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2022/01/09

1件〜100件

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  • 『地獄の季節』アルチュール・ランボオ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 16歳にして第一級の詩をうみだし、数年のうちに他の文学者の一生にも比すべき文学的燃焼をなしとげて彗星のごとく消え去った詩人ランボオ。ヴェルレーヌが「非凡な心理的自伝」と評した散文詩『地獄の季節』は彼が文学にたたきつけた絶縁状であり、若き天才の圧縮された文学的生涯のすべてがここに結晶している。 1868年に悪政を轟かしていたスペイン女王イザベラに対抗すべく、政府は軍事クーデターを起こしてフランスへ亡命させるに至ります。空位となったスペイン王座を利用しようと、プロイセン首相のビスマルクは自国のポルトガル王家血縁者を推薦し、傀儡政権を成立させようと…

  • 『アンセム』アイン・ランド 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 米国議会図書館の調査で「聖書に次いでアメリカ人に最も影響を与えた本」とされた『肩をすくめるアトラス』の著者アイン・ランドによるディストピア短編小説。集団・平等主義が極限まで推し進められた結果、「私(I)」という概念が排除され「われら(we)」に置き換わってしまった遠い未来。主人公は自由を取り戻す闘いに立ち上がる。 ロシア帝国最終皇帝のニコライ二世政権下で領土拡大を目的とした南下政策が行われました。朝鮮半島から満州までの広範囲を目的とした進軍は、同様に進軍政策を進めていた大日本帝国との衝突を生みます。互いに武力行使が激しくなり、1904年に日露…

  • 『アルケミスト』パウロ・コエーリョ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。 二十世紀初頭のブラジルではサトウキビ、コーヒーを中心とした農業大国でした。しかし、その恩恵は国内全土には広まらず、商業や工業に携わる民衆は貧困に苦しんでいま…

  • 『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン 感想と一日一篇

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 知る人ぞ知る優れた短篇作家、アメリカで守られ続ける文学の秘密、など幾つもの肩書きを持つルシア・ベルリン(1936-2004)ですが、世界的な評価を受けるに至ったのは、つい最近の2015年になってからでした。 父の仕事に合わせて転々とした住居、生まれつきの脊椎側彎症(背骨が横にS時に湾曲)、内向的な性格による嫉みといじめの被害、貧困層と富裕層の双方を経験、祖父からの性的虐待、掃除婦や救急救命看護師や電話交換手といった多くの職場経験、母と叔父はアルコール中毒者、本人もアルコール中毒者、デトックス成功後に刑務所で囚人相手の教師、三回の結婚と四人の息…

  • 『誰がために鐘は鳴る』アーネスト・ヘミングウェイ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 全ヨーロッパをおおわんとするファシズムの暗雲に対し、一点の希望を投げかけたスペイン内戦。1936年に始まったこの戦争を舞台に、限られた生命の中で激しく燃えあがるアメリカ青年とスペイン娘との恋を、ダイナミックな文体で描く代表作。義勇兵として人民政府軍に参加したロバートは、鉄橋爆破の密命を受けてゲリラ隊に合流し、そこで両親をファシストに殺されたマリアと出会う。 1914年のサラエボ事件を発端とした三国同盟(ドイツ・オーストリア・イタリア)と三国協商(イギリス・フランス・ロシア)によるヨーロッパでの衝突は、戦禍の火を広げて第一次世界大戦争を引き起こ…

  • 『デカメロン』ジョバンニ・ボッカッチョ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 1348年、当時、フィレンツェの町ではペストが流行、郊外の別荘に避難した10人の紳士淑女たちは退屈しのぎに1人、毎日1話ずつ10日間にわたって物語りを話すことに決める。下賤な馬丁が王様と姿が似ているのを利用して、深夜王妃の寝室にしのび込むという話、親しい友人同士の一方が相手の妻と密通したことがきっかけで互いの妻を共有しあう話など、王侯貴族、僧侶、商人、農民といったあらゆる階級の人物がまきおこす、好色、皮肉なもの、ロマン的なもの、悲劇的なものを話題として底抜けな明るさで物語られる。作者ボッカッチョは暗い中世ののちに、自我に目覚める人間像を、生命…

  • 『獨樂園』薄田泣菫 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 詩集『白羊宮』などで象徴派詩人として明治詩壇に一時代を劃した薄田泣菫は、大阪毎日新聞に勤めてコラム「茶話」を連載し、好評を博する。人事に材を得た人間観察から、やがて自然や小動物を対象にした静謐な心境随筆へと歩をすすめ、独自の境地を切り拓いた。本書は泣菫随筆の絶顚であり、心しずかに繙くとき、生あるものへの慈しみと読書の愉悦とに心ゆくまで浸るにちがいない。 ロマン派そして象徴派に挙げられる薄田泣菫(すすきだきゅうきん 1877-1945)は、詩人として日本で初めてソネット(絶句)を発表し、文士として芥川龍之介を文壇に立つ足掛かりを与えました。 詩…

  • 『深夜の酒宴』椎名麟三 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 文学における第一次戦後派は、戦争時代の体験によって起こった精神変化、情勢変化、生活変化を文学に収め、観念や倫理を社会に映し出そうとした作家たちです。野間宏、武田泰淳、埴谷雄高、梅崎春生などが挙げられ、椎名麟三(1911-1973)も代表者作家のひとりです。彼は貧窮の少年時代を過ごします。ともに愛人を持つ両親は、二人ともが自殺、拠り所を無くした彼は文字通りに世界を失います。生きるために至るところで雑役に就き、命を繋ぐようにして過ごしました。私鉄の車掌となった彼は、カール・マルクスに強く影響を受けて共産党に入党し、労働運動に没入します。世界を失っ…

  • 『居酒屋』エミール・ゾラ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 洗濯女ジェルヴェーズは、二人の子供と共に、帽子屋ランチエに棄てられ、ブリキ職人クーポーと結婚する。彼女は洗濯屋を開くことを夢見て死にもの狂いで働き、慎ましい幸福を得るが、そこに再びランチエが割り込んでくる……。《ルーゴン・マッカール叢書》の第七巻にあたる本書は、十九世紀パリ下層階級の悲惨な人間群像を描き出し、ゾラを自然主義文学の中心作家たらしめた力作。 1852年から約二十年間続いたフランス第二帝政は、ルイ=ナポレオンが治めるボナパルティズム末期を指し、プロイセンのオットー・フォン・ビスマルクの挑発に乗って普仏戦争による敗北を招き、終焉を迎え…

  • 『夏の夜の夢』ウィリアム・シェイクスピア 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 妖精の王とその后の喧嘩に巻き込まれ、さらに茶目な小妖精パックが惚れ草を誤用したために、思いがけない食い違いの生じた恋人たち。妖精と人間が展開する詩情豊かな幻想喜劇。 本作『夏の夜の夢』の一つの特徴として種本が無いということが挙げられます。婚礼式典の余興として描かれていることから、貴族の結婚式で披露する目的でシェイクスピアが自ら書き上げたと考えられています。 Midsummer-dayは「夏至」を指します。キリスト教文化圏においては、この日に洗礼者聖ヨハネの誕生を祝う日として催しが行われます。それに関わる「ヨハネの聖水」という風習があり、夏至前…

