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1件〜100件

  • 日々の恐怖 7月6日 お守り(10)

    日々の恐怖7月6日お守り(10)諸事情があり、母が単身こちらへ半分遊び半分仕事でやってきました。今回は言われずとも公共交通機関を使って来たので、私はからかい混じりに、「この前ので、車こりたでしょ?」と言いました。すると母は、急に神妙な顔になったのです。「M(私)さん、あのね。あの日、車で帰った日ね。お母さん達、2回死にかけたの。」意を決すると言った顔をする母に対し、私はたぶんポカンとした顔をしていたと思います。母は飲みかけのお茶で口を湿らしてから、あの日の帰り道であったことを話してくれました。帰り道の寄り道は最早恒例行事だとばかりに、母は高速には乗らず途中までは下の道を行くことにしたそうです。季節は紅葉真っ盛りの秋でしたから、良さそうな山があれば少し入って紅葉狩りと洒落込む算段でした。カーナビと景色を見な...日々の恐怖7月6日お守り(10)

  • 日々の恐怖 6月30日 お守り(9)

    日々の恐怖6月30日お守り(9)3人は道々ご当地グルメやら景色を堪能しつつ、順調に我が家へたどり着き、ひとしきり観光名所を回って(私も連れ回されて)、喜色満面で帰路についたのです。私は、”あ~、何もなくてよかったァ~。”と思いながら、母たちの乗ったメタリックブルーのハイブリッド車が交差点を曲がるまで見送って玄関のドアをしめました。その後は遊びに行っていた分の家事に勤しみ、テレビをみたり動画をみたりして、母たちから、”無事に自宅へ着きました。”という連絡が来るのをつらつらと待っていました。けれど結局、その日、母たちから連絡が来ることはありませんでした。次の日になって、弟の携帯から連絡がありました。はっきり言って嫌な予感がしたのを今でも覚えています。私はおっかなびっくり、電話口に立ちました。「もしもし、S(弟...日々の恐怖6月30日お守り(9)

  • 日々の恐怖 6月25日 お守り(8)

    日々の恐怖6月25日お守り(8)その日から、母の平行線をたどっていた病状が急に回復へと向かい、主治医も舌を巻くような回復っぷりで、もしかしたらこのまま一生車椅子生活かもなんて言われていたのに、1週間後には病院内をさっさか歩けるまでになってしまいました。そして、10月に自宅療養へ移行、11月には見事職場復帰を果たしてしまいました。ちなみに、母の感じていた繋がりですが、回復へと向かい始めたあたりから感じなくなった、とのことでした。やっぱり、あの私の聞いた雷の音のようなものが関係しているのかなあ、なんて思っているのですが、母は信じてくれません。あと、発症した箇所がまるで火にあぶられて焦げて炭になった肉のようになったのは、母に大吉をくれた女性の神様が火を司る神様にも近しい方でしたし、清めて焼いてくれたんじゃないの...日々の恐怖6月25日お守り(8)

  • 日々の恐怖 6月20日 お守り(7)

    日々の恐怖6月20日お守り(7)本当に、信心深いと言うか家にはお守りがたくさんあるのです。まあ現状、趣味と言うより、昔からの我が家代々の慣わしといったところです。どうやら母は、その中で天狗様を持ってくるのだと思っていたらしいです。ちなみに、天狗様のお面をお借りしてくることも考えましたが、私は背が低くて神棚に祭ってあるお面に手が届かなかったので、今回はこれでという経緯があります。なんやかんや世間話をしてる中、ずっとお狐様を乗せておき、そろそろ帰ろうと思い立って、お狐様を持ち上げた瞬間に、”ゴロゴロゴロ・・・・、ドォオオオン・・・・!”っていう感じで雷が落ち、鳴り響きました。びっくりして窓の外を見ましたが、雲ひとつない快晴です。「あれ?いま、雷落ちたよね?」と母を振り返りましたが、母はキョトンとして、「え?別...日々の恐怖6月20日お守り(7)

  • 日々の恐怖 6月12日 お守り(6)

    日々の恐怖6月12日お守り(6)実際に、母はあれだけの劇症にもかかわらず、左足を切断せずにすみました。しかし発症した箇所は、まるで火にあぶられて焦げて炭になった肉のようになってしまいました。とは言っても病状は平行線をたどり、3週間の入院が1ヶ月に伸び、2ヶ月に伸び、夏だった気候は、とうとう秋になってしまいました。その間にもいろいろと原因となってる菌の解析は進んでいましたが、どうにもこうにも決定打がなく、原因不明のままでした。どれが効いているのかもわからない抗生剤を3種類、24時間点滴する生活が続いていました。そんな、どうにもおかしい状態が続いたある日のことです。入院生活にめちゃくちゃ飽き飽きしていた母が、「なんかねえ、どうにもあれさぁ、繋がってる感じがあるんだよ。」と、愚痴でもこぼすかのようにつぶやきまし...日々の恐怖6月12日お守り(6)

  • 日々の恐怖 6月8日 お守り(5)

    日々の恐怖6月8日お守り(5)実家に帰ってきて2日後、勤め先の病院で母が倒れました。左足の膝から下が2倍以上に膨れ上がり、歩くことはおろか、立ち上がることすら出来なくなってしまったのです。病名は蜂巣炎です。それも早期発見したのにもかかわらずの劇症で、即日入院してしまいました。入院して次の日、父と私は主治医に呼び出されました。「K(母)さんのことですが、あまり芳しくありません。原因がわからないんです。」「え・・、あの、病原菌とか、検査結果は・・・・?」「出てきた膿をシャーレで培養してみましたけど、死滅したものばかりでした。ちなみに、Kさんは最近転んだり傷をつくったりしませんでしたか?」そう言われて、”そういえば、引越しの手伝いに来たときに玄関でスッ転んでたっけ・・・。”と思い至りました。きっとそれだと思って...日々の恐怖6月8日お守り(5)

  • 日々の恐怖 6月2日 お守り(4)

    日々の恐怖6月2日お守り(4)朝起きて一番に、昨日感じた変な気配のことと、何があったのかを聞きました。母は苦く笑いながら、「写真撮ってたときに・・・・。」と口を開きました。「完全に日の沈んだ後、海を撮ったの。そしたら、『ギャアアアアアアアアア・・・・!!』って、なんか動物が絞め殺されるような、地を這うような変な声が聞こえちゃって、なんか怖くなって・・・・。お母さんのお守り全部車の中に置いて来ちゃってたから、Mさんの借りちゃった。」思い出すと鳥肌が立つと言って、母は私に腕を見せてくれました。紛うことなきチキン肌がそこにありました。その時撮った写真は怖くてデータが消せない、とのことだったのでそのままにしてありますが、何のことはない真っ暗な水面の写真です。特に何か写っているということはありませんでした。このとき...日々の恐怖6月2日お守り(4)

  • 日々の恐怖 5月29日 お守り(3)

    日々の恐怖5月29日お守り(3)その晩、私は付属してるお風呂場のほうから変な気配を感じて、薄目を開けました。私はあんまり感覚のあるほうではないのですけれど、そこに何かいるとか、気配を読むことが稀にあるので、”あ~、何かいるんだなぁ・・・・。まあ古そうなお宿だし、いてもおかしくないよね・・・・。”と特に怖がりもせず結論付け、一応母の方を確認しようと寝返りを打ちました。母は私のバックを何か大切な宝石箱でも守るような形で横抱きに抱え込み、私のほうを向いて(左半身を天井に向けて)寝ていました。”何かおかしい、どうしたんだろうこの母は・・・・?”そもそも何で私のバックなんか抱えるなんて言い出したんだろうと、このときになってようやく考え出しました。母が抱きしめている私のバッグは、外行き用の小さめのバッグで、(母から言わせれ...日々の恐怖5月29日お守り(3)

  • 日々の恐怖 5月22日 お守り(2)

    日々の恐怖5月22日お守り(2)母は特定疾患の関係で少々膝を傷めていましたが、山岳用の杖を駆使して那智の滝と那智大社をすべて回り、(私は翌日筋肉痛で泣きました)那智大社すぐ下の熊野古道の看板のところで記念撮影をしてから、お宿へ行きました。メインの道路からはずれたところにあるその宿、いや、宿というよりホテルに近い感じでしたけれど、とにかく泊まる予定の場所は、リアス式港のすぐ横をせり出た感じに立っている古めのお宿でした。本来なら16時にはチェックインできる予定でしたが、那智大社の階段を下りるのに思ったより時間を食ってしまったので、ついたのは18時をまわっていました。7月ですからちょうど夕暮れで、山間に沈む夕日が赤々と綺麗でした。案内された宿は本当にオーシャンビューで、2人で泊まるにはちょっともったいないような、トイ...日々の恐怖5月22日お守り(2)

  • 日々の恐怖 5月17日 お守り(1)

    日々の恐怖5月17日お守り(1)これは私Mが、いや、正確には母が2010年の半年前から9月の終わりごろまでに経験した話です。その年の7月某日、もろもろの事情で、私は結婚を前に実家へ一度帰省するため、アパートから引越しすることになりました。父は仕事の繁忙期でこれませんでしたが、母が有給をもらって代わりに来てくれました。母は前年から体の調子が芳しくなかったのですが、とにかく外で遊ぶのが大好きな人で、その年の5月にトルコ旅行なんぞに行くような、本当に活力あふれる虚弱体質の人です。さらにいうなら、何もないような場所でよく転ぶ、おっちょこちょいな人でもあります。荷造りのときも、10センチの段差しかないアパートの玄関で派手にスッ転んでました。私のアパートがあった某所は、海と山に囲まれた比較的のどかな場所で、高速を走らせれば...日々の恐怖5月17日お守り(1)

  • 日々の恐怖 5月15日 箱(4)

    日々の恐怖5月15日箱(4)Sさんは半泣きの弟に、言い聞かせた。「あれは自分が受け継ぐと決まっているものだから、お前は心配しなくていい。自分が受け継いだら、すぐに処分する。それまでは、できるだけ近寄らないように気を付ければいい。」その後、Sさんは結局地元へ戻り、そこで就職した。確かに仕事は少なかったが、女性が特別不利ということはなく、またセクハラ被害にあうことなかった。「たまたま、運が良かっただけかもしれないけどね。でも、少し疑っちゃうよね。兄さんが私を疎んで、嘘を言ったのかなって・・・・。」実際のところ、どうだったのかはわからない。もはや、確かめようのないことだ。弟は大学進学を機に家を出て、そのままそちらで就職した。帰省はめったにしないが、それなりに連絡は取っているという。「箱は、受け継いだんですか?」「まだ...日々の恐怖5月15日箱(4)

  • 日々の恐怖 5月9日 箱(3)

    日々の恐怖5月9日箱(3)葬儀の後、高校生だった弟からこんな話をされた。兄は、自分こそが家を継ぐべきだと両親に主張していた。長男なのだから、と。両親は相手にしていなかったようだ。女系というものについて、よく調べなさい、と母が兄を叱っていた、と弟は言った。「兄貴、箱を盗んだんだよ」倒れた兄を見つけたのは、弟だった。夕食の時間になっても顔を見せない兄を、部屋まで呼びに行った。半開きのドアから中を見ると、兄が倒れていた。その傍らには箱が落ちていた。弟が目を向けたのと、箱がぱたんと閉まるのが、ほぼ同時だったという。弟は、すぐに両親を呼んだ。やってきた父が救急車を呼ぶ間、母は部屋に入ると真っ先に箱のもとへ向かい、慎重に拾い上げた。そして開かないかどうかを確かめた。箱は、開かなかった。取っ手を引いても、カチャカチャと鳴るだ...日々の恐怖5月9日箱(3)

  • 日々の恐怖 5月4日 箱(2)

    日々の恐怖5月4日箱(2)それから数年後のことだ。都内の大学に進学していたSさんは、就職先を地元で探すか、首都圏で探すかで悩んでいた。家族に相談したところ、両親は地元での就職を希望したが、兄は首都圏での就活を勧めた。地元は田舎で、仕事が少ない。土地柄、肉体労働の割合が高く、女性が正社員で働ける場所は競争率が高い。それに田舎はセクハラが未だに横行している。だから働くなら都市部のほうがいい。両親のことは、兄である自分が世話するから気にするな。兄は、そう言ったそうだ。Sさんはその言葉に背中を押され、都内で就活を始めた。当時は就職難の時代で、なかなか内定は得られなかった。四年生になり、いよいよ焦りだしたころ、訃報が届いた。兄が死んだ。心不全だった。童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。大峰正楓の童話・恐怖小説・...日々の恐怖5月4日箱(2)

