を絞める物の...日々の恐怖7月10日左手(4)

  • 日々の恐怖 7月4日 左手(3)

    日々の恐怖7月4日左手(3)彼女は祠に手をつっこむと無造作に石を掴み、「ねえ、せっかくだから、おみやげにこれ持って帰ろうか?」と、Kさんに差し出した。Kさんは彼女から石を受け取ると、「やめとけよ、バカらしい。」と言いながら、元に戻せば良かったのに、石を林の奥に放り投げてしまった。肝試しはこれで終わったが、その翌日に大事件が起こった。電車通学だったKさんは、いつものように駅で彼女と待ち合わせ、2人で電車が来るのを待っていた。ホームでの彼女はかなり様子が変だったらしい。酔っ払ったようにふらふらしてて、今にも倒れそう。「おい危ないぞ。体調悪いのか?」心配するKさんの問いかけに彼女は、「大丈夫、大丈夫。」と言うだけで相変わらずふらふらしている。そのまま彼女は身体を揺らしながら、線路に落ちそうになった。「危ない!!...日々の恐怖7月4日左手(3)

  • 日々の恐怖 6月28日 左手(2)

    日々の恐怖6月28日左手(2)しばらく沈黙が続いたが、失言に酔いが一気に覚めた俺は、「なんか変なこと聞いちゃってスイマセン。」と、心から詫びた。その間、リストバンド越しに手首をさすっていたKさんは不意に、「君さ、お化けとか幽霊とか、そう言う話信じるタイプ?」と、意外なことを聞いてきた。唐突な質問に面食らったが、俺はこう答えた。「いや、むしろ好きっすね。昔、稲川淳二のライブとか行ったことありますよ。」Kさんは、「そうか、好きなんだその手の話が・・・。」と言うと、ゆっくりと傷跡の由来を語ってくれた。Kさんは高校の頃、彼女と肝試しに行ったことがあるそうだ。肝試しと言っても本格的な心霊スポットではなく町外れの小さな雑木林で、幽霊が出ると噂が流れた程度の場所らしい。放課後、彼女と2人で雑木林に来てみたが、それらしい...日々の恐怖6月28日左手(2)

  • 日々の恐怖 6月22日 左手(1)

    日々の恐怖6月22日左手(1)以前勤めていた会社の取引先の営業にKさんって人がいた。歳は40代で見た目は平凡、仕事もそつなくこなす、いわゆる普通のサラリーマンだ。変わったところと言えば、常に腕時計の下にリストバンドをしているくらい。あと、左手が右手より少しだけ長かった。それは初対面の時から気になってたけど、身体的なことだから特に話題にもせずスルーしていた。その理由を初めて聞いたのは、一緒に仕事するようになって何年も経ってからだ。あるプロジェクトが終わり、俺の会社とKさんの会社で合同の打ち上げが催された。その席でKさんの隣に座った俺は、仕事の話や雑談に花を咲かせ、楽しい時間を過ごしていた。Kさんは俺より二回りも上だけど気さくないい人で、営業だけに話もバツグンにうまい。小一時間ほど差しつ差されつ杯を重ねていた...日々の恐怖6月22日左手(1)

  • 日々の恐怖 6月17日 妹の話(2)

    日々の恐怖6月17日妹の話(2)父は気のせいだろと言い、相手にはしてくれませんでしたが、学校が終わり帰ってくると母が青ざめてました。「天気いいから窓を開けといたんよ。そしたら知らない人が縁側に座ってて話しかけてきたんで、近所の人かと思ったらいきなりおかしくなって・・・。」空中を見上げ突然笑い出し、大声で威嚇されたらしい。「変よこの家、もう嫌。」母は父に事の顛末を話したが、父は一軒家を買ったのにそんなにすぐに引っ越しできるかといい取り合ってくれませんでした。しかも、そのあと何度もその変な人が現れたと聞きました。そしてこの剥製の家にすんで5年たったある日、夜中に私は目を覚ましました。チャイム音と窓をたたく音が聞こえるのです。”ピンピンピンピンピン・・ドンドンドンドン!!バンバンバンガツン!”ヒ...日々の恐怖6月17日妹の話(2)

  • 日々の恐怖 6月13日 妹の話(1)

    日々の恐怖6月13日妹の話(1)兄が中学生になるとのことで、家族で近くに家に引っ越しをしたときの話です。築40年以上の家で古臭い一軒家なのですが、その家に変なものが大量にありました。カラフルに色ずくミラーボールや甲冑、大量の漢字が書かれた札。そして、大量の剥製でした。大きいものは虎から小さいものはネズミまであり、私は親から穢れるから触るなと言われました。お祓いをし、何度も清めました。もうないはずとのことで家に入れてもらえることとなり、落ち着いたときに私が兄と家でかくれんぼをしました。私が隠れたのは畳の間で押し入れみたいなところの上の部分です。おとなしくしていると、横に何かがあるのに気が付きました。這って近寄ると黒いさらさらしたものに触れました。「〇〇みーっけ!」兄に見つかり、襖を開けられ光が入ってくると、...日々の恐怖6月13日妹の話(1)

  • 日々の恐怖 6月9日 窓の外

    日々の恐怖6月9日窓の外3年ほど前、関東のとある古い大学病院に入院したときのことです。換気のために病室の窓を開けていると、部屋付きの看護助手のおばちゃんが、「ごめんね~。ここ、閉めさせてね!」とバタバタ閉めていく。「暑いよ~。」と不満を言うと、おばちゃんは、「落ちる人がいるから・・・・。」みたいなことを言う。それで、「朝、病院に来るとね、この窓の外に患者さんが立っているのよ。で、下から見上げた私たちと目が合うと、ニッコリ笑ってから飛び降りるの。そんなことが何回かあってね・・・・。」同室の人たちは思わず顔を見合わせて沈黙した。”何でそんな話をここでする?”と、こっちの顔に書いてあったのか、おばちゃん、「ああ、余計な話をごめんね~。」と、そそくさと出て行ってしまった。その後、手術を受けて別の病棟に移動になった...日々の恐怖6月9日窓の外

  • 日々の恐怖 6月6日 襖

    日々の恐怖6月6日襖祖父母の家では、”襖を間違っても逆に閉めるな”という厳しい戒律がある。というのも、左右逆に閉めた時だけ、その隙間からぼんやりとした人型の白い影が出てくるから。私は見た事ないけど、子供の頃に面白がって祖父母宅の近所の友人に話したら、友人がやってしまい泡吹いて倒れた。祖母は見えないけど、祖父や娘である私の母、おば達は見える。おばの一人が商売人だからか、やたら縁起を担ぐ人で、お祓いを試した事があった。神主、お寺さん、仙人のような修験者、皆ダメだった。皆、「何かもわからない。」「祓う事も出来ない。」と言ったらしい。修験者が帰った後、たまたま襖が互い違いのままで、またぼんやり影が出ていた。その影が頭を何回も下げているのを見て、おばはお祓いをやめたらしい。で、今もそのまま。私が結婚した時は旦那にそ...日々の恐怖6月6日襖

  • 日々の恐怖 6月2日 キーホルダー(2)