  • 『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ 感想

    こんにちは。 RIYOです。今回はこちらの作品です。 名刺の住所は「旅行中」、かわいがっている捨て猫には名前をつけず、ハリウッドやニューヨークが与えるシンデレラの幸運をいともあっさりと拒絶して、ただ自由に野鳥のように飛翔する女ホリー・ゴライトリー。彼女をとりまく男たちとの愛と夢を綴り、原始の自由性を求める表題作をはじめ、華麗な幻想の世界に出発し、多彩な作風を見せるカポーティの作品4編を収める。 1918年に迎えた第一次世界大戦争の終結から、アメリカではロシア革命に端を発するボリシェヴィキズム(暴力革命を掲げる過激派共産主義)が広がり、統制の取れた革命思想を持つ労働者たちが無政府共産主義的な運動…

  • 『モンパルナスとルヴァロワ』ジャン=リュック・ゴダール 感想

    こんにちは。 RIYOです。今回は映画作品です。 1954年、映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」に掲載された記事が映画界を変革するほどの大きな影響を与えました。それは、のちに自ら映画を監督することになるフランソワ・トリュフォーの文章で、既存の脚本重視の作品は「芸術としての本質」に欠けているという主張でした。「良質の伝統」を守り続けるフランス映画はリアリズムを求めている、しかし決まり文句や使い回された洒落ではリアリズムはより遠のいて行く。こう主張して「真のリアリズム」を映し出そうと模索することが必要であると説きました。脚本を元に監督が脳内でイメージを創り上げるならば、撮影される作品がそれ以上のも…

  • 『毛皮のマリー』寺山修司 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 著者の下宿の裏通りには街娼がよく出没した。その中の54歳の娼婦が実は男だと知り、作った表題作は都内中のゲイバーのママが総出演し、アンダーグラウンド・カルチャーの仇花となった。〝ワイ雑で、野放図で、ぶちこわし型で、その中に人間存在の根源をさがし求めてゆく〟やり方は、新劇の啓蒙的近代主義へのアンチ・テーゼとなった。1960年安保闘争を描いた処女戯曲「血は立ったまま眠っている」他、戯曲と同時代のすれちがいを提示しつつ、現代寺山演劇の萌芽を内包する初期傑作戯曲集。 寺山修司(1935-1983)は、母方の叔父が経営していた青森の映画館「歌舞伎座」で少…

  • 『悪の華』シャルル=ピエール・ボードレール 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 十一世紀に生まれた「聖アレクシス伝」「ロランの歌」などから始まるフランス詩史は、やがて厳格な規則性を持ちフランス韻文詩が形成されていきます。道徳的思想と芸術性を併せ持った美しい詩が数百年ものあいだ生み出され続け、堅固たる伝統的文化としてフランス文学に定着します。心身の美を追求した幾つもの作品は、読者の心を清浄にし、身の穢れを削ぎ落とす、美しい文体と韻律で絵画のように描かれていきました。 十九世紀に入るとナポレオン・ボナパルトの戴冠に始まり、ヴァグラム、ドレスデン、ライプツィヒ、ワーテルローでの激しい戦争、フランス七月市民革命と、民衆が心を落ち…

  • 『桜島』梅崎春生 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 処女作『風宴』の、青春の無為と高貴さの並存する風景。出世作『桜島』の、極限状況下の青春の精緻な心象風景。そして秀作『日の果て』。『桜島』『日の果て』と照応する毎日出版文化賞受賞の『幻化』。無気味で純粋な〝生〟の旋律を伝える作家・梅崎春生の、戦後日本の文学を代表する作品群。 日本文学における第一次戦後派と呼ばれる作家たちは、戦争体験により影響された哲学や思想、社会性や政治などに対する訴えが込められた文学作品を生み出していきました。野間宏、武田泰淳、椎名麟三、埴谷雄高などと並び、梅崎春生(1915-1965)もその代表作家のひとりです。 彼は第二…

  • 『危険な関係』ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 十八世紀、頽廃のパリ。名うてのプレイボーイの子爵が、貞淑な夫人に仕掛けたのは、巧妙な愛と性の遊戯。一途な想いか、一夜の愉悦かーー。子爵を慕う清純な美少女と妖艶な貴婦人、幾つもの思惑と密約が潜み、幾重にもからまった運命の糸が、やがてすべてを悲劇の結末へと導いていく。華麗な社交界を舞台に繰り広げられる駆け引きを、卓越した心理描写と息詰まるほどの緊張感で描ききる永遠の名作。 一六世紀末にアンリ四世より創始されたブルボン朝はフランス絶対王政を堅固なものとして、国内外に向けて二百年以上も強力に勢力を伸ばして圧政を敷いていました。構築されたアンシャン・レ…

  • 『山猫』トマージ・ディ・ランペドゥーサ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 一八六〇年春、ガリバルディ上陸に動揺するシチリア。祖国統一戦争のさなか改革派の甥と新興階級の娘の結婚に滅びを予感する貴族。ストレーガ賞に輝く長篇、ヴィスコンティ映画の原作を、初めてイタリア語原典から翻訳。 ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ(1896-1957)は、代々宰相を務める大貴族の家系に生まれました。莫大な富の中でありながら、父からの愛情をあまり受けることなく、母親と家庭教師と共に広大な敷地で暮らしていました。 1915年に第一次世界大戦争のイタリア戦線、カポレットの戦いに行軍します。この戦いは当初イタリア側が優勢と見られてい…

  • 『スターメイカー』オラフ・ステープルドン 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 肉体を離脱した主人公は、時間と空間を超え、宇宙の彼方へと探索の旅に出る。訪れた世界で出会った独自の進化を遂げた奇妙な人類と諸文明の興亡、宇宙の生命と生成と流転を、壮大なスケールと驚くべきイマジネーションで描いた幻想の宇宙誌。アーサー・C・クラークやスタニスワフ・レム、J・L・ボルヘスをはじめ多くの作家に絶賛され、多方面に影響を与えてきた伝説の作品を全面改訳で贈る。 敬虔なクリスチャンであった哲学者のオラフ・ステープルドン(1886-1950)は、幼少期に海運事業主の父の都合で幼少期をエジプトの運河都市ポートサイードで過ごしました。イギリス国民…

  • 『カラマーゾフの兄弟』フョードル・ドストエフスキー 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 父親フョードル・カラマーゾフは、圧倒的に粗野で精力的、好色きわまりない男だ。ミーチャ、イワン、アリョーシャの3人兄弟が家に戻り、その父親とともに妖艶な美人をめぐって繰り広げる葛藤。アリョーシャは、慈愛あふれるゾシマ長老に救いを求めるが……。 1830年ごろに隆盛した「ロシア詩黄金期」は、アレクサンドル・プーシキンやミハイル・レールモントフを中心に素晴らしい詩を数多く残しました。ここに同時代の偉大な散文作家たちを加えて「ロシア文学黄金時代」と現代では括られています。含まれる散文作家の代表者と言えば、ニコライ・ゴーゴリ、レフ・トルストイ、イワン・…

  • 『死に至る病』セーレン・オービュ・キェルケゴール 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 「死に至る病」とは絶望のことである。憂愁孤独の哲学者キェルケゴールは、絶望におちいった人間の心理を奥ふかいひだにまで分けいって考察する。読者はここに人間精神の柔軟な探索者、無類の人間通の手を感じるであろう。後にくる実存哲学への道をひらいた歴史的著作でもある。 セーレン・オービュ・キェルケゴール(1813-1855)はデンマークの思想家であり哲学者です。当時のゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲルを中心とした理想主義の席巻は、宗教論にまで派生してデンマークの各教会にまで影響(ぐらつき)を与えるほどでした。これに対抗する思想を立ち上げてぶ…