  • 日々の恐怖 4月30日 箱(1)

    日々の恐怖4月30日箱(1)Sさんの家には、古くから受け継がれる箱がある。サイズは30㎝×30㎝×30㎝というから、それなりに大きい。見た目は船箪笥のようなもので、上面に持ち手がある。前面に取っ手と錠前がついており、開け閉めができる構造になっている。ただし、錠についた鍵穴はなんらかの金属で埋められていて使えない。一応、鍵も一緒に伝わってはいるが、こちらはひどい錆でやはり使えない。施錠された状態で受け継がれているため、中身はその有無も含めて不明である。いわゆる開かずの箱だった。Sさんの家は女系で、箱は母から子へ受け継がれてきた。それは、この箱を受け継いだものが当主となるという意味でもある。Sさんがこの箱の存在を知ったのは高校生の時だったが、その時すでに、箱を受け継ぐのは彼女であると決まっていた。彼女には兄と弟がい...日々の恐怖4月30日箱(1)

  • 日々の恐怖 4月28日 新聞の集金

    日々の恐怖4月28日新聞の集金集金に行ったその家は、オートロックタイプのワンルームマンションでした。玄関ホールから呼び出しチャイムを鳴らしました。鳴らしてしばらく経って、「はい。」と男の人の声がしました。寝起きなのか、ひどくテンションの低い声でした。集金に来たことを告げたら、黙ってオートロックのドアが開きました。エレベータで目的の部屋へ行き、玄関のチャイムを押しました。チャイムの後にちょっと間があって、”かちゃり。”と鍵を開く音がして、ドアが少しだけ開きました。しかい、いくら待っても人が出てきません。仕方ないのでドアを引いてみました。やっぱり玄関には誰もいません。「すいませ~ん、○○新聞です~。」声をかけましたが、反応がありません。何度声をかけてもチャイムを鳴らしても、反応がありません。奥の部屋からはテレビの音...日々の恐怖4月28日新聞の集金

  • 日々の恐怖 4月24日 兄が見たもの

    日々の恐怖4月24日兄が見たものKさんの祖父の家は能登の方のけっこう立派な農家だそうで、毎年お盆時期には家族総出で里帰りする。その家の奥の仏間には立派な透かし彫りの欄間があり、Kさんとそのお兄さんはよくおじいさんから、「この続きの間から欄間を通して仏間を覗くと、不思議なものが見えると言われている。」と聞いていました。そこである日、Kさんとお兄さんが他の家族が不在の際、脚立を持ちだしてそれを決行しようとしました。まずはお兄さんの番、ということで脚立を上り、欄間の彫刻の間から隣の仏間を覗いたお兄さんは、5秒ほど無言で覗いた後、静かに脚立を降り、それを畳んでしまいました。不思議に思ったKさんが何度聞いても、お兄さんは無言のままでした。結局、Kさんは覗かせてもらえいないまま、お兄さんも一言も何を見たかを話さないまま、そ...日々の恐怖4月24日兄が見たもの

  • 日々の恐怖 4月21日 中古の家(4)

    日々の恐怖4月21日中古の家(4)帰省した日に友達と待ち合わせをしたら、他に男が1人やってきた。友達の会社の後輩だそうで、ご丁寧に名刺までいただいた。友達が、「彼、おまえが夏に言ってたあの家の話を知ってるんだよ。あの地域の出身で、今もそっちの地域の支店にいるんだけど、最近、俺がそこの支店に立ち寄ることあってさ。その時、飯ついでに聞いたら話に食いついてきてくれて、おまけに独自に調べてくれたんだって。けっこうすげえよ。」わざわざその日も電車で出てきたそうで、ちょっと唖然とした。それで、3人で飲みながら聞いたことだ。その家は、所有者はたしかにあのご夫婦だった。その旦那さんは、小学生のころに両親を亡くしてしまい、独り者の叔父に引き取られて育った。就職するまで叔父と二人暮らしだった。その旦那さんが結婚し、その後、賃貸のア...日々の恐怖4月21日中古の家(4)

  • 日々の恐怖 4月17日 中古の家(3)

    日々の恐怖4月17日中古の家(3)それでいろいろと思い出した俺は、友達にその話をしてみた。ちょうどそれくらいのときに、ばったりその家を発見した。まあ遠目からだったもんで、友達に、「たしかあそこだ。」と教えた。ビビリな俺はちょっと怖くなっていたので、すぐに、「帰ろう。」と言った。すると友達は住所だけ確認して、「おもしろい話聞いたら教えるわ。」と付け加えた。友達はずっと地元にいて、金融系の営業をしているので顔が広く、仕事でもわりと広範囲で動くため、「なんか聞けたらいいねえ~。」と言っていた。それからちょっとして去年の冬だ。その友達から、『冬は帰省すんの?』とメールが来た。『たぶんする。』と返すと、『日にち決まったら教えて。飲もうぜ。』ということになった。まあいつも帰省時に電話一本で会ってるし、家も近いのに、”何を今...日々の恐怖4月17日中古の家(3)

  • 日々の恐怖 4月12日 中古の家(2)

    日々の恐怖4月12日中古の家(2)父は後部座席の母に、「母さんわかった?」と聞いた。母は、「いや、私は特になかったけど、雰囲気重いなぁ・・・、とは思った。」と返事した。それで父が言うには、弟が泣き出したときに指さした方向を見たら、見えはしなかったが、「出て行け。」という声が確かに聞こえたと言った。その声は、すごくじめっとした老人っぽい感じの声だったそうだ。父は、「いやあ、あそこ絶対いるだろ、やばかったな。」と言った。その後、父と母は終始、事故物件がどうのとかいう話をしていた。俺はそれを聞いて、あそこだけは住みたくないな、と思った。結局、翌年に一軒家はわりと近所の物件に無事決まってホッとした。それから10数年後。地元を離れて就職している俺は、毎年夏休みがある。去年も1週間休みを取り、帰省した。すぐに高校時代の友達...日々の恐怖4月12日中古の家(2)

  • 日々の恐怖 4月10日 中古の家(1)

    日々の恐怖4月10日中古の家(1)高1の頃に父がちょっと出世して、一軒家を買おうかということになった。それで日曜を利用して不動産巡りみたいなことをしていた。その中で見た中古の家があった。両親と俺と弟(当時5歳)で行った。所有者はたしか40歳くらいのご夫婦で、夕方に現場で待ち合わせた。そのときに住んでいたのは、ざわついた繁華街の賃貸マンションだったので、郊外のその一軒家は、外から一見するととても魅力的だった。家の中に入れてもらったら、やけに光が弱くて雰囲気が悪い気がした。それでもご夫婦は、「日中はけっこう光入りますよ。」みたいなことを。1部屋ずつ見てたら、いきなり弟が、「ビヤアアアア!!!!!」って泣き出した。「あそこに怖い顔した男の人がいて、こっち見てる。」って。廊下の隅っこを指さし、母にびったりくっついて、...日々の恐怖4月10日中古の家(1)

  • 日々の恐怖 4月5日 村岡君(4)

    日々の恐怖4月5日村岡君(4)大学を関西で過ごした私はそのまま関西で就職し、月日が経ちました。まだ交友が続いている村岡君が所要で関西に出てくることになり、大阪の梅田で久しぶりの再開を果たしました。まあ、メールや電話でのやり取りは結構あるので、まあまあの感激でしたが。私は二人で飲みがてら、あの時何が起こったのか長年気になっていることを聞いてみました。あの時、竹林で何かを探していた女は、雷光と共にすべる様に教室の方角に向き直り、そのまま、”すう~っ。”と、こちらに移動してきたそうです。古い着物姿に何かを入れた袋、うつろな瞳、着物のカスリ模様まではっきりと見えたそうです。そしてそのまま廊下の壁と窓をすり抜け、教室の窓もすり抜け、そのまま空中で雪が解けるように消えたそうです。「お前、ホンマに見えたんか?」私の問いに酒を...日々の恐怖4月5日村岡君(4)

  • 日々の恐怖 4月1日 村岡君(3)

    日々の恐怖4月1日村岡君(3)突然大きな雷光があたりを照らし出しました。と同時に、生徒たちや隣組の先生が悲鳴をあげました。「うわっ、こっちに来よるっ!」見える生徒たちが悲鳴をあげながら教室を逃げ回ります。廊下の生徒達も恐怖で泣きながらあわてて教室に入ってきます。「なんじゃあ、こりゃあ!」と隣組の先生もまるで松田優作のジーパン刑事みたいな声をあげて、でも体が動かないのかそのまま立ち尽くします。教室には怒号と悲鳴と泣き声の生徒達が逃げ惑います。まるで長い時間のように思えましたが、実際は数十秒だったのでしょう。やがて、「消えたっ!」と誰かの声が聞こえ、教室にはパニック状態だけが残りました。泣いている生徒、腰が抜けてへたり込んでいる生徒、そして立ち尽くすジーパン刑事。ただ、見えない私達にはまったく何も見えませんでしたし...日々の恐怖4月1日村岡君(3)

  • 日々の恐怖 3月30日 村岡君(2)

    日々の恐怖3月30日村岡君(2)いつの間にかクラスメートのほとんどが集まってきました。何人かは竹林側の廊下に出て、より近くで見えない女性のその姿を見ているようです。しかし私や半分くらいのクラスメートには何も見えません。そこへ担任と隣組の先生がやってきました。「お前ら何してるんや、作業せいよ。」担任の山本先生が言います。年下の隣組の先生は腕組みをしています。村岡君がつぶやきました。「あそこの竹のとこに変な女がいるんです。」指差す方向を見た担任は、「雨降ってるだけやないか。竹の子でもおるんか?」と笑います。「や、山本先生、あれが見えんとですか!?」隣組の先生が腕組みをとき、後ずさりながら言いました。「透けとう女です!」中途半端な笑い顔のまま山本先生は、それでももう一度その方向を見ます。「いや、見えんが・・・、みな見...日々の恐怖3月30日村岡君(2)

  • 日々の恐怖 3月25日 村岡君(1)

    日々の恐怖3月25日村岡君(1)それは10月も終わりに近づいた放課後のことです。私たちは文化祭の準備で、かなり遅くまで教室に残り展示物を作る作業をしていました。朝からの雨はいつの間にか霧雨に変わり、夕方なのにまるで夜のような暗さでした。時々遠くで雷鳴が轟き、当たり一面を一瞬明るく照らします。私の故郷はかなりの田舎で、中学校も山を切り開いたその中にあり、校庭を挟んで小さな町が広がり、山手側は竹林になっています。雷光のたびに竹林が照らし出され、うっそうとした奥のほうまでの広がりが見えます。私は親友の村岡君と、紙を切ってセロファンに付ける作業をしていました。すると、村岡君が竹林を見て手を止めました。しばらくして、「何や?あの女・・・?」と私に問いかけます。視線を上げて竹林の方を見ますが、女性はおろか特に変わったものも...日々の恐怖3月25日村岡君(1)

  • 日々の恐怖 3月21日 心肺蘇生(2)

    日々の恐怖3月21日心肺蘇生(2)患者さんのご家族に事情を説明し、開放されたのは深夜の2時を回った頃だったといいます。“あと5分・・・、あと5分続けていれば、心拍が戻ったんじゃないか・・・・・。”無駄だと頭では分かっていても、ご家族の嘆きを見たり、実際に命が掌から滑り落ちる感覚を味わうと、そう思わざるを得ません。Aは疲れた身体を引き摺り、当直室へ戻りました。疲れてはいるのですが、一向に眠気は訪れません。しばらく、ぼうっとベッドに腰掛けていると、”トントン・・・、トントン・・・、トントン・・・、トントン・・・。”当直室のドアをノックする音が響きました。「そりゃあ、不思議に思ったよ、なんだ、こんな時間に、って・・・・。」当直室にはナースセンターからの直通電話があり、普通はそこから連絡が来るものです。こんな深夜に当直...日々の恐怖3月21日心肺蘇生(2)

  • 日々の恐怖 3月19日 心肺蘇生(1)