    日々の恐怖6月2日キーホルダー(2)閉じ込め事件から数年後。自分が転職するかしないかで悩んで田中に相談したときのことだ。田中から思いっきり罵倒された。小学校からずっと勉強で苦労したことのないお前がむかついていた。こっちは結婚もしたし子供もいるし国家資格もとった、お前より人間できてるんだ、勉強で苦労してないんだからもっと苦労しやがれ、大学出た贅沢者の世間知らずが、って感じに延々言われて、縁が切れた。田中の家は学歴至上主義の最低でも大卒、理想は博士って考えだった。俺と田中は幼稚園から高校までずっと同じで、自分は大学、田中は専門学校に進学している。田中は自分で、好きな科目は夢中になって勉強して学年一位の点数取るけど、嫌いな科目は無視ってタイプだと言っていた。だから自分の好きなことができる専門に行くって、高校の時...日々の恐怖6月2日キーホルダー(2)

  • 日々の恐怖 5月30日 キーホルダー(1)

    日々の恐怖5月30日キーホルダー(1)友人田中からキーホルダーをもらった。ガラス製の人形と、ナザールボンジュウがついていた。ナザールボンジュウは青いガラスでできた目玉。トルコのお守り。多分どこかで見たことあると思う。ガラス製品だから壊したくなくて、透明なプラスチックの容器に入れて自分の部屋の棚に飾った。しばらくするとキーホルダーから視線を感じる、ずっとただ観察されてるような。なんか見られてるなって顔を上げたら誰かと視線が合うあんな感じ。だが見回してみても一人暮らしだから自分以外誰もいない。生理的に気持ち悪くてプラスチック容器からキーホルダーを取り出し、中身が見えない箱に片付けた。数日過ぎて、夜、田中から電話がきた。約二日間、ずっとトイレに閉じ込められてたそうだ。取っ手が壊れてドアを開けられなくなっていた。...日々の恐怖5月30日キーホルダー(1)

  • 日々の恐怖 5月27日 ぎい(2)

    日々の恐怖5月27日ぎい(2)思い出すのは、いつもそこだけだ。きっかけもなく、白昼夢のように、ふと思い出す。前後の記憶はどれだけ頭をひねっても思い出せない。だからそこに至る経緯も、その後どうなったのかも、彼女にはわからない。ただ、思い出した直後は、不思議と懐かしむような気持ちになるそうだ。「そういえば、そんなこともあったなあ。」そんな心持ちになるそうだ。首吊りのシーンを思い出した感想としては、かなり変だと思う。怖いとか、悲しいとかなら、わかるのだが。「一応、調べたけどね。私が小さい頃にそんな死に方した人はうちにはいなかったよ。」「じゃあ、実際に見た記憶じゃないのか。」「それは、わからない。」彼女曰く。彼女の実家に晴れ着の幽霊が出る、という話は昔からあったそうだ。建て替える前の実家は昭和の初めに建てられた古...日々の恐怖5月27日ぎい(2)

  • 日々の恐怖 5月24日 ぎい(1)

    日々の恐怖5月24日ぎい(1)彼女には、たびたび思い出す古い記憶があった。記憶のなかの彼女は、おそらくはまだ未就学児。本当に小さい頃の記憶だという。小さい彼女は、廊下にいる。実家の二階の廊下だ。小さい彼女はすぐにそれを理解する。今ある実家ではない。古い実家だ。彼女が小学生の頃に建て替えた。今はもうない古い実家。板張りの廊下はよく磨かれて、艶々としている。右手には閉めきられた障子戸が整然と並ぶ。左手には窓があり、そこから庭を見下ろせる。廊下はまっすぐで、突き当たりで右に折れている。折れた先がどこへ通じているのか、彼女は知らない。夢の中の彼女は、障子戸に手を掛ける。するりと、音もなく障子戸が開く。その先は二間続きの和室。二間を隔てる襖は開け放たれている。そして、そこで女が首を吊っている。こちらに背を向けていて...日々の恐怖5月24日ぎい(1)

  • 日々の恐怖 5月16日 白狐(14)

    日々の恐怖5月16日白狐(14)「神罰があるとかないとか言い出しても水掛け論だからその辺りはどうでもいいけども、俺はあると思っていた方が人生楽しいからそう思うことにしてるよ。」と小豆さんは返した。私もそう思うことにした。神社を燃やすというメンタルを持った人間がどういう人なのかはわからないけど、犯人は家具の角に足の小指毎日ぶつけてればいい。正直今も、神様と一緒にいたなんてあんまり信じてない。現実世界でこんな話大声で出来ない。でも信じることと、あると思う事はまた少し別だと思うから、そういうこともあるんだなぁと思うようになった。あんなに思い焦がれた神様に、一時でも使われたのならこんなに嬉しいことはない。修復してからの節句の祭りでは、拝殿奥の扉が開かれて石像が公開されるようになった。一年に一回、遠くからあの白い世...日々の恐怖5月16日白狐(14)

  • 日々の恐怖 5月13日 白狐(13)

    日々の恐怖5月13日白狐(13)「破!とか出来るんすか?」「そんな便利なこと出来たら、この神社大儲けしてるよ。」「形だけでも御祈祷とかすればいいじゃないですか。」「めんどくせぇよ~。」来年もきっとこの神社は寂れたままなんだろうと思った。次の年の夏だった。実家でぐだぐだしていたら、急にぴーちゃんが肩に乗り私の髪を毛づくろいし出した。珍しいこともあるもんだと思った次の瞬間、はっとした。”もういないんだ。だから、ぴーちゃんが寄ってきたんだ。”こんなあっさりしてるものなんだと思った。それ以外のことは、特に何も思わなかった。ぴーちゃんが寄ってきたこと以外、特に何も変わりはなかったから。その年のツアーでも、小豆さんの県に行った。1年振りに会った私の顔を見て、「そうかぁ、そうかぁ・・・・。」と呟いて、また缶コーヒーをく...日々の恐怖5月13日白狐(13)

  • 日々の恐怖 5月7日 白狐(12)

    日々の恐怖5月7日白狐(12)基本は年始→節句→ツアーが基本の流れだったので、節句祭りを見届けてその年も小豆さんに会った県に行くことになった。確認したくなった。社が修復されて神田様が戻ったのかどうかを。その年の小豆さんはエメラルドグリーンのジャージだった。社務所に訪いを入れた私を見て、「まだ見つからんかぁ・・・・・。」と言い放った。社には戻っていないらしい。1年前と同じ縁台に座って、神社が修復されたことを話した。簡単に見れなくなったことも寂しかったけれど、やっぱりあの白さは覆い隠すべきだと思う。あんなに綺麗なものは極力人の目に晒さない方が、綺麗なままでいられる気がする。そのようなことを話すと小豆さんは、「分かる分かる。」と同意してくれた。「女子高生のスカートと一緒だな。見えそうで見えないから見たくなるんだ...日々の恐怖5月7日白狐(12)

  • 日々の恐怖 5月3日 白狐(11)

    日々の恐怖5月3日白狐(11)開場時間が差し迫ってきたので、小豆さんとはその辺りで別れた。別れ際、「あんま深く考えずに普通に過ごすといいよ。」と言われた。正直この時点で、小豆さんの話は全く信じていなかった。神様が付いていると言っても、特に良い事があるわけでもなし。生活は底辺だ。でもよくよく考えると、再び神田神社に行ってから地元に戻るようになった。犬猫には嫌われるようになった。そして極め付けは実家のぴーちゃんだ。ぴーちゃんは私の首と髪の間に入って寝るのが好きだったのに、実家に戻って以降近寄ってさえくれなくなった。愛鳥に明確に避けられている。本当に一緒にいるのかもしれない。信じきるわけではないけれど、極力地元を歩くようになった。地方に行く時は初めて行く場所を回るよう心掛けた。一度は行ったことある観光名所なんか...日々の恐怖5月3日白狐(11)