  • 『お月さまへようこそ』ジョン・パトリック・シャンリィ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 映画『月の輝く夜に』でアカデミー脚本賞を受賞したジョン・パトリック・シャンリィ、初の戯曲集。ニューヨークを舞台にして、人間同士の心のかよいあいを中心にくりひろげられる現代のメルヘン。 南北戦争、第一次世界大戦争を経たアメリカ合衆国は、ヨーロッパ諸国からの移民に溢れます。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、アイルランドなどから先住民たちを数で凌ぐほどの勢いで移り住みます。軍需だけでなく、イギリスに起こった産業革命の影響として、科学や工業製品の流入を伴いながらやってきました。現代のアメリカ人口の九割がこれらの移民の末裔であるという説もあります。…

  • 『夢みる宝石』シオドア・スタージョン 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 家出少年のホーティがもぐりこんだのは、普通でない人間たちが集うカーニヴァル。団長のモネートルには奇妙な趣味があった。宇宙から来た不思議な水晶の蒐集と研究だ。水晶たちが夢をみるとき、人や動物や植物が生まれる―モネートルはそれを利用して、己の野望を果たそうとしていたのだ。そのことを知ったホーティやカーニヴァルの団員は、恐ろしい運命の渦に巻きこまれていく。幻想SFの巨匠がつむぎだす珠玉の名品。 1840年代のアメリカはサーカス興行が盛んでした。広大な国土は、巡業して各地の民衆を楽しませてまわる業態に適していました。また多くの人種による多様な価値観や…

  • 『氷山へ』ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 2008年にノーベル文学賞を受賞したル・クレジオの思考と実践に大きな影響を与えた孤高の詩人アンリ・ミショー。彼の至高の詩篇「氷山」「イニジ」について、ル・クレジオが包括的かつ詩的に綴った珠玉の批評-エッセイ。 1963年に『調書』で華々しくフランス文壇デビューを果たしたジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオ(1940-)は、ルノードー賞を受賞し、ゴンクール賞にも候補として選ばれました。当時のフランスで中心的な風潮を持っていたアンチ・ロマンとは一線を画す描写で、作家としての立場を確立させました。1966年よりフランスの義務兵役代替としてタイや…

  • 記事索引

    感想記事を国別でまとめました。作品がどの国で発表されたか、どの国で認められたか、などを参考にしているため、作家の出身国とは違う国にまとめられていることもあります。大きな違和感がある場合、ご指摘いただけますと幸いです。 フランス文学 アメリカ文学 イギリス文学 ロシア文学 ドイツ文学 チェコ文学 オーストリア文学 アイルランド文学 イタリア文学 イラク文学 インド文学 カタルーニャ文学 ギリシャ文学 コロンビア文学 デンマーク文学 ノルウェー文学 ペルー文学 ポーランド文学 日本文学 ギリシャ哲学

  • 『壊れた風景』別役実 感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 食べ物からパラソルに蓄音機まで用意された素敵なピクニックの場に通りがかった他人同士。不在の主に遠慮していたはずが、ついひとつまみから大宴会へ。無責任な集団心理を衝いて笑いを誘う快作。 1930年の日本では、数年前の関東大震災から復興しきれぬ中、畳み掛けられるように世界恐慌の煽りを受け、経済は壊滅的な状況に陥ります。震災手形は支払不能となり、多くの企業が倒産して、国内は失業者で溢れます。日本は自国内での経済回復は困難と見て、大陸へ進出して領土を拡大し、そこを植民地とすることで利潤を得て、大規模な不景気から脱却しようと試みます。侵略対象は日露戦争…

  • 『雪のひとひら』ポール・ギャリコ 感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 雪のひとひらは、ある冬の日に生まれ、はるばるとこの世界に舞いおりてきました。それから丘を下り、川を流れ、風のまにまにあちこちと旅を続けて、ある日……愛する相手に出会いました。ひとりが二人に、二人がひとりに。あなたが私に、私があなたに。この時、人生の新たな喜びと悲しみが始まったのですーー。永遠の愛の姿を描く珠玉のファンタジーを、美しい挿画でお届けします。 第一次世界大戦争を終え、イギリス全土のあらゆる方面で疲弊が見られました。経済の不安定さが激しく、アメリカへの依存度が高まるに合わせて、世界の指導者としての立場は移行されていきます。インフレ対策…

  • ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 かねてから、心の底では王位を望んでいたスコットランドの武将マクベスは、荒野で出会った三人の魔女の奇怪な予言と激しく意志的な夫人の教唆により野心を実行に移していく。王ダンカンを自分の城で暗殺し王位を奪ったマクベスは、その王位を失うことへの不安から次々と血に染まった手で罪を重ねていく……。シェイクスピア四大悲劇中でも最も密度の高い凝集力をもつ作品である。 デンマーク王子として「自身はどうあるべきなのか」と悩み続けるハムレットと比較すると、マクベスの小心性は顕著に見られます。大きな性格、性質の違いとしては、「宿命」に生きた前者は生まれ落ちたその日か…

  • ギ・ド・モーパッサン『脂肪の塊』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 プロシア軍を避けてルーアンの町を出た馬車に、“脂肪の塊”と渾名(あだな)される可憐な娼婦がいた。空腹な金持たちは彼女の弁当を分けてもらうが、敵の士官が彼女に目をつけて一行の出発を阻むと、彼女を犠牲にする陰謀を巡らす――ブルジョア批判、女性の哀れへの共感、人間の好色さを描いて絶賛を浴びた「脂肪の塊」。同じく、純粋で陽気な娼婦たちと彼らを巡る人間を活写した「テリエ館」。 1868年、スペイン女王イザベラの悪政に見切りをつけた役人や軍人は、クーデターを決行して国政から追放し、フランスへ亡命させるに至ります。空位となったスペイン王座を利用しようと画策…

  • ヘンリ・ミラー『北回帰線』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 〝ぼくは諸君のために歌おうとしている。すこしは調子がはずれるかもしれないが、とにかく歌うつもりだ。諸君が泣きごとを言っているひまに、ぼくは歌う。諸君のきたならしい死骸の上で踊ってやる〟その激越な性描写ゆえに長く発禁を免れなかった本書は、衰弱し活力を失った現代人に最後の戦慄を与え、輝かしい生命を吹きこむ。 ヘンリ・ミラー(1891-1980)は、アメリカのブルックリンにあるウィリアムズバーグの移民地域で幼少期を過ごします。人種や言語が無差別に入り混じる街中で「人間」に対する観察力が強く養われていきます。文化の統一が見られない街では成長期の価値観…

  • フランシス・ホジソン・バーネット『秘密の花園』感想

    こんにちは。RIYOです。今回の作品はこちらです。 両親を亡くし、ヨークシャーの伯父にひきとられた少女メアリー。やせっぽちで顔色の悪かった彼女が温かい人々、輝く太陽、澄んだ空気に触れるうち、バラ色の頬をした快活な少女に生まれ変わっていきます。荒れ地の「魔法」はさらに、病弱で寝たきりだったいとこコリンにも勇気と生きる力を与えます。彼女が秘密の花園の扉を開く時、閉ざされた心の扉も同時に開かれていくのでした。 1830年にスティーブンソンが実用化させた蒸気機関車がマンチェスターとリヴァプールを繋いで開通し、イギリス産業革命は成熟期に入ります。機関車や線路の原料である鉄、燃料として使用する石炭、運ぶ売…