    日々の恐怖3月19日心肺蘇生(1)大学時代の同期にAという男がいます。在学中は一緒に馬鹿をやった中ですが、今は専門を違えており、なかなか会う機会もありません。そんな彼に久々に会ったときの事です。お互いに昼飯に行くところだったので、連れ立って昼を食べていると、Aが奇妙なことを言いだしました。「俺さ、まったく怖い話とか信じてないけど、あれは怖かったなぁ・・・・・。」聞くと、Aが数日前の当直の日、受け持ちの担当患者さんの容態が急変したそうです。その患者さんはかなりの高齢でしたが、容態は安定しており、本当に急なできごとだったといいます。患者さんのご家族が駆けつけるまでの間、Aは心肺蘇生を試みておりました。患者さんはなにぶん御高齢ですので、電気ショックは使えず、手技による心臓マッサージだったそうです。やったことのある方は...日々の恐怖3月19日心肺蘇生(1)

  • 日々の恐怖 3月17日 風鈴(2)

    日々の恐怖3月17日風鈴(2)見ていた祖父と爺様達は、遠巻きに、「お、ゆっくりな、ゆっくり。」「でぇじにあつかえ。」等、わけがわからないです。丁寧に外し、よく見ると緑色に錆びた風鈴のようなものでした。「爺ちゃん、これ・・・。」と祖父に渡そうとしても受け取らない、触ろうとしない。「おっ、いいからお前がもってろ。」ちょっと待って下さい、お祖父ちゃん。他の爺様達も笑顔だが、誰も近づかない。その後すぐに村へ帰ることになりました。祖父の家へ戻ると祖母も同じ反応でした。近づこうとしない。でも、泣くほど不安になったわけではありませんでした。村中の人が祖父の家へ集まってきました。お爺ちゃんお婆ちゃんだらけの中、「それにはおめぇ以外触れねえんだ。」「良い事があるよ。」「わしは二度目かの。」「まえは誰だった?」等、笑いながら話して...日々の恐怖3月17日風鈴(2)

  • 日々の恐怖 3月14日 風鈴(1)

    日々の恐怖3月14日風鈴(1)昔です。小学校高学年の夏休みです。祖父母の元へ一週間ほど泊まりで帰省していた時の話です。山奥の村落、20軒ほどが身を寄せ合うところで、村には私のような子供は一人もいませんでした。住人はほとんどが高齢者ばかりのようで、過疎という言葉が当てはまる場所です。かといって暗い雰囲気は無く、小さな訪問者に皆が親切にしてくれました。「ミノルの倅か、ほーかほーか。」「テービもねぇからつまらんろ。」「独楽回すか、独楽。」「後で、釣りいくべ。」「虫がいねぇんだろ、あっちは。捕り方おしえんべか。」どちらが子供かわからない。でも、うれしかったことを覚えています。二日目に祖父と釣りへ出かけました。村の爺様ほとんどがついてきます。山間の上流、比較的流れが緩やかな場所です。気を使ってくれているのは分かりました。...日々の恐怖3月14日風鈴(1)

  • 日々の恐怖 3月10日 肖像画(3)

    日々の恐怖3月10日肖像画(3)叔母と老人は単に絵描きと顧客の関係だったため、叔母が老人の死を知ったのは次の週、少し気まずい気持ちで老人ホームを訪れた時だった。部屋は片付き、広い室内にあの絵だけが残っていた。叔母は目を見張った。出来上がるまでもう一手間加える必要があったはずなのに、その絵はどう見ても完成していた。部屋の中では老人の親族と思しき中年の男性が、叔母を待っていた。「生前は、祖父がお世話になりました。この絵なんですが、祖父の遺言で、必ずあなたにお渡しするように、と・・・。」「でも、お金も頂いてるのに。」「いいんです。祖父の言うことを聞かないと、僕たちが叱られてしまう。こんな大きなじいさんの絵、迷惑なだけかもしれませんが。」叔母が呆然と自分の描いた絵を見つめていると、不思議なことに絵の中の老人がニコリと微...日々の恐怖3月10日肖像画(3)

  • 日々の恐怖 3月7日 肖像画(2)

    日々の恐怖3月7日肖像画(2)大学時代から、祖母はよく似顔絵描きのボランティアをしていた。八年ほど前、ある老人ホームに行った時、一人の老人が叔母の絵を気に入り、きちんとした額縁に飾れるような肖像画を描いてくれと依頼した。老人は、その辺りでは有名な病院の前院長らしく、病院のホールにその絵を飾りたいのだという。金持ちらしく、ホームの最上階の特室に住んでいた。叔母は快く了承し、週に一回二時間の約束でホームに通うようになった。老人は九十歳を超えているというが、矍鑠としていた。長話だが話上手で、自分の苦労話や戦時中の出来事なども面白おかしく話してくれたため、叔母はやがて老人を訪れるのが心から楽しみになった。ゆっくり描いてくれという言葉に甘え、一年近く老人の元へ通った。ようやく完成に近づいた頃、いつになく老人の口数が少ない...日々の恐怖3月7日肖像画(2)

  • 日々の恐怖 3月5日 肖像画(1)

    日々の恐怖3月5日肖像画(1)彼女には、絵描きを生業とする叔母がいるそうだ。雑誌や広告のイラスト、本の表紙、油絵の市民講座や高校の美術部の講師など、絵に関する様々な仕事を一手に引き受けていた。叔母は、姉である彼女の母親とは歳が離れており、姪である彼女と十五歳しか違わなかった。そのため叔母としていうよりは、姉のように彼女を可愛がってくれていた。叔母は古い小さな借家に一人で暮らしており、家が近いこともあって彼女はしょっちゅう遊びに行っていた。絵描きなので家のあちこちに絵が飾ってあったが、中でも目を引くのは、玄関を入ってすぐのところにある、高さが一メートルを越すような大きな肖像画だった。大きさもさることながら、壁にかけたり床に置いたりするのではなく、一人掛け用のソファの上に丁寧に置かれており、この絵が特別なことは明白...日々の恐怖3月5日肖像画(1)

  • 日々の恐怖 2月23日 夢

    日々の恐怖2月23日夢高校時代、夢の中で2歳の時に他界したはずの曾祖母が入院して見舞っている夢を見ました。私は曾祖母の顔は覚えていませんが、何故か塩せんべいを貰った記憶だけあります。夢の中の曾祖母、逆光で顔だけは何故か見えずにいました。息もきれぎれな曾祖母を悲しんで私の母が、「辛いだろうに、出来る事なら代わってあげたい。」そう言った途端、私の中で優しいとしか印象にない曾祖母がムクリと起き上がって、「じゃあ代わってみる?」私はとても恐ろしくて飛び跳ねるように起きました。春先でまだ薄ら寒かったのに身体は汗でびっしょりです。朝、母がパジャマが変わっていたことを問いましたが、あまりに縁起が悪い話なので言えずにいました。2ヵ月後、母は入院しました。すぐさま夢のことを思い出しましたが、突然のことにそんなことを言っている暇も...日々の恐怖2月23日夢

  • 日々の恐怖 2月19日 母

    日々の恐怖2月19日母中学からの友人に聞いた話です。彼女の出生時、大量出血などで母親は死亡した。一度も我が子を抱きしめる事なく逝ったそうだ。父親は無口で優しかったが出張の多い人で、彼女は祖母に育てられたらしい。彼女は昔からものすごく人に気を使い、とても明るい性格だった。36で遅くなったが結婚し、出産した。無事に子供は生まれたものの、その頃から彼女は壊れていった。どうしても我が子を愛せないらしい。ある日心配で見に行くと、泣き叫び汚物臭のする赤子がいた。彼女はその傍らで、耳を塞いで震えていた。私に子供はいなかったが、とにかく赤ちゃんにミルクを飲ませ、オムツを換えてやり、当時出張中だった彼女の旦那に、すぐ戻るように電話を入れた。急いでも帰りは夜になると言うので、それまでいることにした。子供のように泣きじゃくる彼女は、...日々の恐怖2月19日母

  • 日々の恐怖 2月13日 地蔵

    日々の恐怖2月13日地蔵中心市街地から車で十分ほども行けば、県内でも有名な山に行き着くことができる。さほど高い山ではないが姿が美しく、また山裾は海ギリギリまでせり出した面白い地形だった。山の半分をぐるりと取り囲むように道路が走り、そのすぐ隣はもう海だった。中心市街地へと向かうその道路は片側三車線で交通量もかなりのものだったが、走っていると両側から山と海が迫ってくるようで、少し緊張感があった。山裾に沿って、道路はゆるくカーブを描く。そのカーブが一番極まったところ、つまり山が一番海にせり出した箇所に、一体の地蔵が置かれていた。地蔵は小学校高学年ほどの子供の背丈の大きなものだった。いつでも花が供えられ、小さく微笑んだような優しい顔をしていた。ここは、昔から土砂崩れが頻繁に起こる場所だった。異様にせり出した山裾は、古く...日々の恐怖2月13日地蔵

  • 日々の恐怖 2月10日 なくしたもの

    日々の恐怖2月10日なくしたもの周囲を山に囲まれたその町は、朝霧で有名だった。気温が下がると、放射冷却によって冷やされた空気が霧となる。盆地では山から流れ込む冷気が霧を濃くし、さらに空気の循環が少ないため、霧は朝日が完全に昇るまで長く居座ることになる。周囲の山から見下ろせば、町が霧にすっぽりと覆われた、幻想的な景色を見ることができる。町は白いベールに隠されているようでもあり、乳白色の湖に沈んでいるようでもあった。この町の中心には、一本の川が流れていた。夏には蛍の群舞が見られる美しい川だった。この川には、不思議な噂があった。川の周辺では、川霧も手伝ってより濃い霧が漂う。その霧の中に、いるはずのない蛍が、”スゥ~ッ・・・。”と飛ぶのが見えることがあるという。朝霧が発生するのは気温が下がってからなので、蛍の成虫が飛び...日々の恐怖2月10日なくしたもの

  • 日々の恐怖 2月7日 前の部屋

    日々の恐怖2月7日前の部屋彼女は家の玄関に、以前電池式の人感センサーライトを置いていたそうだ。帰宅が大抵暗くなってからなので、いつも重宝していたという。しかし一年程前、電池切れなのか調子が悪かったことがあった。点いて欲しい時には点かず、ありがちな話だが、何に反応したのか誰も通っていないのに点くこともあったという。ちょうどその頃から、知人は不眠気味だった。眠れないというわけではないのだが、眠りが浅くすぐ起きる。夜半に起きずとも、寝た気がしない朝を迎えることが多かったという。その傾向は段々悪化していき、夢遊病のような症状もではじめた。ふと目が覚めると、寝ていたベッドから移動しているのだ。はじめはベッドの隣に立っていた、それが寝室のドアの外、廊下の中ほどと、少しずつ玄関に向かっているようだった。そしてそんな時はいつも...日々の恐怖2月7日前の部屋

  • 日々の恐怖 2月4日 昔の友達(3)

    日々の恐怖2月4日昔の友達(3)自分にも子供がいるように彼にも息子がいて、それが子供時代の彼に瓜二つでも、おかしくはなかった。少年は突然のことに目を見開いていた。やっぱり止した方が良かったか、と知人が後悔して謝ろうとした時、「おにいちゃ~ん・・・。」彼の妹らしき美少女が駆け寄ってきて、知人は言葉を失った。目の前に並び立つのは、幼い頃の知人の思い出そのままだった。瓜二つのというレベルではない。二人の前に立つ大人姿の自分の方が、場違いに感じるほどだったという。「〇〇って言う名前じゃないですけど・・・・・。」少年はそう言って、右眉をピクリとはね上げ、小さく笑った。「向こうでお父さんたち待ってるから、行こう。」そう言って、少女が兄の袖を引いた。そして、ちらりと知人の方を見たが、その目は兄とは対照的に、冷たい程なんの感情...日々の恐怖2月4日昔の友達(3)

  • 日々の恐怖 1月29日 昔の友達(2)

    日々の恐怖1月29日昔の友達(2)一度それに抗議したことがあった。それに対し彼は、「僕は君のことが大好きだからね。」と、よくわからない理由を述べた。彼お得意の皮肉かとも思ったが、皮肉を言う時はいつもはね上がる右眉は動かないままだったという。何か理由があることを察し、それ以降は家に入れてとねだることはやめたそうだ。しかし、そんな彼との楽しい時間は、二年たらずで終わってしまった。親の転勤という子供にはどうにもならない理由で、彼ら一家は再び引っ越すことになったのだ。「絶対また会おうな。」最後の別れの日、知人は手作りのプレゼントを渡しながら彼に言った。「会っても、もう君はわからないと思うけどね。」彼はいつものように皮肉を言ったが、それは寂しさをごまかすためのものだったのだろう。新しい引っ越し先に何度か手紙を書いたが、返...日々の恐怖1月29日昔の友達(2)