  • 日々の恐怖 4月30日 白狐(10)

    日々の恐怖4月30日白狐(10)巫女さんは処女が務めるものだと思っていたし、生贄なんかも基本は生娘という知識があった。処女じゃなくとも清廉潔白な人間が、神仏と関わるものだと。当時の仕事も清らかなものではないし、生活は自堕落極まりない。欲望と損得勘定で成形された私に、神様が付くとは到底信じられなかった。小豆さんに、「情を寄せたからだよ。綺麗、悲しい、寂しい、悔しいってそのお狐さんに向けて長年情を寄せた。そこまで思われて悪く思う神さんはいない。」と言われた。「それなら、他の神社とかには余り行かない方がいいんですかね?」「日本の神さんは結構大雑把だから大丈夫だよ。でも大雑把で大らかだけど基本は嫉妬深いものだから、他所に信仰を向けるのはやめた方がいいと思う。」「そういうもんですか。」「君のお狐さんは、君と色んな所...日々の恐怖4月30日白狐(10)

  • 日々の恐怖 4月25日 白狐(9)

    日々の恐怖4月25日白狐(9)おっさんから貰った缶コーヒーを飲みながら、縁台で話をした。おっさんと書くには少々失礼なので便宜上、小豆さんとする。ここは代々小豆さん家が管理している神社で、一応神職の資格は持っているけれど本職の方がメインだから最低限の管理しかしていない。「御朱印でも始めれば参拝客も増えて金になるんかね~。」と言う小豆さんはとっても俗っぽい人だった。それでも神田様の事は何一つ話してないのに、小豆さんは神様と断定する。「最初に見た時、白い狐がやってきたと思った。よく見たら人間だったけど、神さんが来るなんてどういうことかと混乱した。信仰しているところのお狐さんかな?」私自身、特に神田神社を信仰しているわけではない。どちらかといえば限りなく浅ましい欲求のみで神田神社のことを思っている。執着以外で表せ...日々の恐怖4月25日白狐(9)

  • 日々の恐怖 4月22日 白狐(8)

    日々の恐怖4月22日白狐(8)話は変わるが、私はとあるバンドが好きで割と全国を歩き回っている。所謂おっかけだ。実家に帰ってからというもの生活に回す出費が減ったので、以前よりも遠征が多くなった。開場時間までの空き時間、会場の近くを歩き回るのが常だ。全国各地の御朱印を貰うのも好きなので、基本は神社を見て回るようにしている。その活動の中、東北のとある県に行った。霧雨が降る中、いつも通り近くの神社に行った。寂れた神社だった。参拝客もいない神社なので朱印がない可能性が高かったけれど、一応念の為に社務所らしき建物に訪いを入れた。おっさんが出てきた。小豆色のジャージを着たおっさんだった。おっさんは私の顔を見ると凄い驚いた顔をしてから、上から下まで全身を眺め回す。失礼なおっさんだった。「御朱印頂けますか?」「うちはそうい...日々の恐怖4月22日白狐(8)

  • 日々の恐怖 4月17日 白狐(7)

    日々の恐怖4月17日白狐(7)話を聞いた次の日、姉と一緒に以前住んでいたところに行ってみることになった。駅から歩き、変わったところや以前通りのところを見かける度にわくわくした。以前住んでいた家も、あーちゃんの家の立派さもなにも変わっていなかった。小学校も殆ど変化がなかった。しかし、神田神社だけが、変わっていた。大鳥居も御神木もそのまま。本殿もぱっと見は以前通り。なのに子供の頃からあんなに焦がれ、中を見たいという欲求を阻んでいた外壁が、真っ黒になっていた。外壁の一部は焼け落ちて、あんなに見たくて仕方なかった白い世界がだだ漏れだった。外壁は真っ黒だけれど、中は子供の頃見た時のままに真っ白で、変わらず綺麗だった。だからこそ悲しい。白い世界を汚す黒さが、ただただ悲しかった。あんなに見たくて仕方なかったのに、こんな...日々の恐怖4月17日白狐(7)

  • 日々の恐怖 4月15日 白狐(6)

    日々の恐怖4月15日白狐(6)それからずっと、あの石像を見ることは叶わなかった。木を登ってみてもずり落ちて傷が出来るだけ。窓から身を乗り出してみても先生に見つかって叱られるだけ。欲求が溜まるまま、高学年になって転校をすることになった。引越し先はそんなに離れているわけではないけれど、別の町に行くと神田神社に行くことはなくなった。思い出すことも少なくなった。けれど他の神社に立ち入る度に、あの白さを思い出した。あそこほど綺麗な場所には出会えなかった。それから大分年を取って、高校を出て一人暮らしを始めた。それと同時に実家は以前の地元近くに戻ることになった。それでも一人で住んでいる場所から実家まで1時間もかからなかったので、実家に帰ることはなかった。なので神田神社に行くこともなかった。地元に立ち入ることはなかったけ...日々の恐怖4月15日白狐(6)

  • 日々の恐怖 4月12日 白狐(5)

    日々の恐怖4月12日白狐(5)お祖母さんの話を、麦茶を添えてあーちゃんと二人で聞くこととなった。あーちゃんのお祖母さんの麦茶は、砂糖が入ってるから余り好きじゃなかった。麦茶に手を付けず、とくちゃんに聞いた話をする。この謂れは本当かと。「そんな話は聞いたことないねぇ。」お祖母さんはあっさり否定する。「でも犬に殺されたってのは聞いてるよ。その狐を鎮めるために、神田神社は建てられたのね。節句の祭りで神楽をやってるでしょう。あの時に付けるお面は狐面だからね。お狐様を奉って、この辺りを守ってくださいってお願いしてるんだよ。」すごい信憑性があった。寂れた小さな神社だけれど、とある節句の時はわりと大掛かりなお祭りをしていた。初詣よりも縁日よりも、節句のお祭りは派手。神輿も出て神楽も催される。それでも御神体は、本殿の奥は...日々の恐怖4月12日白狐(5)

  • 日々の恐怖 4月8日 白狐(4)

    日々の恐怖4月8日白狐(4)山葵の茎に棘なんてないことは知っていた。茎のおひたしは、うちでよく出るメニューだったからだ。この辺りはずっと宿場町だった、と生活かなにかの授業で聞いていた。大昔は農地もたくさんあったのかもしれない。それでもこの辺りに山葵が自生出来るような清流があったとも思えない。でも、話はまとまってるし、犬に殺されたというリアリティは感じ取れた。それでも私の感想は、”よく出来た話だなぁ・・・。”止まりでしかなかった。なので私の顔には、不信感が浮かんでいたのだと思う。今思い返せばとくちゃんには申し訳ないことをした。とくちゃんは、この辺りに古くから住んでる人に聞いてみてたらいいよとアドバイスをくれた。当時の私の親友は、大地主の家の娘だった。近隣一体にあるマンションや賃貸物件、空き地や農地に至るまで...日々の恐怖4月8日白狐(4)

  • 日々の恐怖 4月3日 白狐(3)

