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【本】小川洋子『密やかな結晶』~たとえ失われていく運命だとしても~
1、作品の概要 1994年に刊行された小川洋子の長編小説。 2019年に英訳版が出版され、全米図書賞翻訳部門と、2020年ブッカー国際賞の最終候補に選出される。 文庫版で402ページ。 何かが少しずつ消滅していく島で怯えながら暮らす人々と、消滅を補完すべく権力を振りかざす秘密警察たち。 それでも心の在処を見定めようとする人々の物語。 2、あらすじ 前触れもなく、存在や、それにまつわる記憶が消滅していくとある島。 消滅を完全なものにすべく、秘密警察が権力を振りかざして、人々を蹂躙していた。 彼らは消滅したものを消す「記憶狩り」に飽き足らず、消滅した記憶を抱える人々を捕らえていた。 わたしの母親は…
こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ベネチアのサンマルコ広場で演奏するギタリストが垣間見た、アメリカの大物シンガーとその妻の絆とはーーほろにがい出会いと別れを描いた「老歌手」をはじめ、うだつがあがらないサックス奏者が一流ホテルの特別階でセレブリティと過ごした数夜を回想する「夜想曲」など、音楽をテーマにした五篇を収録。人生の夕暮れに直面して心揺らす人々の姿を、切なくユーモラスに描きだしたブッカー賞作家初の短篇集。 アイルランドの作曲家ジョン・フィールドによって生み出された性格的小品「夜想曲」(nocturne)は、彼を崇拝していたフレデリック・ショパンが倣うように作曲して生まれた…