  • 日々の恐怖 1月25日 昔の友達(1)

    日々の恐怖1月25日昔の友達(1)知人が小学校三年生の頃、隣の家にとある家族が引っ越して来たという。両親と兄妹という家族構成だったが、皆テレビドラマから抜け出て来たような美形揃いだった。そのため、やって来た当初は隣近所から遠巻きに見られ、知人も子供ながらに最初は近づき難い雰囲気を感じたという。しかし、その家族は外見こそ浮世離れしていたが、中身はごく普通の中流家庭だった。むしろ愛想はいい方で、夫婦揃ってよく地区の清掃活動や子供の学校行事に参加していたので、やがてすぐに近所に溶け込んだという。兄の方は知人と同級生だったため、こちらもすぐに仲良くなった。彼は女の子と見まごう可愛らしい顔立ちだったが、中身は腕白で、不思議なほど知人と馬があったという。腕白な反面、妙に大人っぽい口調で皮肉を言うこともあり、そんな時にはいつ...日々の恐怖1月25日昔の友達(1)

  • 日々の恐怖 1月22日 山の神様(2)

    日々の恐怖1月22日山の神様(2)彼は、”そうか・・、俺はもうだめなのか・・・。”と絶望状態になった。すると、直後に彼女が再び現れた。手には、あちこちが欠けた湯呑みを持っている。それを、彼の方にグッと押しやった。”飲めということか・・・・。”彼が湯飲みを受け取ると、薄闇の中でも、それが薄黄色の透明な液体だということがわかった。独特の香りがする。なんだかよくわからない者からもらったなんだかよくわからない物だが、喉がカラカラだった彼にはありがたかった。色も匂いも全く気にならず、一気に流し込んだという。まさに甘露ともいうべき味が、喉を伝い落ちていった。礼を言おうと顔を上げると、そこにはもう少女の姿はなく、持っていたはずの湯飲みも、いつの間にか消えていた。不思議なことに、しばらくすると体力が回復してくるのがわかった。足...日々の恐怖1月22日山の神様(2)

  • 日々の恐怖 1月18日 山の神様(1)

    日々の恐怖1月18日山の神様(1)彼は若い時から登山が趣味で、日本各地の山々を標高の高低に関わらずあちこち登り歩いていた。当然いくども危ない目にはあったらしいが、その中でも、「これはとびきりだ!」と彼は少しだけもったいぶった。とある、北のほうの山に登った時のことだ。険しい山ではなかったので、日帰りのつもりで大した装備はしていなかった。しかし舐めていたつもりはなかったのだが、下山途中で足を滑らせて痛めてしまい、動けなくなったという。あたりは夕方の気配が立ち始め、気温もどんどん下がっていく。足の痛みはいや増し、座っているだけでも体力は削られていった。あたりが薄闇に覆われる頃、何かが彼の元に近づくような、枯葉を踏む足音が聞こえて来た。”この上に野生動物か・・・・・。”彼は近づいてくる何かを刺激しないよう、目を瞑り息を...日々の恐怖1月18日山の神様(1)

  • 日々の恐怖 1月14日 ねこ(2)

    日々の恐怖1月14日ねこ(2)見えないねこは息子に誘導され、軒の下に古いクッションを敷いてもらい、そこを居場所にしたようだった。「ねこちゃん嬉しいって!お母さんありがとう。」満面の笑みの息子に、家の中には入れないことを約束させたという。「まぁ、イマジナリーフレンドとか言いますしね・・・・。」小さな男の子の可愛らしい様子にほのぼのしながら、私は言った。「そのねこちゃんがおうちに来てから、何か変わったことは?」「それがあるんですよ」私の問いに、彼女は身を乗り出すように言った。「お恥ずかしいんですけど、うちは古い家で昔からよくネズミが出るんです。色々対策してもなかなか駆除できなかったんですけど、息子が猫を連れて来た途端、ネズミが姿を見せなくなって。」「それはそれは。」「こんなことなら、もっと早く来て貰えばよかった、な...日々の恐怖1月14日ねこ(2)

  • 日々の恐怖 1月12日 ねこ(1)

    日々の恐怖1月12日ねこ(1)彼女のもうすぐ五歳になる息子は、ようやく喋れるようになった二歳前くらいから、自宅の前の側溝に、「ねこちゃん・・・。」と話しかけていたそうだ。しかし、母親である知人には何も見えない。「ねこちゃん、何してるの?」「抱っこしてあげようか?」「葉っぱのご飯あげるね、どうぞ・・・。」何もないところに甲斐甲斐しくそう話しかける息子に、知人は初めは驚いていたものの、やがて気にしなくなった。子供によくあるごっこ遊びだと思ったのだ。ねこちゃんとやらにかけている優しげな言葉も、全て周囲の大人が息子に普段かけているのと同じだった。成長すればじきおさまるだろう、それくらいに考えていた。しかし、少し気になることもあった。息子がねこと遊ぶ側溝は道路に面していて、車通りは少ないとはいえやはり少々危ないのだ。小さ...日々の恐怖1月12日ねこ(1)

  • 日々の恐怖 1月9日 追憶(2)

    日々の恐怖1月9日追憶(2)彼女はそこで、頼れる大人は先生だと思いついた。先生ならきっと園舎の中にいるはずだ。そう思い、後ろを振り返った。「あれ?」彼女の目の前の園庭には見知った顔の子供たちが遊び、その向こうにはやや色褪せた園舎があった。辺りを見回してもフェンスはなく、声をかけてくれた女性の姿もなかった。なにもかも見知った、いつもの幼稚園がそこにはあった。「へんなの・・・・?」彼女は首を傾げたが、そろそろバスの時間だと自分を呼ぶ友達の声に大声で返事をし、走ってその場を後にした。「実はこの前、この話の続きかな、と思えることを体験したんです。」知人の彼女がそう言ったので、私は身を乗り出した。「続きですか?」「続きというか、何というか・・・・。もしかしたら、ただの勘違いかもしれませんけど・・・・。」彼女はそう前置きを...日々の恐怖1月9日追憶(2)

  • 日々の恐怖 1月6日 追憶(1)

    日々の恐怖1月6日追憶(1)彼女には、不思議な記憶があるという。それは幼稚園の頃のことだ。彼女が通っていた幼稚園には、園庭の隅に大きなナツメの木があった。毎年夏になるとたくさんの実をつけ、先生に取ってもらうのが楽しみだったという。ある冬の日、帰りのバスに乗るまでの三十分の自由時間に、彼女はそのナツメの木を見上げていた。ナツメの木は、落ちた葉に代わり梢にスズメの群れを休ませ、その賑やかなさえずりでまるで楽器のようだった。「あら、懐かしい。この木まだあったのね・・・・・。」ふと聞こえてきたそんな声に、彼女は見上げていた視線を戻し、そして違和感に首を傾げながら辺りを見回した。そこは確かに彼女の通う幼稚園なのだが、所々が違う部分があった。園舎の色がいつもより鮮明だった。遊具も知らないものがある。木登りをして遊ぶ桜の木が...日々の恐怖1月6日追憶(1)

  • 日々の恐怖 1月4日 コーヒーの缶

    日々の恐怖1月4日コーヒーの缶そこは、戦後すぐに建てられたという古い精神科病院だった。その一階にある売店に、先代院長の妻の幽霊が出るのだという。先代院長の妻という人は、生前から意識が高いのか意地が悪いのか、判断に困る人だったらしい。その売店は休憩の職員も利用していたのだが、そこにわざとみすぼらしい格好をして行く。そして、職員が人を見かけで判断せず、患者もしくはその家族に対して適切な対応をしているかどうかを、こっそり視察していたそうだ。とある職員などは、院長の妻と気づかず、「汚ねぇババアだな・・・。」と小声で悪態をつき、レジの順番を割り込んでいったらしい。そういった、差別的で無礼な職員に対しては、有無を言わさず減給や降格の処分が下されていたという。注意勧告程度ならともかく、制裁を加えてしまうとは職権乱用に他ならな...日々の恐怖1月4日コーヒーの缶

  • 日々の恐怖 12月27日 地蔵神社(8)

    日々の恐怖12月27日地蔵神社(8)プール道具を載せて自転車で集合場所にしてたバス停に向かうと、サイレンの音がしてて、たくさん車が停まっていた。パトカーと救急車もいた。ちょうど担架にのせられた人が救急車の後部に運び込まれていくとこで、足だけが見えたが、それがMのボロっちいズックだと思った。俺はどうすることもできず、たまらなくなって、プールには行かずに家に帰った。仕方なく一人でテレビを見ていると、パートに出ていた母親が帰ってきて、「なんか、子どもが事故にあったみたい。近所の人が噂してたけど、あんた知ってる?」って聞いてきたから、俺はプルプルと首を振った。後でわかったんだが、事故にあったのはやはりMで、トラックの後ろを自転車で走ってたら、積んでた鉄筋が何本も落ちてきて頭や体に刺さったってことだった。体中が穴だらけに...日々の恐怖12月27日地蔵神社(8)

  • 日々の恐怖 12月22日 地蔵神社(7) 

    日々の恐怖12月22日地蔵神社(7)そんなことを言われながらも、次の日もまたMと神社に行った。Mはにやにやしながら先にたって裏手に回ったが、俺らの神社の前に子猫の死骸があった。”うわっ・・・・!”と思った。子猫の体中、ぼつんぼつんと鉛筆を刺したような穴が開いていた。「これ、お前がやったんか?」Mに聞くと、驚いたような顔をして、「いんや、猫の死骸を拾ってきてお供えしたのは俺だが、こんな穴は開けてない。」ちょっとかすれ気味の声で言った。それから、猫の死骸を足でひっくり返し、「ほら、お前が買った菓子の袋はそのまんまだろ。たぶん猫は神様が気に入って食ったんだ。」そんなことを言ったが、俺は気持ち悪くて、神社への興味が、”サ~ッ!”と引いていった。それで俺は、この場を離れたくなって、「なあ、これからプール行かないか?」とM...日々の恐怖12月22日地蔵神社(7)

  • 日々の恐怖 12月18日 地蔵神社(6) 

    日々の恐怖12月18日地蔵神社(6)男の声だったような・・、凄い年寄りの声とかじゃなかった気がする。「んじゃあ、地蔵様が言ったんだろ。」Mがそう言ったんで、ちょっとびっくりした。石の地蔵様がしゃべるはずはないだろ。でも、Mは変だとは感じていないように見えた。「カエルでも捕まえてきて団子に入れるか?」俺はさすがにそれは嫌だったんで、「やっぱ、菓子とかにしようぜ。」それで2人で神社を出て、自転車で駄菓子屋まで行って、安い菓子の袋を買ってきて供えた。これは俺が金を出したんだが、Mはなんだか面白くなさそうな顔をしていた。で、その日は網と虫かごを持ってきてたんで、林の中でずっと虫とりをして遊んだ。その後、Mと別れて家に戻るとき、ちょうど畑から帰ってきた婆ちゃんと家の前で会った。婆ちゃんは、俺の姿を見るなりちょっと怖い顔に...日々の恐怖12月18日地蔵神社(6)

  • 日々の恐怖 12月15日 地蔵神社(5) 

    日々の恐怖12月15日地蔵神社(5)砂なんですぐに崩れてしまって不格好なものになったが、2人で5、6個の泥団子ができるとMは、「仕上げだ。」と言って、その中に、掘り出したアリジゴクを埋め込んだ。それを抱えて社殿の裏に戻り、俺らの神社の、鳥居と地蔵様の中間あたりに積み上げた。そして手をパンパンと叩いてお祈りをした。何を願ったかとかもう覚えてないが、おおかたテストの点を上げてくれとかそんなことだった。それが終わると、俺もMも、ひと仕事終えたような充実感があった。次にMは、「これなあ、できれば鈴つけたいよな。」って言い出し、「小さいのなら家にあったと思う。」と俺が答えて、翌日もそこに来ることにした。その日はもう2時間くらい別のところで遊んで、Mとはわかれた。それで、次の日、またMとしめし合わせてその神社に行った。前の...日々の恐怖12月15日地蔵神社(5)

  • 日々の恐怖 12月12日 地蔵神社(4) 