  • ロマン・ロラン『ベートーヴェンの生涯』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 少年時代からベートーヴェンの音楽を生活の友とし、その生き方を自らの生の戦いの中で支えとしてきたロマン・ロラン(1866-1944)によるベートーヴェン賛歌。二十世紀の初頭にあって、来るべき大戦の予感の中で自らの理想精神が抑圧されているのを感じていた世代にとってもまた、彼の音楽は解放の言葉であった。 神聖ローマ帝国の末期、現在のドイツ西部にある国境沿いの大都市ボンは十三世紀より続く代々のケルン大司教によって、選帝侯としての自治が担われていました。不安定な情勢において他国からの侵攻を望まない姿勢を、その治世によって表明します。絵画、彫刻、音楽、文…

  • 「名刺がわりの小説10選」

    riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com riyoriyo.hatenablog.com

  • ジョサイア・コンドル『河鍋暁斎』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 幕末明治期の天才画家河鍋暁斎。その群を抜いた画力に惹かれた弟子の中には、かの鹿鳴館の設計者コンドルがいた。「暁英」の画号を持つ愛弟子が、親しく接した師の姿と、文明開化の中で廃絶した日本画の技法を克明に記し、暁斎の名を海外にまで広めた貴重な記録。 1853年に江戸湾近くの浦賀にマシュー・ペリーが率いるアメリカの黒船が強行上陸しました。江戸幕府は他国との折衝を最小限に行っていましたが、アメリカに対しても同様の姿勢を取ろうとします。しかし翌年のペリー艦隊の軍力に屈して交渉を余儀なくされ、遂には日米和親条約を締結します。オランダ、イギリス、ロシア、フ…

  • シェイクスピア『リア王』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 老王リアは退位にあたり、三人の娘に領土を分配する決意を固め、三人のうちでもっとも孝心のあついものに最大の恩恵を与えることにした。二人の姉は巧みな甘言で父王を喜ばせるが、末娘コーディーリアの真実率直な言葉にリアは激怒し、コーディーリアを勘当の身として二人の姉にすべての権力、財産を譲ってしまう。老王リアの悲劇はこのとき始まった。四大悲劇のうちの一つ。 エリザベス女王一世の死後に『リア王』は発表されました。ジェームズ一世がイングランド王を継ぎ、スチュアート朝となってもシェイクスピアへの寵遇は変わりませんでした。シェイクスピアはこの変化を契機に絶対王…

  • ハンス・ペーター・リヒター『あのころはフリードリヒがいた』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 ヒトラー政権下のドイツ。人々はしだいに反ユダヤの嵐にまきこまれてゆくーーその時代に生き、そして命をおとしたひとりのユダヤ人少年フリードリヒの悲劇の日々を、ドイツ人少年の目から克明に描いた話題作。 1870年に起こった普仏戦争で領土を制圧したプロイセンは、首相オットー・フォン・ビスマルクが中心となってドイツを統一します。フランスに残った傷はやがて怨恨へと変わり、反ドイツの意識が高まり続けていきます。ビスマルクはこの報いを警戒し、フランスへの軍需輸出を停止して、周囲の国々と関係を強めて自衛を図ります。オーストリア、ロシアへ歩み寄り三帝同盟を結びま…

  • ヘンリク・シェンキェヴィチ『クォ ヴァディス』感想

    こんにちは。RIYOです。今回はこちらの作品です。 フランス革命で広められたナショナリズムを否定して、絶対王政を復活させ、ヨーロッパ各国君主が共同支配した過去の秩序を取り戻そうと1814年に開かれたウィーン会議は、民衆を弾圧する反動体制として形成されていきます。これを受けて神聖同盟、四国同盟とヨーロッパ諸国同士が個々に連なり、ウィーン体制は堅固なものとなっていきます。各諸国の芸術家は民衆と緊密に繋がり、自由主義やナショナリズムを提唱して弾圧に抵抗を見せます。この抵抗を各国の保守派だけではなく、「ヨーロッパの憲兵」とい言われたロシアが武力を持って弾圧していました。 ナポレオンがプロイセンに建国し…

  • 武田泰淳『富士』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 秘密の重い扉が開かれるとき、一抹の暗い不安と不思議な幅をもった恐怖を私達は覚えるけれども、さて、いま心の秘密の扉が開かれる。《心の秘密》ーーその頑強な扉を敢えて開くことは底知れぬ恐怖にほかならぬが、武田泰淳ならではもち得ぬ全的洞察力を備えた視点によって、さながら時間と空間の合一体を時空と呼ぶごとく、敢えて新造語をもって《セイニク》とでも呼ぶべき精神と肉体の統合された一つの装置の扉がいまここに開かれるのである。 精神と性のグロテスクで真剣な《セイニク》の刻印を帯びた存在の諸相が精神病院のかたちをかりた現世の曼陀羅として悠容たる富士に見おろされ…

  • マルセー・ルドゥレダ『ダイヤモンド広場』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 三十以上の言語に翻訳されている、世界的名作。現代カタルーニャ文学の至宝と言われる。スペイン内戦の混乱に翻弄されるひとりの女性の愛のゆくえを、散文詩のような美しい文体で綴る。「『ダイヤモンド広場』は、私の意見では、内戦後にスペインで出版された最も美しい小説である」(G.ガルシア=マルケス)。 スペイン北東部にあるカタルーニャ州では現在も引き続き激しいデモが行われています。スペインの中央政府がカタルーニャ民族を蔑視し、高額の税金を搾取することからスペインからの離脱、いわゆるカタルーニャ独立運動が行われています。主だって活動している人々はカタルー…

  • シェイクスピア『オセロー』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 ムーア人の勇敢な将軍オセローは、サイプラス島の行政を任され、同島に赴く。副官に任命されなかったことを不満とする旗手イアーゴーは、策謀を巡らせて副官を失脚させた上、オセローの妻デズデモーナの不義をでっちあげる。シェイクスピアの後期の傑作で、四大悲劇の一つ。 十五世紀に始まった大航海時代は、インド航路開拓を皮切りに新しい土地へヨーロッパ諸国が次々と足を踏み入れることになりました。そこで出会う土地、産物、人々は商業的な見方をされ、やがて壮絶な植民地支配合戦へと変貌していきます。この時代のきっかけとなった航海術の飛躍的な向上(羅針盤・快速帆船・緯度…

  • ウィリアム・ゴールディング『蠅の王』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 疎開する少年たちを乗せた飛行機が、南太平洋の無人島に不時着した。生き残った少年たちは、リーダーを選び、助けを待つことに決める。大人のいない島での暮らしは、当初はきままで楽しく感じられた。しかし、なかなか来ない救援やのろしの管理をめぐり、次第に苛立ちが広がっていく。そして暗闇に潜むという〈獣〉に対する恐怖がつのるなか、ついに彼らは互いに牙をむいたーー。ノーベル文学賞作家の代表作が新訳で登場 第二次世界大戦争が1939年のドイツによるポーランド侵攻を発端として勃発しました。枢軸国(ドイツ/イタリア/日本)と連合国(イギリス/フランス/中国/ソビ…

  • ジョルジュ・バタイユ『C神父』(蠱惑の夜)感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 つねに鋭い人間探求をめざしつつエロスと死の深淵にさまよい、特異な文学世界を創りあげた奇才バタイユの全貌をここに集大成。バタイユは燃え上がる。この彗星は、今夜もまた、ヘーゲルとニーチェの傍をよぎって異様な輝きを放つ。二人の巨人の間で微妙な振動をくりかえすその軌跡をたどることから、現代思想のすべてが始まるだろう。エロティシズムを通して次第に知的なものを失い、ついにその極点で聖なるものに到達するC神父の物語!バタイユ文学の内核にせまる問題の長篇小説! 1880年よりフランス第三共和政ではジュール・フェリーによる教育制度の改革が行われました。政府は…