    日々の恐怖4月3日白狐(3)稲荷神社の意味は図書室の本で調べた。狐を奉っているのが稲荷神社。ならばあの白い狐は神様だ。余計見たくなった。そこで私に救いの手を差し伸べたのは同じクラスのとくちゃんだった。私が図書室で神社仏閣の本ばかり読み漁っている姿を見て、声をかけてくれた。とくちゃんのお祖父さんは別の地方で神社を管理しているらしく、そういうことなら少し分かるよと話を聞いてくれた。神田神社の由来を、少しなら知っているととくちゃんは言った。”とくちゃんのお話”大昔、この辺りに一匹の狐が住み着いた。畑を漁って細々と生き抜いていた狐はある日犬に襲われた。追いかけられた狐はとうきびの畑の中に逃げ込んだけれど、葉っぱで体に切り傷が出来た。びっくりして畑から逃げ出した狐を、犬はまた追いかける。慌てた狐は、次に山葵の群小地...日々の恐怖4月3日白狐(3)

  • 日々の恐怖 4月1日 白狐(2)

    日々の恐怖4月1日白狐(2)なんせ徒歩2分、自宅はすぐに見えた。ウォーリーを探せより簡単だった。今度はピアノの先生の家を見つけてみようと思った。ピアノの先生の家はうちとは反対側の、学校の裏にある。なのでみんなから離れて、反対側の下を覗き込んでみた。神社があった。陰鬱としてただ怖いだけの神社が、真上から見るとだいぶ違う。祭事でも公開されない本殿の奥が、上からだとよく見えた。塀に囲まれた四角い何もない空間一面に、真っ白な砂利が敷き詰められていて、そのど真ん中にこれもまた真っ白な狐の石像があった。私はこの時生まれて初めて何かを見て、綺麗だと思った。薄暗い神社の一番奥、そこだけが本当に一面真っ白。綺麗で、ちょっと寂しかった。結局富士山は見えなかった。富士山の方角に、少し大きめのマンションが建っていてちょうど視界を...日々の恐怖4月1日白狐(2)

  • 日々の恐怖 3月29日 白狐(1)

    日々の恐怖3月29日白狐(1)今日はイブなのに暇してるから話してく。私は首都圏で生まれ育った。別段都会でもなく、田舎でもない。至って普通の住宅地のど真ん中。小学校まで徒歩2分という素晴らしい立地に生まれ、順調に進学した。進学した小学校の真裏には、神社があった。便宜上、神田神社とする。幼稚園の頃から毎日前を通っていたけれど、初詣や縁日、お祭りなんかでしか立ち寄ったことはなかった。理由は一つ、怖かった。神社の入り口にある大鳥居も、その側にあった樹齢百何年の御神木も、それらを守るように覆い茂った何十年もかけて育ち上げた木々たちも、全てが子供心に怖かった。神主も宮司もいない鬱蒼とした神社だけど、本殿が古臭いくせにいつも整って綺麗で、そのアンバランスさも少し不気味に感じてたのかもしれない。なのでその神社が何を奉って...日々の恐怖3月29日白狐(1)

  • 日々の恐怖 3月26日 井戸(3)

    日々の恐怖3月26日井戸(3)気持ちも心機一転して工事も順調に進んだかに見えた。現場に資材荷揚げするタワークレーンのフックに、玉掛けワイヤーを掛けたまま鳶が休養に入ってしまった。その玉掛けワイヤーから、シャックル(※U字形の連結金具)が現場に隣接する交差点の横断歩道に落ちた。地上13階に立ててあるタワークレーンだから、40m位の高さから1kg近い重さのものが落ちたのだ。怪我人が出た。それが一般人ではなく、現場に出入りしてる営業の人の足に跳ね返って当たった。幸い怪我は大した事なく明るみには出なかった。躯体工事も終わり工事は設備内装工事にと移った。内装工事で何が起こったか起こらなかったか俺は知らない。俺は立体駐車場の追加工事を頼まれ再び現場に戻った。所長に、変な事は続きましたが何とか終わりましたねと言ったら、...日々の恐怖3月26日井戸(3)

  • 日々の恐怖 3月22日 井戸(2)

    日々の恐怖3月22日井戸(2)鳶にあれは何だと聞いたら、井戸らしいと答えた。現場は海の近く、地下10mに井戸?水が嫌って程湧き出る場所に石板で蓋された井戸?誰がどの時代にどんな方法で、この水が湧き出る地下10mに井戸掘って、しかも石板で蓋して埋めたんだ?そして地上には古いお地蔵さんが収められている祠。ここは弄ってはいけない場所なのは明らかだった。所長にここには何があったのか聞いたら、ここには立体駐車場があって車が落下する事故もあり、不吉な場所だから御祓いを何回もしたと言った。とにかく事故だけは気をつけてやってくれと念を押された。地下にあった井戸らしきものも基礎工事のコンクリートで埋められ、工事は地上階に移った。とにかく現場が上手くいかない。言い訳を埋め立てた井戸のせいにするわけじゃないけど、計算出来ない人...日々の恐怖3月22日井戸(2)

  • 日々の恐怖 3月20日 井戸(1)

    日々の恐怖3月20日井戸(1)俺は建設業をやっている。マンションを造っているんだが、施工前に地鎮祭というのを近くの神社から神主さん呼んでやる。普通は業種的に地鎮祭には呼ばれないんだが、その物件では呼ばれた。元々は立体駐車場で、頻繁ではないが事故も起きており、敷地の片隅に古い小さな祠があり、中にこれまたかなり古いお地蔵さんが収められていた。4スパン地上13階建てのマンションの建設が始まった。打ち合わせも終わり基礎の乗り込み前に、所長に躯体業者でもう一度御祓いを行うと集められた。こんな経験は今まで初めてで、俺は所長に、「この現場は何なの?」と聞いた。「○○君は現場で変な経験とかない?霊的なもんとか・・・・。」正直、この所長は頭おかしいと思った。話が面倒くさい感じだったから、「僕の家には家系図が残っていて、先祖...日々の恐怖3月20日井戸(1)

  • 日々の恐怖 3月15日 レクイエム 6

    日々の恐怖3月15日レクイエム6入院中はたくさんの人に支えられた。大手術もした。今思えばそんなこともあったな、と思うが、当時は本当に大変だった。もう二度とこんなことになりたくない。そう思った。大学の開校期間中に復帰できた。単位もいくつか落としたが、周りの支えもあり、なんとかなった。そうして時は過ぎて行った。僕は大学三回生になり、就活をしていた。就活は本当に大変だった。毎日色々なところに行っては、説明会に出たり、面接を受けたり、テストを受けたりしていた。順調に物事が進むようには思えなかった、そんな時のことだった。大阪、梅田の地下街を就活の合間に歩いていた。僕の就活の息抜きはラーメンで、色々な店を捜しては食った。今回は坦々麺。今もあるかどうかはわからないが、有名な泉の広場を抜けた先にある。本格坦々麺の店に向か...日々の恐怖3月15日レクイエム6

  • 日々の恐怖 3月7日 レクイエム 5

    日々の恐怖3月7日レクイエム5僕の右耳には携帯が当てられていて、僕はストレッチャーの上だった。窓を見ると街灯が素早く移動する。明らかに救急車の中だった。全てを察して、僕は母親に言った。「えらいことになってしもた!ごめん、ほんますまん。」そう、僕は途中でトラックと交錯して、事故を起こして気を失って搬送されている最中だった。それまで見た風景は、たぶん夢かなんかなんだろう。そう思って目を閉じたらそのまま気絶した。次に目を覚ましたのは、いわゆる集中治療室だった。自分の間近で鳴ったナースコールで目を覚ました。夜中に目を覚ますと、看護師がやってきて、安心させるような言葉をかけて、去っていった。そこでまた気を失った。翌朝、鏡を見て驚愕した。事故の影響でボコボコに腫れていた。医者は笑いながら、大体治るから大丈夫、と言葉を...日々の恐怖3月7日レクイエム5