    日々の恐怖12月12日地蔵神社(4)それはともかく、2人でご神体になりそうなものを探したが、そんなのが落ちてるわけはない。林の中をうろうろしてたら、林から田んぼに出るあたりの場所に、小さなお地蔵様があるのを見つけた。頭巾もよだれかけも雨ざらしでボロボロになり、長い年月で顔の造作もわからなくなった地蔵様だ。それを見てMが、「これにしようぜ!」って言い、俺もすぐ賛成した。そのときは、地蔵様を動かすのが悪いとか思わなかった。でも、それからが大変だった。小さいとはいえ、石の地蔵様なんだから、かなりの重みがある。俺とMで頭と足のほうを抱えて、ふうふういいながら俺らの作った神社まで運んだ。中に立てたら、すごく様になってる気がした。で、さっそく俺が拝もうとしたら、Mは、「お供えがなくちゃいかんだろ!」って言った。俺が、「んじ...日々の恐怖12月12日地蔵神社(4)

  • 日々の恐怖 12月9日 地蔵神社(3) 

    日々の恐怖12月9日地蔵神社(3)これも、今考えると摂社ってやつのことを言ってたんだと思う。ほら、大きな神社の参道沿いには、小さなお社がいくつも並んだりしてるだろ。あれのことだよ。それで、俺もそのとき、”面白そうだな・・・・。”って、すぐ思った。それで、2人で板を組み上げていったんだ。もちろん、釘とか持ってたわけじゃないし、セロテープなんかもないから、たんに板の下のほうを土に埋めて、その上に屋根になる板を乗せただけ。Mは三角の神社の屋根の形にしたかったようだったが、それは上手くいかなかった。で、俺らの背丈より頭一つくらい小さい社殿ができると、Mは鳥居を立てるって言い出した。それは無理だろうと思ったが、意外と簡単だった。林の中から、できるだけ真っ直ぐな木の枝を拾ってきて2本立て、横木はつるになった植物で結んだ。鳥...日々の恐怖12月9日地蔵神社(3)

  • 日々の恐怖 12月4日 地蔵神社(2) 

    日々の恐怖12月4日地蔵神社(2)Mはそれなりにいいやつだった。人の嫌がるようなことは絶対に言わなかったし、子どもなりにではあったが、俺にいろいろ気を遣ってくれた。今になって、そういことがわかるんだ。ただ、小遣いはいつも持ってなかったから、アイスや飲み物なんかをおごるのが俺の役目になってたな。ああ、本題に入る。そんときは夏休み中で、俺らの小学校の学区からかなり外れた場所にある神社に行ったんだ。小さなとこだった。神主とかはいなかったんだと思う。社殿の扉も閉まってたし。なんでそこに行ったかというと、Mが社殿の下の砂地にアリジゴクがいるって言ったからだ。ほら、神社は高床になってるだろ。その下に潜り込むと、下が目の細かい褐色の砂になってて、そこにぽつぽつとへこみがあった。それに手を突っ込んで中央の砂をつかみ、持ち上げる...日々の恐怖12月4日地蔵神社(2)

  • 日々の恐怖 12月1日 地蔵神社(1)

    日々の恐怖12月1日地蔵神社(1)これ、俺が小学校4年のときの話。今から15年前のことだよ。当時、Mって子とよく遊んでたんだ。その頃も、子どもの遊びっていったらゲームだったんだけど、そのMってやつは、親が許してくれないってんでゲーム機持ってなくて、そのかわり、外で遊ぶことをいろいろ知ってたんだ。例えば、拾った木の棒でノックするみたいにして石を打って、小川の向こうまで10回のうち何回飛ばせるかとか、そういうやつ。Mとは4年生の新しいクラスで知り合ったんだけど、俺はずっとゲームっ子だったから、そういうのが新鮮で面白かったんだよな。あと、Mは遊ぶ場所もいろいろ知ってた。例えば、河口に下水が流れ出す出口とか。3m以上高さのある土管なんだよ。そこに、水が流れてない時間に行って中を探検する。あと、小山の裾にある配電の鉄塔の...日々の恐怖12月1日地蔵神社(1)

  • 日々の恐怖 11月30日 女子4人部屋

    日々の恐怖11月30日女子4人部屋あるガンで入院して手術受けることになった。大きな病院だし、4人部屋だし、同室の人たちはみんな同世代で手術日も近かったし、ある意味気軽でちょっとした旅行気分な感じだった。術前検査とか色々あってOP前何日かあったんだけど、「お昼は静かにしましょうね。」と言われるくらい楽しかった。でも、毎夜誰かが頬を冷たい手でなぜていく感じがする。真夜中の3時過ぎ。こっちも半分寝ぼけてるから、”ナースさんの見回りかな?”と、思って気にしてなかったんだけど、3日目の朝、はじめにOPする子が、「毎晩おばあさんみたいな人がほおずりするの、怖くて怖くて・・・。」「あたしも冷たいものが触ってたわ。」「え?ナースさんかと・・・・。」「ちがうよ、浴衣着てたわよ。」全員「マジ~?」「ふと目が合ってしまってその顔がこ...日々の恐怖11月30日女子4人部屋

  • 日々の恐怖 11月27日 ろろく石(4)

    日々の恐怖11月27日ろろく石(4)そして、今にして思えば骨董蒐集の最後になったのが、江戸時代の幽霊画でした。これはずいぶん高価なものだったはずです。それは白装束の足のない女の幽霊が柳の木の下に浮かんでいる絵柄で、高名な画家の弟子が描いたものだろうということでした。親父は、「この絵はお前たちは不気味に思うかもしれんが、実に力を持った絵だよ。この家の運気を高めてくれる。」と言っていました。そして、その絵が家に来た晩から、小学校低学年の妹がうなされるようになったのです。妹は両親と一緒に寝室で寝ていたのですが、決まって夜中の2時過ぎになると、「ひ~っ!」と叫んで飛び起きます。そして聞いたこともない異国の言葉のようなものを発し、両親に揺さぶられて我に返るのです。もちろん病院に連れて行きましたが、何の異常も認められないと...日々の恐怖11月27日ろろく石(4)

  • 日々の恐怖 11月21日 ろろく石(3)

    日々の恐怖11月21日ろろく石(3)ある日のことです。当時自分は中学生でしたので和室に入る用などめったになかったのですが、たまたま家族が留守の時、学校で応援に使ううちわが和室の欄間に挿されていたのを思い出して、取りに行ったのです。すると家の中には誰もいないはずなのに、なぜか人の話し声が聞こえてきます。ごく小さな声ですが、和室の中からです。ふすまの前で聞いているとこんな感じです。「これで収まったと思うなら浅はかな・・・。」「ただ臭いものに蓋をしたにすぎないだろ・・・。今に、もっとヒドイことが・・・。」どうも二人の人物が会話をしているようです。コミカルな声調だったのであまり怖いとも思わず、一気にふすまを開けて見ました。しかし当然ながらそこには誰もいませんでした。ただ床の間の絵を見たときに、なんだか2人の僧の立ってい...日々の恐怖11月21日ろろく石(3)

  • 日々の恐怖 11月16日 ろろく石(2)

    日々の恐怖11月16日ろろく石(2)その頃、親父は獅宝堂という骨董屋の主人と親しくなりました。その人は小柄な老人で、親父が金があると目をつけたのか、ちょくちょく家に尋ねてくるようになったのです。ある日、親父は家族に向かって、「この間から、家の中がちょっと変だったろう。どうもあのサンゴの根付けが原因らしい。獅宝堂さんから聞いたんだが、ああいうものはお女郎さんの恨みがこもってるかもしれないってね。だが、そういうのを打ち消す方法もあるって話だ。それで、これを買うことにしたよ。」と言って、一幅の掛け軸を見せました。それはよくある寒山拾得(中国唐代の2人の禅僧)を描いた中国製で、それほど高い物には思えませんでした。そしてそれは和室の床の間に飾られることになりました。掛け軸が来てから家の中の異変はいったん収まったようでした...日々の恐怖11月16日ろろく石(2)

  • 日々の恐怖 11月13日 ろろく石(1)

    日々の恐怖11月13日ろろく石(1)自分の親父と骨董の話です。親父は紡績の工場を経営していましたが、何を思ったか50歳のときにすっぱりとやめてしまい、経営権から何から一切を売り払ってしまいました。これは当時で十億近い金になり、親父は、「生活には孫の代まで困らんから、これから好きなことをやらせてもらう。」と言い出しました。しかしそれまで仕事一筋だった父ですから、急に趣味に生きようと思っても、これといってやりたいことも見つからず、途方に暮れた感じでした。あれこれ手を出しても長続きせず、最後に残ったのが骨董品の蒐集でした。最初は小さな物から買い始めました。ありがちなぐい呑みや煙草の根付けなどです。「初めから高額の物を買ったりして、騙されちゃいかんからな。小遣い程度でやるよ。」と言って、骨董市で赤いサンゴ玉がいくつか付...日々の恐怖11月13日ろろく石(1)

  • 日々の恐怖 11月11日 措置室

    日々の恐怖11月11日措置室友人が昔働いていた病院では、措置室というものがあり、統合失調症(昔は分裂症といってた)の患者などが、発作を起こした時に入れられていた。当然、自殺防止のために窓は鉄格子つき、何もない6畳ほどの鍵付きの部屋だった。だが、友人が働いていた10年ほどの間に、そこでは二人の患者が死んでいた。一人は、靴下をほぐしてひもをつくり、鉄格子にかけて首吊りだった。もう一人は、靴下の中に隠し持っていたカミソリの刃で、頸動脈を切断した。その後、その部屋は開かずの間となり、長いこと使われなかったが、ある日、急患で運ばれてきた患者がいた。その患者は女性で、分裂病の発作を起こし暴れるから、家族の要請で運ばれてきた。しかし、一時的に収容する部屋がふさがっていたため、仕方なくその死人が出た措置室に入れようとしたところ...日々の恐怖11月11日措置室

  • 日々の恐怖 11月10日 溜息

    日々の恐怖11月10日溜息高野山でのことです。母の従弟が建築士で、あるお寺の修繕をしていたとき、そこの老僧が静かに、「貴方の御親戚に殺された方がいらっしゃいますか?」と尋ねられた。彼の姉が実は自殺をしていたので、「殺されてはいないが、自死している姉がおります。」と言ったら、老僧が溜息を吐いて、「貴方の背後にいる女性が殺されたと訴えていますよ。」と教えてくれて真っ青になった。下山してから親戚一同集まって、こう言われた、ああでないこうでないの議論が始まり、そういえば亡くなる前なのにきちんとご飯の支度してたわ、綺麗にお化粧してたわと、小さな子ども二人いて、責任感の強いあの子が自殺だなんて、と色々噴出して疑念が残ったままとなった。数年後、再婚した姉の元亭主が後妻を殺し、四国のある鉄橋から投身自殺というニュースがあって、...日々の恐怖11月10日溜息

  • 日々の恐怖 11月1日 曰く付き物件の日常(9)

    日々の恐怖11月1日曰く付き物件の日常(9)(11)退去日荷物をまとめている間も衰弱していて、引越し業者に支えられて辛うじて立てた。家を出るとき、業者が言った。「あの、まだ玄関、誰かいませんでした・・・?」「いません。いるはずないです。一人暮らしです。開けますか?」「いえ・・・、そうですか、ですよね。」「単身引越しで、来てますんで。」「朝、お電話の時、にぎやかだったので・・・・。」余裕がなくて、キレ気味に話してしまった。部屋を最後に出るときにまで、誰かいる感覚があった。幻覚じゃなかった。笑った。電話の時ってなんだよ。住人は入れ替わりが激しく、毎年何人か引っ越していた気がする。確かに、即死するような曰く付きではない。ではないが、人が住めるのだろうか?その日、自宅のそばの踏切を久しぶりに渡った。比較的新しい卒塔婆が...日々の恐怖11月1日曰く付き物件の日常(9)

  • 日々の恐怖 10月27日 曰く付き物件の日常(8)

    日々の恐怖10月27日曰く付き物件の日常(8)(10)入居して2年半と3ヶ月と少し帰った時に、ガムテープでビッチリ貼った家内安全の札が、外れかけていた。視線を感じるようになり、ハッキリと自宅の雰囲気が暗いと分かるようになった、夏なのに。エアコンも調子が悪い。ガタガタ言う。明日になったらお参りに行こうとベッドに倒れ込んだ。しばらくして薄目を開けると、枕元で満面の笑みの人影が見えた気がして飛び起きる。慌てて神社に行き、新しいお守りを買って財布に入れる。帰りに財布を落としたのに気付く。財布紐(代わりの財布のストラップ)が切れていた。以降、退去するまでの3ヶ月間、高熱が続いた。餡子入りの食品を中毒のように買い占めて食べる。新しいお守りも、家内安全の札も、もう効果は無いようだった。病院でも原因不明で薬も効かず、熱が下がら...日々の恐怖10月27日曰く付き物件の日常(8)