  • ミヒャエル・エンデ『モモ』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語。時間に追われ、人間本来の生き方を忘れてしまっている現代の人々に、風変りな少女モモが時間の真の意味を気づかせます。町はずれの円形劇場あとにまよいこんだ不思議な少女モモ。町の人たちはモモに話を聞いてもらうと、幸福な気もちになるのでした。そこへ、「時間どろぼう」の男たちの魔の手が忍び寄ります……。「時間」とは何かを問う、エンデの名作。小学5・6年以上。 ミヒャエル・エンデ(1929-1995)はバイエルン州のガルミッシュで画家の父の元に生まれます。父のエドガー・エンデは「…

  • ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 32歳になっても、幼児の知能しかないチャーリイ・ゴードンの人生は、罵詈雑言と嘲笑に満ちていた。昼間はパン屋でこき使われ、夜は精薄者センターで頭の痛くなる勉強の毎日。それでも、人のいいチャーリイは少しも挫けず、陽気に生きていた。そんなある日、彼に夢のような話が舞いこんだ。大学の偉い先生が、頭をよくしてくれるというのだ。願ってもないこの申し出に飛びついたチャーリイを待っていた連日の苛酷な検査。検査の競争相手は、アルジャーノンと呼ばれる白ネズミだ。脳外科手術で超知能をもつようになったアルジャーノンに、チャーリイは奇妙な親近感を抱きはじめる。やがて…

  • ガルシア=マルケス『百年の孤独』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 蜃気楼の村マコンド。その草創、隆盛、衰退、ついには廃墟と化すまでのめくるめく百年を通じて、村の開拓者一族ブエンディア家の、一人からまた一人へと受け継がれる運命にあった底なしの孤独は、絶望と野望、苦悶と悦楽、現実と幻想、死と生、すなわち人間であることの葛藤をことごとく呑み尽しながら……。20世紀が生んだ、物語の豊潤な奇蹟。1967年発表。 1930年に世界恐慌の煽りを受けたコロンビア経済の安定を図るため、貧困に苦しむ労働者の支持により自由党が政権を握りました。コロンビア・ペルー戦争を経て、土地の改革を行った自由党は政権継続と思われましたが、政…

  • フランソワーズ・サガン『悲しみよ こんにちは』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 太陽がきらめく、美しい南仏の海岸を舞台に、青春期特有の残酷さをもつ少女の感傷にみちた好奇心、愛情の独占欲、完璧なものへの反撥などの微妙な心理を描く。発表と同時に全世界でベストセラーとなり、文壇に輝かしいデビューを飾ったサガンの処女作である。 1944年、第二次世界大戦争において連合軍のオーバーロード作戦(ノルマンディー上陸作戦)によりドイツ占領下にあったフランスを解放し、親独政権ヴィシー・フランスは終わりを迎えました。国内では小党の覇権争いが繰り広げられましたが、人民共和派と社会党の連立内閣が成立します。しかしこの内閣は対立を生み、戦後の復…

  • リルケ『若き詩人への手紙/若き女性への手紙』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 『若き詩人への手紙』は、一人の青年が直面した生死、孤独、恋愛などの精神的な苦痛に対して、孤独の詩人リルケが深い共感にみちた助言を書き送ったもの。『若き女性への手紙』は、教養に富む若き女性が長い過酷な生活に臆することなく大地を踏みしめて立つ日まで書き送った手紙の数々。その交響楽にも似た美しい人間性への共同作業は、我々にひそかな励ましと力を与えてくれる。 現在のチェコ共和国のプラハで生まれたライナー・マリア・リルケ(1875-1926)は、オーストリア・ハンガリー帝国の激動に翻弄されながらも、自己を曲げず、自己と向き合い、心を豊かでいようと努め…

  • ソポクレス『オイディプス王』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 オイディプスが先王殺害犯人の探索を烈しい呪いの言葉とともに命ずる発端から恐るべき真相発見の破局へとすべてを集中させてゆく緊密な劇的構成。発端の自信に満ちた誇り高い王オイディプスと運命の逆転に打ちひしがれた弱い人間オイディプスとの鮮やかな対比。数多いギリシア悲劇中でも、古来傑作の誉れ高い作品である。 紀元前五世紀、ギリシャのアテネでは毎年ディオニュソス神を祝う大ディオニュシア祭が行われ、ギリシャ神話を元にした演目を神に捧げるため、民衆参加で悲劇の競演が繰り広げられていました。 現代まで伝えられる当時に活躍した三大悲劇詩人と呼ばれる人物がいます…

  • ウィリアム・モリス『ユートピアだより』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 目覚めるとそこは二十二世紀のロンドンーー緑かがやき、水は澄み、「仕事が喜びで、喜びが仕事になっているくらし」。社会主義者・美術工芸家モリスの実践と批判、理想と希望が紡ぐ物語。ユートピアの風を伝える清新な訳文に充実した訳注を付す。 19世紀のイギリスで最も優れたデザイナーとして知られるウィリアム・モリス(1834-1896)。現在でも多くのデザインに影響を与え続け、装飾芸術家としての名声を確固たるものにしています。壁紙やテキスタイル、そして家具に至るまで幅広く手掛けます。このような装飾芸術は裕福な貴族階級だけの愉しみでしたが、モリスはプロレタ…

  • アンドレ・ジイド『法王庁の抜け穴』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 無償の行為を実践して意味なき殺人をするラフカディオ、奇蹟により改宗したアンティムの破綻、地下室に幽閉されている法王を救い出すためと称して詐欺を働くプロトス……。複雑多岐な事件の発展の中に、人間の行為の底にひそむ偶然と必然の問題が明快に描き出される。近代小説に新たな展開をもたらした作品。一九一四年作。 1947年に「人間の問題や状況を、真の大胆不敵な愛と鋭い心理洞察力で表現した、包括的で芸術的に重要な著作に対して」ノーベル文学賞を受賞したアンドレ・ジイド(1869-1951)。 フランス第二帝政期のルイ・ナポレオン統治下に生まれます。1852…

  • スティーヴンソン『ジーキル博士とハイド氏』感想

    こんにちは。 RIYOです。 今回はこちらの作品です。 医学、法学の博士号を持つ高潔な紳士ジーキルの家に、いつのころからかハイドと名乗る醜悪な容貌の小男が出入りするようになった。人間の心にひそむ善と悪の闘いを二人の人物に象徴させ、“二重人格”の代名詞として今なお名高い怪奇小説の傑作。 1760年代よりイギリスで続いていた産業革命は、1830年代に起こる鉄道交通革命により工場制機械工業へと移行し、国家へ大きな恵みを与えて資本主義拡大が加速します。哲学、歴史、科学、医学などの発展でイギリス全土の文化的中心地であったスコットランドのエジンバラは、人口を集め続けていましたが、工業地域としての規模は小さ…

  • レイモン・ラディゲ『肉体の悪魔』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 青年期の複雑な心理を、ロマンチシズムへの耽溺を冷徹に拒否しつつ仮借なく解剖したラディゲ16歳から18歳のときまでの驚くべき作品。第一次大戦のさなか、戦争のため放縦と無力におちいった少年と人妻との恋愛悲劇を、ダイヤモンドのように硬質で陰翳深い文体によって描く。ほかに、ラディゲ独特のエスプリが遺憾なく発揮された戯曲『ペリカン家の人々』、珠玉のコント『ドニーズ』を収める。 1914年6月オーストリア皇位継承者夫妻がボスニアの州都サラエボでセルビア人に殺害された事件「サラエボ事件」を発端として、ドイツ・オーストリアの同盟国側、ロシア・フランス・イギ…