  • 日々の恐怖 2月27日 レクイエム 4

    日々の恐怖2月27日レクイエム4それでも耳をすませて聞いていたが、その後も電話は誰も喋らずで、僕は仕方なく受話器を置いた。その瞬間、電話が鳴った。固定電話の番号通知には母の名前だ。「もしもし、どうしたん?こんな時間まで、どこいんの?」と僕が話し出すと、母親の声が聞こえた。が、なんといっているかがわからない。「なんか電波悪いみたい。聞こえる?もしも~し・・・・・。」そう僕が言うと、母の方の声が次第に聞こえてきた。「・・・は、大丈夫?」「え?なんて・・・??」そんな感じで答えていると不意に地震のように地面が揺れ始めた。「うわ、地震かも。そっちは大丈夫?」と答えながらも揺れは大きくなっていく。「・・・・ねんで。」母の声は相変わらず聞こえにくい。地震の揺れが大きくなっていく中、”このままじゃまずい!”と思った僕は...日々の恐怖2月27日レクイエム4

  • 日々の恐怖 2月22日 レクイエム 3

    日々の恐怖2月22日レクイエム3家に着いたら、母がいなかった。もうすでにあたりは真っ暗で、いつもなら母は帰っている時間だ。これはいよいよおかしいのでは。そう思って母に電話しようとして携帯を取ろうとしてポケットに手を突っ込んだら、いつも入れているポケットに携帯がない。”あれ・・・・?”と思ってバッグを見てもない。”バイト先に忘れたか、それともこの家のどこかに置いたのを忘れただけかな・・・?”と考えて、わからなくなったので、とりあえず自分の携帯にかけてみることにした。今は昔、家の固定電話があったときで、その固定電話から空で覚えている自分の携帯電話にかけて耳をすませた。どこからも、バイブ音は聞こえない。”どうやらバイト先に置いてきたみたいだな・・・。”と考えながら受話器を置こうとしたとき、不意に違和感を感じて、...日々の恐怖2月22日レクイエム3

  • 日々の恐怖 2月16日 レクイエム 2

    日々の恐怖2月16日レクイエム2幹線道路の車線変更をして橋を渡っていたその時だった。陽が強くあたり視界を奪った。思わず目を瞑ったが、時速60kmで走行中で車も多く、無理やり目を開けた。視界は真っ白で、こんなことあるのかと思った。しかし、徐々に視界が戻ってきてホッとして、そのまま橋を降りる方向へ向かった。この橋が実は昔から不思議だった。詳細は特定されるかもしれないからぼやかすけど、橋の途中で道路のある種別が変わる不思議な道路で、それゆえに地元住民からはある愛称で呼ばれていた。そういった不思議な道路で、事故も多かったのでいつも警戒していた道路だった。なんとなく事故が多いのは太陽の光が入り込むタイミングとかなのかなとか考えながら、橋を降りた。そこで違和感に気づいた。その橋を降りた先の道は、いつもすごく混む。それ...日々の恐怖2月16日レクイエム2

  • 日々の恐怖 2月11日 レクイエム 1

    日々の恐怖2月11日レクイエム1これは僕が大学生だった時の話です。田舎の学生といえば、基本車か原付で移動することが多く、僕も例に漏れずホンダの原付で大学やバイト先に出かけていた。時には田舎から都市部まで30kmくらい走ったり、それを超えて海まで行ったりもした。便利な足をはじめて手にした僕は、どこへでも行けるような気がした。僕は家から10kmほど離れた大型ショッピングモールの本屋兼雑貨店でバイトしていた。理由は二つ。自由な金が欲しかったのと、母親に迷惑をかけずに就職まで進むための資金稼ぎ。父親を中学生で亡くした僕は、少しでもそうした負担から母親を解放したい、いわば早く自立した男として生きていく気持ちが強かった。田舎では仕事は少なく、給料も安い。近所の畑の学生バイトも季節によりけりだった。そこで少し遠方のとこ...日々の恐怖2月11日レクイエム1

  • 日々の恐怖 2月4日 病院関連話(20) 高校野球

    日々の恐怖2月4日病院関連話(20)高校野球学校の夏休み期間に高校生が入院してきた。症状は頭痛、吐き気、腹痛。でも検査をしても数値的には特に目立ったところはない。が、どうしても入院したいと言う。まあ、しばらく様子を見ることにしたんだけど、見ていると特に辛そうな感じはない。日中は休憩室で宿題をしていて、時々テレビを見上げる。テレビはずっと高校野球中継なんだけど、特に見入っているという風でもない。ちょっと思い当たることがあり、聞いた。「もしかして、仮病?」押し黙っていたのだけれど、「秘密にしておいてくれますか?」少年は地元の高校で、その地域には甲子園の常連校があるのだけれど、なんと彼の高校が20何年ぶりに甲子園進出を勝ち取ったらしい。「すごい盛り上がりで、野球部員がいる組の生徒なんて全員応援に行くのが当然、と...日々の恐怖2月4日病院関連話(20)高校野球

  • 日々の恐怖 2月1日 病院関連話(19) かかりつけ医

    日々の恐怖2月1日病院関連話(19)かかりつけ医いわゆる町の開業医(まあ町医者)を、かかりつけ医にすることを勧めている。彼女のいるような大きな病院だとお金も高いし、何より待ち時間がとんでもなく長いからだ。町医者が、精密検査とかが必要と判断した時に、紹介状を持って患者が訪れる。それで、ある患者さんが来て紹介状を読むと、『この患者はもう手に負えない』みたいなことが書いてある。見たところ、足腰は悪いけれど普通のお爺さんだ。先生から、「ちょっと電話して、どういうことなのか聞いてみて。」電話してみると、奥さんが出た。その病院は、先生と看護師の奥さん、あと2~3人の看護師で回している小さな病院だ。直接会ったことはないんだけど、すごく穏やかな感じの人で、”ああ、この奥さんにつながって良かった。”って思った。それで、話を...日々の恐怖2月1日病院関連話(19)かかりつけ医

  • 日々の恐怖 1月28日 病院関連話(18) バーコード

    日々の恐怖1月28日病院関連話(18)バーコード別に禿頭の患者さんの話ではありません。ある入院患者さん、スケッチブックに何かを描いている。別に全然問題ないし、むしろ健全な趣味だなと思ってたんだけれど、ただ向かいのベッドを見ながら描いている。”空のベッド描いて面白いか・・・・・?”ちらっと見ると、びっくりした。全然絵じゃない。縦の線をひたすら並べているだけだ。太い線、細い線、まるでバーコードみたいだ。「少し待ってください。」と言うので待っていると、ページをちぎって、「あげます。」”なんですか、これ・・・?”と聞きたかったんだけれど、もう既に別のベッドのスケッチを始めている。凄く気になったので、”まさかね・・・・。”とは思いつつ、下のコンビニに行って、「これ、ちょっとスキャンしてくれませんか?」「何ですか、こ...日々の恐怖1月28日病院関連話(18)バーコード