  • 日々の恐怖 10月23日 曰く付き物件の日常(7)

    日々の恐怖10月23日曰く付き物件の日常(7)寝込んでいる間に、色々調べた。ネットもネタじゃないかもと思って、怖いながらも曰く付き物件に住んでるかも、の記事を読んだ。和菓子が嫌いだったんだが、家にいるときは餡子入りの和菓子しか美味しいと感じられなくなった。3食餡子入り。幽霊が見えるようになるには、陰の食物を取れって記事にも行き着いた。餡子入りの和菓子とか有効らしい。見たいわけでも、好きなわけでもないのに俺はその頃から餡子入りじゃないと食べられなくなっていた。動けるようになって、昼食を共にする同僚達に思い切って曰く付き物件に住んでるかもしれないと相談した。餡子嫌いなのに和菓子が主食になったこと。都内に引っ越してから色々あったこと。洗濯機のような騒音。大家や同僚への証拠代わりにと思って深夜の騒音(洗濯機音)をスマホ...日々の恐怖10月23日曰く付き物件の日常(7)

  • 日々の恐怖 10月17日 曰く付き物件の日常(6)

    日々の恐怖10月17日曰く付き物件の日常(6)(9)入居して2年半部屋の配置がいけないかもと思って、手伝ってもらって模様替えをした。泊まりに来た時、いつも妹が寝ていた場所にベッドを移した。台所と放置バイクを直線で結んだ中間点だ。何がいけなかったかわからないけど、多分それがマズかった。自宅で起き上がろうとした時に、ぎっくり腰になり、歩けなくなった。起き上がることもできない。しばらく絶対安静で、動けないまま家にいた。痛みで長時間眠れず、少し動いただけで激痛に目を覚ますくらいだった。深夜の洗濯機の音は毎日毎晩続いているのだと、初めて気がついた。生まれて初めて間近で、幽霊としか表現できない焦点の合わない白い人が台所にいるのを起き抜けに見た。目が合ったことに驚いている雰囲気が向こうからも伝わり、しばらく目を瞑った後、目を...日々の恐怖10月17日曰く付き物件の日常(6)

  • 日々の恐怖 10月13日 曰く付き物件の日常(5)

    日々の恐怖10月13日曰く付き物件の日常(5)(7)入居してもうじき2年視線を感じるのやシャワーの際の気配くらいは気のせいしてきたが、終電で帰って、寝ていると明け方4時にドアチャイムを鳴らされて起きた。不審がって覗いてみると、真っ暗で何も見えない。ドアを開けても誰もいない。それより足音やドアの開閉音もなかった。色々あったので、曰く付きほど酷くないにしてもと友人からのすすめで、初詣のついでに天然岩塩の塊やパワーストーンとやらを買っておいてみた。お守りも見かけたら買ってつけるようにしているが、笑ってしまうほどよく無くす。朝、駅前の線路沿いの脇道を走っている時に、踏切の前でお守りの紐が音を立てて切れた。買った大きめのアメジストが一週間でまっぷたつになっていたのは笑った。近所の踏切を夜中通ると、引っ張られたりつまづいた...日々の恐怖10月13日曰く付き物件の日常(5)

  • 日々の恐怖 10月9日 曰く付き物件の日常(4)

    日々の恐怖10月9日曰く付き物件の日常(4)(5)入居して一年定期的に食器が割れ続け、引越し前から持ってきた食器が全て割れたため、プラスチック製になった。今でも何故かよく落ちるが、食器はプラスチック製なので問題はない。立て付けにも問題はないし、電車が通らない夜中のことだから、何が原因かわからない。年末なので大掃除も兼ねて、気になっていた台所の上の空間を開けることにする。換気扇の配管が通っている部分、ツマミも特に無いハメ殺しになっている部分の板を外す。絶句した。なぜか湿布等が壁に向けて並べてあり、前の住人(数年住んでいた独身中年男性)の持ち物と思われる、古びた書類やらゴミがけっこうあった。入居前に全部掃除したと聞いていたのに、ずさんな管理に呆れる。以前の持ち主は退去も問題なく、部屋も荒れてなかったとのことだった。...日々の恐怖10月9日曰く付き物件の日常(4)

  • 日々の恐怖 10月5日 曰く付き物件の日常(3)

    日々の恐怖10月5日曰く付き物件の日常(3)(4)入居して半年仕事で会社に泊まりがけになることが多くなった。都内で遊びたいということもあり、妹は留守がちな家主に代わって泊まりに来るが、それでも連泊は嫌がる。「アレさえなければいい立地の部屋なのに・・・・。」と、よく言っていた。俺はそんな夢や幽霊は見ないので、あまり深く考えないことにする。仕事面では評価されて、新しい職場で徐々に上向いてきたように思う。技術職なので、オカルトとは無縁だ。しかし職場のビルが古いからか、度々守衛さん達の怪談を耳にする。食器は相変わらず割れる。置き方が悪いようには思えない、平置きしているのだ。来客には謝りながら皿一枚、コップ一枚なので紙皿と紙コップを使って貰っている。そういえば、食器少なくなった。風呂場の換気扇たまにつけ忘れてるのかな・・...日々の恐怖10月5日曰く付き物件の日常(3)

  • 日々の恐怖 9月28日 曰く付き物件の日常(2)

    日々の恐怖9月28日曰く付き物件の日常(2)(2)入居して1ヶ月「地震が来るよ。」楽しそうな、いたずらした時の含み笑いのような声に目を覚ます。空耳かと思ったが、違った。激しい揺れ。東北の大地震の影響で、勤め先のプロジェクトが軒並み頓挫し、いきなり仕事を辞めることになった。まぁ、天災では仕方ない。室内で視線や、シャワー時に歩く気配を感じるが、全て新生活のストレスだろうと思っていた。酷いのは台所の天井付近のところだった。照明が届かなくて異様に暗いので、照明の傘を外すことにした。密閉されていて湿度が高い気がするので、常に風呂場は換気扇を回しておくようにした。(3)入居して3ヶ月新しい転職先が決まって、働き始めて一週間。家に帰って、「ただいま~。」とドアを開ける。「おかえり。」「は~い、ただい・・・・、え?」明かりを点...日々の恐怖9月28日曰く付き物件の日常(2)

  • 日々の恐怖 9月25日 曰く付き物件の日常(1)

    日々の恐怖9月25日曰く付き物件の日常(1)職場の同僚に指摘されるまで、曰く付き物件だと確信できなかったため住み続けていました。日記に記録が残っていますので、時系列で話します。数年ほど前のことですが、都内1Rに一人暮らししていました。線路沿いの踏切近く、1階奥の角部屋で家賃は6万ほどです。一本路地を入っているので、窓さえ閉めていれば電車の音は全く聞こえない。大きな仕事に携わることになったため、急いで引っ越さなくてはいけなかった。今思えば、下見も不十分だったと思うし、一人で行くべきではなかった。契約前の、「一人で住まわれるんですよね?」と、ベランダ先のぼろぼろの放置バイクが気になったぐらい。放置バイクは撤去するよう呼びかけているとのことだった。質問に答えた。「一人暮らしで探してるんだから当然じゃないですか。たまに...日々の恐怖9月25日曰く付き物件の日常(1)

  • 日々の恐怖 9月22日 置物(3)

    日々の恐怖9月22日置物(3)知人は、何なのかさっぱりわからないが、不気味で不思議なものだから、捨てて何かあると嫌だからと、引き取りをKさんが相談された。何故だか、”まあ、いいか・・・・。”と思ったKさんが承諾すると、一週間かからずKさんの手元に、これが届いたと言うことだった。Kさんは、「特に今まで何も被害はないけど・・・・。」と言って、実際届いてからも彼自身には特に被害らしきものは未だに無いようだった。ただ、Kさんが東京に住んでた頃のマンションの隣の部屋が、届いてから一ヶ月以内で首吊り、下から一日中騒音が始まった。Kさんは偶然だと思ったようだが、話を聞くうち、届いてから三ヶ月以内に起こったことが異常じゃないかと感じた。別に引っ越しシーズンではないのに、四部屋が引っ越しした。別の一部屋は火事、部屋内だけで済んだ...日々の恐怖9月22日置物(3)

  • 日々の恐怖 9月19日 置物(2)

    日々の恐怖9月19日置物(2)こちらの部屋の明かりが、真っ暗な隣の部屋の木製のテーブルを照らしていた。そのテーブルに置かれたヤカンみたいな置物を見た瞬間、なんかよくわからんが、”ゾクッ!”とした。置物の周りは、布と竹串みたいので作られた囲いがあった。Kさんは、当たり前のようにその囲いから置物を拾い上げて、私に手渡して見せてくれた。私は、それを両手で受け取って繁々と眺めた。大きさはやかんなんだけど、やかんから取っ手と注ぎ口を無くして、素材は鉄器、蓋付きの壺みたいな容器だった。すごいというほどではないけれど、まぁまぁ古そうな感じがした。「なに、これ・・・?」って聞いてみたら、「俺もよくわからないけど・・・・。」と言う前置きで、Kさんの知人が中国へ転勤したときに、借りた家にそれが置いてあったと教えてくれた。Kさんの知...日々の恐怖9月19日置物(2)

  • 日々の恐怖 9月16日 置物(1)

    日々の恐怖9月16日置物(1)私は九州の田舎に住んでます。仕事は少し離れた町にある居酒屋ですが、そこに一年半くらい前に東京から移り住んできたKさんがバイトに入ってきた。それで、結構気さくな人ですぐに仲良くなって、独り暮らししてるっていう一軒家に招待してもらった。Kさんはかなりお酒が強いみたいで、こっちがかなり酔いが回ってんのに飄々と缶ビールを開けていた。飲んでいた部屋は六畳ぐらいで、奥に襖が閉まっていた。押入れでも無さそうだし、飲んでる部屋の続き間があるんだと思った。酔いの影響もあったのか、襖の向こうが気になって、「あっちの部屋は?」って聞いてみたら、「使ってない部屋だよ。」と返事が返って来た。飲んでる部屋もベッドとパソコンだけだ。なんか生活感薄いというか、テレビもない。それで、「見てもいいか?」と聞いてみると...日々の恐怖9月16日置物(1)

  • 日々の恐怖 9月12日 小さくて白っぽい動物(4)

    日々の恐怖9月12日小さくて白っぽい動物(4)私はAさんのそばを離れると、先ほど見た小さな動物のことを少し思った。”あれは、なんだったんだろう・・・・?”しかし、そんな疑問はすぐに日常に忙殺されてしまい、その日の夕方には、不思議なものを見たことすらも、忘れてしまっていた。1月も半ば頃、退勤時に更衣室で隣のユニットの職員とたまたま顔を合わせた。彼女は、新年会の時に貧血で倒れた職員だった。「今更だけど、大変だったね、もう平気なの?」「もうすっかり。注目集めちゃって、恥ずかしかったです。」彼女は今から夜勤のようで、照れ笑いをしながら手早く着替えをしていたが、ふと思い出したように言った。「そういえば、Bさんってわかります?」「利用者さんの?わかるけど、どうしたの?」「最近、調子がいいんですよね。年末は声も出せなくて、も...日々の恐怖9月12日小さくて白っぽい動物(4)

  • 日々の恐怖 9月9日 ワクチン

    日々の恐怖9月9日ワクチン2021年3月だった。あの頃ワクチンを打てば、感染することはないと言われていた。でもそれは嘘だった。接種者も感染はする。あの頃みんなでワクチンを打てば、集団免疫ができると言っていた。でもそれは嘘だった。ワクチン接種率が、高いほど感染者が増えている。あの頃一度打てば、当面は大丈夫だと言っていた。でもそれは嘘だった。イスラエルの首相は3度目を打たないと、死に直面すると警告している。あの頃変異種にも効くと言っていた。でもそれは嘘だった。あなたが打つ予定のワクチンモデルは、初期武漢型のものだ。デルタ株には効かない。あの頃金属が入ることなんて、デマだと言っていた。でもそれは嘘だった。あやしい原因究明のまま打たせようとしている。あの頃、そして今も不妊なんてデマだと言う。本当にデマなんだろうか?AD...日々の恐怖9月9日ワクチン

  • 日々の恐怖 9月8日 小さくて白っぽい動物(3)