  • マルグリット・デュラス『雨のしのび逢い』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 若い未婚の女性は結婚に憧れている。だが、若い女性たちの夢見ているほど、安定したものだろうか。また純粋な状態のものだろうかーーこうした疑いを抱いた方はこの小説を読まれるといい。この小説の主題は、現代の『ボヴァリー夫人』の悲劇である。あるいはもうひとつの『菜穂子』である。そして、若い娘たちの大部分にとって、将来待ち伏せている不幸なのかもしれない。この小説は、読みおえて数年たって、はじめて深刻な意味をもつだろう。 「特に若い女性へ」中村真一郎(帯より) マルグリット・デュラス(1914-1996)は第一次世界大戦争が勃発した年に、当時はフランスの…

  • ヘレーン・ハンフ『チャリング・クロス街84番地』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 ニューヨークに住む本好きの女性がロンドンのチャリング・クロス街84番地にある古書店マーク社にあてた一通の手紙からはじまった二十年にわたる心暖まる交流。ここで紹介される〝本好き〟の書物を愛する心、書物を読む愉しみ、待望の書物を手にする喜び、書物への限りない愛情は、「手紙」の世界をこえて、読む者を魅惑の物語のなかに誘いこむ。 第二次世界大戦争により硬く結ばれた英国とアメリカの関係性は「特別な関係」と言われます。共通言語、血族の起源、軍事協力、貿易交渉、文化交流など、他国と一線を置く緊密な関係を継続しています。この雄々しい外交的側面からは見えづら…

  • ディケンズ『クリスマス・カロル』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 ケチで冷酷で人間嫌いのがりがり亡者スクルージ老人は、クリスマス・イブの夜、相棒だった老マアレイの亡霊と対面し、翌日からは彼の予言どおりに第一、第二、第三の幽霊に伴われて知人の家を訪問する。炉辺でクリスマスを祝う、貧しいけれど心暖かい人々や、自分の将来の姿を見せられて、さすがのスクルージも心を入れかえた……。文豪が贈る愛と感動のクリスマス・プレゼント。 1830年代にスティーブンソンの蒸気機関実用化で鉄道が世に普及され、交易による流通が活発化しました。この交通革命は紡績、織布を発端としてそれに連なる工業に必要な機械の需要も比例して高まり、製鉄…

  • 埴谷雄高『死霊』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 1895年、日本は日清戦争が終結し台湾の統治権を得ました。以後の約五十年間、日本の植民地として扱われました。日本の統治を阻む台湾住民は五年のあいだ抗います。そして一万人以上の現地人が虐殺されました。 埴谷雄高(1909-1997)はこの台湾で生まれ育ちます。家庭内で穏和な親が現地の人間に向ける蔑視に不快と矛盾を感じながら過ごします。 「日本人が嫌い。でも自分も日本人。だから自分も嫌いになる。」 こう語る埴谷さんは徐々に哲学へ造詣を深めていきます。 社会の矛盾を感じて存在論を深掘りする中で、日本に移住すると矛盾を強く感じるようになります。学生…

  • サド・E・カーハート『パリ左岸のピアノ工房』感想

    こんにちは。RIYOです 今回はこちらの作品です。 記憶の底からよみがえる、あの音。鍵盤の感触、どこでピアノのことをわすれてしまったのだろう?愛情あふれるパリの職人に導かれ、音楽の喜びを取り戻した著者が贈る、切なくも心温まる傑作ノンフィクション。 アイルランドとアメリカ、二つの国籍を保有しているカーハート。アメリカ空軍将校の息子として生まれ、幼少期をアメリカ、フランス、東京などで過ごしました。大学では人類学を修め、のちに国務省の通訳として従事します。カリフォルニアではエンターテイメントビジネスのコンサルタントとして活躍。以後ヨーロッパに渡ってApple社にて勤務しますが、五十歳を機にフリーライ…

  • ジャン・ジロドゥ『オンディーヌ』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 浅利慶太さんが劇団四季の運営を離れ「浅利演出事務所」として始動した初めの作品、現代フランス演劇を代表する劇作家ジャン・ジロドゥ(1882-1944)の『オンディーヌ』です。 舞台は遠い世の昔から神秘な伝説を秘めるドイツの森林地帯。近くに幽邃な湖をひかえた老漁夫オーギュストと老妻ユウジェニイの住む小屋。彼らの養女オンディーヌは水の精霊である。そこへ人間界から一人の訪問者、騎士ハンスが訪れる。彼はこの世に《陳腐でないもの、日常的でないもの、すり減っていないもの》を探し求めているが、オンディーヌに会って、遂にそれを探しあてたと思う。 十九世紀末よ…

  • カート・ヴォネガット・ジュニア『スローターハウス5』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 時の流れの呪縛から解き放たれたビリー・ピルグリムは、自分の生涯を未来から過去へと遡る、奇妙な時間旅行者になっていた。大富豪の娘との幸福な結婚生活を送り……異星人に誘拐されてトラルファマドール星の動物園に収容され……やがては第二次大戦でドイツ軍の捕虜となり、連合軍によるドレスデン無差別爆撃をうけるビリー。時間の迷路の果てに彼が見たものは何か?現代アメリカ文学の旗手が描く不条理世界の俯瞰図。 1922年、第一次世界大戦争の三度目の休戦記念日に、アメリカのインディアナ州でドイツ系移民の子としてカート・ヴォネガット・ジュニアは生まれました。大学では…

  • ジュリアン・グラック『シルトの岸辺』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 著者最大の長篇かつ最も劇的な迫力に富む代表作。1951年度のゴンクール賞に選ばれたが、グラックは受賞を拒否、大きな話題を呼んだ。「この小説は、その最後の章まで、けっして火ぶたの切られない一つの海戦に向かってカノンを進行する」ーー宿命を主題に、言葉の喚起機能を極限まで駆使し、予感と不安とを暗示的に表現して見せた。 第二次世界大戦争加熱時の1940年、ドイツの猛侵攻により降伏したフランスは、中部に位置するヴィシーに独親政権の基盤を作り、国家元首としてフィリップ・ペタン(第一次世界大戦争時の英雄)を据え、フランス第三共和政を否定した統治権集中のフ…

  • フリードリヒ・ニーチェ『ツァラトゥストラ』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 無限にゆたかな生命の海にふかく見入って、意志の哲学を思索し、「永劫回帰」の戦慄に耐えて存在の実相に徹する人間像への希望をうたうニーチェ。近代の思想と文学に強烈な衝撃を与えた彼の、今日なお予言と謎にみちた本書で、ツァラトゥストラは何を語るかーー フリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)はプロイセン王国領ザクセンで神に使える両親の元で生を受けます。信仰心を生まれてすぐに持つことになりました。音楽の才能に恵まれ、学生の頃には仲間に即興演奏を披露するなど有能なピアニストでした。哲学、芸術に関心を寄せてショーペンハウアーに傾倒します。 1848年…