  • 日々の恐怖 1月22日 病院関連話(17) 5億年ボタン

    日々の恐怖1月22日病院関連話(17)5億年ボタン一部のネットで一時はやった質問系のネタです。目のまえにボタンがあってこれを押すと100万円貰える。ただし、5億年間何もない空間で過ごさないといけない。(餓死とかは無い。)5億年経過すると現時点に戻り、その間の記憶は全て消えている、ってやつ。「絶対無理!」彼女は言う。「5年でも無理、5日なら考えるけど・・・。」交通事故にあった入院患者さん、いわゆる植物状態になってしまって、脳波はあるんだけど意識が戻らない。数日後ナースコールが鳴って駆け付けると、件の患者さんが目を開いてぼろぼろ泣いている。「ここは・・・・・、ここですよね・・・・。」何を言っとるんじゃ。意識が混濁しているのか?何にせよ意識が戻って良かった。話を聞くと、衝撃を受けたような気がした後、真っ白な空間...日々の恐怖1月22日病院関連話(17)5億年ボタン

  • 日々の恐怖 1月18日 病院関連話(16) 採血

    日々の恐怖1月18日病院関連話(16)採血採血するのはたいてい看護師の仕事です。ある患者さん、なかなか血管が見つからない。右腕も左腕も。仕方がないので、手のカバーを外して脈動を探しても見つからない。それに異様に手が冷たい。患者さんの方が恥ずかしそうに、「あの~、いつも首から取ってもらってるんです。」見たところ、極端なガリでもデブでもない。むしろアスリート体形。首から採血なんて初めてなんで慎重に準備しながら、気紛らせに話しかけた。「あの~。余計なお世話かもしれませんが・・・・。腕、診てもらったほうがいいんじゃないですか?」「ああ、よく言われますし、自覚症状もあります。」「そうなんですか・・・・。」「なんていうか、血が届いていないんですね。」びっくりして、「じゃあ、なんで動いてるんです?」「気力で。」童話・恐...日々の恐怖1月18日病院関連話(16)採血

  • 日々の恐怖 1月16日 病院関連話(15) 死神

    日々の恐怖1月16日病院関連話(15)死神若い娘さんで、心臓が悪くって入院していた。彼女には彼氏さんがいて、まめにお見舞いに来ていた。微笑ましい話だ。でも、状態が悪くなって緊急手術になった。ちょうど彼氏さんも来ていたんだけど、さすがに入ってもらうわけにはいかない。じりじりした表情で、椅子に座って待ってる彼氏さんを見るのは正直切なかった。しかし、結果的に彼女は短い生を終えた。切ない。で、後日その彼氏さんを見かけた。もうここに用は無いはずだ。新しい女性の患者さんで心臓が悪くて入院している患者さんがいて、そのお見舞いだと受付の人から聞いた。ぞっとした。あいつ死神か?童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ日々の恐怖1月16日病院関連話(15)死神

  • 日々の恐怖 1月9日 病院関連話(14) 時代劇

    日々の恐怖1月9日病院関連話(14)時代劇あるおばあさん、よくテレビを見ている。(6人部屋はテレビはカード購入必要なのが心苦しいんですが。)そして、他の患者さんを気遣ってイヤホンをつけて音を消している。気配りの良いおばあさんだ。が、ある時見てびっくりした。イヤホンジャックがテレビにささっていない。つまり、無音で画面だけ見ていた。それによく見ると番組がなんか古臭い時代劇だ。この時間に地上波でそんな番組やってたかなあ、と新聞のテレビ欄見ても報道系ばっかりで地方局にもそんなものはない。すごく気になったんで、「なんの時代劇なんですか?」って聞いたら、「わたしゃ見てないよ、この人が見てるんだけど、うるさいから耳栓代わりにこれ付けてんの。」この人ってどの人だよ。童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。大峰正楓の...日々の恐怖1月9日病院関連話(14)時代劇

  • 日々の恐怖 1月7日 COFFEE

    日々の恐怖1月7日COFFEE彼女は、金婚式を目前にして夫を亡くした。長患いで覚悟はしていた。五十年近くも一緒にいたが、お世辞にも仲睦まじい夫婦ではなく、はっきり言って腐れ縁だった。しかしそれでも、長年連れ添った伴侶をなくすというのは、彼女が思っていた以上のショックだったようだ。そんなつもりはなかったのに、彼女はすっかり元気をなくし、家に閉じこもりがちになった。これではいけないとは思うのだが、どうしても気持ちが外へと向かず、亡くなった夫のことばかり考えてしまう。そんな風に数ヶ月が経った時、ふとあることに気がついた。夫の愛用していたマグカップが、出した覚えもないのに一つだけカウンターに出ているのだ。何度直しても、気づけばカウンターに出ている。最初は自分の認知症を疑った彼女だったが、やがて思い直した。夫のマグ...日々の恐怖1月7日COFFEE

  • 日々の恐怖 12月30日 気配

    日々の恐怖12月30日気配彼は転勤族で、若い頃からあちこちを転々としていた。今までで一番良かったところはどこかと聞くと、面白い話をしてくれた。彼なりに誇張した部分はあるだろうが、話されたままを書いてみる。彼がまだ三十代初めだったころのことだ。二回目の転勤で住みはじめたアパートは、築年数の割にはきれいな洋風の建物で、白い壁に赤い屋根という、少々少女趣味の物件だった。家は寝る場所、程度の認識しかなかった彼は、特に気にすることもなく住みはじめたそうだが、すぐにここは何かあると気が付いた。時々、自分以外の何者かの気配がするのだ。リビングで夕食を食べていると台所に、風呂に入っていると脱衣所に、朝目覚めると洗面所に。そして気配を感じた場所には必ず、小さな変化があった。台所にはお茶が、脱衣所には着替えが、洗面所には新し...日々の恐怖12月30日気配

  • 日々の恐怖 12月25日 不動産の営業

    日々の恐怖12月25日不動産の営業不動産の営業をしていたときのことだ。中古住宅の買取、という仕事をしていると、時折事故物件にも出くわす。そのころ自分がいた会社は大手の会社で、事故物件はあまり積極的には扱わない会社でもあった。当時自分の後輩だった彼は、この事故物件がなぜかやたらと集まるヤツだった。事故物件を買い取って、販売まできちんとこなす、というのは非常にハードルが高い。それをこなした彼のことを、もしかしたら周りの不動産業者さんが評価をしていたからかもしれないが、買う物件の殆どが事故物件だったし、会社全体で取り扱うそういった物件の殆どは、彼が買取りを行った物だったから、ある種全国会議などで話題になるほどだった。ところで、彼はアメフトだったかラグビーだったかをずっとやっていたらしく、入社当時は明らかにでかい...日々の恐怖12月25日不動産の営業

  • 日々の恐怖 12月20日 新入り(2)

    日々の恐怖12月20日新入り(2)そんな新入りだったが、半年ほどで塾を去ることになった。なんでも夫の転勤で引っ越すのだという。おおっぴらには言わないが、友人を含めた全職員が、ほっと胸をなでおろした。「短い間でしたがお世話になりました。」新入りはそう言って、職員一人ひとりに別れの品をくれた。それは定番のハンカチだったが、包装紙の中には小さなメッセージカードも入っていた。仕事終わりに、同僚と二人で何気なくそのメッセージカードを開こうとした時だった。「ひっ!」同僚が小さな悲鳴をあげ、メッセージカードを取り落とした。友人は自分の足元に落ちたカードを拾おうとして、目を疑った。『彼とのデート、〇〇モールはやめたほうがいいですよ。保護者もたくさん来てるんだから。』そう、カードには書かれていた。ありがちな話だが、同僚は生...日々の恐怖12月20日新入り(2)