    日々の恐怖9月8日小さくて白っぽい動物(3)イヌ科と言われればそうかもしれないが、あれはどう見ても犬には見えなかった。「あれ、犬なんですか?」「そうよ。あれは、昔から隣のBが使うんじゃ。」Bさんは隣のユニットの寝たきりの利用者だった。話が変な方向に行きつつあると感じながらも、そのままAさんの話に耳を傾ける。「あれは、若い者のイキをちっとばかり盗んでいくんじゃ。そして、Bはまた少し生き永らえる。あんたも、気をつけんといかん。あいつは何もできん優男な風をして、腹黒いやつだから。」「イキって、なんですか?」「命のことよ。」そこまで言うと、久しぶりのおしゃべりが堪えたのかAさんは目を閉じ、それ以上口を開くことはなかった。私は驚きを隠せなかった。しかし話の内容を信じた訳ではない。認知症の方の話を否定しないのは基本中の基本...日々の恐怖9月8日小さくて白っぽい動物(3)

  • 日々の恐怖 9月3日 小さくて白っぽい動物(2)

    日々の恐怖9月3日小さくて白っぽい動物(2)イタチに似ていたが耳が尖っており、何よりイタチよりも一回り小さかった。”なんでこんなところに動物が・・・・?”と思ったが、その動物に注目している職員は誰もいなかった。気が付いていないだけかとも思ったが、足の間をああもスレスレですり抜けられて、気が付かない方がおかしい。どうやら、動物の姿が見え、なおかつ驚いているのは私だけのようだった。動物は職員の足の間をチョロチョロとした動きでホールの出口に向かい、やがて見えなくなった。私はそれを目で追いすぎ、あのような場でキョロキョロと落ち着きがなかったと、互礼会終了後に現場主任からお叱りを受けた。主任のお小言の後は、いつも通りの仕事が待っている。私は特別養護ホームに勤務しているので、盆も正月も関係ない。それは利用者にしても同じよう...日々の恐怖9月3日小さくて白っぽい動物(2)

  • 日々の恐怖 8月30日 小さくて白っぽい動物(1)

    日々の恐怖8月30日小さくて白っぽい動物(1)どこの職場でもあることなのかもしれないが、私の勤め先では新年会というものがある。三が日も明けぬうちから全職員が集められ、理事長の訓示と新年への決意を聞くのだ。さして広くもないホールにそれなりの人数がひしめきあい、おまけに一時間弱立ちっぱなしなので、貧血で倒れる職員が毎年一人は必ず出る。職場側でも椅子を用意したり無理はしないよう勧告はするものの、この行事自体は無くなる気配はなかった。その年も、朝早くから集められた大勢の職員は、葦のように並んで冗長な理事長の訓示を聞かされていた。私は少し俯いて、自分や周りの職員の足元に視線を泳がせながら、欠伸を噛み殺していた。急に、私の斜め前の方から小さなどよめきが起こった。「大丈夫?」と気遣う声。また今年も、誰かが倒れたようだった。理...日々の恐怖8月30日小さくて白っぽい動物(1)

  • 日々の恐怖 8月25日 鈴の音(3)

    日々の恐怖8月25日鈴の音(3)「わかんないの?」「はい。一回、先輩たちと音の出所を探したんですけど、それらしいものは見つからなかったんですよね。物置から聞こえてくるのは確かなんですけど、中に入ると音が変に反響して、細かい場所がわからないんです。」「ちょくちょくって、どれくらい?」「毎日一回か二回です。でも時間帯はまちまちで、午前中だったり夕方だったり・・・。」「なんかちょっと、怖くない?」「もう、慣れちゃって。先輩たちも、鳴ってても全然気にしないんですよ。三分くらいで止まりますし。あ、ほら・・・。」Aさんの言葉を待つように、その音はピタリと止まった。「ね。」とAさんはこちらを見て笑った。私はなんとなく気味が悪くて、そそくさと総務課を後にした。気味が悪かったのは、耳にこびりついたあの鈴のような音だけではなく、あ...日々の恐怖8月25日鈴の音(3)

  • 日々の恐怖 8月22日 鈴の音(2)

    日々の恐怖8月22日鈴の音(2)か細いけれど甲高く、やけに鼓膜を刺激する音だった。火災報知機や家電のエラー音に似ていたが、それよりもずっと鈴に近い音だ。なんとなく、お守りについている安っぽい小さな鈴を降り続けているのを想像した。はじめは、コピー機の調子が悪いのかなとそっと耳を近づけてみたが、そうではないようだった。ではどこから、とキョロキョロするうちに、室内の隅にある扉が半分開いているのに気がついた。その扉の向こうは、物置のはずだ。鈴のような音は、その扉の中から聞こえていた。印刷が終わり、コピー機は静かになった。しかし、もう一つの音はまだなり続けている。静かな室内に響く甲高い音は、かなり異質で耳障りだった。ふいに、背筋がぞくりとした。なんの根拠もないのだが、何か悪いものが近づいてくるような、この鈴のような音は、...日々の恐怖8月22日鈴の音(2)

  • 日々の恐怖 8月20日 鈴の音(1)

    日々の恐怖8月20日鈴の音(1)半年ほど前、職場で体験した話だ。私は特別養護老人ホームに勤めているのだが、介護の仕事に休日は関係ない。世間が休みの日に働くというのはなんとも切ない気分になるが、その分平日に休みがもらえるので、どっこいどっこいという感じだ。その日も日曜日だった。昼食後、利用者の大半が落ち着いてゆっくりと過ごす時間を見計らい、私はたまっていた事務仕事を片付けることにした。利用者の家族へ送付する行事案内の書類が、中身はできていたものの印刷がまだだったのだ。現場には、パソコンはあるがそれをプリントアウトするものがなく、もう一人の職員に断りを入れて、私はコピー機のある総務課へと向かった。総務課ではいつも数名の事務員が賑やかに作業しているのだが、休日は電話番として一人しか出勤しない。その日の出勤は、その年入...日々の恐怖8月20日鈴の音(1)

  • 日々の恐怖 8月18日 ばばちゃ(2)

    日々の恐怖8月18日ばばちゃ(2)またある時、祖母の夢枕に立つものがあった。それは数日前に死んだ近所の女性だった。祖母とは茶飲み友達で、生前はとても仲が良かったという。「おう、なにしよっとるか。おめえ、死んだろうが。なにをこんなとこに残っとる。ちゃっちゃと川渡らんと駄目だでに。」そう言ってみたものの、幽霊はそこに立ち続けている。祖母はむうっと顔をしかめて怒鳴り付けた。「おう!さっさと逝かんか!あんま迷っちると、おめえ、ただじゃ置かんで!こうして、こうしっちるで、覚悟しとけど!」ぶんぶんと拳を振り回す祖母に恐れをなしたのか、幽霊はささっと消えてしまった。「ばばちゃはなあ、あれは、こわいもんがなかったんだなあ・・・。」私が小さい頃、祖父は何度もそんな風に言っていた。祖母は、私が生まれる前に亡くなっていた。だから私は...日々の恐怖8月18日ばばちゃ(2)

  • 日々の恐怖 8月16日 ばばちゃ(1)

    日々の恐怖8月16日ばばちゃ(1)祖父が昔、よく言っていた。「この世で最も恐いのは、ばばちゃだ。」祖母は、それほど恐れられた存在だった。私が生まれる前の話だ。ある時、祖母は朝からタケノコを取りに山へ入った。ずいぶん調子よくタケノコが集まり、ほくほく顔で帰ろうとしたところ、気づけばあたりが霧に包まれていた。”おやっ・・・・?”と思いながらも帰途についたが、なかなか集落が見えてこない。”ははあ、これはキツネか、ムジナか・・・。なんにせよ化かされているな・・・。”そう気づいた祖母は、背負っていたタケノコのかごを下ろすと、鍬を構えて、「おう!」と霧に向かって怒鳴った。「どこのどいつか知らねえけんど、おらを化かすっちゃあえ~え度胸だあ!おらぁ、ここらじゃ名の知れた猟師の嫁だで!それが獣に負けたとあっちゃ、名が廃る!見てろ...日々の恐怖8月16日ばばちゃ(1)

  • 日々の恐怖 8月12日 遺品整理(2)

    日々の恐怖8月12日遺品整理(2)本棚の本を整理していた時だ。一枚の封筒が本の隙間から滑り落ちた。友人は何気なく中身を確認し、息を飲んだ。そこには、まるで浮気の証拠のお手本のようなツーショットがあったのだ。誰とも知れない若いの女性と、壮年の男性。男性はもちろん、父親だった。『なぁに、これ?』そう言ってヒョイと写真をつまみあげた母親に、友人は戦慄した。母親は、ひどいヤキモチ焼きな性格だったのだ。父の生前、あらぬ疑いでよく父を問い詰めていた。しかし、この写真はどう見ても疑いでは済まない。てっきり眦を上げて喚き散らすかと思ったが、母親はしばらく写真を眺めた後、大きく鼻を鳴らした。『もう死んでから何年も経って、今更怒るのもバカバカしいわ。ようやくテンポよく片付き始めたんだから、こんなことで足止めされないわよ。』そう言い...日々の恐怖8月12日遺品整理(2)

  • 日々の恐怖 8月6日 遺品整理(1)

    日々の恐怖8月6日遺品整理(1)友人の話です。「亡くなった父の遺品の整理が、全然進まなかったの。」ある時彼女が私に言った。彼女の父親が亡くなったのは五、六年も前だったので、片付ける気があるのなら確かに進捗は遅い。いつも、片付けようとはするのだという。気持ちだけではなく、家族で予定を合わせ計画を立て、業者に依頼したこともあった。それなのに、その度に邪魔が入り、作業が遅々として進まない。「邪魔って、どんな?」「色々だけど。家族がそろってインフルエンザとか、母が足を怪我したとか。アルバムを眺めて一日が終わったり、大きな荷物を処分するはずが台風が来たり。思い切って遺品整理の業者を頼んだら、予定日の一週間前に倒産だなんて、そんなことある?」「普通はないかも。」鼻息荒い友人に、私はそう応えた。「実はね、理由があったみたい。...日々の恐怖8月6日遺品整理(1)

  • 日々の恐怖 8月3日 トレイルランニング

    日々の恐怖8月3日トレイルランニング山本は、トレイルランニングを趣味にしています。トレーニングとして、近所の山に走りに行くことがあるそうです。ある日、いつものように頂上まで走って登り、駆け下りていると、後ろから同じように走る足音がします。”同好のヤツでもいたんだろうか・・・?”と思いつつ、走り続けていると、徐々に足音が近くなります。「ハッ、ハッ、ハッ!」と荒い息遣いまでが聞こえてくるので、”あらら、邪魔だったのか・・・?”と思い、道の端に寄り通り道を開けましたが、一向に抜いていく気配がありません。しかし、息遣いはさらに近くなり、足音までも真後ろで聞こえてきました。振り向いて確認したい気持ちになりましたが、一向に抜いていかないのと、なんとも気味の悪い感じがしたので、下りの勢いに任せて全速力で駆け抜けました。上り口...日々の恐怖8月3日トレイルランニング

  • 日々の恐怖 7月29日 蟹生(2)

    日々の恐怖7月29日蟹生(2)ある年の冬、祖父は風邪をひいて寝込んでしまった。咳をすることも滅多にない健康体だったため珍しく思っていると、祖父は枕元に田中を呼んだ。「夢を見たんだ。カニの姿で昼寝をしていると、突然大きな音がして、訳も分からぬうちに体が宙に浮いた。暗闇に包まれる一瞬前に、鋭い嘴が見えてな。あぁ、サギに食われるんだ、とわかったよ。そこで目が覚めた。」祖父は田中をジッと見つめて言った。「カニのわしが死んだということは、じき、人間のわしも死ぬということだ。後のことは頼んだぞ。」「何をバカなことを言ってるんだ、たかが風邪くらいで弱気になるなよ。」田中は笑ってそう励ました。しかし一週間後、祖父は風邪が肺炎へと悪化し、あっけなく息を引き取った。「祖父の話の真偽のほどは、今となってはわからない。でも俺は、あれか...日々の恐怖7月29日蟹生(2)

  • 日々の恐怖 7月26日 蟹生(1)