  • ルーキアーノス『遊女の対話』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 遊女たちの手練手管や、うつつをぬかす男たち……。都会的な才人ルーキアーノス(120-195頃)は、今も昔も、どこにでもありそうな社会の裏がわを軽妙に描く。 シリアのサモサータで生まれ、アテーナイで活躍した風刺作家のルーキアーノスは、自身で執筆した作品を朗読して地域をまわり、金銭を得る弁辞家でした。ギリシア、イタリア、小アジアなど各地を渡り歩きましたが、アテーナイで腰を下ろし、弁辞家から作家へと転向します。彼の作風は対話篇でありながら、哲学に重きを置かず、実社会を切り取って皮肉を込めて描きます。 本書に収録されている『ペレグリーノスの昇天』は…

  • デュマ・フィス『椿姫』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 その花を愛するゆえに〝椿姫〟と呼ばれる、貴婦人のように上品な、美貌の娼婦マルグリット・ゴーティエ。パリの社交界で、奔放な日々を送っていた彼女は、純情多感な青年アルマンによって、真実の愛に目覚め、純粋でひたむきな恋の悦びを知るが、彼を真に愛する道は別れることだと悟ってもとの生活に戻る……。ヴェルディ作曲の歌劇としても知られる恋愛小説の傑作である。 アレクサンドル・デュマ・フィス(1824-1895)は、私生児として生を受けました。父はアレクサンドル・デュマ・ペール。『三銃士』『モンテ・クリスト伯』『王妃マルゴ』などを執筆した文豪です。この通称…

  • ブローティガン『アメリカの鱒釣り』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 ビート・ジェネレーションの代表的な作家として本国でもヒッピーたちに祭り上げられたリチャード・ブローティガン。彼が世に放った話題作、それを革命的な翻訳で原文以上の魅力を日本に伝えたとされる藤本和子訳『アメリカの鱒釣り』です。 二つの墓地のあいだを、墓場クリークが流れていた。いい鱒がたくさんいて、夏の日の葬送行列のようにゆるやかに流れていた。ーー涼やかで苦みのある笑いと、神話めいた深い静けさ。街に、自然に、そして歴史のただなかに、失われた〈アメリカの鱒釣り〉の姿を探す47の物語。大仰さを一切遠ざけた軽やかなことばで、まったく新しいアメリカ文学を…

  • エルフリーデ・イェリネク『光のない。』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 2011年3月11日、太平洋沖地震は大津波を生みました。日本の東北地方を飲み込むほどの巨大さで、あらゆる人やあらゆる物を攫いました。しかし、災害は止まらず、福島第一原子力発電所の事故を引き起こします。決して忘れてはならない東日本大震災。ノーベル文学賞受賞作家であるエルフリーデ・イェリネクは嘆き悲しむと共に、世に伝え、そして問うべく執筆した作品が『光のない。』です。 ノーベル文学賞作家が、ポスト3.11の世界に捧げるレクイエム!東日本大震災とそれにつづく原発事故をうけて書き下ろされた表題作のほか、「レニヒッツ(皆殺しの天使)」「雲。家。」など…

  • ジョン・ディクスン・カー『夜歩く』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 「密室派の総帥」「密室の王者」などの異名を持つ偉大な推理小説家ジョン・ディクスン・カー(1906-1977)。そのデビュー作である『夜歩く』です。 パリの予審判事アンリ・バンコランは、剣の名手と名高いサリニー侯爵の依頼をうけ、彼と新妻をつけねらう人物から護るために深夜のナイトクラブを訪れる。だが、バンコランと刑事が出入口を見張るカード室で、公爵は首を切断されていた。怪奇趣味、不可能犯罪、そして密室。カーの著作を彩る魅惑の要素が全て詰まった、探偵小説黄金期の本格派を代表する巨匠の華々しい出発点。 1929年、アメリカ合衆国での株価大暴落が起因…

  • 竹内銃一郎『あの大鴉、さえも』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 劇団「秘法零番館」や、佐野史郎との演劇ユニット「JIS企画」、そして最後の演劇団体とする「キノG-7」と活躍を続ける傍ら、後進の育成にも力を注ぐ劇作家の竹内銃一郎。彼の代表作のひとつ、岸田國士戯曲賞受賞作品『あの大鴉、さえも』です。 マルセル・デュシャンの「大ガラス」、ポーの詩集「大がらす」の二つをテコに、不条理な世界のなかへあえて踏み込んでいく三人の男の心情を、秘法零番館旗揚げへの思いと重ね合わせて描く竹内銃一郎の代表作(岸戯曲賞受賞作)。他に、「劇薬」を収めた。 1960年代に激化した学生運動をはじめとする安保闘争は、国政により鎮静化さ…

  • J・D・サリンジャー「グラース・サーガ」感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品群です。 ニューヨークに生まれたユダヤ人作家ジェローム・デイヴィッド・サリンジャー(1919-2010)が『ライ麦畑でつかまえて』の後に世に放った、連作短中篇で描く物語「グラース・サーガ」と呼ばれる作品群です。(以下表記はグラースで統一) サリンジャーの父はユダヤ人、母はスコッチ・アイリッシュという家系で生まれ、父の食肉貿易で裕福な暮らしに恵まれていました。1939年にはコロンビア大学にて非正規の聴講生として授業を受ける傍ら、執筆に専念して雑誌掲載されるにいたります。 文壇の道を歩み始めた彼は社交界で人脈を拡げ、作家として活動を本格化していきます。…

  • ロラン・バルト『明るい部屋 写真についての覚書』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 フランスの哲学者であり記号学者、そしてポスト構造主義として理論を進化させ続け、ミシェル・フーコーに多大な影響を与えた探求者ロラン・バルトの「写真」について論考した『明るい部屋』です。 本書は、現象学的な方法によって、写真の本質・ノエマ(《それはかつてあった》)を明証しようとした写真論である。細部=プンクトゥムを注視しつつ、写真の核心に迫ってゆくバルトの追究にはまことにスリリングなものがある。 ロラン・バルト(1915-1980)は、主にジャン=ポール・サルトルの影響を受けた哲学者で、プロテスタントでした。また、彼の哲学や文体にはロマネスクが…

  • シェイクスピア『ハムレット』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 十六世紀のイギリスで無一文から、俳優、国王一座専属作家、劇団株主、詩篇献呈の報奨金など、誰よりも演劇で成功した劇作家シェイクスピア。彼が書き上げた数多くある代表作品の一つ『ハムレット』です。 城に現われた父王の亡霊から、その死因が叔父と母の計略によるものであるという事実を告げられたデンマークの王子ハムレットは、固い復讐を誓う。道徳的で内向的な彼は、日夜狂気を装い懐疑の憂悶に悩みつつ、ついに復讐を遂げるが自らも毒刃に倒れるーー。恋人の変貌に狂死するオフィーリアとの悲恋を織りこみ、数々の名セリフを残したシェイクスピア悲劇の最高傑作である。 本国…

  • ベルナノス『少女ムーシェット』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 死んでゆく少女への哀歌。スペイン戦争の暴力と悲惨を目撃した巨匠ベルナノスがその憤りを芸術として結晶させた珠玉の傑作。 普仏戦争に敗北したフランス第三共和政は資本輸出を中心に金策を図り、急速に国を回復させていきます。しかし、圧政は歪みはじめ、ドレフュス事件という大きな冤罪事件を起こします。ユダヤ人陸軍参謀本部大尉であるアルフレッド・ドレフュスが「筆跡が似ている」というだけで状況証拠すら固まらない中、終身刑に処されます。疑問を覚える数多くの人間が声を上げ、ついに冤罪濃厚となった中、第三共和制は「国家の安危に関わる軍事機密情報」であるとして、口を…