  • 日々の恐怖 12月14日 新入り(1)

    日々の恐怖12月14日新入り(1)彼女は数年前、とある学習塾に勤めていた。小中学生対象の、進学塾というよりは苦手補強のための塾だ。田舎だったこともありのんびりとした雰囲気で、夏には肝試し大会、冬にはクリスマス会が催されるような、家庭的な塾だった。職員は、塾長を含めた女性ばかりの四人。女性同士の付き合いにありがちな面倒臭さも多少はあったが、和気あいあいとした雰囲気で、友人は気に入っていたという。ある時、その塾に五人目となる職員が入ってきた。友人より少し年上の、やはり女性だったのだが、この新入りがなかなかに曲者だった。新入りは悪い人ではないこともすぐにわかったが、頓珍漢というか間が抜けているというか、やることなすことどこかズレており、失敗も多かった。そのくせ、とにかく何てもしりたがり、首を突っ込んできた。受け...日々の恐怖12月14日新入り(1)

  • 日々の恐怖 12月10日 ヒョウ

    日々の恐怖12月10日ヒョウ彼は、大変寒がりな男だった。夏でも長袖を着ていたし、冬になればまるで雪男のように着ぶくれていた。中高生の時の制服はどうしたのかと聞くと、日光アレルギーと嘘をついて長袖を通したらしい。「なにかの病気じゃないのか?」そう尋ねると、声を潜めて教えてくれた。「実はな、これ、家で飼ってるトカゲのせいなんだ。」「はぁ?」友人の家では昔から、ヒョウと名付けたトカゲを飼っているそうだ。大きさは二十センチほどというから、なかなか大きい。青みがかった灰色をした、綺麗なトカゲらしい。このトカゲは不思議なトカゲで、友人が言うには、口からポロリと小さな氷の塊を吐き出すらしい。体温も、変温動物とはいえとても低い。まるで冷水に触れているようだという。友人がまだ幼稚園に通っていたある日、ぼんやりと水槽の中のト...日々の恐怖12月10日ヒョウ

  • 日々の恐怖 12月7日 百物語(2)

    日々の恐怖12月7日百物語(2)明るくなった部屋では、ある意味悲惨な光景が広がっていた。部屋の隅でうずくまる者、抱き合う二人、逃げるつもりだったのか窓に手をかけて固まる者、布団をかぶる者、なぜかズボンを脱ぎかけている者、すでに半泣きの者。そして、整然と並べていたはずの盃は、見事なまでに散乱していた。誰かが噴き出した。それをきっかけに大爆笑が巻き起こった。それは多分に照れ隠しも含まれていたが、それでようやく彼らは落ち着いて息をすることができた。大笑いした後は、片付けタイムだ。部屋のあちこちに盃が転がっていた。「なぁ・・・・。」ふと、誰かが言った。「なんで、酒が零れてないんだ?」彼の言う通りだった。電気が消えた際、酒の入った盃はまだ十杯残っていたから、床には当然それがこぼれているはずだ。しかし、床はカラカラに...日々の恐怖12月7日百物語(2)

  • 日々の恐怖 12月3日 百物語(1)

    日々の恐怖12月3日百物語(1)彼は大学生の時、オカルトにはまっていたらしい。大学生のご多分に漏れず暇と体力だけはあった彼は、ある日同じような仲間を集めて、百物語を決行することにした。場所は彼の部屋。古式に則るなら百本のろうそくを灯さなければならないのだが、アパートでそれをするのはさすがに憚られた。ではどうするかと頭を悩ませたところ、ある酒好きが名案をひらめいた。「百個の盃を用意して、一話語るごとに語った奴が一杯飲み干す、ってのはどうだ?」それはいいと、皆一も二もなく同意した。各人の家やバイト先の居酒屋などを頼り、なんとか百個の盃を揃えた頃には、時刻もちょうどよい頃合いになっていた。部屋の中心に酒を注いだ盃を並べ、その周りに車座に座った。部屋の四隅に置いた懐中電灯が、ぼんやりと室内を映し出す。メンバーはち...日々の恐怖12月3日百物語(1)

  • 日々の恐怖 11月30日 彼女に言われたこと

    日々の恐怖11月30日彼女に言われたこと同棲して数年経つんだが、最近夜中になると寝てる彼女が話しかけてくることがある。「起きてるんだろ?」「わかってんだぞ。」「おい返事しろよ、返事だけでいいぞ。」みたいな感じで。声は間違いなく彼女なんだが、話し方が普段と違いすぎてはじめて聞いたときは驚いて返事出来ず、それからは、”気味の悪い寝言だな~。”くらいの認識で毎日無視していた。ある日なんかの拍子で起きてる彼女にその話をしたところ、全く見に覚えがないとのことだった。その日の夜中も話しかけてきたのだが、意識が落ちる直前くらいに今までで一番薄気味悪いことを言われた。「お前、なにこのこと、人に話してんだよ。」童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ日々の恐怖11月30日彼女に言われたこと

  • 日々の恐怖 11月27日 病院関連話(13) しゃっくり

    日々の恐怖11月27日病院関連話(13)しゃっくりしゃっくりが一日続くと死ぬ、という迷信がある。ある病室で、「隣のベッドのしゃっくりがうるさい。」という苦情があった。ほとんどの時間同じ部屋で過ごしているわけだから、相手が気を悪くするんじゃないかと思ってなかなかそういう事を言う人は少ない。(性格にもよるけど)何か循環器系の問題かと思って件の患者さんを見に行ったんだけど、別にしゃっくりなんかしてない。「とりあえず様子を見ますので、またひどいようならナースコールして下さい。」って言ってとりあえず保留にした。夜の巡回の時にその部屋の前を通ったら確かに、「ヒック、ヒック。」って聞こえたので、様子を見に入った。そしたらその声が聞こえてくるのは、苦情を出してきた患者さんのベッドだった。そっとカーテンを開いて見てみると、...日々の恐怖11月27日病院関連話(13)しゃっくり

  • 日々の恐怖 11月20 病院関連話(12) ご遺体

    日々の恐怖11月20病院関連話(12)ご遺体「前のホストとは違う話なんだけど。」と、彼女は言う。看護師の給料なんてさして高いものではない。けれど基本、家と職場の往復だけなんで貯まるいっぽう。中にはネットでブランド品を買いあさったり、周りの顰蹙の目をものともせず長期休暇を取って海外旅行に行く強者もいるけど。先輩の1人が真面目な人で、次の師長候補くらいのベテランだった。でも、ホストクラブに嵌った。あるホストに入れあげて入れあげて、おそらく一千万以上はつぎ込んでたんじゃないかと。そのホストも図々しい奴で、先輩の家(一人暮らし)に入り浸って、そして病院にまで通っていた。まあ肝臓が悪いのは分かるから内科に来てたんだと思う。そこまではまあ良い。(良くないが)そして、先輩を使って薬の横流しをさせていた。処方箋というもの...日々の恐怖11月20病院関連話(12)ご遺体