    日々の恐怖7月26日蟹生(1)田中の実家はなかなかの山の中にある。家の裏には小さな沢があり、子供には良い遊び場だった。沢にはサワガニがたくさんいた。唐揚げにすると美味しいのだが、田中は食べたことがない。何故なら、その場所でサワガニを採ったり、あるいはいたずらに捕まえておもちゃにすることを、固く禁じられていたからだった。禁じていたのは、田中の祖父だった。祖父はその理由を、よく田中に話してくれたというが、それが不思議な話だった。「じいちゃんは子供の頃からな、自分がカニになった夢をよく見てたんだ。」「カニ・・・?」「沢にたくさんいる、あのサワガニにな。じいちゃんはこの歳まで人間として生きてきたが、多分半分はあのサワガニなんだ。夢の中ではカニとして、卵から産まれ、小石の下で小魚やヤゴに怯えながら大きくなり、やがてメスと...日々の恐怖7月26日蟹生(1)

  • 日々の恐怖 7月23日 危機回避能力ゼロ

    日々の恐怖7月23日危機回避能力ゼロある事に関して、実母は危機回避能力ゼロです。逆に引き寄せられてしまうのかな。普段と違うルートを通ったり、場所へ行ってみたりと、突然の思いつきの行動で行った先で事故や自殺の直後の現場に行きあたってる。私が知るだけで7、8回はあったと思う。「よくそんな現場に遭遇するね~,呼ばれてんじゃん!」なんて言ってたけど、去年の暮れにリアル自殺現場を目撃した時は、さすがに凹んでしばらく寝込んでた。やはり急に行きたくなったとの理由で、都内に買い物に行こうと思い立って出かけたら、実家近くの利用駅で目の前で飛び込みがあった。母が電車待ちでホームのベンチに座ってたら、隣に座ってた若い女性が、電話向こうの人とキャッキャッしながら楽しそうに話していたそう。よく見る若い女性の光景なので、特に気にもしてなか...日々の恐怖7月23日危機回避能力ゼロ

  • 日々の恐怖 7月18日 実家を継ぐ(2)

    日々の恐怖7月18日実家を継ぐ(2)しかし、少しやんちゃな子供なら逆に興味を掻き立てられるような話だ。成長すれば、大人への反発から敢えて蔵に入ろうとするかもしれない。友人の祖父の発言はそれを煽っているようにも思えたが、友人やその親戚の子供たちは言いつけを守り、蔵に近づくことはなかったという。「あそこには、本当にナニかいるからな。」「入ったこともないくせに、なんでわかるんだ?」私が少々の物足りなさを込めて言うと、友人はしばし逡巡するように眉を寄せた後、口を開いた。「人聞きのいい話じゃないが、実家はよく泥棒に入られるんだ。田舎だからセキュリティなんてあってないようなもんだし、どこの誰かは知らんが、小さい蔵には値打ちものがどっさりある、なんて噂を流すバカがいて、それを信じるバカも多いんだ。で、そいつらはいつも、例の蔵...日々の恐怖7月18日実家を継ぐ(2)

  • 日々の恐怖 7月15日 実家を継ぐ(1)

    日々の恐怖7月15日実家を継ぐ(1)彼の実家は田舎の旧家で、広い敷地には母屋と離れ、二つの納屋と大小一つずつの蔵があるそうだ。大きい蔵の方には、古い壺や掛け軸など、お宝とも呼べる品々が並んでいた。家長である友人の祖父はおおらかな性格で、蔵には簡単な鍵がかかっているばかりだった。祖父自身も、「本当に大切なものは、そこには置いていない。」と常々言っていたようで、中のものは壊れても紛失しても構わないらしい。そのため大きな蔵は子供達の格好の遊び場で、友人もよく探検ごっこを楽しんでいたという。しかし、もう一つある小さい方の蔵は、一転して立ち入りを厳しく禁止され、入り口には厳重に鍵がかけられていた。小さい蔵は敷地のはずれにあり、周囲には蔵を覆い隠すように高い木がぐるりと植えられ、まるで蔵を封印しているようで気味が悪かったと...日々の恐怖7月15日実家を継ぐ(1)

  • 日々の恐怖 7月13日 寂れた旅館(6)

    日々の恐怖7月13日寂れた旅館(6)私は家に入れないでいました。テレビ番組などでよく見る曰く付きの場所に行ったら、何かをつれてきてしまうと言うのが頭をよぎっていたのです。恥ずかしながら当時結婚していない私は実家に住んでいたので、玄関に出て来た母に、「今日はやばい所に行ってきた。」と伝えました。すると、母がテレビで知っていたのか、一旦家の中に入り、その後、塩を持って玄関から出てきました。そして、母は私と車に塩をまいてくれました。「これで、いいんじゃないかな・・・?」そう母に言われて、私はようやく家に入りました。続けて母は、私に言いました。「念のため、仏壇に手をあわせて来てね。」私が仏壇に手を合わせ終わると、「数珠はちゃんと持って行ったの・・・?」と聞いてきました。実は私が就職したときに、危険な仕事というわけでなぜ...日々の恐怖7月13日寂れた旅館(6)

  • 日々の恐怖 7月10日 寂れた旅館(5)

    日々の恐怖7月10日寂れた旅館(5)私は震える手でなんとかブレーカーに測定器を当てて、漏電している回路を探し出しました。私は旦那さんに、「この3番目の回路が漏電しているので直してください。」と震える声で伝えました。旦那さんは、「分かった、戻ろう。」と言って、私を先に部屋から出してくれました。部屋から出ても、なお凄まじい視線を感じます。明らかに、近くに何かがいる気配がします。旦那さんも直ぐに部屋から出てきて、「早く戻ろう。」と私に言いました。私は頷いて、もと来た道を戻りました。戻る最中も、後ろにぴたっと何かがいる気配を感じていました。私は振り返ってそれを見たら、死んでしまうかも、とも思いました。来た道を進んで、やっと渡り廊下まで戻ってきました。旦那さんが本館と別館の仕切りを閉めて、南京錠を2つかける音がしました。...日々の恐怖7月10日寂れた旅館(5)

  • 日々の恐怖 7月7日 寂れた旅館(4)

    日々の恐怖7月7日寂れた旅館(4)私は旦那さんと一緒に、本館と別館を繋ぐ渡り廊下に行きました。本館と別館を分ける仕切りの南京錠を外す前に、旦那さんから、「別館は老朽化が進んでいるので、足元に気をつける。それから、何を見ても驚かないように。」と念を押されました。いよいよ南京錠を外して仕切りを開けたときです。ものすごく冷たい空気が、私の方に流れて来ました。別館は何か空気が違いました。別館をライトで照らすと、辺りは廃墟同然で、昔使っていたと思われる椅子やテーブルがそこ、ここに転がっていました。旦那さんは私に、「汚い物を見せて申し訳ない。」と引きつった笑顔で言いました。また、「長居はしたくないから速めに行く。足元に気を付けて・・・。」とも言いました。別館に踏み入れてからは、終始誰かに見られている感じがありました。私は恐...日々の恐怖7月7日寂れた旅館(4)

  • 日々の恐怖 7月3日 寂れた旅館(3)

    日々の恐怖7月3日寂れた旅館(3)女将は、「別館には配電盤はありませんし、私にはわかりません。」と言う、なんともよく分からない答えが返ってきた。女将は明らかに別館に行きたくない様子だった。正直、私も行きたくないけれど火災になったら嫌だったので、危険性を説明してなんとか見せていただけないかと交渉していると、「別館のことは、主人じゃないと分からない。」という答えに変わった。そんな問答をしていると、女将の旦那さんが帰ってきた。それで、私は今の状況を説明した。すると旦那さんは、「別館に配電盤はあるが、別館には入れたくない。」とのことだった。女将さんと同様に、旦那さんも別館に行きたくない様子だった。行きたくない理由なんて聞けないし、聞きたくもなかった。私は、「忙しいのであれば私がひとりで行きますから、大まかな場所だけ教え...日々の恐怖7月3日寂れた旅館(3)

  • 日々の恐怖 6月29日 寂れた旅館(2)

    日々の恐怖6月29日寂れた旅館(2)小走りで本館に戻って、女将に動力回路が漏電しているから、やはり配電盤を見る必要がある事を伝えた。先の回答通り、配電盤の場所は分からないとの事だった。漏電の測定値が非常に大きかったので最悪、火災の可能性があると判断した私は、女将に旅館内を回って配電盤を探してもいいですかと訊ねた。すると女将は、「いいですよ。でも、別館の方には行かないで下さいね。」との回答が返ってきた。旅館は誰一人として客が居ないから、廊下に灯りもついてなくて時間も時間だし、かなり暗かった。配電盤を探して旅館内を彷徨っていると、大きな扉があった。開けてみると、そこは本館と別館を繋ぐ渡り廊下だった。渡り廊下をちょっと進むとまた大きな扉、と言うか磁石でくっ付く仕切りがあって、その仕切りは南京錠2つで強固に閉ざされてい...日々の恐怖6月29日寂れた旅館(2)

  • 日々の恐怖 6月26日 寂れた旅館(1)

    日々の恐怖6月26日寂れた旅館(1)低圧の電気設備の点検で、山の中にある寂れた旅館に行った。その旅館に着いたのが16時ちょい過ぎで、時間的にも最後のお客さんで、終わったら引き上げようと思っていた。そのときの季節は夏だったんだけど、山の中ってこともあって、あたりは薄暗かった。訪ねると女将らしき人が出てきてくれたので、業務内容を説明して了解を得て点検を始めた。その旅館は結構広くて、女将に配電盤の場所を訊ねたんだけど、女将は設備に疎いらしく分からないという答えが返ってきた。当然、私も広すぎて分からないので、まず外に付いてる電気メーターのところで漏電を測定する事にした。電気メーターを探して外を歩いてたら、旅館は二つに別れてるのが分かった。所謂、別館ってやつだ。電気メーターを見つけるのも一苦労で、やっとのことでメーターを...日々の恐怖6月26日寂れた旅館(1)

  • 日々の恐怖 6月22日 食糧(2)

    日々の恐怖6月22日食糧(2)次のアパートも古かったけど駅からわりと近くて快適だった。ワンルームは変わらず、でもトイレも風呂もあった。彼女は相変わらず出来なかった。1ヵ月くらい住み続けていた頃、またしても不思議な事があった。冷蔵庫に身に覚えのない食糧がある。食パン、牛乳、タマゴなどの何気ない物だ。前回のこともあるし、怖くなってまた管理人に連絡した。しかし、今回は二重貸しではないらしい。管理人も盗られた物は無いかなど色々相談にのってくれたが、何も盗られていないし様子をみるという感じで話は終わった。それから特に何も無く、”もしかして自分の勘違いだったかな・・・・?”と思い始めてきた。夏休みになり2週間くらい実家へ帰省した。そしてアパートに戻った時、自分の勘違いではないと確信した。またタマゴが冷蔵庫に入っていて、その...日々の恐怖6月22日食糧(2)

  • 日々の恐怖 6月19日 食糧(1)

    日々の恐怖6月19日食糧(1)今から30年くらい前の大学生の頃の話だ。当時、ワンルームの古いアパートを借りて住んでいた。風呂なしでトイレは共同。それでも特に困ることなく暮らしていた。そこに住み始めて半年くらい経った頃、ある違和感に気づいた。帰るとやかんにお湯が沸かしてあったり、空っぽの冷蔵庫に食糧が入っていたり、身に覚えの無い出来事が何回も起きるようになった。もちろん彼女はいなかったし親が来ている訳でもない。万年床、汚部屋はそのままだった。俺はその食糧を食べることもなく、やかんは丁寧に洗って使っていた。しかし、またしばらくすると冷蔵庫に食糧が入っている。さすがに気持ち悪くなり管理人へ相談してみた。そこで発覚した。二重貸しの手違いだった。俺と同じくらいの年齢の大学生の男性らしい。その時は原因がわかってホッとしたん...日々の恐怖6月19日食糧(1)

  • 日々の恐怖 6月17日 流星群

    日々の恐怖6月17日流星群警察官で思い出した話がひとつある。趣味で天体観測のサークルに入っているんだが、内容の性質上、活動は日が暮れてから深夜、明け方になる。しかも、より光の少ない闇を求めて、月のない夜にわざわざ人気のない山の展望台に出掛けたりする。ある夜、皆でかなり田舎の山頂の駐車場まで登った。たしか流星群かなにか天体イベントのある夜だったと記憶している。すでに観測マニアの車が数台停まっていた。夜も更け、車は1台減り、2台減り、日付が変わってしばらくしたら、我々の車以外に1台を残すのみとなった。何台かある間は気にしなかったが、その車、明らかにおかしい。車から降りて観測するでもなく、なんというか、人の気配がしない。よく見ると、夜露に濡れたあとに葉っぱなどへばりついて、乗り捨てられて何日も経っているような雰囲気な...日々の恐怖6月17日流星群

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