  • セネカ『怒りについて』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 古代ローマにおける屈指のモラリストであり、死の間際まで徳を積み続けたルーキウス・アンナエウス・セネカの初期の著作『怒りについて』です。 ネロー帝に仕える宮廷の生と自決の死ーー帝国の繁栄と矛盾したローマの哲学者セネカ(前4頃ー65)。絶対権力を念頭に、怒りという破壊的な情念の分析と治療法を逆説的修辞で論じる『怒りについて』。苦難の運命と現実社会の軋轢への覚悟、真の幸福を説く『摂理について』『賢者の恒心について』を併録。新訳。 長兄ノウァートスに献呈した本篇には、皇帝カリグラ(カリギュラ)の所業を悪例とし、随所で非難しています。「怒り」を「悪」…

  • 松尾スズキ『マシーン日記』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 映画『クワイエットルームにようこそ』の原作、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』脚本などに加え、自身の手掛ける演劇で時代を問わず幅広く魅了し続けている松尾スズキ。その戯曲『マシーン日記』です。 8月14日・金曜日 東京・不快指数100 今日もパチンコ屋の駐車場で子供が蒸れて死んだ そして私はミチオのマシーンになった(マシーン日記)。ある者は苦渋の色を浮かべある者はお世辞を浮かべつつ臆病者は接吻によりて勇者は剣によりて愛するものを殺す(悪霊)。性愛を軸とした男女の四角関係が渦を巻き、いびつな「家族の肖像」を描き出してゆく二作品、一挙収…

  • ボールドウィン『ジョヴァンニの部屋』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 キング牧師と同様にアメリカの公民権運動(人種差別撤廃)に参加し、その後フランスのパリにて「失われた世代」の系譜としても活躍した、黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンの同性愛劇を描いた『ジョヴァンニの部屋』です。 パリに遊学中のアメリカ青年のデイヴィッドはふとしたことから同性愛者の世界に踏み込み、ジョヴァンニと知りあう。2人は安アパート《ジョヴァンニの部屋》で同棲生活を営む。やがてヘラとの結婚によってこの異常な生活は一応終わるが、デイヴィッドの歪められた性への強い執着に妻は去って行く。 ジェイムズ・ボールドウィン(1924-1987)は黒人街ハ…

  • 平田オリザ『ヤルタ会談』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回は演劇台本です。 劇団青年団の主催者である劇作家・演出家の平田オリザは、現代口語演劇理論を提唱し、「組織と個人」を問題提起する多数の作品を生み出しています。今回はその中における傑作のひとつ、『ヤルタ会談』です。 第二次世界大戦の戦後処理を巡って、チャーチル、ルーズベルト、スターリンの三者によって行われた「ヤルタ会談」を元に描いた、ブラックユーモア満載のコメディ。大国のエゴイズムがむき出しになる中、滑稽で恐ろしい会話が続いていく。 「ヤルタ会談」とは、第二次世界大戦の末期に差し掛かった1945年2月に開催されたアメリカ・イギリス・ソ連の三国首脳による会談で、主にポ…

  • 野田秀樹『赤鬼』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの作品です。 演劇企画制作会社NODA・MAPの創立者にして、演出・劇作家、そして俳優として活躍する野田秀樹。なかでも、海外公演をバンコク・ロンドン・ソウルで展開し、各地の俳優とそれぞれの文化を融合させてグローバルな活躍を続ける代表作『赤鬼』です。 イギリス人の役者を連れてきて、コミュニケーションをとることが難しいということの面白さをやってみようと思った。コミュニケーションをとることの喜びじゃなくて、理解しあえないことが面白かったり、理解しあえないことが文化であったりすること、そういうことをやってみたらどうかなと。ただ、そういうものを日本人だけでやると理…

  • モーム/ゴーギャン『月と六ペンス/ノア・ノア』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回はこちらの2作品です。 晩年をタヒチで過ごし、死後に才能を称えられた総合主義・象徴主義を代表する画家ポール・ゴーギャン。その紀行文『ノア・ノア』と、彼の資質や魂を原型に、芸術を真に追い求める奇異な一人の画家を描いた『月と六ペンス』です。本記事において「ゴーガン」表記は「ゴーギャン」で統一します。 ポール・ゴーギャン ポスト印象主義の画家としてファン・ゴッホと比べられることが多いポール・ゴーギャン(1848-1903)。彼は自ら天蓋へ身を投げ、文明を逆走し続けた芸術家で、プリミティヴィスム(未開芸術/原始芸術)を初めて提唱し、確立しました。彼が描きあげた作品の根底…

  • ハイデッガー『芸術作品の根源』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 実存哲学における代表的なドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーの後期における思索の転換的作品『芸術作品の根源』です。 芸術作品は、日常生活に回収される道具と異なり、世界と大地との亀裂の狭間に真実を顕現させる。哲学の「別の原初」を指し示し、ハイデッガー後期思想への「転回」を予示した記念碑的作品。ゴッホの農夫の靴やギリシアの神殿など具体的な芸術作品の分析を通して、後期ハイデッガーを予示する新たな真理観、存在論が展開される最重要作品の新訳。ガダマーの解説付き。 『存在と時間』を代表として、現象学を昇華し形而上学と実存哲学を世に広めた最重要人物の一…

  • プラトン『国家』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 西洋哲学の核になる人物であり、以後の哲学者たちへ影響を与え続ける古代ギリシャの哲人プラトン。彼の師であるソクラテスを語り手とし、対話形式で進められる多くの主著のひとつ『国家』です。 ソクラテスは国家の名において処刑された。それを契機としてプラトン(前427-前347)は、師が説きつづけた正義の徳の実現には人間の魂の在り方だけではなく国家そのものを原理的に問わねばならぬと考えるに至る。この課題の追求の末に提示されるのが、本書の中心テーゼをなす哲人統治の思想に他ならなかった。プラトン対話篇中の最高峰。 哲学書でありながら「対話形式」で語られてい…

  • バルガス=リョサ『密林の語り部』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 ラテンアメリカ文学を牽引し続けるペルー出身のマリオ・バルガス=リョサ。民話と現実を行き来する文体で魂の在り方を訴える大作『密林の語り部』です。 都会を捨て、アマゾンの密林の中で未開部族の<語り部>として転生する一人のユダヤ人青年の魂の移住ーー。インディオの生活や信条、文明が侵すことのできない未開の人々の心の内奥を描きながら、「物語る」という行為の最も始原的なかたちである語り部の姿を通して、現代における「物語」の意味を問う傑作。 バルガス=リョサは1936年、ペルーの南端アレキーパにて生まれましたが、両親の離婚により幼少期はボリビアの祖父母の…

  • ブレヒト『三文オペラ』感想

    こんにちは。RIYOです。 今回の作品はこちらです。 現代の演劇に革命的な影響を及ぼしたベルトルト・ブレヒト。その代表作とも言える異化演劇の源として関心が寄せられる名作『三文オペラ』です。 ドイツの劇作家ブレヒト(1898-1956)が音楽家クルト・ワイルと組んで、オペラの革新、戯曲と音楽との新しい結合を試みた作品。ロンドンの警視総監と結んだ盗賊のマクヒィスが、多くの冒険ののち、絞首台に上るかわりに爵位と褒賞を授けられるという皮肉なテーマを展開、「裕福に暮す奴だけが安楽に生きられる」社会を徹底的に批判した。 この脚本はイギリスのジョン・ゲイ(1685-1732)が執筆した『乞食オペラ』を改作し…

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