  • 日々の恐怖 11月17日 病院関連話(11) パジャマ

    日々の恐怖11月17日病院関連話(11)パジャマ入院患者が亡くなられた時、遺品はもちろん家族に引き取ってもらう。て言うても、コップだの歯ブラシだのそういう日用品なので、「そっちで処分して下さい。」と言われる事もままある。入院時の契約書にも、”私物を何カ月以上放置された場合~。”みたいな一文があるので大抵は捨てる。(余計な作業だけど)ただ勿体ないのがパジャマ。何着も持ち込んでるので、”なんとかならんかなあ・・・。”と捨てるたびに思う。あるご遺族、お葬式の事を済ませると、「後は全部捨てておいて下さい。」それで、ダンボールに詰め込んでとりあえずそこに置いておいたんだけど、次の朝、病室に入ると布団がまるで人が寝ているように膨らんでいる。で、すぐに、”ぺちゃ~っ。”と平らになった。朝だし他の患者さんもいるので、”怖...日々の恐怖11月17日病院関連話(11)パジャマ

  • 日々の恐怖 11月14日 病院関連話(10) 歯医者

    日々の恐怖11月14日病院関連話(10)歯医者歯医者と医者は資格が別で、歯医者は歯以外の治療をしちゃだめなんだって。でも歯医者競合区みたいなところがあって、ある歯医者が患者が少なくて内科診療をこっそりしてたそう。(明らかな違法行為)でもわりと固定客(変な言い方だ)がついてた。なんでかと言うと、歯医者は処方箋を出さずに自前で薬を出せるんで、お客にとっては手間が省けるのでありがたかったんだと。で、ここからが本編。ある患者さんが急患で担ぎ込まれてきて、まあただの盲腸炎だったのですぐにオペを始めたんだけど、メスを入れたら患者さんが悲鳴をあげたの、麻酔はかけてたのに。後から分かった話なんだけどその患者さん、偏頭痛と不眠症を患っていて件の歯医者から薬を貰いまくってたんだって。あとアルコール中毒。どれも使用しすぎると耐...日々の恐怖11月14日病院関連話(10)歯医者

  • 日々の恐怖 11月10日 病院関連話(9) 便所

    日々の恐怖11月10日病院関連話(9)便所夜勤中のこと、入院病棟は便所がナースセンターから見える場所にあるんだけれど、患者さんが入って行った後ろ姿は見えたが、なかなか出てこない。”ああ~、あれかな~~。”とは思ったが、放置するのもあれなんで、仕方なく様子を見に行くとやはり誰もいない。仕事を中断させられて腹が立ったので、便所の中で、「ウロウロするな、クソジジイ!」と言ってやった。朝まで特に問題なし。童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ日々の恐怖11月10日病院関連話(9)便所

  • 日々の恐怖 11月8日 病院関連話(8) 水虫

    日々の恐怖11月8日病院関連話(8)水虫水虫とは関係ない話なんだけど、心療内科の友人から聞いた話です。ある患者さん、足の中に虫がいて痒くてたまらないという。それで、皮膚科を紹介する手もあったんだけど、別に処方箋を書くくらいは構わないので痒み止めの軟膏を処方してあげたらしい。心療内科に来る人っていうのは思い込みで言い張るだけで、何か対処してあげれば安心して収まる事が多いらしいから。でも、その患者さん、また来た、車椅子で。足を見るとバッサリと裂けた傷口だらけ、「いくら探しても見つからない。」って言って。童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ日々の恐怖11月8日病院関連話(8)水虫

  • 日々の恐怖 11月5日 病院関連話(7) 患者さん

    日々の恐怖11月5日病院関連話(7)患者さん同僚から、「あの患者さん変だよねえ・・・。」という話を振られて、彼女自身そう思っていたので黙って頷いたそう。何が変かと言うと、6人部屋なのにその患者さんが窓際の片側に居るだけで、他は誰もいない。つまり独占状態。そんなに寂れた病院ではないし、他の部屋は満室もある。その患者さんは別に暴れたり喚いたりするわけではなく、ほとんどの時間カーテンを閉めて眠ってるだけ。ただ、巡回の時にちらっと見るとカーテンを開けて誰かとしゃべってたんだって。何もない空間に向かって。うろ覚えなんだけど、「悪かったねえ。やっぱりあたしの方が死んだ方が良かったんじゃないか・・・。」みたいな。童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ日々の恐怖11月5日病院関連話(7)患者さん

  • 日々の恐怖 11月2日 病院関連話(6) お見舞い

    日々の恐怖11月2日病院関連話(6)お見舞い40代くらいの入院患者さん、どうしても道路が見える窓際のベッドが良いとの希望で、部屋を調整してあげた。それで、一日中窓から道路を見下ろしている。「お、スカジーじゃん、懐かしいなあ。」「ビートルかあ、好きな人は今もいるんだなあ。」話を聞くと無類の車好きで、ミニカーも集めていて20年以上になるという。ある日雑務で病室に入ったら、「うおおおおおおおっ!!!」びっくりして、「他の患者様もおられますので・・・・。」「あ、すいません。」目を潤ませて、「でも、2000GTですよ、トヨタの・・・。現役で走ってるのなんて見た事ない。」見ると、確かにスポーツカーみたいな車が病室の下で少しアイドリングして走り去っていった。大声を出したのは2000GTの時くらいで、ほとんどおとなしく道...日々の恐怖11月2日病院関連話(6)お見舞い

  • 日々の恐怖 10月30日 一軒家(12)

    日々の恐怖10月30日一軒家(12)夏の終わり、兄が今度は車でやってきた。車のトランクには、布袋にぎっしり詰まった水晶のさざれ。「うちがネパールで仕入れてる水晶さざれ。安いけど、効果抜群なんだよ。」と、親指大の水晶さざれを、家の東西南北四方に穴を掘って、水晶を10kgぐらいずつ埋めていく。そして、家の中央に位置する居間の一角に、高さ80cmほどある巨大な水晶を設置した。「さっきのさざれは、そのまんま放っておいて。この水晶は、君たちがここを引き払うときに回収していくけどね。」ヒマラヤの水晶で重さは12kg。うっすらと茶色のでかい水晶で、見るからに神々しい。Bちゃんがすっかり魅入られて、兄に、「これ、買うとおいくらぐらいなんですか?」と問うと、兄は、「卸価格で20万円かな。小売で50万円はくだらないねえ。」と...日々の恐怖10月30日一軒家(12)

  • 日々の恐怖 10月24日 一軒家(11)

    日々の恐怖10月24日一軒家(11)兄は続けて、「最大の問題だけど、これは君たちが、大家と話し合わなくちゃいけない。」と言った。兄いわく、この隠居家屋には、仏壇があった。隠居の婆さんがちゃんと供養していたんだけど、その婆さんが死んで、仏壇を引き上げた時に、きちんとした手順を踏んでいない。だから、仏壇で拝んでもらってたご先祖の何人かが、今でもこっちに帰ってきてしまっている、と言うことだった。「家に来た男子を覗きこんだ老婆、玄関でCが視た兵隊がその先祖。兵隊は婆さんの弟じゃないかな。とにかく大家に話してくれ。大家との話し合いが終わったら、また来るよ。」その後、兄はBとC相手に酒盛りしたあと、一晩泊まって帰っていった。(私は下戸)後日、私とBCの三人で大家のところへ行き、仏壇の件を説明したら、奥さんが、「ああ!...日々の恐怖10月24日一軒家(11)

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